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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】超音波撮像装置、および、画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020066146
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021159511
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 一宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 貞一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信彦
(72)【発明者】
【氏名】広島 美咲
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288021(JP,A)
【文献】特表平08-509888(JP,A)
【文献】特開2013-180035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0016744(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され
前記評価器は、学習モデルを含み、前記学習モデルは、超音波信号を入力データとし、その超音波信号のノイズを除去するのに適したフィルタ制御信号を出力データとする教師データにより学習済みであることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項2】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され
前記評価器は、前記方向または領域を、予め定めた長さまたは面積の単位で区分し、前記区分ごとに前記フィルタ制御信号を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項3】
請求項に記載の超音波撮像装置であって、前記評価器は、隣り合う前記区分が一部重なり合うように設定し、前記平滑化処理部は、前記区分が重なり合う部分の前記フィルタ制御信号、および/または、フィルタ処理後の超音波信号を、重み付けして加算することにより平滑化することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項4】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され
前記フィルタ処理部は、前記フィルタの前記特性値を重み付けして、前記超音波信号と畳み込み演算することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項5】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され
前記評価器は、前記超音波信号を入力とし、前記フィルタ制御信号を出力する学習済みの学習モデルを含むことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項6】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部と、
予め定めたプレスキャンシーケンスによって、被検体に対して超音波を送信させ、前記超音波信号を得て、前記フィルタ制御信号の初期値を予め前記評価器に算出させる制御部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置されていることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項7】
請求項に記載の超音波撮像装置であって、前記プレスキャンシーケンスは、同じ送信条件の超音波を被検体に対して複数回繰り返し送信することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項8】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部と、
前記超音波探触子に送信信号を送信して、前記超音波を前記被検体に送信させる送信制御部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され
前記評価器は、前記フィルタ制御信号の生成に加えて、前記送信制御部を制御する送信制御信号を生成して出力し、
前記送信制御部は、前記送信制御信号をもとに前記送信信号を変化させることにより、前記探触子から送信される前記超音波を変化させることを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項9】
