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特許7453063半導体装置の製造方法および半導体装置の検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240312BHJP
   G01R 31/26 20200101ALI20240312BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240312BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240312BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240312BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L21/66 H
G01R31/26 A
G01R31/26 B
G01R31/26 C
H01L29/78 658L
H01L29/91 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020095810
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021190600
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆誠
(72)【発明者】
【氏名】三木 浩史
(72)【発明者】
【氏名】毛利 友紀
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008869(JP,A)
【文献】特開2011-100964(JP,A)
【文献】特開2018-119862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/26-31/3193
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/739
H01L 21/331
H01L 29/861-29/885
H01L 21/329
H01L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体ウエハに第1半導体素子を形成する工程、
(b)電気的特性の測定により前記第1半導体素子の特性を測定する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記半導体ウエハから、前記第1半導体素子を含む半導体チップを切り出す工程、
(d)(c)工程の後、前記(b)工程の測定結果に基づき、前記半導体チップの良品の選別を行う工程、
(d)工程の後、第1温度で前記第1半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第1漏れ電流を測定する工程、
(d)工程の後、第2温度で前記第1半導体素子に前記第1電圧を印加した際に流れる第2漏れ電流を測定する工程、
)前記()および()工程の後、前記第1漏れ電流に対する前記第2漏れ電流の比率を算出する工程、
)前記()工程の後、前記比率が一定値以上の前記第1半導体素子を備えた前記半導体チップを良品として選別する工程、
(i)前記(h)工程の後、前記半導体チップをパッケージングすることで製品を製造する工程、
(j)前記(i)工程の後、電気的特性の測定による前記製品の検査を行うことで、良品を選別する工程、
を有
前記第2温度は、前記第1温度より高い、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体素子は、ダイオード、MOSFETまたはIGBTである、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1半導体素子は、ゲート、ソースおよびドレインを備えたMOSFETであり、
前記()工程で前記第1漏れ電流を測定するとき、および、前記()工程で前記第2漏れ電流を測定するときのそれぞれにおいて、前記ゲートは、前記ソースと短絡され、または、0Vが印加される、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記比率は、前記第1漏れ電流に対する前記第2漏れ電流の第1変化率であり、
前記()工程では、前記第1変化率が1.01以上の前記第1半導体素子を備えた前記半導体チップを良品として選別する、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
(a1)複数の第2半導体素子を形成する工程、
(b1)前記第1温度で前記複数の第2半導体素子に前記第1電圧を印加した際に流れる第3漏れ電流を測定する工程、
(c1)前記第2温度で前記複数の第2半導体素子に前記第1電圧を印加した際に流れる第4漏れ電流を測定する工程、
(d1)前記(a1)、(b1)および(c1)工程の後、前記第3漏れ電流に対する前記第4漏れ電流の第2変化率を算出する工程、
をさらに有し、
前記比率は、前記第1漏れ電流に対する前記第2漏れ電流の第1変化率であり、
前記()工程では、前記(d1)工程で得られた複数の前記第2変化率の平均値と、前記第1変化率との差が、複数の前記第2変化率の標準偏差の3倍以下である前記第1半導体素子を備えた前記半導体チップを良品として選別する、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
(a)半導体ウエハに半導体素子を形成する工程、
(b)電気的特性の測定により前記半導体素子の特性を測定する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記半導体ウエハから、前記半導体素子を含む半導体チップを切り出す工程、
(d)(c)工程の後、前記(b)工程の測定結果に基づき、前記半導体チップの良品の選別を行う工程、
(d)工程の後、第1温度で前記半導体素子に第1漏れ電流を流した際に印加した第1電圧を測定する工程、
(d)工程の後、第2温度で前記半導体素子に前記第1漏れ電流を流した際に印加した第2電圧を測定する工程、
)前記()および()工程の後、前記第1電圧に対する前記第2電圧の比率を算出する工程、
)前記()工程の後、前記比率が一定値以上の前記半導体素子を備えた前記半導体チップを良品として選別する工程、
(i)前記(h)工程の後、前記半導体チップをパッケージングすることで製品を製造する工程、
(j)前記(i)工程の後、電気的特性の測定による前記製品の検査を行うことで、良品を選別する工程、
を有
