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特許7453057ゴム材料物性予測システム、およびゴム材料物性予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ゴム材料物性予測システム、およびゴム材料物性予測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/201 20180101AFI20240312BHJP
【FI】
G01N23/201
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020087528
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181934
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】鷺谷 智
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-38495(JP,A)
【文献】萩田 克美ほか,“ディープラーニングを用いたゴム中フィラー凝集構造の画像判別の特性評価”,日本ゴム協会誌,2018年,第91巻, 第1号,PP.3-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
C08K 3/00-C08K 13/08
C08L 1/00-C08L 101/16
G06N 20/00-G06N 20/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料にX線を照射するX線小角散乱測定によって撮影された散乱像を取得する散乱像取得部と、
前記散乱像取得部によって取得された前記散乱像が入力層に入力され、出力層から前記ゴム材料の物性を出力する学習型の物性予測演算モデルを有し、前記入力層から前記出力層へ向けての途中演算において畳み込み演算を実行して前記散乱像の特徴量を抽出する物性予測処理部と、を備え
前記散乱像取得部は、前記ゴム材料の変形量に関する区間内の応力の中央値より応力が小さい場合と大きい場合とで撮影された複数の前記散乱像を取得し、
前記散乱像取得部によって取得された複数の前記散乱像による前記物性予測演算モデルでの演算に基づき前記散乱像上に判断根拠を可視化した画像を生成する画像生成処理部を更に備えることを特徴とするゴム材料物性予測システム。
【請求項2】
前記散乱像取得部は、前記ゴム材料を変形させて撮影した複数の前記散乱像を取得し、
前記物性予測演算モデルは、前記散乱像取得部によって取得された複数の前記散乱像に基づいて学習されていることを特徴とする請求項1に記載のゴム材料物性予測システム。
【請求項3】
ゴム材料にX線を照射するX線小角散乱測定によって撮影された散乱像を取得する散乱像取得ステップと、
前記散乱像取得ステップによって取得された前記散乱像が入力層に入力され、出力層から前記ゴム材料の物性を出力する学習型の物性予測演算モデルを有し、前記入力層から前記出力層へ向けての途中演算において畳み込み演算を実行して前記散乱像の特徴量を抽出する物性予測処理ステップと、を備え
前記散乱像取得ステップは、前記ゴム材料の変形量に関する区間内の応力の中央値より応力が小さい場合と大きい場合とで撮影された複数の前記散乱像を取得し、
前記散乱像取得ステップによって取得された複数の前記散乱像による前記物性予測演算モデルでの演算に基づき前記散乱像上に判断根拠を可視化した画像を生成する画像生成処理ステップを更に備えることを特徴とするゴム材料物性予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料の物性を予測するシステム、およびゴム材料物性予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に装着されるタイヤ等に用いられるゴム材料は、主要原料であるポリマーに補強剤、各種薬剤が添加された複合材料である。ゴム材料は、用途に応じて様々な化学構造および物性を備えたものが開発されている。
【0003】
特許文献1には従来のゴム材料の特性推定方法が開示されている。この特性推定方法は、ゴム材料を顕微鏡により撮像した画像を取得するステップと、取得した画像から、画像の特徴を示す指標を算出するステップと、算出した指標に基づいて、連続的な曲線で表されるゴム材料の特性を推定するステップと、を備える。この特性推定方法は、ゴム材料の特性として応力-ひずみ曲線を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6609387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたゴム材料の特性推定方法では、ゴム材料を顕微鏡によって撮影した画像に基づいて特性を推定しているが、顕微鏡画像ではゴム材料中の局所的な画像を得ることしかできないため、予測精度や再現性が低くなるという問題点があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴム材料の物性を精度良く予測することができるゴム材料物性予測システムおよびゴム材料物性予測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様はゴム材料物性予測システムである。