請求項に記載の超音波撮像装置であって、前記評価器は、予め定めたプレスキャンシーケンスによって、被検体に対して超音波を送信させ、前記超音波信号を取得し、そのノイズを低減させるための超音波の送信パラメータを算出することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項10】
超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、前記被検体からの超音波を前記超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号と、前記フィルタ処理部でノイズを除去する前の超音波信号とを、重み付けして合成する合成処理部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され
前記画像処理部は、前記合成処理部が合成した超音波信号を用いて画像を生成することを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項11】
請求項10に記載の超音波撮像装置であって、前記合成処理部が重み付けに用いる重みを、ユーザから受け付ける操作部をさらに備える
ことを特徴とする超音波撮像装置。
【請求項12】
被検体からの超音波を超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、前記超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、前記超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、
前記フィルタ制御信号に基づいて前記特性値を設定したフィルタにより、対応する前記超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、
前記フィルタ処理部でノイズを除去された前記超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部とを有し、
前記評価器と前記フィルタ処理部の間、および/または、前記フィルタ処理部と前記画像処理部との間には、前記方向または領域における前記フィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置され、
前記評価器は、学習モデルを含み、前記学習モデルは、超音波信号を入力データとし、その超音波信号のノイズを除去するのに適したフィルタ制御信号を出力データとする教師データにより学習済みであることを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波撮像装置に関し、特に、生体等の複雑な組織についてもノイズを低減した画像を生成可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体に対して超音波探触子から超音波を送信し、物体の内部で散乱・反射等された超音波を再び超音波探触子で受信し、得られた受信信号から物体内の画像を生成する装置や、物体内の傷の有無を検査等する装置が知られている。これらの装置では、取得した受信信号にノイズが含まれていると、生成される画像の画質が劣化したり、物体内の傷ではない部分を傷であると誤判別してしまう等の問題が生じ得る。
【0003】
そのため、例えば特許文献1では、受信信号に対してウェーブレット変換を行うことにより受信信号の特徴量を算出し、等位相面の分布の違いをもとに、傷からのエコーの受信信号と、傷からではない溶接個所のエコーの受信信号とを識別する超音波探傷装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、受信信号を解析することにより、受信信号に含まれる電磁気ノイズ信号の推定値を求め、求めた推定値に基づいて受信信号を修正することが開示されている。具体的には、特許文献2では、超音波探触子のエッジ領域にある超音波素子に到達する受信信号のうち、撮像対象から信号成分は位相がチャンネルによって異なるのに対し、電磁気ノイズ成分の位相が同じであることを利用し、エッジ領域の超音波素子の受信信号を平均することにより、電磁気ノイズ成分の信号の推定値を求めている。求めた電磁気ノイズ成分の信号の推定値を、各チャンネルの受信信号から差し引き、その後、受信ビームを形成している。これにより、特許文献2の技術では、電磁気ノイズ信号が低減された超音波画像を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-165912号公報
【文献】特開2012-55692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