前記第2温度は、前記第1温度より高い、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体素子は、ダイオード、MOSFETまたはIGBTである、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の製造方法および半導体装置の検査方法に関し、特に、半導体装置の良品の選別に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの良品検査工程における耐電圧試験では、半導体デバイスに所定の電圧を印加した際の漏れ電流、または半導体デバイスに所定の電流を印加した際の電圧観測値などにより、良品判定の基準が定められる。
【0003】
特許文献1(特開2018-119862号公報)には、トレンチゲート構造を有する半導体装置を製造した後、第1温度における第1しきい値電圧と、第2温度における第2しきい値電圧とをそれぞれ算出し、第1しきい値電圧と第2しきい値電圧との差から良品判別を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-119862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体チップに対して良品検査を行った際に不良を発見できず、当該半導体チップをディスクリートパッケージまたはモジュールなどに組立てた後、製品検査で不良と判別されることがある。組立てた後にチップ不良が判明すると、組立時に共に搭載された他のチップも巻き添えで廃棄され、半導体装置の製造コストが増大する。
【0006】
組立て前の半導体チップの良品検査は25℃などの特定の温度で実施されることが多い。しかし、その検査の結果のみでは、漏れ電流が増加する半導体チップを判別できない場合がある。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0009】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、(a)第1半導体素子を形成する工程、(b)第1温度で前記第1半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第1漏れ電流を測定する工程、(c)第2温度で前記第1半導体素子に前記第1電圧を印加した際に流れる第2漏れ電流を測定する工程、(d)前記(a)、(b)および(c)工程の後、前記第1漏れ電流と前記第2漏れ電流との比率を算出する工程、(e)前記(d)工程の後、前記比率が一定値以上の前記第1半導体素子を良品として選別する工程、を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
代表的な実施の形態によれば、半導体装置の製造コストを低減できる。特に、リーク電流が発生するチップをモジュール組立前の検査工程で排除することができ、モジュール組立後の検査歩留を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1の半導体装置の製造方法の概要を示すフローである。
図2】漏れ電流の変化率を表す式である。
図3】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示すフローである。
図4】漏れ電流の温度特性を示すグラフである。
図5】良品判定基準の選定例を説明するグラフである。
図6】実施の形態1の変形例1である半導体装置の製造方法に係るダイオードの構造を示す断面図である。
図7】実施の形態1の変形例2である半導体装置の製造方法に係るMOSFETの構造を示す断面図である。
図8】実施の形態1の変形例3である半導体装置の製造方法に係る縦型MOSFETの構造を示す断面図である。
図9】実施の形態1の変形例4である半導体装置の製造方法に係るIGBTの構造を示す断面図である。
図10】実施の形態1の変形例5である半導体装置の製造方法を示すフローである。
図11】実施の形態1の変形例6である半導体装置の製造方法を示すフローである。
図12】実施の形態2の半導体装置の製造方法の概要を示すフローである。
図13】漏れ電流と絶対温度の逆数との関係を示すグラフである。
図14】活性化エネルギーを表す式である。
図15】漏れ電流の変化率と活性化エネルギーとの関係を示すグラフである。
図16】活性化エネルギーを表す式である。
図17】実施の形態3の半導体装置の製造方法の概要を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、実施の形態では、特に必要なときを除き、同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、符号「」および「」は、導電型がN型またはP型の不純物の相対的な濃度を表しており、例えばN型不純物の場合は、「N--」「N」、「N」、「N」、「N++」の順に不純物濃度が高くなる。
【0014】
(実施の形態1)
ここでは、半導体デバイスを、デバイスまたは半導体素子と呼ぶ。また、本願でいう漏れ電流とは、半導体素子がオフ状態である場合に、半導体素子に流れる電流を指す。ここでいうオフ状態とは、半導体素子の状態であって、半導体素子の印加電圧が、しきい値電圧未満である状態を指す。つまり、半導体素子に漏れ電流が流れていても、半導体素子の印加電圧がしきい値電圧未満であれば、半導体素子はオフ状態である。
【0015】
<改善の余地の詳細>
以下に、改善の余地の詳細について説明する。
【0016】
半導体チップ(以下、単にチップと呼ぶ)の良品検査において不良判定となる要因には、デバイス構造の欠損および結晶欠陥がある。ただし、これらの欠損などの程度によっては、基準を満たすレベルの漏れ電流に留まることもある。一方で、単純に製造プロセスの面内ばらつきなどにより、通常よりも漏れ電流が高めとなるチップも現れる。
【0017】
上記のように漏れ電流が生じるチップであっても、基準を満たせば検査を通過し、その後にディスクリートパッケージまたはモジュールなどに組立てられる。しかし、前者のチップ、つまりデバイス構造欠損または結晶欠陥により漏れ電流が増加しているものは、組立後の製品検査で不良と判別される可能性が高い。組立時に複数のチップが搭載される場合には、組立て後に不良と判定されると、当該チップのみならず他のチップも巻き添えで廃棄されることが考えられる。
【0018】
組立て前のチップの良品検査は25℃などの特定の温度で実施されることが考えられる。しかし、その検査の結果のみでは、デバイス構造欠損による漏れ電流の増加と、製造プロセスに起因するデバイス特性の面内ばらつきによる漏れ電流の増加との区別がつかない。
