(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】弁機構
(51)【国際特許分類】
F16K 1/32 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
F16K1/32 B
(21)【出願番号】P 2020029068
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 雅弘
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-513631(JP,A)
【文献】特開平4-262174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0175009(US,A1)
【文献】特開2009-2361(JP,A)
【文献】実開平6-4810(JP,U)
【文献】特開平1-275969(JP,A)
【文献】特開2017-75638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 41/00-41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に弁栓部または弁座が設けられた軸部材と、
前記軸部材が軸方向に移動自在に挿入される穴とを有する弁機構であって、
前記穴の内周面に対向する前記軸部材の外周面に装着されて、前記穴の内周面と前記軸部材の外周面との間をシールするとともに前記軸部材を前記穴の内周面に沿って移動可能にガイドするガイドリングを備えたことを特徴とする弁機構。
【請求項2】
請求項1記載の弁機構において、
前記軸部材の前記一端は、前記弁栓部によって構成され、
前記弁座は、前記軸部材が挿入される前記穴を有する弁座部材に前記弁栓部が着座するように設けられ、
前記軸部材が挿入される前記穴は、
弁座部材に設けられて前記弁座の中央部に開口する弁孔と、
前記弁座部材に対向配置された弁体保持部材に設けられ、前記弁孔と同一軸線上に位置するガイド孔とを有し、
前記軸部材は、前記弁栓部と一端で接続するとともに他端が前記弁体保持部材に向かって延伸し、他端側が前記弁体保持部材の前記ガイド孔に挿入されて前記ガイド孔の内周面にガイドされる弁軸を有し、
前記ガイドリングは、前記弁軸と前記ガイド孔の内周面との間に設けられていることを特徴とする弁機構。
【請求項3】
請求項1記載の弁機構において、
前記軸部材の前記一端は、前記弁座によって構成され、
前記弁栓部は、前記軸部材が挿入される前記穴の中に収容された弁体に、前記弁座に着座するように設けられ、
前記軸部材が挿入される前記穴は、
前記弁体を収容する弁孔と、
前記弁孔と同一軸線上に位置するガイド孔とを有し、
前記軸部材は、前記弁座が一端に設けられるとともに前記ガイド孔の内周面にガイドされる弁軸を有し、
前記ガイドリングは、前記弁軸と前記ガイド孔の内周面との間に設けられていることを特徴とする弁機構。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一つに記載の弁機構において、
前記ガイドリングは軸方向と異なる方向に切れ目を形成された環状部材であるとともに、前記ガイドリングの内径は前記軸部材に装着される以前では前記軸部材の外径よりも小さく、かつ、前記軸部材に装着されると前記ガイドリングは拡径して、前記軸部材が挿入された前記穴の内周面に当接して面圧を発生させること
を特徴とする弁機構。
【請求項5】
請求項2に記載の弁機構において、
前記弁座部材と前記弁体保持部材とが一体形成されていること
を特徴とする弁機構。
【請求項6】
請求項2に記載の弁機構において、
前記軸部材を前記弁軸に沿った方向に付勢する付勢部材を設けたことを特徴とする弁機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁栓部または弁座が一端に設けられた軸部材を穴の中で移動自在に支持する弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