生体は、様々な組織が複雑に絡み合って構成され、各組織は、超音波の散乱特性や反射特性が大きく異なるという特徴がある。そのため、生体に超音波を送信して得た受信信号は、送信した超音波が散乱または反射された点の組織の種類や境界の形状によって、組織由来の受信信号の信号強度が異なるとともに、ノイズの振幅や周波数等の特徴も異なる。例えば、受信走査線ごとに、受信信号のノイズを除去する場合、受信走査線の深さ方向に並ぶ複数の組織ごとに、ノイズの特徴も異なり、ノイズを適切に除去するためには、深さ方向の組織ごとに異なるノイズ除去のパラメータ値を設定する必要ある。
【0007】
そのため、様々な組織が含まれる生体に対して、特許文献1や特許文献2の発明のように受信信号の特徴量や受信信号に含まれる電磁気ノイズを算出または推定して、受信信号を修正しようとすると、超音波が散乱・反射された点が含まれる組織の種類によって、特徴量やノイズが大きく異なり、受信信号の修正量も大きく異なる。
【0008】
そのため、生体を対象とする場合、送信ビームのスキャン方向および深さ方向について、それぞれの位置において適切なノイズ除去を行う必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術は、超音波探傷装置であるため、同じ材料中の傷か溶接かを見分けるものであるため、複数の組織が絡み合った生体組織ごとにノイズ除去のパラメータ値を設定することはできない。
【0010】
特許文献2の技術では、超音波探触子のエッジ領域にある各超音波素子の受信信号を平均することにより、電磁気ノイズ成分の信号の推定値を求め、各チャンネルの受信信号から差し引いた後、受信ビームを生成するという手法である。このため、特許文献2の技術において、受信信号に含まれる種々の周波数成分のノイズをどの程度除去可能かどうかは不明である。
【0011】
このため、受信走査線上に並ぶ組織ごとにノイズを適切に除去するためには、ノイズ除去処理のパラメータを、組織ごとに適切な値を設定する必要がある。その場合、組織の境界においては、ノイズ除去処理のパラメータが大きく変化するため、それにより生じ得るアーチファクト等を抑制する必要がある。
【0012】
本発明の目的は、複数の組織が複雑に絡み合った生体組織の受信信号から、組織ごとにノイズを適切に除去し、かつ、組織の境界においてもアーチファクトを抑制することのできる超音波撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の超音波撮像装置は、超音波探触子から被検体に超音波を送信した後、被検体からの超音波を超音波探触子が受信して得た1以上の時系列な超音波信号を受け取って、超音波信号の時系列の方向、または、複数の前記超音波信号を並べた2次元以上の信号空間内に設定した所定の方向または領域について、超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、前記方向または領域について生成する評価器と、フィルタ制御信号に基づいて特性値を設定したフィルタにより、対応する信号特性値の超音波信号を処理してノイズを除去するフィルタ処理部と、フィルタ処理部でノイズを除去された超音波信号を用いて画像を生成する画像処理部とを有する。評価器とフィルタ処理部の間、および/または、フィルタ処理部と画像処理部との間には前記方向または領域におけるフィルタ制御信号の分布、および/または、フィルタ処理後の超音波信号の分布を、平滑化処理する平滑化処理部が配置されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の組織が複雑に絡み合った生体組織の受信信号から、組織ごとにノイズを適切に除去し、かつ、組織の境界においてもアーチファクトを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1の超音波撮像装置の斜視図。
図2】実施形態1の超音波撮像装置の構成を示すブロック図。
図3】(a)実施形態1の超音波撮像装置の要部のブロック図、(b-1)~(b-3)評価器107および平滑化処理部108-1の処理を示す説明図。
図4】実施形態1の超音波撮像装置の動作を示すフローチャート。
図5】(a)実施形態2の超音波撮像装置の要部のブロック図、(b-1)~(b-3)評価器107および平滑化処理部108-2の処理を示す説明図。
図6】(a)実施形態2の平滑化処理部108-2が用いる重みを示す説明図、(b)平滑化処理部108-2の処理を示すブロック図。
図7】実施形態3の超音波撮像装置の要部のブロック図。
図8】実施形態4の超音波撮像装置の要部のブロック図。
図9】(a)実施形態5の超音波撮像装置のプリスキャンの動作を示すフローチャート、(b)プリスキャンシーケンスの送信ビームを示す表。
図10】(a)実施形態6の超音波撮像装置の要部のブロック図、(b)実施形態6の超音波撮像装置のプリスキャンの動作を示すフローチャート。
図11】(a)および(b)実施形態7の超音波撮像装置の要部のブロック図。
