(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】地盤改良装置及び施工機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2020102338
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【氏名又は名称】根本 恵司
(74)【代理人】
【識別番号】100150773
【氏名又は名称】加治 信貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 憲史
(72)【発明者】
【氏名】今給黎 健一
(72)【発明者】
【氏名】樗沢 淳一
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-009333(JP,U)
【文献】特開平03-247813(JP,A)
【文献】実開昭63-009332(JP,U)
【文献】特開昭58-185816(JP,A)
【文献】特開昭63-167808(JP,A)
【文献】特開平10-266190(JP,A)
【文献】特開2002-322645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
7/14
E21B 19/02
19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を備える施工機と、施工機に取り付けて地盤中に固化材を吐出する改良作業機械と、改良作業機械を昇降動するウインチ及びワイヤロープを有し、ウインチ及びワイヤロープで改良作業機械を降下して地盤中に貫入し、地盤中に貫入する改良作業機械で地盤の改良を行う地盤改良装置であって、
地盤中に改良作業機械を貫入するときのワイヤロープの張力を検出する張力検出器と、張力検出器で検出したワイヤロープの張力を表示する表示部を有
し、張力検出器で検出するワイヤロープの張力に基づいてワイヤロープの送り出しの速度を手動又は自動で調整する
とともに、
ワイヤロープは、ウインチから改良作業機械に向かい、改良作業機械に巻き掛けてから施工機の車体に向かい、その先端を施工機の車体に固着し、ワイヤロープが施工機の車体に固着する箇所に張力検出器を取り付けることを特徴とする地盤改良装置。
【請求項2】
請求項1に記載された地盤改良装置において、
張力検出器で検出するワイヤロープの張力のデータを入力する制御部を有し、
制御部では、ワイヤロープの張力のデータに基づいてワイヤロープの送り出しの速度を演算し、演算して求めたワイヤロープの送り出しの速度にするように
ウインチを制御することを特徴とする地盤改良装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された地盤改良装置に使用する施工機
で、前記張力検出器及び前記表示部を備える施工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工機と改良作業機械を有し、改良作業機械を地盤中に貫入して地盤の改良を行う地盤改良装置及び施工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の強度増進を目的として地盤の改良を行う地盤改良工法としては、深層混合処理工法、高圧噴射撹拌工法などが知られている。
【0003】
改良作業機械を用いて行う地盤改良工法の一つである深層混合処理工法による地盤の改良について説明する。
図5Aは、改良作業機械の撹拌軸を地盤中に貫入したときの工程図、
図5Bは、改良作業機械の撹拌軸を下方に向かって貫入するときの工程図、
図5Cは、改良作業機械の撹拌軸を所定深度まで貫入したときの工程図、
図5Dは、改良作業機械の撹拌軸を引き抜くときの工程図、
図5Eは、改良作業機械の撹拌軸の引き抜きが完了したときの工程図である。
図6は、従来のウインチ及びワイヤロープを示す図である。
【0004】
地盤の改良を行う地盤改良装置は、
図5A~Eに示すように、施工機52と改良作業機械53からなる。施工機52は、車体54を備え、車体54の前部にマスト55を立設する。改良作業機械53は、施工機52のマスト55に沿うように縦に向かう攪拌軸56を備える。改良作業機械53の攪拌軸56の上部には、攪拌軸56を回転する回転駆動部57を備えている。また、撹拌軸56の下端には、複数段の撹拌翼58を有し、図示していないが、撹拌翼58には固化材を吐出する吐出孔を有している。
【0005】
また、施工機52には、改良作業機械53を昇降動するウインチ61及びワイヤロープ62を備える。
