(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】コネクタセット
(51)【国際特許分類】
H01R 13/73 20060101AFI20240312BHJP
H01R 13/64 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01R13/73 F
H01R13/64
(21)【出願番号】P 2020098616
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 知之
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知由
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 直人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博司
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-187911(JP,A)
【文献】実開平05-072076(JP,U)
【文献】特表2015-520474(JP,A)
【文献】実開昭63-009781(JP,U)
【文献】独国実用新案第202018105641(DE,U1)
【文献】米国特許第7090533(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/56-13/72
H01R13/73-13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の取付板に設けられた貫通孔に挿入された状態にて前記取付板に取り付けられる第1コネクタと、前記第1コネクタに嵌合される第2コネクタと、を有するコネクタセットであって、
前記第1コネクタは、
当該第1コネクタの前記取付板への取付途中に前記貫通孔の開口縁から離れる向きに弾性変形し、且つ、当該第1コネクタの前記取付板への取付完了時に前記開口縁に近付く向きに弾性回復することによって前記開口縁に係止される、係止部を有し、
前記第2コネクタは、
前記第1コネクタとの嵌合の際、前記開口縁から離れる向きに弾性変形している前記係止部に嵌合方向において干渉し、且つ、前記開口縁に係止されている前記係止部に前記嵌合方向において干渉しないことにより、前記第1コネクタの前記貫通孔への取付状態を検知する、検知部を有
し、
前記第1コネクタは、
前記貫通孔に挿入された後に前記取付板の板面に沿う向きに回転されることによって前記貫通孔に取り付けられ、
前記係止部は、
前記第1コネクタの回転に伴って前記開口縁に設けられた被係止部に係止される、
コネクタセット。
【請求項2】
請求項1
に記載のコネクタセットにおいて、
前記検知部は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合完了時、前記開口縁に係止されている前記係止部に前記係止部の変形方向において干渉し、前記開口縁から離れる向きに前記係止部が変形することを妨げる、
コネクタセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1コネクタと第2コネクタとを備えるコネクタセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の車体パネルのような板状の取付板に設けられた貫通孔に挿入及び係止されるコネクタが提案されている。例えば、従来のコネクタの一つは、コネクタ本体部の外周面から突出する複数の係止用突起を有しており、これら複数の係止用突起を貫通孔の開口縁に係止させることにより、コネクタがパネルから分離することを防止するようになっている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコネクタは、係止用突起が貫通孔の開口縁に十分に係止されていない場合、取付板から意図せず分離する可能性がある。更に、そのように係止用突起と開口縁との係止が不十分な状態で相手側コネクタとの嵌合がなされ、適正な嵌合状態を実現できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的の一つは、取付板への適正な取り付けが可能であり且つ適正な嵌合が可能なコネクタセットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタセットは、下記[1]~[2]を特徴としている。
[1]
板状の取付板に設けられた貫通孔に挿入された状態にて前記取付板に取り付けられる第1コネクタと、前記第1コネクタに嵌合される第2コネクタと、を有するコネクタセットであって、
