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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】磁気ギアード回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/24 20060101AFI20240312BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240312BHJP
   H02K 16/02 20060101ALI20240312BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20240312BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H02K5/24 A
F16F15/02 S
H02K16/02
H02K21/14 M
F16H49/00 A
H02K21/14 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020009938
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021118602
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆之
(72)【発明者】
【氏名】岡部 良次
(72)【発明者】
【氏名】林 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松下 崇俊
(72)【発明者】
【氏名】梅田 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 幹人
(72)【発明者】
【氏名】左海 将之
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0157962(US,A1)
【文献】特開2016-096701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0028015(US,A1)
【文献】特開2009-161627(JP,A)
【文献】特開2004-040892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/24
F16F 15/02
H02K 16/02
H02K 21/14
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心として環状をなすステータコア、該ステータコアのスロット内に設けられたコイル、及び、前記ステータコアの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石を有するステータと、
該ステータの内側で、前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピースを有する第一ロータと、
該第一ロータの内側に設けられたロータコア、及び、該ロータコアに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石を有する第二ロータと、
を備え
前記ステータは、繊維強化プラスチックからなり前記ステータコアの内面に設けられた制振部材をさらに備え、
前記ステータコアは、前記内面として、前記複数のステータ磁石によって画定される円筒内周面を有し、
前記制振部材は、該円筒内周面に沿って設けられており、
前記制振部材には、該制振部材を径方向に貫通する複数の穴部が形成されている磁気ギアード回転電機。
【請求項2】
軸線を中心として環状をなすステータコア、該ステータコアのスロット内に設けられたコイル、及び、前記ステータコアの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石を有するステータと、
該ステータの内側で、前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピースを有する第一ロータと、
該第一ロータの内側に設けられたロータコア、及び、該ロータコアに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石を有する第二ロータと、
を備え、
前記ステータは、繊維強化プラスチックからなり前記ステータコアの内面に設けられた制振部材をさらに備え
前記ステータコアは、前記内面として、前記複数のステータ磁石によって画定される円筒内周面を有し、
前記制振部材は、該円筒内周面に沿って設けられており、
前記制振部材は、それぞれ円筒状をなして前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数の制振ピースを有する磁気ギアード回転電機。
【請求項3】
前記ステータコアには、前記ステータ磁石を収容するとともに、周方向に間隔をあけて配列され、前記内面としての径方向内側を向く底面を有する複数のキャビティが形成され、
前記制振部材は、少なくとも該底面に設けられている請求項1又は2に記載の磁気ギアード回転電機。
【請求項4】
