(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】軸方向運動を修正する方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/26 20060101AFI20240312BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20240312BHJP
【FI】
B23Q1/26 Z
B23K26/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019225429
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-09-06
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518298337
【氏名又は名称】アジ シャルミール エス・ア
【氏名又は名称原語表記】Agie Charmilles SA
【住所又は居所原語表記】Via dei Pioppi 2, 6616 Losone, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】サーシャ ヴァイカート
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-340663(JP,A)
【文献】特開平11-207477(JP,A)
【文献】特開2005-246554(JP,A)
【文献】特開2005-214943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/01、 1/26、17/00
B23K 26/36
G01B 5/00、21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの機械フレームコンポーネントと、これらの機械フレームコンポーネントを相対的に運動させるための少なくとも1つの軸方向運動アセンブリとを有している位置決め機械であって、前記少なくとも1つの軸方向運動アセンブリは、複数の軸方向ガイドコンポーネントを有しており、各軸方向ガイドコンポーネントおよび各機械フレームコンポーネントは、取付け面を有している、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法において、
・考慮される軸に対して取付け面修正プロファイルを確定し、該取付け面修正プロファイルは、前記考慮される軸を機械的に修正するための位置の関数としての修正量を表しており、かつ
・確定された前記取付け面修正プロファイルを、機械加工により、前記考慮される軸の前記軸方向ガイドコンポーネントの前記取付け面または前記機械フレームコンポーネントの前記取付け面に付与
し、
前記取付け面修正プロファイルを、
a.前記考慮される軸の前記取付け面に沿った位置の関数で確定される真直度の誤差としての幾何学形状誤差であって、個々の前記機械フレームコンポーネントの前記取付け面の測定された幾何学形状誤差、および
b.前記考慮される軸に沿った前記機械フレームコンポーネントの相対的な変位により確定される、前記位置決め機械の工具中心点の算出された狂いから導出する
ことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
a.前記個々の機械フレームコンポーネントの前記取付け面の前記幾何学形状誤差をまず最初に、基準形状における、前記個々の機械フレームコンポーネントの前記取付け面の前記真直度または平面度の測定により確定し、かつ
b.前記取付け面における、前記個々の機械フレームコンポーネントの静的な変形量を、前記基準形状に対して算出し、かつ
c.前記個々の機械フレームコンポーネントの前記取付け面の修正された幾何学形状誤差を、最初に測定された前記幾何学形状誤差から、前記基準形状において生じる算出された前記変形量を減じることにより算出する、
請求項
1記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項3】
前記基準形状において生じ
る個々の
前記機械フレームコンポーネントの算出された前記静的な変形量を、重力に対する前記機械フレームコンポーネントの向きを考慮すると共に支点の位置および剛性を考慮して
、数値シミュレーションにより確定する、請求項
2記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項4】
前記位置決め機械の工具中心点(TCP)の算出された狂いを、前記機械フレームコンポーネントの前記取付け面において置き換え、これにより、前記工具中心点の算出された狂いを相殺する、請求項
1記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項5】
前記取付け面修正プロファイルをさらに、前記考慮される軸の1つ以上の軸方向ガイドコンポーネントの幾何学形状誤差を考慮して導出し、前記軸方向ガイドコンポーネントは、
a.前記考慮される軸の、レールおよび/またはキャリッジを含む軸方向ガイド、および
b.中間コンポーネント、特にシムプレートまたはシムブロック
のうちの1つ以上である、請求項
1記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項6】
前記取付け面修正プロファイルを、
a.前記考慮される軸の前記機械フレームコンポーネントの前記取付け面に沿った、反転された、修正された幾何学形状誤差、および
b.前記考慮される軸の前記取付け面に沿った1つ以上の軸方向ガイドコンポーネントの反転された幾何学形状誤差、および
c.前記考慮される軸に沿った前記機械フレームコンポーネントの相対的な変位により確定され、該機械フレームコンポーネントの前記取付け面において置き換えられた、前記位置決め機械の工具中心点の算出された狂い
の和として算出する、請求項1記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項7】
前記考慮される軸の機械的な修正を、
a.前記考慮される軸の前記機械フレームコンポーネントの前記取付け面、
b.前記考慮される軸の
軸方向ガイド
のレール
の取付け面、
c
.中間コンポーネント、特にシムプレートまたはシムブロックの前記取付け面
のうちの1つにおいて、確定された前記取付け面修正プロファイルに応じて材料量を除去することにより付与する、請求項1から
6までのいずれか1項記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項8】
確定された前記取付け面修正プロファイルを、機械加工、化学加工、熱加工または付加製造のうちの1つにより、前記軸方向ガイドコンポーネントの前記取付け面に付与する、請求項1から
7までのいずれか1項記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項9】
確定された前記取付け面修正プロファイルを、レーザ加工により、前記軸方向ガイドコンポーネントの前記取付け面に付与する、請求項1から
8までのいずれか1項記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項10】
前記機械フレームコンポーネントの相対的な運動のための前記軸方向運動アセンブリは、リニア軸方向運動アセンブリまたは回転軸方向運動アセンブリである、請求項1から
