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特許7452979ヒートシンクおよびヒートシンクを備える冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ヒートシンクおよびヒートシンクを備える冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240312BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019198327
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2020077875
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】10 2018 218 831.9
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ケーネ
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140276(JP,A)
【文献】特開2017-220539(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0297361(US,A1)
【文献】米国特許第07294560(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンク(1)であって、複数の突起(3)を備える少なくとも1つの本体(6)を有するヒートシンク(1)において、
少なくともいくつかの突起(3)に、カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、熱を伝導するように固定されていることを特徴とするヒートシンク(1)において、
前記カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、熱を伝導するように固定するために、前記突起(3)の周りに巻き付けて配置されているヒートシンク
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンクにおいて、前記カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、カーボンナノチューブ(CNT)である、ヒートシンク。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒートシンクにおいて、
前記カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、前記突起(3)の周りに単層で巻き付けられているヒートシンク。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のヒートシンクにおいて、
少なくともいくつかの前記突起(3)が、カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)によって互いに熱的に接続されているヒートシンク。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒートシンクにおいて、
前記カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、関連する前記突起(3)の間に直線状に延在しているヒートシンク。
【請求項6】
請求項1~5までのいずれか項に記載のヒートシンクにおいて、
前記本体(6)が基板(2)を備え、該基板(2)から前記突起(3)が片持ち梁状に突出しているヒートシンク。
【請求項7】
請求項1~6までのいずれか項に記載のヒートシンクにおいて、
前記突起(3)がピン(4)として形成されているヒートシンク。
【請求項8】
請求項に記載のヒートシンクにおいて、
前記ピン(4)が、円形または楕円形の横断面を有しているヒートシンク。
【請求項9】
請求項18までのいずれか項に記載のヒートシンクにおいて、
前記カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、いくつかの方向および/または平面に延在し、前記突起(3)に固定されているヒートシンク。
【請求項10】
請求項19までのいずれか項に記載のヒートシンクにおいて、
前記カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、前記突起(3)の同じ側または異なる側に沿って延在しているヒートシンク。
【請求項11】
請求項110までのいずれか項に記載のヒートシンクと、流れる冷却剤のための流路(7)とを有する冷却装置において、
カーボンナノ構造ベースの繊維(CNB)が、流路(7)の方向に、および/または流路(7)の方向に対して横方向に延在していることを特徴とする冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の突起を備える少なくとも1つの本体を有するヒートシンクに関する。さらに、本発明は、上述した形式のヒートシンクを備える冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「ピンフィン型熱交換器」は、米国特許出願公開第2004150956号明細書により知られている。ヒートシンクとも呼ばれる熱交換器は、複数の突起を備える本体を有する。