(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】外気処理装置及び空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20240312BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240312BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F11/56
(21)【出願番号】P 2020048820
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】澤村 充
(72)【発明者】
【氏名】出川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】浜田 義信
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大河
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010216(JP,A)
【文献】特開2005-016936(JP,A)
【文献】特開2018-173264(JP,A)
【文献】国際公開第2019/038806(WO,A1)
【文献】特開2001-304639(JP,A)
【文献】特開2002-039580(JP,A)
【文献】特開2012-141088(JP,A)
【文献】特開2012-211748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0117907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/74
F24F 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを駆動するモータと、
前記モータの電力量と回転数とを検出する検出部と、
使用者が操作可能な、目標風量の入力を受け付ける入力部と、
前記検出部で検出された前記モータの電力量と回転数とに基づいて現在風量を算出する演算部と、
前記現在風量に基づいて、風量が前記目標風量になるように前記モータを制御する制御部と、
を有
し、
前記演算部は、前記モータの回転数に応じて使い分けされ前記モータの電力量と回転数とを変数として前記現在風量を求める少なくとも2つの異なる式のうち、前記検出部で取得された前記モータの回転数に応じた式に、前記検出部で取得された前記モータの電力量と回転数を入力して前記現在風量を算出する、
外気処理装置。
【請求項2】
前記検出部は、所定の間隔で前記モータの電力量と回転数とを検出し、
前記演算部は、前記検出部から所定の間隔で取得された前記モータの電力量と回転数とから前記現在風量をそれぞれ算出し、算出された複数の現在風量を平均した平均現在風量を算出し、
前記制御部は、前記平均現在風量に基づいて、前記モータを制御する、
請求項
1に記載の外気処理装置。
【請求項3】
前記入力部は、リモートコントロール装置に設けられ、さらに室内の設定温度の入力が可能である請求項
1または2に記載の外気処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の外気処理装置と、
この外気処理装置による外気が導入される部屋に設けられ、室内の空気を室外へ排出する排気装置とを備え、
前記入力部に前記目標風量として、前記排気装置の定格風量より大なる風量が設定され、室内を陽圧化したことを特徴とする空調システム。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の外気処理装置と、
この外気処理装置による外気が導入される部屋に設けられ、室内の空気を外へ排出する排気装置とを備え、
前記入力部に前記目標風量として、前記排気装置の定格風量未満の風量が設定され、室内を陰圧化したことを特徴とする空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、外気処理装置及び空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室温及び室内の静圧をコントロールする外気処理装置が知られている。例えば、外気処理装置は、室外の空気を温調して室内に押し込むことで、室内を室外より高圧にする。これにより室内の空気が室外へと押し出されることになり外気の侵入を抑制し、外気のゴミや埃等を室内に入れることなく、室内を清浄に保つことができる。
