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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/56 20060101AFI20240312BHJP
   A01D 69/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A01F12/56 Z
A01D69/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020108276
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002503
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】入江 信行
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-187757(JP,A)
【文献】実開昭62-049932(JP,U)
【文献】特開2017-055711(JP,A)
【文献】特開2016-167995(JP,A)
【文献】特開2013-005784(JP,A)
【文献】特開2013-005783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/56
A01D 69/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃装置により刈り取った穀稈を搬送部により搬送し、扱室内に扱胴を有する脱穀部に供給するコンバインであって、
駆動源からの動力の伝達を受けて回転する扱胴入力軸と、
前記扱胴入力軸から扱胴軸に伝達される回転速度を変速させるための中間軸を有する脱穀変速装置と、
前記扱胴入力軸、前記中間軸、および前記扱胴軸の前記扱室の前壁からの延出部分を支持する扱胴伝動ケースと、を備え、
前記扱胴伝動ケースは、前記前壁と前記搬送部とによって支持されており、
前記扱胴入力軸は、前記脱穀変速装置の入力軸部としての上手側軸部と、前記脱穀変速装置の出力軸部として前記脱穀変速装置を介して前記上手側軸部の回転動力の伝達を受ける下手側軸部とを同軸状に配置した構成を有する
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記扱胴伝動ケースは、前記搬送部に対して前記搬送部の上面部に支持されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記扱胴伝動ケースは、前記中間軸を支持する変速ケース部を有し、
前記変速ケース部は、前記搬送部の上面部に対して前記扱胴伝動ケースを支持する支持脚部を有する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記脱穀変速装置は、前記変速ケース部から機体左右方向の一側に向けて延設された変速レバーを有し、
前記搬送部に設けられ、前記変速レバーを支持するレバー支持部と、
前記レバー支持部に設けられ、前記変速レバーの少なくとも変速操作方向についての移動を規制するレバー移動規制部と、を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部にて刈り取られ搬送装置により搬送された穀稈を扱胴により脱穀する脱穀部を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刈刃装置により刈り取った穀稈を搬送装置により搬送し、扱胴を有する脱穀部に供給する構成を備えたコンバインがある。このようなコンバインにおいて、例えば収穫する作物の種類や量等に応じて、回転動作する扱胴の回転速度の変速を行うための変速装置である脱穀変速装置を備えたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
脱穀変速装置は、エンジン等の駆動源からの動力の伝達を受けて回転する扱胴入力軸と、機体の前後方向を軸方向とする扱胴の回転軸である扱胴軸との間に設けられる。脱穀変速装置は、扱胴入力軸から扱胴軸までの伝動機構において、互いに噛合するギヤの組合せを変更することで、扱胴軸に伝達される回転動力の回転速度を変速させる。
【0004】
特許文献1には、脱穀変速装置として、機体の左右方向を軸方向とする扱胴入力軸に、変速用のギヤが形成された移動体をスプライン嵌合によって軸方向に移動可能に設け、扱胴入力軸と平行に配されるとともにベベルギヤを介して扱胴軸に噛合する中間軸を有する構成が開示されている。脱穀変速装置は、中間軸を介して扱胴入力軸の回転動力を扱胴軸に伝達し、移動体の移動操作を受け、高速、中速、低速の3段階の変速を行う。脱穀変速装置に対する変速操作は、移動体を移動させる変速レバーの操作により行われる。
【0005】
特許文献1に開示された構成において、脱穀変速装置は、脱穀部において扱胴を収容する扱室の前壁の前方に設けられている。すなわち、扱胴軸は、脱穀部の前壁から前方に延出されており、前壁からの突出部分において、脱穀変速装置を介した回転動力を受けるように構成されている。そして、脱穀変速装置を含む伝動機構を構成する軸等を支持・収容する伝動ケースは、脱穀部の前壁に対して支持固定されている。なお、変速レバーは、伝動ケースの上側に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-085942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脱穀部の前壁は、扱胴軸を介して重量物である扱胴を支持する部分であり、扱胴の回転動作の入切が頻繁に行われることで、大きな負担を受ける部分となる。このため、特許文献1に開示された構成のように、伝動ケースを脱穀部の前壁に対して支持した構成によれば、前壁の負担が大きくなるという問題がある。
【0008】
このように、従来の構成によれば、扱胴の支持荷重を受ける脱穀部の前壁に対して伝動ケースを支持するため、脱穀部の前壁において十分な支持強度が得られない場合、前壁の負担が過大となる。脱穀部の前壁の負担が過大となることは、例えば前壁の変形や伝動ケースの傾き等の不具合を生じさせる原因となり得る。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、脱穀部の前壁の負担を軽減することができるとともに、扱胴伝動ケースを堅固に支持することができ、変速動作をともなう扱胴への回転動力の伝達を安定して行うことができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るコンバインは、刈刃装置により刈り取った穀稈を搬送部により搬送し、扱室内に扱胴を有する脱穀部に供給するコンバインであって、駆動源からの動力の伝達を受けて回転する扱胴入力軸と、前記扱胴入力軸から扱胴軸に伝達される回転速度を変速させるための中間軸を有する脱穀変速装置と、前記扱胴入力軸、前記中間軸、および前記扱胴軸の前記扱室の前壁からの延出部分を支持する扱胴伝動ケースと、を備え、前記扱胴伝動ケースは、前記前壁と前記搬送部とによって支持されているものである。
【0011】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記扱胴伝動ケースは、前記搬送部に対して前記搬送部の上面部に支持されているものである。
【0012】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記扱胴伝動ケースは、前記中間軸を支持する変速ケース部を有し、前記変速ケース部は、前記搬送部の上面部に対して前記扱胴伝動ケースを支持する支持脚部を有するものである。
【0013】
本発明の他の態様に係るコンバインは、前記コンバインにおいて、前記脱穀変速装置は、前記変速ケース部から機体左右方向の一側に向けて延設された変速レバーを有し、前記搬送部に設けられ、前記変速レバーを支持するレバー支持部と、前記レバー支持部に設けられ、前記変速レバーの少なくとも変速操作方向についての移動を規制するレバー移動規制部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、脱穀部の前壁の負担を軽減することができるとともに、扱胴伝動ケースを堅固に支持することができ、変速動作をともなう扱胴への回転動力の伝達を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るコンバインにおける動力伝達構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースおよびその近傍の構成を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースおよびその近傍の構成を示す平面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースおよびその近傍の構成を示す左側面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースおよびその近傍の構成を示す右側面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースおよびその近傍の構成を示す正面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースの構成を示す平面断面図である。
図11図10におけるB-B断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る扱胴伝動ケースの構成を示す正面断面図である。
図13図12におけるD-D断面図である。
図14】本発明の一実施形態に係る変速レバーの連結構造を示す平面部分断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係るレバー支持部の構成を示す正面図である。
図16】本発明の一実施形態に係るレバー支持部の構成を示す平面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、脱穀変速装置を含む扱胴への動力の伝動機構を収容する扱胴伝動ケースの支持構成を工夫することにより、脱穀部の前壁の負担を軽減するとともに、扱胴伝動ケースの支持を強固なものとし、変速動作をともなう扱胴への回転動力の伝達の安定化を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
