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特許7453027バレルユニット、ホイール、及び、駆動ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】バレルユニット、ホイール、及び、駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   B60B 19/00 20060101AFI20240312BHJP
   B60B 19/12 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60B19/00 H
B60B19/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020047939
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146849
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】大石 一真
(72)【発明者】
【氏名】富安 健也
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137390(JP,A)
【文献】特開2000-335726(JP,A)
【文献】特開2007-196867(JP,A)
【文献】特開2018-203041(JP,A)
【文献】特開平06-054941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 19/00 - 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるバレルホルダーの外周に支持されるバレル支持軸と、
前記バレル支持軸に支持されるバレルと、
前記バレルを前記バレル支持軸に回転可能に支持させる軸受と、を備え、
前記バレルは、
前記軸受の軸方向外側を覆う軸受覆い部と、
前記軸受に回転可能に支持されるバレル本体部と、
前記バレル本体部の外周を覆うバレル表皮部と、を備え、
前記軸受覆い部は前記バレル表皮部と一体に形成されているバレルユニット。
【請求項2】
前記バレル支持軸の外周面に当接した状態で配置される軸当接ブロックをさらに備え、
前記軸受覆い部は、前記軸当接ブロックに接触する環状の接触片によって構成されている請求項に記載のバレルユニット。
【請求項3】
前記接触片は、前記バレル支持軸の外周面よりも径方向外側位置で前記軸当接ブロックに接触する請求項に記載のバレルユニット。
【請求項4】
前記軸当接ブロックは、前記軸受の固定側の軌道板である請求項に記載のバレルユニット。
【請求項5】
前記接触片は、前記軸当接ブロックの軸方向外側の面に接触する軸方向接触部を有する請求項2~4のいずれか1項に記載のバレルユニット。
【請求項6】
前記軸受覆い部は、前記バレル支持軸の外周面に接触する環状の接触片によって構成されている請求項に記載のバレルユニット。
【請求項7】
回転駆動されるバレルホルダーの外周に支持されるバレル支持軸と、
前記バレル支持軸に支持されるバレルと、
前記バレルを前記バレル支持軸に回転可能に支持させる軸受と、
前記バレル支持軸の外周面に当接した状態で配置される軸当接ブロックと、
を備え、
前記バレルは、前記軸受の軸方向外側を覆う軸受覆い部を備え、
前記軸受覆い部は、前記軸当接ブロックに対して微小隙間をもって対向する対向片によって構成されているバレルユニット。
【請求項8】
前記対向片は、前記軸当接ブロックとの間でラビリンス溝を形成する請求項に記載のバレルユニット。
【請求項9】
回転駆動されるバレルホルダーの外周に支持されるバレル支持軸と、
前記バレル支持軸に支持されるバレルと、
前記バレルを前記バレル支持軸に回転可能に支持させる軸受と、を備え、
前記バレルは、
前記軸受に回転可能に支持されるバレル本体部と、
前記バレル本体部の外周を覆うバレル表皮部と、を備え、
前記バレル表皮部の軸方向外側の端部は、前記バレル本体部の軸方向外側の端部の内周面よりも径方向内側に突出しているバレルユニット。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載のバレルユニットと、
前記バレルユニットの前記バレル支持軸が外周に支持され、駆動装置によって回転駆動されるバレルホルダーと、を備えているホイール。
