IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スメド−ティーエイ/ティーディー・エルエルシーの特許一覧

特許7453073多孔質領域および治療剤送達を伴う整形外科的外傷装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】多孔質領域および治療剤送達を伴う整形外科的外傷装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/76 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B17/76
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020106247
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2021000449
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】62/864,001
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511039728
【氏名又は名称】スメド-ティーエイ/ティーディー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー シー. スタルカップ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0060373(US,A1)
【文献】中国実用新案第208892749(CN,U)
【文献】特開2011-200644(JP,A)
【文献】特表2012-501229(JP,A)
【文献】特開2008-029745(JP,A)
【文献】特開2018-033671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56-17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整形外科的外傷を処置するための装置であって、
装置本体であって、外面と、内部に形成され、前記装置本体の一方の長手方向端部から前記装置本体の反対側の長手方向端部まで延びるカニューレ挿入部とを有する、装置本体と、
前記装置本体の前記外面に関連付けられ、前記カニューレ挿入部に流体接続している少なくとも1つの多孔質内殖材料領域であって、前記カニューレ挿入部から前記装置本体の外側領域に治療剤を送達するように構成されている、少なくとも1つの多孔質内殖材料領域と
前記カニューレ挿入部に着脱可能に挿入され、内部に前記治療剤を保持するように構成されている貯留部と、
を含み、
前記装置本体が、前記外面に形成され、前記カニューレ挿入部に流体接続している少なくとも1つの流体チャネルを含み、
前記貯留部が、前記貯留部からの前記治療剤の移動を可能にするように構成されている複数の開口部を含む、
装置。
【請求項2】
前記装置本体が、前記外面に形成されている複数のねじ山を含む、請求項記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの流体チャネルが、前記複数のねじ山のうちの2つの隣接するねじ山間に位置する開口部を画定する、請求項記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域が、前記複数のねじ山のうちの2つの隣接するねじ山間に位置する、請求項記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域が、複数の多孔質内殖材料領域を含み、前記多孔質内殖材料領域のうちの少なくとも1つが、前記装置本体の非ねじ山部に配設されている、請求項記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの流体チャネルが、前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域を前記カニューレ挿入部に流体接続させる、請求項記載の装置。
【請求項7】
前記装置本体が、実質的に非多孔質材料を含む、請求項記載の装置。
【請求項8】
さらに、前記カニューレ挿入部内に配置され、前記カニューレ挿入部と流体密封部を形成するように構成されている少なくとも1つのプラグを含む、請求項記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプラグが、前記カニューレ挿入部内で変位するように構成されているプランジャーを含む、請求項記載の装置。
【請求項10】
