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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】野菜栽培器
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/15 20180101AFI20240312BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A01G22/15
A01G13/02 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020088037
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021180644
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】595108631
【氏名又は名称】市川 定
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 勉
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-064250(JP,U)
【文献】特開2016-214116(JP,A)
【文献】実開平02-116948(JP,U)
【文献】特開2004-236503(JP,A)
【文献】実開平06-024452(JP,U)
【文献】特開平03-236721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/15
A01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉物野菜の栽培に用いられる野菜栽培器において、
土壌に植えられた葉物野菜を囲むように配置され、土壌に突き刺された状態で地表面から上方へ突出する複数の支柱と、
葉物野菜の地上部の下側が収容される筒状をなし、下側部分が上側部分に比べて小径とされるとともに上側部分が前記支柱に保持される下側収容部と、
葉物野菜の前記下側収容部に収容された部分よりも上側が収容される筒状をなし、前記下側収容部よりも上で前記支柱に対して高さ調整可能に保持される上側収容部とを備えていることを特徴とする野菜栽培器。
【請求項2】
請求項1に記載の野菜栽培器において、
前記下側収容部の内面には、当該下側収容部の上端部から下端部まで延びる排水溝が形成され、
前記排水溝の下端部は、前記下側収容部の下端部で開放されていることを特徴とする野菜栽培器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の野菜栽培器において、
前記支柱の上部には、葉物野菜の上方に配置される屋根が着脱可能に設けられていることを特徴とする野菜栽培器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば白菜、キャベツ等の葉物野菜を畑で栽培するための野菜栽培器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、葉物野菜を栽培する際に使用される漏斗状の保持具が知られている。特許文献1の保持具の内部で野菜を育てることにより、葉が水平方向に広がらないようにすることができる。
【0003】
また、特許文献2には野菜の栽培成形枠が開示されている。この栽培成形枠は、篭状の主体枠を備えており、この主体枠の下部には地面に突き刺すための脚柱が設けられている。主体枠の胴周面にはネットやフィルタよりなる誘導部材が設けられており、この誘導部材によって葉が水平方向に広がらないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第02/003777号
【文献】実開昭62-64250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では野菜の水耕栽培が前提となっているので、保持具の下部が水耕栽培用のトレイに形成された穴に差し込まれた状態で保持されている。特許文献1のような保持具を用いることにより、同じ作付け面積に多くの野菜を植えることができ、作付け率を高めることができるという利点がある。
【0006】