【0019】
つまり、デバイス構造欠損による漏れ電流の増加を組立て前のチップの良品検査で判定できない場合、組立後にチップの不良が判明し、複数のチップと共に廃棄される。すなわち、リーク電流が発生するチップをモジュール組立前の検査工程で排除することができず、モジュール組立後の検査歩留が低下し、半導体装置の製造コストが増大する。
【0020】
以上より、モジュール組立前の良品検査工程の信頼性を向上させ、モジュール組立後の検査歩留を向上させ、これにより半導体装置の製造コストを低減する観点から、改善の余地が存在する。
【0021】
そこで、本実施の形態1では、上述した第改善の余地を解決する工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0022】
<半導体装置の製造方法および検査方法>
以下、本実施の形態の半導体装置の製造方法および検査方法について、図1図5を用いて説明する。図1は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の概要を示すフローである。図2は、漏れ電流の変化率を表す式である。図3は、本実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローである。図4は、漏れ電流の温度特性を示すグラフである。図5は、良品判定基準の選定例を説明するグラフである。
【0023】
まず、本実施の形態の概要を説明する。図1のフローには、本実施の形態の半導体装置の製造方法の主要な構成を示している。
【0024】
本実施の形態では、図1のステップS1およびステップS2に示すように、半導体素子に対し、順に、第1温度での漏れ電流測定と、第2温度での漏れ電流測定とを行う。第1温度は、例えば常温(室温)である。ここでいう常温(室温)は、例えば25℃、27℃または30℃などである。第2温度は、例えば半導体装置の絶対最大定格などの温度である。また、第1温度を絶対最大定格温度とし、第2温度を常温としてもよい。つまり、第1温度と第2温度はいずれが高くてもよい。このように、複数の温度で漏れ電流を測定する。測定温度の種類が多いほど時間がかかるため、漏れ電流の温度の相関データを積み、測定温度は2点のみにすることが望ましい。
【0025】
ステップS1およびステップS2のそれぞれでは、互いに異なる温度条件にて、所定の電圧を半導体素子に印加し、その際に流れる漏れ電流を測定する。つまり、ステップS1およびステップS2のそれぞれで印加する電圧(第1電圧)は同一である。
【0026】
次に、ステップS1で測定した第1漏れ電流とステップS2で測定した第2漏れ電流との比率を算出する工程を行う(ステップS3)。ここでは、上記2つの電流値を用いて、単位温度当たりの漏れ電流の変化率を算出する。この変化率(比率)は、ステップS1での測定結果である第1漏れ電流に対する、ステップS2での測定結果である第2漏れ電流の変化率である。具体的には、例えば、1℃当たりの漏れ電流の変化率を算出する。
【0027】
次に、比率(漏れ電流の変化率)が一定値(しきい値)以上のチップのみを良品として選別する(ステップS4)。ここでいう一定値は、例えば、実測データを基に予め決定された値とする。また、ここで行う選別は良品か否かを判別することを意味する。ただし、良品として判別されなかったチップを廃棄する必要はなく、当該良品とは寿命などの性能が異なるチップとして他の製品に使用されてもよい。つまり、ここで行う選別は、等級(品質)の仕分けであってもよい。
【0028】
本発明における漏れ電流とは、本来は電流が流れないことが理想である時に、実際に流れる電流を指す。例えば、ダイオードは、アノードに正電圧を印加した際に電流が流れ、カソードに正電圧を印加した際は電流が流れないことが理想のデバイスである。このため、カソードに正電圧を印加した際に実際に流れる電流を漏れ電流として扱う。MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の場合は、ドレインに正電圧が印加されている状態でゲートに一定値以上の正電圧を印加した場合に、ドレインからソースへと電流が流れるのが通常である。ゲート電圧が一定値未満または負の場合にドレインからソースへ流れる電流は、漏れ電流である。この漏れ電流の測定の一例として、ドレインに所定の電圧を印加する。このとき、ゲートはソースと短絡され、または、ゲートには0Vが印加される。
【0029】
ゲートには、ゲート電圧切替えに伴い過渡的に流れるものを除けば電流が流れないことが理想である。このため、ゲートを流れる電流は、電圧の印加状態によらず「漏れ電流」となる。こちらも、ドレインとソースとを短絡するか、またはドレイン・ソース間電圧を0Vとするなどで測定可能である。漏れ電流の測定は、例えば、絶対最大定格電圧を印加した際に流れる電流値を測定する。
【0030】
図1は本実施の形態の特徴的な部分のみを記載したものである。すなわち、図1に示す4つの工程は、本実施の形態の半導体装置の製造方法のうち、本実施の形態の半導体装置の検査方法の主要な工程を表したものである。
【0031】
ここでは、検査工程として漏れ電流を測定する工程のみを図示しているが、実際の検査工程では漏れ電流の他にも様々な特性検査が行われる。検査される特性としては、例えば、半導体素子がMOSFETであれば、サブスレッショルド特性、伝達特性、出力特性およびゲート絶縁膜信頼性などが挙げられる。実際の選別では、これら全ての特性の検査が良品判定であり、さらに、本実施の形態では、漏れ電流の変化率が一定以上となるチップを良品として選別する良品判定を行う。すなわち、一連の製造工程の中に、図1に示す4つの検査工程が含まれていればよい。
【0032】
半導体素子の温度を変化させるには、半導体素子を乗せるステージの温度を変化させる方法と、既に別の温度となっているステージに半導体素子を移動させる方法との2通りがある。いずれにしても半導体素子の温度変化には時間がかかるため、まず第1温度にて漏れ電流を含めた全て特性を測定し、第2温度まで変化させた後、再度漏れ電流を含めた全ての特性を測定するのが望ましい。
【0033】
温度1℃変化当たりの漏れ電流の変化率Rは、温度T1の時の漏れ電流をI1、温度T2の時の漏れ電流をI2とすると、図2に示す式1で表される。ただし、式1では、T2>T1とする。仮にこの値が1.01となった場合は、1℃の上昇につき漏れ電流が1.01倍になることを意味する。
【0034】
次に、本実施の形態のより具体的な製造工程について、図3を用いて説明する。
【0035】