ゴム材料物性予測システムは、ゴム材料にX線を照射するX線小角散乱測定によって撮影された散乱像を取得する散乱像取得部と、前記散乱像取得部によって取得された前記散乱像が入力層に入力され、出力層から前記ゴム材料の物性を出力する学習型の物性予測演算モデルを有し、前記入力層から前記出力層へ向けての途中演算において畳み込み演算を実行して前記散乱像の特徴量を抽出する物性予測処理部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明の別の態様はゴム材料物性予測方法である。ゴム材料物性予測方法は、ゴム材料にX線を照射するX線小角散乱測定によって撮影された散乱像を取得する散乱像取得ステップと、前記散乱像取得ステップによって取得された前記散乱像が入力層に入力され、出力層から前記ゴム材料の物性を出力する学習型の物性予測演算モデルを有し、前記入力層から前記出力層へ向けての途中演算において畳み込み演算を実行して前記散乱像の特徴量を抽出する物性予測処理ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴム材料の物性を精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るゴム材料物性予測システムの機能構成を示すブロック図である。
図2】小角散乱測定装置によるX線小角散乱測定について説明するための模式図である。
図3】X線小角散乱測定によって撮影された散乱像の一例を示す図である。
図4】物性予測演算モデルの構成を示す模式図である。
図5】物性予測演算モデルの学習処理の手順を示すフローチャートである。
図6】ゴム材料の散乱像から予測した応力を示すグラフである。
図7】ゴム材料の散乱像から予測した伸長量を示すグラフである。
図8】実施形態2に係るゴム材料物性予測システムの機能構成を示すブロック図である。
図9】画像生成処理部により生成した画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図9を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るゴム材料物性予測システム100の機能構成を示すブロック図である。ゴム材料物性予測システム100は、測定部10、データ結合部20および物性予測処理部30を備え、例えばタイヤ等に用いられるゴム材料の物性を予測する。ゴム材料物性予測システム100におけるデータ結合部20および物性予測処理部30は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)等の情報処理装置である。ゴム材料物性予測システム100における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0013】
測定部10は、小角散乱測定装置11および引張試験機12を有する。小角散乱測定装置11は、物性を予測する対象であるゴム材料に対してX線を照射するX線小角散乱(SAXS:Small Angle X-ray Scattering)測定を実施し、散乱像を撮影する装置である。図2は小角散乱測定装置11によるX線小角散乱測定について説明するための模式図であり、図3はX線小角散乱測定によって撮影された散乱像の一例を示す図である。小角散乱測定装置11は、ゴム材料のサンプルSに対してX線を照射し、サンプルSから所定のカメラ長の距離に配置された検出器11aによって散乱像を二次元画像として検出する。サンプルSと検出器11aとの間には、散乱光が透過しないビームストッパー11bが設けられている。
【0014】
検出器11aで撮像された散乱像は、ゴム材料の化学構造に応じて散乱光の輝度の高低が生じて所定の模様が現れ、ビームストッパー11bによって中央に輝度0の部分が形成される。測定部10では、引張試験機12によってサンプルSを任意の方向へ引張って変形させ、変形量に応じた複数の散乱像を小角散乱測定装置11によって撮影することができる。小角散乱測定装置11で撮影された散乱像はデータ結合部20の散乱像取得部21へ出力される。
【0015】
引張試験機12は、サンプルSを変形させ、サンプルSの変形量に対応して、応力および歪みの各データを計測し、データ結合部20の変形データ取得部22へ出力する。データ結合部20は、散乱像取得部21により取得した散乱像、並びに変形データ取得部22により取得した変形量、応力および歪みの各データを対応付け、物性予測処理部30へ出力する。
【0016】
物性予測処理部30は、物性予測演算モデル31および更新処理部32を備え、既知のゴム材料の化学構造および物性に基づいて物性予測演算モデル31を学習させ、作成される新たなゴム材料の物性を予測する。物性予測演算モデル31は、ニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。
【0017】
