(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】複合蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 47/32 20060101AFI20240312BHJP
B65D 47/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B65D47/32 310
B65D47/20 111
(21)【出願番号】P 2020054399
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩光
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】石川 将
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190661(JP,A)
【文献】特開2014-118203(JP,A)
【文献】特開2020-019513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0290824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/32
B65D 47/20
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
円形の閉塞壁と該閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると該連通開口を開く逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該蓋本体の該閉塞壁
の外周縁部には吸引孔が形成されており、
該中栓部材は半径方向外方に延出するフランジを有し、該フランジには該吸引孔に対向して位置する連通孔が形成されており、更に、
該中栓部材には常態においては該吸引孔に対向して且つ該閉塞壁の下面に近接して位置して該吸引孔を容器の内側層と外側層との間の層間空間に連通させ、該層間空間が加圧されると該閉塞壁に密接して該吸引孔を閉じ、該層間空間が減圧されると該閉塞壁から離間する方向に撓む弁片が一体に形成されて
おり、該弁片は該連通孔内に位置し且つ外周縁の一部が該連通孔の内周縁の一部に局部的に接続されている、
ことを特徴とする複合蓋。
【請求項2】
該中栓部材の該フランジは円環形状であり且つ少なくとも1個の切欠が形成されており、該閉塞壁の下面には該切欠に対応した突起が形成されており、該突起が該切欠内に位置されることによって該閉塞壁に対する該中栓部材の相対的角度位置が規制される、請求項
1記載の複合蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容する内側層とこの内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
近時においては、調味料、特に醤油のための容器として、内容物を収容する内側層とこの内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器が広く実用に供されている。そして、かような容器のための容器蓋として、円形の閉塞壁とこの閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含む蓋本体と、蓋本体の閉塞壁の下面に装着される中栓部材と、中栓部材に組み合わされる逆止弁部材と、を具備する複合蓋が実用に供されている。蓋本体の閉塞壁には排出開口が形成されている。蓋本体には、容器の内側層と外側層との間の層間空間に連通する吸引路も形成されている。中栓部材は連通開口を有し、逆止弁部材は、常態においては連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると連通開口を開く。
【0003】
上記のとおりの複合蓋を容器の口頸部に装着して容器内の内容物を排出するには、容器を圧搾する。容器が圧搾されると容器の内側層と外側層との間の層間空間が加圧されて吸引路が閉じられて容器内圧が上昇し、逆止弁部材は連通開口を開放する。連通開口が開放されることで内容物は連通開口及び排出開口を順次通過して外部に排出される。容器の圧搾を解除すると、容器が弾性的に復元されることで層間空間は負圧となり、外気が吸引路を通過して層間空間に取り込まれる。層間空間に充分な外気が取り込まれて容器内圧が大気圧に戻ると、連通開口は逆止弁部材によって閉じられ、内容物の排出が停止する。
【0004】