ここでは、まず、半導体ウエハ(以下、単にウエハと呼ぶ)に、半導体素子(デバイス)を形成する(ステップS11)。すなわち、円板状のウエハを用意した後、周知の方法を用いて、半導体素子を半導体ウエハに形成する。半導体素子は、変形例において後述するように、ダイオードまたはMOSFETなどであり、各素子は、ウエハ内の半導体領域、または、当該半導体領域と半導体基板上の電極などとの組み合わせにより構成される。
【0036】
ウエハの主面には、規定のレイアウトで1または複数の半導体素子が形成された領域であって、後のダイシング工程で1つのチップとなるチップ領域が、行列状に複数並んで配置される。
【0037】
次に、ウエハ状態(ダイシングしていない状態)のまま、第1温度にて漏れ電流を含めた全ての特性(半導体素子の諸特性)を測定する(ステップS12)。この工程内に、第1温度で漏れ電流を測定する工程(図1のステップS1)が含まれる。
【0038】
次に、第2温度にて漏れ電流を含めた全ての特性(半導体素子の諸特性)を測定する(ステップS13)。この工程内に、第2温度で漏れ電流を測定する工程(図1のステップS2)が含まれる。
【0039】
次に、多数のチップ領域が並ぶウエハから、それぞれのチップごとに切り分けるダイシングを行う(ステップS14)。すなわち、ウエハから、上記半導体素子を含むチップを切り出す。これにより、複数のチップが得られる。
【0040】
次に、ダイシングにて切り分けられた複数のチップから、良品チップのみを選別する(ステップS15)。この選別では、ステップS12およびステップS13で得られた2つの漏れ電流の値から、1℃当たりの漏れ電流変化率を算出(図1のステップS3)し、変化率が一定値以上のチップのみを良品として選別する(図1のステップS4)。
【0041】
ここではダイシング工程(ステップS14)の後に漏れ電流変化率の算出(図1のステップS3)および良品チップの選別(図1のステップS4)を行うことについて説明した。ただし、漏れ電流変化率の算出および良品チップの選別はダイシング工程の前に行われてもよい。つまり、ダイシング工程前に、ウエハに並ぶ複数のチップ領域そのそれぞれが良品であるか否かを制御装置に記憶し、ダイシング工程後に、制御装置に記憶された情報に基づき、良品であるチップを仕分ける作業を行ってもよい。
【0042】
ステップS15において、漏れ電流変化率の他は、第1温度における漏れ電流の値が一定値未満かどうか、および、オン電圧が所定の範囲に収まっているかどうか、などを選別基準とし、全てを満たしたチップのみを次の工程に進める。
【0043】
次に、以上のようにして選別されたチップを、パッケージングする(ステップS16)具体的には、当該チップをディスクリートパッケージまたはモジュールに実装して組み立てる。ここでは、当該チップを、異なる用途の他のチップなどと共に同一パッケージ内に組み立てることが考えられる。以下では、チップをディスクリートパッケージまたはモジュールに実装して組み立てることを、パッケージングまたはモジュール組立と呼ぶ場合がある。このパッケージングにより、最終的な製品を製造する。ただし、ここで行うパッケージングで製造される部品(素子)は最終的な製品でなくてもよい。
【0044】
次に、最終的な製品の状態で、良品検査(製品検査)を実施する(ステップS17)。この良品検査では、電気的特性を含む諸特性の測定による当該製品の検査を行うことで、良品を選別する。
【0045】
以上の工程により、良品として選別された本実施の形態の半導体装置が完成する。
【0046】
<本実施の形態の効果>
改善の余地として上述したように、半導体装置の製造工程においては、所定の温度下でのみ検査を行う場合に、デバイス構造欠損による漏れ電流の増加を組立て前のチップの良品検査で判定することが困難である。このため、モジュール組立(パッケージング)前の良品検査工程の信頼性を向上させ、モジュール組立後の検査歩留を向上させることで、半導体装置の製造コストを低減することが重要である。
【0047】
本発明の効果の1つとして、モジュール組立後の製品検査工程の歩留(試験数に対する良品数の割合)が向上することが挙げられる。
【0048】
漏れ電流の変化率が一定値以上のチップのみを良品として選別する工程(図1のステップS4)において、良品と不良品とを分ける基準値は、実測データを基に決定することが望ましい。
【0049】
図4に、漏れ電流の測定結果の一例を示す。図4のグラフでは、縦軸を漏れ電流とし、横軸をウエハまたはチップの温度としている。ここでは、電流値の範囲は数桁に及ぶため、縦軸を対数軸としている。
【0050】
図4において白い丸で示したプロットは、温度が高くなるにつれて漏れ電流も増大する、正常品のものである。白い三角形のプロットは、比較的漏れ電流が大きいものの、温度依存性が上記白丸のプロットと同程度であるため、ばらつきの範囲内と考え、良品として選別できる。白い四角形のプロットは、25℃における漏れ電流がさらに大きいものの、温度依存性がなく、150℃における漏れ電流は白い三角形のプロットと同程度である。しかし、白い四角形のプロットのように、温度依存性がないということは、通常の漏れ電流モデルとは異なる要因で漏れ電流が流れている可能性が疑われるため、本実施の形態においては不良品と判定する。
【0051】
電流変化率の判定基準値は、実測データを基に決定する際には、図5に示すような統計データを用いることが考えられる。図5は、1℃当たりの電流変化率の統計データの一例であり、横軸は電流変化率、縦軸はその電流変化率の発生頻度である。製品の量産においては多数のデータが取得でき、全てが同一の設計下で製造された場合は、全体の平均値付近が最大頻度となり、平均値から離れると裾を引くように発生頻度が低下することが多い。
【0052】
ここで、良品判定の基準値は、例えば、図5に示す値A1のように、大多数のサンプルが取る電流変化率の分布から離れた位置を絶対値で指定することができる。また、値A2のように、平均値から標準偏差の3倍離れた値で指定するなど、統計データから指定してもよい。
【0053】
つまり、あらかじめ複数の半導体素子から漏れ電流の第2変化率を複数取得する工程をさらに行う。具体的には、あらかじめ、複数の第2半導体素子を形成する工程を行う。そして、図1のステップS1~S3の工程を、それら複数の第2半導体素子のそれぞれに対し行う。つまり、第1温度で複数の第2半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第3漏れ電流を測定する工程、第2温度で複数の第2半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第4漏れ電流を測定する工程、第3漏れ電流に対する第4漏れ電流の第2変化率を算出する工程、をさらに有する。これにより、複数の第2変化率のサンプルが得られる。
