(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】複合部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240312BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20240312BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20240312BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B29C45/14
B32B37/14 A
B29C33/12
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2020077111
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴史
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-312798(JP,A)
【文献】特開2005-313388(JP,A)
【文献】特開2021-171966(JP,A)
【文献】特開2008-238428(JP,A)
【文献】特開2020-032554(JP,A)
【文献】特開2004-314501(JP,A)
【文献】特開2009-269190(JP,A)
【文献】特開平07-266372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B32B 1/00-43/00
B60R 13/01-13/04
B60R 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠部を有する合成樹脂製の支持体によって機能体を支持する複合部材の製造方法であって、
不織布または発泡体からなる層を有する機能体シートに設けられたセット孔部から該機能体シートの端縁に向けて延びる保護脆弱部を、成形型にセットする前に該機能体シートに形成し、
前記成形型に設けられたセットピンを前記セット孔部に通して、前記機能体シートを該成形型にセットし、
前記成形型を閉じることによって
、前記セットピンが前記保護脆弱部を通過して前記セット孔部から外れるとともに前記機能体シートを形状変化させたもとで、前記支持体を成形することで、該機能体シートから形成される前記機能体と前記枠部とを接続することを特徴とする複合部材の製造方法。
【請求項2】
枠部を有する合成樹脂製の支持体によって機能体を支持する複合部材の製造方法であって、
不織布または発泡体からなる層を有する機能体シートに設けられたセット孔部の開口縁から該機能体シートの端縁まで繋がるスリットである保護脆弱部を、成形型にセットする前に該機能体シートに形成し、
前記成形型に設けられたセットピンを前記セット孔部に通して、前記機能体シートを該成形型にセットし、
前記成形型を閉じることによって前記機能体シートを形状変化させたもとで、前記支持体を成形することで、該機能体シートから形成される前記機能体と前記枠部とを接続することを特徴とする複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、枠部を有する合成樹脂製の支持体によって機能体を支持する複合部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンアンダーカバーなどの吸音が要求される車両用パネルとしては、不織布からなる板状の繊維体を主体とし、この繊維体の裏面に形成された樹脂成形体によって、繊維体を補強したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、繊維体をセットした成形型において樹脂成形体を成形する所謂インサート成形によって、車両用パネルを製造している。特許文献1の製造方法であると、成形型の型形状により繊維体が引っ張られた際に、繊維体を保持するセットピンが破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、成形型を保護できる複合部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る複合部材の製造方法は、
枠部を有する合成樹脂製の支持体によって機能体を支持する複合部材の製造方法であって、
不織布または発泡体からなる層を有する機能体シートに設けられたセット孔部から該機能体シートの端縁に向けて延びる保護脆弱部を、成形型にセットする前に該機能体シートに形成し、
前記成形型に設けられたセットピンを前記セット孔部に通して、前記機能体シートを該成形型にセットし、
