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特許7453081ゴム組成物ならびにその製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ゴム組成物ならびにその製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240312BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240312BHJP
   F16G 1/06 20060101ALI20240312BHJP
   F16G 1/28 20060101ALN20240312BHJP
   F16G 5/06 20060101ALN20240312BHJP
   F16G 5/20 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/04
C08K3/08
F16G1/06
F16G1/28 A
F16G5/06
F16G5/20 A
F16G5/20 B
F16G5/20 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020124184
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2021031674
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2019148532
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健人
(72)【発明者】
【氏名】西山 健
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-528538(JP,A)
【文献】特開2004-210830(JP,A)
【文献】特開2015-031315(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017765(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/069766(WO,A1)
【文献】SONGNOX 1024,2023年11月28日,https://www.songwon.com/products/songnox-1024
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
C08K 3/04
C08K 3/08
F16G 1/06
F16G 1/28
F16G 5/06
F16G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)、カーボンナノチューブ(B)、アミド結合を有する金属不活性化剤(C)および前記カーボンナノチューブ(B)由来の金属成分(D)を含み、かつ前記カーボンナノチューブ(B)の割合が前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して0.3~20質量部であるゴム組成物。
【請求項2】
前記金属成分(D)が遷移金属単体および/または遷移金属化合物である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記金属成分(D)が鉄を含む請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記金属不活性化剤(C)が下記式(1)で表される化合物である請求項1~3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【化1】
(式中、環Zは芳香族環を示し、m1は0以上の整数を示し、Rはヒドロキシル基、アルキル基またはアルコキシ基を示し、環Zは複素環を示す)
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ(B)が単層カーボンナノチューブである請求項1~4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブ(B)が化学的気相成長法で製造されたカーボンナノチューブである請求項1~5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記金属不活性化剤(C)の割合が前記金属成分(D)1質量部に対して1~100質量部である請求項1~6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記金属不活性化剤(C)の割合が前記金属成分(D)1モルに対して0.1~30モルである請求項1~7のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記金属不活性化剤(C)の割合が前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して0.05~50質量部である請求項1~8のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記金属成分(D)の割合が前記カーボンナノチューブ(B)100質量部に対して1~30質量部である請求項1~のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
炭素含有原料から金属触媒を用いて前記カーボンナノチューブ(B)と前記金属成分(D)との複合体を得るカーボンナノチューブ製造工程、および前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)と、前記複合体と、前記金属不活性化剤(C)とを混合する混合工程を含む請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブ製造工程において、化学的気相成長法で複合体を得る請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか一項に記載のゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブで補強されたエチレン-α-オレフィンエラストマー系組成物ならびにその製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物は、例えば、伝動ベルトなど、強度と柔軟性との両立が求められる用途で汎用されている。ゴム組成物を構成するポリマー成分としては、古くは天然ゴムから始まり、近年では様々な機能性をもった合成ゴムが主流となっている。中でも、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)は、主鎖に二重結合をもたないために優れた耐熱老化性を示し、高温下で使用される用途に賞用されている。ゴム組成物にはポリマー成分の他、多くの配合剤が配合される。特に、カーボンブラックやシリカに代表される補強剤は、硬度やモジュラスを高めるために必須と言ってもよい。
【0003】
ゴム組成物に配合する補強剤として、近年注目されているものの中に、カーボンナノチューブ(CNT)がある。CNTは、補強剤として従来用いられてきたカーボンブラックやシリカよりも高い補強性を示すために、少量の添加でゴムのモジュラスを大きく向上することができると考えられる。さらには、電気伝導性を付与したり摩擦係数を低減したりできることから、実用化が望まれている。
【0004】