また、現在、畑で野菜を育てることも広く行われており、特許文献1の保持具を畑で使うことにより作付け率を高めることができると考えられる。ところが、特許文献1の保持具を畑で使おうとすると、保持具の下部を畑に埋めることになるが、この保持具の下部は細いため、保持具が不安定になる。特に、野菜が小さいうちは、保持具を支える物がなく、風雨によって保持具が傾いたり、倒れてしまうおそれがある。その結果、保持具の内部で生育する野菜も傾いたり、倒れたりしてしまい、商品として規格外のものになる懸念がある。
【0007】
そこで、特許文献2のように地面に突き刺す脚柱を有する主体枠に誘導部材を設ければ、誘導部材を安定させることができる。ところが、特許文献2の誘導部材は野菜の成熟期の大きさに合わせた大きな内径とされているため、野菜が小さい段階、即ち、育成段階で野菜の形状を整えるようには機能せず、その結果、成育途中の野菜の葉が土に付いて傷み、商品として規格外のものになる懸念がある。
【0008】
また、一般的に、葉物野菜は根に近づくほど径が小さくなっているが、特許文献2の誘導部材は上から下まで同径であるため、野菜の根に近い部分の形状や大きさを整えることはできない。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、畑で栽培する葉物野菜の作付け率を高めながら、葉物野菜の下から上までの形状や大きさを整えることができるようにして商品性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の開示は、葉物野菜の栽培に用いられる野菜栽培器において、土壌に植えられた葉物野菜を囲むように配置され、土壌に突き刺された状態で地表面から上方へ突出する複数の支柱と、葉物野菜の地上部の下側が収容される筒状をなし、下側部分が上側部分に比べて小径とされるとともに上側部分が前記支柱に保持される下側収容部と、葉物野菜の前記下側収容部に収容された部分よりも上側が収容される筒状をなし、前記下側収容部よりも上で前記支柱に対して高さ調整可能に保持される上側収容部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、下側収容部が、互いに間隔をあけて配置された複数の支柱に保持されているので安定する。この下側収容部の下側部分が上側部分よりも小径であるため、成長段階にある葉物野菜の根に近い側の葉を下側収容部の内面で保持することができ、葉が土に付きにくくなるとともに、葉物野菜の根に近い部分の形状を下側収容部によって整えることができる。また、上側収容部は、下側収容部よりも上で支柱に保持されているので、葉物野菜の上側が上側収容部に収容されて葉物野菜の上側の形状や大きさも整えられる。これにより、葉物野菜の葉が水平方向に広がらなくなるので、作付け率が高まる。
【0012】
さらに、上側収容部は高さ調整可能であるため、葉物野菜の成長に合わせて高くすることや、栽培する葉物野菜の背丈に合わせた高さに配置することができ、野菜栽培器の適用範囲が広がり、汎用性が高まる。
【0013】
第2の開示は、前記下側収容部の内面には、当該下側収容部の上端部から下端部まで延びる排水溝が形成され、前記排水溝の下端部は、前記下側収容部の下端部で開放されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、下側収容部内に入った水が排水溝によって下端部まで導かれて外部に導出されるので、下側収容部内に水が溜まったままになりにくく、葉物野菜の傷みを抑制できる。また、下側収容部の内面と葉物野菜との接触面積を少なくすることができるので、下側収容部の内面と葉物野菜との間の保水量を少なくすることができる。
【0015】
第3の開示は、前記支柱の上部には、葉物野菜の上方に配置される屋根が着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、例えば雨が葉物野菜にかかると、雨水が葉の間に溜まって葉の腐敗を招くことがある。本開示によれば、例えば雨が降りそうな時には、屋根を予め支柱に取り付けておくことで、雨が葉物野菜にかかりにくくなり、葉の間に雨水が溜まることによる腐敗を抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、畑で栽培する葉物野菜の作付け率を高めることができるとともに、葉物野菜の形状や大きさを整えて商品性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る野菜栽培器の使用状態を示す側面図である。