前記成形型を閉じることによって前記機能体シートを形状変化させたもとで、前記支持体を成形することで、該機能体シートから形成される前記機能体と前記枠部とを接続することを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る複合部材の製造方法によれば、成形型を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係るエンジンアンダーカバーを斜め上側から見た斜視図である。
【
図2】実施例のエンジンアンダーカバーを斜め下側から見た斜視図である。
【
図3】実施例のエンジンアンダーカバーを示す平面図である。
【
図4】実施例のエンジンアンダーカバーの要部を示す底面図である。
【
図5】(a)は
図3のA-A線端面図であり、(b)は(a)の要部を示す断面図である。
【
図6】(a)は
図3のB-B線端面図であり、(b)は(a)の要部を示す断面図である。
【
図7】(a)は
図3のC-C線端面図であり、(b)は(a)の要部を示す断面図である。
【
図8】(a)は
図3のD-D線端面図であり、(b)は(a)の要部を示す断面図である。
【
図9】(a)は実施例の機能体シートを示す平面図であり、(b)は(a)のE-E線断面図である。
【
図10】実施例の製造工程を示す説明図である。なお、
図3のC-C線に対応する部位を示している。
【
図11】実施例の製造工程の要部を示す説明図である。なお、
図3のC-C線に対応する部位を示している。
【
図12】実施例の製造工程を示す説明図である。なお、
図3のD-D線に対応する部位を示している。
【
図13】実施例の製造工程の要部を示す説明図である。なお、
図3のD-D線に対応する部位を示している。
【
図14】実施例の製造工程の要部を示す説明図である。なお、
図3のD-D線に対応する部位を示している。
【
図15】実施例の第1型の要部を示す平面図であり、(a)は機能体シートをセットする前であり、(b)は機能体シートをセットした状態である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る複合部材の製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。本発明に係る複合部材は、エンジンアンダーカバー、フロアアンダーカバー、フェンダーライナーなどの車両外装部材、あるいは、トランクルームのデッキ部分、ドアトリム、天井、ピラーなどの車両内装部材など、車両を構成する車両用パネルとして好適に用いることができる。なお、実施例では、複合部材として、車両におけるエンジンルームの下側に取り付けられるエンジンアンダーカバーを例示して説明する。
【0010】
複合部材は、例えば、車両外装部材であれば、車両の外側に向く側が表であり、車両の内側を向く側が裏である。また、複合部材は、例えば、車両内装部材であれば、車室に向く側が表であり、車体に向く側が裏である。以下の実施例で説明するエンジンアンダーカバーでは、表が下であり、裏が上になる。
【実施例】
【0011】
図1~
図4に示すように、エンジンアンダーカバー(複合部材)10は、不織布または発泡体からなる層を含む機能体12と、機能体12を支持する支持体14とを備えている。エンジンアンダーカバー10は、機能体12と合成樹脂製の支持体14とが接続されている。エンジンアンダーカバー10は、支持体14に設けられた取付部16を用いて、自動車等の車両の車体に取り付けられる。
【0012】
機能体12は、機能体12の主体となる層を構成する不織布や発泡体に由来する特性によって、吸音や断熱などの所要の機能を発揮するものである。エンジンアンダーカバー10は、エンジン音や、走行音などの車外騒音を、機能体12によって抑えている。機能体12を構成する不織布としては、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維などからなるものを用いることができる。また、機能体12を構成する発泡体としては、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系などの発泡体を用いることができる。
【0013】
機能体12は、1層で構成してもよいが、2層以上で構成してもよい。
図6(b)および
図8(b)に示すように、実施例の機能体12は、不織布からなる第1層12aと不織布からなる第2層12bとからなる複層構造である。第2層12bは、第1層12aの下側に配置されている。機能体12において、第1層12aが機能体12に求められる主機能(実施例では吸音)を担保するための層である。また、第2層12bが、機能体12に付加する補助機能(実施例では撥水)を担保するための層である。実施例の機能体12は、第2層12bが第1層12aよりも密度が高く設定されている。例えば、第1層12aの密度を165kg/m
3程度とし、第2層12bの密度を400kg/m