[コンバインの全体構成]
まず、図1から図4を用いて、本実施形態に係るコンバイン1の全体構成について説明する。なお、以下の説明では、コンバイン1の前方に向かって左側(図3における下側)および右側(図3における上側)を、それぞれコンバイン1における左側および右側とする。
【0018】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るコンバイン1は、刈り取った圃場の作物を機体内に掻き込み、脱穀・選別・穀粒貯留し、適宜機外に搬出可能とした収穫機としての普通型コンバインである。コンバイン1は、自走可能な走行機体2と、走行機体2の前端部に設けられた刈取部3を有する。刈取部3は、稲や麦等の未刈り穀稈を刈り取りながら取り込む刈取装置として構成されたものであり、走行機体2に対して昇降可能に取り付けられている。
【0019】
走行機体2は、左右一対のクローラ部5,5を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部4を備える。左右のクローラ部5,5間には、機体フレーム6が架設されている。各クローラ部5は、その前端部に設けられた駆動スプロケット5aを含む複数の回転体と、これらの回転体に巻回された履帯5cとを有する。駆動スプロケット5aは、コンバイン1が備えるエンジン25の動力の伝達を受けて回転駆動する。
【0020】
機体フレーム6上の左側には、刈取部3により刈り取られて供給された穀稈を脱穀する脱穀部7と、脱穀部7により脱穀された穀粒を選別する選別部8とが設けられている。脱穀部7および選別部8は、脱穀部7を上段、選別部8を下段とした態様で配設されている。
【0021】
機体フレーム6上において、脱穀部7および選別部8の右方には、選別部8で選別された穀粒(清粒)を貯留するグレンタンク10を有する穀粒貯留部9が設けられている。グレンタンク10内には、グレンタンク10の排出口に向けて貯溜穀粒を搬送する下部排出コンベヤ11が設けられている(図4参照)。グレンタンク10の排出口に連通するように、縦搬送コンベヤ12が上下方向に沿って立設されている。縦搬送コンベヤ12の上端部には、穀粒排出コンベヤ13が連設されている。穀粒排出コンベヤ13は、水平方向に旋回可能かつ水平軸回りに上下揺動可能に設けられている。これらのコンベヤにより、グレンタンク10内の穀粒が搬送され、穀粒排出コンベヤ13の先端部に設けられた籾投口14からトラックの荷台やコンテナ等に排出される。
【0022】
コンバイン1は、オペレータが搭乗する運転部15を備える。運転部15は、機体フレーム6上において、穀粒貯留部9の前方の位置、つまり機体フレーム6上における右側前部の位置に設けられている。したがって、運転部15は、脱穀部7に対して機体左右方向の一側(右側)に設けられている。
【0023】
運転部15は、キャビン16により覆われている。運転部15には、運転座席17と、運転座席17の前方に配置された操縦ハンドル18と、主変速レバー19、副変速レバー、作業クラッチレバー等の各種操作部とが設けられている(図2参照)。作業クラッチレバーは、脱穀クラッチ57および刈取クラッチ75(図4参照)を入り切り操作するための作業操作具である。
【0024】
機体フレーム6上における運転部15の下方には、駆動源としてのエンジン25が設けられている。エンジン25は、運転部15の下方の空間が用いられ、機体フレーム6上の前部の右側のスペースに設置されている。エンジン25は、例えばディーゼルエンジンである。
【0025】
刈取部3について説明する。刈取部3は、搬送装置としてのフィーダ30と、穀物ヘッダ(プラットホーム)31と、刈刃装置32と、左右一対の分草体33,33と、掻込リール34とを有する。
【0026】
フィーダ30は、刈取部3にて刈り取られた穀稈を搬送して脱穀部7へと供給する。フィーダ30は、ハウジングとしてのフィーダハウス35と、フィーダハウス35内に設けられた穀稈搬送用のコンベヤ36(図4参照)とを有する。フィーダ30は、キャビン16の左方に位置し、平面視で長手方向を前後方向とする略四角筒状に構成されたフィーダハウス35の後端開口部を脱穀部7の前側の扱口7aに連通させた状態で設けられている。
【0027】
穀物ヘッダ31は、横長バケット状に構成され、フィーダハウス35の前端開口部に連通するように、フィーダ30の前側に連設されている。穀物ヘッダ31内には、掻込オーガ(プラットホームオーガ)37が設けられている。掻込オーガ37は、左右方向を回転軸方向として回転可能に軸架されている。
【0028】
刈刃装置32は、穀物ヘッダ31の前下端縁部に設けられており、バリカン状に構成されている。左右一対の分草体33,33は、穀物ヘッダ31の前側の左右側部から前方へ突出するように設けられている。掻込リール34は、タインバー付きのリールであり、掻込オーガ37の前上方の位置に設けられている。掻込リール34は、穀物ヘッダ31に基端部が枢支された左右一対のリール支持アーム34a,34aの先端部間に、左右方向を回転軸方向として回転可能に支持されている。掻込リール34は、回転しながら連続的に穀稈の着莢部に作用し、穀稈の着莢部を掻込オーガ37側へ掻き込む。刈取部3の各部の動作には、各種伝動機構を介して伝達されるエンジン25の動力が用いられる。
【0029】
フィーダハウス35内のコンベヤ36は、その送り終端側を軸支する駆動軸として、脱穀部7の前部に設けられ左右方向を軸方向とする刈取入力軸(フィーダハウスコンベヤ軸)38を有する。フィーダ30の後端部は、刈取入力軸38を回動軸として、走行機体2側に対して回動可能に支持されている。また、フィーダハウス35の下面部と機体フレーム6との間には、油圧シリンダである昇降用シリンダ39が介設されている。
【0030】
刈取部3は、昇降用シリンダ39の伸縮動作にともなう走行機体2に対するフィーダ30の回動により昇降動作するように設けられている。刈取部3の昇降動作により、刈取部3の高さ調節が行われる。刈取部3の昇降動作は、運転部15に設けられた所定の操作部により操作される。
【0031】
フィーダ30の後側には、コンベヤ36により搬送されてくる穀稈を扱口7aへと送り込むフロントロータ26が設けられている。フロントロータ26は、コンベヤ36の終端と扱口7aとの間に設けられている。フロントロータ26は、ビータ等と称される略円筒状のロータ本体27と、左右方向を軸方向とするフロントロータ軸28とを有する。フロントロータ軸28は、ロータ本体27の中心軸部に配され、ロータ本体27と一体的に回転する。フロントロータ26は、走行機体2の左前側の部分の上方に形成されたフロントロータ室29(図7参照)内に設けられている。
【0032】
フィーダ30により搬送された穀稈は、コンベヤ36の終端から、フロントロータ26によって扱口7aから脱穀部7の扱室7b内へと投入される。フロントロータ室29内にフロントロータ26を設けた構成は、フィーダ30とともに、コンバイン1における搬送部20を構成している。
【0033】
脱穀部7および選別部8について説明する。脱穀部7は、扱口7aを前側に開口させた扱室7b内に設けられた扱胴40と、扱胴40の下方に配置された受網42とを有する。扱室7bは、機体フレーム6上に設けられた機枠によって形成されている。
【0034】
扱胴40は、前後方向を軸方向とする扱胴軸41により回転可能に支持されている。扱胴40は、扱胴軸41を中心軸に沿わせた円筒状の本体部を有し、本体部の外周面には、螺旋状の羽根が設けられている。扱胴40の上側には、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を調節するための複数の送塵弁が角度調節可能に設けられている。受網42は、穀粒を漏下させるものであり、扱胴40の下部の外周面に沿うように設けられている。
【0035】
選別部8は、受網42の下方に配置された揺動部としての揺動選別盤43と、駆動源からの回転動力によって揺動選別盤43を揺動させる揺動軸44aを含む揺動機構44と、一番コンベヤ45と、二番コンベヤ46と、唐箕47とを有する。なお、図4に示すように、唐箕47の前方には、プレファン71が設けられており、唐箕47の後方には、セカンドファン72が設けられている。
【0036】
揺動選別盤43は、フィードパン、フィードパンの後方に配置され穀粒漏下量を調節するチャフシーブ、チャフシーブの下方に配置されたグレンシーブ等の比重選別用の構成を有する。一番コンベヤ45は、一番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる一番樋内に配置されている。二番コンベヤ46は、一番コンベヤ45の後方の位置において、二番穀粒を集約するように機体幅方向に延びる二番樋内に配置されている。唐箕47は、揺動選別盤43に対して前下方から後上方へ抜ける選別風を送風する。
【0037】
また、脱穀部7および選別部8の配設部分の機体右側に、還元コンベヤ48が設けられている(図4参照)。還元コンベヤ48は、下端部を二番コンベヤ46近傍に位置させて二番コンベヤ46に連設されるとともに、上端部を扱胴40の前端部の近傍に位置させ、前上がりの傾斜状に延設されている。還元コンベヤ48の右側には、上下方向に延伸した揚穀コンベヤ49が設けられている。揚穀コンベヤ49は、一番コンベヤ45によって送られてくる一番物をグレンタンク10内に搬送する。
【0038】
以上のような構成を備えたコンバイン1は、圃場において、刈取入力軸38を中心(支軸)としたフィーダ30の昇降動作により刈取部3を地上に対して所望の高さ(収穫作物である穀稈の刈取高さ)となるまで上昇させ、非作業状態から作業状態となり、その状態で走行機体2により走行する。これにより、コンバイン1は、収穫作物を左右の分草体33,33により刈取対象と非刈取対象とに分草し、刈取対象の穀稈の穂先側の着莢部を掻込リール34により掻き込みながら刈刃装置32により穀稈の着莢部を刈り取る。
【0039】
所望の刈取位置で刈り取られた穀稈の着莢部は、回転駆動する掻込オーガ37により穀物ヘッダ31内に掻き込まれるとともに、穀物ヘッダ31の左右中央部のフィーダハウス35の入口付近に集められ、フィーダハウス35内のコンベヤ36によりフィーダハウス35内を通ってフロントロータ26により扱口7aに投入され、脱穀部7に供給される。
【0040】
脱穀部7に供給された穀稈の着莢部は、脱穀部7により脱穀処理される。具体的には、脱穀部7に供給された穀稈は、回転する扱胴40により後方に向けて搬送されながら、主に扱胴40と受網42との間で脱穀される。受網42の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は、受網42から漏下する。受網42から漏下しない藁屑等は、扱胴40の搬送作用によって、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