弁軸を有する弁体と、この弁体の弁軸を移動自在に支持するガイド(弁体保持部材)とを有する弁機構においては、弁軸がガイドに接触することがないように構成すると、弁体が目標の位置から外れて位置の精度が低くなる。一方、弁軸をガイドに接触させて位置の精度を高くすると、弁体が開閉動作をするときの摩擦抵抗が大きくなる。この摩擦抵抗を小さく抑えた従来の弁機構としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている弁機構は、
図10に示すように構成されている。
図10において、符号1で示すものは弁体、2は弁体1を支持する軸部材、3は軸部材2を移動自在に支持するガイド部材を示す。軸部材2は、ガイド部材3の貫通孔4に挿入されて軸方向に移動する。軸部材2が
図10において上側に移動することにより弁体1が弁座5に着座し、流体通路6が閉じられる。
【0004】
この弁機構7においては、流体が軸部材2と貫通孔4との間の隙間を通って漏洩することを防ぐために、弁体1とガイド部材3との間にシール部材8が設けられている。シール部材8は、リング状のシール保持部材9とバックアップリング10とによって挟まれて所定の位置に保持されている。この弁機構7において、軸部材2のガイドはガイド部材3によって行われ、軸部材2が挿通される部分(以下、単に挿通部という)のシールは、シール部材8によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す弁機構7では、軸部材2のガイドと、軸部材2の挿通部のシールは、それぞれ別の構成・部品によって行われているから、部品点数が多くなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、弁の軸部材のガイドと軸部材の挿通部のシールとを一つの部品によって実現できて部品点数が少なくなる弁機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明に係る弁機構は、一端に弁栓部または弁座が設けられた軸部材と、前記軸部材が軸方向に移動自在に挿入される穴とを有する弁機構であって、前記穴の内周面に対向する前記軸部材の外周面に装着されて、前記穴の内周面と前記軸部材の外周面との間をシールするとともに前記軸部材を前記穴の内周面に沿って移動可能にガイドするガイドリングを備えたものである。
【0009】
本発明は、前記弁機構において、前記軸部材の前記一端は、前記弁栓部によって構成され、前記弁座は、前記軸部材が挿入される前記穴を有する弁座部材に前記弁栓部が着座するように設けられ、前記軸部材が挿入される前記穴は、弁座部材に設けられて前記弁座の中央部に開口する弁孔と、前記弁座部材に対向配置された弁体保持部材に設けられ、前記弁孔と同一軸線上に位置するガイド孔とを有し、前記軸部材は、前記弁栓部と一端で接続するとともに他端が前記弁体保持部材に向かって延伸し、他端側が前記弁体保持部材の前記ガイド孔に挿入されて前記ガイド孔の内周面にガイドされる弁軸を有し、前記ガイドリングは、前記弁軸と前記ガイド孔の内周面との間に設けられていてもよい。
【0010】
本発明は、前記弁機構において、前記軸部材の前記一端は、前記弁座によって構成され、前記弁栓部は、前記軸部材が挿入される前記穴の中に収容された弁体に、前記弁座に着座するように設けられ、前記軸部材が挿入される前記穴は、前記弁体を収容する弁孔と、前記弁孔と同一軸線上に位置するガイド孔とを有し、前記軸部材は、前記弁座が一端に設けられるとともに前記ガイド孔の内周面にガイドされる弁軸を有し、前記ガイドリングは、前記弁軸と前記ガイド孔の内周面との間に設けられていてもよい。
【0011】
本発明は、前記弁機構において、前記ガイドリングは軸方向と異なる方向に切れ目を形成された環状部材であるとともに、前記ガイドリングの内径は前記軸部材に装着される以前では前記軸部材の外径よりも小さく、かつ、前記軸部材に装着されると前記ガイドリングは拡径して、前記軸部材が挿入される前記穴の内周面に当接して面圧を発生させるものでもよい。
【0012】
本発明は、前記弁機構において、前記弁座部材と前記弁体保持部材とが一体形成されていてもよい。
【0013】