例えば、特表2007-524727号公報(特許文献1)には、エラストマーマトリックス中に官能基化CNTを含むCNT-エラストマー複合体が開示されている(請求項54)。また、この文献には、前記CNTが約0.001重量パーセント~約20重量パーセントの量で前記複合体に含まれてもよいことが記載されている。さらに、この文献には、CNTの含有によって、エラストマー複合体の破断点歪みを相伴って大きく減少させることなく、引張弾性率および靭性を改善できると記載されている。なお、この文献には、前記エラストマーマトリックスがEPDMターポリマーを含んでもよいことが記載されているが、実施例ではEPDMは用いられていない。
【0005】
特開2003-322218号公報(特許文献2)には、ベルト本体がカーボンナノチューブおよび金属不活性化剤を配合したポリウレタン樹脂組成物で構成されているポリウレタン製ベルトが開示されている。この文献には、カーボンナノチューブの存在によって摩擦係数を小さくできること、金属不活性化剤を配合したことにより、硬貨を搬送するベルトなどの金属と接触する環境において金属イオンによってポリウレタンが劣化することを抑止できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2007-524727号公報(請求項54、58および63、段落[0029]、実施例)
【文献】特開2003-322218号公報(請求項1および3、段落[0009][0054])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているように、ゴム組成物のモジュラスを向上するために、CNTを配合することは有効である。しかしながら、CNTを配合したゴム組成物は高いモジュラスを示す一方で、耐熱老化性が低下し易いという問題がある。この問題は、カーボンナノチューブ中に不純物として含まれる金属触媒による劣化促進作用によると考えられる。カーボンナノチューブの製造方法としては、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)が知られている。これらのうち、大量生産に向くCVD法は鉄やニッケルなどの金属触媒が欠かせず、金属触媒の一部はカーボンナノチューブの内部に取り込まれて存在するため、分離は困難である。アーク放電法やレーザーアブレーション法では比較的純度の高いカーボンナノチューブが得られるため、エラストマーに配合した場合の耐熱老化性の低下は小さいと考えられるが、コストの面からゴム組成物の配合剤としては適用が難しい。そのため、金属触媒を多く含むカーボンナノチューブを補強剤として用いた場合であっても、耐熱老化性に優れるゴム組成物が望まれていた。なお、特許文献2には、ポリウレタン樹脂組成物にカーボンナノチューブおよび金属不活性剤が配合されているが、カーボンナノチューブと金属触媒との関係は記載されておらず、実施例で使用されているカーボンナノチューブの詳細も不明である。
【0008】
本発明の目的は、高モジュラスでありながら、耐熱老化性も高いゴム組成物ならびにその製造方法および用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、金属不活性化剤(C)と、前記カーボンナノチューブ(B)由来の金属成分(D)とを組み合わせることにより、高モジュラスでありながら、耐熱老化性も向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)、カーボンナノチューブ(B)、金属不活性化剤(C)および前記カーボンナノチューブ(B)由来の金属成分(D)を含む。前記金属成分(D)は遷移金属単体および/または遷移金属化合物であってもよく、鉄を含むのが好ましい。前記金属不活性化剤(C)はアミド結合を有していてもよい。前記金属不活性化剤(C)は下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、環Zは芳香族環を示し、m1は0以上の整数を示し、Rはヒドロキシル基、アルキル基またはアルコキシ基を示し、環Zは複素環を示す)。
【0013】
前記カーボンナノチューブ(B)は単層カーボンナノチューブであってもよい。前記カーボンナノチューブ(B)は化学的気相成長法で製造されたカーボンナノチューブであってもよい。前記金属不活性化剤(C)の割合は前記金属成分(D)1質量部に対して1~100質量部であってもよい。前記金属不活性化剤(C)の割合は前記金属成分(D)1モルに対して0.1~30モルであってもよい。前記金属不活性化剤(C)の割合は前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して0.05~50質量部であってもよい。前記カーボンナノチューブ(B)の割合は前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して0.3~20質量部であってもよい。前記金属成分(D)の割合は前記カーボンナノチューブ(B)100質量部に対して1~30質量部であってもよい。
【0014】
本発明には、炭素含有原料から金属触媒を用いて前記カーボンナノチューブ(B)と前記金属成分(D)との複合体を得るカーボンナノチューブ製造工程、および前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)と、前記複合体と、前記金属不活性化剤(C)とを混合する混合工程を含む前記ゴム組成物の製造方法も含まれる。前記カーボンナノチューブ製造工程において、化学的気相成長法で複合体を得てもよい。
【0015】
本発明には、前記ゴム組成物の硬化物を含む伝動ベルトも含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、金属不活性化剤(C)と、金属成分(D)とを組み合わせているため、このゴム組成物は、高モジュラスでありながら、耐熱老化性も優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[(A)エチレン-α-オレフィンエラストマー]
本発明のゴム組成物(硬化性ゴム組成物)は、ゴム成分として、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)を含む。エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)は、主鎖に多くの二重結合を有する天然ゴムやブタジエンゴムなどのジエン系ゴムとは異なり、主鎖に二重結合(エチレン性不飽和結合)を含まないため、耐熱性に優れる。さらに、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)は、耐オゾン性にも優れ、低比重、高充填が可能である。
【0018】
エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)は、構成単位として、エチレン単位、α-オレフィン単位を含んでいればよく、ジエン単位をさらに含んでいてもよい。そのため、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)には、エチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムなどが含まれる。
【0019】
α-オレフィン単位を形成するためのα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、ヘキセン、オクテンなどの鎖状α-C3-12オレフィンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンのうち、プロピレンなどのα-C3-4オレフィン(特にプロピレン)が好ましい。