【請求項11】
請求項10に記載のホイールと、
前記ホイールを回転駆動する駆動装置と、を備えている駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動装置の車輪等に用いられるバレルユニット、ホイール、及び、駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
移動装置の車輪としてメカナムホイールが知られている。このホイールは、樽形形状の接地回転体(床面や路面に接地する回転体)である複数のバレルと、複数のバレルを外周上に回転可能に支持するバレルホルダーと、を備え、バレルホルダーがモータ等の駆動装置によって回転駆動される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
複数のバレルは、バレルホルダーのホルダー回転軸線に対して傾斜した状態でバレルホルダーの外周上に保持されている。ホイールは、移動装置のほぼ四隅に配置され、四隅に配置された各ホイールが駆動装置によって独立して制御される。即ち、移動装置は、各ホイールの回転方向とトルクを個別に制御することにより、様々な方向に自由に移動することができる。なお、移動装置の左右に配置されるホイールは、バレルホルダーの外周上に保持されるバレルの傾斜方向が逆向きに設定されている。
【0004】
また、バレルホルダーの軸方向外側の両端部には、径方向外側に張り出す一対の支持フランジが設けられ、一対の支持フランジに跨るように複数のバレル支持軸が固定されている。各バレルは対応するバレル支持軸に軸受を介して回転自在に支持されている。バレル支持軸は、対応するバレルと軸受とともにバレルユニットを構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/016917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のバレルユニットは、回転駆動されるバレルホルダーの外周に取り付けられ、移動装置の走行時に路面に直接接触する。このため、移動装置を粉塵の多い環境や屋外で使用する場合には、周囲からバレルユニットの軸受部分に粉塵や泥、砂等の異物が入り込み、バレルの円滑な回転が阻害されることが懸念される。
【0007】
本発明は、バレルの円滑な回転を長期亘って維持することができるバレルユニット、ホイール、及び、駆動ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るバレルユニットは、回転駆動されるバレルホルダーの外周に支持されるバレル支持軸と、前記バレル支持軸に支持されるバレルと、前記バレルを前記バレル支持軸に回転可能に支持させる軸受と、を備え、前記バレルは、前記軸受の軸方向外側を覆う軸受覆い部と、前記軸受に回転可能に支持されるバレル本体部と、前記バレル本体部の外周を覆うバレル表皮部と、を備え、前記軸受覆い部は前記バレル表皮部と一体に形成されている。
【0011】
本態様のバレルユニットでは、軸受覆い部が軸受の軸方向外側を覆うため、バレルユニットを粉塵の多い環境や屋外で使用した場合にも、軸受内への異物の侵入を軸受覆い部によって抑制することができる。
【0013】
この場合、バレル表皮部の形成時に軸受覆い部を一体に形成することができるため、バレスの製造の容易化を図ることができる。また、本態様のバレルユニットは、軸受覆い部がバレル表皮部と一体化されているため、バレルユニットの組み付け時等に軸受覆い部が脱落することがない。したがって、本態様のバレルユニットを採用した場合には、バレルユニットの組付け作業性が良好になる。
【0014】
バレルユニットは、前記バレル支持軸の外周面に当接した状態で配置される軸当接ブロックをさらに備え、前記軸受覆い部は、前記軸当接ブロックに接触する環状の接触片によって構成されるようにしても良い。
【0015】
この場合、バレル表皮部と一体化された環状の接触片が軸当接ブロックに当接することにより、軸受の軸方向外側の隙間をほぼ無くすことができる。したがって、軸受内への異物の侵入をより抑制することができる。
【0016】
前記接触片は、前記バレル支持軸の外周面よりも径方向外側位置で前記軸当接ブロックに接触するようにしても良い。
【0017】
