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特許7453083重合性組成物の製造方法及び重合性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】重合性組成物の製造方法及び重合性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/00 20060101AFI20240312BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20240312BHJP
   C08F 222/10 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C08F2/00 Z
C08F220/34
C08F222/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020127566
(22)【出願日】2020-07-28
(65)【公開番号】P2022024778
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】福與 悠里
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 慎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】葛西 侑毅
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-311852(JP,A)
【文献】特表2016-532162(JP,A)
【文献】特開平08-157318(JP,A)
【文献】特開2002-047118(JP,A)
【文献】特開2000-063222(JP,A)
【文献】特開2020-083922(JP,A)
【文献】特開2019-178091(JP,A)
【文献】特開2021-187833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 2/00-2/60
C08F 6/00-246/00
A61K 6/00-6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体が分散している重合性組成物を製造する方法であって、
前記第1の重合性単量体と、前記第2の重合性単量体及び/又は前記第2の重合性単量体の重合体とが、溶媒に溶解している溶液を得る第1の工程と、
前記溶液から前記溶媒を留去する第2の工程を含み、
前記第1の重合性単量体は、液体であり、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであり、
前記第2の重合性単量体は、固体であり、かつ4級アンモニウム塩基を有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能(メタ)アクリレートである、重合性組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程は、前記第1の重合性単量体の少なくとも一部と、前記第2の重合性単量体を、前記溶媒に溶解させて第1の溶液を得る工程を含む、請求項1に記載の重合性組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、前記第1の重合性単量体の一部と、前記第2の重合性単量体を、前記溶媒に溶解させて第1の溶液を得る工程と、前記第1の溶液を加熱し、前記第1の重合性単量体の一部と、前記第2の重合性単量体を共重合して第2の溶液を得る工程と、前記第2の溶液と、前記第1の重合性単量体の残部の少なくとも一部を混合して第3の溶液を得る工程を含む、請求項1に記載の重合性組成物の製造方法。
【請求項4】
第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体が分散しており、
前記第1の重合性単量体は、液体であり、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであり、
前記第2の重合性単量体は、固体であり、かつ4級アンモニウム塩基を有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能(メタ)アクリレートである、重合性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物の製造方法及び重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科分野において、歯科用コンポジットレジン等の歯科用重合性組成物の硬化体に抗菌性を付与することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン系不飽和モノマー、特定の抗菌性を有する単官能性ないし3官能性化合物から選ばれる少なくとも1種のモノマーおよび重合開始剤を含んでなる重合性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-9725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、歯科用重合性組成物の硬化体の外観が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、重合性組成物の硬化体の外観を向上させることが可能な重合性組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体が分散している重合性組成物を製造する方法であって、前記第1の重合性単量体と、前記第2の重合性単量体及び/又は前記第2の重合性単量体の重合体とが、溶媒に溶解している溶液を得る第1の工程と、前記溶液から前記溶媒を留去する第2の工程を含み、前記第1の重合性単量体は、液体であり、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであり、前記第2の重合性単量体は、固体であり、かつ4級アンモニウム塩基を有し、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能(メタ)アクリレートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、重合性組成物の硬化体の外観を向上させることが可能な重合性組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1-3の試験片の表面のSEM像を示す。
