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特許7453021地絡位置検出装置、地絡位置検出方法、及び太陽電池ストリングの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】地絡位置検出装置、地絡位置検出方法、及び太陽電池ストリングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20240312BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240312BHJP
【FI】
H02S50/00
G01R31/52
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020039308
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021141767
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】流田 康一
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103916(JP,A)
【文献】特開2011-075713(JP,A)
【文献】特開平06-095607(JP,A)
【文献】特開2009-103461(JP,A)
【文献】特開平02-131385(JP,A)
【文献】特開平02-186581(JP,A)
【文献】特開2017-060211(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0179708(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0101336(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
G01R 31/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出装置であって、
前記太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続する正極測定端子と負極測定端子と、
アースに接地させる接地端子と、
前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータを含み、前記接地端子を接地して、前記正極測定端子と負極測定端子とを太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続した後に、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなるような電圧を、前記複数のポテンショメータのなかの何れかのポテンショメータの調整により生成する電圧調整部と、
前記何れかのポテンショメータの調整によって前記生成された電圧を前記複数の太陽電池パネルの枚数に対応する第1分圧比で分圧して、前記分圧された電圧と、前記複数の太陽電池パネルの枚数に対応する第2分圧比を用いて生成した基準電圧とを比較して、前記比較した結果を前記複数の太陽電池パネルの位置に対応付けた前記検出の結果を出力する出力部と、
を備え地絡位置検出装置。
【請求項2】
前記出力部は、
前記生成された電圧を前記第1分圧比で分圧する第1分圧回路と、
前記基準電圧を、前記第2分圧比を用いて生成する第2分圧回路と、
前記第1分圧比と前記第2分圧比とを連動して切り替える連動切替部と
を備える請求項1に記載の地絡位置検出装置。
【請求項3】
複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出装置であって、
前記太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続する正極測定端子と負極測定端子と、
アースに接地させる接地端子と、
前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータを含み、前記接地端子を接地して、前記正極測定端子と負極測定端子とを太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続した後に、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなるような電圧を、前記複数のポテンショメータのなかの何れかのポテンショメータの調整により生成する電圧調整部と、
前記何れかのポテンショメータの調整によって前記生成された電圧を、前記複数の太陽電池パネルの位置に対応付けることで前記検出の結果を出力する出力部と、
前記複数のポテンショメータのうちの特定のポテンショメータの調整値を選択する切換部と
を備え、
前記切換部は、
前記特定のポテンショメータの出力を有効にして、他のポテンショメータの出力を制限するガイド
を備える地絡位置検出装置。
【請求項4】
複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出装置であって、
前記太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続する正極測定端子と負極測定端子と、
アースに接地させる接地端子と、
前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータを含み、前記接地端子を接地して、前記正極測定端子と負極測定端子とを太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続した後に、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなるような電圧を、前記複数のポテンショメータのなかの何れかのポテンショメータの調整により生成する電圧調整部と、
前記何れかのポテンショメータの調整によって前記生成された電圧を、前記複数の太陽電池パネルの位置に対応付けることで前記検出の結果を出力する出力部と、
前記生成された電圧を分圧する第1分圧比で分圧する第1分圧回路と、
前記生成された電圧を検出する検出回路の基準電圧を、第2分圧比を用いて生成する第2分圧回路と、
前記第1分圧比と前記第2分圧比とを連動して切り替える連動切替部と
を備え、
前記出力部は、
前記生成された電圧から第1分圧比で分圧された電圧と、前記第2分圧比を用いて生成された前記基準電圧とを比較した結果を、前記検出の結果として出力する、
地絡位置検出装置。
【請求項5】
複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出方法であって、
前記太陽電池ストリングの両端子に正極測定端子と負極測定端子とがそれぞれ接続されて、