この場合、バレル表皮部のバレル本体部の外周を覆う部分からの接触片の径方向の延出長さが短くなる。このため、バレルの回転時に接触片が軸当接ブロックと摺接する際の接触片の変動を少なくすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、接触片が大きく変動して周囲の部材と干渉するのを抑制することができる。
【0018】
前記軸当接ブロックは、前記軸受の固定側の軌道板であっても良い。
【0019】
この場合、接触片が軸受の固定側の軌道板に接触することにより、軸受内への異物の侵入を規制できるため、軸受周りの構造の簡素化とコンパクト化を図りつつ、軸受内への異物の侵入を抑制することができる。
【0020】
前記接触片は、前記軌道板の軸方向外側の面に接触する軸方向接触部を有するものであっても良い。
【0021】
この場合、接触片は軸方向接触部で軸方向外側から軸当接ブロックに接触するため、走行面からの入力荷重がバレル表皮部に作用したときに、接触片が圧縮されて接触片と軸当接ブロックの当接圧が急激に増加するのを抑制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、接触片の耐久性を高めることができる。
【0022】
前記軸受覆い部は、前記バレル支持軸の外周面に接触する環状の接触片によって構成されるようにしても良い。
【0023】
この場合、環状の接触片が、外径の小さいバレル支持軸の外周面に接触するため、接触片がバレル支持軸の外周面と摺接する際の摺接速度が小さくなる。このため、接触片の摩耗を抑制することができる。
【0024】
本発明の他の態様に係るバレルユニットは、回転駆動されるバレルホルダーの外周に支持されるバレル支持軸と、前記バレル支持軸に支持されるバレルと、前記バレルを前記バレル支持軸に回転可能に支持させる軸受と、前記バレル支持軸の外周面に当接した状態で配置される軸当接ブロックと、を備え、前記バレルは、前記軸受の軸方向外側を覆う軸受覆い部を備え、前記軸受覆い部は、前記軸当接ブロックに対して微小隙間をもって対向する対向片によって構成されている。
【0025】
この場合、バレル表皮部と一体化された対向片が、軸当接ブロックに微小隙間をもって対向しているため、対向片と軸当接ブロックの対向する部分の隙間よりも大きな異物の侵入を抑制することができる。また、対向片は、軸当接ブロックに常時当接するものでないため、軸受覆い部(対向片)の耐久性を高めることができる。
【0026】
前記対向片は、前記軸当接ブロックとの間でラビリンス溝を形成するものであっても良い。
【0027】
この場合、対向片と当接ブロックの間にラビリンス溝が形成されるため、対向片と軸当接ブロックの対向する部分の隙間よりも小さい異物の軸受への侵入も、ラビリンス溝の機能によって抑制することができる。
【0028】
また、本発明のさらに別の一態様に係るバレルユニットは、回転駆動されるバレルホルダーの外周に支持されるバレル支持軸と、前記バレル支持軸に支持されるバレルと、前記バレルを前記バレル支持軸に回転可能に支持させる軸受と、を備え、前記バレルは、前記軸受に回転可能に支持されるバレル本体部と、前記バレル本体部の外周を覆うバレル表皮部と、を備え、前記バレル表皮部の軸方向外側の端部は、前記バレル本体部の軸方向外側の端部の内周面よりも径方向内側に突出している。
【0029】
本態様のバレルユニットでは、バレル表皮部の軸方向外側の端部が、バレル本体部の軸方向外側の端部よりも径方向内側に突出しているため、バレル本体部の軸方向外側の端面からの異物の侵入を、バレル表皮部の端部の突出部分によって規制することができる。
【0032】
本発明の一態様に係るホイールは、上記いずれかのバレルユニットと、前記バレルユニットの前記バレル支持軸が外周に支持され、駆動装置によって回転駆動されるバレルホルダーと、を備えている
【0033】
本発明の一態様に係る駆動ユニットは、前記ホイールと、前記ホイールを回転駆動する駆動装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0034】
上述のバレルユニットは、粉塵の多い環境や屋外で使用した場合にも、軸受に異物が侵入するのを抑制できるため、バレルの円滑な回転を長期に亘って維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態の移動装置の平面図。
図2】第1実施形態のホイールの斜視図。
図3】第1実施形態のホイールの図2のIII-III線に沿う断面図。