図2】野菜栽培器の分解斜視図である。
図3】本実施形態に係る野菜栽培器を使用した場合と使用しない場合の作付け例を示す図である。
図4】変形例1に係る上側収容部の展開図である。
図5】変形例2に係る上側収容部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る野菜栽培器1の使用状態を示す側面図である。野菜栽培器1は、畑の土壌で葉物野菜200(仮想線で示す)を栽培する際に用いられるものであり、この野菜栽培器1を用いて栽培可能な葉物野菜(葉菜類)としては、例えば白菜、キャベツ、レタス、チシャ、ほうれん草、小松菜等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、生育するに従って葉が伸びていき、水平に広がりやすい各種葉菜類を対象とすることができる。
【0021】
野菜栽培器1は、複数の支柱2、下側収容部3、上側収容部4及び屋根5を備えている。支柱2は、土壌に植えられた葉物野菜200を囲むように配置され、土壌に突き刺された状態で地表面から上方へ突出する。支柱2の本数は特に限定されるものではないが、2本以上、3本から5本の間で設定するのが好ましい。支柱2を2本設ける場合には、葉物野菜200を挟むように点対称に配置することができる。支柱2を3本以上設ける場合には、葉物野菜200の周方向に等間隔に配置することができるが、不等間隔に配置してもよい。
【0022】
支柱2は全て同じ部材で構成することができ、例えば金属製の棒材を樹脂で被覆した部材や、硬質樹脂材からなる部材等である。支柱2の下部には、先鋭部2aが設けられており、土壌に差し込み易くなっている。支柱2の中間部には、必要に応じて、下側ストッパ2b、中間ストッパ2c及び上側ストッパ2dを設けることができる。下側ストッパ2bは、下側収容部3を所定高さで保持するためのストッパであり、中間ストッパ2cは、上側収容部4を所定高さで保持するためのストッパであり、上側ストッパ2dは屋根5を所定高さで保持するためのストッパである。ストッパ2b、2c、2dは支柱2に対して滑り難い部材、例えばゴム等で構成することができる。また、ストッパ2b、2c、2dは、支柱2が挿通するリング状の部材であってもよい。下側収容部3、上側収容部4及び屋根5を針金や紐、バンド等で支柱2に縛って固定することもでき、その場合にはストッパ2b、2c、2dは不要になる。
【0023】
下側収容部3は、成熟期にある葉物野菜200の地上部の下側が収容される筒状をなす下側本体部30と、支柱2が挿通する下側筒部31とを有している。下側本体部30及び下側筒部31は、例えば硬質樹脂材、軟質樹脂材等で構成することができる。下側本体部30は、葉物野菜200の成長を阻害しないように、光を透過させる部材で構成されている。
【0024】
下側本体部30の下端部30a及び上端部30bは、それぞれ全体が下方及び上方に開放されている。下端部30bの内径は、上端部30bの内径よりも小さく設定されている。すなわち、成長期から成熟期にある葉物野菜200は、根に近い部分の径が小さく、そこから上に行くに従って径が大きくなっており、この葉物野菜200の径の変化とほぼ一致するように、下側本体部30の内径が下端部30aから上端部30bに亘って変化している。具体的には、下側本体部30の下端部30aの内径が最も小さく、そこから上に行くに従って次第に拡径し、上下方向中央部において最大径となり、その最大径のまま上端部30bに達している。
【0025】
下側本体部30の形状は、葉物野菜200の種類に応じて変更することができる。例えば、白菜とキャベツとを比較したとき、白菜はキャベツに比べて背丈が高く、根近傍から上に向かう外径の変化が緩やかであるため、この白菜の形状に合うように下側本体部30の形状を設定しておけばよい。他の葉物野菜200を栽培する場合も同様に、成熟期にある葉物野菜200の形状を考慮して下側本体部30の形状を設定することができる。
【0026】
このように下側本体部30の形状を設定しておくことで、成長期から成熟期にかけて葉物野菜200の葉を上方へ案内して葉が水平方向に広がりにくくなるとともに、葉物野菜200の形状や大きさを整えることができる。例えば白菜であれば、径が15cm~20cm程度の範囲になるように、下側本体部30の内径を設定しておくのが好ましい。
【0027】