さらに、前記プランジャーに荷重を加え、前記カニューレ挿入部内に保持されている流体に流体圧を維持するように構成されているばねを含む、請求項記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つのプラグが、前記カニューレ挿入部内の流体を受け入れるために、外部流体貯留部と接続するように構成されている、請求項記載の装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域は、前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域が骨への埋込み後に骨の骨折部の近くに存在するように、前記装置本体の前記外面上に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域が、前記装置本体の前記長手方向端部のうちの1つに隣接して配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの多孔質内殖材料領域が、1.0~2.0インチの長さを画定する、請求項13記載の装置。
【請求項15】
第1の装置本体であって、外面と、内部に形成され、前記装置本体の一方の長手方向端部から前記装置本体の反対側の長手方向端部まで延びるカニューレ挿入部とを有する、第1の装置本体、ならびに
前記第1の装置本体の前記外面に関連付けられ、前記カニューレ挿入部に流体接続している少なくとも1つの第1の多孔質内殖材料領域であって、前記カニューレ挿入部から前記第1の装置本体の外側領域に治療剤を送達するように構成されている、少なくとも1つの第1の多孔質内殖材料領域
を含む、第1の装置と、
前記第1の装置に連結していて、少なくとも1つの第2の多孔質内殖材料領域を有する第2の装置本体を含む第2の装置と、
を含む、整形外科的外傷処置システム。
【請求項16】
前記第2の装置本体が、内部に形成され、前記少なくとも1つの第2の多孔質内殖材料領域と流体接続しているカニューレ挿入部を有する、請求項15記載の外傷処置システム。
【請求項17】
前記第1の装置が、複数のねじ山を含むねじを有し、前記第2の装置が、釘である、請求項15記載の外傷処置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年6月20日に出願された、発明の名称「ORTHOPAEDIC TRAUMA DEVICES WITH POROUS REGIONS AND THERAPEUTIC AGENT DELIVERY(多孔質領域および治療剤送達を有する整形外科的外傷装置)」の米国仮特許出願第62/864,001号に基づく非仮出願である。同仮特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、整形外科用装置、とりわけ、外傷処置のための整形外科用装置に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
整形外科的外傷を処置するための多くの異なるシステムが公知である。多くのシステムは、骨折した骨に埋め込まれて、1つ以上の骨片を骨と再び接触させ、骨を修復する少なくとも1つの装置を含む。このようなシステムは、一般的には、整形外科的外傷の処置に有効であるが、多くの異なるタイプの故障モードが存在する。この故障モードは、骨の治癒に有害な影響を及ぼす。
【0004】
当技術分野において、既知のシステムより故障しにくい、整形外科的外傷を処置するためのシステムが必要とされている。
【0005】
発明の概要
本発明は、カニューレ挿入装置本体を有する少なくとも1つの装置と、装置本体の外側領域に治療剤を送達するために装置本体に形成されたカニューレ挿入部に流体接続している1つ以上の多孔質内殖材料領域とを含む、整形外科的外傷を処置するためのシステムを提供する。
【0006】
本発明に従って提供される幾つかの例示的な実施形態では、整形外科的外傷を処置するための装置は、外面と、内部に形成され、装置本体の一方の長手方向端部から装置本体の反対側の長手方向端部まで延びるカニューレ挿入部とを有する装置本体と、装置本体の外面に関連付けられ、カニューレ挿入部に流体接続している少なくとも1つの多孔質内殖材料領域とを含む。少なくとも1つの多孔質内殖材料領域は、カニューレ挿入部から装置本体の外側領域に治療剤を送達するように構成されている。
【0007】
本発明に従って提供される幾つかの例示的な実施形態では、整形外科的外傷処置システムは、第1の装置と、第1の装置に連結している第2の装置とを含む。第1の装置は、外面と、内部に形成され、装置本体の一方の長手方向端部から装置本体の反対側の長手方向端部まで延びるカニューレ挿入部とを有する第1の装置本体と、第1の装置本体の外面に関連付けられ、カニューレ挿入部に流体接続している少なくとも1つの第1の多孔質内殖材料領域とを含む。少なくとも1つの第1の多孔質内殖材料領域は、カニューレ挿入部から第1の装置本体の外側領域に治療剤を送達するように構成されている。第1の装置に連結している第2の装置は、少なくとも1つの第2の多孔質内殖材料領域を有する第2の装置本体を含む。
【0008】