図12】実施形態8の超音波撮像装置の要部のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態の超音波撮像装置について図面を用いて説明する。
【0017】
<実施形態1>
実施形態1の超音波撮像装置100の構成を図1図3を用いて説明する。
【0018】
本実施形態の超音波撮像装置100は、超音波撮像装置本体101を含み、超音波撮像装置本体101には、超音波探触子102と、表示装置104と、操作部93とが接続されている。超音波探傷子102は、配列された複数の超音波素子を備えている。
【0019】
超音波撮像装置本体101は、送信ビームフォーマ(送信制御部)91と、受信ビームフォーマ105と、評価器107と、平滑化処理部108-1と、フィルタ処理部106と、平滑化処理部108-2と、画像処理部109と、制御部92とを備えて構成される。
【0020】
送信ビームフォーマ91は、超音波探触子102の超音波素子に送信信号を出力し、送信を制御する。
【0021】
受信ビームフォーマ105は、超音波探触子102の超音波素子がそれぞれ受信した受信信号を、深さ方向に沿った所定の受信走査線上の複数の点について焦点を合わせるように遅延させた後加算することにより、時系列な超音波信号(受信ビーム)201を生成する。
【0022】
評価器107、平滑化処理部108-1、フィルタ処理部106、平滑化処理部108-2および画像処理部109の動作を図4のフローを用いて説明する。
【0023】
評価器107、平滑化処理部108-1、フィルタ処理部106、平滑化処理部108-2および画像処理部109は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサーと、メモリとを備えたコンピュータ等によって構成され、CPUが、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、これらの機能をソフトウエアにより実現する。なお、評価器107、平滑化処理部108-1、フィルタ処理部106、平滑化処理部108-2および画像処理部109は、その一部または全部をハードウエアによって実現することも可能である。例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)のようなカスタムICや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラマブルICを用いて信号処理部7を構成し、信号処理部7の各部の機能を実現するように回路設計を行えばよい。
【0024】
評価器107は、受信ビームフォーマ105から1以上の超音波信号201を受け取る(ステップ401)。そして、評価器107は、超音波信号201の時間方向(深さ方向)を所定の単位(長さ)で区分し、区分ごとに超音波信号201の信号特性値を算出することにより、信号特性値の分布を、図3(b-1)のように求める(ステップ402)。例えば、信号特性値の一例として、信号強度や周波数を挙げることができる。
【0025】
このとき、被検体151は生体であり、複数の組織が複雑に絡み合って構成されているため、超音波信号201の信号特性値(例えば、周波数)は、異なる組織の境界の近傍にある区分の境界において大きく変化する。例えば、図3(b-1)の例では、受信走査線上に5つの組織が存在し、それぞれの組織において、超音波信号201の信号特性値(例えば、周波数)が大きく異なっているため、区分の境界において、信号特性値が大きく変化している。
【0026】
評価器107は、ステップ402で求めた信号特性値に応じて、超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を、図3(b-2)のように超音波信号201の方向(深さ方向)について生成する(ステップ403)。超音波信号201に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値としては、例えば、フィルタ処理の強度や、フィルタ処理の周波数特性(バンドパスフィルタの中心周波数や窓の幅等)を用いることができる。
【0027】
このとき、受信走査線に沿って、超音波信号201の信号特性値(例えば、周波数)が大きく異なっているため、図3(b-2)のように特性値が大きく異なるフィルタを選択するフィルタ制御信号が設定される。
【0028】
このフィルタ制御信号で選択したフィルタをそのまま超音波信号(受信ビーム)に適用した場合、組織の境界の両側において超音波信号201にはフィルタ特性値が大きく異なるフィルタが適用されることになる。この場合、組織の境界において、フィルタ処理後の超音波信号201が不連続になり、生成される画像にアーチファクトを生じる可能性がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、評価器107とフィルタ処理部106の間に、平滑化処理部108-1を配置し、平滑化処理部108-1において、フィルタ制御信号202が図3(b-3)のように滑らかに変化するように平滑化する(ステップ404)。
