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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】アイウェア表示システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20240312BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20240312BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G06F3/0484
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020082864
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177156
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(72)【発明者】
【氏名】安富 敏
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-352224(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1910751(KR,B1)
【文献】特開2020-056616(JP,A)
【文献】特開2019-027817(JP,A)
【文献】特許第6488470(JP,B1)
【文献】特開2019-039867(JP,A)
【文献】特開平10-232665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G06F 1/00
3/048-3/0495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測距光を照射し、照射点を測距測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により、測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、観測データとして点群データを取得する点群データ取得部と、通信部とを備えるスキャナ;
ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の向きの方向を検出する相対方向検出センサと、通信部とを備えるアイウェア装置;
観測現場のCAD設計データを備える記憶装置;および、
前記スキャナの位置および方向に関する情報と、前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報を受信し、前記スキャナの座標空間と前記アイウェア装置の座標空間と、前記CAD設計データの座標空間を同期する同期計測部を備えるデータ処理装置を備え、
前記同期計測部は、前記観測データを同期した座標系のデータに変換して前記アイウェア装置に出力し、
前記アイウェア装置は、前記観測データを、現物に重ねて前記ディスプレイに表示し、
前記アイウェア装置は、前記ディスプレイの表示上において、次の器械点を仮指定可能に構成され、仮指定された前記次の器械点の座標を算出して、前記データ処理装置に出力し、
前記データ処理装置は、前記次の器械点の座標を取得して、前記スキャナを前記次の器械点に設置した場合に取得される点群データの観測データ予測を算出し、前記アイウェア装置に出力する、観測データ予測算出部を備え、
前記アイウェア装置は、前記観測データ予測を現物に重ねて前記ディスプレイに表示することを特徴とするアイウェア表示システム。
【請求項2】
前記アイウェア装置は、前記観測データを、点群密度が所定の範囲となる第1の領域と、該第1の領域の外周側に配置された第2の領域とを識別可能に表示することを特徴とする請求項1に記載のアイウェア表示システム。
【請求項3】
測距光を照射し、照射点を測距測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により、測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、点群データを取得する点群データ取得部と、通信部とを備えるスキャナ;
ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の向きの方向を検出する相対方向検出センサと、通信部とを備えるアイウェア装置;
観測現場のCAD設計データを備える記憶装置;および、
前記スキャナの位置および方向に関する情報と、前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報を受信し、前記スキャナの座標空間と前記アイウェア装置の座標空間と、前記CAD設計データの座標空間を同期する同期計測部を備えるデータ処理装置を備え、
前記アイウェア装置は、前記ディスプレイの表示上において、次の器械点を仮指定可能 に構成され、
前記データ処理装置は、仮指定された前記次の器械点の座標を算出して、前記スキャナ を前記次の器械点に設置した場合に取得される前記点群データである観測データ予測を算出し、前記アイウェア装置に出力する、観測データ予測算出部を備え、
前記アイウェア装置は、前記観測データ予測を現物に重ねて前記ディスプレイに表示することを特徴とするアイウェア表示システム。
【請求項4】
前記アイウェア装置は、前記観測データ予測を、点群密度が所定の範囲となる第1の領域と、第1の領域の外周側に配置された第2の領域とを識別可能に表示することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のアイウェア表示システム。
【請求項5】
前記観測データ予測は、2次元または3次元で、あるいは2次元と3次元で切換可能に表示されることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のアイウェア表示システム。
【請求項6】
前記観測データ予測は、前記スキャナの性能と前記CAD設計データにおける立体構造物を考慮して算出されることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のアイウェア表示システム。
【請求項7】