図4】第1実施形態のホイールの図2のIV-IV線に沿う断面図。
図5】第2実施形態のホイールの図4と同様の断面図。
図6】第3実施形態のホイールの図4と同様の断面図。
図7】第4実施形態のホイールの図4と同様の断面図。
図8】第5実施形態のホイールの図4と同様の断面図。
図9】第6実施形態のホイールの図4と同様の断面図。
図10】第7実施形態のホイールの図4と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態においては、共通部分に同一符号を付して、重複する説明を省略するものとする。
各実施形態のホイール10(110,210,310,410,510,610)は、例えば、図1に示すような移動装置1に用いられる。図1は、移動装置1を上方から見た状態を示す図である。
各実施形態のホイール10は、移動装置1の車体2の前側の左右両側部と、車体2の後側の左右両側部にそれぞれ配置されている。各ホイール10は、車体2に支持された駆動装置3によってそれぞれ独立して駆動される。駆動装置3は、モータ4と、モータ4の回転を減速してホイール10に伝達する減速機5と、を備えている。本実施形態では、ホイール10と、そのホイール10を回転駆動する駆動装置3が駆動ユニットを構成している。
なお、移動装置1の左右に配置されるホイール10は、後述するバレルホルダー11の外周上に保持されるバレル13の傾斜方向が逆向きに設定されている。
【0037】
<第1実施形態>
図2は、第1実施形態のホイール10の斜視図であり、図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。また、図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
これらの図に示すように、ホイール10は、駆動装置3(図1参照)によって回転駆動される略円筒状のバレルホルダー11と、バレルホルダー11の外周に支持される複数のバレル支持軸12と、各バレル支持軸12に支持される樽形形状の接地回転体であるバレル13と、を備えている。なお、図2では、バレル支持軸12とバレル13は各一つのみが図示され、他のバレル支持軸12とバレル13は、中心軸線L2のみが示されている。
【0038】
バレルホルダー11は、軸方向(車体2の幅方向)に離間して配置される一対の支持フランジ14と、一対の支持フランジ14を連結する連結筒15と、を備えている。一対の支持フランジ14は、孔あき円板状に形成され、連結筒15とともに連続した略円筒形状を形成している。略円筒形状のバレルホルダー11の内部には、図1に示す駆動装置3(減速機5とモータ4の一部)が配置される。減速機5の出力部は、例えば、支持フランジ14に連結されて、減速されたモータ4の回転をバレルホルダー11に伝達する。なお、バレルホルダー11がモータ4の回転を受けて回転する際のバレルホルダー11の回転軸線をホルダー回転軸線L1と呼ぶものとする。
【0039】
連結筒15の外径は、支持フランジ14の外径よりも小径に形成されている。各バレル13を支持するバレル支持軸12の軸方向の両端部は、各支持フランジ14の外周面に形成された固定溝16内に、例えば、ボルト17によって固定されている。バレル支持軸12は、ホルダー回転軸線L1に対して一方向に所定角度傾斜するように、一対の支持フランジ14に固定されている。また、各支持フランジ14の連結筒15側の側縁部には、バレル支持軸12に支持されたバレル13の軸方向の端部が収容されるバレル受容凹部18が形成されている。各バレル受容凹部18には、バレル13の軸方向の端面と対向する対向壁19が設けられている。対向壁19は、バレル受容凹部18に収容されるバレル13の中心軸線L2と直交するように形成されている。
【0040】
各バレル支持軸12に支持されるバレル13は、軸方向の中央領域が樽形状に膨出した金属製のバレル基材20(バレル本体部)と、バレル基材20の外周面に接着等によって固定されたウレタン等の樹脂製の表皮材21(バレル表皮部)と、を備えている。バレル基材20の軸心位置には、軸方向に沿って延びる軸孔22が形成されている。軸孔22には、バレル支持軸12が挿通されている。バレル基材20の軸孔22とバレル支持軸12の間には、バレル13をバレル支持軸12に回転自在に支持させるためのラジアル軸受23とスラスト軸受24とが介装されている。ラジアル軸受23とスラスト軸受24は、軸孔22内の軸方向の両側の端部にそれぞれ配置されている。スラスト軸受24は、軸孔22内において、ラジアル軸受23の軸方向外側位置に隣接して配置されている。