【0003】
静圧が陽圧に設定される室内の空気は、出入り口の開閉に加えて、換気扇や部屋のわずかな隙間等を介して室外に排出される。例えば、室外に排出される空気の量を一定に保つため、モータの回転数から算出された目標風量に基づいてモータの回転数を決定する換気扇などの送風装置が知られている。このような外気処理装置と排気装置を設定した部屋が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、様々な部屋や建物を陽圧または陰圧に制御するためには、その部屋や建物に設置されている換気扇の能力や部屋の隙間等からの室内外間の空気の漏れ量、部屋の大きさや配置等の様々な条件下で外気処理装置の送風量を制御する必要がある。
【0006】
例えば、室内の静圧は、差圧センサを用いて室内と室外との圧力差を測定することで検出可能である。しかしながら、差圧センサなどの計測機器を室内及び室外に設けることは、外気処理装置のコストの増加につながる。また、これらの計測機器の定期的なメンテナンスの手間が生じる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、差圧センサを用いることなく室内を確実に陽圧又は陰圧に制御可能な外気処理装置及び空調システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態の外気処理装置は、モータ、検出部、入力部、演算部、制御部を有する。モータは、ファンを駆動する。検出部は、モータの電力量と回転数とを検出する。入力部は、使用者が操作可能な、目標風量の入力を受け付ける。演算部は、モータの回転数に応じて使い分けされモータの電力量と回転数とを変数として現在風量を求める少なくとも2つの異なる式のうち、検出部で取得されたモータの回転数に応じた式に、検出部で検出されたモータの電力量と回転数を入力して現在風量を算出する。制御部は、現在風量に基づいて、風量が目標風量になるようにモータを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る外気処理装置の一例を示す概念的な構成図。
【
図2】
図2は、実施形態に係る外気処理装置の室内機の機能構成を示すブロック図。
【
図3】
図3は、実施形態に係る外気処理装置の動作の一例を示すフローチャート。
【
図4】
図4(a)は、実施形態に係る外気処理装置のリモコンの模式図、
図4(b)は、リモコンの液晶表示画面の風量設定画面の表示例、
図4(c)は、リモコンの液晶表示画面の温度設定画面の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の外気処理装置及び空調システムについて図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る外気処理装置100の一例を示す概念的な構成図である。
図1に示すように、外気処理装置100が設置される部屋30は、室内10から室外20への空気の排気口として、例えば、換気扇300及び開放時に室内外間を空気が流通する自動ドアなどの出入り口200とを有する。
【0012】
外気処理装置100は、室内機1と室外機2とを有する。室内機1と室外機2とは通信線31で接続されている。室内機1と室外機2とは、双方の機器の状態や指示のため通信線31を介して情報の授受を行う。
【0013】
外気処理装置100は、室外20から取り込んだ新鮮な空気を適切な温度に調整して室内10に導入する。この外気処理装置100は、室外20から室内10へ導入する空気量を制御することで室内10の静圧を陰圧又は陽圧に保つことができる。また、室外20から取り込んだ空気を室内10に供給する途中で冷凍サイクルの熱交換器を通すことで冷却又は加温して、室内10の温度を制御することができる。以下、室外20から室内10へ空気を導入して室内10を陰圧又は陽圧のいずれかに保つ外気処理装置100の構成について説明する。
【0014】
室外機2は室外20に設置される。室外機2は、その内部に室外熱交換器、室外ファン、圧縮機等の冷凍サイクル部品が収納されている。室内機1は室内10に設置され、室外機2の冷凍サイクルと冷媒配管32で接続された室内熱交換器(図示せず)を備えている。外気処理装置100の運転が開始されると、室内機1のファンモータ4の駆動により室外機2に設けられた外気吸込口から外気が室内機1に取り込まれる。この際、室外機2に設けられたフィルタにより外気中の不純物が取り除かれ、清浄な空気が室内機1に導入される。その後、室内熱交換器を介して室内10に温度調節された空気が導入されることで、室内10の温度が調整される。