下記特許文献1には、吸引路が蓋本体の閉塞壁の下面から下方に延出する連通筒によって規定され、かかる連通筒にはこれを閉塞可能な球状の弁体が挿入された複合蓋が開示されている。上記弁体は、容器を圧搾して層間空間を加圧するときにのみ吸引路を閉じ、それ以外のときは吸引路を閉塞しない。下記特許文献2で開示された複合蓋にあっては、蓋本体の装着壁の下端部の内周面が容器の口頸部の外周面と対向し、装着壁の内周面と口頸部の外周面との間の円環形状隙間に吸引路が規定されている。装着壁の内周面には半径方向内方に延出する環状可撓性シール片が形成され、かかるシール片の下面は容器の口頸部の外周面に形成された円環状突出部の上面に弾性的に密接している。上記シール片は、容器の層間空間が減圧されるときにのみ口頸部に形成された円環状突出部の上面から離隔して吸引路を開放し、それ以外のときは吸引路を閉じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5620143号公報
【文献】特開2018-2198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、上記特許文献1で開示された複合蓋にあっては、弁体は複合蓋とは別個に形成されることから部品点数が増加すると共に、弁体と蓋本体とを個別に組み合わせる工程は煩雑であることから、多大な製造コストを要する。また、上記特許文献2で開示された複合蓋にあっては、シール片は容器の層間空間が減圧されるとき以外は口頸部に形成された円環状突出部の上面に弾性的に密接して吸引路を閉じていることから、例えば内用物が収容された容器を冷蔵庫から取り出すなどして環境温度が急上昇した際には、内側層が膨張することで容器の層間空間が加圧され、内容物を排出しようとする際に内容物が予期せず排出開口から吹き出してしまう虞がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、部品点数を増加させることなく、環境温度が急上昇して容器の内側層が膨張した場合であっても、容器の内側層と外側層との間に規定される層間空間が加圧されることが回避される、新規且つ改良された複合蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、蓋本体の閉塞壁に吸引孔を形成すると共に、中栓部材には、常態においては吸引孔に対向して且つ閉塞壁の下面に近接して位置して吸引孔を容器の内側層と外側層との間の層間空間に連通させ、層間空間が加圧されると閉塞壁に密接して吸引孔を閉じ、層間空間が減圧されると閉塞壁から離間する方向に撓む弁片を一体に形成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する複合蓋として、内容物を収容する内側層と該内側層を囲繞する外側層とを備えた積層構造容器のための複合蓋であって、
円形の閉塞壁と該閉塞壁の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁とを含み、該閉塞壁には排出開口が形成されている蓋本体と、
該蓋本体の該閉塞壁の下面に装着され且つ連通開口を有する中栓部材と、
該中栓部材に組み合わされ、常態においては該連通開口を閉じるが容器内圧が上昇すると該連通開口を開く逆止弁部材と、
を具備する複合蓋において、
該蓋本体の該閉塞壁の外周縁部には吸引孔が形成されており、
該中栓部材は半径方向外方に延出するフランジを有し、該フランジには該吸引孔に対向して位置する連通孔が形成されており、更に、
該中栓部材には常態においては該吸引孔に対向して且つ該閉塞壁の下面に近接して位置して該吸引孔を容器の内側層と外側層との間の層間空間に連通させ、該層間空間が加圧されると該閉塞壁に密接して該吸引孔を閉じ、該層間空間が減圧されると該閉塞壁から離間する方向に撓む弁片が一体に形成されており、該弁片は該連通孔内に位置し且つ外周縁の一部が該連通孔の内周縁の一部に局部的に接続されている、
ことを特徴とする複合蓋が提供される。
【0010】
好ましくは、該中栓部材の該フランジは円環形状であり且つ少なくとも1個の切欠が形成されており、該閉塞壁の下面には該切欠に対応した突起が形成されており、該突起が該切欠内に位置されることによって該閉塞壁に対する該中栓部材の相対的角度位置が規制されるのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合蓋においては、弁片は常態において吸引孔に対向して且つ閉塞壁の下面に近接して位置し吸引孔を容器の内側層と外側層との間の層間空間に連通させていることから、環境温度が急上昇して内側層が膨張した場合であっても、吸引孔を通して層間空間内の空気を外部に放出することができ、これにより層間空間が加圧されることは回避される。また、弁片は中栓部材に一体に形成されていることから部品点数の増加もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-1】本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態において、外蓋が閉位置にあるときの断面図。
【
図1-2】本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態において、外蓋が開位置にあるときの断面図。
