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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】梁接合構造、建築物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240312BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E04B1/24 Q
E04B1/58 505G
E04B1/58 506F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020128895
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025804
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 博和
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢史
(72)【発明者】
【氏名】中村 信行
(72)【発明者】
【氏名】塩田 啓介
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-032072(JP,A)
【文献】特開2007-309020(JP,A)
【文献】特開平04-258429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1梁と、
前記第1梁の長手方向の中央部に端部が接合される第2梁と、
前記第1梁のウェブに接合されたガセットプレートと、
前記第2梁の下フランジに固定された圧縮力伝達部材と、を備え、
前記第2梁の端部のウェブは、
前記ガセットプレートに接合され、
前記圧縮力伝達部材は、
一方の端部であり前記第2梁の前記下フランジに固定される固定部と、
他方の端部であり前記第1梁の前記ウェブに当接する支圧部と、を備え、
前記支圧部は、
前記第1梁の前記ウェブに当接した状態で固定され
前記圧縮力伝達部材は、
長手方向に垂直な断面がL字形に形成され、前記固定部を有するアングル部材と、
前記支圧部を有する板部材と、を備え、
前記アングル部材は、前記アングル部材の長手方向を向いた端面を有しており、
前記板部材は、前記端面と対向する板面を有しており、
前記端面と前記板面とは、互いに接合されている、梁接合構造。
【請求項2】
前記板部材は、
ボルトが貫通するボルト孔が形成され、
前記支圧部は、
前記ボルトにより前記第1梁に固定される、請求項1記載の梁接合構造。
【請求項3】
前記第2梁は、
前記第1梁の前記ウェブを挟んで両側に端面を対向させて2つ配置され、
一方の前記第2梁に固定されている前記圧縮力伝達部材の前記支圧部と他方の前記第2梁に固定されている前記圧縮力伝達部材の前記支圧部とは、
前記第1梁の前記ウェブを挟んで前記ボルトにより共締めされている、請求項に記載の梁接合構造。
【請求項4】
第1梁と、
前記第1梁のウェブを挟んで両側に端面を対向させて2つ配置され、前記第1梁の長手方向の中央部に端部が接合される第2梁と、
前記第1梁の前記ウェブに接合されたガセットプレートと、
前記第2梁の下フランジに固定された圧縮力伝達部材と、を備え、
前記第2梁の端部のウェブは、
前記ガセットプレートに接合され、
前記圧縮力伝達部材は、
前記第1梁の前記ウェブを貫通して配置され、
長手方向の両端部に2つの固定部を備え、
2つの前記固定部のそれぞれは、
2つの前記第2梁のそれぞれの前記下フランジに固定され
前記第1梁の前記ウェブは、
貫通孔が形成されており、
前記圧縮力伝達部材は、
一体の部品であり、かつ前記貫通孔を通して配置されている、梁接合構造。
【請求項5】
前記第1梁は、
両端が柱に接続されており、
前記第1梁の高さ方向寸法は、
前記第2梁の高さ方向寸法よりも大きい、請求項1~請求項の何れか1項に記載の梁接合構造。
【請求項6】
請求項1~請求項の何れか1項に記載の梁接合構造を備える、建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物を構成する梁接合構造及び梁接合構造を備える建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床構造は、梁を格子状に配置し、その上に鉄筋コンクリートの床スラブが構築されることにより形成される。梁は、両端部が柱に接合されて格子の4辺を形成する。また、4辺に配置された梁の内側にさらに梁が配置される。格子の内側に配置されている梁は、端部が格子の4辺を形成する梁の長手方向の中央部に接合される。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている梁の接合構造においては、柱と接合される梁を大梁とし、大梁の中央部に接合される梁を小梁とした場合、小梁の端部は、大梁の中央部に接合されたガセットプレートにボルトにより固定されている。大梁及び小梁は、断面形状がH形に形成されており、断面において上下の端部にフランジが形成され、2つのフランジの中央部をウェブが繋ぐ形状になっている。小梁は、大梁の上側のフランジと小梁の上側のフランジとが略同一面上に位置する様に配置される。そして、大梁の2つのフランジの間に配置され、フランジ及びウェブに接合されたガセットプレートは、小梁のウェブ部とボルトにより固定されている。