本発明に従って提供される例示的な実施形態により実現することができる1つの可能性のある利点は、装置が不安定になるリスクを下げるために、この装置の多孔質内殖材料領域が埋込み後に、装置を骨内に安定的に固定するのを支援することができることである。
【0009】
本発明に従って提供される例示的な実施形態により実現することができる別の可能性のある利点は、多孔質内殖材料領域をカニューレ挿入部に流体接続させることにより、治療剤送達を、多孔質内殖材料領域を通して起こすことが可能となり、これにより、組織の内殖および修復をさらに促進することができることである。
【0010】
本発明に従って提供される例示的な実施形態により実現することができるさらに別の可能性のある利点は、システムを、公知の外科技術を使用して埋め込むことができることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記言及された特徴および利点ならびに他の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法は、添付の図面と併せて本発明の実施形態の下記説明を参照することにより、より明らかになり、本発明は、より良く理解されるであろう。
図1図1は、骨に埋め込まれている、本発明に従って提供される整形外科的外傷処置システムの例示的な実施形態の斜視図である。同骨は、部分断面図で図示されている。
図2図2は、図1の整形外科的外傷処置システムの別の斜視図であり、このシステムのラグスクリューおよび骨プレートをより詳細に図示している。
図3図3は、骨プレートを骨ねじにより骨に固定した後の、図1~2の整形外科的外傷処置システムの別の斜視図である。
図4図4は、骨プレートを骨ねじにより骨に固定した後の、図1~3の整形外科的外傷処置システムの別の斜視図である。
図5図5は、ラグスクリューを変位させて、骨片を骨の残り部分と再接触させた後の、図1~4の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図6図6は、骨から分離させた、図1~5の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図7図7は、骨プレートと、その上に配設されている多孔質内殖材料領域を有するネックとを含む、本発明に従って提供される整形外科的外傷処置システムの別の例示的な実施形態の斜視図である。
図8図8は、ラグスクリューのカニューレ挿入部に連結している治療用インターフェースを有する、本発明に従って提供される整形外科的外傷処置システムの別の例示的な実施形態の斜視図である。
図9図9は、多孔質内殖材料領域として形成されている複数のねじ山を含むラグスクリューを有する、本発明に従って提供される整形外科的外傷処置システムの別の例示的な実施形態の斜視図である。
図10図10は、ラグスクリューの配置をガイドするのに使用されるガイドロッドが骨から取り外された後の、図1~6の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図11図11は、図1~6および10の整形外科的外傷処置システムならびにラグスクリューのカニューレ挿入部に配置されるように構成されている注入器の斜視図である。
図12図12は、注入器がラグスクリューのカニューレ挿入部内に配置されている、図1~6および10~11の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図13図13は、図1~6および10~12の整形外科的外傷処置システムの部分断面図であり、ラグスクリューのカニューレ挿入部内に配置されている注入器を図示する。
図14図14は、図1~6および10~13の整形外科的外傷処置システムの部分断面図であり、治療剤をカニューレ挿入部に送達するために、ラグスクリューのカニューレ挿入部に配置されている注入器の開口部を図示する。
図15図15は、図1~6のラグスクリューのカニューレ挿入部に挿入するために、取付けアセンブリのカニューレ挿入部に挿入されている貯留部の斜視図である。
図16図16は、プッシュロッドを使用して、貯留部を取付けアセンブリのカニューレ挿入部に押し込んだ、図15の貯留部および取付けアセンブリの斜視図である。
図17図17は、図1~6の整形外科的外傷処置システム、および図15~16の貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部に挿入された後に外傷処置システムが埋め込まれている、骨の部分断面図である。
図18図18は、治療剤を送達するためのシリンジに連結している、図1~6の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図19図19は、送達貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部内に配置されており、治療剤送達のための外部貯留部に接続している、図1~6の整形外科的外傷処置システムの断面図である。