図2】比較例1の試験片の表面のSEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
【0011】
<重合性組成物の製造方法>
本実施形態の重合性組成物の製造方法は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体が分散している重合性組成物を製造する方法である。
【0012】
ここで、第2の重合性単量体の重合体は、第2の重合性単量体の単独重合体であってもよいし、第2の重合性単量体と、第2の重合性単量体以外の重合性単量体の共重合体であってもよい。
【0013】
なお、第2の重合性単量体以外の重合性単量体は、第1の重合性単量体であってもよいし、第1の重合性単量体以外の重合性単量体であってもよい。
【0014】
本実施形態の重合性組成物の製造方法は、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体とが、溶媒に溶解している溶液を得る第1の工程と、溶液から溶媒を留去する第2の工程を含む。
【0015】
ここで、第1の重合性単量体は、液体であり、第2の重合性単量体は、固体である。例えば、第1の重合性単量体は、常温常圧で液体であり、第2の重合性単量体は、常温常圧で固体である。
【0016】
このとき、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体とを直接混合すると、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体の粒径を制御することが困難であるため、重合性組成物の硬化体の外観が悪化する。
【0017】
一方、第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体とが溶媒に溶解している溶液から溶媒を留去すると、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体の粒径を制御することができる。その結果、重合性組成物の硬化体に第2の重合性単量体に由来する性能を付与しながら、重合性組成物の硬化体の外観を向上させることができる。例えば、第2の重合性単量体が抗菌性基を有する場合、重合性組成物の硬化体に抗菌性を付与することができる。
【0018】
第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体に対する第1の重合性単量体の質量比は、0.01~1000であることが好ましく、0.04~100であることがさらに好ましい。第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体に対する第1の重合性単量体の質量比が0.01以上であると、重合性組成物の硬化体の外観が向上し、1000以下であると、重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する性能が向上する。
【0019】
本実施形態においては、溶液を得る際に、光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を添加することが好ましい。
【0020】
また、溶液から溶媒を留去した後に、フィラー等を添加することが好ましい。
【0021】
第1の工程は、第1の重合性単量体の少なくとも一部と、第2の重合性単量体を、溶媒に溶解させて第1の溶液を得る工程を含むことが好ましい。これにより、重合性組成物中の第2の重合性単量体の分散状態が良好となり、その結果、重合性組成物の硬化体の外観が向上する。
【0022】
この場合、第1の重合性単量体の残部に、光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を添加することが好ましい。
【0023】
ここで、第1の溶液を得る際に、第1の重合性単量体の一部を用いる場合は、分散液を得た後に、分散液と、第1の重合性単量体の残部を混合する。
【0024】
第1の重合性単量体の少なくとも一部に対する第2の重合性単量体の質量比は、0.001~100であることが好ましく、0.01~50であることがさらに好ましい。第1の重合性単量体及び第2の重合性単量体の質量比が0.001以上100以下であると、重合性組成物中の第2の重合性単量体の分散状態が良好となる。
【0025】
第1の溶液中の溶媒の含有量は、50~99.9質量%であることが好ましい。第1の溶液中の溶媒の含有量が50質量%以上であると、第1の溶液の溶解安定性が向上し、99.9質量%以下であると、第1の溶液から溶媒を留去しやすくなる。
【0026】
第1の工程は、第1の重合性単量体の一部と、第2の重合性単量体を、溶媒に溶解させて第1の溶液を得る工程と、第1の溶液を加熱し、第1の重合性単量体の一部と、第2の重合性単量体を共重合して第2の溶液を得る工程と、第2の溶液と、第1の重合性単量体の残部の少なくとも一部を混合して第3の溶液を得る工程を含むことが好ましい。これにより、第2の重合性単量体の重合体として、第1の重合性単量体と第2の重合性単量体の共重合体が得られるため、重合性組成物中の第2の重合性単量体の重合体の分散状態が良好となり、その結果、重合性組成物の硬化体の外観が向上する。
【0027】
この場合、溶媒に、熱重合開始剤を添加することが好ましい。第1の重合性単量体の残部に、光重合開始剤、第3級アミン、重合禁止剤等を添加することが好ましい。
【0028】
ここで、第3の溶液を得る際に、第1の重合性単量体の残部の一部を用いる場合は、分散液を得た後に、分散液と、第1の重合性単量体の残部を混合する。
【0029】
第1の重合性単量体の少なくとも一部に対する第2の重合性単量体の質量比は、0.001~100であることが好ましく、0.01~50であることがさらに好ましい。第1の重合性単量体及び第2の重合性単量体の質量比が0.001以上100以下であると、重合性組成物中の第2の重合性単量体の重合体の分散状態が良好となる。