9までのいずれか1項記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項11】
前記位置決め機械は、工作機械、三次元測定機またはマニピュレータである、請求項1から
10までのいずれか1項記載の、位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法。
【請求項12】
少なくとも2つの機械フレームコンポーネントと、これらの機械フレームコンポーネントを相対的に運動させるための少なくとも1つの軸方向運動アセンブリとを有しており、該少なくとも1つの軸方向運動アセンブリは、複数の軸方向ガイドコンポーネントを有しており、各軸方向ガイドコンポーネントおよび各機械フレームコンポーネントは、取付け面を有している、位置決め機械において、前記軸方向ガイドコンポーネントおよび/または前記機械フレームコンポーネントの前記取付け面のうちの少なくとも1つが、請求項1から
11までのいずれか1項に記載の方法により修正されることを特徴とする、位置決め機械。
【請求項13】
請求項1から
11までのいずれか1項に記載の方法により、位置決め機械の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面を機械的に修正するための装置であって、
a.軸方向ガイドコンポーネントを取り付けるための取付けテーブル、
b.該取付けテーブルにおいて前記軸方向ガイドコンポーネントを正確に位置決めするための1つ以上の基準部材および/または前記取付けテーブルに対して前記軸方向ガイドコンポーネントを固定するための保持手段および/または緊締手段、
c.前記取付けテーブルに対して実質的に直交する軸線を有するレーザビームを発生させるレーザユニットであって、前記取付けテーブルと前記レーザユニットとは、互いに対して前記軸方向ガイドコンポーネントの軸方向に沿って可動となっている、レーザユニット、
d.前記軸方向ガイドコンポーネントの前記取付け面に取付け面修正プロファイルを付与するように、前記レーザユニットの前記レーザビームを制御しかつ前記レーザユニットに対する前記取付けテーブルの相対的な位置を制御するための制御ユニット、
を有している、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、測定機械、マニピュレータ、およびロボットといった位置決め機械の軸方向運動の幾何学的な精度を向上させるための、機械的な修正方法に関する。
【0002】
工作機械、三次元測定機等は、高精度位置決め機械であり、基部およびワークピースと工具側とをつなぐ複数の直線的な軸および/または回転軸により構成された構造的なループの集合体である。構造的なループは、指定された複数の対象の間の相対的な位置を維持する複数の機械コンポーネントのアセンブリと定義される。工作機械において構造的なループには、機械フレーム、ガイド、軸受、駆動装置、トランスミッション、および工具・ワーク保持固定具が含まれる。機械フレームには、ベッド、支柱、テーブル、コンソール、トラバース梁等が含まれる。
【0003】
これらのコンポーネントの主なタスクは、精度および速度に関する追加的な要求のもとで、工具中心点(TCP)においてワークピース側と工具側との間の相対的な運動を提供する一方で、機械的な剛性をも提供し、意図する運動の狂いを最小限にする点にある。
【0004】
工作機械では、多くの部品が相互に作用して、幾何学的な運動誤差、熱機械誤差、荷重、動的な力および運動制御等の最終的な精度に達する。これについては次の刊行物:Schwenke H., Knapp W., Haitjema H., Weckenmann A., Schmitt R., Delbressine F.著“Geometric error measurement and compensation of machines - An update”、CIRPの年報57(2)、第660~675頁、を参照されたい。ハードウェア側において機械の静的または準静的な精度を向上させるためには、幾何学的な運動誤差および荷重に対処する必要がある。
【0005】
幾何学的な運動誤差は、機械コンポーネントの不完全な幾何学形状および寸法、機械の構造的なループにおける機械コンポーネントの構成、軸のずれおよび機械測定システムにおけるエラーに基づく誤差である。ISO230-1に記載の幾何学的な誤差の説明に関しては、運動誤差と位置および方向誤差とを区別し、対応する測定手順を示している。TCPにおいて結果的に生じる変位の試験に関して、ISO230-2は、数値制御される軸の位置決めの精度および再現性に焦点を当てている。これに加え、ISO230-11は、工作機械幾何学形状試験に適した測定機器を指示している。ISO10791-1およびISO10791-2では複数の試験が補足的に定義されている一方で、ISO10791-4ではISO230-2に記載された位置決め試験に関する許容誤差が定義されている。
【0006】
機械コンポーネントの有限剛性に基づき、機械コンポーネントの位置および寸法は内力および外力に基づき変化する。いくつかのケースでは、例えばワークピースまたは機械の移動キャリッジの重さおよび位置が、機械の精度に重大な影響を及ぼす。例えば、直線ガイドが移動送り台の重さに基づき曲がると、送り台は、鉛直方向の真直度狂いとピッチ誤差動作を示すことになる。
【0007】
TCPにおける精度に影響を及ぼす、機械コンポーネントに生じる多数の幾何学形状的な狂いは、ほどほどの努力が払われた製造によって減らすことはできず、工作機械(MT)および三次元測定機(CMM)における系統誤差の補正は、長い歴史を有している。
【0008】
機械に生じる誤差を補正するためには、基本的に異なる複数の方法がある。例えば、キャリッジガイドの真直度誤差は、純粋にハードウェア技術、例えばガイド掻取りによって、またはソフトウェア技術により、キャリッジの横方向位置を示す数値を修正して、補正され得る。
【0009】
測定に基づくソフトウェア補正は、測定の不確実性および機械システムの再現性を含む、いくつかの側面により制限される。誤差の変化率は、測定密度と修正点とをそれぞれ規定する。50mmのポイント間隔は、1m3の作業体積に対して27000の体積3D誤差補正値につながる。動作中に修正された設定点をオンラインで生ぜしめるための数値制御(NC)の能力が必要とされる。ヒステリシスが顕著な機械に数値補正を適用することも、ネガティブな影響を及ぼすことがある。例えば、XY平面を機械加工するために、Z軸は小さな増分で連続的に移動すると共に方向転換して、X軸およびY軸の鉛直方向の真直度狂いを補正し、これにより、平面度を向上させることができる。しかしながら、Z軸のヒステリシスと組み合わされたこの動作は、表面仕上げのクオリティを損なう恐れがある。さらに、回転誤差を修正するためには、対応する複数の回転軸が必要とされるが、これらは3軸機械の場合には使用不可能である。
【0010】
三次元測定機では、接触点の3D位置のみが重要であり、プロービング後にオフラインで確定され得るのに対し、工作機械では通常、5または6の自由度が運動中にリアルタイムで適用されねばならない。
【0011】
これらの理由により、工作機械では主にピッチ修正が行われ、主ねじまたはリニアスケールの誤差が修正される。このことは、追加的な軸の運動を必要としないので、ヒステリシスの影響を受けにくい。
【0012】
