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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】一体型排気熱回収装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 5/02 20060101AFI20240312BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20240312BHJP
【FI】
F01N5/02 C
F01N13/08 B
F01N5/02 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020009237
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116712
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】大上 裕久
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126124(WO,A1)
【文献】特開2007-085266(JP,A)
【文献】特開2008-190439(JP,A)
【文献】中国実用新案第207131471(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F01N 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンからの排ガスの流路に配置される一体型排気熱回収装置であって、
前記排ガスの浄化装置を配置可能なケース部材と、
前記浄化装置を通過した前記排ガスを流下させる流路を囲む縮小部と、
前記縮小部の下流側の開口である出口から軸方向に延び、前記出口から流出した前記排ガスの流路を形成する配置部と、
前記排ガスと流体との熱交換を行うため、前記流体の流路である熱交換流路が内部に形成された部材であって、前記配置部の側方で、前記配置部を囲むように、前記軸方向に沿って並んで配置される部材である複数のプレートと、
前記複数のプレートよりも下流側の位置であって前記配置部の側方の位置から、前記配置部よりも下流側の位置まで延びる筒状の部位である外側部と、
前記配置部を囲むように前記外側部の側方に広がり、前記複数のプレートの下流側に位置する仕切り部と、
前記外側部の下流側の開口を開閉することで、前記浄化装置を通過した前記排ガスの進路を切り替えるよう構成されたバルブ部と、
前記複数のプレートを囲む外殻部材と、を備え、
前記複数のプレートの各々は、扁平な円環状の形状であると共に、円錐状であり、厚さ方向に対面する2つの面を有し、隣接する2つの前記プレートは、前記面が対面するように並び、
前記縮小部における少なくとも前記出口を含む部分は、前記出口に向かうに従い前記排ガスの流路の幅が狭くなるように、前記軸方向に直交する基準面に対し傾斜しており、
前記縮小部の少なくとも前記出口を含む部分における、軸線を含み且つ前記軸線に平行な断面と、前記複数のプレートの前記断面と、前記仕切り部の前記断面とは、略平行に広がり、前記軸線とは、前記縮小部の前記出口の中心を通過し、前記軸方向に延びる線である
一体型排気熱回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載された一体型排気熱回収装置であって、
前記ケース部材の下流側の開口と、前記縮小部における上流側の開口との間の前記排ガスの流路を囲む第1接続部材をさらに備える
一体型排気熱回収装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された一体型排気熱回収装置であって、
前記外殻部材の下流側の開口と、前記一体型排気熱回収装置の下流側にて前記排ガスの流路を形成する下流側部材における上流側の開口との間の前記排ガスの流路を囲む第2接続部材をさらに備える
一体型排気熱回収装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載された一体型排気熱回収装置であって、
前記複数のプレートの各々は、前記熱交換流路に沿って延び、前記熱交換流路を間に挟んで当該プレートの厚さ方向に沿って対面する第1及び第2部材を有し、
前記第1及び第2部材の各々は、
円環状の本体部と、