図20図20は、ラグスクリューのカニューレ挿入部が治療剤を送達するための外部貯留部に直接流体接続しており、骨に埋め込まれている、図1~6の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。同骨は、部分断面図で図示されている。
図21図21は、ラグスクリューのカニューレ挿入部に治療剤が充填され、骨プレートのインターフェース開口部がストッパーで塞がれた後の、図1~6の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図22図22は、骨に埋め込まれた髄内釘およびこの髄内釘に取り付けられた治具を含む、本発明に従って提供される整形外科的外傷処置システムの別の例示的な実施形態の斜視図である。同骨は、部分断面図で図示されている。
図23図23は、図1~6のラグスクリューを髄内釘に連結させ、骨に埋め込まれている、図22の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図24図24は、図11~14の注入器が治療剤送達のためのラグスクリューのカニューレ挿入部に配置されている、図22~23の整形外科的外傷処置システムの部分断面図である。
図25図25は、貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部に挿入されている、図22~23の整形外科的外傷処置システムの斜視図である。
図26図26は、貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部に挿入されている、図25の整形外科的外傷処置システムの断面図である。
図27図27は、貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部に完全に挿入されている、図25~26の整形外科的外傷処置システムの断面図である。
図28図28は、送達貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部に配置されており、外部貯留部に流体接続している、図22~23の整形外科的外傷処置システムの断面図である。
図29図29は、外部貯留部がラグスクリューのカニューレ挿入部に直接流体接続している、図22~23の整形外科的外傷処置システムの断面図である。
図30図30は、治具を取り付けずに骨に埋め込まれている、図22~23の整形外科的外傷処置システムの部分断面図である。
図31図31は、ラグスクリューのねじ山間に配置された多孔質内殖材料領域を有するラグスクリューの代替実施形態を有する、図22~23の整形外科的外傷処置システムの部分断面図である。
【0012】
対応する参照符号は、幾つかの図を通して対応する部分を示す。本明細書で提示された例示は、本発明の実施形態を例証し、そのような例示は、本発明の範囲を何ら限定するものとして解釈されるべきではない。
【0013】
発明の詳細な説明
ここから、図面、とりわけ、図1~6を参照すると、整形外科的外傷処置システム100の例示的な実施形態が図示されている。同システム100は、概ね、ラグスクリュー110の形態の、整形外科的外傷を処置するための第1の装置と、ラグスクリュー110に連結している骨プレート120と、ラグスクリュー110および骨プレート120を、骨、例えば、大腿骨F等に取り付けるための取付けアセンブリ130とを含む。骨プレート120は、公知の構造のものであってよく、骨プレート120および連結されたラグスクリュー110を大腿骨Fに安定的に固定するための固定スクリューを受け入れるように寸法決めされた幾つかの開口部121を含むことができる。骨プレート120における開口部121の数および開口部121の分布は、必要に応じて変更することができる。同様に、取付けアセンブリ130は、公知の構造のものであってよく、ラグスクリュー110を回転させるような大きさおよび形状にされた第1の端部132と、ユーザ、例えば、外科医がラグスクリュー110を回転させるために保持し、捻ることができるハンドル部134を有する第2の端部133とを有する、カニューレ状管状部分131を含むことができる。多くの異なるタイプの適切な取付けアセンブリが公知であるため、簡潔にするために、さらなる説明を省略する。
【0014】
ラグスクリュー110は、カニューレ挿入することができ、「装置本体」と呼ぶこともできる円筒形のスクリュー本体111を含むことができる。カニューレ挿入部112は、装置本体111の2つの長手方向端部113A、113B間で延び、装置本体111の外面115に形成された複数のねじ山114も含む。多くの異なるサイズおよび形状のねじ山が公知であり、ラグスクリュー110において利用することができる。図示されているように、ラグスクリュー110は、ラグスクリュー110が大腿骨骨幹ならびに大腿骨頭および頸部として示されている骨片内に存在するように選択された長さを有する。図4図5に示されたように、ラグスクリュー110が大腿骨Fの骨片に据えられると、ラグスクリュー110を変位させ、骨片を引き戻して大腿骨Fの残り部分と接触させ、大腿骨Fの治癒を促進することができる。骨片を大腿骨の残り部分と接触させた後、ラグスクリュー110および骨プレート120は、骨片の組織が大腿骨Fの残り部分と再統合し、治癒することができるように、骨片を適所に保持するための固定手段として機能する。