ハードウェア修正技術は、幾何学的な欠点の影響を排除するかまたは少なくとも低下させるように、構造機械コンポーネントのガイド用取付け面の幾何学形状を修正する点にある。今までのところ、少なくとも部分的に自動化されたハードウェア修正技術の適用は、有効な方法、例えば研削加工による意図した矯正形状の製造が困難であることにより制限されている。これらの方法は、表面に規定された、マイクロメートルの幅を有する波形の幾何学形状を生ぜしめることはできない。よって時々、手動掻取りが、追加的な反復機械加工ステップとして適用されるが、手動掻取りは、人件費、長い加工継続時間およびこの作業の熟練工の不足という欠点を有している。
【0013】
これらの欠点を克服するために、いくつかの試みが成されてきた。手動で実現される掻取り工具の移動に代えて、自動化された機械手段により平面度を高め、合わせ面を得るために、自動化された様々な機械システムが提案されてきた。例えばJP5-123921A(特開平5-123921号公報)、JP7-1229A(特開平7-1229号公報)またはJP8-187620A(特開平8-187620号公報)に複数の例が示されており、いくつかには、加工される領域、すなわち高所を割り出すための画像認識が含まれる。平らな合わせ面の製造に加え、流体膜の形成を促進するように適合された特別な表面構造の形成が取り組まれてきた。さらに、手動のまたは自動化された機械的な掻取りの従来方式を、レーザ加工プロセスの使用により代替する方法が提案されている。例えば、米国特許第6769962号明細書には、表面を高精度掻取りプロセスにおいてレーザ加工により機械加工して、表面にオイル溝またはパターンといった凹所を形成する方法が開示されている。また国際公開第2014118366号にも、ガイド装置の滑り面をレーザテクスチャ加工により微細構造化して、摩擦作用を高める方法が開示されている。微細構造化には、オイルポケットとして働く微細キャビティの形成が含まれていてよい。この開示に記載された滑り面は、実質的に滑り接触支持面、すなわち平滑ガイドである。
【0014】
要するに今日、幾何学的な運動誤差の機械的な修正および機械コンポーネントの変位中の重力に基づく構造的なループの変形の機械的な修正、つまり高性能位置決め機械に生じた系統的な狂いの機械的な修正のための実行可能な解決策は存在しない。高精度位置決め機械における系統的な誤差の少なくとも部分的に機械的な修正が極めて望ましいが、周知の方法は技術的に厳しい制約を有しており、コストおよび技術的な理由により、工業的な適用性に欠ける。
【0015】
懸念を払拭するために、オイルポケットの形成といった表面構造や、高所の排除といった表面均一性、すなわち表面の平面度は、あまり重要ではない。それというのも、本発明による方法では、考慮される各表面間に運動が生じることはなく、粗さおよび短~中程度の長さの起伏が、隣接するコンポーネント表面の接触により、機械的に抑制されているからである。
【0016】
発明の概要
本発明の目的は、周知の方法の欠点を克服し、かつ軸方向運動の改良された精度を提供するといった、高精度機構の機械的な修正のために改良された、迅速、正確、効率的、確実かつ経済的に供与可能な方法を提供することにある。修正は、ガイドの取付け面等の軸方向精度に寄与する幾何学形状的な狂いを、これらの狂いの位置依存性を考慮して、重力による変形の計算と組み合わせて測定することにより、確立される。測定されかつ計算された狂いは、取付け面修正プロファイルを確定するために用いられる。このプロファイルは、1つにまとめられた各狂いを補正するために、レーザ加工により軸の幾何学形状を機械的に修正するための入力値として用いられる。
【0017】
本発明は実質的に、少なくとも2つの機械フレームコンポーネントと、これらの機械フレームコンポーネントを相対的に運動させるための少なくとも1つの軸方向運動アセンブリとを有しており、少なくとも1つの軸方向運動アセンブリは、複数の軸方向ガイドコンポーネントを有しており、各軸方向ガイドコンポーネントおよび各機械フレームコンポーネントは取付け面を有している位置決め機械の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための方法であって、考慮される軸に対して取付け面修正プロファイルを確定する一方で、取付け面修正プロファイルは、考慮される軸を機械的に修正するための位置の関数で修正量を表し、前記確定された取付け面修正プロファイルを、機械加工により、考慮される軸の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面または機械フレームコンポーネントの取付け面に付与することを特徴とする、方法を開示する。
【0018】
取付け面修正プロファイルにより確定された材料の量は、適当な機械加工プロセス、例えばレーザ加工により、正確かつ選択的に除去され得る。取付け面修正プロファイルは、取付け面から除去される材料の量を、位置の関数で規定する。このようにして、取付け面修正プロファイルは、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面または機械フレームコンポーネントの取付け面に、迅速、正確かつ不変に付与され、これにより、組み立てられた位置決め機械の最適な軸方向運動精度が達成される。
【0019】
本発明の別の目的は、部品測定から導かれた狂いと、機械モデルから導かれた、軸方向位置に依存する狂いとの組合せにより導かれる、前記取付け面修正プロファイルの割出しに向けられている。
【0020】
より具体的には、取付け面修正プロファイルは第1に、考慮される軸の取付け面に沿った位置の関数で確定される真直度誤差である、測定された、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面の幾何学形状誤差から導かれ、かつ/または第2に、相対的な変位、すなわち考慮される軸に沿った機械フレームコンポーネントの並進および/または回転により確定され、算出される、位置決め機械の工具中心点(TCP)の狂いから導かれる。
【0021】
つまり、前記取付け面修正プロファイルには、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面において測定された真直度誤差を反映する部分、および/または軸に沿った重さの相対的な変位に基づく、組み立てられた位置決め機械のTCPの狂いと、機械モデルを使用して変形が算出される、構造的なループの制限された剛性に基づき生じる、位置に依存した変形とを反映する算出部分が含まれていてよい。
【0022】
本発明の1つの態様では、第1に、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面の幾何学形状誤差が測定により確定され、次いで個々の機械フレームコンポーネントが受けた変形を考慮して、前記測定が基準形状において修正される。このようにして、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面において測定された狂いからは、特定の測定設定に基づく狂いが除かれている。
【0023】
