(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】車両用タッチ式ボタン
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20240312BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20240312BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20240312BHJP
F21V 9/08 20180101ALI20240312BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240312BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240312BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240312BHJP
【FI】
B60R16/02 630A
G06F3/02 F
G06F3/02 490
H01H36/00 J
F21V9/08 100
F21V5/00 510
F21V5/00 320
F21V23/00 115
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019210825
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0021902
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】權 ギョン 椿
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018465(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022213(WO,A1)
【文献】特開2016-099908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0024066(US,A1)
【文献】国際公開第2012/133367(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311029(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03219534(EP,A1)
【文献】国際公開第2014/129577(WO,A1)
【文献】特開2008-053050(JP,A)
【文献】特開2005-338499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0161660(US,A1)
【文献】特開2008-192467(JP,A)
【文献】特表2018-529178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
G06F 3/02
H01H 36/00
F21V 9/08
F21V 5/00
F21V 23/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ式ボタンの外観を形成し、文字フォントにあたるパターンが形成された隠しカバーと、
前記隠しカバーの後面に付着し、静電容量の変化によって信号を発生させる透明電極と
、を含み、
前記透明電極の後方に配置される光源からの光を透過させることにより、前記文字フォントが認識可能に現出されるように
し、
前記隠しカバーは、
前記文字フォントにあたる部分がカッティングされたブラックフィルムと、
前記ブラックフィルムと付着し、PCベースにブラック調色剤および光拡散添加剤が添加されたスモーキーレジン射出物と、を含み、
前記隠しカバーの厚さは、1~3mmであり、
前記隠しカバーの透過率は、30~45%であり、
前記隠しカバーの明度(*L)は、70未満であり、
始動がOFFおよび前記隠しカバーの裏面からの照明がOFFの状態では、前記文字フォントが見えないように実現し、前記始動がONになると、昼/夜間の区分なしに、前記照明がONになって前記照明によって前記文字フォントが現出されるようにすることを特徴とする車両用タッチ式ボタン。
【請求項2】
前記隠しカバーの濁度は、90%以上であることを特徴とする請求項
1に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項3】
前記透明電極の厚さは、150μm未満であることを特徴とする請求項
1に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項4】
前記透明電極の透過率は、85%以上であることを特徴とする、請求項
3に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項5】
前記透明電極の濁度は、2%未満であることを特徴とする請求項
4に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項6】
前記透明電極の黄色度(*b)は、2未満であることを特徴とする請求項