【0054】
その後、第1半導体素子を形成する工程を行う。そして、図1のステップS1~S3の工程を、第1半導体素子に対し行う。つまり、第1温度で第1半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第1漏れ電流を測定する工程、第2温度で第1半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第2漏れ電流を測定する工程、第1漏れ電流に対する第2漏れ電流の第1変化率(比率)を算出する工程、を行う。そして、次に行う良品選別工程(図1のステップS4)では、複数の第2変化率の平均値と、第1変化率との差が、複数の第2変化率の標準偏差の3倍以下であるものを良品として選別する。
【0055】
半導体素子の漏れ電流は温度が高いほど大きくなる傾向があり、その変化率は、同一設計で製造された正常品であれば全て同じ値を取ることが理想となる。変化率がその値から大きく外れた場合は、何かしらの要因で漏れ電流の温度依存性が乱れていることが想定される。
【0056】
この要因としては、致命的にならない程度の機微な構造欠損または結晶欠陥などが挙げられる。例えば、第1温度での漏れ電流を多数のチップで測定すると一定のばらつきをもつことになり、全体平均よりやや大きめの漏れ電流値を示すチップも現れる。ただし、そのような大きめの漏れ電流値を示すチップが生じる原因が、製造プロセス上のばらつきであるのか、機微な構造欠損であるのか、判別は困難である。前者であれば問題ないが、後者の場合は、ウエハ状態での検査で合格してもパッケージング後の製品検査で不良となる可能性が高くなる。
【0057】
特に、複数のチップが共に搭載されるモジュールにおいては、他のチップまで巻き添えで廃棄される。また、チップをパッケージ内に実装する工程も無駄となる。このため、半導体装置の製造コストが増大する。
【0058】
こうした事態を防ぐには、第1温度とは異なる第2温度においても漏れ電流を測定し、漏れ電流の温度変化が正常品の傾向と異なるもの、すなわち、機微な構造欠損などによる漏れ電流の疑いがあるものを振るい落とすことが有効である。そこで、本実施の形態では、図1に示すように、第1温度および第2温度のそれぞれの条件で、所定の電圧を半導体素子に印加した際の漏れ電流を測定し、これにより得られた2つの漏れ電流の比率を算出した後、当該比率が一定値以上のチップを良品として選別している。
【0059】
これにより、パッケージング後の製品検査で不良となる原因を備えたチップを、パッケージング前の段階で良品でないものとして判別することができる。したがって、パッケージング後の検査歩留を向上させることができる。また、複数のチップが共に搭載されるモジュールにおいては、組立て後に他のチップが巻き添えで廃棄されることを防ぐことができる。また、パッケージング後の製品検査で不良となる原因を備えたチップを、パッケージ内に実装する工程を省略することができる。
【0060】
以上により、本実施の形態では、チップのモジュール内への組立前の良品検査工程の信頼性を向上させ、モジュール組立後の検査歩留を向上させることができ、これにより、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0061】
<変形例1>
ここで、チップに設けられた半導体素子が、ダイオードである場合について図6を用いて説明する。図1および図3を用いて説明した工程を行う点は、上述した実施の形態と同様である。図6は、本実施の形態の変形例1である半導体装置の製造方法に係るダイオードの構造を示す断面図である。
【0062】
図6に示すように、ダイオードはN型の半導体基板1を有し、半導体基板1上には、順にN型の半導体層2、P型の半導体層3およびアノード電極4が積層されている。また、半導体基板1の下面は、カソード電極5により覆われている。
【0063】
アノード電極4とカソード電極5との間にPN接合の電位障壁を超える正電圧が印加されると、半導体基板1およびN半導体層2に対して半導体層3の電位が高くなるため、アノード電極4からカソード電極5に向かって電流が流れる。
【0064】
アノード電極4とカソード電極5との間に負電圧が印加されると、電位障壁がより大きくなる方向に働き、電流は流れない。しかし実際には、ナノアンペアまたはそれ以下の微細な電流が流れており、これを漏れ電流と呼ぶ。負電圧が大きくなると漏れ電流も大きくなり、半導体層2および3のそれぞれの厚さ、または不純物濃度などにより決まる限界以上の電圧を印加すると、ダイオードが破壊される。
【0065】
半導体素子は、使用電圧を定め、それに基に設計、製造されるものであり、使用可能な最大電圧は定格電圧または絶対最大定格と呼ばれる。しかし、定格電圧以下の電圧を印加した場合も、PN接合に穴が空くなどの構造欠損がある場合はダイオードとして使用できないため、製品として出荷する前に検査を行い、良品のみを選別する。
【0066】
耐電圧に対する選別では、所定の電圧を印加した際に流れる漏れ電流が、事前に定められた合否判断基準値を超えたものを不良品とするのが通常である。これにより、構造欠損などにより大きな漏れ電流が流れたものは振るい落とされる。しかし、構造欠損の程度によっては基準値以下の漏れ電流に収まることもあり、その場合は検査を通過し、他の検査項目も合格となった場合はパッケージングされる。このように、漏れ電流が基準値内に収まる程度の機微な構造欠損であっても、パッケージング後の製品検査で不良となることがある。本実施の形態では、機微な構造欠損と、単なる製造ばらつきにより漏れ電流が高めになったものとを区別することができるため、製品検査の不良率が下がり、歩留が向上する。
【0067】
本変形例のように、半導体素子がダイオードである場合でも、図1図5を用いて説明した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
<変形例2>
チップに設けられた半導体素子が、MOSFETである場合について図7を用いて説明する。ここでも、図1および図3を用いて説明した工程を行う。図7は、本実施の形態の変形例2である半導体装置の製造方法に係るMOSFETの構造を示す断面図である。
【0069】
図7に示すように、MOSFETは、P型の半導体基板12を有し、半導体基板12の上面(主面)には、半導体基板12内に亘ってN型の半導体層13が、互いに並んで形成されている。互いに離間して隣り合う半導体層13同士の間の半導体基板12上には、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極15が形成されている。隣り合う半導体層13のうち、一方は、半導体基板12上に形成されたソース電極16に電気的に接続され、他方は、半導体基板12上に形成されたドレイン電極17に電気的に接続されている。また、半導体基板12の下面には、基板側電極18に接続されている。