図6に示すように、ウインチ61は、施工機52の車体54に取り付けて、ワイヤロープ62を送り出す又は巻き取る。ワイヤロープ62は、ウインチ61からマスト55の上端を経由して改良作業機械53に向かい、改良作業機械53に巻き掛け、改良作業機械53からマスト55の上端に向かい、その上端に固着している。これにより、ウインチ61でワイヤロープ62を送り出すと、改良作業機械53が降下し地盤中に貫入可能になる。また、ウインチ61でワイヤロープ62を巻き取ると、改良作業機械53が上昇し地盤中から引き抜き可能になる。
【0006】
この地盤改良装置を用いた深層混合処理工法による地盤の改良は、ウインチ61を動かしてワイヤロープ62を送り出すことで、改良作業機械53の撹拌軸56を回転しながら地盤中に貫入することを行う。このとき、
図5Aのように、撹拌軸56及び撹拌翼58を少し地盤中に貫入したところで、撹拌翼58の吐出孔から固化材を吐出する。次に、固化材を吐出しながら撹拌軸56及び撹拌翼58を地盤中に貫入し、撹拌翼58にて地盤を掘削するとともに、掘削した地盤と固化材を混合撹拌する。
図5Bのように、地盤の掘削と掘削した地盤と固化材の混合撹拌を下方に向かって行う。これを、
図5Cのように、着底位置である所定深度まで行う。
【0007】
次に、ウインチ61を動かしてワイヤロープ62を巻き取ることで、
図5Dのように、所定深度まで貫入した改良作業機械53の撹拌軸56及び撹拌翼58を引き抜き、
図5Eのように、撹拌軸56及び撹拌翼58を地表面まで引き抜く。これらの作業が完了した後、地盤と混合した固化材が固化することで、地盤中に所定の強度及び大きさの固結改良体が造成される。これにより、地盤中に固結改良体を多数造成して、地盤を強固なものへと改良することができる。
【0008】
地盤改良装置を用いた地盤の改良において、改良作業機械53を地盤中に貫入するとき、作業者は、改良作業機械53の攪拌軸56を回転する回転駆動部57での電流値を確認しながら作業を行う。この回転駆動部57での電流値は、地盤中に改良作業機械53を貫入するときの攪拌軸56の負荷(電流値)であり、この攪拌軸56の負荷から地盤の硬軟がわかる。つまり、負荷が大きいと硬い地盤であり、負荷が小さいと柔らかい地盤である。地盤の硬軟は、地盤の深度によって変わる。
【0009】
したがって、作業者は、改良作業機械53を地盤中に貫入するとき、回転駆動部57での電流値を確認して、硬い地盤の場合、ウインチ61によるワイヤロープ62の送り出しの速度を速くして、改良作業機械53の貫入速度を速くすると、所定の深度において固化材を吐出する時間が短くなり、結果的に地盤中に吐出する深度毎の固化材の量が減る。また、柔らかい地盤の場合、ウインチ61によるワイヤロープ62の送り出しの速度を遅くして、改良作業機械53の貫入速度を遅くすると、所定の深度において固化材を吐出する時間が長くなり、結果的に地盤中に吐出する深度毎の固化材の量が増える。即ち、作業者は、地盤の深度によって変わる地盤の硬軟に応じて、ウインチ61によるワイヤロープ62の送り出しの速度を調整して、改良作業機械53の貫入速度を変更し、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出することで、地盤中に所定の強度及び大きさの固結改良体を造成している。
【0010】
しかしながら、地盤の硬軟を確認するための回転駆動部57での電流値は、貫入する改良作業機械53の大きさや重量、ワイヤロープ62を送り出すウインチ61の能力などによって変わるものであり、これにより、それぞれの現場で使用する地盤改良装置毎に異なる。そのため、熟練の作業者であれば、使用する地盤改良装置を考慮しながら、ワイヤロープ62の送り出しの速度を調整して、改良作業機械53の貫入速度を変更することができるが、それ以外の作業者では、ワイヤロープ62の送り出しの速度を調整して、改良作業機械53の貫入速度を変更することが難しく、その結果、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出することができず、地盤中に所定の強度及び大きさの固結改良体を造成することができなくなる問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、地盤の改良において、どのような作業者であっても、地盤中に改良作業機械を貫入するとき、地盤の硬軟に応じた適切なワイヤロープの送り出しの速度に調整して、改良作業機械の貫入速度を変更し、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