【0020】
ジエン単位を形成するためのジエンモノマーとしては、通常、非共役ジエン系単量体が利用される。非共役ジエン系単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどが例示できる。これらのジエンモノマーのうち、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン(特に、エチリデンノルボルネン)が好ましい。
【0021】
代表的なエチレン-α-オレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0022】
これらのエチレン-α-オレフィンエラストマーは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ジエン単位による架橋効率に優れる点から、エチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴムが好ましく、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)が特に好ましい。
【0023】
エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体において、エチレンとプロピレンとの割合(質量比)は、前者/後者=35/65~90/10、好ましくは40/60~80/20、さらに好ましくは45/55~70/30、最も好ましくは50/50~60/40であってもよい。
【0024】
エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)(特に、EPDMなどのエチレン-α-オレフィン-ジエン三元共重合体ゴム)のジエン含量は10質量%以下(例えば0.1~10質量%)であってもよく、好ましくは7質量%以下(例えば0.3~7質量%)、さらに好ましくは5質量%以下(例えば0.5~5質量%)、最も好ましくは3質量%以下(例えば1~3質量%)である。本発明では、主鎖に二重結合を有していないゴム成分を用いることにより耐熱性を向上させているが、側鎖として導入するジエン単位による二重結合も少量に抑制することにより、高度な耐熱性を担保できる。ジエン含量が多すぎると、高度な耐熱性が担保できない虞がある。
【0025】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ジエン含量は、エチレン-α-オレフィンエラストマーを構成する全単位中のジエンモノマー単位の質量割合を意味し、慣用の方法により測定できるが、モノマー比であってもよい。
【0026】
未架橋のエチレン-α-オレフィンエラストマー(A)のムーニー粘度[ML(1+4)125℃]は80以下であってもよく、カーボンナノチューブ(B)の分散性を向上できる点から、例えば10~80、好ましくは20~70、さらに好ましくは30~50、最も好ましくは35~45である。ムーニー粘度が高すぎると、ゴム組成物の流動性が低下して、混練りにおける加工性が低下するとともに、カーボンナノチューブ(B)の分散性が低下する虞がある。
【0027】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ムーニー粘度は、JIS K 6300-1(2013)に準じた方法で測定でき、試験条件は、L形ロータを使用し、試験温度125℃、予熱1分、ロータ作動時間4分である。
【0028】
ゴム成分中のエチレン-α-オレフィンエラストマー(A)の割合は50質量%以上であればよく、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(エチレン-α-オレフィンエラストマーのみ)である。ゴム成分中のエチレン-α-オレフィンエラストマー(A)の割合が少なすぎると、耐熱性および耐寒性が低下する虞がある。
【0029】
[(B)カーボンナノチューブ]
本発明のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)に加えて、カーボンナノチューブ(B)をさらに含む。本発明では、カーボンナノチューブ(B)を含むことにより、ゴム組成物の硬度およびモジュラスを向上できる。
【0030】
カーボンナノチューブ(B)としては、慣用のカーボンナノチューブ(CNT)を利用できる。CNT(B)の形状は、炭素原子が六角網平面状に連なった構造を有するグラフェン膜が筒状に丸まった形状である。CNT(B)は、筒を形成する層の数によって、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類できる。これらのうち、補強性が高い点から、SWCNTが好ましい。
【0031】
CNT(B)の平均径(軸方向に対して直交する方向の直径または横断面径)は、例えば0.5nm~1μm程度の範囲から選択でき、SWCNTの場合、平均径は、例えば0.5~10nm、好ましくは0.7~5nm、さらに好ましくは0.8~3nm程度であってもよい。MWCNTの場合、平均径は、例えば0.5~100nm、好ましくは1~50nm、さらに好ましくは2~40nm、最も好ましくは5~30nm程度であってもよい。
【0032】
CNT(B)の平均長は、例えば1~1000μm、好ましくは2~500μm、さらに好ましくは3~300μm、最も好ましくは5~100μm程度であってもよい。また、平均長は、CNTの種類に応じて、例えば、1~100μm、好ましくは1.1~10μm、さらに好ましくは1.15~8μm、最も好ましくは1.2~5μm程度であってもよい。
【0033】
CNT(B)の平均径および平均長は、慣用の方法、例えば、走査型電子顕微鏡などを用いて測定できる。
【0034】
CNT(B)のアスペクト比(平均長/平均径)は、例えば100~100000、好ましくは500~50000、さらに好ましくは1000~10000程度であってもよい。特に、SWCNTのアスペクト比は、1000以上(例えば、2000~10000)であってもよい。アスペクト比が大きすぎると、CNTの製造が困難で経済性が低下する虞があり、アスペクト比が小さすぎると、補強性が低下する虞がある。
【0035】
本発明において、CNT(B)は、後述するように、金属成分(D)との複合体(例えば、金属触媒由来の金属成分(D)がCNT内部に取り込まれた複合体)として得られる製造方法で製造される。本発明では、金属成分(D)を含むCNTであっても、耐熱老化性を向上できる。CNT(B)の製造方法は、前記複合体としてカーボンナノチューブが得られる製造方法であれば、特に限定されないが、化学的気相成長法(CVD法)が好ましい。大量生産に向くCVD法でのCNTの製造には金属触媒が必須であり、金属触媒を起点として筒形状にカーボンが成長する。そのため、金属触媒の多くはCNT中に取り込まれてしまい、CNT中には少なからぬ量(約10質量%程度)の金属不純物が含まれることとなるが、本発明では、金属不純物を含むCNTであってもゴム組成物の耐熱老化性を向上できるため、金属不純物を含むCNTを用いることに技術的な意義がある。
【0036】
CNT(B)の割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば0.3~20質量部、好ましくは0.5~15質量部、さらに好ましくは1~13質量部、より好ましくは5~12質量部、最も好ましくは8~11質量部である。CNT(B)の割合が少なすぎると、ゴム組成物の硬度およびモジュラスが低下する虞があり、逆に多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0037】