本発明は、前記弁機構において、前記軸部材を前記弁軸に沿った方向に付勢する付勢部材を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、ガイドリングが軸部材をガイドするとともに、軸部材の挿通部をシールする。したがって、軸部材のガイドと軸部材の挿通部のシールとを一つの部品によって実現できて部品点数が少なくなる弁機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る弁機構を備えた減圧弁の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明に係る弁機構を備えたパイロットリレーの構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、ガイドリングの他の使用例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、ガイドリングの他の実施の形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係る弁機構の一実施の形態を
図1~
図6を参照して詳細に説明する。第1の実施の形態に示す弁機構は、請求項1,2,4~6に記載した発明を実施したものである。この実施の形態においては、本発明に係る弁機構を減圧弁に適用する場合の一例を示す。
【0017】
図1に示す減圧弁11は、本発明に係る弁機構12と流体入口13および流体出口14とを有するボディ15と、このボディ15の一端部(
図1においては上端部)にダイアフラム16を介して取付けられたボンネット17などを備え、流体入口13に供給された流体の圧力を減圧して流体出口14に導くものである。この減圧弁11を流れる流体は気体である。
【0018】
ボディ15の他端部には、ガスケット18を介してカップ状のドレンボウル19が取付けられている。ドレンボウル19の内部は、流体入口13に上流側通路孔20を介して接続されているとともに、ボディ中央部の貫通穴21および下流側通路孔22を介して流体出口14に接続されている。ボディ15の貫通穴21は、ボディ15の中央部を貫通するように形成されている。ドレンボウル19内と貫通穴21との間にはフィルター23が設けられている。貫通穴21の内部には、後述する弁機構12が設けられている。
【0019】
ボディ15とボンネット17との間に位置するダイアフラム16は、円板状に形成されており、ボディ15との間にダイアフラム室24を形成している。ダイアフラム室24は、ボディ15の貫通穴21が開口しているとともに、小孔25を介して下流側通路孔22に接続されている。ダイアフラム16の中央部には、押圧部材26が設けられている。この押圧部材26は、後述する弁機構12の弁体31を押圧するためのものである。
【0020】
押圧部材26には、ダイアフラム16の厚み方向に延びて押圧部材26を貫通する通路孔32が形成されている。また、押圧部材26は、圧縮コイルばねからなる調圧ばね33によってボディ15に向けて付勢されている。
調圧ばね33は、一端部が押圧部材26を押すとともに、他端部が調圧ばね受け34を押す状態でこれらの部材の間に設けられている。調圧ばね受け34は、ボンネット17に螺合された調圧ノブ35の一端が当接し、調圧ノブ35と調圧ばね33とによって挟まれて保持されている。
【0021】
弁機構12は、ボディ15の貫通穴21に嵌合して固定された円柱状の吸気ポート41と、この吸気ポート41の中央部の穴42(
図2参照)の中に挿入された弁体31と、弁体31の一端部を付勢する圧縮コイルばねからなるバルブばね43などを備えている。
吸気ポート41は、
図3に示すように、複数の部材を一体形成することによって構成されている。複数の部材とは、吸気ポート41の一端側(ドレンボウル19側)の半部となる弁座部材44と、吸気ポート41の他端側(ボンネット17側)の半部となる弁体保持部材45である。弁座部材44は、弁座46を有しているとともに、弁座46の中央部に開口する弁孔47を有している。
【0022】
弁体保持部材45は、弁座部材44に対向配置されている。弁体保持部材45の内部(中央部)には、段付きの貫通孔からなるガイド孔48が弁孔47に接続されるように形成されている。弁孔47とガイド孔48は、開口形状が円形で、同一軸線上に位置しており、吸気ポート41の中央部の穴42を構成している。ガイド孔48は、弁孔47に接続される小径部48aと、ダイアフラム室24に開口する大径部48bと、小径部48aと大径部48bとの間に位置する中央部48cとによって形成されている。中央部48cの孔径は、小径部48aの孔径より大きく、大径部48bの孔径より小さい。