これらの突起は、ピンもしくはフィンとして形成されており、熱交換を行う役割を果たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2004150956号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明によるヒートシンクは、複数の突起を備える少なくとも1つの本体を有する。少なくともいくつかの突起には、特にカーボンナノチューブもしくはグラフェンプレートから作製されたカーボンナノ構造ベースの繊維が、熱を伝導するように固定されている。カーボンナノ構造ベースの繊維は、突起から放熱することによって、ヒートシンクの熱交換面積を極めて効果的に拡大する。好ましくは、冷却剤がヒートシンクに沿って流れ、その結果、熱は、突起およびカーボンナノ構造ベースの繊維から放出される。カーボンナノ構造ベースの繊維は、極めて良好な熱伝導率を有し、さらに柔軟性があり、簡単な方法で熱を伝導するように突起に固定することができる。
【0005】
本発明の一実施形態によれば、少なくともいくつかの突起は、カーボンナノ構造ベースの繊維によって互いに熱的に接続されている。したがって、カーボンナノ構造ベースの繊維は、より強度に加熱された突起が、カーボンナノ構造ベースの繊維を介して、これよりも弱い強度に加熱された突起に熱の一部を放散することにより、熱交換面積を拡大するだけでなく、熱を分散させる。本発明によるこのようなヒートシンクは、特に動作時の電力ピークで、対応する熱量を放出するために、パワーエレクトロニクスで使用されることが好ましい。冷却剤は、特に液体、すなわち冷却液であってもよいが、例えばファンによって通常の対流または強制対流を受ける気体、特に空気を使用することも可能である。
【0006】
好ましくは、カーボンナノ構造ベースの繊維は、関連する突起の間に直線状に延在している。特に、これらカーボンナノ構造ベースの繊維は突起の間にぴんと張った状態で延在することができ、著しく大きい張力をかけることは必要不可欠ではないが、可能である。
【0007】
好ましくは、本体は基板を備え、基板からは突起が片持ち梁状に突出している。本体自体には、放熱することが望ましい部品、すなわち、パワーエレクトロニクスの分野で使用する場合には、例えば、パワーエレクトロニクスモジュールが固定されている。このモジュールの熱は本体に伝わり、本体から突起に伝わり、本体からカーボンナノ構造ベースの繊維に伝わる。あるいは、熱源は、冷却液回路を介してヒートシンク(本体)に接続されている。冷却剤は熱を搬出し、この場合に熱は突起に沿っても流れ、好ましくは、基板の少なくとも一部に沿っても流れる。
【0008】
好ましくは、突起はピンとして形成することができる。ピンは、好ましくは、円形または楕円形の横断面を有していてもよい。
【0009】
好ましくは、カーボンナノ構造ベースの繊維は、簡単に熱を伝導するように固定するために突起の周りに巻き付けて配置されている。特に、カーボンナノ構造ベースの繊維は、突起の周囲に1層だけ巻き付ければよい。1つのカーボンナノ構造ベースの繊維の長さは、少なくとも2つの突起、必要に応じて2つよりもずっと多くの突起を接続するために十分である。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、カーボンナノ構造ベースの繊維は、いくつかの方向および/または平面に延在し、突起に固定されている。したがって、異なる突起では異なる繊維方向が生じることもある。付加的または代替的には、同一の突起に異なる方向に延在する複数の繊維を固定することも可能である。さらに、突起に1つのみではなく、複数の繊維が固定されており、この場合に、同じ平面に固定されているか、または異なる複数の平面が生じるように突起の長さにわたって分配して固定されていることも可能である。
【0011】
本発明の一実施形態では、カーボンナノ構造ベースの繊維は、突起の同じ側または異なる側に沿って延在している。したがって、突起列の突起は、繊維がそれぞれ突起の同じ側にあるように、カーボンナノ構造ベースの繊維によって接続されてもよい。しかしながら、付加的または代替的に、繊維は、繊維の延在方向に沿って、一列に配置された突起の異なる複数の側に配置することも可能である。
【0012】
本発明は、さらに、上述したようなヒートシンクと、流れる冷却剤のための流路とを有する冷却装置に関する。カーボンナノ構造ベースの繊維は、流路の方向に、および/または流路の方向に対して横方向に、特に直角に延在している。繊維が流路の方向、すなわち冷却剤の流れ方向に延在する場合には、冷却装置の背圧はほとんど変化しない。好ましい効果は、冷却剤の流れ方向における温度勾配の減少である。しかしながら、付加的または代替的に、繊維が流路の方向に対して横方向に延在するようにすることもでき、これにより、冷却能力を向上させうる渦流を生じさせることができる。
【0013】
図面は、実施形態に基づいた本発明を示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】流れに対して縦方向のヒートシンクの横断面図である。
図2図1のヒートシンクの平面図である。
図3図1のヒートシンクの突起の領域の横断面図である。
図4】ヒートシンクの別の実施形態を示す平面図である。
図5】ヒートシンクの別の実施形態を示す平面図である。
図6】ヒートシンクの別の実施形態を示す平面図である。
図7】ヒートシンクの別の実施形態を示す平面図である。