[(C)金属不活性化剤]
本発明のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)およびカーボンナノチューブ(B)に加えて、金属不活性化剤(C)をさらに含む。ゴム組成物中に金属不純物である金属成分(D)が含まれると、金属不純物の触媒作用によって熱老化が促進される。これに対して、本発明では、金属不活性化剤(C)がゴム中に含まれる金属不純物に配位して錯体を形成することで不活性化し、金属不純物によるゴム組成物の熱老化の促進を防止する効果が発現できる。すなわち、本発明では、金属不活性化剤(C)を含むことにより、前記カーボンナノチューブ(B)が金属触媒由来の金属不純物を含んでいるにも拘わらず、ゴム組成物の耐熱老化性を向上できる。
【0038】
金属不活性化剤(C)は、鉄やニッケルなどの遷移金属に対してキレート作用を有していればよいが、ゴム組成物の耐熱老化性を向上できる点から、アミド結合を有する化合物であるのが好ましく、下記式(1)~(4)で表される化合物からなる群より選択された少なくとも1種であるのが特に好ましい。
【0039】
【化2】
【0040】
(式中、環Zは芳香族環を示し、m1は0以上の整数を示し、Rはヒドロキシル基、アルキル基またはアルコキシ基を示し、環Zは複素環を示す)
【0041】
【化3】
【0042】
(式中、環ZおよびZは芳香族環を示し、Xは直接結合または-NHCO-基を示し、Xは直接結合または-N=NCH-基を示し、m2およびm3は0以上の整数を示し、RおよびRはヒドロキシル基、アルキル基またはアルコキシ基を示し、nは1または2を示し、かつnが1のときXは水素原子を示し、nが2のときXは直接結合、2価の炭化水素基、チオエーテル基(スルフィド基)、スルホニル基、エーテル基(エーテル結合)または-NHCO-基を示す)
【0043】
【化4】
【0044】
(式中、環ZおよびZは芳香族環を示し、m4およびm5は0以上の整数を示し、RおよびRはヒドロキシル基、アルキル基またはアルコキシ基を示し、AおよびAは直接結合またはアルキレン基を示し、sは0または1を示す)
【0045】
【化5】
【0046】
(式中、RおよびRは水素原子またはCHCO-基を示し、AおよびAは直接結合またはアルキレン基を示し、Xは直接結合、2価の炭化水素基、チオエーテル基、スルホニル基、エーテル基または-NHCO-基を示す)。
【0047】
前記式(1)において、環Zの芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのアレーン環などが挙げられる。これらのうち、ベンゼン環が好ましい。
【0048】
のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ヘキシルなどのC1-12アルキル基などが挙げられる。これらのアルキル基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C1-6アルキル基が好ましく、メチル基などのC1-3アルキル基が好ましい。
【0049】
のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどのC1-6アルコキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシ基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C1-4アルコキシ基が好ましく、メトキシなどのC1-2アルコキシ基が好ましい。
【0050】
としては、ヒドロキシル基、メチル基などのC1-3アルキル基、メトキシ基などのC1-2アルコキシ基が好ましく、ヒドロキシル基が特に好ましい。
【0051】
m1は、0以上の整数であればよく、環Zの種類に応じて、0~5の整数(特に0~3の整数)から選択できるが、0または1が好ましく、1が特に好ましい。
【0052】
環Zがベンゼン環である場合、Rの置換位置は、2~6位のいずれであってもよいが、2位、4位、2位と4位との組み合わせが好ましく、2位が特に好ましい。
【0053】
環Zの複素環としては、例えば、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、プリンなどの窒素含有複素環;フラン、ピラン、ジオキソラン、ジオキソール、ジオキサン、ジオキシンなどの酸素含有複素環;チオフェン、チオピラン、ジチオランなどの硫黄含有複素環;チアジアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、チアジン、チアジアジンなどの窒素および硫黄含有複素環;オキサゾール、フラザン、モルホリンなどの窒素および酸素含有複素環などが挙げられる。これらの複素環のうち、窒素含有複素環が好ましく、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピリミジンなどの5または6員不飽和窒素含有複素環がさらに好まく、トリアゾールなどの5員不飽和窒素含有複素環が最も好ましい。
【0054】
前記式(1)で表される化合物としては、例えば、環Zがベンゼン環であり、m1が1であり、Rがヒドロキシル基であり、かつ環Zが窒素含有複素環である化合物などが挙げられる。
【0055】
前記式(2)において、環ZおよびZの芳香族環としては、例えば、環Zとして例示された芳香族環が挙げられる。環Zと環Zとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、環ZおよびZのいずれもベンゼン環であるのが特に好ましい。RおよびR、その置換数m2およびm3ならびに置換位置は、好ましい態様も含め、Rおよびm1と同一である。
【0056】
の2価の炭化水素基には、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基などが含まれる。
【0057】
アルキレン基としては、例えば、メチレン、エチリデン、エチレン、イソプロピリデン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、1,6-ヘキサンジイル、1,10-デカンジイルなどのC1-12アルキレン基などが挙げられる。
【0058】
シクロアルキレン基としては、例えば、1,1-シクロペンチレン基、1,2-シクロペンチレン基、1,1-シクロヘキシレン基、1,2-シクロヘキシレン基などのC5-10シクロアルキレン基などが挙げられる。
【0059】
アリーレン基としては、例えば、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基などのフェニレン基、1,5-ナフチレン基や2,6-ナフチレン基などのナフチレン基、4,4’-ビフェニレン基などのビフェニレン基などが挙げられる。
【0060】
としては、メチレン基などのC1-3アルキレン基、チオエーテル基、スルホニル基が好ましい。
【0061】
環Zおよび/またはZがベンゼン環である場合、RおよびRの置換位置は、2~6位のいずれであってもよいが、2位、4位、2位と4位との組み合わせ、3位と4位と5位との組み合わせが好ましく、2位、3位と4位と5位との組み合わせが特に好ましい。
【0062】