4に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項7】
前記透明電極の面抵抗は、200Ω未満であることを特徴とする請求項
4に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項8】
前記透明電極に付着する光拡散フィルムをさらに含むことを特徴とする請求項
1に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項9】
前記光拡散フィルムは、透過率85%以上、濁度90%以上であることを特徴とする請求項
8に記載の車両用タッチ式ボタン。
【請求項10】
タッチ式ボタンの外観を形成し、文字フォントにあたる部分がカッティングされたブラックフィルムと、前記ブラックフィルムと付着し、PCベースにブラック調色剤および光拡散添加剤が添加されたスモーキーレジン射出物とを含む隠しカバーと、
前記隠しカバーの後面に付着し、静電容量の変化によって信号を発生させる透明電極と
、を含み、
前記隠しカバーの厚さは、1~3mmであり、
前記隠しカバーの透過率は、30~45%であり、前記透明電極の透過率は、85%以上であ
り、
前記隠しカバーの明度(*L)は、70未満であり、
始動がOFFおよび前記隠しカバーの裏面からの照明がOFFの状態では、前記文字フォントが見えないように実現し、前記始動がONになると、昼/夜間の区分なしに、前記照明がONになって前記照明によって前記文字フォントが現出されることを特徴とする車両用タッチ式ボタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用タッチ式ボタンに係り、より詳しくは、車両の電子機器または空調装置などの操作のための車両用タッチ式ボタンに関する。
【背景技術】
【0002】
車両にはAVN(Audio、Video、Navigation)などの電子機器や空調装置などの操作のためのボタンが備えられ、このボタンにはボタンの機能が分かるようにする文字が現出できるようにLEDなどを含む照明装置が装着される。
従来の機械式ボタンは、LEDから出る光がボタン機構物の空き空間を通して伝達され、ボタンの表面をくぐり出るようにしながらも、Push-Pull方式の機械式接点を利用して、人が手で押した時、電気が通ってスイッチ作動可能に構成された。
LEDから出た光は、一般的に光透過性プラスチック材質(主にポリカーボネート、PC)から構成され、可視光透過率(5~18%)を有するボタンを透過して出られるように構成される。
そして、このような機械式の代わりに、タッチ用電極は、導電性を有する材質で作られ、人の手が近づけば、初期の静電容量(Capacitance)に比べた信号の変化を検知してON、OFFを認識する装置であり、タッチ用電極は、電気伝導度が高い材質であるほど、より大きい静電容量を設けることができて優れている。
【0003】
最近は、高画質のディスプレイ装置にタッチ機能を付与するために、透明な電極を蒸着工程などにより精密化したりする。
タッチ用電極には、主に、銀(Ag)ナノワイヤ、銀メタルメッシュ、銅、導電性高分子、インジウムスズ酸化物などが使用され、自動車のボタン照明の特性は、光透過性プラスチック材質の透過率によって性能が左右されるが、照明の品質は明るさが高くかつ均一な明るさ分布を示すほど良い。
図1に示す通り、大韓民国登録特許第10-1804636号のようなタッチ式ボタンの場合、タッチフィルムの下部に位置したLEDの光がタッチボタンの外に出るためには、タッチフィルムの中央部が開けられている形態にならなければならず、よって、
図2のようなボタンカバーの形態を有する。
すなわち、PCにホワイト調色剤が添加されて射出製作されるホワイトレジンに表面ブラック塗装後、文字フォントにあたる表面部分をレーザカッティングした形態でボタンカバーを製作し、ボタンカバーの後面にタッチパネルを形成させた。
【0004】
そのため、このような従来の方式によれば、
図3Aのように昼間に照明がOFFになった場合には、白色のスイッチフォント文字が見えるようにし、夜間にのみ、
図3Bのように照明が点灯するようになっている。
しかし、このような従来の方式は、昼間にはホワイト調色剤によってフォントが白色によく現れるが、調色剤によってLED光が遮られて透過率が低下するという欠点がある。
また、
図4および
図5に示す通り、真ん中の穴の打抜かれた部分が、LED光の透過する領域になり、周りを囲んでいる部分が銅でタッチ電極が形成された領域になるので、穴開けによって導体の面積が減少してタッチ感度が微弱になるしかないという限界を有する。
そして、穴開けした部分を通してLED照明が出るため、照明領域が制限されてしまう。
【0005】
すなわち、車両に使用される文字は「A/C」などのようにフォントの長さが短いものもあるが、「TRACK」のようにフォントが長い場合には、穴を大きく打抜きにくくて照明領域がより小くなるという欠点がある。そのように照明領域が小くなると、フォントでの照明の均一度が低下し、よって、フォントの大きさなどデザイン的な制限も伴う。
よりさらに、
図6Aおよび
図6Bから分かるように、穴を穿孔することから、高温高湿条件で168時間放置した場合、銅の露出した断面部に腐食が現れ、これはタッチ信号の低下および品質の問題をもたらすことがある。
また、
図7Aおよびこれを拡大した