下側筒部31は、上下方向に延びる姿勢とされた状態で、下側本体部30の大径部分である上側部分に固定されている。下側筒部31と下側本体部30とは一体成形されていてもよいし、別部材で構成されているものを一体化してもよい。下側筒部31は、支柱2が挿通された状態で当該支柱2によって支持される部分であり、支柱2の数と同じ数だけ設けることができるとともに、支柱2の間隔と同じ間隔をあけて設けることができる。下側筒部31は、その形状及び長さを任意に設定することができ、例えば短い下側筒部31が上下方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。また、下側筒部31以外にもリング状の部材に支柱2を挿通させてよい。また、下側筒部31の下端部に下側ストッパ2bを配置しておくことで、下側収容部3を所定高さで保持できる。
【0028】
下側収容部3の内面には、当該下側収容部3の上端部から下端部まで延びる排水溝30cが形成されており、排水溝30cの下端部は、下側収容部3の下端部で開放されている。具体的には、下側本体部30は、板材をプリーツ状に折り曲げ成形してなるものであり、これにより、下側本体部30の内面には、下端部30aから上端部30bまで連続した複数の排水溝30cが周方向に互いに間隔をあけて形成されることになる。排水溝30cは、下側本体部30の下端部で開放されている。下側本体部30と葉物野菜200との間に流入した水は排水溝30cを通って下方へ流れていき、下側本体部30の下端部から排水される。
【0029】
上側収容部4は、成熟期にある葉物野菜200の下側収容部3に収容された部分よりも上側が収容される筒状をなす上側本体部40と、支柱2が挿通する上側筒部41とを有している。上側本体部40及び上側筒部41は、例えば硬質樹脂材、軟質樹脂材等で構成することができる。上側本体部40は、葉物野菜200の成長を阻害しないように、光を透過させる部材で構成されている。上側収容部4は、下側収容部3よりも上で支柱2に対して高さ調整可能に保持される。
【0030】
上側本体部40の下端部40a及び上端部40bは、それぞれ全体が下方及び上方に開放されている。下端部40bの内径は、下側本体部30の上端部30bの内径と同じにすることができる。上側本体部40は、下端部40aから上端部40bまでほぼ同じ内径にすることができるが、葉物野菜の形状や種類に合わせて内径を変化させてもよい。
【0031】
すなわち、葉物野菜200がある程度成長すると、葉物野菜200の上側が下側収容部3から上へ出ていくことになる。このとき、上側本体部40が下側収容部3よりも上に位置しているので、葉物野菜200の上側が上側本体部40に収容される。これにより、葉が水平方向に広がりにくくなるとともに、葉物野菜200の形状や大きさを整えることができる。
【0032】
上側筒部41は、上下方向に延びる姿勢とされて上側本体部40に固定されている。上側筒部41と上側本体部40とは一体成形されていてもよいし、別部材で構成されているものを一体化してもよい。上側筒部41は、支柱2が挿通された状態で当該支柱2によって支持される部分であり、支柱2の数と同じ数だけ設けることができるとともに、支柱2の間隔を同じ間隔をあけて設けることができる。上側筒部41は、その形状及び長さを任意に設定することができ、例えば短い上側筒部41が上下方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。また、上側筒部41以外にもリング状の部材に支柱2を挿通させてよい。また、上側筒部41の下端部に中間ストッパ2cを配置しておくことで、上側収容部4を所定高さで保持できる。
【0033】
中間ストッパ2cの高さを変更することで上側収容部4の高さを変更できる。また、中間ストッパ2cを設けることなく、上側収容部4を針金や紐等で支柱2に縛ることもできる。この場合、上側収容部4の縛る位置を変更することで上側収容部4の高さを変更できる。例えば背丈の低い葉物野菜200の場合には上側収容部4を下げることができ、また、背丈の高い葉物野菜200の場合には上側収容部4を上げることができ、葉物野菜200の背丈に合わせて上側収容部4の高さを調整できる。また、葉物野菜200の成長初期段階では上側収容部4を下げておき、成熟期に近づくにつれて上側収容部4を上げることもできる。
【0034】
上側収容部4の内面にも排水溝40cが形成されている。具体的には、上側本体部40もプリーツ状をなしており、上側本体部40の内面には、下端部40aから上端部40bまで連続した複数の排水溝40cが周方向に互いに間隔をあけて形成されている。各排水溝40cは、上側本体部40の下端部で開放されている。上側本体部40と葉物野菜200との間に流入した水は排水溝40cを通って下方へ流れていき、上側本体部40の下端部から排水される。