【0015】
室内機1は、ファンモータ4と、制御器5とを有する。ファンモータ4は、制御器5からの制御に基づいてファンを駆動するモータである。ファンモータ4は、例えば、ブラシレスDCモータである。
【0016】
制御器5は、室内機1と室外機2との通信制御、ファンモータ4の回転制御などの各種制御を行い、外気処理装置100を統括制御する。制御器5は、例えば、プロセッサ及びメモリを具備する。制御器5は、メモリから各種制御プログラムをプロセッサに実行させることで、外気処理装置100の各種制御を実現する。
【0017】
制御器5は、リモコン(リモートコントロール装置)6等の入力装置と接続されている。制御器5は、リモコン6からの操作入力信号に基づいて外気処理装置100を制御する。リモコン6は、例えば、使用者が操作可能な、目標風量や温度設定などの外気処理装置100の各種設定の入力を受け付ける。
【0018】
ここで、目標風量は、使用者等の操作により外気処理装置100が設置された部屋30ごとに任意の数値で設定可能となっている。目標風量は、換気扇等の排気装置の風量に基づいて決定される。
【0019】
リモコン6は、例えば液晶画面を有し、液晶画面上に外気処理装置100の設定を表示する。リモコン6の有する液晶画面は、例えば、使用者が操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッドであってもよいし、光学センサを用いた非接触入力回路を有してもよい。また、入力インタフェースとディスプレイとが一体となったタッチパネル式の液晶画面であってもよい。さらに、リモコン6は、音声入力回路等を備え、音声入力により操作可能に構成されもよい。リモコン6の液晶画面への表示例については後述の
図4で詳細に説明する。
【0020】
制御器5は、ファンモータ4の動作をモニタする検出部7(
図2参照)からの検出信号に基づいて、ファンモータ4の回転を制御し、室内10への風量制御を行う。また、制御器5は、検出部7からの検出信号と、リモコン6から入力された操作入力信号とに基づいて、ファンモータ4の回転制御を行い、室内10への風量がリモコン6から入力された目標風量になるように制御する。
【0021】
ファンモータ4の回転数が一定である場合に、例えば、室外機2に設けられたフィルタの目詰まりによって圧力損失が増加すると、室内10へ供給される風量は減少し、室内10の静圧は低下する。したがって、室内10の静圧を上げるためには、ファンモータ4の回転数を上げて外気処理装置100から出力される風量を増加させる必要がある。
【0022】
そこで、本実施形態の外気処理装置100の発明者らは、外気処理装置100によって室内10に供給される風量は、ファンモータ4の回転数と電力量とで近似できることに着目し、風量を一定に制御できること及びその風量を適切に設定することで、室内10の静圧を陽圧または陰圧に保つ着想を得た。本実施形態の外気処理装置100は、室内10に供給される現在風量をファンモータ4の動作から予測し、予測された現在風量に基づいてファンモータ4の回転数を自動制御する。それにより、外気処理装置100は、室内10に吹き出す温度調節された空気の風量を一定に制御することができる。この結果、部屋30の状況に応じて適切な風量を設定することで、室内10の静圧を陽圧または陰圧に確実に制御することができる。
【0023】
すなわち、陽圧に制御する場合は、部屋30に取り付けられている強制的な排気装置、
図1の例における換気扇300の定格風量が200m3/hである場合、外気処理装置100の風量を換気扇300の定格風量より大きい風量、例えば220m3/h、に設定すれば、いかなる場合も換気扇300の風量よりも外気処理装置100の風量が大きくなり、室内10は陽圧となる。一方、外気処理装置100の風量を換気扇300の定格風量未満、例えば180m3/h、に設定すれば室内10は常に陰圧とすることができる。換気扇300が複数台あれば、その合計定格風量を基準に外気処理装置100の風量を設定すればよい。
【0024】