特に、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面の幾何学形状誤差は第1に、基準形状における、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面の真直度または平面度の測定により確定され、取付け面における重力に基づく、個々の機械フレームコンポーネントの静的な変形が、前記基準形状用に算出され、最後に、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面の調整された幾何学形状誤差が、第1に測定された幾何学形状誤差から、算出された、基準形状に生じる変形を減じることにより算出される。基準形状における静的な変形は、機械フレームコンポーネントのモデルを用いて算出される。
【0024】
本発明の1つの別の態様では、算出された、基準形状に生じる個々の機械フレームコンポーネントの静的な変形は、重力に対する機械フレームコンポーネントの向きを考慮すると共に支点および/または固定点の位置および剛性を考慮して、好適には数値シミュレーションにより確定される。
【0025】
本発明の1つのさらに別の態様では、位置決め機械のTCPの算出された狂いは、機械フレームコンポーネントの取付け面において置き換えられ、これにより、TCPの算出された狂いは相殺される。この置換えは、位置に依存した変形を表す機械モデルを用いて、TCPの狂いと取付け面の幾何学形状の修正とを結び付ける数学的な最適化の方法と組み合わせて行われる。
【0026】
本発明の1つのさらに別の態様では、取付け面修正プロファイルはさらに、考慮される軸の軸方向ガイドコンポーネントの幾何学形状誤差を考慮して導かれ、前記軸方向ガイドコンポーネントは、考慮される軸の、レールおよび/またはキャリッジを含む軸方向ガイド、および中間コンポーネント、特にシムプレートまたはシムブロックのうちの1つ以上である。
【0027】
軸方向運動アセンブリの軸方向ガイドコンポーネントの幾何学形状狂い、それぞれの寸法変化(厚さ変化または高さ変化)を測定することにより、測定した狂いを、取付け面修正プロファイルの算出における入力値として用いることができる。重要な寸法変化は、例えばガイドレールの延在方向に沿った、ガイドレールのボール軌道の高さ変化である。このようにして、機械加工された機械フレームコンポーネントの幾何学形状的な狂いだけでなく、例えばガイドの個々の幾何学形状的な狂いも割り出され、機械的な修正の観点で考慮される。
【0028】
本発明の1つのさらに別の態様では、取付け面修正プロファイルは、
・考慮される軸の機械フレームコンポーネントの取付け面に沿った、反転された、調整された幾何学形状誤差、および
・考慮される軸の取付け面に沿った1つ以上の軸方向ガイドコンポーネントの反転された幾何学形状誤差、および
・考慮される軸に沿った機械フレームコンポーネントの相対的な変位により確定され、機械フレームコンポーネントの取付け面において置き換えられる、算出された、位置決め機械のTCPの狂い
の和として算出される。
【0029】
換言すると、軸方向ガイドコンポーネントおよび機械フレームコンポーネントの各取付け面の実際の幾何学形状の測定された狂いは、機械モデルから導かれた軸方向運動に基づく構造コンポーネントの弾性変形に関する情報と共に、取付け面修正プロファイルを生ぜしめるために使用され、取付け面修正プロファイルは、支持面を機械的に修正するための入力情報として用いられる。
【0030】
本発明の1つのさらに別の態様では、考慮される軸の機械的な修正は、考慮される軸の機械フレームコンポーネントの取付け面、または考慮される軸のガイドレールの取付け面、すなわちレール底部または側面、または中間コンポーネント、特にシムプレートまたはシムブロックの取付け面のいずれかにおいて、確定された取付け面修正プロファイルに応じた材料量を除去することにより付与される。
【0031】
本発明の1つの態様では、考慮される軸の機械的な修正は、機械加工、化学加工、熱加工または付加製造のうちの1つにより、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面に付与される。
【0032】
本発明の1つの態様では、考慮される軸の機械的な修正は、レーザ加工により、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面に付与される。
【0033】
本発明の1つの態様では、各機械フレームコンポーネントの相対的な運動のための軸方向運動アセンブリは、リニア軸方向運動アセンブリまたは回転軸方向運動アセンブリである。
【0034】
本発明の1つの態様では、位置決め機械は、工作機械、三次元測定機またはマニピュレータである。本発明は、ワークピースに対する工具の相対的な位置決め、被測定部に対するプローブの相対的な位置決め、外科用ロボットによる外科用器具の相対的な位置決め、組み立てようとする機械に対するグリッパまたは別の端部エフェクタの相対的な位置決め等の、2つ以上の部分を相対的に位置決めするために正確な軸方向運動が必要とされる、あらゆる位置決め機械に適用可能である。位置決め機械の構成は、直列運動式、並列運動式またはハイブリッド運動式であってよい。
【0035】
本発明の別の態様では、位置決め機械は、少なくとも2つの機械フレームコンポーネントと、これらの機械フレームコンポーネントを相対的に運動させるための少なくとも1つの軸方向運動アセンブリとを有しており、少なくとも1つの軸方向運動アセンブリは、複数の軸方向ガイドコンポーネントを有しており、各軸方向ガイドコンポーネントおよび各機械フレームコンポーネントは、取付け面を有しており、位置決め機械は、軸方向ガイドコンポーネントおよび/または機械フレームコンポーネントの取付け面のうちの少なくとも1つが、先行請求項のうちの1つに記載の方法により修正されることを特徴とする。
【0036】
本発明の1つの態様では、取付け面修正プロファイルは、特にガイドレールまたはシムプレート等の、主延在方向を有する軸方向ガイドコンポーネントに合うように、かつこの軸方向ガイドコンポーネントの取付け面の正確かつ効率的な修正を達成するように適合された専用装置を用いて付与される。このような、位置決め機械の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面を機械的に修正するための装置は、軸方向ガイドコンポーネントを取り付けるための取付けテーブル、取付けテーブルにおいて軸方向ガイドコンポーネントを正確に位置決めするための1つ以上の基準部材および/または取付けテーブルに対して軸方向ガイドコンポーネントを固定するための保持手段および/または緊締手段、軸線が取付けテーブルに対して実質的に直交するレーザビームを発生させるレーザユニットを有しており、取付けテーブルとレーザユニットとは、互いに対して軸方向ガイドコンポーネントの軸方向に可動であり、位置決め機械の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面を機械的に修正するための装置はさらに、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面に取付け面修正プロファイルを付与するように、レーザユニットのレーザビームおよびレーザユニットに対する取付けテーブルの相対的な位置を制御するための制御ユニットを有している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下に、本発明および本発明のいくつかの実施形態を例示すると共に添付図面を参照して説明する。
【
図2】
図2a、
図2b、
図2cおよび
図2dは、トラバースの取付け面の幾何学形状的な狂いの測定を示す図である。
【
図3】
図3a、
図3bおよび