【0041】
バレル基材20の軸孔22の軸方向外側の端部には、段差状に内径が拡大する拡径部22aが設けられ、その拡径部22a内にスラスト軸受24が配置されている。スラスト軸受24は、例えば、軸方向(中心軸線L2方向)に対向して配置された一対の軌道板24a,24bと、その一対の軌道板24a,24bの間に介装された転動体24cを備えた構成とされている。本実施形態の場合、一方の軌道板24aは、バレル基材20の拡径部22a内の軸方向内側の端面25に当接している。
【0042】
バレル13の軸方向の端部は、バレルホルダー11のバレル受容凹部18内において、バレルホルダー11の対向壁19に対向している。また、バレル基材20の拡径部22a内に配置されたスラスト軸受24の外側の軌道板24b(固定側の軌道板)は、同様にバレルホルダー11のバレル受容凹部18内において、バレルホルダー11の対向壁19に対向している。バレルホルダー11の対向壁19とスラスト軸受24の軌道板24bの間には所定の隙間(スペース)があり、その隙間には、スペーサブロック26が介装されている。スペーサブロック26は、短軸円筒状の金属によって構成され、その内周面がバレル支持軸12の外周面に当接している。本実施形態では、スペーサブロック26が、バレル支持軸12の外周面に当接した状態で配置される軸当接ブロックを構成している。
本実施形態のバレルユニット7は、バレル支持軸12、バレル13、ラジアル軸受23、スラスト軸受24、スペーサブロック26等によって構成されている。
【0043】
図4に示すように、バレル13の表皮材21は、金属製のバレル基材20の外周を略一定厚みで覆う表皮本体部27と、表皮本体部27の軸方向外側の端部の径方向内側領域からバレル基材20の軸方向外側に延びた後に、径方向内側にフランジ状に延びる接触片28と、を備えている。本実施形態では、接触片28はウレタン等の樹脂材料によって表皮本体部27と一体に形成されている。
接触片28は、表皮本体部27の径方向内側領域から軸方向外側に延びる小径円筒部28aと、小径円筒部28aの延出端から径方向内側に延びるフランジ部28bと、を有している。小径円筒部28aは、バレル基材20の軸方向外側の端部外周に接合され、フランジ部28bは、その外周縁部がバレル基材20の軸方向の端面に接合されている。フランジ部28bの内周縁部は、バレル基材20の軸方向外側端部の内周面20aよりも径方向内側に延出している。本実施形態では、フランジ部28bの内周縁部は、外周縁部側に比較して薄肉に形成され、径方向内側の端部が先細り状に収斂している。収斂したフランジ部28bの径方向内側の端部28cは、バレル支持軸12の外周面よりも径方向外側位置で、スペーサブロック26の外周面に摺動自在に接触している。移動装置1の走行時に、バレル13がバレル支持軸12に対して回転すると、接触片28の径方向内側の端部28cはスペーサブロック26の外周面に対して摺動する。接触片28は、バレル基材20の軸方向外側の端部とスペーサブロック26の間の隙間を埋め、バレル支持軸12の軸方向外側からのスラスト軸受24への異物の侵入を規制する。
本実施形態の場合、環状の接触片28は、バレル支持軸12の軸方向外側からの軸受への異物の侵入を規制する侵入規制部を構成している。また、環状の接触片28は、軸受の軸方向外側を覆う軸受覆い部も構成している。
【0044】
以上のように、本実施形態のバレルユニット7は、接触片28(侵入規制部,軸受覆い部)が、バレル支持軸12の軸方向外側からのスラスト軸受24への異物の侵入を規制する。本実施形態のバレルユニット7は、軸受が設けられた空間と外部が遮断されている。また、本実施形態のバレルユニット7は、表皮材21の軸方向外側の端部が、バレル基材20の軸方向外側の端部の内周面よりも径方向内側に突出している。このため、バレルユニット7を粉塵の多い環境や屋外で使用しても、スラスト軸受24内への粉塵や泥、砂等の異物の侵入を抑制することができる。したがって、本実施形態のバレルユニット7を採用した場合には、バレル13の円滑な回転を長期に亘って維持することができる。
【0045】