なお、陽圧及び陰圧の圧力を正確に設定するには、部屋30の隙間を通した室内20と室外20間の空気の漏れ量を考慮する必要があるが、単に陽圧化または陰圧化するだけであれば、上述のように外気処理装置100の風量を設定するだけで良い。
【0025】
したがって、例えば、室内10の使用者が陽圧化を希望する場合、その部屋30に設置されている排気装置の定格風量を確認し、リモコン6を操作して、外気処理装置100の風量を排気装置の定格風量より大きい値に設定するという簡単な操作により、室内10を確実に陽圧に制御することができる。
【0026】
検出部7は、ファンモータ4に印加される電圧、ファンモータ4に流れる電流、ファンモータ4の回転数などの測定値を制御器5に出力する。また、検出部7は、ファンモータ4に印加される電圧及びファンモータ4に流れる電流から電力量を算出してもよい。なお、ファンモータ4の回転数は、回転数を測定するセンサを有する代わりに、検出部7で検出された電流や電圧に基づいて算出されてもよい。なお、検出部7は、ファンモータ4に印加される電圧、ファンモータ4に流れる電流を測定する電流計及び電圧計であってもよい。この場合、検出部7で検出された電流や電圧を取得した制御器5がファンモータ4の回転数や電力量を算出してもよい。以下、検出部7で取得されたファンモータ4の回転数及び電力量を制御器5に出力する場合を例として説明する。
【0027】
図2は、実施形態に係る外気処理装置100の室内機1の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御器5は、演算機能51と、モータ制御機能52と、メモリ53とを有する。演算機能51及びモータ制御機能52は、制御器5のプロセッサがメモリ53に保存されたプログラムを実行することによって実現される。
【0028】
検出部7は、検出された電流と電圧とに基づいて、ファンモータ4の電力量を算出する。さらに、検出部7は、検出された電流又は電圧に基づいて、ファンモータ4の回転数を算出する。
【0029】
演算機能51は、検出部7からファンモータ4の電力量と回転数とを取得する。演算機能51は、ファンモータ4の電力量と回転数とに基づいて室内10の現在風量を算出する。また、演算機能51は、算出された現在風量に基づいて、室内10の風量が一定になるファンモータ4の電力量を算出する。モータ制御機能52は、演算機能51で算出された電力量に基づいてファンモータ4の駆動を制御する。
【0030】
さらに、演算機能51は、現在風量に基づいて室内10の風量がリモコン6から入力された目標風量になるファンモータ4の電力量を算出する。
【0031】
メモリ53は、各種制御プログラムや設定値を記憶する他、検出部7から取得されるファンモータ4の電力量と回転数とから現在風量を算出する数式をあらかじめ記憶してもよい。また、メモリ53は、リモコン6から入力された操作入力信号に基づく各種設定値を記憶してもよい。
【0032】
図3は、実施形態に係る外気処理装置100の動作の一例を示すフローチャートである。以下、
図3のフローチャートのステップ番号に従って、実施形態に係る外気処理装置100の動作を説明する。なお、
図3では、外気処理装置100が演算機能51で算出された現在風量にもとづいて、室内10の風量がリモコン6から入力された目標風量になるようファンモータ4の動作を制御する場合を例として説明する。
【0033】
ステップS101において、外気処理装置100の運転が開始する。外気処理装置100の運転は、例えば、外気処理装置100が停止中の状態において、リモコン6の運転停止ボタン63(
図4参照)が押下されることで開始する。外気処理装置100の運転が開始するとファンモータ4が起動する。
【0034】
ステップS102において、制御器5は、初期制御としてファンモータ4の起動時に所定時間、一定の電力でファンモータ4を駆動する。例えば、ファンモータ4が起動し、風量が安定して取得できる回転数になるまで初期制御が行われる。制御器5は、ファンモータ4の回転数が所定の閾値を超えたことを基準として初期制御が終了したと判定してもよいし、ファンモータ4の起動からの時間経過に基づいて初期制御が終了したと判断してもよい。
【0035】
ステップS103において、演算機能51は、リモコン6から入力された目標風量を取得する。例えば、室内10を陽圧に保つ場合、リモコン6には、室内10から室外20へ排出される風量よりも大きい風量が目標風量として入力される。例えば、使用者は、その部屋30に設置されている排気装置、換気扇300の定格風量よりも大きい風量を目標風量としてリモコン6に入力する。リモコン6から入力された目標風量は、いったんメモリ53に格納され、演算機能51は、メモリ53に格納された目標風量を取得してもよい。