3程度に設定することができる。実施例の第2層12bは、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの撥水材料を不織布に付与することで撥水性を有している。エンジンアンダーカバー10は、機能体12の下面を、撥水性を有する第2層12bで構成しているので、機能体12に水が浸入したり、機能体12に雪が付いたり、機能体12に着氷したりすることを防止できる。従って、実施例のエンジンアンダーカバー10によれば、機能体12に付いた水が凍ることなどに起因して、機能体12が破損することを防止できる。なお、エンジンアンダーカバー10は、機能体12の上側に重ねて、例えば、密度20kg/m
3程度の不織布等を配置して低周波数帯の吸音特性を改善するなどを行ってもよい。
【0014】
支持体14は、合成樹脂の射出成形等による成形品である。合成樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン (ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)などを用いることができる。
【0015】
図1~
図4に示すように、支持体14は、互いに交差する複数の枠部18を有している。実施例の支持体14は、車両の前後方向に延びる枠部18と、車両の左右方向に延びる枠部18とが、格子状に配置されている。支持体14は、その外縁部に、枠部18に連なる外枠部20を有している。支持体14には、複数の枠部18、または、枠部18および外枠部20に囲われた開口部分14aが、前後左右に並べて形成されている。支持体14では、機能体12が枠部18および外枠部20に接続されている(
図6および
図8参照)。支持体14は、開口部分14aが機能体12で塞がれている。エンジンアンダーカバー10において、機能体12は、支持体14の開口部分14a毎に分割して配置されている。支持体14は、枠部18および外枠部20を一体的に形成した成形品である。支持体14には、外枠部20に取付部16が設けられている。
【0016】
図6および
図8に示すように、枠部18は、前後左右の枠部18,18同士が交差する交差部分22を除いて、下方(表裏方向の一方)が開口すると共に上方(表裏方向の他方)が閉塞する溝形状に形成されている。
図5および
図7に示すように、枠部18の交差部分22は、上方(表裏方向の他方)が開口すると共に下方(表裏方向の一方)が閉塞する形状に形成されている。枠部18において交差部分22を除く一般部分は、一般閉塞部18aの両縁から立ち上がる一般壁部18bを有している。一般壁部18bの開口端には、一般壁部18bと交差するように外側へ延びる延出部18cが形成されている(
図6(b)および
図8(b)参照)。交差部分22は、交差閉塞部22aの四方を囲むように立ち上がる交差壁部22bを有している。交差部分22は、交差壁部22bの開口端または交差壁部22bにおける上下方向の途中位置に、一般閉塞部18aが連なっている(
図5(b)および
図7(b)参照)。実施例の交差部分22は、環状に連なる交差壁部22bに囲われる筒形状に形成されている。支持体14では、一般部分の一般閉塞部18aと、交差部分22の交差閉塞部22aとが、上下方向にずらして配置されている。
【0017】
図6(b)および
図8(b)に示すように、枠部18は、機能体12が一般部分の延出部18cに接続されている。具体的には、機能体12の端に、支持体14をなす合成樹脂が侵入して入り混ざり、枠部18の延出部18cと機能体12とが一体化されている。エンジンアンダーカバー10は、枠部18における一般部分の開口端と機能体12の下面とが揃っている(
図6(b)および
図8(b)参照)。エンジンアンダーカバー10は、枠部18における一般部分の一般閉塞部18aと機能体12の上面とが、上下にずれている。エンジンアンダーカバー10は、交差部分22の交差閉塞部22aの下面と機能体12の下面とが揃っている。
【0018】
図6および
図8に示すように、エンジンアンダーカバー10は、支持体14に設けられた複数の開口部分14aが、開口部分14a毎に分割された機能体12によって塞がれている。エンジンアンダーカバー10は、隣り合う開口部分14aを塞ぐ機能体12同士が、間にある枠部18で分かれて互いに独立している(
図1~
図4参照)。
【0019】
図6(b)および
図8(b)に示すように、エンジンアンダーカバー10には、機能体12における枠部18に接する部位に、圧縮部24が設けられている。圧縮部24は、機能体12の上面から上方へ開口するように凹んでいる。圧縮部24は、支持体14の開口部分14aを塞ぐ機能体12の中央部位よりも薄くなっている。圧縮部24は、機能体12における開口部分14aの中央部位よりも密度が高く、枠部18を構成する合成樹脂が侵入し難くなっている。
【0020】
実施例のエンジンアンダーカバー10は、機能体シート26をセットした成形型40で支持体14を成形する所謂インサート成形によって得られる(
図10~
図14参照)。インサート成形によって得られるエンジンアンダーカバー10は、合成樹脂を硬化して形成される支持体14自身の接合力を用いて、機能体12と支持体14とが一体化されている。