前記式(2)で表される化合物としては、例えば、環Zおよび環Zがベンゼン環であり、Xが-NHCO-基であり、Xが直接結合であり、m2およびm3が0であり、かつnが1である化合物;環Zおよび環Zがベンゼン環であり、m2が1であり、Rが2位のヒドロキシル基であり、XおよびXが直接結合であり、m3が0であり、かつnが1である化合物;環Zおよび環Zがベンゼン環であり、m2およびm3が1であり、RおよびRが2位のヒドロキシル基であり、Xが直接結合であり、Xが-N=NCH-基であり、かつnが1である化合物;環Zおよび環Zがベンゼン環であり、m2が2であり、Rが2位および4位のヒドロキシル基であり、XおよびXが直接結合であり、m2が2であり、Rが3位および5位のメチル基であり、nが2であり、かつXがメチレン基である化合物などが挙げられる。
【0063】
前記式(3)において、環ZおよびZの芳香族環としては、例えば、環Zとして例示された芳香族環が挙げられる。環Zと環Zとは、異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、環Zと環Zのいずれもベンゼン環であるのが特に好ましい。
【0064】
およびRのアルキル基、アルコキシ基としては、例えば、Rとして例示されたアルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。RおよびRとしては、ヒドロキシル基、C1-6アルキル基が好ましく、ヒドロキシル基、t-ブチルなどの分岐鎖状C3-6アルキル基が特に好ましい。
【0065】
m4およびm5は、0以上の整数であればよく、環ZおよびZの種類に応じて、0~5の整数(特に0~3の整数)から選択できるが、0~3の整数が好ましく、1~3の整数が特に好ましい。
【0066】
環ZおよびZがベンゼン環である場合、RおよびRの置換位置は、2~6位のいずれであってもよいが、2位や、3位と4位と5位の組み合わせが好ましい。
【0067】
およびAのアルキレン基としては、Xとして例示されたアルキレン基などが挙げられる。AおよびAとしては、エチレン基、1,10-デカンジイル基などのC2-10アルキレン基が好ましい。
【0068】
前記式(3)で表される化合物としては、例えば、環ZおよびZがベンゼン環であり、m4およびm5が1であり、RおよびRが2位のヒドロキシル基であり、Aが直接結合であり、Aが1,10-デカンジイル基であり、かつsが1である化合物;環ZおよびZがベンゼン環であり、m4およびm5が3であり、RおよびRが3位および5位のヒドロキシル基、4位のt-ブチル基であり、AおよびAがエチレン基であり、かつsが0である化合物などが挙げられる。
【0069】
前記式(4)において、AおよびAのアルキレン基としては、Xとして例示されたアルキレン基などが挙げられる。AおよびAとしては、エチレン基などのC1-4アルキレン基が好ましい。Xの2価の炭化水素基としては、好ましい態様も含め、Xの2価の炭化水素基と同一である。
【0070】
前記式(4)で表される化合物としては、例えば、RおよびRは水素原子であり、AおよびAが直接結合であり、かつXが1,3-フェニレン基である化合物;RおよびRがCHCO-基であり、AおよびAがエチレン基であり、かつXがチオエーテル基である化合物などが挙げられる。
【0071】
これらのうち、アミド結合およびフェノール性水酸基を有する化合物が好ましく、アミド結合、フェノール性水酸基および複素環を有する化合物がさらに好ましく、前記式(1)で表される化合物が最も好ましい。
【0072】
好ましい前記式(1)で表される化合物としては、複素環が窒素含有複素環である化合物、例えば、2-ヒドロキシ-N-イミダゾール-4-イル-ベンズアミド、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-ベンズアミド、2-ヒドロキシ-N-テトラゾール-4-イル-ベンズアミド、2-ヒドロキシ-N-ピリミジン-5-イル-ベンズアミドなどが挙げられる。
【0073】
金属不活性化剤(C)は、前記式(1)~(4)で表される化合物の中でも、耐熱老化性を向上できる点から、ヒンダードフェノール構造および/またはヒドラジン骨格を有さない化合物が好ましく、ヒンダードフェノール構造を有さない化合物がさらに好ましく、ヒンダードフェノール構造およびヒドラジン骨格を有さない化合物が特に好ましい。
【0074】
金属不活性化剤(C)の分子量は100~1000程度の範囲から選択でき、例えば110~800、好ましくは130~500、さらに好ましくは150~300、より好ましくは160~250、最も好ましくは180~220である。分子量が小さすぎると、ゴム組成物の外部に金属不活性剤(C)が流れ出し易くなって、効果が長期に亘って持続しない虞がある。逆に分子量が大きすぎると、ゴム組成物中に均一に分散させるのが困難となる上に、同一質量でのキレート形成能(金属捕捉能)が低下して、耐熱老化性が十分に向上しない虞がある。
【0075】
金属不活性化剤(C)の融点は120℃以上程度の範囲から選択でき、例えば130~450℃、好ましくは150~400℃、さらに好ましくは200~380℃、より好ましくは250~350℃、最も好ましくは300~330℃である。融点が低すぎると、加工中(特にゴム練りや架橋工程)にゴム組成物の外部に流れ出す虞がある。
【0076】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、融点は、慣用の方法で測定でき、例えば、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0077】
金属不活性化剤(C)の割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して0.05~50質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.1~45質量部、好ましくは1~40質量部、さらに好ましくは5~35質量部、より好ましくは10~33質量部、最も好ましくは20~32質量部である。金属不活性化剤(C)の割合が少なすぎると、耐熱老化性が十分に向上しない虞があり、逆に多すぎると、ゴムの架橋を阻害し、ゴム組成物の硬度やモジュラスが低下する虞がある。
【0078】
本発明では、金属不活性化剤(C)は、カーボンナノチューブ(B)由来の後述する金属成分(D)を不活性化するために配合されるため、金属成分(D)の種類(配位座の数)に応じて、金属不活性化剤(C)の割合を調整するのが好ましい。金属不活性化剤(C)の割合は、後述する金属成分(D)1質量部に対して1~100質量部程度の範囲から選択でき、例えば3~80質量部、好ましくは5~70質量部、さらに好ましくは10~50質量部、最も好ましくは20~40質量部である。金属不活性化剤(C)の割合は、前記金属成分(D)1モルに対して0.1~30モル程度の範囲から選択でき、例えば0.5~20モル、好ましくは1~15モル、さらに好ましくは3~12モル、より好ましくは5~10モル、最も好ましくは6~9モルである。
【0079】
[(D)金属成分]
本発明のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)、カーボンナノチューブ(B)および金属不活性化剤(C)に加えて、前記カーボンナノチューブ(B)由来の金属成分(D)をさらに含む。本発明では、カーボンナノチューブ(B)が金属成分(D)を含んでいても、ゴム組成物の耐熱老化性を向上できる。
【0080】
金属成分(D)は、前記カーボンナノチューブ(B)由来であり、詳しくはカーボンナノチューブの製造過程でカーボンナノチューブに混入する金属成分であり、例えば、カーボンナノチューブの製造で使用される金属触媒に由来する金属成分であってもよい。金属触媒由来の金属成分は、通常、遷移金属単体および/または遷移金属化合物である。