前記アイウェア装置は、観測した全ての点の前記観測データを、累積的に表示するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアイウェア表示システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイウェア表示システムに関し、より詳細には、地上設置型スキャナを用いた点群データ観測を支援するためのアイウェア表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地上設置型スキャナを用いた点群データの観測が知られている(例えば特許文献1参照)。点群データ観測では、所望の観測精度を達成するために、点群密度を確保する必要がある。点群密度は、スキャナからの距離と、スキャナの回転速度に依存する。すなわち、スキャナから近距離にある領域では、点群密度が高いが、スキャナから遠ざかるに従って、点群の密度は低くなる。
【0003】
また、スキャナの回転速度が遅いと、点群密度は高くなるが、回転速度が早いと点群密度が低くなる。このため、所望の点群密度を確保するために、測定領域がある程度重なりあうように、複数のスキャナの設置点を設定して、点群データを取得する。
【0004】
従って、点群観測においては、測定領域が重なり合う様にスキャナの設置点を順次設定し、測定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-28464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
取得した点群データが観測領域全体で所望の点群密度を達成するように観測できているか否かは、データを事務所に持ち帰り、絶対座標系に変換して表示することにより確認しなければわからないため、重なりが不十分な場合、再測が必要となる。
【0007】
このように、観測現場では、点群データの重なりあいを意識しながら、データの不足がないように次の器械点を設定することは困難であるという問題があった。
【0008】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであり、地上設置型スキャナによる点群データ観測において、測量現場で点群データの取得状況または観測データ予測を確認しながら次の器械点を設定することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るアイウェア表示システムは、測距光を照射し、照射点を測距測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、観測データとして点群データを取得する点群データ取得部と、通信部とを備えるスキャナ;ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の方向を検出する相対方向検出センサと、通信部とを備えるアイウェア装置;観測現場のCAD設計データを備える記憶装置;および、前記スキャナの位置・方向に関する情報と、前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報を受信し、前記スキャナの座標空間と前記アイウェア装置の座標空間と、前記CAD設計データの座標空間とを同期する同期計測部を備えるデータ処理装置を備え、前記同期計測部は、前記観測データを前記CAD設計データの座標空間のデータに変換して前記アイウェア装置に出力し、前記アイウェア装置は、前記観測データを、現物に重ねて前記ディスプレイに表示する。
【0010】
上記態様において、前記アイウェア装置は、前記点群データを、点群密度が所定の範囲となる第1の領域と、該第1の領域の外周側に配置された第2の領域とを識別可能に表示することも好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係るアイウェア表示システムは、測距光を照射し、照射点を測距測角して該照射点の3次元座標を取得する測定部と、該測定部により、測距光を鉛直方向および水平方向に回転照射して、点群データを取得する点群データ取得部と、通信部とを備えるスキャナ;ディスプレイと、装置の位置を検出する相対位置検出センサと、装置の向きの方向を検出する相対方向検出センサと、通信部とを備えるアイウェア装置;観測現場のCAD設計データを備える記憶装置;および、前記スキャナの位置および方向に関する情報と、前記アイウェア装置の位置および方向に関する情報を受信し、前記スキャナの座標空間と前記アイウェア装置の座標空間と、前記CAD設計データの座標空間を同期する同期計測部を備えるデータ処理装置を備え、前記同期計測部は、前記アイウェア装置は、前記ディスプレイの表示上において、次の器械点を仮指定可能に構成され、前記データ処理装置は、仮指定された前記次の器械点の座標を算出して、前記スキャナを前記次の器械点に設置した場合に取得される点群データである観測データ予測を算出し、前記アイウェア装置に出力する、観測データ予測算出部を備え、前記アイウェア装置は、前記観測データ予測を現物に重ねて前記ディスプレイに表示する。
【0012】
また、上記第1の態様において、前記アイウェア装置は、前記ディスプレイの表示上において、次の器械点を仮指定可能に構成され、仮指定された前記次の器械点の座標を算出して、前記データ処理装置に出力し、前記データ処理装置は、前記次の器械点の座標を取得して、前記スキャナを前記次の器械点に設置した場合に取得される点群データの観測データ予測を算出し、前記アイウェア装置に出力する、観測データ予測算出部を備え、前記アイウェア装置は、前記観測データ予測を実際の現場風景に重ねて前記ディスプレイに表示することも好ましい。
【0013】
上記態様において、前記アイウェア装置は、前記観測データ予測を、点群密度が所定の範囲となる第1の領域と、第1の領域の外周側に配置された第2の領域とを識別可能に表示することも好ましい。
【0014】
また、上記態様において、前記観測データ予測は、2次元または3次元で、あるいは2次元と3次元で切換可能に表示されることも好ましい。
【0015】
また、上記態様において、前記観測データ予測は、前記スキャナの性能と前記CAD設計データにおける立体構造物を考慮して算出されることも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記態様に係る表示システムによれば、地上設置型スキャナによる点群データ観測において、測量現場で点群データの取得状況または観測データ予測を確認しながら次の器械点を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るアイウェア表示システム(以下、表示システムともいう。)の外観斜視図である。
図2】同形態に係る表示システムの構成ブロック図である。
図3】同表示システムにおけるスキャナの構成ブロック図である。
図4】同表示システムにおけるアイウェア装置の外観斜視図である。
図5】同アイウェア装置の構成ブロック図である。
図6】同形態に係る処理PCの構成ブロック図である。
図7】同形態に係る表示システムを用いた点群観測方法の第1の例のフローチャートである。