【0021】
図9(a)に示すように、エンジンアンダーカバー10において機能体12となる機能体シート26は、支持体14の開口部分14aに対応して分割されていない1枚のシートである。機能体シート26は、成形型40においてエンジンアンダーカバー10を成形するときに、成形型40のキャビティ面の凹凸形状によって、支持体14における個々の開口部分14aに合わせて分割される(
図10~
図14参照)。成形型40は、成形型40にセットされた機能体シート26を、型閉じによって分割するようになっている。このように、機能体12は、インサート成形時の型閉じによって、機能体シート26を分割して形成される。
【0022】
図9(a)に示すように、機能体シート26には、枠部18の形成位置に対応して、分割脆弱部28が形成されている。実施例の機能体シート26には、格子状に形成される枠部18に対応して、前後方向に延びる分割脆弱部28と左右方向に延びる分割脆弱部28とが、格子状に配置されている。分割脆弱部28は、機能体12を厚み方向に貫通するスリットを形成したり、機能体シート26に切れ込みを入れたりするなどによって、機能体シート26の他の部位よりも破断し易くなっている。実施例の分割脆弱部28は、スリットが断続的に並ぶミシン目状に形成されている(
図9(b)参照)。エンジンアンダーカバー10は、機能体シート26の分割脆弱部28を破断して形成される隙間に、支持体14の枠部18が配置される。
【0023】
図9(a)に示すように、機能体シート26には、枠部18の交差部分22の形成位置に対応して、開口部30が形成されている。実施例の機能体シート26には、複数の開口部30が、前後左右に延びる分割脆弱部28の交差する位置に配置されている。開口部30は、機能体シート26を厚み方向に貫通している(
図9(b)参照)。エンジンアンダーカバー10は、機能体シート26の開口部30に、枠部18の交差部分22の交差閉塞部22aが配置される。
【0024】
図9(a)に示すように、機能体シート26には、支持体14の外枠部20の形成位置に対応して、セット孔部32が形成されている。セット孔部32は、機能体シート26を成形型40にセットする際に、後述するセットピン54(
図15参照)を通すために用いられる。また、機能体シート26には、セット孔部32の開口縁から機能体シート26の端縁に向けて延びる保護脆弱部34が形成されている。保護脆弱部34は、分割脆弱部28や開口部30が設けられる機能体シート26の内側と反対側へ延びている。保護脆弱部34は、機能体シート26を厚み方向に貫通するスリットを形成したり、機能体シート26に切れ込みを入れたりするなどによって、機能体シート26の他の部位よりも分割し易くなっている。実施例の保護脆弱部34は、セット孔部32から機能体シート26の端縁まで繋がるスリットである。
【0025】
図10~
図14に示すように、前述したエンジンアンダーカバー10を製造するための成形型40は、固定型である第1型42と、可動型である第2型44とを備えている。成形型40には、機能体シート26をセットした状態で型閉じした際に、支持体14に合わせたキャビティ46が形成される(
図10(c)、
図11(c)、
図12(c)および
図14(b)参照)。
【0026】
図10および
図12に示すように、第1型42は、枠部18の一般部分の下面側(凹面側)を成形する第1凸型部48と、枠部18の交差部分22の下面側(凸面側)を成形する第1凹型部50とを備えている。第1型42には、複数の第1凸型部48が、互いに交差するように設けられている(
図15(a)参照)。実施例の第1凸型部48は、根元側から先端側に向かうにつれて細くなる突条である。第1凹型部50は、第1凸型部48,48の延長線同士が交差する位置に設けられている。第1型42には、キャビティ46に合成樹脂を注入するためのゲート52が、第1凹型部50の底に開口するように設けられている(
図10、
図11および
図15参照)。第1型42は、機能体12を位置決めして保持するためのセットピン54を備えている(
図15参照)。
【0027】
図10および
図12に示すように、第2型44は、枠部18の一般部分の上面側(凸面側)を成形する第2凹型部56と、枠部18の交差部分22の上面側(凹面側)を成形する第2凸型部58とを備えている。第2型44には、第1型42の第1凸型部48に対応するように、複数の第2凹型部56が設けられている。第2凹型部56は、溝状に形成されている。第2凸型部58は、第1型42の第1凹型部50に対応するように、第2凹型部56の間に設けられている。第2型44には、第2凹型部56の開口縁に、機能体12の上面に相対する型面よりも第1型42側へ突出する押圧型部60が設けられている(
図13および
図14参照)。
【0028】
次に、前述した成形型40を用いたエンジンアンダーカバー10の製造方法について説明する。