【0030】
第1の溶液中の溶媒の含有量は、50~99.9質量%であることが好ましい。第1の溶液中の溶媒の含有量が50質量%以上であると、第1の溶液の溶解安定性が向上し、99.9質量%以下であると、第1の溶液から溶媒を留去しやすくなる。
【0031】
<第1の重合性単量体>
第1の重合性単量体は、(メタ)アクリレートであることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
【0032】
第1の重合性単量体としては、例えば、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0033】
<第2の重合性単量体>
第2の重合性単量体は、第1の重合性単量体に不溶である。
【0034】
第2の重合性単量体は、(メタ)アクリレートであることが好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する単官能(メタ)アクリレートであることがさらに好ましい。
【0035】
第2の重合性単量体は、抗菌性基を有することが好ましい。
【0036】
抗菌性基としては、例えば、4級アンモニウム塩基等が挙げられる。
【0037】
抗菌性基を有する第2の重合性単量体としては、例えば、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド4級塩、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、(2-(アクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロライド等の単官能の重合性単量体、化学式
【0038】
【化1】
で表される化合物等の多官能の重合性単量体等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0039】
抗菌性基を有さない第2の重合性単量体としては、例えば、フェノキシエチレングリコールメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0040】
なお、第2の重合性単量体は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0041】
<溶媒>
溶媒としては、第1の重合性単量体及び第2の重合性単量体を溶解させることが可能であれば、特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、ヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0042】
<光重合開始剤>
光重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンジルケタール、ジアセチルケタール、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルビス(2-メトキシエチル)ケタール、4,4'-ジメチル(ベンジルジメチルケタール)、アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、1-ヒドロキシアントラキノン、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-ブロモアントラキノン、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-ニトロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロ-7-トリフルオロメチルチオキサントン、チオキサントン-10,10-ジオキシド、チオキサントン-10-オキシド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0043】
<第3級アミン>
第3級アミンは、第3級脂肪族アミン及び第3級芳香族アミンのいずれであってもよいが、第3級芳香族アミンであることが好ましく、p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキルであることが特に好ましい。
【0044】
第3級脂肪族アミンとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0045】
p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキルとしては、例えば、p-ジメチルアミノ安息香酸メチル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸プロピル、p-ジメチルアミノ安息香酸アミル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジエチルアミノ安息香酸エチル、p-ジエチルアミノ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0046】
p-ジアルキルアミノ安息香酸アルキル以外の第3級芳香族アミンとしては、例えば、7-ジメチルアミノ-4-メチルクマリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジベンジルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N,2,4,6-ペンタメチルアニリン、N,N,2,4-テトラメチルアニリン、N,N-ジエチル-2,4,6-トリメチルアニリン等が挙げられる。
【0047】
なお、第3級アミンは、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
<重合禁止剤>
重合禁止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール)、6-tert-ブチル-2,4-キシレノール等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0049】
<フィラー>