図8】同点群観測方法における初期設定の作業イメージを示す図である。
図9】同方法において表示システムにより得られる画像の俯瞰したイメージを示す図である。
図10】同方法における次の器械点の仮指定を説明する図である。
図11】上記表示システムにおける観測データ予測の算出方法を説明する図である。
図12】同表示システムを用いた点群観測方法の第2の例のフローチャートである。
図13】同方法において表示システムにより得られる画像の俯瞰したイメージを示す図である。
図14】同形態の1つの変形例に係る表示システムの構成ブロック図である。
図15】同形態の別の変形例に係る表示システムの構成ブロック図である。
図16】同形態のさらに別の変形例に係る表示システムの構成ブロック図である。
図17】同形態のさらに別の変形例に係る表示システムの構成ブロック図である。
図18】同形態のさらに別の変形例に係る表示システムの構成ブロック図である。
図19】同変形例を用いた次の器械点の仮指定の方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、実施の形態および各変形例に共通する同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るアイウェア表示システム(以下、単に「表示システム」という。)1の外観斜視図であり、測定現場での作業イメージを示す。本形態に係る表示システム1は、スキャナ2、アイウェア装置4、および処理PC6を備える。
【0020】
スキャナ2は、三脚上に取り付けられた整準台を介して任意の点に設置される。スキャナ2は、整準台の上に設けられた基盤部2αと、基盤部2α上を軸H-H周りに水平回転する托架部2βと、托架部2βの中央で鉛直回転する投光部2γとを有する。アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着される。処理PC6は、観測現場に設置される。
【0021】
図2は、同表示システム1の構成ブロック図である。表示システム1において、スキャナ2とアイウェア装置4は、処理PC6に無線または有線で接続されている。アイウェア装置4の数は、特に限定されず、1つであってもよく複数であってもよい。アイウェア装置4が複数の場合、各アイウェア装置4は固有のID等で識別可能に構成される。
【0022】
(スキャナ)
図3は、本形態に係るスキャナ2の構成ブロック図である。スキャナ2は、測距部21、鉛直回転駆動部22、鉛直角検出器23、水平回転駆動部24、水平角検出器25、演算処理部26、表示部27、操作部28、記憶部29、外部記憶装置30、および通信部31を備える。本実施の形態において、測距部21、鉛直角検出器23、および水平角検出器25が測定部を構成する。
【0023】
測距部21は、送光部、受光部、送光光学系、該送光光学系と光学素子を共有する受光光学系および回動ミラー21αを備える。送光部は、半導体レーザ等の発光素子を備え、測距光としてパルス光を出射する。出射された測距光は、送光光学系を介して回動ミラー21αに入射し、回動ミラー21αによって偏向されて測定対象物に照射される。回動ミラー21αは、鉛直回転駆動部22により駆動されて回転軸V-V周りに回転する。
【0024】
測定対象物により再帰反射された測距光は、回動ミラー21α、および受光光学系を経て、受光部に入射する。受光部は、フォトダイオードなどの受光素子を備える。また、受光部には、測距光の一部が内部参照光として入射するようになっており、反射測距光および内部参照光に基づいて、演算処理部26により、照射点までの距離を求めるようになっている。
【0025】
鉛直回転駆動部22と水平回転駆動部24は、モータであり、演算処理部26に制御される。鉛直回転駆動部22は回動ミラー21αを鉛直方向にV-V軸周りに回転させる。水平回転駆動部24は、托架部2βを水平方向にH-H軸周りに回転させる、
【0026】
鉛直角検出器23と水平角検出器25は、エンコーダである。鉛直角検出器23は、回動ミラー21αの鉛直方向の回転角を測定する。水平角検出器25は、托架部2βの水平方向の回転角を測定する。この結果、鉛直角検出器23と水平角検出器25は、測距光の照射方向の角度を測定する測角部を構成する。
【0027】
演算処理部26は、例えばCPU、ROM、RAM等を集積回路に実装したマイクロコントローラである。演算処理部26は、送光部の発光タイミングと、受光部の受光タイミングの時間差(パルス光の往復時間)に基づき、測距光の1パルス光ごとに照射点までの距離を算出する。また、その時の測距光の照射角度を算出して、照射点の角度を算出する。
【0028】
また、演算処理部26は、ソフトウェア的に構成された点群データ取得部261を備える。点群データ取得部261は、測距部21、鉛直回転駆動部22、および水平回転駆動部24を制御して測距光を全周(360°)に走査(フルドームスキャン)して、各照射点の3次元座標を取得して、全周の点群データを取得する。
【0029】
表示部27は、例えば、液晶ディスプレイである。操作部28は、電源キー、数字キー、小数点キー、プラス/マイナスキー、実行キー、スクロールキー等を有し、作業者が、スキャナ2の操作、スキャナ2に対する情報の入力を可能となるように構成されている。
【0030】
記憶部29は、例えばハードディスクドライブであり、演算処理部26の機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0031】
外部記憶装置30は例えばメモリカード等であり、スキャナ2が取得する種々のデータを記憶する。
【0032】
通信部31は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えばインターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットと接続し、アイウェア装置4および処理PC6との情報の送受信を行う。
【0033】
(アイウェア装置)
図4は、本実施の形態に係るアイウェア装置4の外観斜視図、図5は、アイウェア装置4の構成ブロック図である。アイウェア装置4は、作業者の頭部に装着されるウェアラブルデバイスである。アイウェア装置4は、ディスプレイ41と、制御部42とを備える。
【0034】
ディスプレイ41は、作業者が装着した時に、作業者の両目を覆うゴーグルレンズ型の透過型ディスプレイである。一例として、ディスプレイ41は、ハーフミラーによる光学シースルーのディスプレイであり、現場風景(以下、「現物」という。)の実像に重ねて、制御部42の受信した虚像が合成された映像を観察できるように構成されている。
【0035】