接地端子がアースに接地されて、
その後、前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータの何れかのポテンショメータの調整の結果により、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなるような電圧を生成させて、
前記何れかのポテンショメータの調整によって前記生成された電圧を前記複数の太陽電池パネルの枚数に対応する第1分圧比で分圧して、前記分圧された電圧と、前記複数の太陽電池パネルの枚数に対応する第2分圧比を用いて生成した基準電圧とを比較して、前記比較した結果を前記複数の太陽電池パネルの位置に対応付けることで前記検出の結果を出力すること、
を含む地絡位置検出方法。
【請求項6】
前記生成された電圧を前記第1分圧比で第1分圧回路が分圧し、
前記基準電圧を、前記第2分圧比を用いて第2分圧回路が生成し、
連動切替部が前記第1分圧比と前記第2分圧比とを連動して切り替えること
を含む請求項5に記載の地絡位置検出方法。
【請求項7】
複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出方法であって、
前記太陽電池ストリングの両端子に正極測定端子と負極測定端子とをそれぞれ接続して、
接地端子をアースに接地して、
ガイドの配置によって特定のポテンショメータの調整値の出力を有効にして、他のポテンショメータの出力を制限して、
その後、前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータのなかの前記特定のポテンショメータを調整により、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなるような電圧を生成させて、
前記特定のポテンショメータの調整によって前記生成された電圧を、前記複数の太陽電池パネルの位置に対応付けることで前記地絡事故が発生している位置の検出の結果を出力させること、
を含む地絡位置検出方法。
【請求項8】
複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出方法であって、
前記太陽電池ストリングの両端子に正極測定端子と負極測定端子とをそれぞれ接続して、
接地端子をアースに接地して、
その後、前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータの何れかのポテンショメータの調整により、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなり、このような状況の電圧を、前記直列に接続された複数のポテンショメータのうちから決定された前記何れかのポテンショメータの調整によって生成させて、
前記生成された電圧を第1分圧比で第1分圧回路が分圧して、
前記生成された電圧を検出する検出回路の基準電圧を、第2分圧回路が第2分圧比を用いて生成させて、
前記第1分圧比と前記第2分圧比とを連動して切り替えて
前記生成された電圧から第1分圧比で分圧された電圧と、前記第2分圧比を用いて生成された前記基準電圧とを比較した結果を、前記検出の結果として出力させること、
を含む地絡位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地絡位置検出装置、地絡位置検出方法、及び太陽電池ストリングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術として、特許文献1に記載された地絡位置検出装置を例示する。例えば、この地絡位置検出装置は、太陽電池ストリングの発電により発生する電圧を用いて、太陽電池ストリングの内に発生した地絡個所を容易に同定することができる。近年の太陽電池ストリングの中には、太陽電池パネルの枚数を増やして、出力定格電圧を高電圧化したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-103916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外に設置された太陽電池ストリングは、日射量により発電電圧が変化する。しかしながら、この特許文献1に記載された地絡位置検出装置を利用して地絡位置を検出する場合に、太陽電池ストリングの出力電圧が高い状況にあると、同地絡位置検出装置では測定できないときがあった。
【0005】
本発明の目的は、太陽電池ストリングの発電電圧が比較的高い状況のもとでも測定が可能な地絡位置検出装置、地絡位置検出方法、及び太陽電池ストリングの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の太陽電池パネルが直列に接続される太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子と、前記太陽電池ストリングによって発電された電力が供給される他の回路と、の接続が遮断された状態にして、前記太陽電池ストリングにおいて地絡事故が発生している位置を検出する地絡位置検出装置であって、前記太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続する正極測定端子と負極測定端子と、アースに接地させる接地端子と、前記正極測定端子と負極測定端子とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータを含み、前記接地端子を接地して、前記正極測定端子と負極測定端子とを太陽電池ストリングの両端子にそれぞれ接続した後に、前記太陽電池ストリングの両端子に生じている電圧を基にした電流が前記接地端子に流れなくなるような電圧を、前記複数のポテンショメータのなかの何れかのポテンショメータの調整により生成する電圧調整部と、 前記何れかのポテンショメータの調整によって前記生成された電圧を前記複数の太陽電池パネルの枚数に対応する第1分圧比で分圧して、前記分圧された電圧と、前記複数の太陽電池パネルの枚数に対応する第2分圧比を用いて生成した基準電圧とを比較して、前記比較した結果を前記複数の太陽電池パネルの位置に対応付けた前記検出の結果を出力する出力部と、を備える地絡位置検出装置である。
【0007】
さらに本発明は、前記複数のポテンショメータの各ポテンショメータの定格電圧は、前記太陽電池ストリングの正極側及び負極側の両端子間に発生する定格電圧よりも低い。
【0008】
さらに本発明の地絡位置検出装置における前記出力部は、前記複数のポテンショメータの夫々によって生成された電圧を前記生成された前記電圧として選択可能であり、前記複数のポテンショメータのうちの特定のポテンショメータの調整によって生成された電圧を、前記生成された前記電圧として利用する、請求項1または請求項2に記載の地絡位置検出装置を提供する。
【0009】