【0036】
なお、演算機能51がリモコン6から入力された目標風量を取得するタイミングは、ステップS103のタイミングには限定されない。演算機能51が目標風量を取得するタイミングは、例えば、ステップS102の初期制御が終了する前でもよく、演算機能51は、外気処理装置100の起動後から現在風量の算出後(ステップS105)までのいずれかのタイミングで目標風量を取得すればよい。以下、
図4を用いて、リモコン6からの目標風量の入力方法について詳細に説明する。
【0037】
図4(a)は、実施形態に係る外気処理装置100のリモコン6の模式図である。
図4(a)に示すように、リモコン6は、液晶画面61、切替ボタン62、運転停止ボタン63、上げるボタン64、下げるボタン65を有する。
【0038】
運転停止ボタン63は、外気処理装置100の運転及び停止を実行するボタンである。外気処理装置100が停止中に運転停止ボタン63が押下されると外気処理装置100は運転を開始する。一方、外気処理装置100の運転中に運転停止ボタン63が押下されると、外気処理装置100は運転を停止する。
【0039】
切替ボタン62は、風量設定及び温度設定のうち、どちらの設定を実行するかを切り替えるボタンである。例えば、温度設定中に切替ボタン62が押下されると風量設定に切り替わる。一方、風量設定中に切替ボタン62が押下されると温度設定に切り替わる。
【0040】
上げるボタン64及び下げるボタン65は、温度や風量のパラメータを入力するボタンである。具体的には、上げるボタン64及び下げるボタン65にはそれぞれ1回の押下につき変更できる数値があらかじめ割り当てられている。使用者は、押下したボタンの種類及び回数に応じて温度や風量の設定値を変更できる。例えば、風量設定において、上げるボタン64又は下げるボタン65を操作することで、目標風量を50cmh(cubic meter per hour、m3/h)ごとに変更できる。したがって、使用者は、これらのボタンを操作して、陽圧化したい場合は、排気装置の定格風量よりも高い風量を設定し、陰圧化したい場合は、排気装置の定格風量よりも低い風量を設定する。同様に、温度設定において、例えば、上げるボタン64又は下げるボタン65を操作することで設定温度を0.5℃ごとに変更できる。
【0041】
液晶画面61は、切替ボタン62で選択された設定画面が表示される。
図4(b)は、リモコン6の液晶表示画面の風量設定画面61aの表示例である。また、
図4(c)は、リモコンの液晶表示画面の温度設定画面61bの表示例である。切替ボタン62が押下されるたびに風量設定画面61aと温度設定画面61bとの表示が切り替わる。
【0042】
図4(b)に示すように、風量設定画面61aは、外気処理装置100に目標風量を設定する画面である。風量設定画面61aの上部に、目標風量が表示される。表示された目標風量を変更する場合、使用者は、上げるボタン64又は下げるボタン65を押下し、所望の風量となるように数値を変更する。また、風量設定画面61aには、外気処理装置100が暖房運転しているか冷房運転しているかを示す運転モードや、設定温度などが同時に表示されてもよい。
【0043】
図4(b)に示した風量設定画面61aが液晶画面61に表示された状態で切替ボタン62が押下されると、
図4(c)に示す温度設定画面61bに表示が切り替わる。
図4(c)に示すように、温度設定画面61bは、外気処理装置100に温度を設定する画面である。風量設定画面61aの場合と同様に、温度設定画面61bの上部に設定温度が表示される。使用者は、上げるボタン64又は下げるボタン65を押下し、所望の温度となるように数値を変更する。また、温度設定画面61bには、外気処理装置100が暖房運転しているか冷房運転しているかを示す運転モードや、目標風量などが同時に表示されてもよい。
【0044】
以上がリモコン6の液晶画面の表示例の説明である。使用者は、
図4に示したリモコン6の風量設定画面61aで所望の目標風量を入力する(ステップS103)。
図3に戻ってのフローチャートの説明を続ける。
【0045】
ステップS104において、演算機能51は、検出部7からファンモータ4の電力量及び回転数を取得する。
【0046】