【
図2】
図1-1に示す複合蓋における蓋本体の底面図。
【
図3】
図1-1に示す複合蓋における蓋本体のA-A断面図。
【
図4】
図1-1に示す複合蓋における蓋本体の平面図。
【
図5】
図1-1に示す複合蓋における中栓部材の底面図。
【
図6】
図1-1に示す複合蓋における逆止弁部材の平面図。
【
図7】
図1-1に示す複合蓋における逆止弁部材の正面図。
【
図8】
図1-1に示す複合蓋における逆止弁部材の底面図。
【
図9】
図1-1に示す複合蓋において弁片が形成された部分を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された複合蓋の好適実施形態について、更に詳述する。本明細書及び特許請求の範囲で使用する語句「上」及び「下」は、特に指定しない限り
図1-1に示す状態(即ち容器が正立して且つ後述する外蓋が閉位置にある状態)での上及び下を意味する。
【0014】
図1-1を参照して説明すると、全体を番号2で示す複合蓋は、蓋本体4と、中栓部材6と、逆止弁部材8とを具備している。蓋本体4はポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することで形成され、円形の閉塞壁10とこの閉塞壁10の外周縁から垂下する円筒形状の装着壁12とを含んでいる。閉塞壁10の中央には円形の排出開口13が形成されており、閉塞壁10の上面には排出開口13の外周縁を囲繞して上方に延びる排出筒14が形成されている。排出筒14の主部は略円筒形状であり、排出筒14の基端からの延出長さは、後述するヒンジ部が形成されている側が形成されていない側よりも(つまり
図1-1においては図中の右側が左側よりも)低い。そして、上述したヒンジ部が形成されていない側の排出筒14の上端部には縦断面が略半円形状であるリップが設けられている。排出筒14の上下方向中間部の内周面には径方向内側に突出する円環状の突部16が形成されている。突部16の上面は径方向内側に向かって下方に傾斜する逆円錐台形状であり、内周面は上下方向に実質上垂直な円筒形状であり、下面は実質上水平な円環形状である。閉塞壁10の上面の外周縁部には略円筒形状の係止壁18が形成されている。係止壁18の外周面上端には半径方向外方に突出した環状係止突条20が形成されている。閉塞壁10
の外周縁部には上下方向に貫通する吸引孔22が形成されている。図示の実施形態においては、吸引孔22は断面円形であって(
図2及び
図4も参照されたい)
、平面視において排出開口13と後述するヒンジ部との間の位置に形成されている。閉塞壁10の上面には吸引孔22の外周縁を囲繞して上方に延びる円筒形状の吸引筒壁24が形成されている。閉塞壁10の下面の径方向中間部には下方に向かって延びる円筒形状の係合壁26が形成されている。係合壁26の下端には半径方向内方に突出した環状係合突条28が形成されている。
図1-1と共に
図2及び
図3を参照して説明すると、閉塞壁10の下面における係合壁26よりも径方向外側には、下方に向かって突出する直方体形状の突起30が直径方向に対向して2つ形成されている。かかる突起30は中栓部材6に形成された後述する切欠に対応する。閉塞壁10の下面の外周縁部には下方に突出する円環形状の肩部32も形成されている。肩部32の外周面は装着壁12の内周面にも接続されている。肩部32の下面は後述する容器の外側層の上面に当接する。
【0015】
図1-1と共に
図2乃至
図4を参照して説明すると、装着壁12の内周面下端部には、径方向内側に向かって突出して周方向に弧状に延びる被嵌合突条34が周方向に間隔をおいて2つ形成されている。装着壁12には上端が開放された円筒形状の分離溝36が形成されている。分離溝36等の存在に起因して、複合蓋2は内容物の排出が完了した後に後述する容器の口頸部から離脱せしめることが可能となり、容器と複合蓋2とを分別廃棄をすることができる。かような分離溝36を含む装着壁12の分別機構の詳細については、本願の出願人によって本願に先立って出願されて既に公開された特開第2007-22567号公報を参照されたい。
【0016】
蓋本体4の装着壁12の上端にはヒンジ手段38を介して外蓋40が接続されている。外蓋40は蓋本体4と一体に形成され(従って外蓋40も合成樹脂製である)、蓋本体4の閉塞壁10を覆う閉位置(
図1-1で示す状態)と閉塞壁10を露呈せしめる開位置(
図1-2で示す状態)との間で旋回自在である。外蓋40は天面壁42とこの天面壁42の外周縁部から垂下するスカート壁44とを有する。天面壁42の下面の中央には下方に延出する中実棒状の閉塞栓46が形成されている。閉塞栓46の断面は円形であって、閉塞栓46の基端側部46aは先端側部46bに比べて外径が大きく、基端側部46aと先端側部46bとの間には逆円錐台形状の中間部46cが形成されている。そして、外蓋40が閉位置にあるときには、