さらに本発明は、前記複数のポテンショメータのうちの特定のポテンショメータの調整値を選択する切換部を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載の地絡位置検出装置を提供する。
【0010】
さらに本発明の地絡位置検出装置における前記切換部は、前記複数のスイッチのなかの1つのポテンショメータの出力を有効にして、他のポテンショメータの出力を制限するガイドを備える請求項4に記載の地絡位置検出装置を提供する。
【0011】
さらに本発明は、前記生成された電圧を分圧する第1分圧比で分圧する第1分圧回路と、前記生成された電圧を検出する検出回路の基準電圧を、第2分圧比を用いて生成する第2分圧回路と、前記第1分圧比と前記第2分圧比とを連動して切り替える連動切替部とを備え、前記出力部は、前記生成された電圧から第1分圧比で分圧された電圧と、前記第2分圧比を用いて生成された前期基準電圧とを比較した結果を、前記検出の結果として出力する地絡位置検出装置を提供である。
【発明の効果】
【0012】
太陽電池ストリングの発電電圧が比較的高い状況のもとでも測定が可能な地絡位置検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る地絡位置検出装置の概略構成図である。
図2】地絡位置検出装置の動作を説明するための図である。
図3】地絡事故位置の検出例を説明するための図である。
図4】パネル算出・表示部の構成図である。
図5】地絡事故が発生している位置の表示例を説明するための図である。
図6】実施例の地絡位置検出装置の構成図である。
図7】地絡位置検出装置の正面図である。
図8】スイッチのインターロック機構について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態の地絡位置検出装置について説明する。
【0015】
図1は、実施形態に係る地絡位置検出装置100の概略構成図である。
【0016】
地絡位置検出装置100は、複数の太陽電池パネル(photovoltaic panel)が直列に接続された太陽電池ストリングにおいて地絡事故(或いは、対地絶縁不良)が発生した位置や、地絡事故が発生した太陽電池パネルを検出する装置である。
【0017】
なお、以下の説明において、太陽電池ストリングを、単に「ストリング」と呼ぶことがあり、また、太陽電池パネルを、「PVパネル」と呼ぶことがある。また、「地絡事故が発生した位置」と言う場合は、PVパネルに地絡事故が発生している場合の当該PVパネルの位置を指す他、PVパネルの周辺回路(例えば、PVパネルに接続される電源接続線等)に地絡事故が発生している場合の当該周辺回路の位置を指すことがある。
【0018】
ストリング1は、複数のPVパネル11、12、・・・、1nを直列に接続することにより構成されている。また、PVパネル11、12、・・・、1nは、それぞれ、所定個数の太陽電池セルを含んで構成されている。
【0019】
また、ストリング1の発電電力の給電線Lp及び給電線Lnのそれぞれは、開閉器31及び開閉器32を介して、パワーコンディショナ(以下、単に「PCS」と呼ぶ)20に接続されている。つまり、ストリング1の正極(+)側の出力端子であるP相端子2は、給電線Lp及び開閉器31を介して、PCS20の+側の入力端子に接続されている。また、ストリング1の負極(-)側の出力端子であるN相端子3は、給電線Ln及び開閉器32を介して、PCS20の-側の入力端子に接続されている。
【0020】
PCS20は、ストリング1から供給される直流の発電電力を、例えばDC/AC変換回路を用いて交流電力に変換し、この変換した交流電力を商用系統などの電力系統へ出力する。
【0021】
なお、ストリング1からPCS20に電力を供給する給電線Lp及び給電線Lnは、接続箱や中継箱等により中継されて配線されており、開閉器31及び開閉器32は、この接続箱や中継箱等に収納されている。
【0022】
また、例えば、PCS20の-側の入力端子に繋がる負極側の電源線21は、PCS20の内部においてアースEに接地されている。そして、開閉器32がON(接続状態)の場合に、ストリング1のN相端子3は、給電線Lnと開閉器32と電源線21とを介して、PCS20内においてアースEに接地される。また、開閉器31及び開閉器32がOFF(開放状態)の場合に、ストリング1の全体は、PCS20及びアースEへの接続が開放されたフローティング状態になる。
【0023】
地絡位置検出装置100は、ストリング1において地絡事故が発生した位置を検出する。地絡位置検出装置100は、正極測定端子101と、負極測定端子102と、接地端子103と、電圧検出部110と、電圧調整部120と、パネル算出・表示部140とを備えている。
【0024】
地絡位置検出装置100を使用する測定者は、ストリング1に生じている地絡事故の位置を検出する場合に、まず、開閉器31及び開閉器32のそれぞれをOFFにする。これにより、ストリング1は、PCS20との接続が遮断される。また、ストリング1は、地絡が発生していなければフローティング状態になる。ストリング1をフローティング状態にするように開閉器31及び開閉器32のそれぞれをOFFにした後に、地絡位置検出装置100は、ストリング1に生じている地絡事故の位置を検出する。なお、地絡位置検出装置100は、地絡事故の位置を、例えば、地絡事故が発生したPVパネルの位置として検出してもよい。
【0025】
なお、ストリング1をPCS20との接続を遮断してフローティング状態にしても、PVパネル10の入射面に太陽光が照射されている場合には、PVパネル10自体は、継続して発電して電圧を出力する。上記のように、PCS20との接続を遮断した場合には、ストリング1からPCS20に電力は供給されない。
【0026】
地絡位置検出装置100の正極測定端子101は、テストリード101Aを介して、ストリング1のP相端子2に接続される。また、負極測定端子102は、テストリード102Aを介して、ストリング1のN相端子3に接続される。また、接地端子103は、例えば、地中に打ち込んだアース棒等に接地線103Aを介して接続され、アースEに接地される。もしくは、測定場所となる接続箱内のアース端子を介して接続され、アースEに設置される。また、電圧検出部110は、第1電圧計111と第2電圧計112と第3電圧計113とを備える。第1電圧計111と第2電圧計112とは、単極性の直流電圧計であり、第3電圧計113は、両極性の直流電圧計である。
【0027】
第1電圧計111は、+端子がノードd2及び+電圧線DCLPを介して正極測定端子101に接続され、-端子がノードd1を介して第2電圧計112の+端子に接続される。第2電圧計112の-端子は、ノードd3及び-電圧線DCLNを介して負極測定端子102に接続される。また、第3電圧計113は、一端が、ノードd1を介して、第1電圧計111の-端子と、第2電圧計112の+端子とに接続される。また、第3電圧計113の他端は、接地端子103に接続される。