出して、地盤中に所定の強度及び大きさの固結改良体を造成できる地盤改良装置及び施工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、車体を備える施工機と、施工機に取り付けて地盤中に固化材を吐出する改良作業機械と、改良作業機械を昇降動するウインチ及びワイヤロープを有し、ウインチ及びワイヤロープで改良作業機械を降下して地盤中に貫入し、地盤中に貫入する改良作業機械で地盤の改良を行う地盤改良装置であって、地盤中に改良作業機械を貫入するときのワイヤロープの張力を検出する張力検出器と、張力検出器で検出したワイヤロープの張力を表示する表示部を有し、張力検出器で検出するワイヤロープの張力に基づいてワイヤロープの送り出しの速度を手動又は自動で調整するとともに、ワイヤロープは、ウインチから改良作業機械に向かい、改良作業機械に巻き掛けてから施工機の車体に向かい、その先端を施工機の車体に固着し、ワイヤロープが施工機の車体に固着する箇所に張力検出器を取り付ける地盤改良装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、改良作業機械を地盤中に貫入して地盤の改良を行うとき、作業者が表示部に表示されたワイヤロープの張力を確認しながら作業を行うことで、熟練の作業者だけでなく、それ以外の作業者でも、地盤の深度によって変わる地盤の硬軟に応じて、ワイヤロープの送り出しの速度を調整して、改良作業機械の貫入速度を変更し、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出することができる。これにより、地盤中に所定の強度及び大きさの固結改良体を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の地盤改良装置の全体を示す側面図である。
【
図2】改良作業機械の撹拌軸の下端を示す正面図である。
【
図5】
図5Aは、改良作業機械の撹拌軸を地盤中に貫入したときの工程図、
図5Bは、改良作業機械の撹拌軸を下方に向かって貫入するときの工程図、
図5Cは、改良作業機械の撹拌軸を所定深度まで貫入したときの工程図、
図5Dは、改良作業機械の撹拌軸を引き抜くときの工程図、
図5Eは、改良作業機械の撹拌軸の引き抜きが完了したときの工程図である。
【
図6】従来のウインチ及びワイヤロープを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の地盤改良装置及び施工機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の地盤改良装置の全体を示す側面図、
図2は、改良作業機械の撹拌軸の下端を示す正面図、
図3は、ウインチ及びワイヤロープを示す図である。
本実施形態に関わる地盤改良装置については、地盤改良工法の一つである深層混合処理工法による地盤の改良に用いるものである。ただし、この地盤改良装置を用いるものは、深層混合処理工法に限らず、高圧噴射撹拌工法などの他の工法でもよい。
【0016】
地盤改良装置は、
図1に示すように、施工機2と、施工機2に取り付けて地盤中に貫入して固化材を吐出する改良作業機械3と、施工機2及び改良作業機械3の周辺に設置する周辺設備4から構成している。
なお、改良作業機械3において、地盤中に吐出する固化材は、セメントミルクである。ただし、セメントミルクなどのセメント系の固化材に限らず、その他の固化材でもよい。
【0017】
施工機2は、車体11を備え、車体11の前部にマスト12を立設する。車体11は、運転室13を有するとともに、その下部に走行体14を備え、エンジン(図示していない)を搭載し、自走可能になる。また、マスト12は、縦に伸びた柱状でその上端にヘッド部15を有する。
【0018】
改良作業機械3としては、施工機2のマスト12に沿うように縦に向かう撹拌軸21を2本備える2軸方式であって、2本の撹拌軸21の上部に回転駆動部22を備え、2本の撹拌軸21を回転可能にする。なお、
図1にあっては、2本の撹拌軸21が手前と奥に配置されるため、図中では1本しか見えない。撹拌軸21は、その内部に固化材などを通すために、中空状の鋼管にしている。
【0019】
また、2本の撹拌軸21は、
図2に示すように、その下端それぞれには複数段、例えば、3段の撹拌翼25を備える。3段の撹拌翼25の最下段の撹拌翼25には固化材を吐出する吐出孔26を有している。また、最下段の撹拌翼25や撹拌軸21の最下端には地盤を掘削するための掘削ビット27を複数有している。
【0020】