【0041】
一方、脱穀部7で脱穀処理され受網42から漏下した穀粒は、選別部8により選別処理される。具体的には、扱胴40にて脱穀されて受網42から漏下した脱穀物は、揺動選別盤43による比重選別作用と、唐箕47による風選別作用とにより、精粒等の穀粒(一番物)と、枝梗付き穀粒等の穀粒と藁の混合物(二番物)と、藁屑等とに選別されて取出される。
【0042】
選別部8における選別により揺動選別盤43から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ45とこれに連設された揚穀コンベヤ49とによってグレンタンク10へ搬送される。二番物は、二番コンベヤ46とこれに連設された還元コンベヤ48によって扱胴40の脱穀始端側に戻され、再度脱穀処理を受ける。藁屑等は、選別部8の後部に設けられた排塵口から圃場に排出される。
【0043】
次に、本実施形態に係るコンバイン1の動力伝達構成について、図4を用いて説明する。コンバイン1は、エンジン25の回転動力により、刈取部3、走行部4、脱穀部7、選別部8、および穀粒貯留部9を駆動させる。
【0044】
エンジン25は、第1出力軸25aおよび第2出力軸25bを有する。第1出力軸25aの回転動力は、走行部4、脱穀部7、選別部8、および刈取部3に伝達される。第2出力軸25bの回転動力は、穀粒貯留部9に伝達される。なお、第2出力軸25bの回転動力は、エンジン25に対して設けられた冷却ファン25dのファン軸に伝達される。また、エンジン25は、昇降用シリンダ39等を作動させるチャージポンプ54を駆動させる作業機ポンプ軸を有する。
【0045】
走行部4への動力伝達系に関し、第1出力軸25aの回転動力は、第1ベルト伝動機構51によりHST入力軸52に伝達され、走行用HSTおよび旋回用HSTを含むトランスミッション53に入力される。ここで、「HST」とは、油圧ポンプを駆動させることで発生させた油圧を油圧モータで再び回転力に変換する方式を採用した油圧式無段変速装置である。トランスミッション53の駆動力により、走行部4を構成するクローラ部5の駆動スプロケット5aが回転駆動させられる。
【0046】
脱穀部7への動力伝達系に関し、第1出力軸25aの回転動力は、第2ベルト伝動機構55により脱穀部入力軸56に伝達される。第2ベルト伝動機構55には、第1出力軸25aの回転動力を脱穀部入力軸56に任意に断続して伝える脱穀クラッチ57が設けられている。
【0047】
脱穀部入力軸56の回転動力は、第3ベルト伝動機構58により扱胴入力軸59に伝達される。扱胴入力軸59の回転動力は、脱穀変速装置60を介して扱胴軸41に伝達される。脱穀変速装置60は、扱胴入力軸59から扱胴軸41に入力される回転動力について、高速・低速の2段階の変速を行う。
【0048】
このような構成により、エンジン25の駆動力が、脱穀部7へと伝達される。そして、運転部15に設けられた作業クラッチレバーの操作により、脱穀クラッチ57がON/OFFされ、脱穀部7への動力伝達の断続が行われる。
【0049】
選別部8への動力伝達系に関し、脱穀部入力軸56は、唐箕47の支持軸部を有し、脱穀部入力軸56の回転動力は、第4ベルト伝動機構61により、脱穀中間軸62に軸支されたプーリ回転体63に伝達される。プーリ回転体63の回転動力は、所定の伝動機構により、プレファン71および唐箕47に伝達される。また、脱穀部入力軸56の回転動力は、所定の伝動機構により、一番コンベヤ45を回転させる一番コンベヤ軸45a、セカンドファン72を回転させるセカンドファン軸72a、および二番コンベヤ46を回転させる二番コンベヤ軸46aにそれぞれ伝達される。
【0050】
一番コンベヤ軸45aの回転動力は、所定の伝動機構により揚穀コンベヤ49に伝達される。二番コンベヤ軸46aの回転動力は、第5ベルト伝動機構64により揺動機構44の揺動軸44aに伝達される。二番コンベヤ軸46aの回転動力は、ベベルギヤを介して還元コンベヤ48に伝達される。
【0051】
刈取部3への動力伝達系に関し、プーリ回転体63の回転動力は、第6ベルト伝動機構73によりフロントロータ軸28に伝達される。第6ベルト伝動機構73には、プーリ回転体63の回転動力をフロントロータ軸28に任意に断続して伝える刈取クラッチ75が設けられている。フロントロータ軸28の回転動力は、第1チェン伝動機構65により刈取入力軸38に伝達される。刈取入力軸38の回転駆動により、フィーダハウス35内のコンベヤ36が作動する。
【0052】
刈取入力軸38の回転動力は、第2チェン伝動機構66によりPF(プラットホーム)駆動軸67に伝達される。PF駆動軸67の回転動力は、第3チェン伝動機構68を介して掻込オーガ37を回転させるPFオーガ軸37aに伝達される。また、PF駆動軸67の回転動力は、第7ベルト伝動機構69を介して刈刃装置32を駆動させる刈刃駆動軸32aに伝達される。また、PF駆動軸67の回転動力は、リールカウンタ軸70を含む第4チェン伝動機構76により、掻込リール34を回転させるリール軸34bに伝達される。
【0053】
このような構成により、エンジン25の駆動力が、刈取部3へと伝達される。そして、運転部15に設けられた作業クラッチレバーの操作により、刈取クラッチ75がON/OFFされ、刈取部3への動力伝達の断続が行われる。
【0054】
穀粒貯留部9への動力伝達系に関し、第2出力軸25bの回転動力は、グレンタンク中間軸77を含む動力伝達機構により、下部排出コンベヤ11の回転軸11aに伝達され、回転軸11aの回転動力は、ベベルギヤを介して縦搬送コンベヤ12の回転軸12aに伝達される。回転軸12aの回転動力は、所定の伝動機構により穀粒排出コンベヤ13の回転軸13aに伝達される。なお、穀粒貯留部9は、グレンタンク中間軸77の回転動力の伝達を受けて駆動する構成として、吸引ファン軸78aを有する吸引ファン78、およびコンプレッサ軸79aを有するコンプレッサ79を備えている。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るコンバイン1は、刈取部3の刈刃装置32により刈り取った穀稈を搬送部20により搬送し、扱室7b内に扱胴軸41を有する脱穀部7に供給するものである。そして、コンバイン1は、扱胴40への動力伝達構成として、エンジン25からの動力の伝達を受けて回転する扱胴入力軸59と、扱胴入力軸59から扱胴40の回転軸である扱胴軸41に伝達される回転速度を変速させるための中間軸125を有する脱穀変速装置60と、扱胴伝動ケース80とを備える。扱胴40への動力伝達構成について、図5から図14を用いて説明する。
【0056】
図5から図14に示すように、扱胴伝動ケース80は、扱室7bを形成する前壁81の上部の前側に設けられている。前壁81は、前後方向を厚さ方向とする鉛直板状の部分であり、扱胴40の前方に位置している。前壁81は、鉛直状の平面である前面81aを有する。前壁81は、扱胴40の後方に位置する扱室7bの後壁82(図1図3参照)とともに、扱胴軸41を介して扱胴40を支持する。
【0057】
前壁81は、後壁82、左側壁面83、および右側壁面84とともに、平面視で前後方向を長手方向とする矩形状の空間である扱室7bを形成している。扱室7bを形成する前後左右の各壁は、複数の板状部材等により構成されている。
【0058】
扱胴伝動ケース80は、扱胴入力軸59、脱穀変速装置60、および扱胴軸41の前方延出部である扱胴軸延出部41aを収容するケースである(図10参照)。扱胴伝動ケース80は、扱胴入力軸59、脱穀変速装置60の中間軸125、および扱胴軸延出部41aを支持する。扱胴軸延出部41aは、扱胴軸41の前端部であり、扱胴40を収容する扱室7bの前壁81からの扱胴軸41の延出部分である。
【0059】
扱胴伝動ケース80は、扱胴入力軸59を収容する主伝動ケース部85と、主伝動ケース部85に対して一体的に設けられ脱穀変速装置60を収容する変速ケース部86とを有する。変速ケース部86は、脱穀変速装置60の中間軸125を支持する部分を含む。また、扱胴伝動ケース80は、変速ケース部86と一体的に設けられたケース部分として、扱胴軸延出部41aを収容する縦ケース部87を有する。
【0060】
主伝動ケース部85は、左右方向を中心軸方向とする略円筒状の外形に沿うケース部分である。主伝動ケース部85は、左右方向について、左側の端部を、扱胴軸延出部41aの右側近傍に位置させるとともに、右側の端部を、右側壁面84と略同じ位置に位置させている。主伝動ケース部85は、その中心軸部に、扱胴入力軸59を位置させている。
【0061】
変速ケース部86は、主伝動ケース部85の右側寄りの位置において、主伝動ケース部85に対する拡径状の部分として設けられている。変速ケース部86は、主伝動ケース部85に対し、上側を比較的大きく突出させた偏心鍔状のケース部分となっている。変速ケース部86は、側面視において上下方向を長手方向とする略楕円状の外形を有する。
【0062】
変速ケース部86は、その略上半部を、主伝動ケース部85から上方に向けて突出した上方突出部86aとしている。変速ケース部86は、主伝動ケース部85を、左右方向について、変速ケース部86よりも左側の部分であって主伝動ケース部85の大部分をなす左ケース部85aと、変速ケース部86よりも右側の部分である右ケース部85bとに分断している。
【0063】
縦ケース部87は、前後方向を中心軸方向とする略円筒状の外形を有するケース部分である。縦ケース部87は、その後部をなす基部ケース部87aと、縦ケース部87の前部をなす拡径ケース部87bとを有する。拡径ケース部87bは、基部ケース部87aに対する拡径部分であって略半楕円筒状の外形を有する。縦ケース部87は、その中心軸部に、扱胴軸延出部41aを位置させている。
【0064】
扱胴伝動ケース80は、主伝動ケース部85、変速ケース部86、および縦ケース部87により、平面視で略「L」字状をなすように構成されている。主に主伝動ケース部85および変速ケース部86内に収容・支持された扱胴入力軸59は、左右方向を軸方向としている。扱胴入力軸59は、その軸中心線を、縦ケース部87内に扱胴軸延出部41aを収容・支持した扱胴軸41の軸中心線と共通の水平面上に位置させており、扱胴軸41と同じ高さに位置している。
【0065】
以上のように扱室7bの前方に設けられた扱胴伝動ケース80は、コンバイン1の外装をなす伝動ケースカバー89および左側方カバー90により覆われている(図1図3参照)。伝動ケースカバー89および左側方カバー90は、前壁81等とともに、扱胴伝動ケース80およびその周辺に設けられた構成を収容する収容空間を形成している。