【0028】
なお、地絡位置検出装置100において、第1電圧計111と第2電圧計112とは、ストリング1が発電する電圧が測定できる計測レンジを有する。例えば、第1電圧計111と第2電圧計112と第3電圧計113は、900Vの計測レンジを有する。
【0029】
なお、第1電圧計111、第2電圧計112及び第3電圧計113は、後述するポテンショメータの分圧比など測定条件に与える影響を少なくするように内部インピーダンスの高いものを用いるとよい。
【0030】
また、電圧調整部120は、一又は複数のポテンショメータを含んで構成される。例えば、電圧調整部120が一つのポテンショメータ(121)を含んで構成される場合を先に説明する。ポテンショメータ121は、一方の末端aが、ノードd2を介して、正極測定端子101と、第1電圧計111の+端子とに接続される。また、ポテンショメータ121は、他方の末端bが、ノードd3を介して、負極測定端子102と、第2電圧計112の-端子とに接続される。また、ポテンショメータ121の摺動端子cは、ノードd1を介して、第1電圧計111の-端子と、第2電圧計112の+端子と、第3電圧計113の一方の端子と、に接続される。このポテンショメータ121の端子aと端子bとの間の抵抗値は、地絡位置検出装置100の接続によるストリング1の状態の変化を防ぐため、例えば、100kΩから数100kΩ程度にする。このポテンショメータ121の定格電圧と定格電力は、ストリング1の定格開放電圧、この定格開放電圧と抵抗値とによって流れる電流によって生じる電力などに対して十分に余裕を持つことが望ましい。
【0031】
ところで、実際に回路を構成するには、市場で流通しているメーカーの規格品の中から入手が容易な部品を利用することが多い。ポテンショメータについても同様であるが、本実施形態のように比較的高電圧の回路に適用できるポテンショメータの種類は多くはない。そのため、定格電圧、定格電力などについて所望の条件を満たすポテンショメータを調達できないことが生じうる。このような場合には、複数のポテンショメータを直列に接続するなどの代替え策を適用するとよい。この詳細については、後述する。
【0032】
パネル算出・表示部140は、地絡地点の位置を導出して、その地絡地点の位置を表示する。この詳細については、後述する。
【0033】
このように、本実施形態の地絡位置検出装置100では、フローティング状態にあるストリング1の各端子(P相端子2及びN相端子3)の間にポテンショメータ121の端子aと端子bがそれぞれ接続される。
【0034】
地絡位置検出装置100は、フローティング状態にあるストリング1のP相端子2とN相端子3のそれぞれに、電圧計を接続して対地電圧を計測する。そして、この2つの電圧計を用いる方法は、本実施形態において「2電圧計法」と呼ぶ。この「2電圧計法」を用いることにより、地絡位置検出装置100は、フローティング状態にあるストリング1のP相端子2とアースEとの間の電圧と、N相端子3とアースEとの間の電圧と、を安定して測定することができる。この「2電圧計法」の詳細については、前述の特許文献1を参照してよい。
【0035】
また、図2は、地絡位置検出装置100の動作を説明するための図である。図3は、地絡事故位置の検出例を説明するための図である。まず、地絡位置検出装置100の動作について、図2を参照して説明する。動作の説明を簡素化するために、ここでは、1つのポテンショメータ121を利用する構成を例示して説明する。
【0036】
地絡位置検出装置100を使用する測定者は、最初に、接地端子103を接地線103AによりアースEに接地する。次に、測定者は、正極測定端子101をテストリード101Aによりストリング1のP相端子2に接続し、負極測定端子102をテストリード102Aによりストリング1のN相端子3に接続する。
【0037】
続いて、測定者は、ポテンショメータ121の摺動端子cの位置を変化させることにより、合成抵抗Rpと合成抵抗Rnとを変化させる。この合成抵抗Rpは、ポテンショメータ121の抵抗(端子aと端子cとの間の抵抗)と第1電圧計111の内部インピーダンスとの合成抵抗である。また、合成抵抗Rnは、ポテンショメータ121の抵抗(端子cと端子bとの間の抵抗)と第2電圧計112の内部インピーダンスとの合成抵抗である。
【0038】
より具体的には、測定者は、ノードd1の電位Vmが、アースEの電位に対して略0V(予め定めた電位差以下)になるように、ポテンショメータ121の摺動端子cの位置を調整する。これにより、ノードd1の電位Vmが、アースEの電位に対して略0Vになった場合、第3電圧計113に印加される電圧Vgが、略0V(例えば、1V以下)になっている。この場合、第3電圧計113の内部抵抗を介して流れる電流Igは、略0A(アンペア)になる。
【0039】
つまり、P相端子2とアースEとの間の電圧(P-E電圧)に基づいて第1電圧計111及び第3電圧計113に流れる電流Ipが、N相端子3とアースEとの間の電圧(N-E電圧)に基づいて第2電圧計112及び第3電圧計113に流れる電流Inに等しくなるようにする。これにより、第3電圧計113において、電流Ipと電流Inとが打ち消し合い、第3電圧計113に流れる電流Igは、略0Aになる。このように調整された段階で、ポテンショメータ121の「0点調整」が完了する。
【0040】
なお、以下の説明において、「ストリング1のP相端子2とN相端子3との間の電圧」を、単に、「P-N電圧」と記載し、「ストリング1のP相端子2とアースEとの間の電圧」を、単に「P-E電圧」と記載し、「ストリング1のN相端子3とアースEとの間の電圧」を、単に「N-E電圧」と記載することがある。
【0041】
このように、第3電圧計113に印加される電圧Vgを略0Vにするようにポテンショメータ121の摺動端子cの位置を調整する「0点調整」を行うことにより、ノードd1の電位Vmは、アースEの電位に対して略0V(予め定めた電位差以下)になる。
【0042】
これにより、P-E電圧と、N-E電圧と、合成抵抗Rpと、合成抵抗Rnと、の間に、次の式に示す比例関係が成立する。すなわち、P-E電圧とN-E電圧との電圧比が、合成抵抗Rpと合成抵抗Rnとの抵抗比に等しくなる。
【0043】
(P-E電圧)/(N-E電圧)=Rp/Rn
【0044】
また、ノードd1の電位VmがアースEの電位に等しくなることにより、P相端子2とアースEとの間のP-E電圧は、正極測定端子101とノードd1との間の電圧になる。また、N相端子3とアースEとの間のN-E間電圧は、負極測定端子102とノードd1との間の電圧になる。これにより、P相端子2の対地電圧は、第1電圧計111により測定可能になり、N相端子3の対地電圧は、第2電圧計112により測定可能になる。
【0045】
次に、地絡事故が発生した位置の算出方法について説明する。
【0046】
図2において、ストリング1のP-N電圧は、式(1)に示す関係がある。
【0047】