前記本体部の内周側に位置し、前記プレートの内周縁に沿って延びる内側縁部と、
前記本体部の外周側に位置し、前記プレートの外周縁に沿って延びる外側縁部と、
を有し、
前記第1部材の前記内側縁部と前記第2部材の前記内側縁部とが接合されており、
前記第1部材の前記外側縁部と前記第2部材の前記外側縁部とが接合されている
前記内側縁部は、当該内側縁部を含む前記プレートにおける前記第1及び第2部材の前記本体部と、略平行に広がるか、又は、略同一平面上に広がり、
前記外側縁部は、当該外側縁部を含む前記プレートにおける前記第1及び第2部材の前記本体部と、略平行に広がるか、又は、略同一平面上に広がる
一体型排気熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の排ガスを浄化する浄化装置と、排ガスの熱を回収する排気熱回収装置とを一体化させ得る一体型排気熱回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている一体型排気熱回収装置は、排ガスの浄化装置の下流側に位置する部位であって、下流に向かうに従い縮径するテーパ状の部位である接続部と、接続部の出口から下流側に真っ直ぐに延びるパイプ状の集合部とを備える。また、集合部の側方を囲む複数のプレートが設けられており、各プレートには、エンジンの冷却液の流路が形成されている。また、集合部の出口の下流側には、バルブが設けられている。
【0003】
浄化装置を通過し、有害物質が除去された排ガスは、接続部を経て集合部に流入した後、集合部の出口に到達する。そして、バルブが閉鎖されている場合には、集合部の出口から流出した排ガスは、集合部の側方に流出して複数のプレートへと向かう。その後、排ガスが複数のプレートと接触することで、排ガスと、複数のプレートを流れるエンジンの冷却液との間で熱交換が行われ、排ガスの熱が回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2017/126124
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、特許文献1の一体型排気熱回収装置では、各プレートは、排ガスの流下方向に対し直交する向きに配置されている。また、テーパ状の接続部は、下流側に向かうに従い縮径する傾斜部を有すると共に、傾斜部の下流側の端部には、出口を囲むように、排ガスの流下方向に直交する平面部が設けられている。そして、該平面部が、最上流側のプレートを支持する。
【0006】
しかしながら、接続部における傾斜部と最上流側のプレートとの間に余分な隙間が生じており、一体型排気熱回収装置の小型化が妨げられていた。また、接続部における出口周辺の平面部により、排ガスのスムーズな流れが妨げられていた。
【0007】
本開示の一態様においては、排ガスをスムーズに流下させつつ、装置を小型化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車両のエンジンからの排ガスの流路に配置される一体型排気熱回収装置であって、ケース部材と、縮小部と、配置部と、複数のプレートと、バルブ部と、外殻部材とを備える。ケース部材は、排ガスの浄化装置を配置可能である。縮小部は、浄化装置を通過した排ガスを流下させる流路を囲む。配置部は、縮小部の下流側の開口である出口から軸方向に延び、出口から流出した排ガスの流路を形成する。複数のプレートは、排ガスと流体との熱交換を行うため、流体の流路である熱交換流路が内部に形成された部材であって、配置部の側方で、配置部を囲むように、軸方向に沿って並んで配置される部材である。バルブ部は、浄化装置を通過した排ガスの進路を切り替えるよう構成されている。外殻部材は、複数のプレートを囲む部材である。そして、縮小部における少なくとも出口を含む部分は、出口に向かうに従い排ガスの流路の幅が狭くなるように、軸方向に直交する基準面に対し傾斜している。また、複数のプレートの各々は、縮小部に沿って、基準面に対し傾斜するように配置される。
【0009】
上記構成によれば、縮小部と複数のプレートとが傾斜を有しているため、縮小部とプレートとの間に余分な隙間が生じるのを抑制でき、一体型排気熱回収装置の小型化を図ることができる。また、該傾斜により、縮小部及び各プレート同士の隙間を流下する排ガスの流れをスムーズにすることができる。また、複数のプレートが基準面に沿って広がる場合に比べ、一体型排気熱回収装置の幅を増加させることなく、複数のプレートにおける排ガスと接触する部分の面積を増加させることができ、その結果、排ガスから回収される熱量が増加し得る。これにより、排ガスからの熱回収の性能を落とすこと無く、プレートの数を低減したり、各プレートを小型化したりすることが可能となり、これにより、一体型排気熱回収装置の長さや幅を短縮可能となる。したがって、排ガスをスムーズに流下させつつ、一体型排気熱回収装置を小型化することができる。