【0015】
骨片の安定した固定を促進するために、ラグスクリュー110は、装置本体111の外面115に配設されている1つ以上の多孔質内殖材料領域117A、117Bを有する、ねじ山114を含むことができる断片固定部116を含む。図1~5に図示されているように、ラグスクリュー110が埋め込まれている場合、骨Fの骨折付近に存在するように、ラグスクリュー110に多孔質内殖材料領域117Aの1つを配置することができ、ラグスクリュー110のねじ山114間に複数の多孔質内殖材料領域117Bを、間隔を空けて配置することができる。一部の実施形態では、多孔質内殖材料領域117A、117B以外のラグスクリュー110の材料は、実質的に非多孔質であるかまたは最小多孔質であり、例えば、非多孔質チタンであるため、多孔質内殖材料領域117A、117B以外のラグスクリュー110内では、最少でしか組織内殖が生じない。本明細書で使用する場合、「実質的に非多孔質」は、5%未満の多孔率に対応し、「最小多孔質」は、20%未満の多孔率に対応し、「多孔質」は、少なくとも20%、例えば、少なくとも60%の多孔率に対応する。多孔質内殖材料領域117A、117Bの材料は、例えば、細胞および組織の内殖を促進する多孔質チタンまたはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料であってよい。多孔質内殖材料領域117A、117Bを形成するのに使用することができる例示的な材料は、SITES MEDICAL(登録商標)(Columbia City、Indiana)製の商品名OSTEOSYNC(登録商標)で市販されている。多孔質内殖材料領域117A、117B中の材料の数、配置および量は、異なる固定特性を達成するように調整することができることを理解されたい。
【0016】
整形外科的外傷、特に、大腿骨外傷を処置するのに使用される公知のラグスクリューでは、発生する主な故障モードの1つは、大腿骨頭付近である。埋め込まれたラグスクリューは、安定したままであるのに十分な海綿骨組織内の固定を達成する傾向がないため、埋込み後にぐらつきまたは脱落する重大なリスクを有する。このため、ラグスクリューの不十分な固定により、骨片が治癒するのに要する時間が長くなってしまうだけでなく、場合によっては、実際にさらなる損傷を引き起こすおそれがある。
【0017】
本開示に従って提供されるラグスクリュー110は、多孔質内殖材料領域117A、117Bを包含させることにより、これらの問題の幾つかに対処している。多孔質内殖材料領域117A、117Bは、周囲の骨組織が一体化して、ラグスクリュー110を安定的に固定することができる領域を提供する。特定の材料、例えば、前述のOSTEOSYNC(登録商標)を使用する場合、ラグスクリュー110を骨F内に安定的に固定するために、高度の固定を迅速に行うことができる。したがって、本開示に従って提供されるラグスクリュー110は、不十分な固定のために、ぐらつきおよび脱落する傾向が少ない。
【0018】
ここから、図7~9を参照して、骨プレート720、820、920および多孔質内殖材料領域717、817、917を有するラグスクリュー710、810、910を含む整形外科的外傷処置システム700、800、900のさらなる例示的な実施形態を説明する。図7に図示された外傷処置システム700は、図1~6のシステム100と同様であり、さらなる固定のために、さらなる多孔質内殖材料領域722が、骨プレート720のネック723に追加されている。図8に図示された外傷処置システム800は、図1~6のシステム100と同様であるが、本明細書にさらに記載されるように、治療剤を送達するために、ラグスクリュー810のカニューレ挿入部812に連結している治療インターフェース830を有する。図9に図示された外傷処置システム900は、図7に図示された外傷処置システム700と同様であるが、ラグスクリュー910の幾つかのねじ山914が、ねじ山914間に配置された多孔質内殖材料領域ではなく、多孔質内殖材料領域917として形成されている。このため、整形外科的外傷処置システム100、700、800、900の多くの変形例を、本開示に従って形成することができることを理解されたい。
【0019】