【0029】
まず、分割脆弱部28、開口部30、セット孔部32および保護脆弱部34を形成した機能体シート26を用意する(
図9参照)。機能体シート26は、所要厚みのシート材を、例えばトムソン刃などによって、打ち抜き加工することで形成することができる。機能体シート26は、エンジンアンダーカバー10の外形に合わせてカットする際に、分割脆弱部28、開口部30、セット孔部32および保護脆弱部34を一緒に形成すればよい。
【0030】
第1型42のセットピン54をセット孔部32に通して、機能体シート26を第1型42にセットする(
図10(a)および(b)、
図11(a)および(b)、
図12(a)および(b)、
図13(a)、
図15(b)参照)。機能体シート26は、セットピン54とセット孔部32との引っ掛かりによって、展開した状態で第1型42に対して位置決めされる。このとき、第1凸型部48と分割脆弱部28とが重なり(
図13(b)参照)、第1凹型部50と開口部30とが重なるように配置される(
図11(b)参照)。
【0031】
第2型44を第1型42に向けて移動して、成形型40を型閉じする。このとき、機能体シート26が第1型42の第1凸型部48の先端面に当たる(
図13(b)参照)。成形型40の型閉じが進むと、機能体シート26において第1凸型部48に当たる部位の両脇が、第2型44の押圧型部60,60によって押されることで、機能体シート26における枠部18の形成予定部位が分断される(
図13(c)参照)。ここで、機能体シート26における枠部18の形成予定位置には、成形型40にセットする前に、分割脆弱部28が形成されているので、機能体シート26は分割脆弱部28から破断する。成形型40の型閉じが更に進むと、第2型44の押圧型部60,60に押された機能体シート26に、第1凸型部48が差し込まれて破断が進む(
図13(d)参照)。そして、機能体シート26が枠部18の形成予定部位で分割されて、支持体14における個々の開口部分14aに合わせた機能体12が形成される。このように、成形型40を型閉じすることで、枠部18を形作る型形状によって機能体シート26における枠部18の形成位置を分割して、機能体12を形成している。
【0032】
成形型40の型閉じが進むと、機能体シート26の分割部位近傍(機能体12の端縁部)が、第1型42の型面と第2型44の押圧型部60に挟まれて圧縮される(
図14(a)参照)。これにより、機能体12の端縁部には、機能体12の中央部位よりも圧縮された圧縮部24が、支持体14となる合成樹脂を注入する前に形成される(
図14(b)参照)。また、キャビティ46における枠部18および外枠部20を成形する空間に、機能体12の端が配置される。
【0033】
成形型40にセットする前に、機能体シート26において枠部18,18同士の交差部分22に対応する位置に、開口部30を形成してある。これにより、成形型40の型閉じに際して、交差部分22に対応する部位での機能体シート26の分断が容易になる。成形型40が型閉じすると、第1型42の第1凸型部48と第2型44の第2凹型部56との間に、キャビティ46における枠部18の一般部分に対応した空間が形成される(
図14(b)参照)。また、第1型42の第1凹型部50と第2型44の第2凸型部58との間に、キャビティ46における枠部18の交差部分22に対応した空間が形成される(
図11(c)参照)。このとき、キャビティ46における枠部18の交差部分22に対応した空間には、機能体シート26の開口部30を介して第1型42に設けられたゲート52が臨む(
図11(c)参照)。
【0034】
次に、キャビティ46に合成樹脂をゲート52から注入し(
図11(c)参照)、支持体14を成形する。このとき、キャビティ46における枠部18および外枠部20に対応する空間に配置された機能体12の端に、合成樹脂が侵入する。なお、機能体12の端縁部には、押圧型部60で圧縮された圧縮部24が形成されているので、圧縮部24を越えた合成樹脂の侵入が防止される。この状態で支持体14が成形されることで、枠部18または外枠部20と機能体12とが接続されて、成形された支持体14の開口部分14aが機能体12で塞がれる(
図12(c)参照)。
【0035】
第2型44を第1型42から離すように移動して成形型40を型開きすると、第2型44にエンジンアンダーカバー10が追従して第1型42から外れる(
図10(d)、
図11(d)、
図12(d)および
図14(c)参照)。第2型44の第2凸型部58に設けられた突き出し機構(図示せず)によって、第2型44からエンジンアンダーカバー10を取り外すことで、支持体14によって機能体12が支持されたエンジンアンダーカバー10が得られる。
【0036】