【0030】
フィルタ処理部106は、平滑化処理部108から図3(b-3)のように平滑化後のフィルタ制御信号203を受け取り、フィルタ制御信号の値に対応するフィルタ特性値(重み)のフィルタを、接続されているフィルタバンク110に予め格納されているフィルタ206から選択する(ステップ405)。
【0031】
次に、フィルタ処理部107は、深度ごとに選択したフィルタにより超音波信号201を処理する(ステップ406)。
【0032】
平滑化処理部108-2は、必要に応じて、ステップ406でフィルタ処理した超音波信号204を、さらに平滑化処理する(ステップ407)。
【0033】
画像処理部109は、ステップ407において平滑化した後の超音波信号205をラテラル方向に並べる等して超音波画像206を生成し、表示装置104に表示させる(ステップ408)。
【0034】
本実施の形態の超音波撮像装置によれば、超音波信号201に応じて評価器107がアダプティブなフィルタ制御信号を生成する構成であり、しかも、図3(b-3)のように組織の境界におけるフィルタ制御信号の不連続性を平滑化処理により滑らかな変化に補正している。これにより、フィルタ処理後の超音波信号における不連続性により生じるアーチファクトを抑制し、診断しやすい画像を提供できる。また、複数の組織が複雑に絡み合った生体組織の受信信号から、組織ごとにノイズを適切に除去できる。
【0035】
なお、上述の実施形態において、平滑化処理部108-1および平滑化処理部108-2は、いずれか一方のみ備える構成にしてもよい。
【0036】
また、図3(a)のように、受信走査線上の超音波信号(受信ビーム)201をラテラル方向および/またはフレーム方向に並べて、2次元以上の信号空間内を生成してもよい。この場合、評価器107は、信号空間内の所定の方向または領域について超音波信号の信号特性値の分布を算出する単位(ラテラル方向における予め定めた長さ、フレーム方向における予め定めた時間長さ、2次元以上の空間における予め定めた面積またはボリューム)に区分し、区分ごとに信号特性値に応じて超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を求め、区分ごとにフィルタ制御信号を生成する。例えば、上記所定の方向は、異なる時間に被検体の同じ位置について得られたフレームが並ぶ方向(フレーム方向)に設定することができる。
【0037】
これにより、超音波信号の信号特性を算出する単位で分割された区分を、深さ方向のみならず、任意の領域や、フレーム方向に設定した場合でも、その区分の境界においてフィルタ制御信号を平滑化することによって、フィルタ特性の不連続性によるフィルタ処理後の超音波信号における不連続性を抑制し、診断しやすい画像を提供できる。
【0038】
また、本実施形態において、平滑化処理に代わりに、もしくは平滑化処理に加えて、補間処理を行ってもよい。
【0039】
なお、本実施形態では、単位で分割した区分ごとに信号特性値を求めているが、単位を極めて小さくすることにより、所定の方向や領域について、ほぼ連続的に信号特性値を求め、それに基づいてほぼ連続的にフィルタ制御信号を生成し、生成したフィルタ制御信号および/またはフィルタ処理後の超音波信号を平滑化処理する構成としてもよい。
【0040】
上述の実施形態1では、評価器107は、超音波信号201の信号特性を算出し、信号特性からフィルタ制御信号をソフトウエアにより算出する構成であったが、評価器107を機械学習やディープラーニングの学習モデル(例えば、CNN(Convolution Neural Network)により構成することも可能である。この学習モデルを、予め求めておいた多数の超音波信号を入力データとし、それに対応する適切なフィルタ制御信号を出力データとする教師データを用いて学習させ、CNN内のノードの重み付けを設定しておく。これにより、超音波信号201を学習済みの学習モデルに入力することにより、適切なフィルタ制御信号を出力させることができるため、評価器107を学習モデルにより構成することができる。この場合、超音波信号201の信号特性を算出することなく、フィルタ制御信号を得ることができる。
【0041】
また、フィルタ処理部106は、超音波信号201にフィルタ206により処理する際に、フィルタ206のパラメータ値を重み付けして超音波信号201と畳み込み演算する構成にすることが可能である。この場合、フィルタ206のパラメータ値を重み付けする重みを、機械学習やディープラーニングの学習モデルにより生成する重み設定部をさらに備える構成としてもよい。学習モデルは、予め求めておいた多数の超音波信号およびフィルタ制御信号と、適切にノイズが除去できた場合の重みとの組み合わせを教師データとして学習させておく。これにより、重み設定部の学習モデルにより、適切な重みを生成することができる。フィルタ処理部106は、フィルタ206のパラメータ値を重み付けして超音波信号201と畳み込み演算し、ノイズを除去した超音波信号を得ることができる。