【0066】
伝動ケースカバー89は、主に扱胴伝動ケース80の上側および前側を覆うカバーである。左側方カバー90は、扱胴伝動ケース80の左側方および扱室7bの前端部の左側方等を覆うカバーであり、ワンタッチで着脱可能に設けられている。
【0067】
図10から図13を用いて、扱胴伝動ケース80および扱胴40への動力伝達構成について詳細に説明する。図10は、図11におけるA-A位置の平面断面図である。図11は、図10におけるB-B断面図である。図12は、図11におけるC-C位置の正面断面図である。図13は、図12におけるD-D断面図である。
【0068】
扱胴伝動ケース80は、その主な構成部材として、縦ケース部87を形成する第1ケース部材91と、主伝動ケース部85の左ケース部85aおよび変速ケース部86の左側の部分を形成する第2ケース部材92と、変速ケース部86の右側の部分および主伝動ケース部85の右ケース部85bを形成する第3ケース部材93とを有する。これらのケース部材は、例えば鋳造品であり、ボルト等によって互いに固定され、一体的な扱胴伝動ケース80を構成している。
【0069】
第1ケース部材91の前部の右側に、第2ケース部材92の左側が固定されている。第1ケース部材91の前部の右側には、側面視で略六角形状をなすフランジ部91aが形成されている。第2ケース部材92の左側の縁部には、側面視で略六角形状をなすフランジ部92aが形成されている。第1ケース部材91および第2ケース部材92は、フランジ部91a,92aの端面同士を整合させた状態で、複数の(本実施形態では10本の)ボルト94により互いに固定されている。
【0070】
第2ケース部材92の右側に、第3ケース部材93の左側が固定されている。第2ケース部材92の右側には、変速ケース部86の左側の部分をなす変速左ケース部92bが形成されている。変速左ケース部92bは、変速ケース部86の側面視外形に対応して、側面視で上下方向を長手方向とする略楕円状の外形をなすフランジ状の部分である。第3ケース部材93の左側の部分は、変速ケース部86の右側の大部分をなす変速右ケース部93aとなっている。変速右ケース部93aは、変速左ケース部92bと同様に側面視で上下方向を長手方向とする略楕円状の外形をなす。第2ケース部材92および第3ケース部材93は、変速左ケース部92bと変速右ケース部93aの端面同士を整合させた状態で、複数の(本実施形態では9本の)ボルト95により互いに固定されている。
【0071】
図10に示すように、扱胴軸延出部41aは、第1ケース部材91に対して、前後2箇所で軸受101,102により回転可能に支持されている。前側の軸受101は、第1ケース部材91が有する扁平状の前壁部91bに嵌合した状態で設けられており、扱胴軸延出部41aの前端部を支持している。後側の軸受102は、第1ケース部材91の前後略中央部に設けられており、扱胴軸延出部41aの軸方向の略中央部を支持している。なお、扱胴軸41は、扱室7bの前壁81に対して軸受103等を介して回転可能に支持されている。
【0072】
扱胴入力軸59は、変速ケース部86の下部および主伝動ケース部85内に配されており、第2ケース部材92および第3ケース部材93に対して、軸受105,106,107,108により4箇所で回転可能に支持されている。左側の軸受105は、第2ケース部材92の左側の端部に設けられており、扱胴入力軸59の左側の端部を支持している。中間の2つの軸受106,107は、第2ケース部材92の右側の部分に設けられており、扱胴入力軸59の中間部を支持している。右側の軸受108は、第3ケース部材93の右側の部分に設けられており、扱胴入力軸59の右側の部分を支持している。
【0073】
扱胴入力軸59は、その右側の端部を、第3ケース部材93の右側から右方に向けてケース外に突出させており、ケース外突出部59aとしている。扱胴入力軸59のケース外突出部59aには、扱胴入力プーリ110が固設されている。扱胴入力プーリ110は、脱穀部入力軸56に軸支されたプーリ111、並びに扱胴入力プーリ110およびプーリ111に巻回されたベルト112とともに、第3ベルト伝動機構58を構成している(図4図8参照)。
【0074】
扱胴入力軸59の回転動力は、互いに噛合した第1ベベルギヤ115および第2ベベルギヤ116により、扱胴軸41に伝達される。第1ベベルギヤ115は、縦ケース部87の拡径ケース部87b内に位置する扱胴入力軸59の左側の端部に固設されている。なお、扱胴入力軸59は、第1ベベルギヤ115の基部をなす筒状部115aを介して軸受105による支持を受けている。第2ベベルギヤ116は、扱胴軸延出部41aの軸方向の中央部に固設されている。なお、扱胴軸延出部41aは、第2ベベルギヤ116の基部をなす筒状部116aを介して軸受102による支持を受けている。
【0075】
縦ケース部87の拡径ケース部87bの上面部には、縦ケース部87内にオイルを供給するための注油口117が設けられている。注油口117は、拡径ケース部87bの上面部に貫通形成されたネジ孔部117aにネジ固定されるキャップ部材117bの着脱により開閉する。
【0076】
扱胴伝動ケース80内において、下手側軸部122の支持部分には、上下の2箇所に通油路118が形成されている。通油路118は、第2ケース部材92の内周面において、横断面視で略半円状の凹部をなすように、扱胴入力軸59の軸方向(以下「入力軸方向」という。)に沿う直線状の溝部分として形成されている。上下の通油路118は、入力軸方向視において、扱胴入力軸59の軸心の位置を中心として上下対称となるように設けられている。
【0077】
通油路118は、第2ケース部材92において左右方向の全体にわたって形成されており、左側については、拡径ケース部87b内に臨んで開口しており、右側については、変速ケース部86内に臨んで開口している。このような構成により、注油口117から縦ケース部87内に供給されたオイルは、主に下側の通油路118によって、主伝動ケース部85の左ケース部85a内から変速ケース部86内および右ケース部85b内へと導かれる。上側の通油路118は、主に空気通路として機能する。
【0078】
また、変速ケース部86の下部には、ドレンボルト119が設けられている。ドレンボルト119は、第2ケース部材92の変速左ケース部92bの下端部において、変速ケース部86内に連通するドレン孔92cに対して着脱可能に設けられている。なお、縦ケース部87の前面部の下端部にも同様にドレンボルト120が設けられている(図9参照)。
【0079】
脱穀変速装置60について、図10図12および図14を参照して説明する。扱胴入力軸59は、扱胴入力軸59の右側の略半分をなす上手側軸部121と、扱胴入力軸59の左側の略半分をなす下手側軸部122とにより、2つの軸部分に分割されている。上手側軸部121および下手側軸部122は、同軸心上に配置されており、第2ケース部材92の右側の部分に設けられた軸受107の近傍の位置にて、端面同士を近接対向させている。
【0080】
上手側軸部121は、ケース外突出部59aにおいて扱胴入力プーリ110の固定を受けるとともに、軸方向の略中央部において軸受108による支持を受ける軸部分である。下手側軸部122は、その左側の端部において第1ベベルギヤ115の固定を受けるとともに、軸受105,106,107による支持を受ける軸部分である。
【0081】
脱穀変速装置60は、扱胴入力軸59に設けられた入力軸側ギヤと、扱胴入力軸59と平行に設けられた中間軸125と、中間軸125に設けられ入力軸側ギヤに噛合する中間軸側ギヤとを含む。脱穀変速装置60は、入力軸側ギヤとして、第1ギヤ131および第4ギヤ134を有し、中間軸側ギヤとして、第2ギヤ132および第3ギヤ133を有する。
【0082】
図12に示すように、中間軸125は、扱胴入力軸59の上方に位置しており、変速ケース部86の上方突出部86a内において、左右方向を軸方向として回転可能に支持されている。中間軸125は、変速ケース部86の下部に位置する扱胴入力軸59の上手側軸部121の左側の部分の上方に位置している。
【0083】
中間軸125は、上方突出部86aの左右の壁部間に架設された態様で支承されている。中間軸125は、右側の端部を、上方突出部86aの右側の壁部に嵌合した状態で設けられた軸受126により支持させるとともに、左側の端部を、上方突出部86aの左側の壁部に嵌合した状態で設けられた軸受127により支持させている。
【0084】
中間軸125の右側の部分には、第2ギヤ132が固設されており、中間軸125の左側の部分には、第3ギヤ133が固設されている。第2ギヤ132および第3ギヤ133は、それぞれ上方突出部86aの左右の側壁部に近接した位置に設けられており、中間軸125と一体的に回転する。
【0085】
第1ギヤ131は、上手側軸部121において第2ギヤ132に対応する位置に設けられている。第1ギヤ131は、上手側軸部121に対して相対回転可能に支持されており、ギヤ本体部を第2ギヤ132に噛合させている。
【0086】
第4ギヤ134は、下手側軸部122の右側の端部に固定されており、下手側軸部122に対して相対回転不能に設けられている。第4ギヤ134は、ギヤ本体部を第3ギヤ133に噛合させており、ギヤ本体部の左側に、下手側軸部122の右側の端部を挿嵌させた筒状の支持筒部134aを有する。扱胴入力軸59は、下手側軸部122の右側の端部において、支持筒部134aを介して軸受106,107による支持を受けている。下手側軸部122は、第4ギヤ134と一体的に回転する。
【0087】
第4ギヤ134のギヤ本体部の中央部には、支持筒部134aと連通した円形の開口部134bが形成されている。上手側軸部121は、その左側の端部を開口部134b内に挿入させるとともに、第4ギヤ134に対して相対回転自在に設けられている。
【0088】
上手側軸部121において、第1ギヤ131と第4ギヤ134との間の位置には、環状の部材であるガイドリング135が固設されている。ガイドリング135は、上手側軸部121において拡径部をなし、上手側軸部121と一体的に回転する部分となる。ガイドリング135の外周面部には、入力軸方向に沿うスプライン溝が形成されている。
【0089】
第1ギヤ131のギヤ本体部の左側には、係止突部131cが形成されている。係止突部131cは、ガイドリング135と略同径の円環状の部分であり、ガイドリング135に対して右側から接触している。係止突部131cの外周部には、ガイドリング135の外周面部のスプライン溝に整合することでスプライン溝に連続した溝を形成する外周凹凸部が形成されている。