ステップS105において、演算機能51は、ファンモータ4の電力量及び回転数に基づいて室内10の現在風量を算出する。現在風量Qa(cmh)は、例えば、ファンモータ4の電力量Pa(W)と回転数Na(rpm:rotations per minute、r/min)とを変数とする以下の式で求められる。
【0047】
【0048】
上記数式1の係数a、b、c、d、e、及び切片gは、ファンモータ4の電力量、回転数及び風量のそれぞれの実測値からあらかじめ求められる。
【0049】
演算機能51は、検出部7から取得したファンモータ4の電力量と回転数とをメモリ53から呼び出した上記数式1に当てはめ、現在風量Qaを算出する。なお、数式1は現在風量を求める式の一例であり、現在風量を予測できれば数式1には限定されない。
【0050】
また、例えば、現在風量を算出するために利用される数式は1つには限定されない。具体的には、2つ以上の異なる式をファンモータ4の回転数(Na)の大きさに応じて使い分けてもよい。数式を使い分けることで現在風量の算出における誤差を抑制できる。例えば、演算機能51は、ファンモータ4の回転数が所定の閾値以下の場合と所定の閾値より大きい場合とで数式を使い分けてもよい。
【0051】
さらに、演算機能51は、所定の時間間隔で算出された複数の現在風量を平均した平均現在風量を算出してもよい。例えば、検出部7における検出周期毎や検出部7と制御器5との通信周期毎に取得された電力量及び回転数に基づいて現在風量をそれぞれ算出し、所定数の(例えば、5通信周期分の)現在風量を平均して平均現在風量を算出してもよい。現在風量は演算により予測された数値であるため、複数の推定値を平均処理することで推定精度を向上させることができる。
【0052】
ステップS106において、演算機能51は、現在風量に基づいて室内10の風量が目標風量になるファンモータ4の制御値を算出する。演算機能51は、例えば、現在風量と目標風量との差から目標風量に応じたファンモータ4の電力量を算出する。モータ制御機能52は、算出された電力量に基づいてファンモータ4の駆動を制御する。
【0053】
モータ制御機能52は、例えばPI制御によりファンモータ4の駆動を制御する。この際、モータ制御機能52は、ファンモータ4の動作が急激に変更されないよう、PI制御におけるゲインを現在風量と目標風量との差に応じて変更してもよい。また、モータ制御機能52は、ファンモータ4の保護制御として、回転数の上限値及び下限値に基づいてファンモータ4に供給される電力量を制限してもよい。
【0054】
ステップS107において、制御器5は、外気処理装置100が運転中か否かを判定する。外気処理装置100が運転中の場合、ステップS107のYesの方向に分岐し、ステップS103の処理に進む。すなわち、外気処理装置100が運転中の間、制御器5は、現在風量を算出し、室内10の風量が目標風量になるようにファンモータ4の駆動を制御する処理を繰り返す(ステップS103からステップS106の処理が繰り返し実行される)。
【0055】
一方、外気処理装置100が運転を停止する場合、ステップS107のNoの方向に分岐する。例えば、リモコン6の運転停止ボタン63が押下されると、制御器5は、ファンモータ4の駆動を停止し、外気処理装置100の停止処理を実行する。
【0056】
以上がフローチャートの説明である。
図3では、ファンモータ4の動作から室内10の現在風量を算出し、室内10の風量がリモコン6から入力された目標風量になるようファンモータ4を制御する場合を例として説明した。しかしながら、現在風量に基づく風量制御はこの例には限定されない。
【0057】
例えば、制御器5は、過去に算出された現在風量(過去風量)と算出された現在風量とを比較して、室内10の風量が一定になるようにファンモータ4をフィードバック制御してもよい。具体的には、算出された現在風量をメモリ53に記憶しておき、過去のある時点に算出された過去風量と現在において算出された現在風量とを比較し、室内10の風量が過去風量と同じになるようにファンモータ4の駆動を制御する。このようなフィードバック制御により、室内10の風量を一定に保つことができる。
【0058】
なお、過去風量は、新しく算出された現在風量の一回前に算出された現在風量であってもよいし、外気処理装置100が安定稼働しているときに算出された現在風量であってもよい。また、外気処理装置100が安定稼働している状態で風量一定制御の開始を、リモコン6を介して外気処理装置100に設定できてもよい。このように、リモコン6から目標風量を数値として入力することなく、過去風量を目標風量として利用してもよい。