【0042】
<実施形態2>
実施形態2の超音波撮像装置について図5(a)、(b-1)~(b-3)および図6(a),(b)を用いて説明する。
【0043】
実施形態2の超音波撮像装置の構成は、図5(a)に示したように、実施形態1と同様であるが、評価器107は、信号特性値およびフィルタ制御信号202を生成する区分を設定する際に、図5(b-1)のように隣り合う区分が一部重なり合うように設定する点が実施形態1とは異なっている。
【0044】
フィルタ処理部106は、区分ごとにフィルタ制御信号202に基づいてフィルタ206を選択し、対応する区分の超音波信号を処理することにより、フィルタ処理後超音波信号(以下、フィルタ後超音波信号と呼ぶ)207を図5(a)および図5(b-2)のように得る。フィルタ後超音波信号207は、区分ごとに得られるため、隣り合う区分が重なる部分で、異なるフィルタ206で処理された異なる値の2つの信号が得られている。
【0045】
平滑化処理部108-2は、区分が重なり合う部分の2つのフィルタ後超音波信号207を、図6(a)に示したような、予め定めておいた深さによって異なる重みで重み付けして加算することにより平滑化し、平滑化後超音波信号208を得る。
【0046】
画像処理部109は、平滑化後超音波信号208を用いて超音波画像206を生成する。
【0047】
実施形態2の超音波撮像装置は、実施形態1と同様に、フィルタ特性の不連続性によるフィルタ後超音波信号における不連続性を抑制し、診断しやすい画像を提供できる。
【0048】
なお、上記説明では、フィルタ処理後の超音波信号207を平滑化処理部108-2により重み付けして加算する構成であったが、図5(b-1)のフィルタ制御信号を、図2および図3の平滑化処理部108-1によって、重み付けして加算してもよい。
【0049】
<実施形態3>
実施形態3の超音波撮像装置について図7を用いて説明する。
【0050】
実施形態3の超音波撮像装置は、超音波信号201とフィルタ後超音波信号204を重み付けして合成する合成処理部111を備えている。
画像処理部109は、合成処理部111の合成後の超音波信号を用いて画像を生成する。
【0051】
また、合成処理部111には、コンソール103が接続されており、ユーザは、コンソール103に備えられたタッチパネルやマウスなどのユーザーインターフェースから信号を合成する際の重みを入力することができる。
【0052】
これにより、実施形態1と同様に、超音波信号に応じて評価器107がアダプティブなフィルタ制御信号を生成する構成でありながら、フィルタ処理後の超音波信号204が、表示画像に反映される強度をユーザの好みに応じて調整できる。
【0053】
他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0054】
<実施形態4>
実施形態4の超音波撮像装置について図8を用いて説明する。
【0055】
実施形態4の超音波撮像装置は、実施形態1と同様の構成であるが、評価器107にフィルタ後超音波信号204をフィードバックさせる点が実施形態1とは異なる。
【0056】
評価器107は、超音波信号201と、フィードバックさせたフィルタ後超音波信号204との差分あるいは相関特性、もしくは、超音波信号201とフィルタ後超音波信号204の周波数特性の差分あるいは相関特性を求め、求めた差分あるいは相関特性に基づいて、フィルタ処理部106のフィルタ処理の妥当性を判定する評価値を生成する。フィルタ処理の妥当性を判定するとは、超音波信号201からノイズが効果的に除去されているかどうか、ノイズ以上に超音波信号を除去していないかを判定することを意味する。評価器107は、生成した評価値をフィルタ制御信号202の生成に反映させ、評価値が高まるようにフィードバック制御する。
【0057】
平滑化処理部108-1は、直前までの複数フレームの超音波信号の処理する際に用いたフィルタ制御信号から平滑化後フィルタ制御信号を生成する。例えば、直前までの複数フレームのフィルタ制御信号の平均値を算出することによって、現在のフレームに対する平滑化後フィルタ制御信号を生成する。このような処理を行えば、平滑化後フィルタ制御信号の生成に現在のフレームに対するフィルタ制御信号を必要としないため、超音波信号の取得時点から追加での遅延なく現在のフレームの超音波信号に対するフィルタ処理を終えることができる。すなわち、画像表示までの高いリアルタイム性が保たれる。
【0058】
本実施形態では、評価器107がフィルタ前後の信号を比較することにより、ノイズとして除去された信号を把握して、直接評価することが可能になり、より被検体の特性に合致したノイズ除去が可能になる。
【0059】
他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0060】