図7Bから分かるように、FPCBの製造時、接着剤で積層して作る構造であることから、真ん中に穴を打抜く場合には、埃などの異物が断面部の接着剤がある層で付着することが分かる。これはLEDバックライト照明の品質低下をもたらすことがある。
以上の背景技術に記載の事項は発明の背景に対する理解のためのものであって、この技術の属する分野における通常の知識を有する者にすでに知られた従来技術ではない事項を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が目的とするところは、昼/夜間の区分なしに照明によって文字を認識することができ、照明領域が拡大し、均一化することができる車両用タッチ式ボタンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用タッチ式ボタンは、タッチ式ボタンの外観を形成し、文字フォントにあたるパターンが形成された隠しカバーと、前記隠しカバーの後面に付着し、静電容量の変化によって信号を発生させる透明電極とを含み、前記透明電極の後方に配置される光源からの光を透過させることにより、前記文字フォントが認識可能に現出されるようにすることを特徴とする。
【0009】
前記隠しカバーは、前記文字フォントにあたる部分がカッティングされたブラックフィルムと、前記ブラックフィルムと付着し、PCベースにブラック調色剤および光拡散添加剤が添加されたスモーキーレジン射出物とを含むことを特徴とする。
【0010】
前記隠しカバーの厚さは、1~3mmであり、カバーの透過率は、30~45%であり、濁度は、90%以上であり、明度(*L)は、70未満であることを特徴とする。
【0011】
前記透明電極の厚さは、150μm未満であり、透過率は、85%以上であり、濁度は、2%未満であり、黄色度(*b)は、2未満であり、面抵抗は、200Ω未満であり、前記透明電極に付着する光拡散フィルムをさらに含んでもよく、前記光拡散フィルムは、透過率85%以上、濁度90%以上であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の他の態様に係る車両用タッチ式ボタンは、タッチ式ボタンの外観を形成し、文字フォントにあたる部分がカッティングされたブラックフィルムと、前記ブラックフィルムと付着し、PCベースにブラック調色剤および光拡散添加剤が添加されたスモーキーレジン射出物とを含む隠しカバーと、前記隠しカバーの後面に付着し、静電容量の変化によって信号を発生させる透明電極とを含み、前記隠しカバーの透過率は、30~45%であり、前記透明電極の透過率は、85%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従来は、昼間にボタンのフォントが白色に見え、夜間にのみ照明が点灯する方式であったため、夜間照明の明るさが明るすぎると、眩しさとグレアが発生し、夜間照明の明るさは低くなければならなかった。
しかし、本発明の車両用タッチ式ボタンによれば、始動をかける前はフォントが見えない隠し(hidden)機能を実現し、始動をかけた瞬間、フォントが照明に入ってくるため、昼/夜間とも照明でフォントを実現し、高い明るさ性能が発揮できる。
また、透明電極としてのITOタッチフィルムが隠しカバーの後面に直接付着することで、高い光透過性により照明領域を広げることができ、均一な照明を実現することにより、フォントの大きさを多様化することができる。
そして、導体の面積が大きくなるため、タッチ感度が2倍以上向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図2】従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図3】A及びBは従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図4】従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図5】従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図6】A及びBは従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図7】A及びBは従来の車両用ボタンの方式と問題点を示す図である。
【
図8】本発明の車両用タッチ式ボタンの作動方式を示す図である。
【
図9】A及びBは
図8の方式で実現される本発明の車両用タッチ式ボタンの結果を例示する図である。
【
図10】本発明の車両用タッチ式ボタンを概略的に示す図である。
【
図11】本発明の車両用タッチ式ボタンの一構成を示す図である。
【
図12】本発明の車両用タッチ式ボタンの一構成を示す図である。
【
図13】本発明の車両用タッチ式ボタンの評価方法を示す図である。
【
図14】本発明の車両用タッチ式ボタンの隠しカバーの組成を示す図である。
【
図15】A乃至Dは本発明の車両用タッチ式ボタンの透過率による実現例を示す図である。
【
図16】A及びBはタッチフィルムの適用による照明の差を比較した図である。
【
図17】本発明の他の実施形態による車両用タッチ式ボタンを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図8は、本発明の車両用タッチ式ボタンの作動方式を示す図であり、