【0023】
吸気ポート41の外周面には、周方向に延びる環状の溝49が形成されている。この溝49の一部は、下流側通路孔22に接続されている。また、この溝49には、吸気ポート41内で放射状に延びる複数の連通孔50が開口している。連通孔50は、溝49内と弁孔47内とを連通している。
【0024】
弁体31は、本発明でいう「軸部材」に相当するものである。弁体31の一端(図においては下端)は、
図2に示すように、弁座46に着座する弁栓部51によって構成されている。弁体31は、弁栓部51と一端で接続するとともに他端が弁体保持部材45に向かって延伸する弁軸52を有している。弁栓部51には、バルブばね43が設けられている。バルブばね43は、本発明でいう「付勢部材」を構成するもので、弁体31を弁軸52に沿った方向に付勢している。
【0025】
このバルブばね43は、貫通穴21の上流側開口部に設けられたバルブばね受け53(
図1参照)と弁栓部51との間に装着されている。
弁軸52は、円柱状に形成されており、他端側が弁体保持部材45のガイド孔48に挿入され、ガイド孔48の内周面に後述するガイドリング54を介してガイドされている。
弁軸52の他端は、半球状に形成されており、上述した押圧部材26に接触し、押圧部材26の通路孔32を閉じている。
【0026】
ガイドリング54は、
図4に示すように、単一の環状部材である。このガイドリング54は、
図2に示すように弁軸52が貫通し、ガイド孔48の内周面に対向する弁軸52の外周面に装着されており、ガイド孔48の中央部48cに挿入されている。また、ガイドリング54は、ガイド孔48の大径部48bに挿入された平座金55とばね座金56とによって、大径部48b側へ移動することができないように中央部48c内に保持されている。なお、ガイドリング54の周方向への移動は、摩擦抵抗によって規制されている。
【0027】
この実施の形態によるガイドリング54は、軸方向と異なる方向に切れ目61を形成された環状部材である。ガイドリング54の周方向とは直交する方向の断面形状は、
図1に示すように四角形である。切れ目61は、
図2に示すように、ガイドリング54を軸方向とは直交する方向から見た状態でガイドリング54の軸線Cに対して所定の角度で傾斜するように形成されており、ガイドリング54の軸方向の一方の端面から他方の端面まで延びている。
【0028】
切れ目61がガイドリング54の軸線と平行に形成されている場合には、切れ目61の部分でガイドリング54が弁軸52に接触できなくなる。この場合、ガイドリング54が弁軸52を押す力が周方向において不均一になって弁体31が偏心するおそれがある。しかし、この実施の形態で示すように切れ目61が傾斜していると、ガイドリング54が多少拡がったとしても周方向において接触が不均一となることが少ないから、弁体31の偏心を低減することができる。
【0029】
ガイドリング54の内径は、弁軸52に装着される以前においては弁軸52の外径よりも小さい。ガイドリング54の外径は、ガイド孔48の中央部48cの内径と同一か中央部48cの内径より小さい。ガイドリング54は、一部が切れ目61によって切断されているために弁軸52に装着されると拡径する。このため、ガイドリング54は、一般的なゴムほどの伸び性を必ずしも必要とせず、樹脂材料や、ガラス繊維入り樹脂などの複合材料によって形成することができる。
【0030】
この実施の形態によるガイドリング54は、弁軸52に装着された状態においては、外周面が弁体保持部材45(ガイド孔48の中央部48cの内周面)に当接するように構成されている。以下においては、ガイド孔48の中央部48cの内周面を単に「ガイド孔内周面」という。
図2は、ガイドリング54が熱膨張を起こす以前の状態で描いてあり、ガイドリング54の外周面とガイド孔内周面との間に微少な隙間Gが形成されている。ガイドリング54が熱膨張を起こすと、ガイドリング54の外周面はガイド孔内周面に密着する。
【0031】