【0010】
なお、バルブ部は、複数のプレートよりも下流側に位置する。
上記構成によれば、排ガスを好適に複数のプレートに誘導できる。
また、複数のプレートの各々は、円環状であっても良い。
【0011】
上記構成によれば、複数のプレートの隙間や、複数のプレートの周辺における排ガスの流れが均一化するよう促すことができる。このため、排ガスと流体との間の熱交換の効率が向上し得る。
【0012】
また、一体型排気熱回収装置は、ケース部材の下流側の開口と、縮小部における上流側の開口との間の排ガスの流路を囲む第1接続部材をさらに備えても良い。
上記構成によれば、第1接続部材の構成を変更することで、異なるサイズのケース部材と縮小部とを接続できる。このため、例えば、一体型排気熱回収装置が搭載される車両に応じて、ケース部材のサイズに変更が生じた場合であっても、排気熱回収装置として機能する縮小部、配置部、複数のプレート、バルブ部、及び外殻部材等の変更が不要となり得る。同様に、排気熱回収装置として機能する部位に変更が生じた場合であっても、ケース部材の変更が不要となり得る。したがって、一体型排気熱回収装置の開発又は製造に要するコストを抑制できる。
【0013】
また、一体型排気熱回収装置は、外殻部材の下流側の開口と、一体型排気熱回収装置の下流側にて排ガスの流路を形成する下流側部材における上流側の開口との間の排ガスの流路を囲む第2接続部材をさらに備えても良い。
【0014】
上記構成によれば、第2接続部材の構成を変更することで、異なるサイズの外殻部材と下流側部材とを接続できる。このため、例えば、一体型排気熱回収装置が搭載される車両に応じて、下流側部材のサイズが変更された場合であっても、排気熱回収装置として機能する部位やケース部材の変更が不要となり得る。したがって、一体型排気熱回収装置の開発又は製造に要するコストを抑制できる。
【0015】
また、複数のプレートの各々は、熱交換流路に沿って延び、熱交換流路を間に挟んで当該プレートの厚さ方向に沿って対面する第1及び第2部材を有しても良い。また、第1及び第2部材の各々は、プレートの内周縁に沿って延びる内側縁部と、プレートの外周縁に沿って延びる外側縁部とを有しても良い。そして、第1部材の内側縁部と第2部材の内側縁部とが接合され、第1部材の外側縁部と第2部材の外側縁部とが接合されていても良い。
【0016】
上記構成によれば、プレートを容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一体型排気熱回収装置を側面視した断面図である。
図2】一体型排気熱回収装置の複数のプレートにおける入口部材及び出口部材が設けられた部分を側面視した断面図である。
図3】プレートにおける下流側の部分の正面図である。
図4】プレートにおける熱交換流路に直交する断面図である。
図5】プレートにおける熱交換流路に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0019】
[1.全体の構成]
本実施形態の一体型排気熱回収装置1は、エンジンを有する車両に搭載される(図1参照)。また、一体型排気熱回収装置1は、エンジンの排ガスを浄化する浄化装置20と、排ガスの熱を回収する排気熱回収装置3とを一体化させる装置であり、排ガスの流路に配置される。具体的には、一体型排気熱回収装置1は、ケース部材2と、排気熱回収装置3とを備える。
【0020】
[2.ケース部材]
ケース部材2は、内部に排ガスの流路が形成されていると共に、該流路に排ガスの浄化装置20を配置可能なパイプ状の部材である。ケース部材2は、一例として、軸方向10に延び、入口部21と、本体部22とを備える(図1参照)。
【0021】
入口部21は、ケース部材2への排ガスの入口を形成すると共に、該入口から流入した排ガスを本体部22へと誘導する筒状の部位である。入口部21は、下流側に向かうに従い拡径されている。
【0022】