前記制振部材は、前記内面としての前記スロットの壁面と前記コイルとの間に設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気ギアード回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ギアード回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、低速ロータ(第一ロータ)、高速ロータ(第二ロータ)、ステータが同軸に相対回転可能とされた磁気ギア―ド回転電機が開示されている。
磁気ギア―ド回転電機を、例えばモータとして用いる場合には、ステータに設けたコイルの起磁力により高速ロータを回転させることで、高調波磁束により出力軸である低速ロータが所定の減速比で回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-163431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような磁気ギアード回転電機では、低速ロータの極数N、高速ロータの極対数N、及びステータの極対数Nに基づいて、特定の周波数の磁力が発生する。このうち、Nl-Nsの低周波磁力は、高速ロータの駆動に寄与する。一方で、Nl +Nsの高周波磁力は、高速ロータの駆動には寄与せず、むしろステータの振動発生の原因となってしまう。ステータの振動は、騒音や疲労破壊につながる虞がある。そこで、ステータの振動を抑制することが可能な技術に対する要請が高まっている。
【0005】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであって、振動の発生が抑制された磁気ギアード回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る磁気ギアード回転電機は、軸線を中心として環状をなすステータコア、該ステータコアのスロット内に設けられたコイル、及び、前記ステータコアの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石を有するステータと、該ステータの内側で、前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピースを有する第一ロータと、該第一ロータの内側に設けられたロータコア、及び、該ロータコアに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石を有する第二ロータと、を備え、前記ステータは、繊維強化プラスチックからなり前記ステータコアの内面に設けられた制振部材をさらに備え、前記ステータコアは、前記内面として、前記複数のステータ磁石によって画定される円筒内周面を有し、前記制振部材は、該円筒内周面に沿って設けられており、前記制振部材には、該制振部材を径方向に貫通する複数の穴部が形成されている。
本開示に係る磁気ギアード回転電機は、軸線を中心として環状をなすステータコア、該ステータコアのスロット内に設けられたコイル、及び、前記ステータコアの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石を有するステータと、該ステータの内側で、前記軸線の周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピースを有する第一ロータと、該第一ロータの内側に設けられたロータコア、及び、該ロータコアに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石を有する第二ロータと、を備え、前記ステータは、繊維強化プラスチックからなり前記ステータコアの内面に設けられた制振部材をさらに備え、前記ステータコアは、前記内面として、前記複数のステータ磁石によって画定される円筒内周面を有し、前記制振部材は、該円筒内周面に沿って設けられており、前記制振部材は、それぞれ円筒状をなして前記軸線方向に間隔をあけて配列された複数の制振ピースを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、振動の発生が抑制された磁気ギアード回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第一実施形態に係る磁気ギアード回転電機の構成を示す断面図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る制振部材の変形例を示す図である。
図4】本開示の第一実施形態に係る制振部材の他の変形例を示す図である。
図5】本開示の第二実施形態に係る磁気ギアード回転電機の要部拡大断面図である。
図6】本開示の第三実施形態に係る磁気ギアード回転電機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一実施形態>
(磁気ギアード回転電機の構成)
以下、本開示の第一実施形態に係る磁気ギアード回転電機100について、図1図2を参照して説明する。図1に示すように、磁気ギアード回転電機100は、ステータ1と、第一ロータ2と、第二ロータ3と、ケーシング4と、軸受Bと、を備えている。磁気ギアード回転電機100は、軸線Acに沿って延びる回転軸6に取り付けられている。外部から電力供給した場合、第一ロータ2、及び第二ロータ3が軸線Ac回りに回転することで電動機として機能する。一方で、回転軸6に外部から回転力(トルク)を与えた場合、第一ロータ2、及び第二ロータ3の回転に伴う誘導起電力によって発電機として機能する。