制御部42は、演算処理部43、通信部44、相対位置検出センサ(以下、単に「相対位置センサ」という。)45、相対方向検出センサ(以下、単に「相対方向センサ」という。)46、記憶部47、操作スイッチ48を備える。
【0036】
演算処理部43は、少なくともCPUおよびメモリ(RAM,ROM)を集積回路に実装したマイクロコンピュータである。演算処理部43は、相対位置センサ45および相対方向センサ46の検出したアイウェア装置4の位置および方向の情報を処理PC6に出力する。
【0037】
また、処理PC6から3次元のCAD(Computer・Aided・Design)設計データ661を受信して、ワイヤフレームをディスプレイ41上に現場の風景に重ねて表示する。なお、CAD設計データ661は、CADを用いて作成した、観測現場の3次元の設計図面である。
また、演算処理部43は、スキャナ2の観測により取得し、処理PC6により同期された座標系に変換された点群データを、ディスプレイ41上の現物とワイヤフレームに重ねて表示する。
【0038】
演算処理部43はまた、ソフトウェア的に構成された器械点設定部431を備える。器械点設定部431は、現場の風景を表示するディスプレイ41上で、作業者の指示に従って、次の器械点を設定する。次の器械点の設定は、器械点設定部341が、現場の風景を表示するディスプレイ上に、次の器械点を仮指定するための十字のポインタを表示し、十字のポインタの表示が、作業者が次の器械点としたい点と合致したときに、仮指定を実行するための機能ボタン(図10(C)における機能ボタン48β)を押し下げることで仮指定する。器械点設定部431は、仮指定した次の器械点の座標を、重ね合わされたCAD設計データ661の座標空間における地面平面上の点として算出し、処理PC6に出力する。また、器械点設定部431は、仮指定状態において、作業者が確定を入力することにより次の器械点を設定する。器械点の設定については、以下の第1の点群観測方法の説明において、図10を参照して詳細に説明する。
【0039】
通信部44は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットに接続し、処理PC6と情報の送受信を行う。
【0040】
相対位置センサ45は、観測現場に設置されたGPS用アンテナ、WiFi(登録商標)アクセスポイント、超音波発振器などから無線測位を行い、観測現場内でのアイウェア装置4の位置を検出する。
【0041】
相対方向センサ46は、三軸加速度センサまたはジャイロセンサと、傾斜センサとの組み合わせからなる。相対方向センサ46は、上下方向をZ軸方向、左右方向をY軸方向、前後方向をX軸方向として、アイウェア装置4の傾きを検出する。
【0042】
記憶部47は、例えばメモリカードである。記憶部47は、演算処理部43が機能を実行するためのプログラムを格納している。
【0043】
操作スイッチ48は、例えば、図4に示すような、アイウェア装置4の電源をONOFFするための電源ボタン48α、および実行する処理に応じて異なる機能を発揮するための機能ボタン48β、48β,48βを備える。機能ボタン48β、48β,48βの機能は、ディスプレイ41に表示されるようになっている。
【0044】
(処理PC)
図6は、本形態に係る処理PC6の構成ブロック図である。処理PC6は、汎用パーソナルコンピュータ、PLD(Programmable・Logic・Device)等による専用ハードウェア、タブレット端末、またはスマートフォン等である。処理PC6は、少なくとも演算処理部60、PC通信部63、PC表示部64、PC操作部65、およびPC記憶部66を備える。本実施の形態において、演算処理部60が、データ処理装置であり、PC記憶部66が記憶装置である。
【0045】
PC通信部63は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットと接続し、スキャナ2およびアイウェア装置4と情報の送受信を行う。
【0046】
PC表示部64は、例えば液晶ディスプレイである。PC操作部65は、例えば、キーボード、マウス等であり、種々の入力・選択・決定等を可能にする。
【0047】
PC記憶部66は、例えば、HDDドライブである。PC記憶部66は、少なくとも、観測現場の3次元のCAD設計データ661を格納している。
【0048】
演算処理部60は、少なくともCPUおよびメモリ(RAM,ROM等)を集積回路に実装した制御ユニットである。演算処理部60には、同期計測部601と、観測データ予測算出部602がソフトウェア的に構成されている。
【0049】
同期計測部601は、スキャナ2の位置および方向に関する情報と、アイウェア装置4の位置・方向に関する情報を受信し、スキャナ2の座標空間と、CAD設計データ661の座標空間を、アイウェア装置4の座標空間と一致するように変換してアイウェア装置4に送信する。
【0050】
以下、このように座標空間の異なる装置または設計データにおける位置および方向に関する情報の座標空間を一致させ、共通の基準点を原点とする空間で、それぞれの装置に関する相対位置・相対方向を管理することを同期という。
【0051】
また、同期計測部601は、後述するように観測データ予測算出部602で算出した観測データ予測DPをアイウェア装置4の座標空間と一致するように変換して、アイウェア装置4に送信する。
【0052】
観測データ予測算出部602は、アイウェア装置4で仮指定された次の器械点にスキャナ2を設置した場合の、観測データ予測DPを算出する。ここで観測データ予測DPは、スキャナ2を仮指定された次の器械点に設置した場合に、スキャナ2が取得すると予測される点群データである。点群データは、スキャナ2の中心の平面座標が仮指定された次の器械点の平面座標であるとして、スキャナ2の性能、すなわち、スキャナ2の測距光の照射距離、測距光のパルス間隔、およびスキャナ2の回転速度設定、ならびにCAD設計データ661における立体構造物を考慮して算出される。
【0053】
(表示システム1を使用した第1の点群観測方法)
次に、表示システム1を使用した点群観測方法の1つの例について説明する。図7は、本点群観測方法のフローチャートである。図8は、図7のステップS101~S104の作業イメージ図である。また、図9は、表示システム1を用いた表示の例を俯瞰して見た図を示す。
【0054】
まずステップS101で、作業者は、観測現場に基準点と基準方向を設定する。基準点は、現場内の任意の点を選択する。基準方向は、基準点とは別の特徴点を任意に選択し、基準点から特徴点の方向とする。
【0055】
次にステップS102で、作業者は、スキャナ2の同期を行う。具体的には、作業者は、現場内の任意の点にスキャナ2を設置し、ステップS101で選択した基準点および特徴点を含む後方交会法等の観測により、スキャナ2の絶対座標を把握する。スキャナ2は、自機の座標情報を処理PC6に送信する。