本体部22は、浄化装置20を配置可能な筒状の部位である。ここで、浄化装置20は、例えば、円柱状の触媒であっても良い。具体的には、触媒とは、例えば、軸方向10に延びる排ガスの流路が内部に多数形成されており、これらの流路を通過する排ガスを酸化及び/又は還元させることで、排ガスを浄化するよう構成されていても良い。より詳しくは、触媒とは、例えば、排ガスに含まれる一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、又は、炭化水素(HC)等の物質を酸化させる酸化触媒であっても良い。また、触媒とは、例えば、排ガス中のNOxを還元するSCR触媒(Selective Catalytic Reduction)であっても良い。この他にも、浄化装置20は、例えば、排ガスのPM(粒子状物質)を補足して燃焼させる円柱状のフィルタであっても良い。
【0023】
[3.排気熱回収装置]
排気熱回収装置3は、ケース部材2の下流側に配置されており、高温の排ガスの熱を回収し、エンジンの冷却液に伝達する。なお、冷却液とは、例えば、冷却水又は油液等の流体であっても良い。具体的には、排気熱回収装置3は、ケース部材2の下流側に排ガスの流路を形成しており、該流路を通過する排ガスと冷却液との熱交換を行う。排気熱回収装置3は、縮小部30と、配置部33と、外側部36と、仕切り部38と、外殻部材46と、バルブ部4と、複数のプレート5と、第1及び第2接続部材48、49と、を備える。
【0024】
[4.縮小部]
縮小部30は、浄化装置20(換言すれば、ケース部材2)の下流側に設けられており、浄化装置20を通過した排ガスを流下させる流路を囲む壁状の部位である(図1、2参照)。また、縮小部30は、下流に向かうに従い排ガスの流路の幅が狭くなる。以後、縮小部30の上流側の開口を入口31、縮小部30の下流側の開口を出口32とする。
【0025】
より詳しくは、縮小部30は、少なくとも出口32を含む部分が、出口32に向かうに従い排ガスの流路の幅が狭くなるように、軸方向10に直交する面(以後、基準面11)に対し傾斜するように広がる(図1、2参照)。本実施形態では、縮小部30は、一例として、軸方向10に延びるテーパ状に形成されており、入口31の中心から出口32の中心に延びる軸線13の方向は、軸方向10と略一致する。また、縮小部30は、一例として、入口31から出口32に至るまでの全区間が、基準面11に対し略一定の勾配を有する。なお、縮小部30における勾配は、適宜定められる。
【0026】
また、縮小部30の入口31は、継手状の部位である第1接続部材48を介して、ケース部材2における下流側の開口である出口23に接続される。具体的には、第1接続部材48とは、ケース部材2、縮小部30、及び外殻部材46とは別部材として構成された、ケース部材2の出口23と縮小部30の入口31との間の排ガスの流路を囲む壁状の部材である。第1接続部材48は、上流側の端部がケース部材2における出口23を囲む縁部に接合され、下流側の端部が縮小部30の入口31を囲む縁部に接合される。なお、例えば、第1接続部材48の下流側の端部を、外殻部材46の上流側の開口を囲む縁部に接合することで、縮小部30の入口31とケース部材2の出口23とを接続しても良い。
【0027】
[5.配置部]
配置部33は、縮小部30の出口32から軸方向10に略真っ直ぐに延び、出口32から流出した排ガスの流路を形成する(図1、2参照)。配置部33は、一例として、筒状に形成されている。以後、配置部33における上流側の開口と、下流側の開口とを、それぞれ、入口34、出口35と記載する。また、以後、軸方向10に直交する断面を、単に断面と記載する。配置部33の断面の中心は、軸線13の位置と略一致する。
【0028】
[6.外殻部材]
外殻部材46は、配置部33の外周面、及び、縮小部30の外周面を囲む壁状の部位である(図1、2参照)。本実施形態では、外殻部材46は、一例として、筒状の部材として形成されており、外殻部材46の断面の中心は、軸線13の位置と略一致する。また、配置部33は、外殻部材46の断面の略中央に位置する。外殻部材46は、上流側の開口を囲む縁部が、縮小部30の外周面における入口31付近の部分に接合されており、外殻部材46は、該部分から軸方向10に延びる。
【0029】
また、外殻部材46は、配置部33の外周面から離間した状態で配置され、外殻部材46と配置部33との間には、熱交換室42が形成される。熱交換室42は、配置部33の側方を囲み、縮小部30の下流側に隣接する。なお、熱交換室42の詳細については、後述する。
【0030】