【0090】
一方、第4ギヤ134のギヤ本体部の右側には、係止突部134cが形成されている。係止突部134cは、ガイドリング135と略同径の円環状の部分であり、ガイドリング135に対して左側から接触している。係止突部134cの外周部には、ガイドリング135の外周面部のスプライン溝に整合することでスプライン溝に連続した溝を形成する外周凹凸部が形成されている。
【0091】
ガイドリング135の外側には、移動体としての変速スライダ137が設けられている。変速スライダ137は、円環状の部材であり、内周側に、ガイドリング135のスプライン溝に対してスプライン嵌合する凹凸形状部を有する。つまり、変速スライダ137は、ガイドリング135に対して相対回転不能かつ入力軸方向に移動可能に外嵌された状態で設けられている。変速スライダ137は、ガイドリング135の幅寸法(入力軸方向の長さ)と略同じ幅寸法を有する。
【0092】
変速スライダ137は、入力軸方向の両側に拡径部137bを有し、これらの拡径部137bの間の部分を、円筒面に沿う外周面をなすスライダ中間部137cとしている(図14参照)。変速スライダ137は、両側の拡径部137bとスライダ中間部137cとにより、中心軸線を通る断面視において略「U」字状の横断面形状をなすように外周溝137aを形成している。
【0093】
変速スライダ137は、第1ギヤ131の係止突部131c、および第4ギヤ134の係止突部134cのそれぞれに対して、ガイドリング135に対する嵌合態様と同様の態様で嵌合可能となっている。変速スライダ137は、第1ギヤ131の係止突部131cに嵌合することで、第1ギヤ131に係合した状態となり、第1ギヤ131に対して相対回転不能な状態となる。同様に、変速スライダ137は、第4ギヤ134の係止突部134cに嵌合することで、第4ギヤ134に係合した状態となり、第4ギヤ134に対して相対回転不能な状態となる。
【0094】
変速スライダ137は、入力軸方向に移動することで、ガイドリング135に対する嵌合状態を保持しつつ、第1ギヤ131または第4ギヤ134に係合した状態となる。すなわち、変速スライダ137は、その移動範囲の右側に位置することで、左側の部分をガイドリング135に係合させながら、右側の部分を第1ギヤ131の係止突部131cに係合させた状態となる。一方、変速スライダ137は、その移動範囲の左側に位置することで、右側の部分をガイドリング135に係合させながら、左側の部分を第4ギヤ134の係止突部134cに係合させた状態となる。
【0095】
このような構成において、変速スライダ137が右側に位置することで、上手側軸部121の回転動力が、ガイドリング135および変速スライダ137を介して第1ギヤ131に伝達される。つまり、第1ギヤ131が上手側軸部121と一体的に回転する状態となる。これにより、上手側軸部121の回転動力が、第1ギヤ131から第2ギヤ132、中間軸125、第3ギヤ133、第4ギヤ134を介することで、変速されて下手側軸部122に伝達される。下手側軸部122の回転動力は、第1ベベルギヤ115および第2ベベルギヤ116を介して扱胴軸延出部41aに伝達される。なお、変速スライダ137が右側に位置した状態では、上手側軸部121と下手側軸部122とは互いに縁切りされた状態となっている。
【0096】
このように、変速スライダ137が右側に位置し、上手側軸部121の回転動力が変速されて下手側軸部122に伝達される状態を「第1の係合状態」とする。図10図12および図14には、第1の係合状態が示されている。
【0097】
一方、変速スライダ137が左側に位置することで、上手側軸部121の回転動力が、ガイドリング135および変速スライダ137を介して第4ギヤ134に伝達される。つまり、第4ギヤ134が上手側軸部121と一体的に回転する状態となり、第4ギヤ134を固定支持する下手側軸部122が、上手側軸部121と一体的に回転する状態(同期回転する状態)となる。これにより、上手側軸部121の回転動力は、変速されることなく下手側軸部122に伝達される。
【0098】
このように、変速スライダ137が左側に位置し、上手側軸部121の回転動力が1:1の関係で下手側軸部122に伝達される状態を「第2の係合状態」とする。なお、図14には、第2の係合状態を二点鎖線で示している。
【0099】
第1の係合状態に関し、第1ギヤ131は、第2ギヤ132よりも小径であり、第2ギヤ132に対してピニオンとして機能する。第3ギヤ133は、第2ギヤ132および第4ギヤ134に対して小径であり、第4ギヤ134に対してピニオンとして機能する。例えば、第1ギヤ131および第3ギヤ133の歯数は19であり、第2ギヤ132および第4ギヤ134の歯数は28である。
【0100】
したがって、第1の係合状態において、上手側軸部121の回転は、第1ギヤ131および第2ギヤ132を介して減速されて中間軸125に伝達され、中間軸125の回転は、第3ギヤ133および第4ギヤ134を介して減速されて下手側軸部122に伝達される。これに対し、第2の係合状態では、上手側軸部121の回転は、減速されることなく下手側軸部122に伝達され、これらの軸部は一体的に等速回転する。
【0101】
このように、本実施形態の脱穀変速装置60において、変速スライダ137が右側に位置する第1の係合状態は、上手側軸部121に入力された回転動力が減速されて扱胴軸延出部41aに伝達される低速状態である。これに対し、変速スライダ137が左側に位置する第2の係合状態は、上手側軸部121に入力された回転動力が変速されずに扱胴軸延出部41aに伝達される高速状態となる。なお、脱穀変速装置60を構成する各ギヤの歯数やギヤ間の減速比等は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
【0102】
以上のように、脱穀変速装置60は、変速スライダ137の移動操作を変速操作として、扱胴軸41に入力される回転動力の回転速度について2段変速が可能に構成されている。脱穀変速装置60の変速操作を行うための構成については後述する。
【0103】
以上のような構成を備えた扱胴40への動力伝達構成において、扱胴伝動ケース80の支持構成について説明する。扱胴伝動ケース80は、脱穀部7の前壁81と搬送部20とによって支持されている。本実施形態では、扱胴伝動ケース80は、脱穀部7の前壁81に対して支持されるとともに、搬送部20の上面部に対する支持部である下方支持部を有する。つまり、扱胴伝動ケース80は、前壁81に対する後側の支持部と、搬送部20の上面部に対する下側の支持部との2箇所の支持部によってコンバイン1の本体側に固定支持されている。
【0104】
扱胴伝動ケース80の第1の支持部である後側の支持部について説明する。扱胴伝動ケース80は、縦ケース部87の後端部に、後方支持部として、正面視で略正方形状の外形をなす板状のフランジ部141を有する。フランジ部141は、縦ケース部87の基部ケース部87aの後側に設けられており、基部ケース部87aに対して鍔状をなすように形成されている。フランジ部141は、正面視で略全体を拡径ケース部87bに重ねる程度の大きさを有し、正面視において、左側の上下の角部を拡径ケース部87bからはみ出させている。
【0105】
扱胴伝動ケース80は、フランジ部141を貫通する固定ボルト142により、前壁81に固定されている。固定ボルト142は、前側からフランジ部141および前壁81それぞれに形成された孔部を貫通し、前壁81の後面81b側に設けられたネジ孔部143に螺挿されている。ネジ孔部143は、固定ボルト142がネジ係合するネジ孔を有する締結用の部分であり、例えば前壁81の後面81bにナット状の部材が溶接等によって固定されることで設けられる。
【0106】
このように、扱胴伝動ケース80は、フランジ部141において固定ボルト142およびネジ孔部143によって前壁81に対して締結固定されている。なお、ネジ孔部143の代わりに、固定ボルト142にネジ係合するナット等の締結部材が用いられてもよい。
【0107】
固定ボルト142による固定部は、フランジ部141において、正面視形状である略正方形状の四隅に設けられている。つまり、フランジ部141は4本の固定ボルト142により前壁81に固定されている。扱胴伝動ケース80の後側の支持部においては、前壁81の前面81aが、フランジ部141に対する接触面となり、扱胴伝動ケース80に対する支持面となる。
【0108】
扱胴伝動ケース80の第2の支持部である下側の支持部について説明する。扱胴伝動ケース80は、変速ケース部86の下側に、下方支持部をなす支持脚部150を有する。支持脚部150は、側面視で二等辺三角形状の下部形状の外形をなす土台部分である。
【0109】
支持脚部150は、扱胴伝動ケース80の変速ケース部86と一体に形成された部分となっている。すなわち、変速ケース部86は、脱穀変速装置60を収容する収容空間を形成する部分をケース本体部86Aとし、ケース本体部86Aと一体に形成された支持脚部150を有する。本実施形態では、支持脚部150は、第3ケース部材93の一部として設けられている。
【0110】
支持脚部150は、右側面部151と、左側面部152と、底面部153とを有する。右側面部151および左側面部152は、ケース本体部86Aの下部から下側に延出形成された部分であり、側面視で互いに重なり、支持脚部150の側面視外形をなしている。底面部153は、右側面部151および左側面部152の下端部同士をつなぐ平面状の面部であり、平面視で前後方向を長手方向とする矩形状の外形を有し、支持脚部150の底部をなしている。
【0111】
右側面部151は、鉛直板状の部分である。これに対し、図13に示すように、左側面部152は、前斜辺部152aと、後斜辺部152bと、中央辺部152cとを有する。このため、左側面部152においては、変速ケース部86のケース本体部86Aの下部とともに、前斜辺部152aおよび中央辺部152cにより前側開口部152dが形成されており、中央辺部152cおよび後斜辺部152bにより後側開口部152eが形成されている。
【0112】
底面部153上における前後中央部において、右側面部151と左側面部152との間に、前後方向を板厚方向とする中間壁部155が形成されている。また、右側面部151の右面である外側面と、第3ケース部材93の右側の筒状部との間には、正面視で略三角形状をなすリブ部156が形成されている。
【0113】