このガイドリング54は、弁軸52により拡径させられて外周面が弁体保持部材45に当接した状態においては、ガイド孔内周面に所定の面圧を発生させるように構成されている。このように弁軸52とガイド孔内周面とに密着したガイドリング54は、弁体保持部材45のガイド孔内周面と弁軸52の外周面との間をシールするとともに、弁体31が弁体保持部材45のガイド孔内周面に沿って移動可能に弁軸52をガイドする。
【0032】
ここで、弁軸52がガイドリング54に挿入されてガイドリング54の内径をΔRだけ拡げるために必要な力Fを
図5を参照して説明する。ここでは、
図5に示すように、円筒状のリングAの内径をR、リングAの厚みをt、リングAの幅(軸方向の長さ)をB、リングA内周面に作用する内圧をpとして説明する。
【0033】
内径RのリングAに挿入したバルブが膨張しリング内径をΔRだけ拡張する場合、内径R、肉厚tの円筒に内圧pが作用すれば、リングAは膨張し、次式の円周方向引張応力σt が生じる。なお、以下においては、リングAのヤング率をEとする。
内圧の合力と円周方向応力の合力が釣り合うので、
2σttB=2RBp
σt =Rp/t
フックの法則より円周方向ひずみは
εt=σt /E=Rp/tE
半径方向の増加量ΔRは、ひずみの定義より
2πRεt =2π(R+ΔR)-2πR
εt=ΔR/R
従って、
Rp/tE=ΔR/R
ΔR=(R2/tE)p
p=tEΔR/R2=tσt/R
内径をΔRげるための力Fは、圧力Pに内径側の面積を掛けて
F=2πRBP=2πRB・(tEΔR/R2)=2πtBEΔR/R
このとき周は2πΔRだけ広がる。
【0034】
一方、リングAの一端を切断し、2πΔRだけ開く場合に必要な力F’を考えると、この力F’は、
図6に示すように、長さL=2Rの片持ちはりBの先端に荷重を掛けて2πΔRだけ撓ませるのと同程度の力と考えられる。
はりBの断面二次モーメントIは、
I=Bt
3/12
たわみε
tは、
ε
t =F’L
3/3EI=2πΔR
IとLを代入して
2πΔR={4F’(2R)
3 }/EBt
3
F’=2πΔREBt
3/4(2R)
3=πEBt
3ΔR/2(2R)
3
【0035】
【0036】
F’<Fとなるのは、
t2<8(2R)2
t<(4√2)R (t>0、R>0)
上記の仮定では、tが4√2Rより小さい場合には切込みありの方が広がりやすいことを意味している。また、実際の設計ではt≦R程度であることが想定されるが、t=RのときF’/F=1/32となり、切込みのある場合の方が必要な力は十分に小さくなる。
逆にtが4√2Rより大きい場合には切込みがあまり意味をなさない。なお、実際の変形は真円形にならず、上記計算結果は測定される値と厳密には一致しない。
【0037】
このように構成された減圧弁11を流れる流体の流量は、ダイアフラム16に設けられている押圧部材26の位置に応じて変化する。押圧部材26は、ダイアフラム室24の圧力を含めてダイアフラム16をボンネット17側に押す力が調圧ばね33のばね力より大きいときに吸気ポート41から離れる方向に移動する。調圧ばね33のばね力は、調圧ノブ35をボンネット17に対して締め込むことにより大きくなり、調圧ノブ35を緩めることにより小さくなる。
【0038】
減圧弁11の流体出口14において流体の圧力が低下すると、ダイアフラム室24の圧力が低下するために押圧部材26が弁体31の弁軸52を押すようになり、弁体31の弁栓部51が弁座46から離れて弁機構12が開くようになる。弁機構12が開くと、流体が流体入口13から上流側通路孔20とドレンボウル19内とを通ってボディ15の貫通穴21に流入し、さらに、吸気ポート41の弁孔47から連通孔50および環状の溝49などを通って下流側通路孔22に流入する。このように下流側通路孔22に流体が流入し、下流側通路孔22の圧力が所定の圧力まで上昇すると、ダイアフラム室24の圧力が上昇して弁機構12が閉じるようになる。このように弁機構12が開閉するときには、弁体31の弁軸52がガイドリング54の内周面に摺接しながら移動する。
【0039】
すなわち、弁軸52は、ガイドリング54との間がシールされた状態で、ガイドリング54によってガイドされながら移動する。したがって、この実施の形態によれば、ガイドリング54が弁体31の弁軸52をガイドするとともに、弁軸52の挿通部をシールするから、弁軸52のガイドと弁軸52の挿通部のシールとを一つの部品によって実現できて部品点数が少なくなる弁機構を提供することができる。