前記第1コネクタは、
当該第1コネクタの前記取付板への取付途中に前記貫通孔の開口縁から離れる向きに弾性変形し、且つ、当該第1コネクタの前記取付板への取付完了時に前記開口縁に近付く向きに弾性回復することによって前記開口縁に係止される、係止部を有し、
前記第2コネクタは、
前記第1コネクタとの嵌合の際、前記開口縁から離れる向きに弾性変形している前記係止部に嵌合方向において干渉し、且つ、前記開口縁に係止されている前記係止部に前記嵌合方向において干渉しないことにより、前記第1コネクタの前記貫通孔への取付状態を検知する、検知部を有し、
前記第1コネクタは、
前記貫通孔に挿入された後に前記取付板の板面に沿う向きに回転されることによって前記貫通孔に取り付けられ、
前記係止部は、
前記第1コネクタの回転に伴って前記開口縁に設けられた被係止部に係止される、
コネクタセットであること。
[2]
上記[1]に記載のコネクタセットにおいて、
前記検知部は、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの嵌合完了時、前記開口縁に係止されている前記係止部に前記係止部の変形方向において干渉し、前記開口縁から離れる向きに前記係止部が変形することを妨げる、
コネクタセットであること。
【0007】
上記[1]の構成のコネクタセットによれば、第1コネクタが有する係止部が、第1コネクタの取付板への取付途中に貫通孔の開口縁から離れる向きに弾性変形し、且つ、第1コネクタの取付板への取付完了時に開口縁に近付く向きに弾性回復することによって開口縁に係止される。更に、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合の際、第2コネクタが有する検知部が、開口縁から離れる向きに弾性変形している係止部に嵌合方向において干渉し、且つ、開口縁に係止されている係止部に嵌合方向において干渉しないことにより、第1コネクタの貫通孔への取付状態を検知する。よって、検知部が係止部に嵌合方向において干渉することで、第1コネクタが取付板に適正に取り付けられていないときには、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合が完了しないことになる。したがって、本構成のコネクタセットは、取付板への第1コネクタの適正な取り付けが可能であり、且つ、第1コネクタと第2コネクタとの適正な嵌合が可能である。
【0008】
更に、上記[1]の構成のコネクタセットによれば、第1コネクタは、貫通孔に挿入された後に取付板の板面に沿う向きに回転されることにより、貫通孔に取り付けられる。更に、係止部は、第1コネクタの回転に伴い、開口縁に設けられた被係止部に係止される。よって、係止部と被係止部との係合により、第1コネクタが取付板に取り付けられた後、第1コネクタが貫通孔から分離する向きに第1コネクタが意図せず回転することが抑制される。
【0009】
上記[2]の構成のコネクタセットによれば、検知部は、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合完了時、開口縁に係止されている係止部に係止部の変形方向において干渉し、開口縁から離れる向きに係止部が変形することを妨げる。よって、貫通孔の開口縁と係止部との係合が意図せず解除されることが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、取付板への適正な取り付けが可能であり且つ適正な嵌合が可能なコネクタセットを提供できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るコネクタセットの側面図である。
【
図2】
図2(a)は、車体パネルへの取付完了の状態にある
図1に示す第1コネクタの斜視図であり、
図2(b)は、
図1に示す第2コネクタの斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、車体パネルへの取付途中の状態にある第1コネクタの正面図であり、
図3(b)は、車体パネルへの取付完了の状態にある第1コネクタの正面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3(b)のB-B断面図であり、
図4(b)は、
図3(b)のC-C断面図である。
【
図5】
図5(a)は、車体パネルへの取付完了の状態にある第1コネクタの
図1のA-A断面に相当する図であり、
図5(b)は、
図5(a)のD部の拡大図である。
【
図7】
図7は、車体パネルへの取付途中の状態にある第1コネクタの径方向内側に弾性変形した係止アームと、第2コネクタの検知片とが、嵌合方向において干渉する様子を示す