図9は、
図8の方式で実現される本発明の車両用タッチ式ボタンの結果を例示する図である。
そして、
図10は、本発明の車両用タッチ式ボタンを概略的に示す図であり、
図11および
図12は、本発明の車両用タッチ式ボタンの一構成をそれぞれ示す図である。
以下、
図8~
図12を参照して、本発明の一実施形態に係る車両用タッチ式ボタンを説明する。
【0016】
従来の車両用タッチ式ボタンは、昼間にはボタンのフォントが白色に見え、夜間にのみ照明が点灯する単純な方式であり、これによれば、夜間照明の明るさは低くなければならない。明るい場合には、眩しさとグレアが発生するからである。したがって、高い明るさを要求しない。
これに対し、本発明は、
図8のように、始動OFFおよび照明OFFの状態では、
図9Aのように文字フォントが見えないように(隠し、hidden)実現し、始動がONになると、昼/夜間の区分なしに、
図9Bのように照明がONになって照明によって文字フォントが現出されるようにし、よって、高い明るさが必要である。
そのための、本発明の車両用タッチ式ボタンは、
図10のように、隠しカバー10と、ITOタッチフィルム20を例とした透明電極とを含む。そして、隠しカバー10とITOタッチフィルムとの間には、OCA(Optical clear adhesive)のような透明接着剤が介在してもよい。
【0017】
隠しカバー10は、外部に露出して使用者がタッチできるようにするボタンの外観に相当し、透明電極が隠しカバー10の後面に付着してこれに連結されるPCB(図示せず)を介して静電容量の変化量が伝達されるようにしてタッチ入力を認識させる。
これらの隠しカバー10と透明電極は、LED30からの光を透過させることにより、隠しカバー10にパターンされた文字フォントが周辺より明るく光って使用者が認識できるようにする。
図11に示す通り、隠しカバー10は、IMLフィルム11と、スモーキーレジン射出物12とから構成される。
隠しカバー10は、ブラックフィルムを文字フォントに合わせてレーザカッティング、インモールドラベル(IML)工法でPC、ブラック調色剤、光拡散添加剤の組成のスモーキーレジン射出物に付着して製造される。
【0018】
このように構成されることで、照明がない状態で文字フォントは現れず、透明電極の高い光透過性によって照明領域を広げることができ、
図12のように導体の面積が大きくなってタッチ感度が2倍以上向上できる。
このような本発明の隠しカバー10および透明電極の条件をまとめると表1の通りであり、透明電極は、ITOタッチフィルム20を例に挙げた。
【表1】
まず、隠しカバー10の厚さは、1~3mmであることが好ましい。
これを外れて、隠しカバー10の厚さが1mm未満では、環境耐久(高温)後にカバーの撓みが発生し、3mmを超える場合には、電極と人の手との間の距離が増加してタッチ性能が低下しうるからである。
そして、このような厚さ範囲内で30~45%の透過率を有しなければならない。
【0019】
隠しカバー10の透過率が30%未満の場合には、LEDの光の透過性が低下して照明の明るさ性能が低下し、透過率が45%を超える場合には、照明OFF時にもフォントが肉眼で認知されて隠し特性が低下し、LED照明の直進性によって照明が点光源で明るく見えるHot Spot現象が発生して照明の均一度を低下させる。
透過率によって明度が決定されるが、明度が70を超える場合には、同じくフォントが肉眼で認知されて隠し特性が低下する。
そして、濁度は90%未満でLEDの光拡散がうまくいかず、照明の均一度が低下する問題がある。
【0020】
次に、ITOタッチフィルム20は、総厚さが150μmを超えてはならない。
150μmを超えると、屈曲による耐久特性が低下する。
そして、タッチフィルムの透過率は、国際規格JIS-K-7361によって85%以上でなければならず、濁度は、JIS-K-7136によって2%未満でなければならない。
万一、透過率が85%未満の場合には、LED光の光損失が大きくなって照明の明るさが低下し、濁度が2%以上の場合には、LED光の光散乱によって照明の明るさが低下する。
また、黄色度*bは、JIS-Z-8722によって2未満でなければならない。
万一、黄色度が2以上の場合には、フィルムの黄変によってLED照明色の色座標が移動して照明の色相が変化することがある。
【0021】
そして、面抵抗は、200Ω未満であることが好ましいが、面抵抗が200Ω以上の場合には、タッチ性能が低下しうるからである。
以上のような隠しカバーの厚さ、明度、濁度、透過率、およびITOタッチフィルムの厚さ、透過率、濁度、黄色度、面抵抗を満足する場合に、照明OFF時、隠し機能が実現され、照明ON時、光が明るくて均一化することができ、それによって、本発明が目的とする性能が実現可能である。
図13は、このような本発明の車両用タッチ式ボタン1を通して出る照明を2次元結像型輝度測定計で評価する方法を概略的に示すものであり、照明の光均一度は、60%以上でなければならない。
そして、昼間に使用可能となるように明るさは測定機器のレンズからボタン1までの距離が30cmで400cd/m
2以上ではなければならない。
本発明は、このような条件の隠しカバー10と、ITOタッチフィルム20とを含むことにより、使用者の操作によるタッチ入力信号を制御部(図示せず)に伝達させるボタンとして機能する。