【0056】
処理PC6の同期計測部601は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)に変換し、かつ、基準方向を水平角0°と認識して、以後、スキャナ2からの情報に関して、基準点を原点とする空間で、スキャナ2の相対位置および相対方向を管理する。
【0057】
次にステップS103で、作業者は、アイウェア装置4の同期を行う。具体的には、作業者は、基準点にアイウェア装置4を設置し、ディスプレイ41の中心を基準方向に一致させ、相対位置センサ45の(x,y,z)を(0,0,0)、かつ、相対方向センサの(roll,pitch,yaw)を(0,0,0)とする。処理PC6の同期計測部601は、以後、アイウェア装置4から取得するデータについて、基準点を原点とする空間で、アイウェア装置4の相対位置・相対方向を管理する。
【0058】
アイウェア装置4の同期は、上記方法に限定されず、例えば、アイウェア装置4に、アイウェア装置4の中心および方向軸を示すためのレーザ装置を設け、レーザをガイドにして、基準点および基準方向を一致させることにより行ってもよい。
【0059】
或いは、アイウェア装置4に視線センサ等を設け、CAD設計データ661と現物とで、特徴点を3点以上マーキングし、アイウェア装置4と特徴点とを結ぶ測線の角度からアイウェア装置4の座標を特定し、基準点の座標と対応づけてもよい。
【0060】
ステップS103の動作を実行することで、ステップS104では、アイウェア装置4は現物に重ねてCAD設計データ661のワイヤフレームの虚像を表示するようになる。アイウェア装置4の現物に対する相対位置および相対方向は、処理PC6の同期計測部601で、管理されている。従って、処理PC6からアイウェア装置4に現物に同期されたCAD設計データ661の情報が送られる。すると、ディスプレイ41には、現物に重ねられて、破線で示すようにCAD設計データ661のワイヤフレームの虚像が表示される。
【0061】
以上のステップS101~S104は、本表示システム1の初期設定として行われる。
【0062】
図9(A)は、初期設定が完了した状態で、アイウェア装置4を装着した作業者が観察するディスプレイ41上の表示の例を示す。なお、図9において、作図の便宜上、スキャナ2の器械中心が地面にある、すなわち器械高が0であると仮定して表すが、実際には、スキャナ2の器械中心は器械高の分だけ上方向へ変位しているものとする。
【0063】
ステップS105で、アイウェア装置4は、作業者の指定に従って、次の器械点P図9(B))を仮指定する。具体的には以下のように行う。
【0064】
ディスプレイ41上には、図10(A)に示すように、操作スイッチ48(電源ボタン48α、および機能ボタン48β1,48β2,48β)の配置に対応して、それぞれの機能が表示されている。作業者は、機能ボタン48βを押し下げて器械点設定モードを選択する。
【0065】
すると、器械点設定部431は、図10(B)に示すように、ディスプレイ41の中央に、ディスプレイ41の中央を示す十字のポインタ90を表示する。ディスプレイ41上には、機能ボタン48β1,48β2,48βの機能を表示する。このように表示することで、作業者は特段の意識をすることなくボタンの機能を容易に把握して、アイウェア装置4を操作することができる。
【0066】
作業者は、ディスプレイ41の表示を確認しながら、ポインタ90を次の器械点を設定しようとする位置に合わせて、機能ボタン48βを押し下げることで、次の器械点Pを空間上の点として仮指定する。このとき、図10(C)に示すように、機能ボタン48βを押して表示を拡大し、次の器械点Pを仮指定するようにしてもよい。機能ボタン48βを1回押すことで、所定の倍率で表示を拡大するようになっている。このようにすれば、仮指定のする際の正確性が向上する。
【0067】
次に、器械点設定部431は、仮指定された器械点Pの座標を算出し、処理PC6に送信する。これにより、器械点Pは仮指定された状態となり、ディスプレイ41上の、「仮指定」の表示は、確定するかどうかを選択する表示に切り替わる。
【0068】
次に、ステップS106で、処理PC6では、観測データ予測算出部602が、仮指定された次の器械点Pの座標情報と、3DのCAD設計データ661とを同期する。そして、スキャナ2を次の器械点に設置した場合にスキャナ2が取得すると予測される点群データ、すなわち観測データ予測DPを、スキャナ2の性能、すなわちスキャナ2の測距光の照射距離、測距光のパルス間隔、およびスキャナ2の回転速度設定、ならびにCAD設計データ661における立体構造物を考慮して算出する。
【0069】
具体的には、スキャナ2は、測距光を器械中心から鉛直に360°、水平に180°回転スキャン(フルドームスキャン)して、点群データを取得する。従って、点群データ取得可能な領域は、器械中心の座標を中心として水平および鉛直方向に全方向に延在している。
【0070】
また、点群データの点群密度は、測距光のパルス間隔が狭いほど高くなり、スキャナ2の回転速度が早いほど低くなり、スキャナ2からの距離が遠ざかるに従って低くなる。この様に、点群密度は、測距光のパルス間隔、測距光の照射距離、およびスキャナ2の回転速度に依存する。また、スキャナ2は、地上に設置されているので、相対的に地上に近接している。従って、所定の点群密度を満たす点群データ取得可能領域Aは、スキャナ2の中心座標を中心とする、図11(A)に示すような略半球状のドーム形状となる。なお、便宜上、図面は、器械高を無視して器械中心が地面上の点Pと同じ位置にあるとして作図しているが、実際の器械中心は、点Pから上方向に器械高だけずれていることに留意されたい。
【0071】
図11(B)は、図11(A)の地面平面に沿う断面図であり、図11(C)は、図11(B)のXIC-XIC線に沿う断面図である。フルドームスキャンの場合、点群データ取得可能領域Aの中で、測距光はスキャナ2の器械中心からから全方向に放射状に出射される。点群データ取得可能領域内に立体構造物S,S,Sがあると、測距光は立体構造物S,S,Sで反射(遮蔽)され、スキャナ2の反対側は、点群データ取得不可能領域Bとなる。
【0072】
従って、観測データ予測算出部602は、測距光の照射距離とスキャナ2の器械中心の座標から求められる点群データ取得可能領域Aと、CAD設計データ661における立体構造物との3次元的な関係と、測距光の照射距離、測距光のパルス間隔、およびスキャナ2の回転速度設定から求められる点群密度を考慮して、所定の密度以上で点群データを取得可能と予測される領域を観測データ予測DPとして算出する。
【0073】