図6(b)に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るコネクタセット3について説明する。
図1に示すように、コネクタセット3は、車体パネル4に設けられた貫通孔31(
図2(a)及び
図3等参照)に挿入された状態にて車体パネル4に取り付けられる第1コネクタ1と、第1コネクタ1に嵌合される第2コネクタ2と、を有する。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1における「左右方向」(第1コネクタ1と第2コネクタ2とが嵌合する方向)を「嵌合方向」と呼び、車体パネル4について、
図1の左側及び右側をそれぞれ「表側」及び「裏側」と呼ぶ。第1コネクタ1及び第2コネクタ2の各々について、相手側のコネクタが嵌合する嵌合方向正面側を「前側」とし、その反対の嵌合方向背面側を「後側」とする。
【0015】
図3(b)に示すように第1コネクタ1を前側からみたとき(車体パネル4を表側からみたとき)において、
図3(b)における「上下方向」、「左右方向」、「上」、「下」、「左」及び「右」をそれぞれ、「上下方向」、「左右方向」、「上」、「下」、「左」及び「右」と呼び、車体パネル4の貫通孔31の周方向における「反時計回り側」及び「時計回り側」をそれぞれ、周方向の「一側」及び「他側」と呼び、貫通孔31の径方向の「内側」及び「外側」をそれぞれ、径方向の「内側」及び「外側」と呼ぶ。「嵌合方向」、「上下方向」及び「左右方向」は、互いに直交している。
【0016】
まず、車体パネル4について説明する。金属製又は樹脂製の車体パネル4は、例えば、車両のヘッドライトを支持する部材の一部であり、本例では、
図1、
図2(a)及び
図3に示すように、平板である。車体パネル4には、板厚方向(嵌合方向)に貫通する円形の貫通孔31が形成されている。貫通孔31には、第1コネクタ1のハウジング10の後述する本体部11が挿入される。
【0017】
貫通孔31の開口縁には、径方向外側に窪んだ複数の凹部32が、周方向に等間隔で並ぶように設けられている。本例では、
図3に示すように、4つの凹部32が、貫通孔31の中心軸に対して右上、右下、左下及び左上にそれぞれ設けられている。右上の凹部32のみの周方向長さが、他の3つの凹部32の周方向長さより長い。これによる作用については後述する。他の3つの凹部32は同形である。凹部32には、ハウジング10の後述するリブ35が挿入される。以下、右上の凹部32を「凹部32a」と呼び(
図3等参照)、右下の凹部32の周方向他側の(径方向に延びる)端縁を「係止縁32b」と呼ぶことがある(
図3等参照)。
【0018】
車体パネル4の表側面において、左上の凹部32の周方向他側に隣接する位置には、左上の凹部32の周方向他側の端縁から連続して表側に突出するストッパ33が形成され、右下の凹部32の周方向他側に隣接する位置には、右下の凹部32の周方向他側の端縁(係止縁32b)から連続して表側に突出するストッパ34が形成されている。ストッパ34の周方向長さは、ストッパ33の周方向長さより長い。車体パネル4の表側面において、貫通孔31の開口縁の上下端に隣接する位置には、表側に突出し且つ径方向外側に延びるリブ35がそれぞれ形成されている。ストッパ33,34及び一対のリブ35の作用については後述する。
【0019】
次いで、第1コネクタ1について説明する。第1コネクタ1は、
図2(a)に示すように、樹脂製のハウジング10と、ハウジング10に収容される複数の金属製の第1端子(オス端子、図示省略)と、を備える。ハウジング10は、嵌合方向に延びる円柱状の本体部11と、本体部11の前端面から前方に延びる矩形筒状のフード部12と、を備える。フード部12の内部空間には、第2コネクタ2の後述するハウジング20(嵌合部22)が挿入される。
【0020】
本体部11には、
図3等に示すように、複数の端子収容孔13が、嵌合方向に貫通し、且つ、フード部12の内部空間と連通するように形成されている。複数の端子収容孔13には、複数の電線(図示省略)の端末にそれぞれ接続された複数の第1端子が、後側から挿入され収容されている。第1端子(オス端子)の先端部は、フード部12の内部空間内に位置している。
【0021】
本体部11の外周面の後端部には、
図1に示すように、径方向外側に突出するフランジ部14が形成されている。フランジ部14は、円環状又は部分円環状、且つ、平板状の形状を有する。本体部11の外周面におけるフランジ部14から車体パネル4の板厚分だけ前側の位置には、車体パネル4の4つの凹部32に対応して、径方向外側に突出する4つの凸部15が、周方向に等間隔で並ぶように設けられている。本例では、