図8】流れに対して縦方向のヒートシンクの別の実施形態の横断面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ヒートシンク1を横断面図で示す。図2は、ヒートシンク1を平面図で示す。ヒートシンク1は基板2を有し、この基板2は、この実施形態では金属プレートとして構成されている。基板2の片側には突起3が片持ち梁式に突出している。基板2は突起3と共にヒートシンク1の本体6を構成している。図2に示すように、突起3は、マトリックス状に(特に、列、好ましくは縦方向の列および横方向の列を形成している)配置することができる。この実施形態では、突起は、円形の横断面を有するピン4として形成されている。図2に示すように、ピン4がマトリックス状に配置されていることにより、ピン列5が得られる。実際には、放熱したい部品、例えばパワーエレクトロニクスユニットのパワー半導体部品は、熱を伝導するように基板2に固定されている(図示しない)。パワーエレクトロニクスユニットは、例えば、電子車両に属する。流路は、上壁8および側壁(図示しない)によって制限されている。
【0016】
ヒートシンク1の突起3には、カーボンナノ構造ベースの繊維CNB、特にカーボンナノチューブCNTが、熱を伝導するように固定されている。カーボンナノ構造ベースの繊維CNBは、糸状または帯状に形成されている。カーボンナノ構造ベースの繊維CNBは、熱を伝導するように突起3に固定するために、それぞれの突起3の周りに巻き付けて配置されている。巻き付けは、図1図7の実施形態では単層であり、すなわち、それぞれの突出部3の周りには、カーボンナノ構造ベースの繊維CNBが1回巻だけ巻かれている。カーボンナノ構造ベースの繊維CNBが突起3から突起3まで、特にそれぞれのピン列5(もしくは突起列)に沿って延在し、これにより個々の突起3もしくはピン4が互いに熱的に接続される配置が得られる。
【0017】
図1に示すように、カーボンナノ構造ベースの繊維CNBは複数の平面で突起3に配置されている。すなわち、それぞれの突起3に複数のカーボンナノ構造ベースの繊維CNBが重ねて配置され、熱を伝導するように固定されている。このようにして、一方では、ヒートシンク1の放熱表面が著しく増大され、他方では、既に述べたように、個々の突起3が熱を伝導するように互いに接続されている。したがって、既に上述したように、冷却されるべき構成要素は、本体6に熱を伝達し、本体6はこの熱をカーボンナノ構造ベースの繊維CNBに伝達する。好ましくは、冷却装置の場合、冷却剤は、ヒートシンク1の流路7に沿って流れることができ、流路7の方向は、カーボンナノ構造ベースの繊維CNBの縦方向の広がりに対応している。このようにして、熱は、冷却剤によって効果的に放出される。
【0018】
図3は、ピン4として形成された図1および図2の突起3の一部を断面図で示す。図示のように、複数のカーボンナノ構造ベースの繊維CNBは単層として、すなわち、それぞれ1回巻きのみにより、互いに上下に固定されており、互いに離間されている。図2の実施形態では、それぞれのカーボンナノ構造ベースの繊維CNBは、関連する突起3の間で、突起3の一方側のみに直線状に延在する。
【0019】
図4は、図2に対応する例示的な実施形態を示しているが、しかしながら、突起3は、楕円形の横断面を有するピン4として形成されている。
【0020】
図5は、図2の実施形態に対応する別の実施形態を示しているが、しかしながら、カーボンナノ構造ベースの繊維CNBは、それぞれのピン列5のピン4の一方の側に沿って延在しているだけでなく、それぞれのピン列5のピン4の対向する2つの側にも延在している。このことによってもヒートシンク1の表面拡大および熱分布の改善が達成される。
【0021】
図6の実施形態においても本体6が設けられており、図4にも示したように、前述の楕円形の横断面を有するピン4が設けられている。カーボンナノ構造ベースの繊維CNBは、この場合には交差して延在しており、したがって、それぞれピン列5の2つのピン4の間には、ピン4の領域で互いに対向する2つの側に位置するカーボンナノ構造ベースの繊維CNBの交点が設けられている。
【0022】
図7図5の実施形態に対応しているが、カーボンナノ構造ベースの繊維CNBは流路7の方向に延在しているだけでなく、この方向に対して横方向にも、特に直角に延在し、それぞれのピン4には、互いに対向する2つの側にカーボンナノ構造ベースの繊維CNBが設けられており、90度だけずらして、もう一度、互いに対向する2つの側にカーボンナノ構造ベースの繊維CNBが設けられている。
【0023】
図1図7の全ての例示的な実施形態では、それぞれのカーボンナノ構造ベースの繊維CNBは、単層として、すなわち、それぞれの突起3の周りに1回巻によって巻き付けることによって熱を伝導するように固定される。図8の実施形態では、これとは異なり、それぞれのカーボンナノ構造ベースの繊維CNBが、対応する突起3の周りに、例えば2回巻以上によって多層式に巻き付けられることによって、それぞれの突出部3に熱を伝導するように固定される。
【0024】
したがって、本発明では、カーボンナノ構造ベースの繊維CNBが、それぞれのヒートシンク1の突起3に熱的に接続され、特に巻き付けられることによって接続されることが重要なことである。これにより、それぞれの突起3から隣接する突起3への熱流が著しく増大し、温度補償が行われる。同時に、カーボンナノ構造ベースのCNB繊維は、ヒートシンク1の表面を著しく増大させ、これにより実質的に改善された放熱をもたらす。カーボンナノ構造ベースの繊維、好ましくは純粋に機械的にピン(突起)に固定される。あるいは、好ましくは、接着による結合が行われる。これは、例えば、金属およびカーボンナノ構造ベースの繊維の両方を湿らせる適切なはんだによってはんだ付けにより実現することができる。接着による結合の別の方法は、ピンおよびカーボンナノ構造ベースの繊維で金属を無電解析出することである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8