図4は、物性予測演算モデル31の構成を示す模式図である。物性予測演算モデル31は、CNN(Convolutional Neural Network)型であり、その原型であるいわゆるLeNetで使用された畳み込み演算およびプーリング演算を備える学習型モデルである。物性予測演算モデル31は、入力層40、特徴抽出部41、全結合部42および出力層43を備える。入力層40には、散乱像取得部21で取得した散乱像が入力される。特徴抽出部41は、畳み込み演算41aおよびプーリング演算41bを用いて特徴量を抽出し、全結合部42へ伝達する。
【0018】
特徴抽出部41では、入力された散乱像に対して複数のフィルタを用いて1回目の畳み込み演算を実行する。特徴抽出部41は、入力された散乱像に対してフィルタを移動させながら、畳み込み演算を実行する。尚、入力データの端に「0(ゼロ)」のデータを付加するゼロパティングを行って、畳み込み演算を実行するようにしてもよい。
【0019】
1回目の畳み込み演算後のデータに対して、1回目の最大値プーリング演算を実行する。特徴抽出部41は、さらに2回目の畳み込み演算を実行して特徴量データを得て、全結合部42へ出力する。
【0020】
全結合部42は、重みづけを用いた線形演算等を実行する全結合のパスによって出力層43へ結び付ける。全結合部42では、線形演算に加えて、活性化関数などを用いて非線形演算を実行するようにしてもよい。出力層43の各ノードには、例えば応力および歪み等のゴム材料の物性が出力される。
【0021】
物性予測演算モデル31は、ゴム材料に対して計測した散乱像と当該ゴム材料の物性に基づいて学習させることができる。更新処理部32は、散乱像に基づいて物性予測演算モデル31により算出した物性と、教師データとして与えられる物性とを比較し、例えば逆拡散演算により、各ノード間の重みづけを修正して物性予測演算モデル31の学習を繰り返す。学習の際に物性予測演算モデル31に入力される散乱像は、1つのゴム材料の引張りによる変形量を変えて計測した散乱像であってもよいし、複数のゴム材料に対して計測した散乱像であってもよい。
【0022】
また物性予測演算モデル31の学習では、適宜、物性予測演算モデル31に入力されるデータをトレーニング用データ(例えば90%のデータ)と、検証用データ(残りの10%のデータ)とに分けて、交差検証を実行する。物性予測処理部30は、交差検証により平均的に良い結果を予測する物性予測演算モデル31を選択することになる。
【0023】
物性予測処理部30は、散乱像取得部21から入力される散乱像に対して、学習済みの物性予測演算モデル31を用いて演算を実行し、ゴム材料の物性を新たに予測することができる。
【0024】
次にゴム材料物性予測システム100の動作について説明する。図5は、物性予測演算モデル31の学習処理の手順を示すフローチャートである。データ結合部20の散乱像取得部21は小角散乱測定装置11からゴム材料の散乱像を取得し、変形データ取得部22は応力および歪み等の物性を取得する(S1)。物性予測処理部30は、データ結合部20において取得した散乱像を物性予測演算モデル31の入力層40へ入力し、物性予測演算モデル31によりゴム材料の物性を予測する(S2)。ステップS2では、上述のように、適宜、交差検証等の手法を用いる。
【0025】
物性予測処理部30は、既知の物性値に対して所定範囲内を予め定めて目標値(目標範囲)とし、交差検証によって平均的に良い結果を出力する物性予測演算モデル31によって予測した物性が、目標値を満たすか否かを判定する(S3)。
【0026】
ステップS3によって、物性予測演算モデル31によって予測した物性が、目標値を満たす場合(S3:YES)、処理を終了する。一方、物性予測演算モデル31によって予測した物性が、目標値を満たさない場合(S3:NO)、ステップS1に戻って処理を繰り返す。
【0027】
ゴム材料物性予測システム100は、学習によって物性予測演算モデル31を構築し、ゴム材料の新たな散乱像に基づいてゴム材料の物性を予測することができる。図6は、ゴム材料の散乱像から予測した応力を示すグラフである。図6に示すグラフでは、横軸に実際に発生している応力を、縦軸に予測した応力をとり、実際に発生している応力と予測した応力とが一致している場合を破線で示している。図6に示すように、ゴム材料物性予測システム100によって予測したゴム材料の応力は、破線の付近に分布し、破線に添って良好な相関関係を示している。
【0028】
また図7は、ゴム材料の散乱像から予測した伸長量を示すグラフである。図7に示すグラフでは、横軸に実際に発生している伸長量を、縦軸に予測した伸長量をとり、実際に発生している伸長量と予測した伸長量とが一致している場合を破線で示している。
【0029】
図7に示すように、ゴム材料物性予測システム100によって予測したゴム材料の伸長量は、破線の付近に分布し、破線に添って良好な相関関係を示している。図6および図7に示されるように、ゴム材料物性予測システム100は、小角散乱測定によって計測した散乱像を用いることで、精度良くゴム材料の物性を予測することができる。
【0030】
またゴム材料物性予測システム100は、ゴム材料を引張って変形させて散乱像を取得することができ、変形量に応じた複数の散乱像と物性(応力や歪み、伸長量等)とを用いて物性予測演算モデル31を学習させることができる。
【0031】
さらにゴム材料物性予測システム100は、ゴム材料を引張って変形させて散乱像を取得し、変形量に応じた複数の散乱像を入力として用い、ゴム材料の物性(応力や歪み、伸長量等)を予測し、例えば応力-歪み曲線などを予測することもできる。