図3cは、それぞれ異なる軸方向位置における機械フレームコンポーネントの変向を示す図である。
【
図4】取付け面における修正プロファイルを示す図である。
【
図5】幾何学形状的な欠陥を補正するために必要とされる、取付け面における材料除去を示す図である。
【
図6】算出された、機械フレームコンポーネントの変向を補正するために必要とされる、取付け面における材料除去を示す図である。
【
図7】測定されたシムプレート厚さの狂いを補正するために必要とされる、取付け面における材料除去を示す図である。
【
図8】蓄積された静的誤差を補正するために必要とされる、取付け面における材料除去を示す図である。
【
図9】
図9aおよび
図9bは、転動部材であるリニアガイドを示す図である。
【
図10】狂いの要因および取付け面修正プロファイルを示すチャートである。
【
図12】レーザ加工による機械的な修正のために供与された装置を示す図である。
【
図13】レーザ加工による機械的な修正のために供与された装置を示す図である。
【0038】
明確性のために、最初に本発明において用いるいくつかの用語を説明する。
【0039】
本発明では、「取付け面」という用語は、軸方向のガイドが取り付けられた機械フレームコンポーネントの支持面、つまりガイドの支持面、特にレールの底部または側面および中間コンポーネントの表面を定義するために用いられる。中間コンポーネントは、ガイドレールと機械フレームコンポーネントの取付け面との間に取り付けられた機械コンポーネントである。この中間コンポーネントはシムプレートである。取付け面の寸法は、ガイドレールの底面に実質的に相当する。取付け面は、軸方向運動の真直度にとって重要である。
【0040】
本発明では、ガイド、中間コンポーネント(シム)およびガイドに隣接する、機械フレームコンポーネントの取付け面は、「軸方向ガイドコンポーネント」と定義される。軸方向ガイドコンポーネントは互いに隣り合ってステープルで留められており、共同して軸方向運動精度を決定する。
【0041】
本発明では、「取付け面修正プロファイル」は、取付け面に沿った各位置において除去される材料の量を定義しており、取付け面の機械的な修正の入力情報として用いられる。修正プロファイルは、取付け面に沿って除去される材料の深さを、位置の関数で示す。
【0042】
本発明では、「機械的な修正」という用語は、1つの軸の複数の取付け面のうちの1つの修正を意味する。機械的な修正とは、軸方向に対して垂直な方向での、取付け面における材料の除去(または追加)である。
【0043】
本発明では、「機械モデル」は、機械構造コンポーネントの幾何学形状的な特性および変形特性を表すモデルである。機械モデルは、基準形状における機械フレームコンポーネントの静的な変形量を算出するために用いられる。機械モデルは、例えば使用中の機械アセンブリの機械フレームコンポーネントの変位により確定される、機械フレームの変形量を算出するためにも用いられる。
【0044】
シムは、1つの整合技術であり、構造コンポーネントの所望の誤差を、使用可能な機械加工装置のみによって保証することが不可能な場所において、幾何学形状的な精度を向上させるために、工作機械アセンブリにおいて時々使用される。典型的には、シム手法は、基部に対するクイルの動きの所望の直交性を達成するために採用される。例えば、基部はクイルを支持する支柱を支持している。リニアガイドのキャリッジを取り付けるための支柱の取付け表面は、基部に取り付けられたテーブルに対して直交すべきである。直交性誤差は、薄い箔、すなわちシムプレートを、キャリッジと、支柱におけるキャリッジの取付け面との間に挿入することにより相殺される。これらの箔は、典型的にはシムプレートまたはシム板、または単にシムとして知られた鋼帯材である。
【0045】
次に
図1を参照して、本発明による例示的な位置決め機械の重要な部分を説明する。特定のケースにおいて3軸工作機械である図示の位置決め機械の構造フレーム99は、3つ以上の機械取付け台19により支持されている基部10と、支柱11と、横送り台12と、トラバース13と、クイル15とを有している。これらの機械フレームコンポーネントの間には、複数の対のリニアガイド20,30,40が存在している。これらのガイドは、高精度の直線運動のための成形レールガイド(または直線運動ガイド)である。
図9aに示すように、リニアガイドは主に、成形レール17と、循環転動部材を内蔵するキャリッジ16(またはブロック)とから成っている。機械フレームコンポーネントと各レールとの間には、シムプレート23,33,43が存在している。各軸は、モータ(図示せず)、典型的には直接駆動式の回転モータシステム、ボールねじを備えた回転モータシステムまたはリニアモータを有している。各軸は、位置測定手段、典型的にはガラススケール(図示せず)も有している。さらに図示の工作機械は、機械基部10に取り付けられた固定テーブル3と、固定テーブル3に取り付けられたワークピース2とを有している。特定のケースにおいて工具1である端部エフェクタが、工具ホルダ4によりクイル15に取り付けられている。
【0046】
機械フレームコンポーネント、支柱11、横送り台12、トラバース13およびクイル15は、ガイドレールおよびキャリッジ用の取付け面を有している。個々の機械フレームコンポーネントのこれらの取付け面は、平坦な取付け面14を得るために、フライス切削および研削により所定のように機械加工され、次いで明確に定義された基準形状に対して許容誤差内にあることを確認するために測定される。
図2a~
図2dには、トラバース13の取付け面14の、修正された幾何学形状的なずれ(狂い)を割り出すための個々のステップが示されている。特に
図2aには、ガイドレールを取り付けることを考慮して、取付け面14が機械加工されているトラバース13の基準形状が示されている。より接近し易くするために、トラバース13は3つの支点60上に逆さまに配置されている。実線は、変形していない理想的なフレームコンポーネントを表しているのに対し、破線は、取付け面における、相応する真直度の狂いを伴った変形を誇張して表している。
図2bには、取付け面14における幾何学的な狂いのそのままの測定値、例えば鉛直方向の真直度が示されている。重力および取付け具に対するフレームコンポーネントの向きが、基準形状を規定する。取付け面に沿った真直度は、例えばCMMまたはダイアル表示器を備えた機器を用いて測定される。取付け面14における鉛直方向の真直度測定は、まっすぐな縁部に対して直交方向のずれを提示する。この例示的な取付け面は、凸状領域61と凹状領域62とを含む測定された真直度狂いを有している。
【0047】
所与の基準形状において確定された真直度のずれ(狂い)の一部は、トラバース自体の重さによるトラバースの湾曲に基づく。
図2cに定性的に示された部分は、(トラバースの設計により確定される)トラバースの剛性および特定の基準形状を考慮して、トラバースおよび支点の機械モデル、例えば有限要素モデル(FEM)を用いて算出されている。算出された湾曲は、機械フレームコンポーネントの逆さの向きの配置および支点および/または固定点の位置および剛性を考慮したものである。つまり、個々の機械フレームコンポーネントの取付け面の真直度が基準形状において測定され、次いで測定値が、基準形状において個々の機械フレームコンポーネントが受ける変形を算出することにより修正される。
図2dには、取付け面における修正された真直度狂い、すなわち、
図2bに示した幾何学形状的な狂いの未処理の測定値から、