【0010】
(ケーシング、ステータの構成)
ケーシング4は、軸線Acを中心とする円環状をなしている。ケーシング4の内部には空間が形成されている。ステータ1は、このケーシング4の内面のうち、軸線Acに対する径方向内側を向く面(ケーシング内周面5A)に設けられている。
【0011】
図2に示すように、ステータ1は、ステータコア1Aと、複数のコイルCと、複数のステータ磁石1Bと、制振部材90と、を有している。ステータコア1Aは、軸線Acを中心とする円環状のバックヨーク71と、バックヨーク71から径方向内側に突出するとともに、周方向に間隔をあけて配列された複数のティース7Tと、を有している。ティース7Tは、バックヨーク71から径方向内側に延びるティース本体72と、ティース本体72の径方向内側の端部に一体に設けられたティース先端部73と、を有している。ティース先端部73は、周方向の両側に向かって張り出している。
【0012】
ティース本体72にはコイルCが取り付けられている。コイルCは、銅線等をティース本体72の周囲に巻き掛けることで形成されている。バックヨーク71と、互いに隣接する一対のティース本体72、及びティース先端部73とによって囲まれた領域は、コイルCを収容するためのスロットSとされている。
【0013】
ステータコア1Aの内周面、つまりティース先端部73の径方向内側の面には、周方向に隣接するように複数のステータ磁石1Bが配列されている。ステータ磁石1Bは、例えばフェライト磁石やネオジム磁石のような永久磁石である。互いに隣接するステータ磁石1B同士では、極が異なっている。つまり、異なる極のステータ磁石1Bが周方向に交互に配列されている。これらステータ磁石1Bによって画定される内周側の面は、ステータコア1Aの内面の一部としての円筒内周面1Sとされている。
【0014】
この円筒内周面1Sには、制振部材90が取り付けられている。制振部材90は、ステータコア1Aで発生する振動を減衰させるために設けられている。制振部材90として具体的には、アラミド樹脂やベクトラン樹脂を含む、比較的に柔軟な繊維強化プラスチックが用いられる。この他、ガラス繊維強化樹脂や、炭素繊維強化樹脂を制振部材90として用いることも可能である。これにより、制振部材90自身がステータコア1Aの振動を吸収して減衰させることが可能である。制振部材90は、円筒内周面1Sに沿って広がる円筒状をなしている。
【0015】
(第一ロータの構成)
図1に示すように、第一ロータ2は、ステータ1の内側に設けられている。第一ロータ2は、円板部5と、第一ロータ本体2Hと、ポールピース2Pと、を有している。円板部5は、軸線Acを中心とする円板状をなし、回転軸6に取り付けられている。円板部5の外周側には、第一ロータ本体2Hが取り付けられている。第一ロータ本体2Hは、軸線Acを中心とする円筒状の筒部21と、この筒部21の外周面から径方向外側に張り出す一対の支持部22と、を有している。筒部21は、軸受B(外側軸受B1)を介してケーシング4の内周面上で支持されている。一対の支持部22の径方向外側の端縁には、複数のポールピース2Pが設けられている。ポールピース2Pは、磁性体であり、ステータ磁石1B、及び後述するロータ磁石3Bの磁力との相互作用により、磁束の高周波を発生させる。図2に示すように、ポールピース2Pは、周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0016】
(第二ロータの構成)
図1に示すように、第二ロータ3は、第一ロータ本体2Hにおける一対の支持部22同士の間に設けられている。第二ロータ3は、ロータコア3Aと、ロータ磁石3Bと、を有している。ロータコア3Aは、軸線Acを中心とする円環状をなしている。ロータコア3Aの内周面は、第一ロータ本体2Hにおける筒部21の外周面によって、軸受B(内側軸受B2)を介して回転可能に支持されている。図2に示すように、ロータコア3Aの外周面には、複数のロータ磁石3Bが周方向に複数配列されている。ロータ磁石3Bは、上述のポールピース2Pに対して内周側から対向している。
【0017】
(作用効果)
次に、上述の磁気ギアード回転電機100の動作について説明する。磁気ギアード回転電機100を電動機として用いる場合、まずコイルCに外部から電力を供給する。これにより、コイルCが励磁される。このコイルCの磁力によって、第二ロータ3が軸線Ac回りに回転する。さらに、第二ロータ3が回転することによって、第一ロータ2が回転する。第一ロータ2の回転数は、第一ロータ2の極数N、及び第二ロータ3の極対数Nに基づく減速比のもとで減速されている。具体的には、減速比Gは、G=N/Nとなる。
【0018】
一方で、磁気ギアード回転電機100を発電機として用いる場合には、回転軸6に軸線Ac回りの回転力(トルク)を与える。これにより、回転軸6の回転によって第一ロータ2、及び第二ロータ3が回転する。第一ロータ2、及び第二ロータ3の回転に伴って、コイルCで誘導起電力が発生する。この電力を外部に取り出すことで、磁気ギアード回転電機100を発電機として用いることが可能となる。
【0019】