図3(b)に示すように、4つの凸部が、本体部11の中心軸に対して上側、右側、下側及び左側にそれぞれ設けられている。
【0022】
フランジ部14及び4つの凸部15は、車体パネル4の貫通孔31に挿入されて取り付けられるハウジング10(本体部11)の車体パネル4に対する嵌合方向の取付位置を規定する機能を果たす。ハウジング10の成形時の型抜き性を考慮すると、フランジ部14は、4つの凸部15が存在しない周方向領域内にて周方向に延びる部分円環状の形状を有することが好ましい。
【0023】
凹部32aに対応して、上側の凸部15のみの周方向長さが、他の3つの凸部15の周方向長さより長い。以下、上側の凸部15を「凸部15a」と呼ぶことがある(
図3(b)参照)。嵌合方向からみて、凸部15(15a)の形状は、凹部32(32a)の形状に対応している。
【0024】
図4(a)に示すように、上側の凸部15(15a)の後端面の周方向中央位置には、車体パネル4の上側のリブ35に対応して、径方向に延びる溝15bが形成されている。上側の凸部15(15a)の後端面の溝15bより周方向一側の部分は、周方向一側に進むにつれて前側に位置する向きに傾斜するテーパ面15cとなっている。同様に、
図4(b)に示すように、下側の凸部15の後端面の周方向中央位置にも、車体パネル4の下側のリブ35に対応して、径方向に延びる溝15bが形成されている。下側の凸部15の後端面の溝15bより周方向一側の部分も、周方向一側に進むにつれて前側に位置する向きに傾斜するテーパ面15cとなっている。テーパ面15cを設けることによる作用については後述する。
【0025】
本体部11の外周面における本体部11の中心軸に対して右下の位置には、
図3(b)に示すように、径方向内側に窪む凹部16が形成されている。凹部16には、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合時、第2コネクタ2の後述する検知片24(
図2(b)参照)が挿入される。
【0026】
本体部11の外周面における凹部16の周方向一側の(径方向に延びる)端縁からは、片持ち梁状の係止アーム17が周方向他側に向けて延びている。係止アーム17は、径方向に弾性変形可能である。係止アーム17は、非弾性変形時において、
図3(b)に示すように、先端部を除いた部分が凹部16の内部を周方向に横断すると共に、先端部が凹部16の径方向外側に位置する。換言すれば、非弾性変形時において、係止アーム17の先端部は、係止アーム17の基端部より径方向外側に位置すると共に、本体部11の円筒状の外周面より径方向外側に位置している。
【0027】
フード部12を構成する上壁の外面(上面)には、
図2(a)に示すように、当該上壁の嵌合方向中央且つ左右方向中央部にて、上方に突出するロック部18が形成されている。ロック部18は、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合時、第2コネクタ2の後述するロックアーム25(
図2(b)参照)の係止部(図示省略)に係止される。
【0028】
次いで、第2コネクタ2について説明する。第2コネクタ2は、
図2(b)に示すように、樹脂製のハウジング20と、ハウジング20に装着される樹脂製のフロントホルダ30と、ハウジング20に収容される複数の金属製の第2端子(メス端子、図示省略)と、を備える。
【0029】
ハウジング20は、
図2(b)に示すように、嵌合方向に延びる矩形筒状の本体部21と、本体部21の前端面から前方に延びる矩形柱状の嵌合部22と、を備える。嵌合部22には、第1コネクタ1の複数の端子収容孔13に対応して、複数の端子収容孔23が、嵌合方向に貫通し、且つ、本体部21の内部空間と連通するように形成されている。複数の端子収容孔23には、複数の電線(図示省略)の端末にそれぞれ接続された複数の第2端子が、後側から挿入されて正規挿入位置に収容されている。正規挿入位置に収容された第2端子の一部は、端子収容孔23に設けられたランス(図示省略)に係止されている。これにより、第2端子の後方への抜けが防止されている。
【0030】
フロントホルダ30は、前側から嵌合部22に装着されている。フロントホルダ30は、第2端子の中途挿入を検知する機能、及び、正規挿入位置に収容された第2端子に対する所謂2重係止機能を果たす部材である。即ち、フロントホルダ30は、複数の第2端子の全てが端子収容孔23の正規挿入位置に収容されている場合にのみ、嵌合部22の正規位置まで移動可能であり、中途挿入の状態にある第2端子が存在する場合、フロントホルダ30の検知部(図示省略)が係止解除方向へ弾性変形したランスに干渉することによって嵌合部22の正規位置までは移動不能に、構成されている。更に、フロントホルダ30が嵌合部22の正規位置にある状態では、フロントホルダ30の検知部がランスに係合してランスの係止解除方向への弾性変形を防止している。