図1-1に示すとおり、閉塞栓46は閉塞壁10に形成された排出筒14の内側に挿通され、閉塞栓46の基端側部46aの外周面が排出筒14の突部16の内周面と密着する。閉塞栓46の基端部の外周には、天面壁42の下面から下方に垂下する略円筒形状の垂下壁48が形成されている。垂下壁48は外蓋40が閉位置にあるときに、排出筒14の上端部の外周縁を囲繞してこれよりも幾分外側に位置する。垂下壁48の内周縁部には、外蓋40を閉位置から開位置に旋回せしめる際に天面壁42の下面に付着した内容液の飛散を防止するための二重円環溝50も形成されている。天面壁42の下面の径方向中間部には、下方に垂下する支持壁52が形成されている。
図1-1と共に
図4を参照して説明すると、支持壁52は全体的円筒形状であるが、その下端部には直径方向に対向して2つの切り欠き54a及び54bが形成されている。切り欠き54aは周方向及び上下方向共に比較的大きく、外蓋40が閉位置にあるときに、支持壁52が閉塞壁10に形成された吸引筒壁24と干渉することを回避している。一方、切り欠き54bは周方向及び上下方向共に比較的小さい。支持壁52は、外蓋40が閉位置にあるときに、上記切り欠き54a及び54bが形成された部分を除いて閉塞壁10の上面に当接し、天面壁42の上面に付加された外力によって天面壁42が下方に変形することを防止している。スカート壁44の内周面の下端部には、環状被係止突条56が形成されている。ヒンジ手段38の直径方向反対側における、スカート壁44の外周面下端部には、外蓋40を旋回動せしめる際に指を掛けることができる鍔部58が形成されている。
【0017】
続いて、
図1-1と共に
図5を参照して、中栓部材6について説明する。中栓部材6は蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着されており、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形することで形成される。中栓部材6は底面視(及び平面視)において円形である連通壁60と、連通壁60の外周縁から上方に延びる円筒形状のシール壁62とを備えている。連通壁60の径方向中間部には上方に延びる円筒形状の被係合壁64が形成され、被係合壁64の上端部の外周面には外側に突出する環状被係合突条66が形成されている。中栓部材6は、被係合突条66が蓋本体4の閉塞壁10の下面に形成された係合突条28と係合することで、蓋本体4の閉塞壁10の下面に装着される。被係合壁64の上下方向略中間部の内周面には、径方向内側に向かって下方に緩やかに傾斜した後に下方に急激に屈曲せしめられ、次いで実質上水平に延びる円環形状の中央壁部68が形成されており、中央壁部68の内側には円形の連通開口70が形成されている。
【0018】
シール壁62の上端には半径方向外方に延出する円環形状のフランジ72が形成されており、フランジ72には少なくとも1個の切欠74が形成されている。図示の実施形態においては、切欠74は周方向に90度の角度間隔をおいて3つ形成されており、半径方向外側及び上下方向に開口している。中栓部材6と蓋本体4とを組み合わせる際には、切欠74内に蓋本体4の閉塞壁10の下面に形成された突起30を位置させることで、閉塞壁10に対する中栓部材6の相対的角度位置が規制される。フランジ72には蓋本体4の閉塞壁10に形成された吸引孔22に対向して連通孔76が形成されている。図示の実施形態においては、連通孔76は、
図5において直径方向に相互に対向する2つの切欠74以外の切欠74と直径方向に対向して位置している。連通孔76は底面視(平面視)において円形であって上下方向に貫通している。ここで、本発明の複合蓋にあっては、中栓部材6には常態においては吸引孔22に対向して且つ閉塞壁10の下面に近接して位置して吸引孔22を容器100の内側層102と外側層104との間の層間空間106に連通させ、層間空間106が加圧されると閉塞壁10に密接して吸引孔22を閉じ、層間空間106が減圧されると閉塞壁10から離間する方向に撓む弁片78が一体に形成されていることが重要である
。弁片78は
、図示の実施形態においては略円板形状であって
、連通孔76内に位置し且つ外周縁の一部が連通孔76内の内周縁の一部に局部的に接続されている。従って、弁片78はフランジ72の内側に位置することから、例えば中栓部材6を単体で搬送する際に弁片78に予期しない外力が付加されることが回避され、これにより弁片78が損傷又は連通孔76の内周縁から分離してしまうことが防止される。ここで、
図1-1及び
図5と共に
図9(a)を参照することによって明確に理解されるとおり、弁片78は連通孔76内の上端から僅かに下方の位置に設けられている。弁片78の作動については後にさらに言及する。フランジ72の下面の内周縁部には下方に突出する突部80が周方向に連続して形成されている。突部80の下面は後述するとおり容器の内側層に形成された上方フランジの上面と当接する。
【0019】
次に、