(P-E電圧)+(N-E電圧)=(P-N電圧) ・・・(1)
【0048】
一方、PVパネル10の1枚当りのパネル平均電圧Vavは、パネル枚数をnとすれば、式(2)に基づいて算出できる。
【0049】
Vav=(P-N電圧)/n ・・・(2)
【0050】
そして、P相端子2を起点とする地絡事故位置の算出には、式(3)を用いるとよい。
【0051】
(P-E電圧)/Vav ・・・(3)
【0052】
また、N相端子3を起点とする地絡事故位置の算出には、式(4)を用いるとよい。
【0053】
(N-E電圧)/Vav ・・・(4)
【0054】
具体的な数値例を提示して説明する。例えば、P-E電圧を225Vに、N-E電圧を275Vに、さらに説明を簡単にするためパネル枚数を10枚とすれば、ストリング1のP-N電圧は、式(5)に示す関係にある。また、パネル平均電圧は、式(6)に示す関係にある。
【0055】
(P-N電圧)=225V+275V=500V ・・・(5)
【0056】
500V/10=50V ・・・(6)
【0057】
従って、地絡事故が発生した位置の算出は、P相端子2を起点とすれば、P-E電圧に基づいて、式(7)示す関係にある。
【0058】
225V/50V=4.5 ・・・(7)
【0059】
これにより、図3の地絡事故位置の検出例を説明するための図に示すように、P相端子2から5枚目のPVパネル(5)の位置で地絡事故が発生したと判定される。N相端子3を起点とするときには、P-E電圧に代えてN-E電圧を用いることにより、N相端子3から6枚目のPVパネル(5)の位置で地絡事故が発生したと判定される。なお、地絡事故の発生は、PVパネル(5)自身において地絡事故が発生した場合の他、PVパネル(5)の周辺回路で地絡事故が発生する場合もあるが、同じ検出方法でその地絡事故を検出できる。
【0060】
次に、図4を参照して、パネル算出・表示部140の一例について説明する。図4は、パネル算出・表示部140の構成図である。この図4に示すパネル算出・表示部140は、PVパネル10の枚数が例えば12枚から22枚までの範囲内の各枚数に対応できるように構成されている。このパネル算出・表示部140は、抵抗分圧器150と、基準電圧発生部160と、比較部170と、表示部180と、を備えている。
【0061】
このパネル算出・表示部140は、第3電圧計113の電圧Vgが略0Vになるように、ポテンショメータ121の「0点調整」が行われた後に、ストリング1のN相端子3とアースEとの間のN-E電圧に基づいて、ストリング1において地絡事故が発生した位置を検出して表示する。
【0062】
抵抗分圧器150は、抵抗R61と抵抗R62とが直列に接続された抵抗分圧回路で構成される。抵抗R61の一端は、ノードd1を介して、ポテンショメータ121の摺動端子cに接続され、抵抗R61の他端は、抵抗R62の一端に接続される。抵抗R62の他端は、-電圧線DCLN及び負極測定端子102を介して、ストリング1のN相端子3に接続される。なお、抵抗R61と抵抗R62とによって分圧され、抵抗R62の両端に発生する電圧は、地絡位置検出装置100の内部回路に適した電圧になる。この抵抗R62の両端に発生する電圧は、ノードd1の電位Vmの大きさに比例する。
【0063】
また、-電圧線DCLN及び負極測定端子102は、このパネル算出・表示部140の回路電源(不図示)の低電位側のコモン(COM)端子に接続されている。つまり、-電圧線DCLNは、パネル算出・表示部140を構成する回路のCOM(共通線)になる。
【0064】
また、抵抗R62の両端には、コンデンサC1と定電圧ダイオードZ1とが並列に接続される。このコンデンサC1は、抵抗R62に印加される電圧が急激に変化することを抑制する。また、電源投入時には、コンデンサC1は、いわゆるソフトスタート回路として機能する。例えば、コンデンサC1を設けたことにより、抵抗R62に印加される電圧は電源投入時に0Vから徐々に立ち上がるようになる。定電圧ダイオードZ1は、過電圧保護用に設けられている。これにより、後段の比較部170の動作状態が安定する前に過電圧が印加されないように保護できる。
【0065】
この抵抗分圧器150の構成により、抵抗R61と抵抗R62との接続点であるノードf1には、N-E電圧を分圧した分圧電位信号Vmsが発生する。なお、分圧電位信号Vmsは、-電圧線DCLNに対して、正電圧となる。
【0066】
この分圧電位信号Vmsは、地絡事故が発生した位置が、N相端子3から数えて1枚目のPVパネル(或いは、1枚目PVパネルの周辺回路)である場合に最も電圧が低くなり、N相端子3から数えたPVパネルの枚数が多くなればなるほど、電圧が上昇する。この分圧電位信号Vmsは、比較部170に供給される。
【0067】
基準電圧発生部160は、抵抗R1から抵抗R23が直列に接続された抵抗分圧回路で構成される。この抵抗分圧回路は、この抵抗分圧回路の両端に印加されるストリング1のP-N電圧に基づいて、各PVパネルに対応する判定基準電圧ref1からref22を生成する。
【0068】
抵抗R23は、一端が+電圧線DCLP及び正極測定端子101を介してストリング1のP相端子2に接続され、他端がノードh23を介して、抵抗R22の一端に接続される。抵抗R22の他端がノードh22を介して、抵抗R21の一端に接続され、抵抗R21の他端がノードh21を介して、抵抗R20(不図示)の一端に接続される。一部の図示を省略するが同様に抵抗R20から抵抗R16まで繰り返す。抵抗R16(不図示)の他端は、ノードh15を介して、抵抗R14の一端に接続され、抵抗R14の他端は、ノードh14を介して、抵抗R13の一端に接続され、抵抗R13の他端は、ノードh13を介して、抵抗R12の一端に接続され、抵抗R12の他端は、ノードh12を介して、抵抗R11の一端に接続される。以下、同様にして、抵抗R11から抵抗R1までが直列に接続される。
【0069】
また、ノードh12からノードh21までの何れかと、ノードh22との間には、図4において示していないバイパス回路が並列に接続されるように構成されている。例えばこのバイパス回路は、スイッチSWR2(図6)によって切り替えることができる。例えば、スイッチSWR2は、ストリング1を構成するパネル枚数が12枚である場合に、ノードh12とノードh22との間を短絡させて、ストリング1を構成するパネル枚数が14枚である場合に、ノードh14とノードh22との間を短絡させる。これにより、ストリング1内のPVパネルの枚数に応じて抵抗R12から抵抗R22までの間のインピーダンスを切り換えることができることから、地絡位置検出装置100は、ストリング1内のPVパネルの枚数に応じて、抵抗分圧器150の抵抗62のインピーダンスと、判定基準電圧ref1からref22の値を変更して、PVパネルの枚数に影響されることなく地絡事故が発生した位置を表示することができる。
【0070】