【0059】
なお、上述の外気処理装置100による風量一定制御は、外気処理装置100を備える空調システムに適用できる。例えば、空調システムは、外気処理装置100と、室内の空気を室外へ排出する排気装置とを備える。排気装置は、外気処理装置100による風量一定制御の対象となる部屋30や建物などの内部空間から外部に空気を排出する装置である。空調システムは、排気装置の定格風量に基づいて外気処理装置100に目標風量を設定することで、外気処理装置100による風量一定制御の対象となる空間を陽圧又は陰圧に容易に保つことができる。
【0060】
より具体的には、部屋30や建物などの内部空間を陽圧に保ちたい場合、部屋30や建物に設けられた排気装置の定格風量よりも大きい風量を目標風量として外気処理装置100に設定する。また、部屋30や建物などの内部空間を陰圧に保ちたい場合、部屋30や建物に設けられた排気装置の定格風量より小さい風量を目標風量として外気処理装置100に設定する。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る外気処理装置100は、検出部7で検出されたファンモータ4の電力量と回転数とに基づいて現在風量を算出する演算機能を備えている。それにより本実施形態に係る外気処理装置100は、風量一定制御を実現し、差圧センサを利用することなく室内10を陽圧又は陰圧に保つことができる。
【0062】
また、本実施形態に係る外気処理装置100は、使用者が操作可能な、リモコン6などの外部入力装置を備える。リモコン6から目標風量を入力可能とすることで、外気処理装置100が設置される部屋や建物の態様に応じて容易に目標風量を設定できる。
【0063】
さらに、本実施形態に係る外気処理装置100の演算機能51は、ファンモータ4の電力量と回転数とを変数として現在風量を求める数式を用いて現在風量を算出する。そのため、外気処理装置100の既存の構成を利用して現在風量を算出できる。
【0064】
本実施形態に係る外気処理装置100の演算機能51は、ファンモータ4の回転数に応じて少なくとも2つの異なる式を使い分けて現在風量を算出する。そのため、近似式により生じる実測値との誤差を抑制できる。
【0065】
本実施形態に係る外気処理装置100の演算機能51は、所定の間隔で取得されたファンモータ4の電力量と回転数とから複数の現在風量を算出し、算出された現在風量の平均値に基づいてファンモータ4の動作を制御する。そのため、ファンモータ4の電力量と回転数とから推定される現在風量の推定誤差を抑制できる。
【0066】
本実施形態に係る外気処理装置100の入力部は、リモコン6などの入力装置に設けられ、目標風量に加えて室内の設定温度の入力が可能である。そのため、本実施形態に係る外気処理装置100は、室内の静圧に加えて室内の温度を使用者の要求に応じて調整できる。
【0067】
本実施形態に係る空調システムは、上述の外気処理装置100と排気装置とを備える。これにより、本実施形態に係る空調システムは、排気装置の定格風量に基づいて外気処理装置100に目標風量を設定できる。したがって、例えば、部屋30を陽圧に保ちたい場合、排気装置の定格風量よりも大きい風量を目標風量として外気処理装置100に設定することで、外気処理装置100の風量一定制御により、部屋30を陽圧に保つことができる。また、部屋30を陰圧に保ちたい場合、排気装置の定格風量よりも小さい風量を目標風量として外気処理装置100に設定することで、外気処理装置100の風量一定制御により、部屋30を陰圧に保つことができる。
【0068】
したがって、本実施形態に係る外気処理装置100及び空調システムによれば、差圧センサを用いることなく確実に陽圧又は陰圧に制御可能となる。
【0069】
上記実施形態における演算機能51は、特許請求の範囲における演算部の一例である。同様に、実施形態におけるモータ制御機能52は、特許請求の範囲における制御部の一例である。実施形態におけるファンモータ4は、特許請求の範囲におけるモータの一例である。実施形態におけるリモコン6は、特許請求の範囲における入力部の一例である。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
100…外気処理装置、1…室内機、2…室外機、4…ファンモータ、5…制御器、6…リモコン、7…検出部、51…演算機能、52…モータ制御機能、53…メモリ