ところで、磁気ギアード回転電機100では、第一ロータ2の極数N、第二ロータ3の極対数N、及びステータ1の極対数Nに基づいて、特定の周波数の磁力が発生する。このうち、Nl-Nsの低周波磁力は、第二ロータ3の駆動に寄与する。一方で、Nl+Nsの高周波磁力は、第二ロータ3の駆動には寄与せず、むしろステータ1の振動発生の原因となってしまう。ステータ1の振動は、騒音や疲労破壊につながる虞がある。
【0020】
そこで、本実施形態では、ステータ1の内面(円筒内周面1S)に制振部材90が設けられている。この構成によれば、ステータ1に振動が発生した場合であっても、制振部材90によってこの振動を吸収し、減衰させることができる。特に、制振部材90として、繊維強化プラスチックを用いていることから、繊維を含まない他の樹脂材料に比べて、耐久性を確保することができる。また、制振部材90が繊維強化プラスチックで形成されていることから、他の金属材料を用いた場合と異なり、うず電流や発熱を抑えることもできる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することが可能となる。
【0021】
さらに、上記構成によれば、ステータ磁石1Bによって画定される円筒内周面1Sに制振部材90が設けられている。つまり、制振部材90がステータ1の内周側における周方向の全域にもうけられている。これにより、ステータ1の振動を周方向の全域で安定的に吸収・減衰させることができる。
【0022】
以上、本開示の第一実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、図3に示すように、制振部材90bに、当該制振部材90bを厚さ方向(軸線Acに対する径方向)に貫通する複数の穴部hを形成することも可能である。
【0023】
この構成によれば、穴部hを通じて、ステータ1に熱が滞留してしまう可能性を低減することができる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することができる。
【0024】
また、図4に示すように、制振部材90cを、軸線Ac方向に間隔をあけて配列された複数の制振ピースPによって構成することも可能である。各制振ピースPは、軸線Acを中心とする円筒状をなしている。なお、複数の円弧状の部材を組み合わせることで各制振ピースPを構成することも可能である。
【0025】
この構成では、制振ピースP同士の間には間隔が形成されている。この間隔を通じて、ステータ1に熱が滞留してしまう可能性を低減することができる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することができる。
【0026】
<第二実施形態>
続いて、本開示の第二実施形態について、図5を参照して説明する。なお、上記第一実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、ステータコア1Aの内周面には、径方向外側に向かって凹むことでステータ磁石1Bを収容するキャビティ8が形成されている。キャビティ8内で径方向内側を向く面は底面8Aとされ、周方向を向く一対の面はそれぞれ側面8Bとされている。これら底面8A、及び側面8Bは、ステータコア1Aの内面の一部である。
【0027】
少なくとも底面8Aには、薄板状の制振部材91が設けられている。本実施形態では、底面8Aに加えて側面8Bにも制振部材91が設けられている。つまり、ステータ磁石1Bは、これら制振部材91によって囲まれている。
【0028】
上記構成によれば、制振部材91によって、ステータ1で発生した振動を吸収・減衰させることができる。また、ステータ1と第一ロータ2との間に制振部材を設けた場合に比べて、これらステータ1及び第一ロータ2との間のクリアランスを大きく確保することができる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することが可能となる。
【0029】
以上、本開示の第二実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第二実施形態で説明した制振部材91と、第一実施形態で説明した制振部材90とを組み合わせて用いることも可能である。
【0030】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態について、図6を参照して説明する。なお、上記の各実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。同図に示すように、本実施形態では、ステータコア1AにおけるスロットS(上述)の壁面2Sに制振部材92が設けられている。なお、スロットSの壁面2Sは、バックヨーク71の内周面と、隣接する一対のティース7T(ティース本体72)によって形成される面であって、ステータコア1Aの内面の一部である。制振部材92は、コイルCと壁面2Sとの間に介在している。
【0031】
上記構成によれば、スロットSの壁面2Sに制振部材92が設けられていることによって、ステータ1で発生した振動を吸収・減衰させることができる。また、制振部材92はコイルCによって壁面2Sに対して強固に押し付けられていることから、当該制振部材92が脱落する可能性を低減することもできる。
【0032】