扱胴伝動ケース80は、搬送部20に対して搬送部20の上面部に支持されている。すなわち、扱胴伝動ケース80は、支持脚部150の底面部153を貫通する固定ボルト160により、搬送部20の上面部を構成する右側上面部161に固定されている。右側上面部161は、前壁81の右側の部分から前方に向けて水平状に配された右支持アーム部材162の上面部である。
【0114】
右側上面部161は、水平板状の部分であり、扱胴伝動ケース80の変速ケース部86の下方に位置している。右側上面部161は、水平状の平面である上面161aを有する。右側上面部161は、平面視において、左右外側(右側)を斜辺部とし、後側から前側にかけて徐々に幅狭とする略台形状をなす。
【0115】
右支持アーム部材162は、前壁81の右側の部分を構成する右前壁形成部材163と、右前壁形成部材163の前方に設けられた右前支持柱164との間に架設されている。右支持アーム部材162、右前壁形成部材163、および右前支持柱164は、フロントロータ26の右側において、フロントロータ室29を形成するフレーム部材として用いられている。
【0116】
右前壁形成部材163は、機体フレーム6上に立設された柱状の部材であり、上部によって前壁81の上右側の部分を形成している。右前支持柱164は、右前壁形成部材163よりも低い高さで機体フレーム6上に立設されており、前後方向について、フロントロータ26と刈取入力軸38との間に位置している。右前支持柱164は、左右方向については、フィーダハウス35の右側近傍に位置している。
【0117】
支持脚部150を固定する固定ボルト160は、上側から底面部153および右側上面部161それぞれに形成された孔部を貫通し、右側上面部161の下面161b側に設けられたネジ孔部165に螺挿されている。ネジ孔部165は、固定ボルト160がネジ係合するネジ孔を有する締結用の部分であり、例えば右側上面部161の下面161bにナット状の部材が溶接等によって固定されることで設けられる。
【0118】
このように、支持脚部150は、底面部153において固定ボルト160およびネジ孔部165によって右側上面部161に対して締結固定されている。なお、ネジ孔部165の代わりに、固定ボルト160にネジ係合するナット等の締結部材が用いられてもよい。
【0119】
固定ボルト160による固定部は、底面部153において、前後の両端部に設けられている。つまり、底面部153は、2本の固定ボルト160により右側上面部161に固定されている。扱胴伝動ケース80の下側の支持部においては、右側上面部161の上面161aが、底面部153に対する接触面であり、支持脚部150に対する支持面となる。
【0120】
以上のように、扱胴伝動ケース80は、脱穀部7の前上方の位置において、脱穀部7の前壁81および搬送部20の上面部である右側上面部161に対して固定された状態で支持されている。そして、変速ケース部86は、ケース本体部86Aと一体に形成された部分として、右側上面部161に対して扱胴伝動ケース80を支持する支持脚部150を有する。
【0121】
脱穀変速装置60の変速操作を行うための構成について説明する。脱穀変速装置60の変速操作は、扱胴伝動ケース80から延出された変速レバー170の操作によって行われる。脱穀変速装置60は、変速ケース部86から機体左右方向の一側(左側)に向けて延設された変速レバー170を有する。すなわち、変速レバー170の操作により、脱穀変速装置60の変速スライダ137が移動し、第1の係合状態と第2の係合状態とが切り換えられる。変速レバー170は、変速スライダ137に対し、変速フォーク171および変速支持軸172を介して連結されている。
【0122】
変速フォーク171は、入力軸方向(左右方向)を板厚方向とする板状の部材であり、二股状のフォーク本体部171aと、フォーク本体部171aから前方に向けて延出したフォーク延出部171bとを有する(図14参照)。変速フォーク171は、フォーク本体部171aを変速スライダ137の外周溝137aに嵌合させた状態で、変速スライダ137に係合している。変速フォーク171が入力軸方向に移動することにともない、変速スライダ137が変速フォーク171とともに入力軸方向に移動する。
【0123】
フォーク本体部171aは、入力軸方向視で半円状の凹部をなす部分であり、開放側を後側として、変速スライダ137に対して外周溝137aに嵌合している。すなわち、フォーク本体部171aの半円状の凹部は、変速スライダ137のスライダ中間部137cの外周面の湾曲形状に合致しており、フォーク本体部171aは、スライダ中間部137cを挟み込んだ態様で、変速スライダ137に嵌合している。外周溝137aの幅、つまり左右の拡径部137bの間の間隔は、変速フォーク171の板厚よりもわずかに大きく、フォーク本体部171aと拡径部137bとの間には隙間が存在している。これにより、変速フォーク171は、その隙間分、変速スライダ137に対して入力軸方向について相対移動可能となっている。
【0124】
フォーク延出部171bは、入力軸方向視で前側を頂部側とする略三角形状を有する。フォーク延出部171bの前側の端部に、変速支持軸172が貫通している。
【0125】
変速フォーク171は、変速スライダ137に対して相対回転可能に設けられている。扱胴入力軸59の回転にともなって回転する変速スライダ137に対し、変速フォーク171は、変速スライダ137および変速支持軸172に支持された状態で、回転方向については姿勢を保持するように(向きを変えないように)設けられている。
【0126】
変速スライダ137の回転動作においては、フォーク本体部171aの凹部の内周面が、スライダ中間部137cの外周面に対する摺接面となる。また、変速フォーク171の移動にともなう変速スライダ137の入力軸方向の移動においては、フォーク本体部171aの左右の側面(板面)が、拡径部137bの内側面に対する接触面となる。
【0127】
変速支持軸172は、円形状の横断面形状を有する棒状の部材であり、扱胴入力軸59の前上方の位置に、入力軸方向を軸方向として設けられている。変速支持軸172は、変速フォーク171に対して、フォーク延出部171bの前端部に形成された孔部171cを貫通した状態で溶接等により固設されている。
【0128】
変速支持軸172は、変速ケース部86に支持された状態で、入力軸方向視で所定の位置で、軸方向に移動可能に設けられている。変速支持軸172は、変速ケース部86のケース本体部86Aにおいて、上下方向の略中央部の前部に位置している。
【0129】
図14に示すように、変速支持軸172は、その右側の部分を、ケース本体部86Aをなす変速右ケース部93aに形成されたガイド穴部175に挿入させている。ガイド穴部175は、左側を開口側とした穴部であり、変速支持軸172の外径と略同じ穴径を有する。変速支持軸172の軸方向の移動において、ガイド穴部175の内周面が、変速支持軸172の外周面172aに対する摺接面となる。
【0130】
変速支持軸172は、その左側の部分を、ケース本体部86Aをなす変速左ケース部92bに形成された支持孔部176に支持させている。変速支持軸172は、支持孔部176に対して、円筒状の部材であるカラー177等の軸支部材を介して軸方向に移動可能に支持されている。
【0131】
変速支持軸172は、ガイド穴部175に対する挿入部分と、支持孔部176に対する支持部分との間の軸部分に、変速フォーク171を固定させている。つまり、変速フォーク171は、変速支持軸172に対して、変速支持軸172の軸方向の移動範囲において変速ケース部86に干渉しない位置に支持されている。
【0132】
変速支持軸172は、その左側の端部を、支持孔部176を介して変速ケース部86外に突出させており、その突出部分を突出軸部172bとしている。突出軸部172bに、変速レバー170が固定されている。
【0133】
変速レバー170は、レバー本体部181と、レバー本体部181の基端部に設けられた支持板部182とを有する。変速レバー170は、支持板部182を変速支持軸172の突出軸部172bに固定させ、レバー本体部181を、支持板部182から左方に向けて延伸させている。つまり、変速レバー170は、変速支持軸172に対する支持部から、機体左方に向けて延設されている。
【0134】
レバー本体部181は、その先端側(左側)の部分を除いた大部分を、左右方向に延伸した直線棒状の部分である直線部181aとしている。レバー本体部181の略全体は、円形状の横断面形状をなす丸棒状の部分となっている。直線部181aの基端部(右端部)の後側に、支持板部182が水平状に設けられている。支持板部182は、直線部181aに対して板状の部材を溶接等により固定することによって設けられている。
【0135】
支持板部182は、平面視で略三角形状ないし略台形状の外形を有し、後側の端部において、変速支持軸172の突出軸部172bの固定を受けている。支持板部182は、固定ピン183により突出軸部172bに固定されている。固定ピン183は、上方から支持板部182および突出軸部172bそれぞれに形成された孔部を上下方向に貫通し、止め輪等の係止部材184によって固定されている(図13参照)。
【0136】
以上のように、コンバイン1は、脱穀変速装置60の操作部として、変速ケース部86から延出されるとともに機体左右方向について運転部15側と反対側となる左側に向けて延設された変速レバー170を有する。変速レバー170のレバー本体部181は、ケース本体部86Aの前部から左方に向けて延出し、主伝動ケース部85の左ケース部85aおよび縦ケース部87の前を通り、前壁81の左側の縁部の位置まで延設されている。
【0137】
レバー本体部181の先端部には、把持部181bが設けられている。把持部181bは、直線部181aとともに略直角状の角部をなすように直線部181aに対して棒状の部分が下方に向けて屈曲形成された部分である。把持部181bを把持して変速レバー170を左右方向の押し引き操作することで(図14、矢印A1参照)、変速レバー170、変速支持軸172、変速フォーク171、および変速スライダ137が一体的に移動し、脱穀変速装置60の操作が行われる。
【0138】
図14に示すように、変速支持軸172に対しては、位置決め機構であるボールデテント機構190が設けられている。ボールデテント機構190は、脱穀変速装置60の変速操作にともない、変速支持軸172を、第1の係合状態および第2の係合状態の各状態に対応した位置に保持する。ボールデテント機構190は、変速支持軸172に形成された2つの外周溝191のいずれかに対して、コイルばね192により付勢されたボール193を嵌合させることで、変速支持軸172を位置決めさせる。
【0139】