【0004】
小梁は大梁よりも断面形状が小さいため、小梁の下側フランジは、大梁の下側フランジよりも上方に位置している。小梁の下側フランジには、スプライスプレートが接合されている。スプライスプレートの一方の端部は、小梁の下側フランジの面に沿って配置されてボルトに固定されている。スプライスプレートの他方の端部は、大梁のウェブの表面に端面を当接させて配置されている。建築物の床面に掛かった荷重を受けた際に小梁の端部で発生するモーメントは、小梁の下側フランジが大梁のウェブに近づく様に小梁を変位させる。しかし、特許文献1の梁の接合構造によれば、スプライスプレートの端面が大梁のウェブに当接して小梁の曲げモーメントを受けることができる。これにより、梁は曲げ荷重を効率的に支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-53102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている梁の接合構造は、板状のスプライスプレートの端面を大梁のウェブに当接させているが、スプライスプレートの端面の上下方向の幅が小さく座屈剛性が低いため、スプライスプレートが座屈変形する。また、スプライスプレートの端面と大梁のウェブとの当接状態は、施工する際の精度、部品の精度により一定しないという課題があった。つまり、スプライスプレートの端面と大梁のウェブとの間には隙間が発生したり、当接状態が線接触又は点接触となる場合があった。これにより、スプライスプレートに圧縮荷重が掛かった際に当接面に変形が生じる場合がある。ひいては、梁同士の接合構造は、強度が不十分となり、設計通りの強度を発揮できないという課題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示されている梁の接合構造においては、スプライスプレートの端面と大梁のウェブとを溶接して接合されている場合についても開示されている。しかし、スプライスプレートと大梁のウェブとの当接面は、溶接するための精度を確保するのが困難であり、スプライスプレートを大梁のウェブに溶接するための工程に時間が掛かる、という課題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであって、施工が容易で、設計通りの強度を発揮できる梁接合構造及び建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る梁接合構造は、第1梁と、前記第1梁の長手方向の中央部に端部が接合される第2梁と、前記第1梁のウェブに接合されたガセットプレートと、前記第2梁の下フランジに固定された圧縮力伝達部材と、を備え、前記第2梁の端部のウェブは、前記ガセットプレートに接合され、前記圧縮力伝達部材は、一方の端部であり前記第2梁の前記下フランジに固定される固定部と、他方の端部であり前記第1梁の前記ウェブに当接する支圧部と、を備え、前記支圧部は、前記第1梁の前記ウェブに当接した状態で固定され、前記圧縮力伝達部材は、長手方向に垂直な断面がL字形に形成され、前記固定部を有するアングル部材と、前記支圧部を有する板部材と、を備え、前記アングル部材は、前記アングル部材の長手方向を向いた端面を有しており、前記板部材は、前記端面と対向する板面を有しており、前記端面と前記板面とは、互いに接合されている
【0010】
本発明に係る梁接合構造は、第1梁と、前記第1梁のウェブを挟んで両側に端面を対向させて2つ配置され、前記第1梁の長手方向の中央部に端部が接合される第2梁と、前記第1梁の前記ウェブに接合されたガセットプレートと、前記第2梁の下フランジに固定された圧縮力伝達部材と、を備え、前記第2梁の端部のウェブは、前記ガセットプレートに接合され、前記圧縮力伝達部材は、前記第1梁の前記ウェブを貫通して配置され、長手方向の両端部に2つの固定部を備え、2つの前記固定部のそれぞれは、2つの前記第2梁のそれぞれの前記下フランジに固定され、前記第1梁の前記ウェブは、貫通孔が形成されており、前記圧縮力伝達部材は、一体の部品であり、かつ前記貫通孔を通して配置されている
【0011】