なお、ノードh23と、-電圧線DCLNとの間に、コンデンサC2と定電圧ダイオードZ2とが接続される。このコンデンサC2は、スイッチSWR2を切り換える場合に、ノードh23の電圧が急激に変化することを抑制する。また、電源投入時には、コンデンサC2は、コンデンサC1と同様に、いわゆるソフトスタート回路として機能する。例えば、コンデンサC2を設けたことにより、比較部170に供給する基準電圧を電源投入時に0Vから徐々に立ち上げることができる。定電圧ダイオードZ2は、過電圧保護用に設けられている。これにより、後段の比較部170の動作状態が安定する前に過電圧が印加されないように保護できる。
【0071】
この構成により、基準電圧発生部160では、ノードh1において、1枚目のPVパネルに対応した判定基準電圧ref1を生成し、以下、同様にして、各PVパネルに対応した判定基準電圧ref2からref22を生成する。例えば、基準電圧発生部160は、ノードh13において、13枚目のPVパネルに対応した判定基準電圧ref13を生成し、ノードh14において、14枚目のPVパネルに対応した判定基準電圧ref14を生成する。これらの判定基準電圧ref1からref22は、比較部170に供給される。なお、ノードh1において生成される判定基準電圧ref1は、-電圧線DCLN(COM)の電位になる。
【0072】
比較部170は、22枚のPVパネルのそれぞれに対応して設けられる22個のコンパレータCP1からCP22を有している。このコンパレータCP1からCP22は、例えばオープンコレクタ出力のコンパレータである。
【0073】
この比較部170において、コンパレータCP1は、ストリング1のN相端子3側から数えて1枚目のPVパネルに対応するコンパレータであり、+入力端子(+)には、判定基準電圧ref1が入力され、-入力端子(-)には、分圧電位信号Vmsが入力される。
【0074】
以下、同様にして、各PVパネルに対応するコンパレータのそれぞれの+入力端子には、対応するPVパネルの判定基準電圧が入力され、-入力端子には、分圧電位信号Vmsが入力される。例えば、コンパレータCP13は、ストリング1のN相端子3側から数えて13枚目のPVパネルに対応するコンパレータであり、+入力端子には、判定基準電圧ref13が入力され、-入力端子には、分圧電位信号Vmsが入力される。
【0075】
また、コンパレータCP14は、ストリング1のN相端子3側から数えて14枚目のPVパネルに対応するコンパレータであり、+入力端子には、判定基準電圧ref14が入力され、-入力端子には、分圧電位信号Vmsが入力される。なお、コンパレータCP1からCP14は、オープンコレクタ出力型のコンパレータである。
【0076】
表示部180は、22枚のPVパネルのそれぞれに対応して設けられる22個の発光ダイオードLED1からLED22と、各発光ダイオードLED1からLED22のそれぞれのカソード側に直列に接続される22個の電流制限用の抵抗R31からR52と、を有している。
【0077】
そして、例えば、発光ダイオードLED1は、ストリング1のN相端子3側から数えて1枚目のPVパネルに対応する表示器であり、アノード側が回路電源の+Vcc(例えば、DC+9V)に接続され、カソード側が、抵抗R31を介して、コンパレータCP1のオープンコレクタ出力端子に接続されている。また、例えば、発光ダイオードLED12は、ストリング1のN相端子3側から数えて12枚目のPVパネルに対応する表示器であり、アノード側が回路電源の+Vccに接続され、カソード側が、抵抗R42を介して、コンパレータCP13のオープンコレクタ出力端子に接続されている。発光ダイオードLED13は、ストリング1のN相端子3側から数えて13枚目のPVパネルに対応する表示器であり、アノード側が回路電源の+Vccに接続され、カソード側が、抵抗R43を介して、コンパレータCP13のオープンコレクタ出力端子に接続されている。また、例えば、発光ダイオードLED14は、ストリング1のN相端子3側から数えて14枚目のPVパネルに対応する表示器であり、アノード側が回路電源の+Vccに接続され、カソード側が、抵抗R44を介して、コンパレータCP14のオープンコレクタ出力端子に接続されている。さらに、発光ダイオードLED21は、ストリング1のN相端子3側から数えて21枚目のPVパネルに対応する表示器であり、アノード側が回路電源の+Vccに接続され、カソード側が、抵抗R51を介して、コンパレータCP21のオープンコレクタ出力端子に接続されている。発光ダイオードLED22は、ストリング1のN相端子3側から数えて22枚目のPVパネルに対応する表示器であり、アノード側が回路電源の+Vccに接続され、カソード側が、抵抗R52を介して、コンパレータCP22のオープンコレクタ出力端子に接続されている。上記の表示部180の説明の中で、一部を省略しているが、この省略した説明の部分については、上記の説明と同様に構成するとよい。
【0078】
上記構成のパネル算出・表示部140の構成において、例えば、ストリング1のN相端子3側から数えて13枚目のPVパネルに地絡事故が発生したとする。この場合、分圧電位信号Vmsは、ポテンショメータ121の「0点調整」を行うことにより、13枚のPVパネルに対応する電圧値になる。
【0079】
そして、この分圧電位信号Vmsが、各コンパレータCP1からCP22により比較されることにより、発光ダイオードLED1から発光ダイオードLED13までが点灯し、発光ダイオードLED14から発光ダイオードLED22が消灯する。つまり、発光ダイオードLED1から発光ダイオードLED13までが点灯することにより、地絡事故が発生した位置は、N相端子3側から数えて13枚目のPVパネル、或いは当該PVパネルの周辺回路であることが示される。
【0080】
なお、図4に示す回路に図示していない電源、電源スイッチ、保護回路などを適宜設けてよい。保護回路には、例えば、過電流を遮断するためのフューズ、逆接続時の保護のためのダイオードなどが含まれる。
【0081】
例えば、図5は、地絡事故が発生している位置の表示例を説明するための図である。この図5(A)に示すように、ストリング1のN相端子3側から数えて13枚目のPVパネル又はその周辺回路で地絡事故が発生している場合、LEDによる表示は、LED1からLED13までが点灯し、LED14からLED22は消灯する。なお、LEDの一部(LED15からLED21まで)の図示を省略している。
【0082】
また、ストリング1のN相端子3側から数えて8枚目のPVパネル又はその周辺回路で地絡事故が発生している場合、LEDによる表示は、LED1からLED8までが点灯し、LED9からLED22は消灯する。
【0083】
このように、地絡位置検出装置100では、ストリング1において地絡事故が発生した場合に、ポテンショメータ121を調整して第3電圧計113の計測値が略0Vになるように「0点調整」を行う。そして、地絡位置検出装置100は、表示部180により、ストリング1のN相端子3側から数えて1枚目のPVパネルから、地絡事故が発生した位置に対応するPVパネルパネルまでの各PVパネルについて、それぞれに対応する発光ダイオードLEDを点灯させる。これにより、ストリング1において地絡事故が発生した位置は、N相端子3側から数えて何枚目のPVパネル(或いは、その周辺回路)であるかが分かり易く表示される。