外周溝191は、変速支持軸172の軸心を通る縦断面視において、変速支持軸172の外周面172aに対して半円状の凹部をなす縮径部である。2つの外周溝191のうち、左側に位置する一方の外周溝191aは、第1の係合状態での変速支持軸172の位置に対応した位置に形成されており、右側の端部近傍に位置する他方の外周溝191bは、第2の係合状態での変速支持軸172の位置に対応した位置に形成されている。
【0140】
コイルばね192は、変速右ケース部93aにおいて変速支持軸172の前側の部位に前後方向に貫通形成された支持孔部195内に挿入されている。コイルばね192は、支持孔部195に螺挿された支持ボルト196により支持された状態で、変速支持軸172の軸方向に直交する方向(本実施形態では前後方向)を伸縮方向とする向きで設けられている。
【0141】
支持孔部195は、変速右ケース部93aの前壁部に形成されたボス部93b内に、ガイド穴部175に対して前側から連通するように前後方向に貫通形成されている。支持孔部195の前側の部分はネジ面となっており、支持ボルト196は、支持孔部195に螺挿された状態で、先端側の部分にコイルばね192を支持している。
【0142】
ボール193は、コイルばね192と変速支持軸172との間に挟まれている。ボール193は、コイルばね192により変速支持軸172側に付勢された状態で、ガイド穴部175内に臨んで一部を突出させ、変速支持軸172の外周溝191に嵌合している。
【0143】
以上のような構成において、ボール193は、いずれかの外周溝191に嵌合した状態から、変速レバー170の操作による変速支持軸172の移動にともない、変速支持軸172によって押されてコイルばね192の付勢力に抗して支持孔部195内に没入し、変速支持軸172の外周面172aに当接した状態となる。つまり、変速支持軸172の移動にともない、変速支持軸172に対するボール193の係合が自動的に解除される。そして、変速支持軸172の移動により、いずれかの外周溝191がボール193に対応した位置に達することで、コイルばね192の付勢力によってボール193が自動的に外周溝191に嵌合し、変速支持軸172が位置決めされた状態となる。
【0144】
変速レバー170は、その把持部181bの近傍において、コンバイン1の本機側に対して固定支持されている。すなわち、コンバイン1は、搬送部20に設けられて変速レバー170を支持するレバー支持部200と、レバー支持部200に設けられ変速レバー170を固定するレバー固定部220とを有する。
【0145】
レバー支持部200は、搬送部20の上面部を構成する左側上面部201上に設けられている。左側上面部201は、変速ケース部86を支持する右側上面部161と略左右対称な構成として設けられている。左側上面部201は、前壁81の左側の部分から前方に向けて水平状に配された左支持アーム部材202の上面部である。
【0146】
左側上面部201は、水平板状の部分であり、変速レバー170の左側の端部の下方に位置している。左側上面部201は、水平状の平面である上面201aを有する。左側上面部201は、平面視において、左右外側(左側)を斜辺部とし、後側から前側にかけて徐々に幅狭とする略台形状をなす。
【0147】
左支持アーム部材202は、前壁81の左側の部分を構成する左前壁形成部材203と、左前壁形成部材203の前方に設けられた左前支持柱204との間に架設されている。左支持アーム部材202、左前壁形成部材203、および左前支持柱204は、フロントロータ26の左側において、フロントロータ室29を形成するフレーム部材として用いられている。
【0148】
左前壁形成部材203は、機体フレーム6上に立設された柱状の部材であり、上部によって前壁81の上左側の部分を形成している。左前支持柱204は、左前壁形成部材203よりも低い高さで機体フレーム6上に立設されており、前後方向について、フロントロータ26と刈取入力軸38との間に位置している。左前支持柱204は、左右方向については、フィーダハウス35の左側近傍に位置している。
【0149】
レバー支持部200は、左側上面部201上に設けられた支持ベース部210と、支持ベース部210に対して設けられたフック部218とを有する。
【0150】
支持ベース部210は、底面部211と、左側面部212と、前面部213と、上面部214との4つの面部を有する。底面部211は、平面視で前後方向を長手方向とする矩形板状の部分であり、支持ベース部210の底部をなしている。左側面部212は、鉛直板状の部分であり、側面視で前側を鉛直状とした略台形状を有する。
【0151】
前面部213は、鉛直板状の部分であり、正面視で左側を鉛直状とした上下に長い倒立した略台形状を有する。上面部214は、平面視で略三角形状をなす水平板状の部分であり、左側面部212および前面部213それぞれの上辺部間に架設された態様で設けられている。支持ベース部210は、例えば、1枚の鋼板を左側面部212を基部として他の面部を屈曲形成した部材により構成されている。
【0152】
支持ベース部210をなす多面状の部材は、底面部211を貫通する固定ボルト216により、左側上面部201に固定されている。固定ボルト216は、上側から底面部211および左側上面部201それぞれに形成された孔部を貫通し、左側上面部201の下面201b側に設けられたネジ孔部217に螺挿されている。ネジ孔部217は、固定ボルト216がネジ係合するネジ孔を有する締結用の部分であり、例えば左側上面部201の下面201bにナット状の部材が溶接等によって固定されることで設けられる。
【0153】
このように、支持ベース部210をなす多面状の部材は、底面部211において固定ボルト216およびネジ孔部217によって左側上面部201に対して締結固定されている。なお、ネジ孔部217の代わりに、固定ボルト216にネジ係合するナット等の締結部材が用いられてもよい。
【0154】
固定ボルト216による固定部は、底面部211において、前後の両側の部分に設けられている。つまり、底面部211は、2本の固定ボルト216により左側上面部201に固定されている。
【0155】
フック部218は、左方に向けて延設されたレバー本体部181を、その水平状態を保持するように、かつ左右方向に移動可能に下側から支持する支持部である。フック部218は、略「L」字状に屈曲した棒状部材を、支持ベース部210の左側面部212の上部に溶接等により固定することによって設けられている。
【0156】
フック部218は、一方の辺部を前後方向に沿う横軸部218aとし、他方の辺部を上下方向に沿う縦軸部218bとしている。フック部218は、横軸部218aを、左側面部212に対する固定部とし、両軸部による直角状の角部を支持ベース部210の前面部213よりも前方に位置させ、横軸部218aの前端部から上方に向けて縦軸部218bを起立させている。前面部213と縦軸部218bとの間に、レバー本体部181が位置することになる。
【0157】
以上のような構成のレバー支持部200によれば、レバー本体部181が、フック部218の横軸部218aにより下側から支持され、前面部213と縦軸部218bによって前後の移動の規制を受けるとともに、左右方向の移動が許容された状態で支持される。なお、フック部218の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば側面視で環状をなす部分等であってもよい。すなわち、フック部218としては、レバー本体部181の左右方向の移動を許容しながら、支持ベース部210とともにレバー本体部181の前後移動を規制することができるものであればよい。
【0158】
図15および図16に示すように、レバー固定部220は、レバー支持部200に設けられ、変速レバー170の少なくとも変速操作方向である左右方向についての移動を規制するレバー移動規制部として機能する。本実施形態では、レバー固定部220は、支持ベース部210の前面部213に対してレバー本体部181を固定する部分である。
【0159】
レバー固定部220は、レバー固定部材230により、レバー本体部181を支持ベース部210の前面部213に固定する。レバー固定部材230は、いわゆるハンドル付きのボルトであり、外周部に複数の凹部を有するハンドル部230aと、雄ねじ部分が形成された軸状のボルト部230bとを有する。
【0160】
レバー固定部材230は、前側からボルト部230bをレバー本体部181に形成された係止孔181c、および前面部213に形成された孔部213aに貫通させ、前面部213の裏側に設けられたネジ孔部231に螺挿させる。ネジ孔部231は、ボルト部230bがネジ係合するネジ孔を有する締結用の部分であり、例えば前面部213の裏面にナット状の部材が溶接等によって固定されることで設けられる。
【0161】
レバー本体部181は、係止孔181cの形成部位を、前後方向を板厚方向とした板状部181dとしている。板状部181dは、その板厚の寸法を、直線部181aの丸棒状の部分の外径よりも小さくするとともに、上下方向の寸法を、同外径よりも大きくしている。板状部181dは、直線部181aにおいて、軸状の部分に対して上下に張り出した扁平状の部分をなしている。
【0162】
レバー固定部220においては、レバー固定部材230を回転操作することにより締め付けることで、レバー固定部材230のハンドル部230aと支持ベース部210の前面部213とにより板状部181dが挟持された状態で、レバー本体部181が支持固定される。レバー固定部材230は、ハンドル部230aを把持部とした手動での回転操作により、レバー本体部181および支持ベース部210に対して着脱される。
【0163】
支持ベース部210の前面部213には、レバー固定部材230の取付け部として、左右方向に所定の間隔を隔てた2箇所に、孔部213aおよびネジ孔部231が設けられている。右側の孔部213aおよびネジ孔部231は、脱穀変速装置60の第1の係合状態(低速状態)に対応する取付け部であり、左側の孔部213aおよびネジ孔部231は、脱穀変速装置60の第2の係合状態(高速状態)に対応する取付け部である。なお、本実施形態では、レバー固定部材230の取付け部として、支持ベース部210側に低速用・高速用の2箇所の取付け部が設けられているが、例えば、支持ベース部210側の取付け部を1箇所として、レバー本体部181側に低速用・高速用の2箇所の係止孔181cを形成した構成であってもよい。
【0164】
以上のような構成において、脱穀変速装置60の変速を行う際には、まず、扱胴伝動ケース80の左側方を覆う左側方カバー90を取り外し、レバー固定部220に対するアクセスが可能な状態とする。そして、脱穀変速装置60の変速においては、レバー固定部材230を取り外した状態で、把持部181bを把持して変速レバー170を左右方向に移動操作することで、第1の係合状態と第2の係合状態の切換えが行われる。