【0081】
遷移金属としては、周期表第3~11族元素であれば特に限定されず、例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5族金属;クロム、モリブデン、タングステンなどの周期表第6族金属;マンガンなどの周期表第7族金属;鉄、ルテニウム、オスミウムなどの周期表第8族金属;コバルト、ロジウム、イリジウムなどの周期表第9族金属;ニッケル、パラジウム、白金などの周期表第10族金属;銅、銀、金などの周期表第11族金属などが挙げられる。これらの遷移金属は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用でき、合金であってもよい。これらのうち、周期表第6~10族金属が好ましく、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルがさらに好ましく、鉄が最も好ましい。
【0082】
遷移金属化合物としては、例えば、これら遷移金属の炭化物、酸化物、硫化物、無機酸塩、錯体などが挙げられる。これらの遷移金属化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、炭化物、酸化物が好ましい。
【0083】
これらのうち、金属成分(D)としては、鉄を含む金属成分が好ましく、鉄単体を含む金属成分が特に好ましい。金属成分(D)中鉄元素の割合は10質量%以上であってもよく、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。鉄は熱老化性を促進するため、金属成分(D)が鉄を含むと、本発明の効果が効果的に発現する。
【0084】
金属成分(D)の存在形態は、カーボンナノチューブ(B)の中空内部に存在する形態であってもよいが、ゴム組成物の混練過程などにおいてカーボンナノチューブ(B)と分離することにより、カーボンナノチューブ(B)と独立してゴム組成物中に分散した形態であってもよい。
【0085】
金属成分(D)の割合は、カーボンナノチューブ(B)100質量部に対して、例えば1~30質量部、好ましくは3~25質量部、さらに好ましくは5~20質量部、より好ましくは7~15質量部、最も好ましくは8~13質量部である。金属成分(D)の割合が少なすぎると、本発明の効果が発現しない虞があり、逆に多すぎると、ゴム組成物の耐熱老化性が低下する虞がある。
【0086】
[(E)架橋剤]
本発明のゴム組成物は、架橋剤(E)をさらに含んでいてもよい。架橋剤(E)には、硫黄、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物などが含まれる。
【0087】
有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド(ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイドなど)、パーオキシケタール[1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタンなど]、アルキルパーオキシエステル(t-ブチルパーオキシベンゾエートなど)、ジアルキルパーオキサイド[ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなど]、パーオキシカーボネート(t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチル-ヘキシルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチル-ヘキシルカーボネートなど)などが挙げられる。
【0088】
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。
【0089】
アゾ化合物としては、例えば、アゾニトリル化合物[2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸など]、アゾアミド化合物[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-メチル-プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(ヒドロキシメチル)-プロピオンアミドなど]、アゾアミジン化合物[例えば、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)アセテートなど]などが挙げられる。
【0090】
これらの架橋剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、取り扱い性などの点から、硫黄、有機過酸化物が好ましく、1,3-ビス(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイドが特に好ましい。
【0091】
架橋剤(E)の割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば0.5~10質量部、好ましくは1~8質量部、さらに好ましくは1.5~5質量部である。架橋剤(E)の割合が少なすぎると、ゴム組成物の耐熱性および硬度、モジュラスが低下する虞があり、逆に多すぎても、ゴム組成物の耐熱性が低下する虞がある。
【0092】
[(F)他の補強剤]
本発明のゴム組成物は、カーボンナノチューブ(B)に加えて、他の補強剤(F)をさらに含んでいてもよい。他の補強剤(F)としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、短繊維(ナイロン繊維、アラミド繊維などの有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維など)などが挙げられる。これらの補強剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、カーボンブラックが好ましい。
【0093】
他の補強剤(F)の割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは10~50質量部である。
【0094】
[他の成分]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)に加えて、他のゴム成分をさらに含んでいてもよい。他のゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これら他のゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0095】
他のゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して100質量部以下(例えば0.1~100質量部程度)であってもよく、好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0096】
本発明のゴム組成物は、ゴムの配合剤として利用される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、共架橋剤(ビスマレイミド類など)、架橋助剤または架橋促進剤(チウラム系促進剤など)、架橋遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイルや、ナフテン系オイル等のオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、シランカップリング剤、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