【0070】
ゲート電極15とソース電極16との間にしきい値電圧以上の正電圧が印加されると、ゲート絶縁膜14近傍の半導体基板12にNチャネル領域が形成され、ドレイン電極17とソース電極16との間に電流が流れる。基板側電極18は、ソース電極16と電気的に接続して、さらにゼロ電位点に接続する。
【0071】
ゲート電圧が一定値未満あるいは負の場合は、Nチャネル領域が形成されないため、ドレインからソース、およびソースからドレインへの経路において、電流は流れない。しかし実際には、ダイオードと同様にナノアンペアまたはそれ以下の微細な漏れ電流が流れ、ドレインとソースとの間に物性的な限界を超える大きな電圧が印加されると、MOSFETが破壊される。したがって、定格電圧を定め、良品検査を実施する。
【0072】
MOSFETはダイオードと異なり3つの端子があり、残る1つであるゲートは、電極下に絶縁膜があるため、ゲートからソースへも、ゲートからドレインへも電流が流れないことが理想である。そのため、ゲートの漏れ電流についても良品検査が実施する。その一例としては、ドレインとソースとの間の電位差を0Vとするか、またはドレインとソースとを電気的に短絡し、ゲートとソースとの間に正電圧および負電圧の双方を印加して漏れ電流を測定する。
【0073】
本変形例のように、半導体素子がMOSFETである場合でも、図1図5を用いて説明した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
<変形例3>
チップに設けられた半導体素子が、縦型MOSFETである場合について図8を用いて説明する。ここでも、図1および図3を用いて説明した工程を行う。図8は、本実施の形態の変形例3である半導体装置の製造方法に係る縦型MOSFETの構造を示す断面図である。ここで説明に用いる縦型MOSFETは、DMOSFET(Double-Diffusion MOSFET)構造を有する。
【0075】
図8に示すように、縦型MOSFETは、N型の半導体基板24を有しており、半導体基板24上には、N型の半導体層19が形成されている。半導体層19の上面(主面)には、半導体層19内に亘ってP型の半導体層20が、互いに離間して並んで形成されている。それぞれの半導体層20の上面には、半導体層20内に亘ってN型の半導体層13が形成されている。水平方向において互いに隣り合う半導体層13同士の間に形成された半導体層19、20のそれぞれの上には、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極15が形成されている。隣り合う半導体層13のそれぞれは、半導体層19上に形成されたソース電極16に電気的に接続されている。また、半導体基板24の下面は、ドレイン電極17に接続されている。
【0076】
変形例2のMOSFETと同様に、ゲート電極15とソース電極16との間にしきい値電圧以上の正電圧が印加されると、ゲート絶縁膜14近傍の半導体層20内にNチャネル領域が形成され、ドレイン電極17とソース電極16と間に電流が流れる。
【0077】
ゲート電圧が一定値未満または負の場合はNチャネル領域が形成されないため、ドレインからソースへは電流は流れず、正常であれば僅かな漏れ電流のみが流れる。ただし、変形例2のMOSFETとは異なり、DMOSFETはソース電極16をアノード、ドレイン電極17をカソードとする内蔵ダイオードを有しており、ソースからドレインに向かっては電流が流れるため、これは漏れ電流ではない。
【0078】
本変形例のように、半導体素子がDMOSFETである場合でも、図1図5を用いて説明した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
<変形例4>
チップに設けられた半導体素子が、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である場合について図9を用いて説明する。ここでも、図1および図3を用いて説明した工程を行う。図9は、本実施の形態の変形例4である半導体装置の製造方法に係るIGBTの構造を示す断面図である。図8に示した縦型MOSFETとの差は、N型の半導体基板24の代わりにP型の半導体基板21があることと、ソース電極およびドレイン電極がそれぞれエミッタ電極22、コレクタ電極23に名を変えることである。
【0080】
すなわち、図9に示すように、IGBTは、P型の半導体基板21を有しており、半導体基板21上には、N型の半導体層19が形成されている。半導体層19の上面(主面)には、半導体層19内に亘ってP型の半導体層20が、互いに離間して並んで形成されている。それぞれの半導体層20の上面には、半導体層20内に亘ってN型の半導体層13が形成されている。水平方向において互いに隣り合う半導体層13同士の間に形成された半導体層19、20のそれぞれの上には、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極15が形成されている。隣り合う半導体層13のそれぞれは、半導体層19上に形成されたエミッタ電極22に電気的に接続されている。また、半導体基板21の下面は、コレクタ電極23に接続されている。
【0081】
変形例3の縦型MOSFETと同様に、ゲート電極15とエミッタ電極22との間にしきい値電圧以上の正電圧が印加されると、ゲート絶縁膜14近傍の半導体層20内にNチャネル領域が形成され、コレクタ電極23からエミッタ電極22に向かって電流が流れる。ゲート電圧が一定値未満あるいは負の場合も同様に、Nチャネル領域が形成されないため、コレクタからエミッタへの電流は流れず、正常であれば僅かな漏れ電流のみが流れる。
【0082】
また、P型の半導体基板21があることから、エミッタからコレクタに向かってはN型半導体からP型半導体への接続がある。よって、ゲート電圧の印加状態によらず、エミッタからコレクタに向かう電流は流れず、正常であれば僅かな漏れ電流のみが流れる。図8に示す縦型MOSFETには存在した内蔵ダイオードは、IGBTには存在しない。
【0083】
本変形例のように、半導体素子がIGBTである場合でも、図1図5を用いて説明した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
<変形例5>