以上、本開示の第三実施形態について説明した。なお、本開示の要旨を逸脱しない限りにおいて、上記の構成に種々の変更や改修を施すことが可能である。例えば、上記第三実施形態で説明した制振部材92と、上記第二実施形態で説明した制振部材91、及び第一実施形態で説明した制振部材90の少なくとも一方とを組み合わせて用いることも可能である。
【0033】
<付記>
各実施形態に記載の磁気ギアード回転電機100は、例えば以下のように把握される。
【0034】
(1)第1の態様に係る磁気ギアード回転電機100は、軸線Acを中心として環状をなすステータコア1A、該ステータコア1AのスロットS内に設けられたコイルC、及び、前記ステータコア1Aの内側に周方向に間隔をあけて複数が設けられたステータ磁石1Bを有するステータ1と、該ステータ1の内側で、前記軸線Acの周方向に間隔をあけて複数が設けられたポールピース2Pを有する第一ロータ2と、該第一ロータ2の内側に設けられたロータコア3A、及び、該ロータコア3Aに周方向に間隔をあけて設けられた複数のロータ磁石3Bを有する第二ロータ3と、を備え、前記ステータ1は、繊維強化プラスチックからなり前記ステータコア1Aの内面に設けられた制振部材90をさらに備える。
【0035】
上記構成によれば、ステータ1に振動が発生した場合であっても、制振部材90によってこの振動を吸収し、減衰させることができる。特に、制振部材90として、繊維強化プラスチックを用いていることから、繊維を含まない他の樹脂材料に比べて、耐久性を確保することができる。また、制振部材90が繊維強化プラスチックで形成されていることから、うず電流や発熱を抑えることもできる。
【0036】
(2)第2の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記ステータコア1Aは、前記内面として、前記複数のステータ磁石1Bによって画定される円筒内周面1Sを有し、前記制振部材90は、該円筒内周面1Sに沿って設けられている。
【0037】
上記構成によれば、ステータ磁石1Bによって画定される円筒内周面1Sに制振部材が設けられている。つまり、制振部材90がステータ1の内周側における周方向の全域に設けられている。これにより、ステータ1の振動を周方向の全域で安定的に吸収・減衰させることができる。
【0038】
(3)第3の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記制振部材90bには、該制振部材90bを径方向に貫通する複数の穴部hが形成されている。
【0039】
上記構成によれば、制振部材90bに複数の穴部hが形成されている。この穴部hにより、ステータ1に熱が滞留してしまう可能性を低減することができる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することができる。
【0040】
(4)第4の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記制振部材90cは、前記軸線Ac方向に間隔をあけて配列された複数の制振ピースPを有する。
【0041】
上記構成によれば、制振部材90cが複数の制振ピースPによって構成されている。制振ピースP同士の間には間隔が形成されている。この間隔によりステータ1に熱が滞留してしまう可能性を低減することができる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することができる。
【0042】
(5)第5の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記ステータコア1Aには、前記ステータ磁石1Bを収容するとともに、周方向に間隔をあけて配列され、前記内面としての径方向内側を向く底面8Aを有する複数のキャビティ8が形成され、前記制振部材91は、少なくとも該底面8Aに設けられている。
【0043】
上記構成によれば、制振部材91によって、ステータ1で発生した振動を吸収・減衰させることができる。また、ステータ1と第一ロータ2との間に制振部材を設けた場合に比べて、これらステータ1及び第一ロータ2との間のクリアランスを大きく確保することができる。その結果、磁気ギアード回転電機100をより安定的に運用することが可能となる。
【0044】
(6)第6の態様に係る磁気ギアード回転電機100では、前記制振部材92は、前記内面としての前記スロットSの壁面2Sと前記コイルCとの間に設けられている。
【0045】
上記構成によれば、スロットSの壁面2Sに制振部材92が設けられていることによって、ステータ1で発生した振動を吸収・減衰させることができる。また、制振部材92はコイルCによって壁面2Sに対して強固に押し付けられていることから、当該制振部材92が脱落する可能性を低減することもできる。
【符号の説明】
【0046】
100 磁気ギアード回転電機
1 ステータ
1A ステータコア
1B ステータ磁石
1S 円筒内周面
2 第一ロータ
21 筒部
22 支持部
2H 第一ロータ本体
2P ポールピース
3 第二ロータ
3A ロータコア
3B ロータ磁石
4 ケーシング
5 円板部
5A ケーシング内周面
6 回転軸
B 軸受
B1 外側軸受
B2 内側軸受
71 バックヨーク
72 ティース本体
73 ティース先端部
8 キャビティ
8A 底面
8B 側面
90,90b,90c,91,92 制振部材
Ac 軸線
C コイル
h 穴部
P 制振ピース
S スロット
図1
図2
図3
図4
図5
図6