【0165】
ここで、第1の係合状態から第2の係合状態とする場合、つまり低速状態から高速状態に切り換える場合は、変速操作として変速レバー170を左方に引っ張る操作が行われる。一方、第2の係合状態から第1の係合状態とする場合、つまり高速状態から低速状態に切り換える場合は、変速操作として変速レバー170を右方に押し込む操作が行われる。
【0166】
第1の係合状態と第2の係合状態の切換えが行われた後、レバー固定部材230を取り付けて締め付けることにより、変速レバー170のレバー本体部181が機体左側の部位において支持固定された状態となる。また、変速レバー170を一体に移動する変速支持軸172は、第1の係合状態と第2の係合状態の各状態において、ボールデテント機構190による位置決め作用を受ける。ボールデテント機構190により、操作者は、切換えの対象となる各係合状態に対応する位置に変速レバー170が達したことを、変速支持軸172に対するボール193の係合作用にともなう操作感として得ることができる。
【0167】
以上のような脱穀変速装置60の変速操作は、例えばエンジン25の停止時等、扱胴入力軸59の回転が停止している状態で行われる。脱穀変速装置60による扱胴40の回転速度の切換えは、脱穀部7における効率的な脱穀処理を行うべく、例えば収穫する作物の種類や量等に応じて行われる。例えば、扱胴40が比較的高速で回転する高速状態は、稲や麦の収穫に用いられ、扱胴40が比較的低速で回転する低速状態は、大豆の収穫に用いられる。
【0168】
以上のような構成を備えた本実施形態に係るコンバイン1によれば、脱穀部7の前壁81の負担を軽減することができるとともに、扱胴伝動ケース80を堅固に支持することができ、変速動作をともなう扱胴40への回転動力の伝達を安定して行うことができる。
【0169】
本実施形態のコンバイン1は、扱胴伝動ケース80を、主伝動ケース部85と変速ケース部86を有する構成とするとともに、扱室7bの前壁81に対する後側の支持部と、搬送部20の上面部に対する下方支持部とによって支持した構成を備える。つまり、扱胴伝動ケース80が、前壁81による縦の面と、搬送部20の上面部による横の面との両方の面で支持されている。
【0170】
このような構成により、扱胴伝動ケース80の支持荷重を複数の支持部によって分担することができるので、扱室7bの前壁81に作用する荷重を低減することができる。特に、扱胴伝動ケース80は、脱穀変速装置60を収容した変速ケース部86を含むものであるため、脱穀変速装置60を備えない場合の扱胴伝動ケースの構成と比べて、比較的大型となり重量物となる。このため、本実施形態に係る扱胴伝動ケース80の支持構成によれば、扱室7bの前壁81の負担を効果的に低減することができる。
【0171】
これにより、例えば前壁81の変形や扱胴伝動ケース80の傾き等の不具合を抑制することができ、扱胴伝動ケース80内に設けられた動力伝達機構による扱胴40への回転動力の伝達を安定して行うことができるとともに、脱穀変速装置60による扱胴40の変速を確実に行うことができる。特に、扱胴40に対する入力の入切の際に、扱胴伝動ケース80の振動等によって前壁81に対する負担が大きくなるが、このような負担に対しても、本実施形態に係る扱胴伝動ケース80の支持構成によれば、扱胴伝動ケース80を強固かつ安定的に支持することが可能となる。
【0172】
また、本実施形態に係る扱胴伝動ケース80において、変速ケース部86は、ケース本体部86Aと、ケース本体部86Aと一体に形成された支持脚部150とを有する。
【0173】
このような構成によれば、扱胴伝動ケース80の一部を下方支持部とすることができるので、扱胴伝動ケース80の支持構成をシンプルな構成とすることができる。これにより、扱胴伝動ケース80の下方支持部を設けるに際して部品点数の増加や組立て工数の増加を招くことを回避することができる。
【0174】
また、本実施形態に係るコンバイン1は、脱穀変速装置60の操作部として、変速ケース部86から延出され運転部15側と反対側である左方に向けて延設された変速レバー170を有するとともに、搬送部20の上面部上に設けられたレバー支持部200、およびレバー支持部200に設けられたレバー固定部220とを有する。
【0175】
このような構成によれば、扱胴40の変速操作についての操作性を向上することができる。すなわち、コンバイン1の本機側方側(左側)という変速ケース部86から離れた位置から、変速レバー170の押し引き操作という単純な操作により、扱胴40の変速操作を行うことができるので、良好な操作性を得ることができる。また、ワンタッチで着脱可能な左側方カバー90を取り外すことで、変速レバー170の操作が可能となることから、変速操作を容易に行うことができる。
【0176】
また、脱穀変速装置60の変速スライダ137に対し、変速フォーク171および変速支持軸172を介して変速レバー170を連結させ、変速レバー170を手動操作する構成により、扱胴40を変速するための構成を安価で簡単な構成により実現することができる。また、扱胴伝動ケース80を強固かつ安定的に支持することができることから、扱胴伝動ケース80から延出された変速レバー170の押し引き操作について安定した操作感を得ることができる。
【0177】
また、本実施形態に係る脱穀変速装置60においては、扱胴入力プーリ110が取り付けられた上手側軸部121と、第2ベベルギヤ116が取り付けられた下手側軸部122とが同軸状に配置されている。つまり、脱穀変速装置60における入力軸部と出力軸部とが同軸状に配置されている。
【0178】
このような構成によれば、本実施形態のように脱穀変速装置60を備えた構成と、脱穀変速装置60を備えない構成とで、入力軸部の位置と出力軸部の位置を共通にすることができる。これにより、例えば脱穀変速装置60を備えない既存の構成に対して、扱胴入力プーリ110や第2ベベルギヤ116等の位置を変更することなく、本実施形態に係る扱胴伝動ケース80を適用することが可能となる。
【0179】
また、本実施形態に係る扱胴伝動ケース80においては、脱穀変速装置60を構成する中間軸125が、扱胴入力軸59に対して上方の位置に設けられており、変速ケース部86が、上下方向を長手方向とする縦長のケース部分として設けられている。
【0180】
このような構成によれば、扱胴伝動ケース80を前後方向についてコンパクトに構成することができる。これにより、扱胴伝動ケース80が伝動ケースカバー89に干渉することを容易に避けることができる。また、例えば中間軸125を扱胴入力軸59の前方に配置した構成等と比べて、扱胴伝動ケース80の支持部、特に下方支持部に作用する応力を低減することができる。このため、扱胴伝動ケース80の下方支持部をコンパクトにすることが可能となる。
【0181】
また、扱胴伝動ケース80の支持部として下方支持部を有する構成によれば、扱胴入力軸59が扱胴入力プーリ110を介してベルト112から受ける張力に対する扱胴伝動ケース80の支持強度を容易に確保することができる。
【0182】
すなわち、図8に示すように、扱胴入力プーリ110とともにベルト112の巻回を受けるプーリ111は、扱胴入力プーリ110に対して後下方に位置しており、扱胴入力プーリ110に対しては、ベルト112による張力として主に下方の張力が作用する。このように扱胴入力プーリ110に対して下方に作用する張力が、扱胴入力軸59を介して、支持脚部150による扱胴伝動ケース80の下方支持部において支持される。つまり、ベルト112により扱胴入力プーリ110に対して下方に作用する引っ張り力に対して、支持脚部150が右側上面部161に対して突っ張って支持する態様となる。
【0183】
これにより、扱胴伝動ケース80を下側から支持する下方支持部によって、扱胴入力プーリ110に対するベルト112による下方の張力を受けることができるので、扱胴伝動ケース80を効率的に支持することが可能となる。なお、扱胴入力プーリ110の後下方には、ベルト112の外周側から当接するテンションプーリ113が設けられている。
【0184】
このように、本実施形態に係る扱胴伝動ケース80の支持構成によれば、扱胴入力プーリ110に対するプーリ111の配置構成との関係において、ベルト112による張力に対する支持強度の点からも、扱胴伝動ケース80を安定的に支持することが可能となる。
【0185】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係るコンバインは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0186】
上述した実施形態では、フィーダ30の後方にフロントロータ26が設けられているが、搬送部20は、例えばフィーダ30のコンベヤ36により扱口7a内へと穀稈を投入する構成等、フロントロータを有さない構成のものであってもよい。
【0187】
上述した実施形態では、脱穀変速装置60は、中間軸125を介して伝達する回転動力を減速して伝達する構成のものであるが、中間軸125を介して伝達する回転動力を増速して伝達する構成のものであってもよい。
【0188】
上述した実施形態では、扱胴伝動ケース80は、搬送部20に対して、フロントロータ室29を形成するフレーム部材の一つである右支持アーム部材162の右側上面部161上に支持脚部150によって支持されているが、このような構成に限定されるものではない。すなわち、扱胴伝動ケース80の搬送部20に対する支持位置は、例えば、フロントロータ室29の上面部のうち、右側上面部161と左側上面部201との間の中間部分であってもよい。
【符号の説明】
【0189】
1 コンバイン
2 走行機体
3 刈取部
7 脱穀部
7b 扱室
15 運転部
20 搬送部
25 エンジン(駆動源)
30 フィーダ
26 フロントロータ
29 フロントロータ室
32 刈刃装置
40 扱胴
41 扱胴軸
41a 扱胴軸延出部
59 扱胴入力軸
60 脱穀変速装置
80 扱胴伝動ケース
81 前壁
85 主伝動ケース部
86 変速ケース部
86A ケース本体部
125 中間軸
141 フランジ部
150 支持脚部
161 右側上面部(上面部)
162 右支持アーム部材
170 変速レバー
200 レバー支持部
201 左側上面部
210 支持ベース部
220 レバー固定部(レバー移動規制部)
230 レバー固定部材
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