この改良作業機械3にあっては、撹拌軸21を2本備える2軸方式であるが、これに限定されるものではなく、撹拌軸21を1本備える単軸方式あるいは3本以上の複数本備える複数軸方式でもよい。また、撹拌軸21の下端の3段の撹拌翼25についても、これに限定されるものではなく、1段や2段あるいは4段以上の複数段でもよい。
【0021】
周辺設備4は、
図1に示すように、改良作業機械3の2本の撹拌軸21に固化材や圧縮空気を供給するための設備である。圧縮空気を供給する設備は、コンプレッサー31を備え、改良作業機械3の2本の撹拌軸21それぞれに圧縮空気を供給する。固化材を供給する設備は、固化材生成プラント32を備え、生成した固化材を改良作業機械3の2本の撹拌軸21それぞれに供給する。なお、周辺設備4の各機器には、図示はしていないが、発電機や流量計などを備えている。
【0022】
また、施工機2には、改良作業機械3を昇降動するウインチ5及びワイヤロープ6を備える。
図3に示すように、ウインチ5は、施工機2の車体11に取り付けて、ワイヤロープ6を送り出す又は巻き取る。このワイヤロープ6は、車体11に取り付けたウインチ5から立設するマスト12上端のヘッド部15を経由して改良作業機械3に向かい、改良作業機械3の上部に巻き掛ける。改良作業機械3の上部に巻き掛けたワイヤロープ6は、再びマスト12上端のヘッド部15に向かい、そのヘッド部15を経由して施工機2の車体11に向かい、車体11に固着する。つまり、ワイヤロープ6の先端が施工機2の車体11に固着する。なお、ワイヤロープ6は、マスト12のヘッド部15や改良作業機械3の上部においてシーブ(滑車)16を介して取り付けている。
【0023】
これにより、ウインチ5でワイヤロープ6を送り出すと、改良作業機械3が降下し地盤中に貫入可能になる。また、ウインチ5でワイヤロープ6を巻き取ると、改良作業機械3が上昇し地盤中から引き抜き可能になる。即ち、ウインチ5及びワイヤロープ6によって、改良作業機械3の地盤中への貫入又は地盤中からの引き抜きを行うことができる。
【0024】
この地盤改良装置には、ワイヤロープ6の張力を検出する張力検出器を有し、張力検出器は、例えばロードセル(荷重計)8である。ロードセル8は、ワイヤロープ6の先端が施工機2の車体11に固着する箇所に取り付けている。これにより、ロードセル8で地盤中に改良作業機械3を貫入するときのワイヤロープ6の張力を検出する。
【0025】
また、地盤改良装置には、ロードセル8で検出したワイヤロープ6の張力を表示する表示部9を有する。表示部9は、例えば、施工機2の車体11に備えた運転室13内に設置する。ただし、表示部9の設置場所は、ここに限定されるものではない。
【0026】
図4は、地盤改良装置の表示部9を示す正面図である。
表示部9では、図示のように、画面36を有し、その画面36に、ロードセル8で検出した地盤中に改良作業機械を貫入するときのワイヤロープ6の張力を経時的に表示する。即ち、表示部9の画面36では、縦軸がロードセル8で検出したワイヤロープ6の張力であり、横軸が地盤中に改良作業機械3を貫入するときの経過する時間である。
【0027】
表示部9の画面36では、ワイヤロープ6の張力におけるあらかじめ設定する基準値Aを設け、この基準値Aからの改良作業機械3を地盤中に貫入するときのワイヤロープ6の張力の変化がわかるように経時的に表示する。このとき、基準値Aに対する上限値Hのラインと下限値Lのラインを設定し、これも表示する。上限値Hは、地盤の硬軟において柔らかい地盤を示す値であり、下限値Lは、地盤の硬軟において硬い地盤を示す値である。なお、このワイヤロープ6の張力と地盤の硬軟とは相関関係にあり、ワイヤロープ6の張力から地盤の硬軟、つまり柔らかい地盤か硬い地盤又どの程度柔らかいのか硬いのかがわかる。また、基準値A、上限値H、下限値Lについては、それぞれの現場において予め設計したデータに基づいて設定している。
【0028】
このような構成の地盤改良装置において、改良作業機械3を地盤中に貫入して地盤の改良を行うとき、作業者は、表示部9の画面36に表示されたワイヤロープ6の張力を確認しながら作業を行う。このとき、ワイヤロープ6の張力が上限値Hのラインより高くなると(
図4中に示すB)、作業者は、現在の深度の地盤が柔らかい地盤であることを認識し、ウインチ5によるワイヤロープ6の送り出しの速度を遅くして、改良作業機械3の貫入速度を遅くする。これにより、所定の深度において固化材を吐出する時間が長くなり、結果的に地盤中に吐出する深度毎の固化材の量が増える。また、ワイヤロープ6の張力が下限値Lのラインより低くなると(