前述した製造方法は、成形型40を型閉じすることで、枠部18を形作る型形状によって、機能体シート26における枠部18の形成予定位置を分割して、支持体14の開口部分14aに対応した機能体12を簡単に形成することができる。このため、支持体14における複数の開口部分14aに合わせた数や形状の機能体12を用意する必要がなく、1枚の機能体シート26を用意するだけでよい。また、1枚の機能体シート26を成形型40にセットするだけでよく、支持体14における複数の開口部分14aに合わせた複数枚の機能体12を成形型40にセットするような手間がかからない。このように前述した製造方法によれば、支持体14の開口部分14a毎に区分された機能体12と、支持体14の枠部18とが接続されたエンジンアンダーカバー10を簡単に得ることができる。
【0037】
例えば、1枚のシート材を支持体14の凹凸形状に合わせて形状変化させて、複合部材をインサート成形することはできないことはない。この場合、支持体14の成形収縮量とシート材の収縮量の違いによって、枠部18に向けてシート材が縮んでしまい、複合部材が反るように変形するなどの不具合を招く。特に、実施例の枠部18のような溝形状であると、シート材を枠部18の溝形状に沿わせて配置すると、枠部18とシート材との収縮量の違いの影響を大きく受けてしまう。前述した製造方法によれば、機能体シート26を枠部18の形成位置で分割して個々の開口部分14aに対応した機能体12としているので、機能体12が枠部18の成形収縮の影響を受け難い。従って、前述した製造方法で得られるエンジンアンダーカバー10は、機能体12および支持体14の収縮量の違いに起因する反り等の変形を防止することができ、見栄えを向上することができる。
【0038】
実施例の枠部18のように溝が深い形状であっても、機能体シート26を枠部18の形成位置で分割するので、機能体シート26(機能体12)を枠部18の形状に無理に追従させていない。従って、枠部18の形状は、機能体12の厚みや硬さ等による制約を受け難く、形状の自由度を向上できる。また、機能体12は、枠部18の形状による制約を受け難い。そして、前述した製造方法によれば、機能体12の端末の枠部18への巻き込み量を減らすことができるので、コストを低減できる。
【0039】
前述した製造方法は、機能体シート26を枠部18の形成予定位置で分割して、機能体12の端をキャビティ46における延出部18cに対応する空間に臨ませている。このように、機能体12の一部だけをキャビティ46に臨むようにしているので、キャビティ46における枠部18の大部分および枠部18以外の部分に対応する空間を、成形型40の型面で区画することができる。従って、キャビティ46における合成樹脂の流動性を向上することができる。そして、キャビティ46における合成樹脂の流動性を確保できるので、枠部18の板厚を薄くすることが可能となり、エンジンアンダーカバー10の軽量化を図ることができる。
【0040】
成形型40にセットする前に、機能体シート26における枠部18の形成予定位置に、分割脆弱部28を形成しているので、成形型40の型閉じに伴って機能体シート26を分割脆弱部28で円滑に破断することができる。また、分割脆弱部28を形成しておくことで、機能体シート26の分割位置を安定させることができ、機能体12の端を揃えることができる。
【0041】
機能体シート26には、成形型40にセットする前に、枠部18,18同士の交差部分22に対応する位置に、開口部30が形成されている。機能体シート26において機能体12の角部となる部位を予め離してあるので、成形型40の型閉じに伴って機能体シート26を円滑に破断することができる。また、開口部30を形成しておくことで、機能体シート26の分割位置を安定させることができる。
【0042】
前述した製造方法では、機能体シート26に形成した開口部30を介して、キャビティ46に合成樹脂を注入している。キャビティ46において、枠部18の交差部分22に対応する空間から枠部18の一般部分に対応する空間へ合成樹脂を流動させることができる。これにより、キャビティ46において合成樹脂の流れが機能体12に邪魔され難くすることができる。また、キャビティ46における延出部18cに対応する空間を越えて、合成樹脂が機能体12に侵入することを抑えることができる。
【0043】
機能体シート26を分割したり、機能体シート26に凹凸を形成したり、機能体シート26を湾曲したりするなど、型閉じした成形型40において機能体シート26を三次元的に形状変化させると、機能体シート26を内側へ引き込むように力が加わる。インサート成形に際して、機能体シート26は、セットピン54をセット孔部32に通して第1型42に保持されている(
図15(b)参照)。このため、型閉じに際して、成形型40の型形状によって機能体シート26が引っ張られることになる。
【0044】