また、外殻部材46の下流側の開口である出口47は、第2接続部材49を介して、下流側部材12の上流側の開口である入口に接続される。なお、下流側部材12とは、一体型排気熱回収装置1の下流側にて排ガスの流路を形成するパイプ状の部材であり、排気熱回収装置3を通過した排ガスは、下流側部材12に流入する。
【0031】
具体的には、第2接続部材49とは、外殻部材46及び下流側部材12とは別部材として構成され、外殻部材46の出口47と下流側部材12の入口との間の排ガスの流路を囲む壁状の部材であり、一例として、テーパ状に形成されている。また、第2接続部材49は、上流側の端部が外殻部材46における出口47を囲む縁部に接合され、下流側の端部が下流側部材12の入口を囲む縁部に接合される。
【0032】
[7.外側部及び仕切り部]
外側部36は、配置部33の外周面を外側から囲むように配置される。本実施形態では、外側部36は、一例として、軸方向10に延びる筒状の部位として形成される(図1、2参照)。外側部36は、縮小部30から離間して配置される。また、外側部36は、配置部33の出口35の周辺に配置されており、配置部33から離間している。つまり、外側部36と配置部33の外周面との間には、配置部33を囲むように広がる隙間が形成されている。該隙間は、外側部36の上流側に位置する熱交換室42に連通する入口流路43を形成する。
【0033】
仕切り部38は、外側部36の上流側の開口を囲む縁部から、外殻部材46に向かって広がる壁状の部位である。仕切り部38は、配置部33の外周面を囲むように広がっており、熱交換室42を下流側から塞ぐ。また、仕切り部38の外周縁と外殻部材46との間には隙間が形成され、該隙間は、熱交換室42に連通する出口44を形成している。
【0034】
また、仕切り部38は、熱交換室42を挟んで縮小部30と対面しており、縮小部30と同様にして基準面11に対して傾斜する。本実施形態では、上述したように、縮小部30はテーパ状に形成されており、仕切り部38もまた、縮小部30と同様に傾斜したテーパ状に形成されている。つまり、仕切り部38は、縮小部30に対し略平行に広がる。
【0035】
[8.複数のプレート]
複数のプレート5は、熱交換室42に配置され、排ガスと冷却液との熱交換を行う熱交換器を形成する(図1~3参照)。各プレート5は、閉路に沿って延び、幅が略一定の扁平な帯状の部材である。各プレート5には、冷却液を流下させる熱交換流路50が形成されており、熱交換流路50は、プレート5を周回するように延びる。なお、各プレート5は、同様の構成を有している。
【0036】
複数のプレート5は、隣り合うプレート5との間に隙間を有しながら、軸方向10に沿って並んで熱交換室42に配置される。また、最上流側のプレート5と縮小部30との間と、最下流側のプレート5と仕切り部38との間には、それぞれ、隙間が形成されている。また、各プレート5は、配置部33の側方で、配置部33を囲むように配置される。
【0037】
また、各プレート5は、縮小部30及び仕切り部38に沿って基準面11に対し傾斜するように設けられる(図1、2参照)。換言すれば、各プレート5は、内周縁が外周縁よりも軸方向10に突出するように傾斜している。本実施形態では、一例として、各プレート5は、円環状に形成されている(図3参照)。一方、縮小部30及び仕切り部38は、テーパ状に形成されている。このため、各プレート5もまた、縮小部30及び仕切り部38と同様に傾斜するテーパ状に形成されている。
【0038】
また、各プレート5の外周縁には、熱交換流路50への冷却液の入口51と、熱交換流路50からの冷却液の出口52とが設けられている(図2参照)。入口51及び出口52は、プレート5の中心を挟んで対面する。そして、複数のプレート5は、各入口51及び各出口52が、それぞれ、軸方向10に沿って並ぶように配置される。
【0039】
また、複数のプレート5における各入口51には、冷却液を各プレート5の熱交換流路50に流入させる入口部材53が接続されている。入口部材53には、冷却液が流入する入口が形成されており、該入口は、各プレート5の入口51に連通する。一方、複数のプレート5における各出口52は、各プレート5の熱交換流路50の冷却液を流出させる出口部材54が接続されている。出口部材54は、冷却液を流出させる出口が形成されており、該出口は、各プレートの出口52に連通する。
【0040】