フィラーとしては、例えば、無水ケイ酸粉末、ヒュームドシリカ、アルミナ粉末、ガラス粉末(例えば、バリウムガラス粉末、フルオロアルミノシリケートガラス粉末)等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0050】
なお、フィラーは、シランカップリング剤等の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0051】
<熱重合開始剤>
熱重合開始剤としては、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0052】
<重合性組成物>
本実施形態の重合性組成物は、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体が分散している。ここで、第1の重合性単量体は、液体であり、第2の重合性単量体は、固体である。
【0053】
本実施形態の重合性組成物中の第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体の粒径は、0.01~500μmであることが好ましく、0.1~100μmであることがさらに好ましい。本実施形態の重合性組成物中の第2の重合性単量体及び/又は第2の重合性単量体の重合体の粒径が0.01μm以上であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する性能が向上し、500μm以下であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の外観が向上する。
【0054】
本実施形態の重合性組成物中の第1の重合性単量体の含有量は、1~99質量%であることが好ましく、2~50質量%であることがさらに好ましい。本実施形態の重合性組成物中の第1の重合性単量体の含有量が1質量%以上であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の外観が向上し、99質量%以下であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する性能が向上する。
【0055】
本実施形態の重合性組成物中の第2の重合性単量体の含有量は、0.01~99質量%であることが好ましく、0.1~30質量%であることがさらに好ましい。本実施形態の重合性組成物中の第2の重合性単量体の含有量が0.01質量%以上であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の第2の重合性単量体に由来する性能が向上し、99質量%以下であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の外観が向上する。
【0056】
本実施形態の重合性組成物中の溶媒の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の重合性組成物中の溶媒の含有量が0.5質量%以下であると、本実施形態の重合性組成物の硬化体の強度が向上する。
【0057】
本実施形態の重合性組成物は、歯科用重合性組成物であることが好ましい。
【0058】
歯科用重合性組成物としては、例えば、歯科用コンポジットレジン、歯科用セメント、義歯床用レジン、歯科汎用レジン等が挙げられる。これらの中でも、歯科用コンポジットレジンが好ましい。
【0059】
また、歯科用重合性組成物の硬化体は、例えば、歯科用レジンブロック等に適用することができる。
【実施例
【0060】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0061】
<液状組成物の作製>
第1の重合性単量体としての、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(以下、BisMEPPという)3.5g及びネオペンチルグリコールジメタクリレート(以下、NPGという)7.2g、(±)-カンファーキノン0.01g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.03gを混合し、液状組成物(1)を得た。
【0062】
第1の重合性単量体としての、BisMEPP3.5g及びNPG3g、(±)-カンファーキノン0.01g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.03gを混合し、液状組成物(2)を得た。
【0063】
<実施例1-1>
第1の重合性単量体としての、BisMEPP3.3g及びNPG6.5g、第2の重合性単量体としての、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド(以下、MTMACという)2.5g、(±)-カンファーキノン0.01g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.04gを、エタノール100mLに溶解させ、第1の溶液を得た。
【0064】
エバポレーターを用いて、減圧下、30~40℃で第1の溶液からエタノールを留去し、第1の重合性単量体の中に第2の重合性単量体が分散している分散液を得た。
【0065】
分散液0.9g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3g、液状組成物(1)1.8gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0066】
<実施例1-2>
BisMEPP4.7g、NPG9.5g、MTMAC2.5g、(±)-カンファーキノン0.01g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.04gを、エタノール100mLに溶解させ、第1の溶液を得た。
【0067】
エバポレーターを用いて、減圧下、30~40℃で第1の溶液からエタノールを留去し、第1の重合性単量体の中に第2の重合性単量体が分散している分散液を得た。
【0068】
分散液1.2g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3g、液状組成物(1)1.5gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0069】
<実施例1-3>