図2cに示した、算出された湾曲分を引いたものが示されている。念のために述べておくと、
図2a~
図2dに示す図面は、基準形状において、つまり組み立てられた位置決め機械の状態に関して反転させられて示されている。
【0048】
構造フレーム99は、固定テーブル3を備えたオープンフレームであり、この構造体に固有の主な欠点は、Y軸方向に運動中のトラバース13のゆがみである。
図3a、
図3bおよび
図3cは、それぞれ異なる軸方向位置でのトラバースおよび隣接するコンポーネントのゆがみを、定性的に示したものである。実線は、期待される位置において示された工具中心点TCPを伴う、機械フレームコンポーネントの理想的な形状および位置を示しているのに対し、破線は、ずらされた工具中心点TCP’を伴う、コンポーネントの変形を強調して示している。構造的なループの変形は特に、トラバースの軸方向位置に応じて異なって圧縮されるX軸ガイドおよびY軸ガイドの各キャリッジの限定された剛性、およびさらには、その変形がやはりガイドのキャリッジの位置、つまりトラバースの軸方向位置に依存するトラバースの限定された剛性に基づくことが判っている。変形の要因は、主にY方向送り台(トラバース13)自体の重さ、およびY方向送り台により支持されるコンポーネントの重さ、特にZ軸(クイル15)の重さにある。固定基部10および支柱11の変形は僅かである。
図3a、
図3bおよび
図3cに示すように、機械コンポーネントの変形は、主にZ方向でのずれである、TCPの変向または位置的な誤差に反映される。さらに機械コンポーネントのゆがみは、X/Y平面に対するZ軸の垂直性に狂いを生ぜしめる。
【0049】
Y軸方向トラバース13の変形に応じた位置を考慮するために、TCPにおける変位は軸方向の行程に沿って計算される。
図4は、Y軸方向運動中にトラバース13のY軸ガイド用取付け面において観察された変形を修正するために算出された修正プロファイルを、定性的に示すものである。重力、すなわちコンポーネントの重さおよび構造的なループのコンポーネントの剛性に基づく変形に応じた位置の計算は、機械モデル、特に有限要素モデル(FEM)を用いて行われる。好適には、機械アセンブリの全ての構造コンポーネントが、その特性と共に算入される。使用中の状態に近づけるためには、典型的な工具の重さ、例えば工具の最大重量の1/4が、変形算出用に、TCPにおける重さに加えられてよい。FEMモデル用に設定された境界条件は、完全に組み立てられた状態でTCPが水平運動を実行することである。
【0050】
看取されるように、個々の機械フレームコンポーネントのモデルおよび全ての機械フレームコンポーネントと軸方向ガイドコンポーネントとを含むフレーム全体の機械モデルが、個々の機械コンポーネントの測定中にこれらに生じる変形を予測するため、および使用中の個々の機械コンポーネントのアセンブリの変形を予測するために使用される。この知識は、規格部品の製造および機械的な修正のための入力情報を導出するための基礎として役立つ。コンポーネントモデルおよび機械モデルには、機械構造コンポーネントの幾何学形状的な特性および変形特性が含まれている。
【0051】
軸方向ガイドコンポーネントは、適当な測定器具を用いて測定可能な真直度狂い、典型的には鉛直方向および横方向の真直度狂いを有している。ガイドレールは、例えばレールを基準面に取り付け、レールに沿ってキャリッジが運動する間にキャリッジにおける高さ変化を測定すること、または固定基部にキャリッジを取り付け、レールを運動させ、レールにおける高さ変化を測定すること、またはレールに沿って個々のボール軌道の鉛直方向の真直度を測定することにより観察され得る真直度誤差を有している。高さ変化に応じた位置が、ダイアルゲージを用いて測定されるか、または択一的にはサプライヤにより提供される検査プロトコルから導かれる。狂いは主に、レールの幾何学形状誤差に基づくものであり、精度階級に応じて5~50μmの範囲内である。要するに、レールに沿った位置の関数として高さ変化を求め、取付け面修正プロファイルを確定するために算入することができる。
図7は、取付け面に沿って測定されたレールの高さ変化を、増大した厚さを有する取付け面の領域でもって例示する、定性的な図である。
【0052】
ガイドは、(所要の剛性を保証するために)典型的には平行な対として用いられ、その結果得られる軸方向運動の真直度は、幾何学形状作用および弾性作用の平均化に基づき、個別のガイドレールの真直度よりも良好である、ということに留意されたい。よって、Y方向送り台における接触面の平面度は、好適には2つのレールの真直度の組み合わせとして測定される。
【0053】
シムプレート23,33,43のような中間コンポーネントは、
図1に示したように、機械フレームコンポーネントの取付け面と、ガイドレールとの間に挿入され得る。シムは任意のコンポーネントであり、位置決め機械の幾何学的な運動誤差の機械的な修正を容易にするために使用され得る。シムは2つの側面を有しており、本発明では、2つの側面のそれぞれが「取付け面」であり、したがって取付け面修正プロファイルは、シムの各側面のうちの一方に付与され得る。シムは、5μmの範囲内の極めて小さな厚さ変化を有することが想定されている。この場合も、位置の関数としての厚さ変化は測定により明らかにすることができ、取付け面修正プロファイルを確定するために、誤差コンポーネントとして算入することもできる。
【0054】
全ての狂いは、取付け面に沿った位置の関数として得られる。各取付け面に沿った狂いに対する個々の位置の原点は、組み立てられた状態においてこれらが一致するように設定され、これにより、取付け面修正プロファイルを用いて狂いを合計し、まとめられた狂いを修正することが可能になる。
【0055】
図5は、トラバース13の取付け面における、修正された真直度狂いを定性的に示す図、すなわち、測定中に逆さまに向けられた
図2dを反転させた図である。
図6は、トラバース13の取付け面における、算出された修正プロファイルを定性的に示す図、すなわち、
図4を反転させた図である。
図7は、リニアガイドのレールの高さ変化を定性的に示す図である。
【0056】
図5~
図7は、個々の狂いを補正するために取付け面において除去されるべき材料の量を表す定性的な図である。特に
図5の斜線領域は、幾何学形状的な欠陥、正確には
図2dに示した、修正された幾何学形状誤差を相殺するために取付け面において除去されるべき材料の量を表す。
図2aに示したように、トラバース13における取付け面14の基準形状は逆さになっているため、
図5に示す修正プロファイルは、180°だけ回動されている。さらに、
図6に示す斜線領域は、軸方向運動中の機械フレームコンポーネントの算出されたゆがみを相殺するために取付け面において除去されるべき材料の量を表すのに対し、
図7に示す斜線領域は、測定されたシムプレート厚さの狂いを相殺するために取付け面において除去されるべき材料の量を表す。最後に
図8は、合成された狂いを相殺するために取付け面において除去されるべき材料の量、つまり取付け面修正プロファイルを表す定性的な図である。
【0057】
図10は、狂いが生じているコンポーネントの取付け面修正プロファイルを確定する方法およびレーザ加工により所要修正量を除去するためのNCプログラムを作成する方法の概要である。
【0058】
要するに、各軸方向ガイドコンポーネントのうちの1つの取付け面に付与される取付け面修正プロファイルは、各狂いの正しい正負の符号を考慮して、得られた個々の狂いを合算することにより導出される。これは