ここから、図10~14を参照して、図1~6の整形外科的外傷処置システム100が、治療剤を大腿骨F内の埋込み部位に送達するために使用される様子を説明する本明細書で使用する場合、「治療剤」は、治療効果を達成するために、埋込み部位に投与することができる任意の物質または物質の組み合わせであってよい。例示的な治療剤は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤、成長因子、例えば、骨形成タンパク質(BMP)および幹細胞を含むが、これらに限定されない。
【0020】
治療剤を送達するために、大腿骨F中のラグスクリュー110をガイドするのを助けるのに使用されるガイドロッド1010を、図10に図示されるように、ラグスクリュー110の装置本体111内のカニューレ挿入部112および取付けアセンブリ130から除去する。次いで、最初に図11に図示された治療剤注入器1110を、取付けアセンブリ130のカニューレ挿入部135およびラグスクリュー110の装置本体111のカニューレ挿入部112中に配置する。注入器1110は、一端1112がキャップ1113で覆われた細長い円筒管1111を含むことができる。キャップ1113により、配置中に注入器1110内に治療剤を保持するのを助けることができ、また、配置中に骨材料が管1111に入るのを防ぐことができる。同骨材料は、管1111を満たし、塞いでしまうおそれがある。図12~14に図示されるように、注入器1110がラグスクリュー110内に配置されると、管1111内に導入された治療剤は、管1111に形成された開口部1114を通り、カニューレ挿入部112に流体接続している多孔質内殖材料領域117A、117Bの孔を通って移動し、周囲の組織、すなわち、装置本体111の外側の1つ以上の領域に到達することができる。このため、多孔質内殖材料領域117A、117Bも、埋込み部位の種々の領域への治療剤の標的送達のために、ラグスクリュー110の領域に配置することができる。
【0021】
一部の実施形態では、ここから、図15~17を参照すると、治療剤の貯留部1510は、埋込み部位への治療剤送達のために、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に配置される。貯留部1510を、取付けアセンブリ130のカニューレ挿入部135内に押し込むことができ、次いで、図16に図示されるプッシュロッド1610により、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112内に押し込むことができる。ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に配置されると、図17に図示されるように、貯留部1510内の治療剤は、貯留部1510内の開口部1511および多孔質内殖材料領域117A、117Bを通って移動し、埋込み部位の周囲の組織に到達することができる。
【0022】
図17に図示されるように、装置本体111は、装置本体111の外面115に形成され、カニューレ挿入部112に流体接続している複数の流体チャネルとして図示される、1つ以上の流体チャネル1711A、1711Bを含むことができる。幾つかの流体チャネル、例えば、流体チャネル1711Aは、治療剤送達のために、多孔質内殖材料領域117Aをカニューレ挿入部112に流体接続させるために、装置本体111の非ねじ山部分に位置する多孔質内殖材料領域117Aに流体接続していてもよい。幾つかの流体チャネル、例えば、流体チャネル1711Bを、2つの隣接するねじ山114間に位置する開口部1712Bを画定するように形成することができる。その結果、流体チャネル1711Bは、治療剤送達のために、多孔質内殖材料領域117Bをカニューレ挿入部112に流体接続している。装置本体111が、実質的に非多孔質材料または最小多孔質材料を含む場合、流体チャネル1711A、1711Bは、多孔質内殖材料領域117A、117Bとカニューレ挿入部112との間の、治療剤または他の流体のための主な移動経路を表すことができる。装置本体111が、多孔質材料を含む場合、1つ以上の流体チャネルを、カニューレ挿入部112と多孔質内殖材料領域117A、117Bとの間の第2または第1の移動経路として依然として含むことができることを理解されたい。
【0023】
一部の実施形態では、2つのプラグ1721A、1721Bとして図示されている1つ以上のプラグが、カニューレ挿入部112に配置され、カニューレ挿入部112と共に流体密封部を形成するように構成されている。その結果、カニューレ挿入部112内の流体が、プラグ1721A、1721Bを超えて移動しない。プラグのうちの1つ、例えば、プラグ1721Aは、カニューレ挿入部112内の流体に圧力を加えるために、カニューレ挿入部112内で変位するように構成されているプランジャーであってよい。例えば、プランジャー1721Aに荷重を加え、プランジャー1721Aをカニューレ挿入部112内の他方のプラグ1721Bに向かって押すことにより、カニューレ挿入部112内に保持された流体に対する流体圧を維持するように構成されているばね1722が含まれてよい。ばね1722は、プランジャー1721Aとカニューレ挿入部112への入口1724を覆うように配置されているキャップ1723との間に保持することができる。一部の実施形態では、ばね1722は、キャップ1723の一部であり、キャップ1723が入口1724にねじ込まれると、プランジャー1721Aに荷重を加える。