【0031】
本体部21の前端面(嵌合部22より径方向外側に位置する前端面)からは、第1コネクタ1の凹部16(
図3(b)参照)に対応して、
図2(b)に示すように、前方に向けて突出する検知片24が形成されている。嵌合方向からみて、検知片24の形状は、凹部16の形状に対応している。検知片24は、本例では、嵌合部22の側方を横断して嵌合部22の前端面より前側の位置まで延びている。検知片24の作用については後述する。本体部21を構成する上壁には、嵌合方向に延びるロックアーム25が形成されている。
【0032】
次いで、コネクタセット3(
図1参照)の組み付け手順について説明する。まず、
図2(a)に示すように、車体パネル4に第1コネクタ1を取り付ける。このため、
図3(a)に示すように、ハウジング10の周方向の向きを、ハウジング10の凸部15aと車体パネル4の凹部32aとの周方向位置が一致する適正な向きに調整した状態で、係止アーム17の先端部が本体部11の円筒状の外周面より径方向内側に位置するように係止アーム17を径方向内側に弾性変形させた状態を維持しながら、4つの凸部15が4つの凹部32に挿入されるように、ハウジング10の本体部11を、車体パネル4の裏側から車体パネル4の貫通孔31に挿入する。
【0033】
ここで、4つの凸部15(4つの凹部32)のうち凸部15a(凹部32a)のみの周方向長さが他の3つの凸部15(他の3つの凹部32)の周方向長さより長いことにより、ハウジング10の周方向の向きが上記適正な向きと異なる向きでハウジング10が車体パネル4に取り付けられることが防止される。
【0034】
ハウジング10の本体部11の貫通孔31への挿入は、凸部15が凹部32を通過して車体パネル4の表側に位置し且つフランジ部14が車体パネル4の貫通孔31の裏側の縁部に当接するまで継続される。この過程において、係止アーム17は、車体パネル4の貫通孔31の内周面から先端部が受ける径方向内側への押圧力によって、径方向内側に弾性変形した状態(即ち、凹部16の内部に進入した状態)に維持されている。
【0035】
フランジ部14が貫通孔31の裏側の縁部に当接すると、次いで、車体パネル4に対してハウジング10を、周方向一側に回転させる(
図3(a)の矢印を参照)。ここで、仮に、車体パネル4に対してハウジング10を誤って周方向他側に回転させようとしても、左上及び右下の凸部15がストッパ33,34にそれぞれ当接することで、ハウジング10が
図3(a)に示す状態から周方向他側には回転できない。これにより、ハウジング10の誤った向きへの回転が防止される。
【0036】
ハウジング10の周方向一側への回転は、
図3(b)に示すように、下側の凸部15がストッパ34に当接するまで継続される。ハウジング10の回転中も、係止アーム17は、径方向内側に弾性変形した状態に維持されている。下側の凸部15がストッパ34に当接する直前の段階にて、上側及び下側の凸部15のテーパ面15c(
図4参照)が、車体パネル4の上下のリブ35にそれぞれ乗り上がる。ここで、凸部15のテーパ面15cが形成されていることで、凸部15の後端面がリブ35にスムーズに乗り上がり易くなっている。
【0037】
そして、下側の凸部15がストッパ34に当接するまでハウジング10が回転すると、
図4に示すように、上側及び下側の凸部15の溝15bが上下のリブ35に嵌る。加えて、係止アーム17の先端部が右下の凹部32の係止縁32b(
図3(b)参照)を通過することで、係止アーム17が径方向外側に向けて弾性回復して、係止アーム17の先端部が、右下の凹部32に入り込んで係止縁32bに係止される(
図3(b)参照)。これにより、
図2(a)及び
図3(b)に示すように、車体パネル4の第1コネクタ1への取り付けが完了する。
【0038】
第1コネクタ1の車体パネル4への取付完了状態では、上側及び下側の凸部15の溝15bが上下のリブ35に嵌ること、並びに、係止アーム17の先端部が係止縁32bに係止されることによって、ハウジング10の周方向他側への回転が防止される。ここで、仮に、ハウジング10を誤って周方向他側へ回転させようとしても(
図5(b)の細い矢印を参照)、係止アーム17の先端部が係止アーム17の基端部より径方向外側に位置することに起因して係止アーム17が係止縁32bから径方向外側への押圧力(の分力)を受けることで、係止アーム17が径方向外側に弾性変形するようになっている(
図5(b)の太い矢印を参照)。このため、係止アーム17と係止縁32bとの係止が解除され得ないので、ハウジング10の周方向他側への誤った回転が確実に防止される。
【0039】