【0035】
屋根5は、支柱2の上部に対して着脱可能に設けられており、葉物野菜200の上方に配置されて葉物野菜200に雨等の水が直接降りかかるのを抑制するための部材である。屋根5は、例えば硬質樹脂材、軟質樹脂材等の水不透過性を有する板材で構成することができる。屋根5は光を透過させる材料で構成されていてもよいし、光を遮断する材料で構成されていてもよい。屋根5の形状は円形であってもよいし、多角形であってもよい。屋根5には、支柱2が挿通する挿通孔5aが複数形成されている。挿通孔5aの間隔及び位置は、支柱2の間隔及び位置に合わせればよい。屋根5の周縁部には、傾斜部5bが設けられているが、この傾斜部5bは省略してもよい。屋根5は、平面視で葉物野菜200の全体を覆うことができるような大きさにするのが好ましい。
【0036】
上側ストッパ2dを屋根5の下面に接するように配置しておくことで、屋根5を所望の高さで保持することができる。上側ストッパ2dの高さを変更することで、屋根5の高さを調整することができる。背丈の低い葉物野菜200の場合には、屋根5の高さを低くすることや、成長初期段階で屋根5の高さを低くしておき、成長が進むに従って屋根5の高さを高くすることができる。
【0037】
支柱2を挿通孔5aから抜くことで屋根5を取り外すことができる。屋根5を取り外した状態で野菜栽培器1を使用することもできる。例えば晴天時には屋根5を取り外しておき、雨が予想される時のみ屋根5を取り付けるようにしてもよい。屋根5が風等で飛ばないように、屋根5の上側にもストッパ(図示せず)を設けるのが好ましい。また、屋根5を針金や紐等で支柱2に固定してもよい。
【0038】
(野菜栽培器1を使用した葉物野菜の栽培)
野菜栽培器1は土壌に野菜の苗を植えた後に設置することができるが、野菜の苗を土壌に植える前に設置してもよい。野菜栽培器1を土壌に設置する際には、まず、支柱2の先鋭部2aを土壌に差し込んで支柱2を所望の箇所に立てる。その後、下側収容部3の下側筒部31に支柱2を挿入し、下側収容部3を支柱2によって支持する。下側収容部3の高さは下側ストッパ2bの位置によって設定することができ、下端部30aが地表面から僅かに離れる高さにしておく。これにより、下側本体部30内に入った水が排水溝30cを通って下端部30aから排水されやすくなる。
【0039】
葉物野菜200は下側本体部30内で成長していく。下側本体部30内で伸びた葉は、下側本体部30の内面によって上へ案内されるので、水平方向へ広がりにくくなるとともに、葉が土に付きにくくなり、葉の傷みが抑制される。
【0040】
葉物野菜200が苗の時や成長の初期段階にあるときには、上側収容部4は設置しなくてもよい。上側収容部4の設置が必要な場合、上側収容部4の上側筒部41に支柱2を挿入し、上側収容部4を支柱2によって支持する。上側収容部4の高さは中間ストッパ2cの位置によって設定することができ、葉物野菜200の背丈に合わせる。葉物野菜200の成長に応じて上側収容部4の高さを変更することができる。葉物野菜200が更に成長して上側収容部4の上側本体部40内に達すると、上側本体部40の内面によって上へ案内される。また、屋根5が必要な場合には、支柱2に取り付ければよい。
【0041】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、葉物野菜200の成長初期の段階から葉が土に付かないようにすることができるので、傷んだ個体が少なくなり、収穫率を高めることができる。また、葉物野菜200の下側は下側収容部3に収容されて形状が整えられ、葉物野菜200の上側は上側収容部4に収容されて形状が整えられるので、葉物野菜200の形状及び大きさを揃えることができ、商品性が高まる。
【0042】
また、従来、一般的には、白菜を栽培する際にはワラ等で外側の葉を束ねて巻葉を助けているが、本実施形態ではワラ等で葉を束ねることなく、下側収容部3及び上側収容部4で巻葉を助けることができるので、手間がかからずに形の良い白菜を栽培することができる。
【0043】
また、屋根5を取り付けることにより雨水が葉の間に溜まりにくくなる。これにより、葉の間に雨水が溜まることによる葉物野菜200の腐敗を抑制できる。また、下側収容部3の下側本体部30内に入った水は、排水溝30cによって下側本体部30の下端部30aまで導かれて外部に導出されるので、下側収容部3内に水が溜まったままになりにくく、このことによっても葉物野菜200の傷みを抑制できる。