【0024】
一部の実施形態では、ここから、図18を参照して、治療剤が充填されたシリンジ1810を、治療剤を送達するために、取付けアセンブリ130のカニューレ挿入部135およびラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に連結させることができる。一旦、シリンジ1810の送達ポート1811が、取付けアセンブリ130のカニューレ挿入部135に連結されると、シリンジ1810のプランジャー1812を、多孔質内殖材料領域117A、117Bを通した送達のために、治療剤をラグスクリュー110に強制的に送達するように押し下げることができる。シリンジ1810は、例えば、埋込み部位に対して外部に保持することができる。シリンジ1810は、治療剤送達のために取付けアセンブリ130に連結しているように示されているが、シリンジ1810は、治療剤を送達するために、埋込み後にラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に直接連結することができることを理解されたい。
【0025】
一部の実施形態では、ここから、図19を参照して、送達貯留部1930を、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112内に配置することができる。送達貯留部1930は、一方の端部で送達貯留部1930と、反対側の端部で治療剤の外部貯留部1940、例えば、注入ポンプまたは他のタイプのポンプの貯留部と流体接続するように構成されている管1931を含むことができる。このような実施形態では、外部貯留部1940は、管1931を介して治療剤を送達貯留部1930と連通させて、治療剤を組織に送達することができる。代替的には、外部貯留部1940を、送達貯留部1930を再充填するのに使用することができる。
【0026】
一部の実施形態では、ここから、図20を参照して、外部貯留部2010は、治療剤を送達するために、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に直接接続することができる。外部貯留部2010は、骨プレート120に形成されたインターフェース開口部122内に嵌まり、チューブ2012により治療剤源に接続しているプラグ2011を含むことができる。治療剤を、多孔質内殖材料領域117A、117Bを通した送達のために、骨プレート120のネック123を介して、チューブ2012を通してラグスクリュー110内に加圧することができる。
【0027】
一部の実施形態では、ここから、図21を参照して、ラグスクリュー110に、埋込み後に治療剤をロードすることができる。ラグスクリュー110に治療剤がロードされた後、骨プレート120に形成されたインターフェース開口部122を、治療剤がインターフェース開口部122を通って漏出しないように、ストッパー2110で塞ぐことができる。
【0028】
前述から、本開示に従って形成された整形外科的外傷処置システム100、700、800、900は、埋込み部位およびその周囲の組織に治療剤を送達するために、多くの異なる方法で変更することができると理解されたい。治療剤の送達により、骨の治癒速度が向上し、さらに、埋込み失敗のリスクを低下させることができる。
【0029】
ここから、図22~23を参照して、図1~6のラグスクリュー110と連結している髄内(IM)釘2220の形態にある第2の装置を含む、整形外科的外傷処置システム2200の別の例示的な実施形態を説明する。図22~23の整形外科的外傷処置システム2200のIM釘2220は、図1~6のシステム100の骨プレート120の代わりに使用することができると理解されたい。図から分かるように、IM釘2220は、大腿骨幹内に埋め込むことができ、実質的に非多孔質または最小多孔質材料、例えば、非多孔質チタンを含む装置本体2221と、多孔質内殖材料領域2223、例えば、前述のOSTEOSYNC(登録商標)を含む内殖部2222とを含むことができる。内殖部2222は、内殖部2222が大腿骨Fの大転子内に実質的に存在しかつそれに隣接するように、IM釘2220の長手方向端部2224Aに隣接して配置することができる。IM釘2220は、装置本体2221の長手方向端部2224Aから装置本体2221の反対側の長手方向端部2224Bまで延び、治療剤送達のために多孔質内殖材料領域2223に流体接続しているカニューレ挿入部2225を含むことができる。一部の実施形態では、多孔質内殖材料領域2223は、1.0~2.0インチ、例えば、1.5インチの長さを画定する。これは、良好な固定特性を提供することが見出されている。ラグスクリュー開口部2226が、IM釘2220の装置本体2221に形成されており、図23に図示されているように、埋込み時にラグスクリュー110を受け入れ、保持する。一部の実施形態では、治具2230は、IM釘2220に連結しており、外科医が取付けアセンブリ130を使用してラグスクリュー110を埋め込むのを補助する。治具2230は、ラグスクリュー開口部2226と整列した標的開口部2232を含む標的部2231を含むことができる。このような治具の多くは公知であるため、簡潔にするために、さらなる説明を省略する。