また、本実施形態のバレルユニット7は、接触片28(侵入規制部,軸受覆い部)がバレル13の表皮材21と一体化されているため、バレルユニットの組み付け時等に接触片28が脱落することがない。したがって、本実施形態のバレルユニット7を採用した場合には、バレルユニット7の組付け作業性も良好になる。
【0046】
さらに、本実施形態のバレルユニット7は、接触片28(侵入規制部,軸受覆い部)がウレタン等の樹脂材料によってバレル13の表皮材21と一体に形成されている。このため、本実施形態のバレルユニット7を採用した場合には、バレル13の表皮材21の成形時に接触片28を一体に形成することができるため、バレル13の製造の容易化を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態のバレルユニット7は、軸受への異物の侵入を規制する侵入規制部(軸受覆い部)が、軸当接ブロックであるスペーサブロック26に接触する環状の接触片28によって構成されている。このため、バレル13の表皮材21(表皮本体部27)と一体の接触片28がスペーサブロック26に摺動自在に接触することにより、スラスト軸受24の軸方向外側の隙間(バレル基材20の軸方向外側の端部とスペーサブロック26の間の隙間)をほぼ無くすことができる。
【0048】
また、本実施形態のバレルユニット7は、接触片28がバレル支持軸12の外周面よりも径方向外側位置でスペーサブロック26に当接している。このため、接触片28がバレル支持軸の外周面に接触する場合に比較して、接触片28のフランジ部28bの径方向の延出長さを短くすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、バレル13の回転時に接触片28がスペーサブロック26と摺接する際の接触片28の変動を少なくすることができる。したがって、本構成を採用した場合には、接触片28が大きく変動して周囲の部材と干渉するのを抑制することができる。
【0049】
<第2実施形態>
図5は、本実施形態のホイール110の図4と同様の断面図である。
本実施形態のホイール110で採用するバレルユニット107は、スラスト軸受24の軸方向外側の端部(外側の軌道板24b)が、金属製の止め輪30によってバレル支持軸12に軸方向規制されている(固定されている)点と、バレル113の表皮材21の軸方向外側の端部に延設される接触片128が軌道板24bの軸方向の外側の面に接触している点が第1実施形態のものと大きく異なっている。本実施形態では、バレルホルダー11の支持フランジ14とスラスト軸受24の間には、スペーサブロック(26)が介装されていない。
【0050】
接触片128は、表皮本体部27の軸方向外側端部の径方向内側領域から軸方向外側に延びる小径円筒部128aと、小径円筒部128aの延出端から径方向内側に延びるフランジ部128bと、フランジ部128bの径方向内側の端部からスラスト軸受24の方向に筒状に延びて軌道板24bの軸方向外側の面に接触する環状リップ部128cと、を備えている。
【0051】
本実施形態では、スラスト軸受24の固定側の軌道板24bが、バレル支持軸12の外周面に当接した状態で配置される軸当接ブロックを構成している。また、本実施形態では、環状リップ部128cは、軸当接ブロックの軸方向外側の面に接触する軸方向接触部を構成している。
【0052】
本実施形態のバレルユニット107は、バレル13の表皮材21と一体の接触片128がスラスト軸受24の固定側の軌道板24bに直接接触することにより、スラスト軸受24の内部への異物の侵入を規制することができる。したがって、本実施形態のバレルユニット107を採用した場合には、スラスト軸受24の周りの構造の簡素化とコンパクト化を図りつつ、スラスト軸受24の内部への異物の侵入を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態のバレルユニット107は、バレル113側の接触片128が、固定側の軌道板24bの軸方向外側の面に接触する環状リップ部128c(軸方向接触部)を備えている。このため、移動装置1の走行時に、走行面からの入力荷重がバレル113の表皮材21(表皮本体部27)に作用したときに、接触片128が径方向に圧縮されて接触片128と軌道板24bの当接圧が急激に増加するのを抑制することができる。したがって、本実施形態のバレルユニット107を採用した場合には、接触片128の耐久性を高めることができる。
【0054】
<第3実施形態>
図6は、本実施形態のホイール210の図4と同様の断面図である。