BisMEPP12.0g、NPG24.5g、MTMAC2.5g、(±)-カンファーキノン0.01g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.04gを、エタノール100mLに溶解させ、第1の溶液を得た。
【0070】
エバポレーターを用いて、減圧下、30~40℃で第1の溶液からエタノールを留去し、第1の重合性単量体の中に第2の重合性単量体が分散している分散液を得た。
【0071】
分散液2.7g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0072】
<実施例1-4>
第2の重合性単量体として、3-(アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド(以下、AATMACという)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0073】
<実施例1-5>
第2の重合性単量体として、(2-(アクリロイルオキシ)エチル)トリメチルアンモニウムクロライド(以下ATMACという)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0074】
<実施例1-6>
BisMEPP1.5g、NPG3.0g、MTMAC9.0g、(±)-カンファーキノン0.02g、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル0.04gを、エタノール100mLに溶解させ、第1の溶液を得た。
【0075】
エバポレーターを用いて、減圧下、30~40℃で第1の溶液からエタノールを留去し、第1の重合性単量体の中に第2の重合性単量体が分散している分散液を得た。
【0076】
分散液0.9g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3g、液状組成物(1)1.8gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0077】
<実施例2-1>
第1の重合性単量体としての、NPG20g、第2の重合性単量体としての、MTMAC20gを、エタノール1Lに溶解させ、第1の溶液を得た。次に、第1の溶液を70℃で15時間撹拌した後、室温まで流水冷却し、第2の溶液を得た。次に、第2の溶液90g、液状組成物(2)5.5gを撹拌し、第3の溶液を得た。
【0078】
エバポレーターを用いて、減圧下、30~40℃で第3の溶液からエタノールを留去し、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体の重合体が分散している分散液を得た。
【0079】
分散液0.9g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3g、液状組成物(1)1.8gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0080】
<実施例2-2>
NPG20g、MTMAC20g、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル0.05gを、エタノール1Lに溶解させ、第1の溶液を得た。次に、第1の溶液を55℃で15時間撹拌し、NPGとMTMACを共重合した後、室温まで流水冷却し、第2の溶液を得た。次に、第2の溶液90g、液状組成物(2)5.5gを撹拌し、第3の溶液を得た。
【0081】
エバポレーターを用いて、減圧下、30~40℃で第3の溶液からエタノールを留去し、第1の重合性単量体の中に、第2の重合性単量体の重合体が分散している分散液を得た。
【0082】
分散液0.9g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3g、液状組成物(1)1.8gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0083】
<比較例1>
MTMAC0.3g、メジアン径0.4μmの3-グリシジルオキシトリメトキシシランにより表面処理されているフルオロアルミノシリケートガラス粉末3.3g、液状組成物(1)2.4gを自動乳鉢で混錬し、歯科用コンポジットレジンを得た。
【0084】
<比較例2>
凍結粉砕器に、MTMAC2g、液体窒素10mLを投入した後、5分間粉砕した。しかしながら、MTMACの粉砕物は、取り出した直後から吸湿が始まり、潮解したため、粉末として得られず、歯科用コンポジットレジンが得られなかった。
【0085】
次に、歯科用コンポジットレジンの硬化体の外観、抗菌効果を評価した。
【0086】
<試験片の作製>
直径1cm、厚さ5mmのシリコーンモールドに歯科用コンポジットレジンを流し込んだ後、歯科用光照射器を用いて、歯科用コンポジットレジンを硬化させた。得られた硬化体の表面を耐水研磨紙#4000で注水研磨し、試験片を得た。
【0087】
<硬化体の外観>
試験片の表面を目視で観察し、硬化体の外観を評価した。
【0088】
なお、硬化体の外観の判定基準は、以下の通りである。
【0089】
優:試験片の表面が均一である場合
不可:試験片の表面が不均一である場合
<硬化体の抗菌効果>
試験片の表面をSEMで観察し、硬化体の抗菌効果を評価した。
【0090】
図1、2に、実施例1-3、比較例1の試験片の表面のSEM像を示す。ここで、(a)及び(b)は、それぞれ300倍及び1000倍のSEM像である。
【0091】
なお、硬化体の抗菌効果の判定基準は、以下の通りである。
【0092】
優:試験片の表面にMTMACの重合体の粒子が存在している場合
不可:試験片の表面にMTMACの重合体の粒子が存在していない場合
なお、硬化体の抗菌効果は、一般に、抗菌性基を有する重合体の粒子が硬化体の表面に存在している場合に優れる。
【0093】
表1に、歯科用コンポジットレジンの硬化体の外観、抗菌効果の評価結果を示す。
【0094】
【表1】
表1から、実施例1-1~1-6、実施例2-1~2-2の歯科用コンポジットレジンは、硬化体の外観、抗菌効果に優れることがわかる。
【0095】
これに対して、比較例1の歯科用コンポジットレジンは、溶媒を用いずに、製造されているため、硬化体の外観が悪化した。
図1
図2