【0032】
(実施形態2)
図8は実施形態2に係るゴム材料物性予測システム100の機能構成を示すブロック図である。ゴム材料物性予測システム100は、画像生成処理部50を有するほか、実施形態1と同等の構成を有する。実施形態2では、ゴム材料を繰り返し複数往復の変形をさせる。ゴム材料の変形量に関して一つ若しくは複数の変形量区間に分割し、各区間において、各区間の応力の中央値より応力が大きい場合の散乱像と小さい場合の散乱像に分ける。ゴム材料物性予測システム100は、区間内の中央値より応力が大きい場合の散乱像および小さい場合の散乱像を物性予測演算モデル31に入力してゴム材料の物性を予測する。
【0033】
画像生成処理部50は、物性予測演算モデル31での演算に基づきCNNの判断根拠を散乱像にハイライトで可視化した画像を生成する。CNNの判断根拠を算出する方法は公知の深層学習ライブラリを用いて実現できる。例えば、SAS Institute社が提供するDLPyや、オープンソースであるKerasにあるGrad-CAM(Gradient-weighted Class Activation Mapping)手法などがある。図9は、画像生成処理部50により生成した画像の例を示す図である。図9に示す画像は、DLPyのヒートマップ解析手法を用いて可視化したものである。図9ではゴム材料の変形量について区間A~Cの3区間において区間内の応力の中央値より応力が小さい場合と、応力が大きい場合とで物性予測演算モデル31により予測演算し、画像生成処理部50により画像を生成している。画像生成処理部50は、上述のようにゴム材料を繰り返し複数往復の変形をさせる過程において取得される散乱像を選択し、物性予測演算モデル31により予測演算して画像を生成している。
【0034】
図9に示すように、各区間で応力が小さい場合と大きい場合で画像に表われる濃淡が変化しており、ヒートマップ解析等の解析に供することができる。画像生成処理部50によって生成された画像から、例えば画像中のどの箇所に着目すれば、応力を高く(または低く)することができるかがわかる。また散乱像はゴム材料中のフィラー分散構造を示しているため、画像生成処理部50によって生成された画像から、散乱像のどの箇所がフィラー分散に寄与して応力が高く(または低く)することができるかがわかる。
【0035】
また、画像生成処理部50によって生成された画像に対応する箇所の散乱像から散乱曲線を作成しギニエ解析(凝集体サイズやフラクタル構造解析など)することで、応力に影響するフィラー分散構造中の要因分析などを行うこともできる。
【0036】
次に実施形態に係るゴム材料物性予測システム100およびゴム材料物性予測方法の特徴について説明する。
実施形態に係るゴム材料物性予測システム100は、散乱像取得部21および物性予測処理部30を備える。散乱像取得部21は、ゴム材料にX線を照射するX線小角散乱測定によって撮影された散乱像を取得する。物性予測処理部30は、散乱像取得部21によって取得された散乱像が入力層40に入力され、出力層43からゴム材料の物性を出力する学習型の物性予測演算モデル31を有し、入力層40から出力層43へ向けての途中演算において畳み込み演算を実行して散乱像の特徴量を抽出する。これにより、ゴム材料物性予測システム100は、ゴム材料の散乱像に基づいてゴム材料の物性を精度良く予測することができる。
【0037】
また散乱像取得部21は、ゴム材料を変形させて撮影した複数の散乱像を取得する。物性予測演算モデル31は、散乱像取得部21によって取得された複数の散乱像に基づいて学習されている。これにより、ゴム材料物性予測システム100は、ゴム材料を変形させて散乱像を取得し物性予測演算モデル31を学習させることができる。
【0038】
また散乱像取得部21は、ゴム材料の変形量に関する区間内の応力の中央値より応力が小さい場合と大きい場合とで撮影された複数の散乱像を取得する。画像生成処理部50は、散乱像取得部21によって取得された複数の散乱像による物性予測演算モデル31での演算に基づき前記散乱像上に判断根拠を可視化した画像を生成する。これにより、ゴム材料物性予測システム100は、生成した画像を、ゴム材料の応力等の物性に寄与する要因の分析に供することができる。
【0039】
ゴム材料物性予測方法は、散乱像取得ステップおよび物性予測処理ステップを備える。散乱像取得ステップは、ゴム材料にX線を照射するX線小角散乱測定によって撮影された散乱像を取得する。物性予測処理ステップは、散乱像取得ステップによって取得された散乱像が入力層40に入力され、出力層43からゴム材料の物性を出力する学習型の物性予測演算モデル31を有し、入力層40から出力層43へ向けての途中演算において畳み込み演算を実行して散乱像の特徴量を抽出する。このゴム材料物性予測方法によれば、ゴム材料の散乱像に基づいてゴム材料の物性を精度良く予測することができる。
【0040】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0041】
21 散乱像取得部、 30 物性予測処理部、 31 物性予測演算モデル、
40 入力層、 43 出力層、 50 画像生成処理部、
100 ゴム材料物性予測システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9