機能体シート26には、成形型40にセットする前に、セット孔部32の開口縁から機能体シート26の端縁に向けて延びる保護脆弱部34が形成されている。型閉じに伴って成形型40の型形状によって機能体シート26を分割するときに機能体シート26が過剰な力で引っ張られると、保護脆弱部34で破断してセット孔部32からセットピン54を外すことができる。従って、機能体シート26に対して意図しないような過剰な力が加わった際に、機能体シート26がセットピン54から外れることで、繰り返し用いられるセットピン54の破損を防止することができる。従って、前述した製造方法によれば、成形型40を保護することができる。ここで、機能体シート26に分割脆弱部28を形成しておくことで、インサート成形時のセットピン54への負荷をより軽減することができる。
【0045】
保護脆弱部34がセット孔部32から機能体シート26の端縁まで延びるスリットであると、セット孔部32からセットピン54が外れ易くなり、インサート成形時のセットピン54への負荷をより軽減することができる。このように、保護脆弱部34の分離し易さを調節することで、セットピン54による機能体シート26の保持度合いを簡単に設定できる。
【0046】
エンジンアンダーカバー10は、支持体14における枠部18の一般部分を、下方が開口すると共に上方が閉塞する溝形状に形成している。エンジンアンダーカバー10は、支持体14における枠部18の交差部分22を、下方が閉塞すると共に上方が開口する形状に形成している。このように、枠部18が、閉塞部18a,22aと閉塞部18a,22aから立ち上がる壁部18b,22bとを有する断面「C」形状に形成されているので、支持体14の剛性を向上することができる。しかも、支持体14は、枠部18における一般部分の一般閉塞部18aと、枠部18における交差部分22の交差閉塞部22aとが上下にずらして配置されているので、剛性を高くすることができる。このように、エンジンアンダーカバー10は、剛性に優れた支持体14を備えているので、反ったり、たわんだり、ねじれたりするなどの変形を抑えることができる。しかも、エンジンアンダーカバー10は、枠部18の形状によって剛性を確保しているので、軽量にすることができる。エンジンアンダーカバー10は、変形し難く軽量であることで、車体への取り付け時などの取り扱いを行い易くすることができる。
【0047】
機能体12は、枠部18における一般部分の開口端側に接続されると共に、枠部18における交差部分22の交差閉塞部22a側に接続されている。支持体14は、枠部18の一般部分において対向する一般壁部18b,18bが互いに離れるような変形を、交差部分22の交差閉塞部22aで規制することができる。従って、エンジンアンダーカバー10は、枠部18における一般部分の開口端側に機能体12を接続しても、機能体12を適切に支持することができる。
【0048】
エンジンアンダーカバー10は、支持体14において枠部18で区画される開口部分14aが、開口部分14a毎に分割された機能体12によって塞がれている。エンジンアンダーカバー10は、1枚のシート材を支持体14で支持するのではなく、機能体12が支持体14の開口部分14a毎に互いに独立している。これにより、支持体14と機能体12との素材の違いによって、エンジンアンダーカバー10が反るなどの変形が生じることを抑えることができる。従って、エンジンアンダーカバー10の見栄えを向上することができる。
【0049】
支持体14は、枠部18の一般部分が、一般閉塞部18aと一般閉塞部18aの両縁からそれぞれ立ち上がる一般壁部18b,18bとによって溝形状に形成されている。エンジンアンダーカバー10において、隣り合う機能体12,12は、枠部18の一般部分における異なる一般壁部18bに接続されている。このように、エンジンアンダーカバー10は、隣り合う機能体12が枠部18で分割されているので、互いの影響を最小限に抑えることができる。しかも、エンジンアンダーカバー10は、機能体12を一般壁部18bに接続して、機能体12で枠部18における一般部分の開口を塞いだり、機能体12が一般閉塞部18aまで入り込んだりするように配置していない。これにより、支持体14と機能体12との素材の違いによって、エンジンアンダーカバー10が反るなどの変形が生じることを抑えることができる。従って、エンジンアンダーカバー10の見栄えを向上することができる。
【0050】
エンジンアンダーカバー10は、機能体12になる機能体シート26をインサート材として合成樹脂製の支持体14を成形したインサート成形品である。エンジンアンダーカバー10は、機能体12が支持体14における個々の開口部分14aに対応して配置されているので、機能体12が枠部18の成形収縮の影響を受け難い。このように、エンジンアンダーカバー10は、機能体12および支持体14の収縮量の違いに起因する反り等の変形を防止することができる。従って、エンジンアンダーカバー10の見栄えを向上することができる。
【符号の説明】
【0051】
12 機能体,14 支持体,14a 開口部分,18 枠部,
18a 一般閉塞部(閉塞部),22 交差部分,22a 交差閉塞部(閉塞部),
26 機能体シート,28 分割脆弱部,30 開口部,32 セット孔部,
34 保護脆弱部,40 成形型,46 キャビティ