図1-1と共に
図6乃至
図8を参照して逆止弁部材8について説明する。逆止弁部材8は中栓部材6に組み合わされて蓋本体4の閉塞壁10の下面に配置されている。逆止弁部材8はポリエチレン、ゴム、エラストマー、シリコン等の如き比較的軟質である合成樹脂を射出成形することで形成され、支持リング82を備えている。支持リング82には下方に向かって垂下する円弧状の垂下片84が周方向に等角度間隔をおいて3つ形成されている。夫々の垂下片84の内周面の下端部には、
図8において時計方向に向かって(
図6においては反時計方向に向かって)下方に傾斜して延びる帯状の接続片86が形成されている。また、平面視及び底面視において支持リング82の内側であって上下方向に見てこれよりも下方の位置には弁体88が設けられている。接続片86の先端は弁体88の外周面に接続されており、弁体88は接続片86によって上下方向に移動可能な状態でこれによって支持されている。弁体88は平面視及び底面視において円形であり、下端部には逆円錐台形状のシール部90が設けられている。弁体88の上面は実質上水平であるが、下面にはドーム状の空洞部92が形成されている。
【0020】
図1-1に示すとおり、逆止弁部材8は、中栓部材6の中央壁部68の上面に載置された状態で、中栓部材6と共に蓋本体4と組み合される。中栓部材6及び逆止弁部材8が蓋本体4と組み合された状態にあっては、逆止弁部材8における、弁体88のシール部90が中栓部材6の中央壁部68の内周縁部の上面と当接すると共に、支持リング82の上面が閉塞壁10の下面と当接する。このとき、弁体88は
図7に示す状態から支持リング82に対して幾分上昇し、弁体88のシール部90及び中栓部材6の中央壁部68の内周縁部は弾性的に相互に密着する(支持リング82の上面及び閉塞壁10の下面も相互に密着する)。これにより、逆止弁部材8は中栓部材6の連通開口70を閉じる。外蓋40が閉位置にあるときには更に、
図1-1に示すとおり、閉塞栓46の先端が弁体88の上面と当接してこれを下方に押圧する。
【0021】
図1-1には、複合蓋2が装着される容器100の口頸部も二点鎖線で示されている。容器100は内容物を収容する内側層102とこれを囲繞する外側層104とを備えた積層構造容器であり、内側層102と外側層104との間には層間空間106が規定されている。容器100は、外側層104を形成するための基材(外側プリフォーム)の内側に内側層102を形成するための基材(内側プリフォーム)を予め挿入保持させた状態で、外側プリフォームと内側プリフォームとを同時に延伸ブローすることで形成される。かような容器100の成形方法は周知であり、詳細については例えば特開第2018-62146号公報を参照されたい。内側層102及び外側層104の材料は、ブロー成形可能な熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステルや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどが好適である。
【0022】
容器100の口頸部は円筒形状である。換言すれば、内側層102及び外側層104の上端部は円筒形状である。外側層104の上端部の外周面には半径方向外方に突出する環状嵌合突条108が形成されており、嵌合突条108と蓋本体4の装着壁12の内周面に形成された被嵌合突条34との嵌合によって、複合蓋2は容器100の口頸部に装着される。嵌合突条108の下方には、容器を運搬する際に使用される公知のサポートリング110も形成されている。外側層104の上端部の内周面には上方を向いた円環形状の肩面112が形成されている。内側層102の上端部には、共に円環形状である上方フランジ114及び下方フランジ116が上下方向に間隔をおいて形成されている。下方フランジ116の下面の外周縁部が外側層104の内周面に形成された肩面112と当接することで、外側層104は内側層102によって上下方向に支持されている。更に、上方フランジ114及び下方フランジ116の外周面は共に外側層104の内周面と対向することで、外側層104に対して内側層102が傾動することは規制されている。そして、上方フランジ114及び下方フランジ116には周方向に間隔をおいて複数個の切欠118が形成されており、この切欠118を介して層間空間106は容器100の外部に連通する。
【0023】