【0030】
前述のように、整形外科的外傷処置システムについての主な故障モードは、大腿骨頭付近で生じることが見出されている。また、IM釘を使用する場合、主な故障モードは、大転子付近で生じることも見出されている。多孔質内殖材料領域2223が埋め込まれた際に大転子付近に存在する状態になるように、多孔質内殖材料領域2223をIM釘2220上に配置することにより、IM釘2220のさらなる固定がこの領域において起こり、整形外科的外傷処置システム2200を安定して固定することができ、失敗のリスクを下げることができる。
【0031】
ここから、図24を参照すると、図22図23の整形外科的外傷処置システム2200が示されており、図11図14に図示された注入器1110が、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に配置されて、前述のように、多孔質内殖材料領域117A、117Bを通してラグスクリュー110を取り囲む組織に治療剤を送達する。一部の実施形態では、IM釘2220の内殖部2222も、IM釘2220に形成されたポート2227を介して注入器1110に流体接続して、IM釘2220のカニューレ挿入部2225に、ひいては、IM釘2220の内殖部2222を取り囲む組織に治療剤を送達する。
【0032】
ここから、図25~27を参照すると、図22~23の整形外科的外傷処置システム2200が示されており、図15~17と同様に、貯留部2510が、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に配置されている。
【0033】
ここから、図28を参照すると、図22~23の整形外科的外傷処置システム2200が示されており、図19と同様に、送達貯留部2810が、チューブ2831により外部貯留部2830に接続しているラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に配置されている。
【0034】
ここから、図29を参照すると、図22~23の整形外科的外傷処置システム2200が示されており、外部貯留部2930が、チューブ2931およびプラグ2932を介して、ラグスクリュー110のカニューレ挿入部112に直接接続している。
【0035】
前述から、本発明に従って提供される整形外科的外傷処置システム2200は、ラグスクリュー110および/またはIM釘2220を取り囲む組織に治療剤を送達するために、多くの異なる方法で構成することができると理解されたい。
【0036】
ここから、図30を参照して、図22~23の整形外科的外傷処置システム2200の、治具2230が取り付けられていない状態を説明する。図から分かるように、IM釘2220を挿入するために、釘孔が、大腿骨Fの大転子に形成され、ラグスクリュー110を挿入するために、ねじ孔が、大腿骨幹に形成されている。一旦埋め込まれると、IM釘2220の内殖部2222は、IM釘2220および大転子の形状のために、大転子からわずかに突出することがある。内殖部2222が多孔質であるため、外科医は、内殖部2222の突出部分で容易に切断することができ、その結果、IM釘2220は、大腿骨Fから突出しない。また、ラグスクリュー110を、ラグスクリュー110の全体が大腿骨F内に存在するように移植することもできる。
【0037】
ここから、図31を参照して、図22~23の整形外科的外傷処置システム2200を説明するが、ねじ山3114間に多孔質内殖材料領域3117のみを有するラグスクリュー3110の代替実施形態が、ラグスクリュー3110の外面3115に形成されている。他の全ての点において、ラグスクリュー3110は、前述のラグスクリューに類似していてもよいため、簡潔にするために、さらなる説明を省略する。
【0038】
本発明を、少なくとも1つの実施形態に関して説明したが、本発明は、本開示の精神および範囲内でさらに修正することができる。したがって、本願は、その一般的な原理を使用して、本発明の任意の変形例、使用または適応を包含することが意図される。さらに、本願は、本発明が関係し、添付の特許請求の範囲の範囲内にある、当技術分野における公知または慣例の実施の範囲内に入るような、本開示からの逸脱を包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31