<実施形態5>
実施形態5の超音波撮像装置について図9(a)、(b)を用いて説明する。
【0061】
実施形態5の超音波撮像装置は、実施形態1の図4のフローに示した撮像動作の前に、図9(a)のフローにより、プリスキャンシーケンスにより超音波の送受信を行い、予めフィルタ制御信号の調整を行う点が、実施形態1とは異なる。
【0062】
プリスキャンシーケンスでは、図9(b)に例を示したように同一の送信ビームの送信を複数回繰り返し、信号成分とノイズ成分とを算出し、その特性に応じてフィルタ制御信号を設定する。例えば、同一の送信ビームの送信を複数回繰り返して送信したときに受信されるデータについて、各送信間で変動がない成分は信号成分であり、変動がある成分はノイズ成分であると弁別することが可能である。繰り返し送信を行う間隔が、観察対象が体動により典型的には送信超音波の波長程度動く時間よりも短ければ、ここで述べた手法によって体動を含むノイズ成分と信号成分とを弁別することが可能である。
このように、時間的に連続して同一の送信ビームを繰り返し送信することによって、ノイズ・信号推定の際に体動の影響を受けにくくなり、効果的にノイズを除去可能なフィルタ制御信号を生成することができる。
【0063】
図9(a)のフローを用いてプリスキャンシーケンスを具体的に説明する。
【0064】
制御部92は、ユーザが、コンソール103の操作部93に配置されている自動デノイズ調整ボタンを押下したことを受け付けたならば(ステップ901)、制御部92は、図9(b)に定めた送信ビームを順に送信するプリスキャンシーケンスを実行させ、受信信号から超音波信号(受信ビーム)を生成させる(ステップ902)。評価器107は、図4のステップ401~403と同様の手法によりフィルタ制御信号を生成する。(ステップ903)。
【0065】
これにより、制御部92は、デノイズ調整を終了し、ステップ903により設定されたフィルタ制御信号を初期設定されたフィルタ制御信号として用いて、図4のフローのステップ401~408の実行し、通常撮像により超音波画像を生成する(ステップ904,905)。
【0066】
上記ステップ902においては、図9(b)のように、同じ位置に向かって同じ強度で同じ周波数特性をもつ送信ビーム(送信ビーム番号が同じ送信ビーム)が3回ずつ繰り返し送信され、その都度、評価器107がフィルタ制御信号202を生成する。これにより、被検体の体動の影響を受けにくくなり、効果的にノイズを除去可能なフィルタを選択するフィルタ制御信号を生成することができる。ただし、図9(b)で示した送信ビームのシーケンス回数・番号などはあくまでも例であって、任意の送信ビーム設定および回数により、本実施例で示したものと同様の効果を期待することができる。
【0067】
他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0068】
<実施形態6>
実施形態6の超音波撮像装置について図10(a)、(b)を用いて説明する。
【0069】
実施形態6の超音波撮像装置は、図10(a)に構成を示したように、評価器107が、送信パラメータ制御信号210を、送信ビームフォーマ91に対して出力する点で実施形態1とは異なっている。この送信パラメータ制御信号210は、超音波信号201のノイズを低減するための送信ビームのパラメータを設定する信号であり、プリスキャンシーケンスにより求めておいたものである。
【0070】
図10(b)のフローを用いてプリスキャンシーケンスを具体的に説明する。
【0071】
制御部92は、ユーザが操作部93に配置されている自動デノイズ調整ボタンを押下したことを受け付けたならば(ステップ1001)、制御部92は、プリスキャンシーケンスを実行させ、送信ビームを送信させ、得られた受信信号から超音波信号(受信ビーム)を生成させる(ステップ1002)。
【0072】
評価器107は、例えば異なる送信ビームのパラメータにより得られた信号の信号対雑音比を算出し、一定値以上の信号対雑音比が得られる送信パラメータを割り出すことにより、超音波信号のノイズを低減する送信パラメータ(例えば、送信周波数)を決定し、送信パラメータ制御信号を生成する(ステップ1003)。
【0073】
これにより、制御部92は、デノイズ調整を終了し、評価器107は、ステップ1003により設定された送信パラメータ制御信号を送信ビームフォーマに出力しながら、図4のフローのステップ401~408の実行し、通常撮像により超音波画像を生成する(ステップ1004,1005)。
【0074】
本実施形態によれば、超音波信号のノイズを低減可能な送信ビームを送信することが可能になり、実施形態1で説明した超音波信号のフィルタ処理時のノイズ低減効果との相互作用により、広範囲で信号SNと分解能とを両立できる。
【0075】
他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
【0076】