このとき、観測データ予測DPの算出に用いるスキャナ2の測距光の照射距離、測距光のパルス間隔、スキャナ2の回転速度設定の値、およびスキャナ2の中心座標を求めるためのスキャナ2の器械高等の値は、観測データ予測算出部602がスキャナ2の通信部31を介して取得可能になっていてもよい。或いは、PC操作部65から、作業者により入力可能になっていてもよい。
【0074】
次に、ステップS107で、アイウェア装置4が、処理PC6より観測データ予測DPを受信して、図9(C-1)に示す観測データ予測DPを、ディスプレイ41に、現物とワイヤフレームに重ねて表示する。
【0075】
観測データ予測DPの表示の態様としては、例えば図9(C-1)のように、3次元的に表示しても良い。または、図9(C-2)のように、観測現場の地面平面上に、2次元的に表示してもよい。あるいは、図9(C-1)の3次元表示と、図9(C-2)の2次元表示とが、切り替え可能となっていても良い。
【0076】
また、例えば図9(C-3)のように、点群密度が所定(所望)の範囲となる第1の領域E1と、第1の領域E1の外周側に配置され、点群密度が、第1の領域E1よりも低くなるが、その領域にさらに次の器械点を設定して、点群データを取得することで、所望の重なり合いを達成できる第2の領域E2とを、異なる色で表示する等、識別可能に表示しても良い。
【0077】
また、異なる色で表示する場合には、第1の領域E1と、第2の領域E2とを、同系色の濃淡(例えば、第1の領域E1を濃色、第2の領域E2を淡色)となるように、しても良い。また、図9(C-4)のように、第1の領域E1と、第2の領域E2を、観測現場の地面に、2次元的に表示してもよい。
【0078】
次に、ステップS108で、作業者は、ディスプレイ41上に表示された観測データ予測DPを目視で確認して、仮指定した点を次の器械点に設定するかどうかを判断し、測定領域に満足する場合(Yes)、作業者が機能ボタン48β(「確定」ボタン)を押すことで、ステップS109に移行して、器械点設定部431が次の器械点を確定し、確定した次の器械点情報として処理PC6に出力して処理を終了する。
【0079】
ステップS108で、作業者が、仮指定した点に満足できない場合(No)、作業者が機能ボタン48βを押すことで仮指定状態をリセットする。そして、処理はステップS105に戻り、別の点を、次の器械点Pとして仮指定する。次の器械点Pの確定は、アイウェア装置4のゴーグル部分の外面に、タッチセンサを備え、作業者がゴーグルの外面に触れることで、確定するように構成してもよい。
【0080】
なお、ステップS109で、確定後、次の器械点Pは、例えば図10(D)に示すように、星印など確定された点であることを認識可能に表示される。作業者は、ディスプレイ41の確定された器械点の表示と、実際の風景画像の表示を確認しながら、実際の地面上に次の器械点をマーキング等する。この作業は、アイウェア装置4を装着した作業者の指示により、別の作業者が行ってもよい。
【0081】
その後、確定した器械点Pにスキャナ2を設置して、後方交会法等の方法により、スキャナ2の座標および方向角を測定する。また、スキャナ2で点群データの観測を行う。
【0082】
そして、作業者は、ステップS105~S108と同様にして、次の器械点Pを設定する。このとき、第2の領域E2内に次の器械点Pを設定すると、点群データの重なり合いが好適になる。そして、ステップS101~S109を繰り返して、順次、次の器械点P,P・・・を設定しながら各点において点群観測を行い、観測現場全体の観測を行う。なお、1度初期設定を行った同じ観測現場内においては、ステップS101の基準点、基準方向の設定と、ステップS103のアイウェア装置の同期は、省略することができる。
【0083】
このとき、新たに設定した器械点についての観測データ予測DPだけを表示するのではなく、これまで設定してきた器械点の観測データ予測DPを累積的に表示するようにしてもよい。この様にすれば、観測現場全体としての観測データの予測を認識することができるので好ましい。
【0084】
このように、本実施の形態においては、アイウェア装置4を用いて、次の器械点Pを指定可能とし、設定した器械点Pからの観測データ予測DPを、現物に重ねて表示するように構成した。この結果、観測現場で視覚的に観測データ予測DPを確認しながら、器械点の設定を行うことができ、再測を防止して効率よく点群観測を行うことができる。
【0085】
なお、観測データ予測DPを3次元の半球ドーム状に表示すれば、作業者にとって、観測可能範囲が認識しやすくなる。また、観測データ予測DPを観測現場の地面平面上に、2次元的に表示すれば、次の器械点は地面平面上で指定されるので、器械点を指定するのに好適な領域が認識容易となる。
【0086】
また、観測データ予測DPの表示にあたり、点群密度が所望の範囲となる第1の領域E1と、第1の領域E1の外周側に配置され、点群密度が、第1の領域E1よりも低くなるが、その領域にさらに次の器械点を設定して、点群データを取得することで、所望の重なり合いを達成できる第2の領域E2とを、識別可能に表示するようにすると、作業者は、次の器械点を設定するのに好ましい領域が、明確に認識することができる。この結果、作業者は、点群データの重なり合いを保持しながらも、無駄な重なり合いを最小限度にするような次の器械点を設定しやすくなるので、観測現場全体を効率よく測定できる。
【0087】
また、第1の領域E1と、第2の領域E2とを、例えば、同系色の濃淡で示すようにすれば、作業者が、実際の点群密度の違いを直感的に認識することができるので好ましい。
【0088】
(表示システム1を用いた第2の点群観測方法)
次に、表示システム1を使用した点群観測方法の別の例について説明する。図12は、第2の点群観測方法のフローチャートである。図13は、表示システム1を用いた表示の例を示す。
【0089】
まずステップS201~S204では、ステップS101~S104と同様にして表示システム1の初期設定を行う。なお、ステップS202では、スキャナ2を最初の器械点Pに設置する。
【0090】
次に、ステップS205で、スキャナ2は、最初の器械点Pで点群データの観測(フルドームスキャン)を行う。
【0091】
次に、ステップS206で、スキャナ2は、観測により取得した点群データ(以下、「観測データ」と言う。)ODを、処理PC6に送信し、同期計測部601により、同期した座標系に変換する。処理PC6は同期した観測データODをアイウェア装置4に送信し、アイウェア装置4は観測データODを受信する。
【0092】
次に、ステップS207で、アイウェア装置4は、ディスプレイ41上の現物とワイヤフレームに、観測データODを重ねて表示する(図13(A-1)~(A-4))。
【0093】
観測データODの表示の態様としては、例えば図13(A-1)のように、3次元的に表示しても良い。または、図13(A-2)のように、観測現場の地面上に、2次元的に表示してもよい。