本発明に係る建築物は、上記梁接合構造を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る梁接合構造は、第2梁の下部から受ける圧縮荷重を圧縮力伝達部材により確実に支持できるため強度が安定する。また、圧縮力伝達部材は、ボルトによる接合のため施工も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る建築物100の平面図である。
図2】実施の形態1に係る梁接合構造10の斜視図である。
図3】実施の形態1に係る梁接合構造10の側面図である。
図4】実施の形態1に係る梁接合構造10の圧縮力伝達部材60の斜視図である。
図5】実施の形態1に係る梁接合構造10の変形例である。
図6】実施の形態2に係る梁接合構造210の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。
【0015】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る建築物100の平面図である。図1は、建築物100の架構の一部分の平面図である。建築物100は、複数の柱1を有し、2つの柱1の間に大梁2が配置されている。大梁2は、両端部が柱1に接合されている。実施の形態1において、大梁2は、柱1を節点として格子を形成するように配置されている。格子目90を形成する4辺は、それぞれ大梁2により形成されている。なお、実施の形態1において、格子目90は正方形となっているが、これだけに限定されるものではない。例えば、格子目90は、柱1及び大梁2の配置を適宜変更することにより、長方形、三角形、及び菱形等に変更することができる。また、実施の形態1において、x方向及びy方向は大梁2などの梁の長手方向が延びる方向に平行であり、z方向は柱1が延びる方向に平行である。
【0016】
正方形の格子目90を形成している4本の大梁2の内側の領域には、背骨梁3及び小梁4が配置されている。背骨梁3及び小梁4は、両端部が他の梁の中央部に接合されている。背骨梁3は、格子目90の中央部に配置されている。背骨梁3の両端部は、格子目90の対向する2辺を形成している2つの大梁2のそれぞれの中央に接合されている。
【0017】
また、長手方向を背骨梁3と平行にして配置されている大梁2と、背骨梁3との間には、小梁4が配置されている。実施の形態1においては、大梁2と背骨梁3との間には、3本の小梁4が配置されている。小梁4の一方の端部は、大梁2の長手方向の中央部に接続され、小梁4の他方の端部は、背骨梁3の中央部に接続されている。ここで、中央部は、大梁2及び背骨梁3の端部以外の部分を指す。
【0018】
背骨梁3と小梁4とが接合されている部分を梁接合構造10Aと呼ぶ。また、大梁2と小梁4とが接合されている部分を梁接合構造10Bと呼ぶ。さらに、大梁2と背骨梁3とが接合されている部分を梁接合構造10Cと呼ぶ。梁接合構造10A、10B、及び10Cにおいて、中央部に他の梁の端部が接合されている方の梁を第1梁と称し、端部を第1梁に接合している方の梁を第2梁と称する。つまり、梁接合構造10Aにおいては、第1梁は、背骨梁3であり、第2梁は、小梁4である。梁接合構造10Bにおいては、第1梁は、大梁2であり、第2梁は、小梁4である。梁接合構造10Cにおいては、第1梁は、大梁2であり、第2梁は、背骨梁3である。第1梁と第2梁とは梁接合構造により接合されている。
【0019】
図2は、実施の形態1に係る梁接合構造10の斜視図である。図3は、実施の形態1に係る梁接合構造10の側面図である。図3(a)は、接合された2つの梁のうち一方の梁の長手方向から見たときの側面図であり、図3(b)は、図3(a)に垂直に接合された他方の梁の長手方向から見たときの側面図である。図2においては、H形鋼で形成された梁同士を接合した梁接合構造10が示されている。以下の説明においては、代表として第1梁を大梁2とし、第2梁を小梁4とした梁接合構造10について説明する。ここで、第1梁は、梁接合構造10を構成する梁のうち断面形状が大きい梁である。第2梁は、梁接合構造10を構成する梁のうち断面形状が小さい梁である。第2梁の端部は、第1梁の中央部に接合される。図1に示されている、梁接合構造10A、10B、及び10Cは、それぞれ接合されている梁の断面形状の大きさが異なるが、同じ構造を備える。
【0020】
大梁2、背骨梁3、及び小梁4は、H形鋼50により構成されており、上フランジ51、ウェブ52、及び下フランジ53を有している。上フランジ51及び下フランジ53は、梁の長手方向に断面形状において上下に平行に配置されている部分である。ウェブ52は、上フランジ51の中央部と下フランジ53の中央部とを接続する様に配置されている部分である。
【0021】