車体パネル4の第1コネクタ1への取り付けが完了すると、次いで、第1コネクタ1に第2コネクタ2を嵌合させる。このため、ハウジング10のフード部12及びハウジング20の嵌合部22の前端面同士を嵌合方向に対向させた状態から、両者を嵌合方向に互いに近づけて、ハウジング20の検知片24がハウジング10の凹部16に挿入されるように、嵌合部22をフード部12の内部空間に挿入する。この挿入は、ハウジング10のロック部18がハウジング20のロックアーム25の係止部(図示省略)に係止されるまで継続される。
【0040】
そして、ロック部18がハウジング20のロックアーム25の係止部に係止されると、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合が完了して、コネクタセット3の組み付けが完了し、
図1に示すコネクタセット3が得られる。
【0041】
コネクタセット3の組付完了状態では、ロック部18とロックアーム25の係止部との係合によって、ハウジング10,20の嵌合方向への分離が防止されると共に、第1コネクタ1側の第1端子(オス端子)と第2コネクタ2側の第2端子(メス端子)とが接続される。更に、
図6(a)に示すように、ハウジング20の検知片24が、弾性回復している係止アーム17の径方向内側に隣接するように、ハウジング10の凹部16に挿入されている。
【0042】
このように、第1コネクタ1が車体パネル4に対して適正に取り付けた状態では、検知片24が係止アーム17に干渉することなく凹部16に進入可能となっている。加えて、検知片24が、係止アーム17の径方向内側に隣接することで、係止アーム17が径方向内側へ弾性変形しようとしても(
図6(b)の矢印を参照)、係止アーム17が検知片24に当接(干渉)することで、係止アーム17は径方向内側へ弾性変形できない。換言すれば、検知片24は、係止アーム17と係止縁32bとの係止に関し、所謂2重係止機能を果たしている。
【0043】
一方、第1コネクタ1が車体パネル4に対して適正に取り付けられていない状態(具体的には、下側の凸部15がストッパ34に当接するまでハウジング10が回転していない状態)では、上述したように、係止アーム17は、車体パネル4の貫通孔31の内周面から受ける径方向内側への押圧力によって、径方向内側に弾性変形した状態(即ち、凹部16の内部に進入した状態)に維持されている。このため、第1コネクタ1及び第2コネクタ2の嵌合動作中において、検知片24が凹部16に進入しようとしても、
図7に示すように、検知片24が、径方向内側に弾性変形している係止アーム17に嵌合方向において干渉することで(
図7のz領域を参照)、検知片24が凹部16に進入できない。即ち、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合が完了し得ない。
【0044】
このように、検知片24が凹部16に進入できないこと(第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合が完了し得ないこと)によって、第1コネクタ1が車体パネル4に対して適正に取り付けられていない状態を検知し、検知片24が凹部16に進入できること(第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合が完了すること)によって、第1コネクタ1が車体パネル4に対して適正に取り付けられている状態を検知することができる。
【0045】
<作用・効果>
以上、本実施形態に係るコネクタセット3によれば、第1コネクタ1が有する係止アーム17が、第1コネクタ1の車体パネル4への取付途中に貫通孔31の開口縁から離れる向き(径方向内側)に弾性変形し、且つ、第1コネクタ1の車体パネル4への取付完了時に開口縁に近付く向き(径方向外側)に弾性回復することによって係止縁32bに係止される。更に、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合の際、第2コネクタ2が有する検知片24が、開口縁から離れる向き(径方向内側)に弾性変形している係止アーム17に嵌合方向において干渉し、且つ、係止縁32bに係止されている係止アーム17に嵌合方向において干渉しないことにより、第1コネクタ1の貫通孔31への取付状態を検知する。よって、検知片24が係止アーム17に嵌合方向において干渉することで、第1コネクタ1が車体パネル4に適正に取り付けられていないときには、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合が完了しない。したがって、本実施形態に係るコネクタセット3は、車体パネル4への第1コネクタ1の適正な取り付けが可能であり、且つ、第1コネクタ1と第2コネクタ2との適正な嵌合が可能である。