【0094】
また、例えば図13(A-3)のように、点群密度が所望の範囲となる第1の領域E1と、第1の領域E1の外周側に配置され、点群密度が、第1の領域E1よりも低くなるが、その領域にさらに次の器械点を設定して、点群データを取得することで、重なり合いを達成できる第2の領域E2とを、異なる色で表示する等、識別可能に表示しても良い。
【0095】
また、異なる色で表示する場合には、第1の領域E1と、第2の領域E2とを、同系色の濃淡(例えば、第1の領域E1を濃色、第2の領域E2を淡色)となるように、しても良い。また、図13(A-4)のように、第1の領域E1と、第2の領域E2とを、観測現場の地面に、2次元的に表示してもよい。また、2次元の表示と、3次元の表示とを切替可能に構成してもよい。
【0096】
次に、ステップS208で、ステップS105と同様に、アイウェア装置4は、作業者の指定に従って、次の器械点Pを仮指定し、次の器械点Pの同期された座標空間における座標を算出し、処理PC6に送信する。
【0097】
次に、ステップS209で、ステップS106と同様に、処理PC6の観測データ予測算出部602が、仮指定された器械点Pの座標に基づいて、観測データ予測DPを算出し、アイウェア装置4に送信する。
【0098】
次に、ステップS210で、ステップS107と同様に、アイウェア装置4に観測データ予測DPを表示する。図13(B)は、図13(A-2)の形式で表示した観測データODに、図9(C-3)の形式で観測データ予測DPを表示した例を示す。
【0099】
次に、ステップS211で、ステップS108と同様に、作業者は、ディスプレイ41上に表示された観測データ予測DPを目視で確認して、仮指定した点を次の器械点に設定するかどうかを判断し、測定領域に満足する場合(Yes)、作業者が機能ボタン48β(「確定」ボタン)を押すことで、ステップS212に移行して、器械点設定部431が次の器械点を確定して処理を終了する。
【0100】
ステップS211で、作業者が、仮指定した点に満足できない場合(No)、作業者が仮指定状態をリセットし、再度そして、別の点を、次の器械点Pとして仮指定する。
【0101】
ステップS212では、アイウェア装置4は、確定された次の器械点Pの座標を次の器械点情報として処理PC6に送信する。
【0102】
処理PC6は、PC記憶部66に次の器械点Pの座標データを保存して処理を終了する。
【0103】
次の器械点Pを確定すると、作業者は、ディスプレイ41の表示を確認しながら、マーキング等する。そして、次の器械点Pにスキャナ2を設置して、ステップS201~S212を繰り返す。次の器械点を順次設定しながらこれを繰り返すことで、観測現場全体の点群観測を行う。なお、1度初期設定を行った同じ観測現場内においては、ステップS201の基準点・基準方向の設定と、ステップS203のアイウェア装置4の同期は再度行う必要はなく、省略してもよい。
【0104】
また、ステップS201~S212を繰り返す際に、新たに指定する器械点における観測点群データのみでなく、それまでに観測した全ての点の観測点群データを累積的に表示するようにしてもよい。
【0105】
本方法では、実際にスキャナ2で取得した観測データODを、アイウェア装置4のディスプレイ41に、現物と重ねて表示して、その画像を確認しながら次の器械点Pを設定出来るようにした。実際に取得した観測データODに基づいて、点群の重なりあいを意識した次の器械点の設定を行うことができるので的確に次の器械点を設定することができ、再測を防止して効率よく点群観測を行うことができる。
【0106】
また、観測データODを3次元で表示する場合には、3次元的な点群の重なりあいも考慮することができるので、より的確な次の器械点Pの設定が可能となる。
【0107】
また、観測データODを2次元で、地面平面上に表示する場合には、次の器械点Pは、地面平面上に設定することから、設定をする際の見やすさが向上する。
【0108】
さらに、観測データODの表示に基づいて設定した次の器械点にスキャナ2を設置した場合の、観測データ予測DPを表示して、次の器械点Pを設定可能としたので、的確に次の器械点を選択することができ、観測現場全体での観測の効率が向上する。
【0109】
また、観測データODを表示する場合に、点群密度が所望の範囲となる第1の領域E1と、第1の領域E1の外周側に配置され、点群密度が、第1の領域E1よりも低くなるが、その領域にさらに次の器械点を設定して、点群データを取得することで、重なり合いを達成できる第2の領域E2とを識別可能に表示することにより、第2の領域E2内に確実に次の器械点を設定することができる。
【0110】
また本方法では、実際にスキャナ2で取得した観測データODを、アイウェア装置4のディスプレイ41に、現物と重ねて表示することができるので、各点における観測データODを累積的に表示させることにより、当該現場での適切なデータの取得ができているかどうかを視覚的に確認することができるので、事務所に持ち帰ってからの再測を防止することができる。
【0111】
また、本方法では、実際にスキャナ2で取得した観測データODを確認した上で、次の器械点を設定することができる。例えば、観測現場で、人、車、自転車等の通り、電線や森林等のCAD設計データ661からは予測できないが、点群データの取得に障害となる事物があった場合にも、それに応じて次の器械点を設定することができるので、データの取り残しを防止でき、再測を防止することができる。
【0112】
<変形例1>
図14は、表示システム1の1つの変形例に係る表示システム1aの構成ブロック図である。
【0113】
表示システム1aは、スキャナ2aと、アイウェア装置4とを備え、処理PC6を備えない。スキャナ2aは、演算処理部26aに、同期計測部601と、観測データ予測算出部602とを備え、記憶部29aにCAD設計データ661を備える。すなわち、本変形例において、スキャナ2aの演算処理部26aがデータ処理装置であり、記憶部29aが記憶装置である。
【0114】
本変形例では、スキャナ2aが高性能な演算処理部26aと、小型大容量の記憶部29aを備えた場合に実施可能であり、表示システム1aの構成をさらにシンプルにすることができる。
【0115】
<変形例2>
図15は、本形態の別の変形例に係る表示システム1bの構成ブロック図である。表示システム1bは、スキャナ2と、アイウェア装置4と、処理PC6bと、サーバ8とを備える。サーバ8は、少なくとも、通信部81、演算処理部82、および記憶部83を備える。
【0116】