入口部材53及び出口部材54は、それぞれ、外殻部材46に形成された開口を介して外部に突出するように配置され、入口部材53の入口、及び、出口部材54の出口は、外殻部材46の側方に向かって開口する。そして、冷却液は、入口部材53の入口を介して各プレート5の入口51に流入し、各熱交換流路50を流下する。その後、冷却液は、各熱交換流路50の出口52に到達すると、出口部材54の出口を通過して外部に流出する。
【0041】
[9.バルブ部]
バルブ部4は、浄化装置20(より詳しくは、配置部33)を通過した排ガスが複数のプレート5に向かうよう、該排ガスの進路を切り替えるよう構成されている(図1、2参照)。具体的には、バルブ部4は、複数のプレート5(より詳しくは、配置部33)の下流側に位置する外側部36の出口37を開閉する。バルブ部4は、弁体40と、緩衝材41とを備える。
【0042】
弁体40は、出口37の周辺に設けられた回転軸を中心に回転することで、閉位置40a又は開位置40bへと変位し、外側部36の出口37を開閉する。弁体40は、例えば、バネ等の弾性部材、又は、アクチュエータ等により駆動される。
【0043】
具体的には、閉位置40aとは、弁体40が出口37を塞ぐ位置である。一方、開位置40bとは、出口37の側方の位置であり、開位置40bにある弁体40は、出口37から離間する。そして、バルブ部4が出口37を閉鎖する場合には、弁体40は開位置40bから閉位置40aに変位し、バルブ部4が出口37を開放する場合には、弁体40は閉位置40aから開位置40bに変位する。
【0044】
緩衝材41は、弁体40が外側部36の出口37を閉鎖する際の衝撃を緩和するために設けられる。緩衝材41は、例えば、ワイヤメッシュ等から構成されており、出口37を囲むように配置部33の外周面に設けられる。なお、外側部36における緩衝材41が設けられた部分は、下流に向かうに従い縮径している。
【0045】
バルブ部4により外側部36の出口37が閉鎖されている場合には、排ガスは、出口37に到達すると、閉位置40aにある弁体40に衝突し、進路を反転する。そして、排ガスは、配置部33の出口35の側方に流出して入口流路43に流入し、入口流路43を軸方向10の反対方向に流下して熱交換室42に流入する。その後、熱交換室42に流入した排ガスは、プレート5に接触ながら熱交換室42の外周側へと流下する。より詳しくは、排ガスは、プレート5間の隙間、プレート5と縮小部30との間の隙間、又は、プレート5と仕切り部38との間の隙間を通過して、熱交換室42の外周側(換言すれば、外殻部材46側)へと流下する。この時、排ガスの熱が各プレート5内の熱交換流路50を流れる冷却液に伝達される。
【0046】
そして、排ガスは、外殻部材46に到達すると、外殻部材46に沿って軸方向10に向かって流下し、出口44を通過して熱交換室42の外部に流出する。その後、該排ガスは、第2接続部材49を通過して下流側部材12に流入する。
【0047】
一方、バルブ部4により外側部36の出口37が開放されている場合には、配置部33を通過した排ガスは、出口37を通過し、その後、第2接続部材49を通過して下流側部材12に流入する。
【0048】
[10.各プレートの構造]
各プレート5は、扁平な当該プレート5の厚さ方向に沿って対面する第1及び第2部材6、7を備える(図3~5参照)。第1及び第2部材6、7は、円環状であると共に、テーパ状に形成されており、プレート5の熱交換流路50に沿って延びる。また、第1及び第2部材6、7との間に、熱交換流路50が形成される。また、第1部材6は、仕切り部38側(換言すれば、下流側)に位置し、第2部材7は、縮小部30側(換言すれば、上流側)に位置する。
【0049】
第1部材6は、内側縁部60と、外側縁部61と、本体部62とを備える。一方、第2部材7は、内側縁部70と、外側縁部71と、本体部72とを備える。
第1部材6の内側縁部60は、第1部材6の内周縁の全域に形成され、内周縁に沿って延びる帯状の部位である。また、外側縁部61は、第1部材6の外周縁の全域に形成され、外周縁に沿って延びる帯状の部位である。また、内側縁部60と外側縁部61との間に、熱交換流路50に沿って延びる円環状の本体部62が形成される。
【0050】
一方、第2部材7の内側縁部70は、第2部材7の内周縁の全域に形成され、内周縁に沿って延びる帯状の部位である。また、外側縁部71は、第2部材7の外周縁の全域に形成され、外周縁に沿って延びる帯状の部位である。また、内側縁部70と外側縁部71との間に、熱交換流路50に沿って延びる円環状の本体部72が形成される。
【0051】