【0046】
更に、本実施形態に係るコネクタセット3によれば、第1コネクタ1は、貫通孔31に挿入された後に車体パネル4の板面に沿う向き(周方向一側)に回転されることにより、貫通孔31に取り付けられる。更に、係止アーム17は、第1コネクタ1の回転に伴い、開口縁に設けられた係止縁32bに係止される。よって、係止アーム17と係止縁32bとの係合により、第1コネクタ1が車体パネル4に取り付けられた後、第1コネクタ1が貫通孔31から分離する向き(周方向他側)に第1コネクタ1が意図せず回転することが抑制される。
【0047】
更に、本実施形態に係るコネクタセット3によれば、検知片24は、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合完了時、係止縁32bに係止されている係止アーム17に係止アーム17の弾性変形方向(径方向内側)において干渉し、開口縁から離れる向き(径方向内側)に係止アーム17が変形することを妨げる。よって、貫通孔31の係止縁32bと係止アーム17との係合が意図せず解除されることが抑制される。
【0048】
<他の形態>
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0049】
上記実施形態では、ハウジング10(本体部11)に設けられた係止アーム17が本体部11の外周面に沿うように周方向他側に延びる片持ち梁状の形状を有し、車体パネル4の貫通孔31に挿入されたハウジング10を所定の向きまで周方向一側に回転させることで、径方向内側に弾性変形している係止アーム17が径方向外側に弾性回復するように構成されている。これに対し、ハウジング10(本体部11)に設けられた係止アーム17が本体部11の外周面に沿うように嵌合方向後側に延びる片持ち梁状の形状を有し、ハウジング10を、周方向に回転させることなく、裏側から車体パネル4の貫通孔31に所定の位置まで挿入することで、径方向内側に弾性変形している係止アーム17が径方向外側に弾性回復して係止縁32bに相当する凹部16の係止縁に係止するように構成されてもよい。これによっても、第1コネクタ1と第2コネクタ2との嵌合の際、第2コネクタ2が有する検知片24が、径方向内側に弾性変形している係止アーム17に嵌合方向において干渉し、且つ、凹部16の係止縁に係止されている係止アーム17に嵌合方向において干渉しないことにより、第1コネクタ1の貫通孔31への取付状態を検知することができる。
【0050】
ここで、上述した本発明に係るコネクタセット3の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
板状の取付板(4)に設けられた貫通孔(31)に挿入された状態にて前記取付板(4)に取り付けられる第1コネクタ(1)と、前記第1コネクタ(1)に嵌合される第2コネクタ(2)と、を有するコネクタセット(3)であって、
前記第1コネクタ(1)は、
当該第1コネクタ(1)の前記取付板(4)への取付途中に前記貫通孔(31)の開口縁から離れる向きに弾性変形し、且つ、当該第1コネクタ(1)の前記取付板(4)への取付完了時に前記開口縁に近付く向きに弾性回復することによって前記開口縁(32b)に係止される、係止部(17)を有し、
前記第2コネクタ(2)は、
前記第1コネクタ(1)との嵌合の際、前記開口縁から離れる向きに弾性変形している前記係止部(17)に嵌合方向において干渉し、且つ、前記開口縁(32b)に係止されている前記係止部(17)に前記嵌合方向において干渉しないことにより、前記第1コネクタ(1)の前記貫通孔(31)への取付状態を検知する、検知部(24)を有する、
コネクタセット(3)。
[2]
上記[1]に記載のコネクタセット(3)において、
前記第1コネクタ(1)は、
前記貫通孔(31)に挿入された後に前記取付板(4)の板面に沿う向きに回転されることによって前記貫通孔(31)に取り付けられ、
前記係止部(17)は、
前記第1コネクタ(1)の回転に伴って前記開口縁に設けられた被係止部(32b)に係止される、
コネクタセット(3)。
[3]
上記[1]又は上記[2]に記載のコネクタセット(3)において、
前記検知部(24)は、
前記第1コネクタ(1)と前記第2コネクタ(2)との嵌合完了時、前記開口縁(32b)に係止されている前記係止部(17)に前記係止部(17)の変形方向において干渉し、前記開口縁から離れる向きに前記係止部(17)が変形することを妨げる、
コネクタセット(3)。
【符号の説明】
【0051】
1 第1コネクタ
2 第2コネクタ
3 コネクタセット
4 車体パネル(取付板)
17 係止アーム(係止部)
24 検知片(検知部)
31 貫通孔
32b 係止縁(開口縁、被係止部)