図4中に示すC)、作業者は、現在の深度の地盤が硬い地盤であることを認識し、ウインチ5によるワイヤロープ6の送り出しの速度を速くして、改良作業機械3の貫入速度を速くする。これにより、所定の深度において固化材を吐出する時間が短くなり、結果的に地盤中に吐出する深度毎の固化材の量が減る。このように、作業者は、地盤の深度によって変わる地盤の硬軟に応じて、ウインチ5によるワイヤロープ6の送り出しの速度を手動で調整して、改良作業機械3の貫入速度を変更し、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出するようにしている。
【0029】
また、作業前の調査、例えばボーリング調査などに基づいて設定した着底位置(地盤中の硬質な支持層の上端の位置で作業を行う最下深度)に到達したときは(
図4中に示すK)、ワイヤロープ6の張力がほぼ0になる。これにより、作業者は、改良作業機械3が着底位置に到達したことを認識でき、改良作業機械3の貫入を止めて、改良作業機械3を引き抜く作業を行うことができ、着底位置まで確実に固化材の吐出を行うことができる。
【0030】
以上説明したように、改良作業機械3を地盤中に貫入して地盤の改良を行うとき、ロードセル8で検出したワイヤロープ6の張力が表示部9に表示され、作業者が表示部9に表示されたワイヤロープ6の張力を確認しながら作業を行うことで、熟練の作業者だけでなく、それ以外の作業者でも、地盤の深度によって変わる地盤の硬軟に応じて、ワイヤロープ6の送り出しの速度を調整して、改良作業機械3の貫入速度を変更し、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出することができる。これにより、地盤中に所定の強度及び大きさの固結改良体を造成することができ、その結果、地盤中に造成する固結改良体の造成ミスをなくすことができる。
【0031】
また、ロードセル8においては、ワイヤロープ6が施工機2の車体11に固着する箇所、つまり車体11に取り付けることで、ロードセル8を点検するとき、あるいは故障したとき、点検や修理の作業を簡単に行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
また、地盤改良装置は、次のような構成にしてもよい。地盤改良装置において、制御部40を有するようにする。制御部40は、施工機2の車体11に搭載しているコンピューターを利用して機能するものである。ただし、車体11に搭載したコンピューターに限らず、別のコンピューターを利用して機能するものでもよい。
【0033】
制御部40では、ロードセル(張力検出器)8で検出するワイヤロープ6の張力のデータを入力し、この入力したワイヤロープ6の張力のデータに基づいて、適宜の演算プログラムを用いて、ウインチ5によるワイヤロープ6の送り出しの速度を演算する。この演算により求めたワイヤロープ6の送り出しの速度になるようにウインチ5を制御する。これにより、ワイヤロープ6の送り出しの速度を自動で調整して、改良作業機械3の貫入速度を変更し、地盤の深度毎に適切な固化材の量を吐出する。
【0034】
また、制御部40では、ワイヤロープ6の送り出しの速度を調整するとともに、ワイヤロープ6の張力のデータに基づいて地盤中に吐出する固化材の量を調整するようにしてもよい。即ち、入力したワイヤロープ6の張力のデータに基づいて、適宜の演算プログラムを用いて、吐出孔から地盤中に吐出する固化材の量を演算し、この演算により求めた固化材の量になるように吐出孔26から吐出する固化材の量を調整するようにしてもよい。
【0035】
以上のように、地盤改良装置において制御部40を有することで、地盤中に改良作業機械3を貫入するとき、ワイヤロープ6の送り出しの速度あるいは吐出孔26から地盤中に吐出する固化材の量を制御部40により自動で調整することができる。これにより、作業の自動化を行うことができ、作業ミスをなくすとともに、工期の短縮及び工費の削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0036】
2…施工機、3…改良作業機械、4…周辺設備、5…ウインチ、6…ワイヤロープ、8…ロードセル、9…表示部、11…車体、12…マスト、13…運転室、14…走行体、15…ヘッド部、16…シーブ、21…撹拌軸、22…回転駆動部、25…撹拌翼、26…吐出孔、27…掘削ビット、31…コンプレッサー、32…固化材生成プラント、36…画面、40…制御部、52…施工機、53…改良作業機械、54…車体、55…マスト、56…攪拌軸、57…回転駆動部、58…撹拌翼、61…ウインチ、62…ワイヤロープ。