【0097】
慣用の添加剤の合計割合は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)100質量部に対して、例えば5~50質量部、好ましくは10~40質量部、さらに好ましくは20~35質量部である。
【0098】
[ゴム組成物の特性]
本発明のゴム組成物は、ゴム成分としてエチレン-α-オレフィンエラストマー(A)を含む組成物であるため、前述のように、各種特性に優れるため、各種の用途に使用されており、硬度やモジュラスを高める配合が要求されている。
【0099】
本発明のゴム組成物の硬化物(架橋体)は、カーボンナノチューブ(B)を含むため、高い硬度を有しており、ゴム硬度は50°以上であってもよく、例えば60~95°、好ましくは70~93°、さらに好ましくは75~92°、より好ましくは80~91°、最も好ましくは85~90°である。ゴム硬度が小さすぎると、要求される高モジュラスを実現できない虞がある。
【0100】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ゴム硬度は、JIS K 6253(2012)(加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-硬さの求め方-)に規定されているスプリング硬さ試験(A形)に準じて測定された値Hs(JIS A)を示す。
【0101】
本発明のゴム組成物の硬化物(架橋体)は引張応力も大きく、100%伸びにおける引張応力(M100)は1MPa以上であってもよく、例えば1.5~20MPa、好ましくは2~15MPa、さらに好ましくは3~10MPa、より好ましくは4~8MPa、最も好ましくは5~7MPaである。M100が小さすぎると、要求される高モジュラスを実現できない虞がある。
【0102】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、M100は、JIS K 6251(2017)に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0103】
本発明のゴム組成物は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)を含むゴム組成物であるが、ゴムの最たる特徴は、力を加えると大きく変形し、加えられた力を除くと元の形状に戻るというゴム弾性にある。このゴム弾性は、高分子鎖の一部分が架橋され、三次元網目構造が形成されることによって発現する。しかし、時間の経過とともに酸化・分解反応が起こり、分子鎖の切断、架橋点の切断、架橋点の過剰生成などにより、物性(硬度、モジュラス、伸びなど)に変化が生じ、ゴム弾性が消失する。物性の変化は、ゴムや架橋剤の種類によって異なった傾向を示す場合があるが、合成ゴムの多くでは、硬度が高くなって伸びは低下する。そのため、老化現象の進行によって、硬度が上昇し、切断伸びが低下したゴムは、引張力や曲げ力が作用すると亀裂が発生し易くなり、成形体の耐久性を低下させる結果となる。本発明のゴム組成物は、カーボンナノチューブ(B)の配合によって高モジュラスに調整されている反面、このカーボンナノチューブ(B)に含まれる金属成分(D)が老化現象を促進する作用を有しているため、ゴム硬度が上昇し易い組成である。特に、カーボンナノチューブの配合量が多い場合には熱老化前からゴム硬度が高く、許容されるゴム硬度の上限に近い状態にあるが、特定の組成に調整することにより、ゴム硬度の上昇を抑制することに成功した。
【0104】
[ゴム組成物の製造方法]
本発明のゴム組成物の製造方法は、炭素含有原料から金属触媒を用いて前記カーボンナノチューブ(B)と前記金属成分(D)との複合体を得るカーボンナノチューブ製造工程、前記エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)と、前記複合体と、前記金属不活性化剤(C)とを混合する混合工程とを含む製造方法であってもよい。
【0105】
(カーボンナノチューブ製造工程)
カーボンナノチューブ製造工程では、金属触媒の存在下、加熱して炭素含有原料を分解することにより、微細なチューブ状炭素であるカーボンナノチューブを生成させてもよい。
【0106】
カーボンナノチューブ製造工程において、炭素含有原料としては、カーボンナノチューブを製造するための原料として利用されている慣用の原料を利用でき、例えば、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、アセチレンなどの脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;アセトンなどのケトン;一酸化炭素などが挙げられる。炭素含有原料はガス状であってもよい。これらの炭素含有原料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用でき、混合ガスであってもよい。
【0107】
金属触媒としては、金属成分(D)として例示した遷移金属を含む触媒であればよく、カーボンナノチューブを製造するために利用される慣用の金属触媒を利用できる。金属触媒は、金属触媒前駆体であってもよい。金属触媒前駆体としては、例えば、錯体(カルボニル錯体、フェロセン錯体、硫黄含有フェロセンなどのフェロセン誘導体錯体など)、塩(硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩などの無機酸塩;シュウ酸塩、グルコン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩などの有機酸塩など)、酸化物、硫化物などの形態である前駆体などが挙げられる。これらの金属触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0108】
カーボンナノチューブ製造工程としては、慣用のカーボンナノチューブの製造方法を利用できるが、カーボンナノチューブ(B)に金属成分(D)が混入した前記複合体が生成し易い点から、化学的気相成長法(CVD法)が好ましい。CVD法では、前記金属触媒の存在下、前記炭素含有原料を加熱することにより分解してカーボンナノチューブを製造してもよい。CVD法としても慣用のCVD法を利用できるが、加熱温度は、例えば500℃以上であってもよく、例えば500~1500℃、好ましくは600~1300℃程度であってもよい。また、炭素含有原料の分解は、アルゴン、ヘリウム、キセノンなどの不活性ガス、水素などの雰囲気下で行ってもよく、前記金属触媒に加えて硫黄または硫黄化合物の存在下で行ってもよい。
【0109】
(混合工程)
混合工程では、慣用の方法によって各成分を混合(または混練)することにより調製できるが、均一に混合するためには、エチレン-α-オレフィンエラストマー(A)、前記複合体、金属不活性化剤(C)を加熱下で混練するのが好ましい。
【0110】
混練方法としては、慣用の混練方法、例えば、ミキシングローラー、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機(一軸または二軸押出機など)などを用いた方法などが挙げられる。
【0111】
加熱温度は、例えば50~120℃、さらに好ましくは60~100℃、さらに好ましくは70~90℃である。加熱温度が高すぎると、成形体を形成する前にゴムが架橋する虞がある。
【0112】
[成形体]