【0040】
この実施の形態によるガイドリング54は、軸方向と異なる方向に切れ目61を形成された環状部材である。ガイドリング54の内径は、弁軸52に装着される以前では弁軸52の外径よりも小さい。ガイドリング54は、弁軸52に装着されると拡径して、弁体保持部材45に当接してガイド孔内周面に面圧を発生させるように構成されている。
切れ目61が斜めに形成されているために、ガイドリング54が弁軸52を周方向において略均等に押圧するようになるから、弁体31が偏心することが少ない。また、ガイドリング54がガイド孔内周面に押し付けられた際にガイドリング54の切れ目61において端面どうしが接触すると、切れ目61を流体が通過することによる流体の漏洩を少なく抑えることができる。
【0041】
この実施の形態による吸気ポート41の弁座部材44と弁体保持部材45とは一体形成されている。このため、弁孔47とガイド孔48とが正確に同一軸線上に位置するようになるから、弁体31が開閉するときの弁軸52の移動をガイドリング54によって正しくガイドすることが可能になる。
【0042】
この実施の形態による弁機構12には、弁体31を弁軸52に沿った方向に付勢するバルブばね43が設けられている。このため、押圧部材26が弁体31から離れる方向に移動した際に弁体31がガイドリング54との摩擦に抗して応答性よく追従し、弁機構12が閉じる。したがって、ガイドリング54を備えているにもかかわらず、応答性が高い弁機構が実現される。
【0043】
(第2の実施の形態)
本発明に係る弁機構は、
図7に示すように、ポジショナのパイロットリレーに適用することができる。第2の実施の形態に示す弁機構は、請求項1および請求項3に記載した発明を実施したものである。
ポジショナは、空気作動型バルブの開度を制御するためのもので、空気信号を増幅するためのパイロットリレーを備えていることが多い。
【0044】
図7に示すパイロットリレー71は、本発明に係る弁機構72の「軸部材」としてのピストン弁73を備えている。ピストン弁73は、一端側(
図7においては下側)にハウジング71a内のシリンダ孔74に移動自在に挿入される弁軸75を有し、他端側が第1および第2のダイアフラム76,77を介してハウジング71aに支持されている。
第1のダイアフラム76とハウジング71aとの間には、背圧室81が形成され、電気信号に相当する空気圧であるノズル背圧PNが供給される。第1のダイアフラム76と第2のダイアフラム77との間には、バイアス室82が形成され、空気作動型バルブ(図示せず)に供給される駆動用空気の圧力と同圧のバイアス圧力PBが供給される。
【0045】
第2のダイアフラム77とハウジング71aとの間には、排気室83が形成されている。排気室83は、ベント孔84に接続されている。
弁軸75の一端(
図7においては下端)は、後述するポペット弁85の第1の弁体86が着座する第1の弁座87によって構成されている。弁軸75の軸心部には排気通路91が形成されている。排気通路91の一端は第1の弁座87に開口し、他端は排気室83に開口している。
【0046】
ハウジング71a内のシリンダ孔74は、ポペット弁85を収容する弁孔92と、この弁孔92と同一軸線上に位置するガイド孔93とを有している。弁孔92の一端(
図7においては下端)には、空気作動型バルブの開度を制御するための供給空気圧PSが供給される。また、弁孔92の一端部には、環状の第2の弁座94が設けられている。第2の弁座94には、ポペット弁85が通されており、ポペット弁85の一端の第2の弁体95が着座する。ポペット弁85は、その一端部において、板状のばね部材96を介してハウジング71aに支持されている。
【0047】
シリンダ孔74のガイド孔93における弁孔92との境界となる部分は、出力室97に連通され、図示していない空気作動型バルブのアクチュエータに接続されている。
ピストン弁73の弁軸75は、このガイド孔93にガイドリング101を介して支持されている。
ガイドリング101は、第1の実施の形態で示したガイドリング54と同等の単一部材のもので、断面形状が四角形の環状に形成されており、図示してはいないが、