図3では、半導体素子形成後にウエハ状態で諸特性の測定を行い、その後ダイシングを行う場合について説明したが、本変形例ではその順序を入れ替える場合について、図10を用いて説明する。図10は、実施の形態1の変形例5である半導体装置の製造方法を示すフローである。
【0085】
図10に示すフローでは図3に示すフローとは異なり、半導体素子形成(ステップS11)の後に、順にダイシング(ステップS14)、第1温度で諸特性の測定(ステップS12)、および第2温度で諸特性の測定(ステップS13)を行っている。また、その後、良品チップの選別(ステップS15)、パッケージング(ステップS16)および製品検査(ステップS17)を順に行っている。
【0086】
本変形例では、ダイシング後に測定(ステップS12、S13)を実施することによって、ダイシングにおいて発生する不良も振るい落とすことができる。よって、本実施の形態では、前記実施の形態1に比べ、製品検査(ステップS17)の歩留がさらに向上する。ただし、ダイシング後におけるチップの全数測定は、ウエハ状態で行う場合に比べて検査に時間がかかることがあるため注意が必要である。
【0087】
<変形例6>
変形例5では、ダイシング後に測定することによって最後の製品検査での歩留向上を実現できる。ただし、検査設備によってはダイシング後のチップの全数測定には多大な時間を要する。そこで、本変形例では、ウエハ状態で従来通りの測定を実施し、ダイシング後に一度ウエハ状態での測定結果を基に良品選抜を行った後、チップ状態の測定を実施し、フロー全体での所要時間を短縮することについて、図11を用いて説明する。図11は、実施の形態1の変形例6である半導体装置の製造方法を示すフローである。
【0088】
図11に示すフローでは図10に示すフローとは異なり、半導体素子形成(ステップS11)の後、ダイシング工程(ステップS14)の前に、ウエハ状態での測定(ステップS18)を行っている。ステップS18では、半導体素子の電気的特性の測定による諸特性を測定するが、図1で説明した第1温度および第2温度における漏れ電流の測定は行わない。
【0089】
ダイシング工程の後には、1回目の良品チップの選別を行う(ステップS19)。この選別は、半導体素子の諸特性の測定(ステップS18)の結果に基づいて行うものである。
【0090】
次に、第1温度で諸特性の測定(ステップS12)、第2温度で諸特性の測定(ステップS13)、2回目の良品チップの選別(ステップS15)、パッケージング(ステップS16)および製品検査(ステップS17)を順に行う。2回目の良品チップの選別(ステップS15)では、第1温度で諸特性の測定(ステップS12)および第2温度で諸特性の測定(ステップS13)の結果に基づき、漏れ電流変化率を算出し、この変化率(比率)が一定値以上のチップのみを良品として選別する。
【0091】
つまり、本実施の形態の主眼である、漏れ電流変化率算出に必要な測定は、ダイシング後に行えば問題ない。このように、ここでは、漏れ電流変化率算出に必要な測定以外の諸特性の測定(ステップS18)と、その測定結果に基づく良品選別(ステップS19)とをダイシング工程の前に行っている。これにより、変形例5に比べ、半導体装置の製造工程全体での所要時間を短縮することができる。よって、半導体装置の製造コストを低減できる。
【0092】
(実施の形態2)
本実施の形態は、漏れ電流の温度変化の指標として、活性化エネルギーと呼ばれる値を用いたものである。
【0093】
活性化エネルギーとは本来、とある化学変化に必要なエネルギーのことで、縦軸を対数軸の反応速度、横軸を絶対温度の逆数とした場合の直線の傾きで表されるものである。これに対し、半導体素子の漏れ電流においても、縦軸を対数軸の漏れ電流、横軸を絶対温度の逆数とすることによって、見かけ上の活性化エネルギーが算出できる。この場合の活性化エネルギーは、一定以上の漏れ電流が流れるのに必要なエネルギー、と捉えることができる。
【0094】
温度が高いほど漏れ電流が大きくなるのは温度によってエネルギーが与えられるためである。活性化エネルギーが小さいチップは、一定以上の漏れ電流が流れるのに必要なエネルギーが小さいといえる。これは、機微な構造欠損など何らかの要因で漏れ電流が流れやすいということを意味する。そのため、活性化エネルギーが一定値以上のチップのみを良品として選別する手法も、パッケージング後の製品検査歩留の向上に対して有効である。
【0095】
図12は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の概要を示すフローである。すなわち、図12に示す4つの工程は、本実施の形態の半導体装置の製造方法のうち、本実施の形態の半導体装置の検査方法の主要な工程を表したものである。
【0096】
本実施の形態では、図12のステップS21およびステップS22に示すように、半導体素子に対し、順に、第1温度での漏れ電流測定と、第2温度での漏れ電流測定とを行う。
【0097】
次に、ステップS21で測定した第1漏れ電流とステップS22で測定した第2漏れ電流とから活性化エネルギーを算出する工程を行う(ステップS23)。
【0098】
次に、活性化エネルギーが一定値以上のチップのみを良品として選別する(ステップS24)。
【0099】
前記実施の形態1のように漏れ電流変化率を基準とする場合と同様に、一連の工程(例えば、図3に示す工程)の中に、図12に示す上記4つの工程(ステップS21~S24)が含まれていればよい。
【0100】
次に、活性化エネルギーと漏れ電流変化率と温度との関係について、図13図16を用いて説明する。
【0101】
図13は、漏れ電流の測定結果の一例である。図13に示すグラフの縦軸は、漏れ電流の電流値である。ここでは、当該電流値の範囲は数桁に及ぶため、縦軸を対数軸としている。また、横軸は絶対温度の逆数である。このため、グラフの左側の方が温度が高い。当該グラフでは、図4と同様に白い丸のプロット、白い三角形のプロット、および、白い四角形のプロットを示しており、それらのグラフのそれぞれの3点のプロットは、左から順に、150℃、75℃、25℃である。
【0102】
図13に示す特性曲線を直線近似した場合に、その傾きが活性化エネルギーの値となる。このとき、活性化エネルギーと電流と温度の関係は図14に示す式2で表される。式2において、I0は切片、eは自然対数の底、Eaは活性化エネルギー、kはボルツマン定数である。I1は温度T1において測定された漏れ電流であり、I2は温度T2において測定された漏れ電流である。また、T1、T2は絶対温度である。
【0103】
図15に、横軸を電流変化率とし、縦軸を活性化エネルギーとするグラフを示す。また、図16に、活性化エネルギーと漏れ電流の変化率Rと温度の関係は図16に示す式3で表される。
【0104】