本実施形態のホイール210で採用するバレルユニット207は、第2実施形態と同様に、スラスト軸受24の軸方向外側の端部(外側の軌道板24b)が、金属製の止め輪30によってバレル支持軸12に軸方向規制されている。本実施形態のバレルユニット207は、バレル213の表皮材21の軸方向外側の端部に延設される接触片228がバレル支持軸12の外周面に摺動自在に接触している。即ち、接触片228は、表皮本体部27の軸方向外側端部の径方向内側領域から軸方向外側に延びる小径円筒部228aと、小径円筒部228aの延出端から径方向内側に延びるフランジ部228bと、を備え、フランジ部228bの径方向内側の端部228cがバレル支持軸12の外周面に摺動自在に接触している。
【0055】
本実施形態のバレルユニット207は、接触片228のフランジ部228bが径方向内側の端部228cで、スラスト軸受24よりも外径の小さいバレル支持軸12の外周面に接触している。このため、バレル213が回転する際の、バレル支持軸12の外周面と接触片228との摺接速度が小さくなる。したがって、本構成を採用した場合には、接触片228の摩耗を抑制することができる。
【0056】
<第4実施形態>
図7は、本実施形態のホイール310の図4と同様の断面図である。
本実施形態のホイール310で採用するバレルユニット307は、第1実施形態と同様に、バレルホルダー11の支持フランジ14(対向壁19)とスラスト軸受24(固定側の軌道板24b)の間に、スペーサブロック326が介装されている。スペーサブロック326の外周面には段差部33が環状に形成されている。スペーサブロック326の外周面は、外径の大きい大径面326aと、大径面326aよりも外径の小さい小径面326bと、を有している。大径面326aと小径面326bは、径方向に沿って延びる接続面326cによって接続されている。
【0057】
また、バレル313の表皮材21の軸方向外側の端部には、軸当接ブロックであるスペーサブロック326に対して微小隙間をもって対向する対向片328が延設されている。本実施形態では、対向片328がバレルユニット307の侵入規制部と軸受覆い部を構成している。対向片328は、表皮本体部27の軸方向外側端部の径方向内側領域から軸方向外側に延びる小径円筒部328aと、小径円筒部328aの延出端から径方向内側に延びるフランジ部328bと、を備えている。スペーサブロック326の外周面に対向するフランジ部328bの内周面には段差部34が環状に形成されている。フランジ部328bの内周面には、内径の大きい大径面328b-1と、大径面328b-1よりも内径の小さい小径面328b-2が形成されている。大径面328b-1と小径面328b-2は、径方向に沿って延びる接続面328b-3によって接続されている。
【0058】
フランジ部328bの内周の大径面328b-1、接続面328b-3、及び、小径面328b-2は、スペーサブロック326の外周の大径面326aと接続面326cと小径面326bに対して、微小な隙間dをもって対向している。これらの隙間dはクランク状に屈曲したラビリンス溝を構成している。
【0059】
本実施形態のバレルユニット307は、バレル313の表皮材21と一体化された対向片328が、スペーサブロック326に微小な隙間dをもって対向している。また、本実施形態のバレルユニット307では、軸受が設けられた空間と外部が微小な隙間dを介して接続されている。このため、対向片328とスペーサブロック326の間の隙間dよりも大きな異物のスラスト軸受24への侵入を抑制することができる。また、対向片328は、初期姿勢ではスペーサブロック326に接触しないため、経時使用による摩耗を抑制することができる。したがって、本構成を採用した場合には、軸受覆い部である対向片328の耐久性を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態のバレルユニット307は、対向片328がスペーサブロック326との間の隙間dでラビリンス溝を形成するため、対向片328とスペーサブロック326の間の隙間dよりも小さい異物のスラスト軸受24への侵入も抑制することができる。
【0061】
<第5実施形態>
図8は、本実施形態のホイール410の図4と同様の断面図である。