そして、第1部材6の内側縁部60は、第2部材7の内側縁部70と対面して配置され、これらの内側縁部60、70が接合される。また、第1部材6の外側縁部61は、第2部材7の外側縁部71と対面して配置され、これらの外側縁部61、71が接合される。この時、第1及び第2部材6、7の本体部62、72は、離間した状態となり、本体部62、72の間に熱交換流路50が形成される。
【0052】
より詳しくは、本実施形態では、第1部材6は、本体部62の内周縁と外周縁との各々から厚さ方向に突出する壁状の部位である内側壁部63と外側壁部64とをさらに備える(図4参照)。そして、内側縁部60は、内側壁部63における第2部材7側の端部から、熱交換流路50の外側に突出し、外側縁部61もまた、外側壁部64における第2部材7側の端部から、熱交換流路50の外側に突出する。一方、第2部材7では、内側縁部70、外側縁部71、及び本体部73は、面一に配置されている。つまり、第1部材6に設けられた内側壁部63及び外側壁部64により、第1及び第2部材6、7の本体部62、72同士が離間される。
【0053】
無論、これに限らず、第1部材6に替えて、第2部材7に内側壁部及び外側壁部を設けるようにしても良い。
また、例えば、第1部材6における本体部62の内周縁に内側壁部63を形成すると共に、本体部62と外側縁部61とを面一となるように配置しても良い(図5参照)。また、第2部材7における本体部72の外周縁に外側壁部74を形成すると共に、本体部72と内側縁部70とを面一となるように配置しても良い。つまり、第1部材6の内側壁部63と、第2部材7の外側壁部74により、第1及び第2部材6、7の本体部62、72同士が離間されるようにしても良い。無論、これとは反対に、第1部材6に外周縁に外側壁部を形成すると共に、第2部材7の内周縁に内側壁部を形成し、これらの壁部により、第1及び第2部材6、7の本体部62、72同士が離間されるようにしても良い。
【0054】
[11.効果]
(1)上記実施形態によれば、縮小部30と複数のプレート5とが傾斜を有しているため、縮小部30と最上流側のプレート5との間に余分な隙間が生じるのを抑制でき、一体型排気熱回収装置1の小型化を図ることができる。また、該傾斜により、縮小部30及び各プレート5同士の隙間を流下する排ガスの流れをスムーズにすることができる。これにより、一体型排気熱回収装置1の通気抵抗を抑制でき、その結果、エンジンの燃費の向上を促すことができると共に、エンジンの出力に悪影響を与えるのを抑制できる。
【0055】
また、複数のプレート5が基準面11に沿って広がる場合に比べ、一体型排気熱回収装置1の幅を増加させることなく、複数のプレート5における排ガスと接触する部分の面積を増加させることができ、その結果、排ガスから回収される熱量が増加し得る。これにより、排ガスからの熱回収の性能を落とすこと無く、プレート5の数を低減したり、各プレート5を小型化したりすることが可能となり、これにより、一体型排気熱回収装置1の長さや幅を縮小可能となる。したがって、排ガスをスムーズに流下させつつ、一体型排気熱回収装置1を小型化できる。
【0056】
また、仕切り部38の傾斜により、熱交換室42における入口流路43の付近での排ガスの流れがスムーズになり得る。また、該傾斜により、仕切り部38の外周縁に形成された熱交換室42の出口44と、バルブ部4により開閉される外側部36の出口37との間の距離を確保可能となる。このため、バルブ部4の開放時に出口37から流出した排ガスが、出口44から熱交換室42に流入するのを抑制でき、排ガスと冷却液との間の熱交換が必要以上に行われるのを抑制できる。
【0057】
(2)また、バルブ部4の閉鎖時には、配置部33を高速で流下する排ガスは、弁体40に衝突して配置部33の出口35から側方に流出し、複数のプレート5へと誘導される。このため、複数のプレート5へと向かう排ガスの流速、及び、複数のプレート5の間を通過する排ガスの流速が向上し、より一層、排ガスを高温に保つことが可能となる。したがって、排ガスと冷却液との間の熱交換の効率が向上し得る。
【0058】
(3)また、各プレート5は円環状であるため、複数のプレート5の隙間や、複数のプレート5の周辺における排ガスの流れを均一化し得る。このため、排ガスと冷却液との間の熱交換の効率が向上し得る。
【0059】