漏れ電流の温度による変化率Rと、活性化エネルギーEaとの間には、図15および図16に示すような相関がある。変化率が1.0の場合、すなわち漏れ電流が温度に依存しない場合は、活性化エネルギーはゼロとなる。
【0105】
変化率が1倍以下であり、活性化エネルギーが負である場合は、温度によるエネルギーを与えなくとも一定以上の漏れ電流が発生するということであり、何らかの漏れ電流要因がある可能性が強い。このため、仮に漏れ電流値が基準値を満たしていても振るい落とすべきである。ここでは、例えば、活性化エネルギーが0.1eV以上のものを良品として選別する。
【0106】
前記実施の形態1のように漏れ電流の比率(変化率)を良品選別の基準としなくとも、本実施の形態では、図12を用いて説明したように、活性化エネルギーを基準として良品を選別することで、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0107】
(実施の形態3)
前記実施の形態1では、異なる温度において、半導体素子に所定の電圧を印加した際の漏れ電流をそれぞれ測定し、これにより得られた2以上の漏れ電流の比率を基準として良品選別を行った。これに対し、異なる温度において、半導体素子に所定の漏れ電流を流した際の電圧をそれぞれ測定し、これにより得られた2以上の電圧の比率(変化率)を基準として良品選別することも可能である。言い換えれば、本実施の形態は、理想的には電流が流れないものに対して一定以上の漏れ電流を流すのに必要な電圧を測定するものである。
【0108】
図17は、本実施の形態の半導体装置の製造方法の概要を示すフローである。すなわち、図17に示す4つの工程は、本実施の形態の半導体装置の製造方法のうち、本実施の形態の半導体装置の検査方法の主要な工程を表したものである。
【0109】
本実施の形態では、図17のステップS31およびステップS32に示すように、半導体素子に対し、順に、第1温度で所定の漏れ電流を流した際の印加電圧(第2電圧)の測定と、第2温度で当該所定の漏れ電流を流した際の印加電圧(第3電圧)の測定とを行う。つまり、ステップS31およびステップS32で流す漏れ電流の値は同一である。
【0110】
ステップS31およびステップS32での測定は、一定の電流を流し続けることができる電流源駆動による測定が望ましい。測定対象の破壊を防ぐため、ごくわずかな時間のみ電流を流すことが考えられる。ただし、本来電流が流れないということは、静電容量をもつものであり、端子間が充電されないままに測定すると誤った値を取得することになるため注意が必要である。
【0111】
ここで測定する電圧は、例えばダイオードではアノード電圧、MOSFETではドレイン電圧、IGBTではエミッタ電圧とすることが考えられるが、それらの半導体素子において、別の箇所に印加する電圧としてもよい。
【0112】
次に、ステップS31で測定した第2電圧とステップS32で測定した第3電圧との比率を算出する工程を行う(ステップS33)。ここでは、上記2つの電圧値を用いて、単位温度当たりの電圧の変化率を算出する。具体的には、例えば、1℃当たりの電圧の変化率を算出する。
【0113】
電圧が大きいほど漏れ電流も大きくなるため、所定の電圧を印加した際の漏れ電流が大きいということは、より小さな電圧で規定の漏れ電流に到達することを意味する。この、電圧を基準とする場合においても、正常品であれば一定以上の温度依存性を有するため、その温度による電圧変化率を算出する。この変化率(比率)は、ステップS31での測定結果である第2電圧に対する、ステップS32での測定結果である第3電圧の変化率(比率)である。
【0114】
次に、比率(電圧の変化率)が一定値以下のチップのみを良品として選別する(ステップS34)。ここでいう一定値は、例えば、実測データを基に予め決定された値とする。
【0115】
前記実施の形態1のように漏れ電流変化率を基準とする場合と同様に、一連の工程(例えば、図3に示す工程)の中に、図17に示す上記4つの工程(ステップS31~S34)が含まれていればよい。
【0116】
半導体素子の温度を変化させるには、半導体素子を乗せるステージの温度を変化させる方法と、既に別の温度となっているステージに半導体素子を移動させる方法との2通りがある。いずれにしても半導体素子の温度変化には時間がかかるため、まず第1温度にて本実施の形態に係る電圧を含めた全ての特性を測定し、第2温度まで変化させた後に再度測定するのが望ましい。
【0117】
この電圧値は温度が高いほど低くなり、電圧変化率は1.0以下が基本である。このため、電圧変化率の値としては、温度依存性が大きいほど低く、温度依存性が小さいほど高くなる。したがって、この電圧変化率が一定値以下のものを良品として選別する。
【0118】
本実施の形態では、異なる温度条件において、同一の漏れ電流を流した際の電圧をそれぞれ測定し、それらの電圧の比率(変化率)を基準として良品を選別することで、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0119】
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0120】
その他、実施の形態に記載された内容の一部を以下に記載する。
【0121】
(付記1)(a)半導体素子を形成する工程、
(b)第1温度で前記半導体素子に第1電圧を印加した際に流れる第1漏れ電流を測定する工程、
(c)第2温度で前記半導体素子に前記第1電圧を印加した際に流れる第2漏れ電流を測定する工程、
(d)前記(a)、(b)および(c)工程の後、前記第1漏れ電流および前記第2漏れ電流から、活性化エネルギーを算出する工程、
(e)前記(d)工程の後、前記活性化エネルギーが一定値以上の前記半導体素子を良品として選別する工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【0122】
(付記2)(付記1)の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程では、前記活性化エネルギーが0,1eV以上の前記半導体素子を良品として選別する、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0123】
1、12、21、24 半導体基板
2、3、13.20 半導体層
4 アノード電極
5 カソード電極
14 ゲート絶縁膜
15 ゲート電極
16 ソース電極
17 ドレイン電極
18 基板側電極
22 エミッタ電極
23 コレクタ電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17