本実施形態のホイール410で採用するバレルユニット407は、第2実施形態と同様に、スラスト軸受24の軸方向外側の端部(外側の軌道板24b)が、金属製の止め輪30によってバレル支持軸12に軸方向規制されている。本実施形態のバレルユニット407は、バレル413の表皮材21の軸方向外側の端部の径方向内側領域に、軸方向外側にさらに延びる円筒状の接触片428が延設されいる。
【0062】
また、バレルホルダー11の対向壁19は、バレル支持軸12の外周面に当接するように設けられている。つまり、バレル支持軸12は対向壁19を貫通し、その外周面が対向壁19の貫通孔内に当接している。本実施形態では、バレルホルダー11の対向壁19が軸当接ブロックを構成している。バレル413側の円筒状の接触片428の先端部428aは、対向壁19の側面に摺動自在に接触している。
【0063】
本実施形態のバレルユニット407は、簡単な構成でありながら、スラスト軸受24への異物の侵入を抑制することができる。
【0064】
<第6実施形態>
図9は、本実施形態のホイール510の図4と同様の断面図である。
本実施形態のホイール510で採用するバレルユニット507は、侵入規制部や軸受覆い部を構成するバレル513の接触片40が、バレル515の表皮材21と別体の部品によって形成されている。他の構成は、第1実施形態とほぼ同様とされている。接触片40は、例えば、弾性や摺動性に優れたゴム材料等によって形成することができる。接触片40は、表皮材21とバレル基材20の軸方向の端面に接着等によって接合されている。接触片40の径方向内側の端部は、第1実施形態と同様にスペーサブロック26の外周面に摺動自在に接触している。
【0065】
本実施形態のバレルユニット507は、基本的に第1の実施形態と同様の効果を得ることができるが、接触片40が、バレル515の表皮材21と別体の部品によって形成されているため、接触片40の材料特性を、摺動性や耐久性に優れたものに容易に設定することができる、という利点がある。
【0066】
<第7実施形態>
図10は、本実施形態のホイール610の図4と同様の断面図である。
本実施形態のホイール610で採用するバレルユニット607は、侵入規制部や軸受覆い部を構成するメッシュ部材50がバレル613の表皮材21の軸方向外側の端面に一体に取り付けられている。メッシュ部材50は、フィルター機能を持ち、バレル支持軸12の軸方向外側からのスラスト軸受24内への異物の侵入を規制する。メッシュ部材50の目の粗さは、侵入規制対象とする異物のサイズに応じて適宜設定することができる。
【0067】
本実施形態のバレルユニット607は、メッシュ部材50がバレル613の表皮材21の軸方向外側の端面に一体に取り付けられているため、メッシュ部材50の目の粗さを適切に選定することにより、異物の侵入規制性能とバレル613内の放熱性能を良好にバランスさせることができる。
【0068】
<第8実施形態>
上述した各実施形態では、バレルの表皮材に一体化され接触片や対向片、メッシュ部材等が、バレル基材(バレル本体部)の軸方向外側の端部の内周面と軸受(外側の軌道板)の外周面との間の隙間を軸方向外側からほぼ覆うように配置されている。しかし、バレルの表皮材の軸方向外側の端部が、バレル基材(バレル本体部)の軸方向外側の端部の内周面よりも径方向内側に突出していれば、軸受方向への異物の侵入を規制する効果を得ることができる。
【0069】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では樽形形状のバレルが用いられるが、バレルは軸方向の中央領域が径方向外側に膨出する回転体であれば良く、必ずしも樽形形状である必要はない。
【符号の説明】
【0070】
3…駆動装置(駆動ユニット)
7,107,207,307,407,507,607…バレルユニット
10,110,210,310,410,510,610…ホイール(駆動ユニット)
11…バレルホルダー
12…バレル支持軸
13,113,213,313,413,513,613…バレル
20…バレル基材(バレル本体部)
20a…内周面
21…表皮材(バレル表皮部)
24…スラスト軸受
24b…軌道板(固定側の軌道板,軸当接ブロック)
26…スペーサブロック(軸当接ブロック)
28,40,128,228,428…接触片(侵入規制部,軸受覆い部)
50…メッシュ部材(侵入規制部,軸受覆い部)
128c…環状リップ(軸方向接触部)
328…対向片(侵入規制部,軸受覆い部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10