本変形例では、CAD設計データ661が、処理PC6bのPC記憶部66ではなく、サーバ8の記憶部83に保存されている。処理PC6bは、本実施の形態に係る、動作フローのステップS104,S204において、必要な箇所のCAD設計データ661を、PC通信部63を介してサーバ8から取得する。本変形例において、PC6bの演算処理部60がデータ処理装置であり、サーバ8の記憶部83が記憶装置である。
【0117】
これにより、処理PC6bのPC記憶部66の負担を軽減することができる。
【0118】
<変形例3>
図16は、本実施の形態のさらに別の変形例に係る表示システム1cの構成ブロック図である。表示システム1cは、処理PC6を備えず、スキャナ2と、アイウェア装置4と、サーバ8cを備える。表示システム1cでは、PC記憶部66ではなく、サーバ8cの記憶部83がCAD設計データ661を保存している。
【0119】
また、処理PC6に代えて、サーバ8cの演算処理部82cが、同期計測部601および観測データ予測算出部602を備える。すなわち、本変形例において、サーバ8cの演算処理部82cがデータ処理装置であり、サーバ8cの記憶部83が記憶装置である。
【0120】
これにより、ステップS101~103、S201~S203、ステップS106の演算処理を高速化することができる。
【0121】
<変形例4>
図17は、本実施の形態のさらに別の変形例に係る表示システム1dの構成ブロック図である。表示システム1dは、表示システム1のアイウェア装置4に代えて、アイウェア装置4dを備える。
【0122】
アイウェア装置4dは、アイウェア装置4と概略同じ構成を備えるが、さらに、視線センサ49を備える。また、アイウェア装置4dは器械点設定部431に代えて器械点設定部431dを備える。
【0123】
視線センサ49は、ディスプレイ41の後ろ側(アイウェア装置4を装着する作業者の顔側)に設けられている。視線センサ49は、CCDセンサやCMOSセンサ等のイメージセンサである。視線センサ49は、作業者の目頭位置と虹彩位置の位置関係に基づいて作業者の視線を検出する。
【0124】
器械点設定部431dは、視線センサ49でディスプレイ41における作業者の視線の位置を次の器械点として設定し、次の器械点の座標を算出する。
【0125】
具体的には、ステップS105では、器械点設定モードを選択すると、作業者は、視線を次の器械点に向ける。器械点設定部431dは、作業者が、まばたきを一度することで、ディスプレイ41における、直前の視点の位置を次の器械点として仮指定する。
【0126】
また、ステップS108で、作業者が、ディスプレイ41上に表示された観測データ予測DPを目視で確認して、仮指定した点を次の器械点に設定するかどうかを判断し、測定領域に満足する場合(Yes)、作業者がまばたきを2回すること、ステップS109に移行して、器械点設定部431が次の器械点を確定する。作業者が、仮指定した点に満足できない場合(No)、作業者が一定時間目を閉じることで、仮指定状態をリセットする。
【0127】
このようにすると、作業者は、視点を変える、目を閉じるという動作を行うだけで次の器械点の設定を行うことができ、操作が容易である。
【0128】
<変形例5>
図18は、本実施の形態のさらに別の変形例に係る表示システム1eの構成ブロック図である。表示システム1eは、表示システム1の構成に加えて、モーションキャプチャ装置7を備える。また、処理PC6eは、同期計測部601に代えて、同期計測部601eを備える。
【0129】
モーションキャプチャ装置7は、いわゆる磁気式のモーションキャプチャ装置である。モーションキャプチャ装置7は、処理PC6との通信を可能とする通信部71と、作業者の手指に装着されるデバイスである複数の磁気式3次元位置姿勢センサ72と、3次元位置姿勢センサ72で検出された信号を作業者の動作情報として、時系列で処理PC6に出力する信号処理部73とを備える。3次元位置姿勢センサ72としては、例えば、特開2007-236602号公報に開示された磁気式位置姿勢センサを用いた手指用モーションキャプチャ装置が好適である。
【0130】
モーションキャプチャ装置7は、複数の3次元位置姿勢センサ72を柔軟性のあるグローブに配置したものであり、手指の繊細な動きを検出することが出来るようになっている。
【0131】
モーションキャプチャ装置7は、図19(A)に示すように、例えば人差し指の先端に位置するセンサ72aの中心を原点と仮定して、信号処理部73の固定基準点から見たそれらの位置座標(x,y,z)およびX軸、Y軸、Z軸周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報が得る。なお、Z軸は、図19(A)における、XY平面の原点を通り、XY平面に直交する軸である。
【0132】
また、同期計測部601eは、同期計測部601の機能に加えて、モーションキャプチャ装置7から受信する位置・方向に関する情報を同期させたスキャナ2、CAD設計データ661およびアイウェア装置4の座標空間と一致するように変換して管理する。
【0133】
また、モーションキャプチャ装置7の同期は、基準点にモーションキャプチャ装置7を装着した、作業者の人差し指の先端を配置し、人差し指の先端をスキャナ2等の基準方向に一致するように向けて、位置座標およびオイラー角を0とする。
【0134】
アイウェア装置4は、モーションキャプチャ装置7で取得された手指を、ディスプレイ41上に表示可能に構成されている。
【0135】
そして、ステップS105の器械点設定モードにおいて、図19(B)に示す様に、ディスプレイ41の表示上で、人指し指の先端で次の器械点にしたい点を指し示すことで、器械点を指定するようにしてもよい。
【0136】
このようにすると、作業者が、指定する点を指で指し示すという簡単な動作で次の器械点の仮指定を行うことができるので、操作が容易である。
【0137】
以上、本発明の好ましい実施の形態について述べたが、上記の実施の形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0138】
1,1a,1b,1c :表示システム
2,2a :スキャナ
26a :演算処理部(データ処理装置)
261 :点群データ取得部
29a :記憶部(記憶装置)
31 :(スキャナ)通信部
4 :アイウェア装置
41 :ディスプレイ
431 :器械点設定部
44 :(アイウェア装置)通信部
45 :相対位置検出センサ
46 :相対方向検出センサ
6,6b,6c :処理PC
60,160 :演算処理部(データ処理装置)
601 :同期計測部
602 :観測データ予測算出部
63 :PC通信部
66 :PC記憶部
661 :CAD設計データ
81 :(サーバ)通信部
82 :演算処理部(データ処理装置)
E1 :第1の領域
E2 :第2の領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19