【0022】
すなわち、隠しカバー10は、プラスチック絶縁体であり、ITO材質のタッチフィルム20は、電極になる。基本的に、電極には一定の値の静電容量を有している状態で人の手が接触した時、静電容量の変化によってタッチ信号が検知される。
ITOは、従来のFPCBに比べて電極の面積が大きいため、静電容量が大きくてタッチ感度に優れる。
そして、隠しカバー10は、照明がない場合にフォントが現れないようにするためのものであって、隠しカバーは、
図14に示すように、ベース材質のPCにブラック調色剤とSiOx光拡散剤が添加剤として含まれている。隠しカバーは、ブラック調色剤の含有量調節により透過率を調節することができる。ブラック調色剤は、LEDの光透過を防止するからである。
そのため、
図15A~
図15Dに示すように、隠し特性は、隠しカバーの適切な透過率範囲で実現可能になる。下地に表示されたものが照明OFFの状態であり、右側上端に表示されたものが照明ONの状態を示すものである。
【0023】
すなわち、
図15Aは、透過率が8%の場合であって、照明性能が低下(明るさ不足)することが分かり、
図15Bは、透過率が30%で本発明の範囲に相当する場合であって、文字やグラフィックが隠蔽され、照明の明るさおよび均一度を満足することが分かる。
そして、
図15Cは、透過率が51%であって、文字およびグラフィックが隠蔽されず、
図15Dは、透過率が73%の場合として、文字およびグラフィックが隠蔽されず、照明にHot Spotが発生することが分かる。
また、LEDの光が直進性を有するため、光拡散剤が添加されるが、これを調節することにより、隠しカバーの最適な透過率範囲と、濁度範囲および明度値を導出した。
【0024】
一方、同じ隠しカバーを適用しても、タッチフィルムの種類によって照明の特性は異なる。
図16Aは、従来のFPCBタイプのタッチスイッチを用いた場合であるが、穿孔した穴を通して直進するLED光のため照明の不均一な現象が発生する。反面、
図16Bのように、本発明のITOタッチフィルムを用いた場合には、ITOの透明な広い面積を通してもフィルムを通した光の拡散/散乱が起こり、これによる光拡散効果で照明の均一度が向上する効果がある。
以上で説明した本発明の隠しカバーおよび電極の特性範囲による実験結果による特性を、比較例とともに次の表にまとめた。表2は、実施例および比較例を示したものであり、表3は、実験結果を示したものである。
【0025】
【0026】
表にまとめられたように、比較例1、2の場合、ホワイト調色剤によって昼間にフォントが肉眼で認知されて隠しの実現が不可能であることが分かる。
そして、カバーをスモーキーレジンを用いた場合でも、比較例3のように厚さが薄くなると、透過率も増加し、LEDの直進性の強い光がレジンの内部でうまく拡散せずに照明がスポット形態で出てしまって照明の均一度が低下する。
逆に、比較例4のようにカバーの厚さが一定以上増加すると、透過率が低下して照明輝度が低下する。
そして、比較例5、6から分かるように、カバーの透過率が基準より低い場合には、照明輝度が低下し、基準より高い場合には、照明輝度が向上する代わりに、照明の均一度が低下する。
また、比較例7のようにカバーの濁度が一定以下と低い場合には、照明の均一度が低下し、比較例8のようにカバーの明度が一定以上高い場合には、フォントが肉眼で認知される水準で隠しの実現が難しく、ホワイト調色剤の添加によって透過率がやや低下して照明輝度が低下する。
【0027】
次に、電極の材質がFPCBの場合には、比較例9のようにいくらスモーキーレジンおよび最適な構造を有しても、輝度が不足し、均一度が低下する問題がある。
そして、比較例10のように電極の厚さが一定以上厚い場合、ITOが蒸着されたフィルムの屈曲性評価の際、ITO層の微細クラックによる面抵抗の低下が発生する。したがって、タッチ性能が低下する問題がある。
比較例11の場合、電極の透過率が一定以下と低くてLEDの光の透過性が低下して照明輝度が低下し、比較例12の場合、電極の濁度が一定以上高くて透過率がやや低下し、照明輝度の低下が発生する。
また、比較例13のように電極の黄色度が高い場合、LED照明の透過時に光の吸収などの光特性が変化して照明の色相が変化し、比較例14のように電極の面抵抗が一定以上高い場合には、静電容量の低下によりタッチ性能が低下する。
【0028】
次に、
図17は、本発明の他の実施形態に係る車両用タッチ式ボタンを概略的に示す図である。
図17のように、本発明の他の実施形態は、光拡散フィルム40を追加することで、光特性をより向上させることができる。ITOタッチフィルム20に付着する光拡散フィルム40は、透過率が85%以上、ヘイズ(濁度)が90%以上であることが好ましい。
すなわち、透過率がこれより低い場合には、LED照明の明るさが低下し、ヘイズが低い場合には、光拡散性の低下で光均一度が低下する。
【0029】
以上、本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の属する技術分野を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1:車両用タッチ式ボタン
10:隠しカバー
11:IMLフィルム
12:スモーキーレジン射出物
20:ITOタッチフィルム
30:LED
40:光拡散フィルム