図8に示したような、機械フレームコンポーネント取付け面の測定された狂いの反転値、軸方向運動に基づく変形を相殺するために算出された修正プロファイル、レールガイドの高さ変化の反転値および取付け面に沿った任意のシムの厚さ変化の反転値の合算を意味する。
【0059】
求められた取付け面修正プロファイルは、例えばレーザ加工による取付け面の機械的な修正用の機械加工プログラムに変換される。機械的な修正は、各取付け面のうちの1つ、例えばガイドレールの底面において実施される。修正は、例えば深さ0.5μm以下の有効範囲内の極めて小さな材料除去増分を可能にする超短パルスレーザを含むレーザ加工装置の使用により、極めて良好な再現性および精度でもって自動的に実施される。取付け面から材料を選択的に除去するために、機械的な削り取りに代えてレーザ源を使用することにより、修正プロセスがより精密、迅速になると共に、一般により効率的になり、コンポーネントが摩耗することはなく、屑を生ぜしめるリスクが低くなる。このようにして、取付け面の機械的な修正を、精密な機構の連続生産に適用することができるようになる。
【0060】
レーザ加工プロセスは、特に取付け面に沿った位置の関数として所定量の材料を除去するという本発明による方法により要求されるような、材料の精密な選択的除去を可能にするため、他の機械加工法以上に好適である。除去される材料の量は比較的少量であり、典型的には深さ30μm未満であるため、この比較的低い除去率は問題とはならない。さらに、これは機械加工流体を必要としない非接触プロセスであり、レーザ加工により処理される取付け面の周囲は影響を受けないままである。
【0061】
それでもなお、機械的な修正は、択一的な加工プロセスを用いて取付け面に付与されてもよい。この加工プロセスは、機械的な加工プロセスまたは化学的な加工プロセスまたは熱的な加工プロセスまたは付加製造プロセスのうちの1つであってよい。例えば、CNC制御式のショットピーニングまたはジェット噴射加工が、上述したレーザ加工に対する代替手段である。
【0062】
機械フレームコンポーネントおよび軸方向ガイドコンポーネントの関連する取付け面は隣り合ってステープルで留められているので、取付け面修正プロファイルは、好適には各コンポーネントのうちの1つのみに付与される。取付け面修正プロファイルは、最も好適にはガイドレールの底面に付与される。なぜならば、レールの寸法は、機械フレームコンポーネントの寸法よりも大幅に小さいからである。このようにして、修正量をレーザ加工するための装置をより一層コンパクトに製造することができ、これらのコンポーネントの取扱いが大幅に容易になる。同様に、取付け面修正プロファイルは、シムプレートまたはシムブロックのような中間コンポーネントに付与されてもよい。これらのコンポーネントは、レールと同じ利点をもたらすと共に、より一層扱いやすい。ただし、取付け面修正プロファイルを、機械フレームコンポーネントにおける取付け面に付与することも可能である。
【0063】
好適には、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面の少なくとも一方の面は、レーザシステムにより、例えばシンボルまたはテキスト(文字データ)でもってマーキングされている。このようにして、連続的なアセンブリにおいて、軸方向ガイドコンポーネントの取付け方向をうっかりと反転させる危険が防止される。
【0064】
最後に、取付け面が修正された軸方向ガイドコンポーネントまたは機械フレームコンポーネントを含む位置決め機構が組み立てられる。次いで、組み立てられた位置決め機構は、この位置決め機構が想定した運動精度を満たすことを証明するために、TCPにおける測定を実行することにより検査される。この手順では、例外的な場合にのみ、追加的なループが必要とされることがある。
【0065】
次に、位置決め機械の製造における本発明の方法の実施を、
図11を参照して説明する。構造的な機械コンポーネントの幾何学形状的な特性および変形特性を表す機械モデルを製作する。この「機械モデル」は、個々の機械フレームコンポーネントの変形と、軸方向運動を伴う構造フレームの変形に基づくTCPにおける狂いとを導出し、取付け面において必要とされる相殺を確定するために用いられる。個々のフレームコンポーネントは、「規格部品製造」において機械加工され、特定の基準形状において実施される「部品測定」において測定される。測定は、取付け面の目標幾何学形状に対する実際の幾何学形状の狂いを規定する。「修正計算」には、機械フレームコンポーネントの修正された測定値を導くための、基準形状における湾曲の計算、および軸方向運動に基づく変形の修正、取付け面の機械的な修正用の入力情報として用いられる取付け面修正プロファイルの形成が含まれる。「機械的な修正」は、取付け面修正プロファイルに応じて、レーザ加工により、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面に付与される。次いで「機械構造体の完全組立」のステップにおいて位置決め機械を組み立て、与えられた取付け面修正プロファイルでもってTCPにおける軸方向運動精度を確定するために、「TCP測定」を実施する。
【0066】
位置決め機械の製造における本発明の方法の使用は、製品基本動作精度の一貫した向上につながり、特に真直度の狂いおよび回転動作の誤差を減らす。好適には、製造プロセスは統計的工程管理(SPC)により監視される。全ての位置決め機構の測定値が、系統的な狂いを割り出すために集められて分析され、次いでこれらの狂いは、取付け面修正プロファイルひいては位置決め機構の運動精度をさらに改良するために修正され得る。
【0067】
本発明において開示する機械的な修正法に追加して、数値補正のような別の修正法が周知のように加えられてもよい。機械の幾何学形状的な狂いは、組み立てられた機械における測定により確定され、次いで測定された狂いは、機械精度をさらに向上させるために、数値補正用に用いられる。
【0068】
軸方向ガイドコンポーネントの取付け面に沿った材料除去による、取付け面修正プロファイルの付与は、一般的なレーザ加工機、典型的にはレーザテクスチャ加工機を用いて行われてよい。取付け面修正プロファイルを付与するこの方法は、典型的には極めて大型でありかつ典型的には間隔をあけられた2つの平行な取付け面を有する機械フレームコンポーネントの取付け面の修正に適している。ただし、加工対象、例えばガイドレールの底面は、取付け面の主延在方向に沿って少量の材料が除去されることを特徴とするのに対し、市販のレーザテクスチャ加工機は、典型的には2D、2.5Dまたは3D物体に適応するように設計されている。この場合、このような市販のレーザテクスチャ加工機の機械加工範囲(容積)は、不必要に大きい。軸方向ガイドコンポーネントの取付け面の主延在方向は、軸方向に相当する。例えばレールの底面またはシムプレートの表面は、
図9bに示したように、典型的には1つの主延在方向を有している。よって、軸方向ガイドコンポーネントの1つの取付け面を機械的に修正するための装置は、好適には特定の目的に適合されている。
【0069】