図2に図示した切れ目61と同等の切れ目が形成されている。このガイドリング101は、ガイド孔93の内周面に対向する弁軸75の外周面に装着されて、ガイド孔93の内周面と弁軸75の外周面との間をシールするとともに弁軸75をガイド孔93の内周面に沿って移動可能にガイドする。
【0048】
すなわち、ガイドリング101は、ピストン弁73が一端側(
図7においては下側)に移動するときと、他端側に移動するときの両方において、弁軸75のガイドと弁軸75の挿通部のシールとを行う。ピストン弁73は、ノズル背圧PNが上昇して背圧室81の圧力が上昇することにより一端側に移動する。ピストン弁73が一端側に移動することにより、ポペット弁85が第2の弁座94から離れるように押され、供給空気圧が弁孔92と出力室97とを通って空気作動型バルブに供給される。一方、ピストン弁73は、ノズル背圧PNが低下することにより、バイアス室82と出力室97の圧力よって他端側に移動する。ピストン弁73が他端側に移動することにより、第2の弁体31が第2の弁座94に着座して供給空気圧の供給が停止し、空気作動型バルブから駆動用空気が出力室97と排気通路91と排気室83とを通って排気される。
【0049】
この実施の形態で示すように本発明に係る弁機構72をパイロットリレー71に設けることにより、ピストン弁73の動作が円滑でしかもピストン弁73の動作の信頼性が高いパイロットリレーを実現することができる。
【0050】
(ガイドリングの他の使用例)
本発明のガイドリングは、
図8に示すように、パイロットリレーのポペット弁を支持するために用いることができる。
図8は、
図7に示したパイロットリレーのポペット弁部のみを拡大して示す断面図である。
図8において、
図7によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0051】
図8に示すポペット弁85は、円柱状の弁軸111を有し、この弁軸111が貫通したガイドリング112を介してハウジング71aに移動自在に支持されている。
ガイドリング112は、第1の実施の形態で示したガイドリング54と同等の単一部材のもので、断面形状が四角形の環状に形成されており、図示してはいないが、
図2に図示した切れ目61と同等の切れ目が形成されている。このガイドリング112は、弁軸111の外周面に装着されて、ハウジング71aの突壁113に保持されている。
このようにポペット弁85がガイドリング112によって支持されていることにより、ポペット弁85の支持が安定し、ポペット弁85の動作の信頼性が高くなる。
【0052】
(ガイドリングの他の実施の形態)
ガイドリングは、
図9に示すように構成することができる。
図9に示すガイドリング121は、第1の半部122と第2の半部123とに分けて構成されている。第1の半部122と第2の半部123は、ガイドリング121の軸方向から見てそれぞれ半円状に形成されている。第1の半部122と第2の半部123の長手方向に見た断面形状、すなわちガイドリング121の周方向とは直交する方向の断面形状は、上述したガイドリング54と同様に四角形である。
【0053】
第1の半部122および第2の半部123の互いに合わせられる両端は、ガイドリング121の軸方向と異なる方向に傾斜した傾斜面122a,123aによって形成されている。このため、第1の半部122と第2の半部123を組み合わせて構成されたガイドリング121は、周方向の2箇所において、軸方向と異なる方向に切れ目124を形成された環状部材となる。
このようにガイドリング121を第1および第2の半部122,123によって構成する場合であっても、上述した実施の形態を採る場合と同様に一つのガイドリング121で軸部材のガイドと軸部材の挿通部のシールとを行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
11…減圧弁、12,72…弁機構、21…貫通穴、31…弁体(軸部材)、43…バルブばね(付勢部材)、44…弁座部材、45…弁体保持部材、46…弁座、47,92…弁孔、48,93…ガイド孔、51…弁栓部、54,101,112,121…ガイドリング、52,75…弁軸、61…切れ目、73…ピストン弁(軸部材)、74…シリンダ孔、86…第1の弁体、87…第1の弁座。