【0084】
これにより、地絡位置検出装置100では、複数のPVパネルが直列に接続されたストリング1において、地絡事故が発生している位置を容易に検出して、分かり易く表示することができる。
【0085】
(実施例)
実施例を示しこれについて説明する。上記の実施形態の説明では、1つのポテンショメータを利用する構成を主に説明したが、本実施例では、複数のポテンショメータを利用する事例について説明する。
【0086】
図6は、実施例の地絡位置検出装置100の構成図である。
【0087】
電圧調整部120Aは、電圧調整部120に代わるもので、ポテンショメータ121p、121m、121nと、スイッチSWp、SWm、SWnとを備える。
【0088】
ポテンショメータ121p、121m、121nは、記載の順に直列に接続され、その両端が、端子aと端子bに接続される。例えば、ポテンショメータ121p、121m、121nの夫々は、定格電圧が500V以上、許容電力損失が2W以上のタイプを利用する。各ポテンショメータを直列接続することにより、電圧調整部120としての実質的な定格電圧を1500Vまで高めることができる。ポテンショメータ121p、121m、121nを区別することなく1つのポテンショメータとして説明するときに、これをポテンショメータ121Sと呼び、複数のポテンショメータ全体のことを、複数のポテンショメータ121Pと呼ぶことがある。
【0089】
その一方で、各ポテンショメータを直列接続したために、電圧の調整範囲が分割されることになる。また、各ポテンショメータの摺動端子の電圧が互いに異なるものになるために、各ポテンショメータの摺動端子を互いに接続することができない。そこで、スイッチSWp、SWm、SWnを利用して、各ポテンショメータの摺動端子からの出力を切り換えるように構成する。
【0090】
スイッチSWp、SWm、SWnは、ポテンショメータ121p、121m、121nの摺動端子にそれぞれ対応付けられており、ONにしているときに限り、各ポテンショメータの摺動端子からの出力を有効にする。例えば、ポテンショメータ121p、121m、121nの摺動端子間の耐圧を考慮して、スイッチSWp、SWm、SWnは、それぞれが独立して構成されたものを利用する。なお、スイッチSWp、SWm、SWnは、後述するインターロック機構によって、そのうちの1つのみがONになるように規制される。
【0091】
パネル算出・表示部140Aは、パネル算出・表示部140に対して、さらにロータリースイッチSWRを備える点が異なる。
【0092】
ロータリースイッチSWRには、2つの切替回路(SWR1とSWR2)が共通の回転軸に設けられていて、切替回路SWR1とSWR2は連動して切り替わる。
【0093】
抵抗R62を、互いに直列に接続された抵抗R71からR91を用いて構成する。さらに、切替回路SWR1は、抵抗R82からR91の負電圧側の接続点のなかの何れかを抵抗R91の正電圧側の接続点に接続する。また、切替回路SWR2は、抵抗R12からR21の負電圧側の接続点のなかの何れかを抵抗R22の負電圧側(抵抗R21の正電圧側)の接続点に接続する。このロータリースイッチSWRの操作によって、ストリング1内のPVパネルの枚数に応じた選定が可能になる。
【0094】
図7は、地絡位置検出装置100の正面図である。図8は、スイッチのインターロック機構について説明するための図である。
【0095】
図7に示すように、地絡位置検出装置100の正面パネルFPには、その操作に必要とされる各種スイッチと、表示部180のLED1-22と、各電圧計(111-113)、端子対TTなどが配置されている。端子対TTには、電圧計113が表示する電圧と同電圧が掛かる。例えば、ここにデジタルテスタを接続することで電圧計113が表示する電圧の大きさを数値で読み取ることができる。
【0096】
各種スイッチとして、電源スイッチPOWER、パネル直列数切り換えスイッチSWR、バランス調整用のスイッチSWp、SWm、SWnが設けられている。スイッチSWp、SWm、SWnは、選択的にONに操作されることで、ポテンショメータ121p、121m、121nの何れかを有効にする。
【0097】
電源スイッチPOWERは、例えば、電源からの給電状態(ON/OFF)を切り換えるためのトグルスイッチである。
【0098】
パネル直列数切り換え用のスイッチSWRは、例えば、ストリング1内のPVパネルの枚数を設定するためのロータリースイッチである。図7に示す例では、「12」、「13」、「14」、「20」、「21」、及び「22」の各枚数を選択可能にしたものである。
【0099】
図7に示すスイッチSWp、SWm、SWnは、トグルスイッチであり、レバーを下方に倒したときがONになる。スイッチSWp、SWm、SWnは、独立して操作可能であるが、この中で2つ以上のスイッチをONにすると、ONにしたスイッチに対応するポテンショメータの摺動端子間が短絡する。これを抑制するために、各トグルスイッチのレバーの操作を規制するためのインターロック機構が、トグルスイッチのレバーの可動範囲内に設けられている。以下に示すガイドGは、機械的に規制するインターロック機構の一例である。
【0100】
ガイドGは、正面パネルFPの面に平行に配置された板状の部材で構成されている。正面パネルFPを平面視したときのガイドGの外形は、角が取れた略長方形であり、その中央部に正面パネルFPの面の法線方向に貫通する略矩形の長穴が設けられている。
【0101】
例えば、正面パネルFPには、ガイドGを指示する支持部GPが設けられている。図に示す支持部GPは、正面パネルFPから突起するピン形状に形成され、スイッチSWp、SWm、SWnが配列される方向に所定の距離だけ隔てた位置に正面パネルFPに係止されている。ガイドGは、その長穴の中に2つの支持部GPが配置されるように、正面パネルFP上に配置されている。
【0102】
ガイドGは、2つの支持部GPが並ぶ方向に正面パネルFPに沿って摺動可能な状態で、支持部GPによって保持されている。ガイドGが配置される位置は、ユーザの操作によって決定される。スイッチSWp、SWm、SWnがともにOFFであれば、レバーが上方に倒れているため、ガイドGを長穴の方向に移動させることができる。
【0103】
図8(a)に示すように、ガイドGのスイッチSWp、SWm、SWn側の辺の一部には、外周側から長穴まで達する切り欠きが設けられている。
【0104】
例えば、図8(b)に示すように、ガイドGの切り欠きの位置がスイッチSWmに対応する位置にあるときに、スイッチSWmをONにすることが可能になり、ガイドGがこの位置にある場合には、スイッチSWp、SWnをONにすることが規制される。スイッチSWmに対応する位置とは、スイッチSWmをONにしたときのレバーの位置に相当する位置のことである。