図12に示す実施形態は、位置決め機械の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための専用装置100を表している。この装置100は、ガイドレール17またはシムプレートを取り付けるための取付けテーブル105、取付けテーブル上で軸方向ガイドコンポーネントを正確に位置合わせするための1つ以上の基準ピン121,122またはストッパおよび/または取付けテーブルに対して軸方向ガイドコンポーネントを固定するための保持手段および/または緊締手段(図示せず)、レーザ源および反照検流計(両方共図示せず)を含むレーザユニット111を有しており、レーザユニットは、軸線が取付けテーブル105に対して実質的に直交するレーザビーム112を生ぜしめ、取付けテーブル105およびレーザユニット111は、軸方向ガイドコンポーネントの軸方向において互いに対して可動であり、さらに装置100は、レーザユニット111のレーザビーム112と、レーザユニット111に対する取付けテーブル105の相対的な位置とを、軸方向ガイドコンポーネントに取付け面修正プロファイルが付与されるように制御する、制御ユニット(図示せず)を有している。
【0070】
専用修正装置100のテーブル105は、固定基部に取り付けられており、水平方向のX軸に沿って可動である。専用修正装置のこの水平方向の軸の行程は、加工される軸方向ガイドコンポーネントの表面全体をカバーする。専用修正装置は、固定基部に取り付けられた支柱102、およびこの支柱102に取り付けられた鉛直方向のZ軸110を有している。Z軸は、レーザユニット111と、任意には、例えば光学手段またはタッチプローブを含む測定ユニット(図示せず)とを支持している。装置100は単純である。それというのも、装置100は実質的に2つの直線的な軸、すなわち、5~50mmの範囲内の極めて短い行程を有するZ軸、および取り付けられる全てのガイドレールまたはシムプレートに適応するために長い行程を有するX軸を有しているからである。
【0071】
次に、専用修正装置100により取付け面修正プロファイルを付与するプロセスを例示的に説明する。長さL=1050mm、幅W=34mmおよび厚さH=30mmを有するリニアガイドのレールを、その取付け面を上にして逆さまに、修正装置100の取付けテーブル105に正確に取り付ける。レールは、頂部が前記取付けテーブル105上の第1の基準ピン121に当接して、レール17の原点を確定し、かつ横方向では2つの追加的な基準ピン122に当接して、レール17の横方向位置を確定すると共に、レールとテーブル105のX方向運動とを整合させる。レーザユニット111の鉛直方向位置は、レール17の高さに応じてZ軸110を位置決めすることにより調整される。修正プログラムが開始され、これによりテーブル105はレールの原点に位置決めされ、次いで取付け面修正プロファイルに応じた材料の量が、レールから自動的に除去される。検流計スキャナは、取付け面の規定された領域を段階的かつ層毎に処理し、かつ追加的な横方向での軸運動無しで、取付け面の幅全体をカバーするために必要な自由度を提供する。
【0072】
図13に示す別の実施形態では、位置決め機械の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面の幾何学的な運動誤差を機械的に修正するための装置200は、ガイドレール17を支持しかつガイドするための複数の支持ロール225を備えた基部201、加工される領域においてレールを正確に支持するためのキャリアロール220、レールを制御して送るための2つの摩擦式フィードロール221および222を有している。キャリアロールは、レール位置フィードバックを供給するためのエンコーダを有していてよい。専用修正装置は、固定基部に取り付けられた支柱202、およびこの支柱202に取り付けられた鉛直方向のZ軸210を有している。Z軸は、レーザユニット211と、任意には測定ユニット(図示せず)とを支持している。レーザユニット211の鉛直方向位置は、レール17の高さに応じてZ軸210を位置決めすることにより調整される。修正プログラムが開始され、これにより摩擦式フィードロール221および222がレールを進めると共にレールの位置を制御する一方で、レーザビーム212が、取付け面修正プロファイルに応じた材料の量を除去する。
【0073】
上述した、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面を機械的に修正するための装置100,200は、取付け面とレーザユニットとを相対的に位置決めするために制御される送り軸を、実質的に1つだけ有していてよく、したがって、コンパクトで、一般的な機械よりも正確かつ低価格である、という利点を有している。
【0074】
位置決め機械の軸方向ガイドコンポーネントの取付け面を機械的に修正するための装置100,200はさらに、軸方向ガイドコンポーネントの装着および取出し、寸法および位置の測定、軸方向ガイドコンポーネントの取付け面の初期測定および最終測定等を含む自動化手段を有していてよい。
【0075】
本発明を、典型的な幾何学的な運動誤差、つまりトラバースにおける鉛直方向の真直度狂いのケースを図示して説明してきた。本発明による機械的な修正のための方法は、他の幾何学的な運動誤差、特に横方向の真直度狂いを修正するためにも使用され得る。この場合、横方向の取付け面修正プロファイルもやはり、個々の狂いの要因を確定しかつこれらの要因をまとめることにより確定される。横方向の取付け面修正プロファイルは、ガイドレールの側面または対応する、機械フレームコンポーネントの取付け面またはシムに付与され得る。
【0076】
機械フレームコンポーネントは、典型的にはガイドレールが取り付けられる各軸に関して、間隔をあけられた2つの平行な取付け面を有している。よって、
図2a~
図2dを参照して説明したフレームコンポーネントの取付け面における個々の真直度測定および個別の補正に対して択一的に、機械フレームコンポーネントの取付け面における真直度を個別に測定し組み合わせて、フレームコンポーネント取付け面における平面度を確定すると共に、確定した平面度を考慮して、間隔をあけられた2つの平行な取付け面に適合する取付け面修正プロファイルを確定することもできる。
【0077】
本発明を詳細に図示して前記説明において説明してきた一方で、このような図示および説明は実例的または例示的なものであり、限定的なものではないと見なされる。以下の請求項の範囲内で、当業者による変更および修正が行われてもよいということを理解されたい。特に、本発明は上述および後述のそれぞれ異なる実施形態の特徴のあらゆる組合せを有する別の実施形態をもカバーする。
【符号の説明】
【0078】
TCP 工具中心点
1 工具
2 ワークピース
3 テーブル
4 工具ホルダ
10 基部
11 支柱
12 横送り台
13 トラバース
14 トラバースにおける取付け面
15 クイル
16 ガイドキャリッジ
17 ガイドレール
19 機械取付け台
20 X軸ガイド
21 X軸キャリッジ
22 X軸レール
23 X軸シム
30 Y軸ガイド
31 Y軸キャリッジ
32 Y軸レール
33 Y軸シム
40 Z軸ガイド
41 Z軸キャリッジ
42 Z軸レール
43 Z軸シム
60 測定用の支点
61 凸状の真直度狂い
62 凹状の真直度狂い
99 構造フレーム
100,200 レーザ加工による機械的な修正のための装置
101,201 機械的な修正のための装置の基部
102,202 機械的な修正のための装置の支柱
110,210 機械的な修正のための装置のZ軸
111,211 レーザユニット
112,212 レーザビーム
121,122 基準ピン
105 機械的な修正のための装置のテーブル
220 機械的な修正のための装置のキャリアロール
221,222 機械的な修正のための装置の摩擦式フィードロール
225 機械的な修正のための装置の支持ロール