本発明のゴム組成物の硬化物は、高モジュラスであり、かつ耐熱性に優れるため、各種成形体として利用できるが、伝動ベルトを形成するゴム層として利用するのが好ましい。
【0113】
伝動ベルトは、摩擦伝動ベルトであってもよく、噛み合い伝動ベルトであってもよい。摩擦伝動ベルトとしては、例えば、平ベルト;ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、VリブドベルトなどのVベルトなどが挙げられる。噛み合い伝動ベルトとしては、例えば、歯付ベルト、両面歯付ベルトなどが挙げられる。これらのうち、高度な耐熱性と伝達効率とが要求される点から、摩擦伝動ベルトが好ましく、省燃費化が要求される用途、例えば、自動車エンジンの補機駆動システムなどに用いるVリブドベルト、自動二輪車の無段変速装置などに用いるローエッジVベルト(ローエッジコグドVベルトも含む)がさらに好ましく、高度な耐久性を要求される点から、自動車エンジンの補機駆動システムに用いられるVリブドベルトが特に好ましい。
【0114】
VリブドベルトやローエッジVベルトなどの摩擦伝動ベルトにおいて、本発明のゴム組成物は、圧縮ゴム層(内面ゴム層)および/または伸張層(背面ゴム層)を形成していてもよい。伸張層が背面ゴム層である摩擦伝動ベルトとしては、例えば、ベルト背面がプーリと接触する背面駆動レイアウトで走行するVリブドベルトなどが挙げられる。これらのうち、少なくとも圧縮ゴム層が本発明のゴム組成物で形成された摩擦伝動ベルトが好ましい。
【実施例
【0115】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例で使用した原料の詳細を以下に示す。
【0116】
[原料]
EPDM:ダウ・ケミカル日本(株)製「NORDEL(登録商標)IP3640」、ムーニー粘度(125℃)≒40、エチレン含量55質量%、ジエン含量(エチリデンノルボルネン含量)1.8質量%
ステアリン酸:日油(株)製、「ビーズステアリン酸つばき」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製、「酸化亜鉛3種」
カーボンブラックN220:東海カーボン(株)製「シースト6」
パラフィン系オイル:パラフィン系プロセスオイル、出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)PW-380」
有機過酸化物:日油(株)製「パークミルD」(ジクミルパーオキサイド)
架橋促進剤DM:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)DM」
CNT1:OCSiAl社製「TUBALL」(SWCNT)、炭素量=90質量%、金属不純物量=10質量%、直径1.6±0.4nm、長さ>5μm
CNT2:OCSiAl社製「TUBALL」(SWCNT)、炭素量=99質量%以上、金属不純物量=1質量%未満、直径1.6±0.5nm、長さ>5μm
CNT3:nanocyl社製「NC7000」(MWCNT)、炭素量=90質量%、金属不純物量=1質量%未満、平均直径約9.5nm、平均長さ約1.5μm
金属不活性化剤1:(株)ADEKA製「アデカスタブCDA-1」、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-ベンズアミド、融点約320℃
金属不活性化剤2:(株)ADEKA製「アデカスタブCDA-10」、N,N'-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、融点約225℃。
【0117】
[ゴム硬度]
未架橋のゴムシートを温度165℃、時間30分でプレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。ゴム硬度はJIS K 6253(2012)に準拠し、架橋ゴムシートを3枚重ね合わせた積層物を試料とし、デュロメータA形硬さ試験機を用いて測定した。
【0118】
[M100(100%伸びにおける引張応力)および切断時伸び]
未架橋のゴムシートを温度165℃、時間30分でプレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。この架橋ゴムシートを打抜き刃で打抜いて、ダンベル状3号形の試験片を作製した。M100および切断時伸びはJIS K 6251(2017)に準拠し、引張速度は500mm/min、試験温度は23℃で測定した。
【0119】
[熱老化特性]
未架橋のゴムシートを温度165℃、時間30分でプレス架橋し、架橋ゴムシート(100mm×100mm×2mm厚み)を作製した。この架橋ゴムシートを打抜き刃で打抜いて、ダンベル状3号形の試験片を作製した。熱老化特性はJIS K 6257(2017)に準拠し、試験片をギヤー式老化試験機中に所定の温度、日数放置した後取り出し、取り出した試験片を23℃で1日放置した後、ゴム硬度および切断時伸びを測定した。熱老化温度は150℃とし、熱老化日数は10日、20日、30日の3水準とした。
【0120】
実施例1~8、比較例1~2および参考例1~3
表1および表2に示す配合処方のうち、有機過酸化物、架橋促進剤および硫黄を除く成分をバンバリーミキサーに投入し、温調を50℃に設定して、5分間混錬した。この際、ゴムの温度は約100℃まで上昇した。次いで、温調を20℃に設定した後に、有機過酸化物、架橋促進剤および硫黄を追加で投入し、さらに2分間混練した。混練したゴム組成物をカレンダーロールで所定の厚みに圧延して未架橋のゴムシートを調製し、評価した結果を表1および表2に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1および表2の結果から明らかなように、CNTを含まない比較例1は、硬度およびM100が低かった。また、CNTを含むが金属不活性化剤を含まない比較例2は耐熱老化性が低かった。
【0124】
一方、CNT1(SWCNT)と金属不活性化剤とを含む実施例1~8は、硬度およびM100が高く、耐熱老化性も高かった。実施例1は実施例2と比較して金属不活性化剤の添加量が少ないため、耐熱老化性が低下した。実施例7は金属不活性化剤の添加量が多すぎるために架橋が阻害され、硬度およびM100が低下した。実施例8は金属不活性化剤としてヒンダードフェノール系金属不活性化剤を使用した例である。金属不活性化剤2の融点が金属不活性化剤1の融点より低く、分子量も大きいためか、実施例8は実施例2と比較して耐熱老化性が低下した。
【0125】
金属不純物を実質的に含まないCNT2(SWCNT)を使用した参考例1は、高モジュラスである上に、金属不活性化剤を添加しなくても耐熱老化性に優れていた。しかし、金属不純物を実質的に含まないSWCNTは高価であり、経済性が劣っていた。
【0126】
また、金属不純物を実質的に含まないCNT3(MWCNT)を使用し、前記CNTを変量した参考例2および3でも、金属不活性化剤を添加しなくても耐熱老化性に優れていた。しかし、使用したCNTがMWCNTであり、前記CNTのアスペクト比が小さいためか、実施例4および5と比較してモジュラスの向上は小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のゴム組成物は、高モジュラスと耐熱老化性とを要求される各種の成形体として利用でき、特に、伝動ベルト、例えば、平ベルト;ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト、Vリブドベルトなどの摩擦伝動ベルトや、歯付ベルト、両面歯付ベルトなどの噛み合い伝動ベルトとして好ましく利用できる。