【0105】
図8(c)に示すように、ガイドGの位置を、スイッチSWnの方向に、ガイドGの長穴の端部が一方の支持部GPに当接する位置まで移動させると、スイッチSWpをONにすることが可能になり、スイッチSWm、SWnをONにすることが規制される。なお、図示を省略するがガイドGの位置を、スイッチSWpの方向に移動させた場合も上記と同様に、スイッチSWnをONにすることが可能になり、スイッチSWp、SWmをONにすることが規制される。なお、ガイドGの切り欠き部分の形状は図8に示すものに制限されず、これ代えて、外周側から長穴に向かう所定の深さの凹部であってもよい。
【0106】
上記のガイドGの場合、支持部GPが正面パネルFPの面から突出していることで、ガイドGがこれによって係止されていたが、ガイドの構成はこれに制限されない。例えば、これに代えて、正面パネルFPの面にレールが設けられていて、ガイドG側に設けられた支持部がそのレールに係止されるように構成してもよい。この場合も、ガイドGは、レールの延伸方向、すなわちスイッチSWp、SWm、SWnの配列方向に移動させることができ、スイッチSWp、SWm、SWnの操作も規制できる。
【0107】
また、地絡位置検出装置100では、天候等によりストリング1のP-N電圧が変化した場合、例えば、P-N電圧が500Vから400V等に変化した場合においても、判定基準電圧ref1からref14と分圧電位信号Vmsとが、P-N電圧の大きさに比例して変化する。これにより、地絡位置検出装置100では、天候等によりストリング1のP-N電圧が変化した場合にも、支障なく、地絡事故位置を検出することができる。
【0108】
なお、地絡位置検出装置100では、ストリング1のN相端子3側の電位を基準にして回路を構成しているが、P相端子2側の電位を基準にしても回路を構成することができる。
【0109】
また、地絡位置検出装置100は、ストリング1のN相端子3側から数えて1枚目のPVパネルから地絡事故が発生している位置に対応するPVパネルまでの各PVパネルについて、それぞれのPVパネルに対応するLEDを点灯するようにしている。これに限定されず、地絡位置検出装置100では、地絡事故が発生している位置に対応するPVパネルのみを検出して表示することも可能である。例えば、地絡位置検出装置100では、ストリング1のN相端子3側の電位を基準にして地絡事故が発生している位置を検出するとともに、P相端子2側の電位を基準にして地絡事故が発生している位置を検出する。これにより、地絡位置検出装置100は、地絡事故が発生している位置に対応するPVパネルのみを検出して表示することができる。
【0110】
上記の実施形態によれば、地絡位置検出装置100は、複数の太陽電池パネル10が直列に接続される太陽電池ストリング1の正極側及び負極側の両端子と、太陽電池ストリング1によって発電された電力が供給される他の回路との接続が遮断された状態にして、太陽電池ストリング1において地絡事故が発生している位置を検出する。地絡位置検出装置100は、太陽電池ストリング1の両端子にそれぞれ接続する正極測定端子101と負極測定端子102と、アースに接地させる接地端子103と、正極測定端子101と負極測定端子102とに電気的に接続される互いに直列に接続された複数のポテンショメータ121を含む。接地端子103を接地して、正極測定端子101と負極測定端子102とを太陽電池ストリング1の両端子にそれぞれ接続した後に、電圧調整部120は、太陽電池ストリング1の両端子に生じている電圧を基にした電流が接地端子103に流れなくなるような電圧を、複数のポテンショメータ121Pのなかの何れかのポテンショメータ121Sの調整により生成する。パネル算出・表示部140は、電圧調整部120の何れかのポテンショメータ121Sの調整によって生成された電圧を、複数の太陽電池パネル10の位置に対応付けることで検出の結果を出力する。これによって、太陽電池ストリング1の発電電圧が比較的高い状況のもとでも測定が可能になる。
【0111】
太陽電池ストリング1の正極側及び負極側の両端子間に発生する電圧が、複数のポテンショメータ121Pを構成する各ポテンショメータ121Sの定格電圧を超える場合があるが、幾つかのポテンショメータ121Sを直列に接続することにより、各ポテンショメータ121Sの定格電圧の合計を超えないようにするとよい。例えば、上記の範囲内であれば、晴天時などの発電電圧が比較的高いときも、曇天時の発電電圧が比較的低いときでも、天候の良否によらずに共通の地絡位置検出装置100を用いることができる。
【0112】
パネル算出・表示部140は、複数のポテンショメータ121Pの夫々によって生成された電圧を生成された電圧として選択可能であり、複数のポテンショメータ121Pのうちの特定のポテンショメータ121Sの調整によって生成された電圧を、生成された電圧として利用するとよい。
【0113】
パネル算出・表示部140は、複数のポテンショメータ121Pのうちの特定のポテンショメータ121の調整値を選択するバランス調整用のスイッチSWp、SWm、SWnを備えるようにした。これらのスイッチを切換部と呼ぶ。切換部は、複数のスイッチのなかの1つのポテンショメータ121Sの出力を有効にして、他のポテンショメータ121Sの出力を制限するガイドGを備えることで、ポテンショメータ121S間の短絡を抑制する。
【0114】
パネル算出・表示部140は、生成された電圧を分圧する第1分圧比で分圧する抵抗分圧器150A(第1分圧回路)と、生成された電圧を検出する比較部170(検出回路)の基準電圧を、第2分圧比を用いて生成する基準電圧発生部160A(第2分圧回路)と、第1分圧比と第2分圧比とを連動して切り替えるロータリースイッチSWR(連動切替部)とを備えることにより、生成された電圧から第1分圧比で分圧された電圧と、第2分圧比を用いて生成された前記基準電圧とを比較した結果を、検出の結果として出力することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…ストリング(太陽電池ストリング)、10,11,12,13,1n…PVパネル(太陽電池パネル)、100…地絡位置検出装置、101…正極測定端子(測定端子)、102…負極測定端子(測定端子)、103…接地端子、110…電圧検出部、111…第1電圧計、112…第2電圧計、113…第3電圧計、120、120A…電圧調整部、121、121P、121S、121p、121m、121n…ポテンショメータ、140、140A…パネル算出・表示部(出力部)、150、150A…抵抗分圧器、160、160A…基準電圧発生部、SWp、SWm、SWn…スイッチ、170…比較部、180…表示部
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