(4)また、ケース部材2の出口23と縮小部30の入口31とは、第1接続部材48により接続される。このため、第1接続部材48の構成を変更することで、異なるサイズのケース部材2と縮小部30とを接続できる。したがって、例えば、一体型排気熱回収装置1が搭載される車両に応じて、ケース部材2のサイズに変更が生じた場合であっても、排気熱回収装置3として機能する部位の変更が不要となり得る。同様に、排気熱回収装置3として機能する部位に変更が生じた場合であっても、ケース部材2の変更が不要となり得る。したがって、一体型排気熱回収装置1の開発又は製造に要するコストを抑制できる。
【0060】
(5)また、外殻部材46の出口47と下流側部材12の入口とは、第2接続部材49により接続される。このため、第2接続部材49の構成を変更することで、異なるサイズの外殻部材46と下流側部材12とを接続できる。したがって、例えば、一体型排気熱回収装置1が搭載される車両に応じて、下流側部材12のサイズに変更が生じた場合であっても、排気熱回収装置3として機能する部位やケース部材2の変更が不要となり得る。したがって、一体型排気熱回収装置1の開発又は製造に要するコストを抑制できる。
【0061】
(6)また、上述したように、本実施形態では、各プレート5が傾斜して配置されているため、各プレート5における排ガスと接触する部分の面積が十分に確保され得る。このため、各プレート5の全域にわたって熱交換流路50を設けなくても、排ガスから十分に熱を回収し得る。そこで、本実施形態では、プレート5を構成する第1及び第2部材6、7の内周縁と外周縁とに、それぞれ、内側縁部60、70と外側縁部61、71とが設けられる。そして、第1及び第2部材6、7における内側縁部60、70同士と、外側縁部61、71同士とをそれぞれ接合することで、各プレート5が形成される。これにより、各プレート5の組み立てが容易になる。
【0062】
[12.他の実施形態]
(1)上記実施形態では、縮小部30は、入口31から出口32に至るまでの全区間が、基準面11に対し略一定の勾配を有する。しかし、例えば、縮小部30における出口32を含む区間を基準面11に対し傾斜させ、残りの区間は基準面11に沿って広がるようにしても良い。このような構成であっても、同様の効果が得られる。
【0063】
(2)上記実施形態では、縮小部30及び仕切り部38は、テーパ状に形成されている。しかし、縮小部30及び仕切り部38は、断面を円形以外の形状(例えば、楕円形や多角形)としながら、下流に向かうに従い排ガスの流路の幅が狭くなるように、基準面11に対し傾斜していても良い。そして、各プレート5を縮小部30及び仕切り部38と同様の形状とし、複数のプレート5を、縮小部30及び仕切り部38に沿って基準面11に対し傾斜した状態で配置しても良い。このような構成であっても、同様の効果が得られる。
【0064】
(3)上記実施形態では、外殻部材46の径は、ケース部材2の本体部22の径よりも小さい。しかし、外殻部材46の径を、ケース部材2の本体部22の径よりも大きくしても良い。このような構成であっても、同様の効果が得られる。
【0065】
(4)上記実施形態では、複数のプレート5の下流側に位置する外側部36の出口37をバルブ部4により閉鎖することで、排ガスが複数のプレート5に誘導される。しかし、例えば、縮小部30の入口31の付近に熱交換室42への入口を形成しても良い。また、例えば、配置部33における複数のプレート5の上流側の位置や、複数のプレート5の側方の位置を開閉するバルブ部を設けても良い。そして、該バルブ部を閉鎖することで、浄化装置20を通過した排ガスを複数のプレート5に誘導しても良い。このような構成であっても、同様の効果が得られる。
【0066】
(5)上記実施形態において、縮小部30と第1接続部材48とを一体化された部材として構成し、該部材の入口を含む部分を、第1接続部材として構成しても良い。また、外殻部材46と第2接続部材49とを一体化された部材として構成し、該部材の出口を含む部分を、第2接続部材として構成しても良い。このような場合であっても、同様の効果が得られる。
【0067】
(6)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…一体型排気熱回収装置、10…軸方向、11…基準面、12…下流側部材、13…軸線、2…ケース部材、20…浄化装置、3…排気熱回収装置、30…縮小部、31…出口、33…配置部、4…バルブ部、46…外殻部材、48…第1接続部材、49…第2接続部材、5…プレート、50…熱交換流路、6…第1部材、60…内側縁部、61…外側縁部、7…第2部材、70…内側縁部、71…外側縁部。
図1
図2
図3
図4
図5