【0044】
また、図3に示すように、本実施形態に係る野菜栽培器1を用いることで作付け率を高めることができる。図3の右側に示している図は、1m四方の畑に白菜を植えた状況を上方から見た模式図であり、一般的には各白菜の葉が水平方向に広がるため、作付け個数は4つ程度が標準である。これに対し、図3の左側に示すように、本実施形態に係る野菜栽培器1を用いると、葉が水平方向に広がらなくなるので、作付け個数を2倍以上の9個程度に増やすことができる。
【0045】
(変形例)
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0046】
例えば図4に示す変形例1のように、上側本体部40の径が調整可能であってもよい。図4は、上側本体部40を展開した状態を示しており、展開した状態にある上側本体部40の長手方向一端部には、孔形成板部43が設けられている。孔形成板部43には、第1、第2、第3孔部43a、43b、43cが長手方向に互いに間隔をあけて設けられている。第1、第2、第3孔部43a、43b、43cは、孔形成板部43を厚み方向に貫通している。複数の第1孔部43aが上下方向に所定の間隔をあけて並んでおり、第2孔部43b、第3孔部43cも同様に形成されている。尚、図示しないが、第4孔部、第5孔部等を設けることもできる。
【0047】
一方、上側本体部40の長手方向他端部には、上側筒部41が設けられている。上側筒部41の外周面には、複数の突起44が上下方向に所定の間隔をあけて形成されている。各突起44は、第1孔部43a、第2孔部43b、第3孔部43cのうち、1つに差し込まれた状態で引っかかって係合するようになっている。突起44を第1孔部43aに差し込むと上側本体部40の径が最も小さくなり、突起44を第3孔部43cに差し込むと上側本体部40の径が最も大きくなる。突起44を第2孔部43bに差し込むと上側本体部40の径が中間の径になる。上側本体部40の径は、葉物野菜200の径に合うように調整すればよい。
【0048】
また、図5に示す変形例2は、上側収容部4が径方向に2分割可能な例である。すなわち、上側収容部4は半円弧状の第1部材45と第2部材46とが組み合わされて筒状に構成されている。第1部材45の内面には排水溝45dが上下方向に延びるように形成され、また、第2部材46の内面にも排水溝46dが上下方向に延びるように形成されている。
【0049】
第1部材45の周方向の一端部には、上下方向中間部に中間筒部45aが形成されている。第1部材45の周方向の他端部には、上側筒部45bと下側筒部45cが上下方向に間隔をあけて形成されている。また、第2部材46の周方向の一端部には、上側筒部46aと下側筒部46bが上下方向に間隔をあけて形成されている。第2部材46の周方向の他端部には、上下方向中間部に中間筒部46cが形成されている。
【0050】
第1部材45の上側筒部45bと下側筒部45cとの間隔は、第2部材46の中間筒部46cの上下方向の寸法以上とされている。また、第2部材46の上側筒部46aと下側筒部46bとの間隔は、第1部材45の中間筒部45aの上下方向の寸法以上とされている。
【0051】
第1部材45と第2部材46とを合わせると、第1部材45の上側筒部45bと下側筒部45cとの間に第2部材46の中間筒部46cが入り、第2部材46の上側筒部46aと下側筒部46bとの間に第1部材45の中間筒部45aが入る。この状態で支柱2を、第1部材45の上側筒部45b及び下側筒部45cと、第2部材46の中間筒部46cに差し込み、第2部材46の上側筒部46a及び下側筒部46bと、第1部材45の中間筒部45aに差し込むと、第1部材45と第2部材46を支柱2によって連結することができる。つまり、第1部材45と第2部材46の連結部材を支柱2とすることができる。尚、第1部材45と第2部材46の連結部材を支柱2とは別に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明に係る野菜栽培器は、各種葉物野菜を栽培する場合に使用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 野菜栽培器
2 支柱
3 下側収容部
4 上側収容部
5 屋根
30c 排水溝
図1
図2
図3
図4
図5