プリスキャンシーケンスでは、図9(b)に示したように同一の送信ビームを連続して送信することによって、ノイズ成分と信号成分とを分離したうえで送信パラメータ制御信号210を設定しても良いし、異なる送信ビームを連続して送信することによって、異なる送信ビーム間の信号の違いを解析し、送信パラメータ制御信号210を設定しても良い。
【0077】
<実施形態7>
実施形態7の超音波撮像装置について図11(a)、(b)を用いて説明する。
【0078】
図11(a)の装置は、フィルタ処理部106の後段に画像前処理部114を備え、画像前処理部114の出力する中間画像データ210を評価器107に入力している点が、実施形態1とは異なる。
【0079】
画像前処理部114は、フィルタ後超音波信号204への画像前処理をすることにより、中間画像データ210を出力する。画像前処理には、例えば超音波信号から画像への座標変換処理や検波処理や補間処理が含まれる。
【0080】
評価器107は、中間画像データ210の画像特性値を算出し、その画像特性値にもとづいて超音波信号に含まれるノイズを除去するフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を設定することにより、フィルタ制御信号202を生成して出力する。画像特性値の例としては、ある中間画像データ210中のある領域の周波数特性や信号強度がある。
【0081】
このように、評価器とフィルタ処理部それぞれにとって適切な入力信号を用いることにより、ノイズ除去効果の最大化と演算規模の最小化とを両立できる。
【0082】
また、図11(a)では評価器107には中間画像データ210のみを入力するように図示しているが、さらに超音波信号201を入力し、中間画像データ210、超音波信号201のそれぞれから算出された画像特性値や信号特性値の両方に基づいてフィルタの特性値を設定するフィルタ制御信号を設定するようにしても良い。
【0083】
図11(b)の装置は、受信ビームフォーマ105の後段に画像前処理部114を備え、画像前処理部114の出力する中間画像データ210をフィルタ処理部106が処理する点が、実施形態1とは異なる。
【0084】
信号前処理部115は、超音波信号201への信号に対して信号処理をすることにより、中間超音波信号データ211を出力する。ここでの信号処理とは例えば、周波数フィルタ処理がある。
【0085】
評価器107は、中間超音波信号データ211の信号特性値を算出し、その信号特性値にもとづいて超音波信号に含まれるノイズを除去するためのフィルタ特性値を設定するフィルタ制御信号を設定することにより、フィルタ制御信号202を生成して出力する。
【0086】
このように、評価器とフィルタ処理部それぞれにとって適切な入力信号を用いることにより、ノイズ除去効果の最大化と演算規模の最小化とを両立できる。
【0087】
<実施形態8>
実施形態8の超音波撮像装置について図12を用いて説明する。
【0088】
図12の装置は、フィルタ処理部106は複数種類のフィルタ処理を同一の超音波信号201に対して施すことによって複数種類のフィルタ後超音波信号204を生成する。
【0089】
評価器107は、複数種類のフィルタ後超音波信号204に対してそれぞれ、実施形態1と同様に信号特性の評価を行って合成処理制御信号212を算出する。具体的には、超音波信号とフィルタ後超音波信号との差分あるいは相関をもとにフィルタ処理妥当性を評価し、その評価値をもとに合成処理制御信号を生成する。合成処理制御信号は複数のフィルタ後超音波信号の合成処理に関するパラメータであり、例えば、各々のフィルタ後超音波信号の各信号領域に対する重みであって、複数枚合成処理部114はその重みに従って各々のフィルタ後超音波信号を加算する。
平滑化処理部108-1は、フィルタ制御信号203に対して、それぞれ平滑化処理を行う。
【0090】
合成処理部114は、複数のフィルタ後超音波画像をフィルタ制御信号にもとづいて、例えば、複数のフィルタ後超音波信号の重みづけ加算による合成処理やウェーブレット変換を用いた合成処理を行うことによって、合成超音波信号209を生成することを特徴とする。
【0091】
画像処理部109は、合成超音波信号209を用いて超音波画像304を生成する。
【0092】
このように、本実施形態の構成では、評価器の評価結果にもとづいて、再度フィルタ処理を行う必要がないため、ノイズ除去効果を遅延なく超音波画像に反映できる。
【符号の説明】
【0093】
91…送信ビームフォーマ
92…制御部
93…操作部
100…超音波撮像装置
101…超音波撮像装置本体
102…超音波探触子
103…コンソール
104…表示装置
105…受信ビームフォーマ
106…フィルタ処理部
107…評価器
108-1,108-2…平滑化処理部
109…画像処理部
151…被検体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12