醤油の如き液体内容物が内側層6内に充填された容器100に複合蓋2を装着する際には、容器100の口頸部に複合蓋2の装着壁12を被嵌し、複合蓋2を容器100に対して下方に強制せしめる。複合蓋2は、その装着壁12の内周面に形成された被嵌合突条34が容器100の口頸部の外周面に形成された嵌合突条108を弾性的に乗り越えてこれに嵌合されることで、容器100の口頸部に装着される。複合蓋2が容器100の口頸部に装着されると、中栓部材6のシール壁62が容器100の内側層102の内部、さらに詳しくは内側層102の内部、に進入すると共にこれを半径方向外方に弾性的に押圧する(換言すれば、シール壁62は内側層102の内側に圧入される)。これにより、シール壁62の外周面が内側層102の内周面の上端部と密着し、内容物がシール壁62の外側を通過して内側層102(即ち容器100)の外部に流出することが阻止される。更に、蓋本体4の閉塞壁10の下面に形成された肩部32の下面が外側層104の上面と当接すると共に、中栓部材6のフランジ72の下面に形成された突部80の下面が内側層102の上方フランジ114の上面と当接し、中栓部材6のフランジ72に形成された連通孔76の下端が内側層102の上方フランジ114の上面によって閉塞されることが回避される。
【0024】
ここで、本発明の複合蓋2においては、弁片78は常態において吸引孔22に対向して且つ閉塞壁10の下面に近接して位置し吸引孔22を容器100の内側層102と外側層104との間の層間空間106に連通させていることから、例えば複合蓋2が装着された容器100を冷蔵庫から取り出したときなど、環境温度が急上昇して内側層102が膨張した場合には、
図9(a)において矢印で示すとおり、吸引孔22を通して層間空間106内の空気を外部に放出することができ、これにより層間空間106が加圧されることは回避される。また、弁片78は中栓部材6に一体に形成されていることから部品点数の増加もない。これにより、後述するとおりに外蓋40を開位置に旋回動せしめる際に、内容物が予期せず排出開口13から吹き出してしまうことが防止される。
【0025】
容器の内容物を消費する際には、先ず、外蓋40の鍔部58に指を掛けて外蓋40を上方に強制せしめ、外蓋40の被係止突条56を、蓋本体4の係止突条20から弾性的に離脱させて、外蓋40を
図1-2に示す開位置に向けて旋回動せしめる。かくして閉塞壁10が露呈する。その後に、容器100の側面を把持して適宜に傾斜せしめ、容器100を圧搾する。容器100が圧搾されることで層間空間106は加圧され、
図9(b)に示すとおり、中栓部材6に形成された弁片78は、同図において基端を中心に反時計方向に回転して撓み、蓋本体4の閉塞壁10に密接して吸引孔22を閉じる。これにより、層間空間106内の空気が吸引孔22を通過して外部に流出することが規制され、容器100を更に圧搾することで内側層102が加圧される。そして、内側層102内の圧力が容器100外の圧力よりも所定値以上大きくなると、逆止弁部材8の弁体88が上述した接続片86の弾性力に抗して上方に移動せしめられ、弁体88のシール部90が中栓部材6における連通壁60の中央壁部68の内周縁部の上面から離隔し、中栓部材6の連通開口70が開放される。この際には、弁体88の下面に空洞部92が形成されていることに起因して、内側層102内の圧力によって弁体88を上方へ移動させようとする力が弁体88の下面に効率的に作用し、弁体88は円滑に上方へ移動せしめられる。連通開口70が開放されると、内側層102内に充填された内容物は連通開口70及び排出開口13を順次通過した後に排出筒14から排出される。
【0026】
内容物の排出を停止する際には、容器100の側面の圧搾を解除する。容器100の側面の圧搾が解除されたことで、容器内圧の上昇は解除され、これにより逆止弁部材8の弁体88が接続片86の上述した復元力によって下方に移動せしめられ、シール部90が連通壁60の中央壁部68の内周縁部の上面乃至内周面と密着し、連通開口70が閉じられる。従って、内容物の排出が停止すると共に内側層102は密閉される。容器100の側面の圧搾が解除されると更に、外側層104は自身の有する弾性力により復元、即ち圧搾された状態から圧搾される前の状態に膨張し、これによって外側層104と内側層102との間の層間空間106は負圧となる(層間空間106が減圧される)。そうすると、
図9(c)に示すとおり、中栓部材6に形成された弁片78は蓋本体4の閉塞壁10から離間する方向、つまり同図において弁片78はその基端を中心に時計方向に回転して撓み、同図中の矢印で示すとおり、層間空間106は吸引孔22から外気を取り込む。層間空間106に充分な外気が取り込まれ、層間空間106の負圧状態が解除されると、つまり層間空間106が大気圧と等しくなると、弁片78は
図9(c)に示す状態から
図9(a)に示す状態に戻る。このとき、層間空間106に充分な外気が取り込まれたことで、内側層102は容器100の側面が圧搾された状態で維持される。図示の実施形態においては、閉塞壁10の上面には吸引孔22の外周縁を囲繞して上方に延びる吸引筒壁24が形成されていることに起因して、排出筒14から排出された内用物の一部が閉塞壁10の上面に残留した場合であっても、残留した内容物が吸引孔22に進入することが防止される。
【符号の説明】
【0027】
2:複合蓋
4:蓋本体
6:中栓部材
8:逆止弁部材
10:閉塞壁
12:装着壁
13:排出開口
22:吸引孔
70:連通開口
78:弁片
100:容器
102:内側層
104:外側層
106:層間空間