図2に示されるように、大梁2は、y方向に長手方向を向けて配置されている。大梁2は、ウェブ52の表面からx方向に延びるガセットプレート70を備える。ガセットプレート70は、ウェブ52の両面に対称的に配置されている。ガセットプレート70は、上フランジ51、ウェブ52、及び下フランジ53に溶接により接合されている。
【0022】
小梁4は、長手方向(x方向)の端部において、ガセットプレート70と接合されている。小梁4のウェブ52は、ガセットプレート70の先端部74に板面方向(y方向)に重ねられ、ボルト80を締結することにより接合される。ボルト80は、通常においては普通ボルトが用いられるが、高力ボルトを用いることもできる。
【0023】
大梁2と小梁4とは、上フランジ51の上面が同一面を形成するように配置され、接合される。図3に示すように、大梁2及び小梁4の上フランジ51の上面には、スタッドボルト85が立設されている。また、大梁2及び小梁4の上フランジ51の上方には、鉄筋86が配置されている。大梁2及び小梁4の上には、コンクリートが打設され床スラブ84が形成される。床スラブ84は、スタッドボルト85により大梁2及び小梁4と接続され、鉄筋86により補強されている。床スラブ84が荷重を受けると、鉄筋86及びスタッドボルト85を介して大梁2及び小梁4に荷重が伝達し曲げモーメントが生ずる。
【0024】
仮に大梁2と小梁4との接合が、ボルト80によるガセットプレート70と小梁4のウェブ52のみにより行われていた場合(以下、比較例と呼ぶ)、小梁4の端部は、ピンにより固定されたものとみなし、自由端であるものとして強度設計が行われる。すると、床スラブ84が荷重を受けた時に、比較例に係る小梁4の中央部は、大きな曲げモーメントが生じる。この場合、比較例に係る小梁4は、この曲げモーメントに対応するように断面形状が設計されるため、断面形状が大きくなる。
【0025】
一方、実施の形態1においては、図2及び図3に示す様に、小梁4の端部には、圧縮力伝達部材60が取り付けられている。小梁4は、圧縮力伝達部材60により、荷重による曲げモーメントを端部で支持できるため、中央部に生ずる曲げモーメントを低下させることができる。曲げモーメントを低下させることができれば、梁の断面形状を必要以上に大きくする必要はなくなる。
【0026】
図4は、実施の形態1に係る梁接合構造10の圧縮力伝達部材60の斜視図である。
圧縮力伝達部材60は、小梁4のウェブ52とガセットプレート70とがボルト80により締結固定されている部分の下方に配置されている。圧縮力伝達部材60は、長手方向を小梁4の長手方向と平行にして配置されている。圧縮力伝達部材60の一方の端部は、固定部63となっている。固定部63は、小梁4の下フランジ53の下面にボルト82により固定されている。また、圧縮力伝達部材60の他方の端部は、支圧部62が形成されている。支圧部62は、板状部材であり、本体部61の端面に溶接により固定されている。支圧部62は、大梁2のウェブ52の表面に当接している。さらに、支圧部62は、ボルト83により大梁2のウェブ52の表面に固定されている。なお、ボルト82及び83は、通常は高力ボルトが用いられるが、これのみに限定されるものではなく普通ボルトを用いることもできる。また、圧縮力伝達部材60は、大梁2のウェブ52を挟んで対称に配置されており、2つの支圧部62が大梁2のウェブ52を挟みこんでボルト83により締結固定されている。
【0027】
圧縮力伝達部材60の支圧部62は、ボルト83によりウェブ52に締結固定されるため、表面がウェブ52に確実に当接する。そのため、圧縮力伝達部材60と大梁2のウェブ52との間に隙間が生じることがなく、圧縮力伝達部材60が曲げモーメントによる圧縮荷重を確実に受けることができる。また、ボルト83により支圧部62と大梁2のウェブ52との接触状態が安定するため、点接触又は線接触を避けることができ、圧縮荷重を受けた際に支圧部62が変形するなどの不具合を抑制できる。なお、第1梁である大梁2のウェブ52には、圧縮力伝達部材60の支圧部62を固定するためのボルト83を通すための貫通孔が設けられる。
【0028】
大梁2のウェブ52を挟んで対称的に配置されている2つの支圧部62は、ボルト83により共締めされるため、精度よく対向させて配置することができる。従って、圧縮力伝達部材60に掛かる圧縮力は、大梁2を介して隣り合って配置された小梁4に確実に伝達することができる。
【0029】
図3及び図4に示す様に、圧縮力伝達部材60の本体部61は、長手方向に垂直な断面がL字形状であるアングル部材である。これにより、本体部61は、y方向及びz方向について断面係数が大きく、座屈しにくい。なお、本体部61の断面形状は、その他の形態をとっても良い。
【0030】
図5は、実施の形態1に係る梁接合構造10の変形例である。変形例に係る梁接合構造110においては、圧縮力伝達部材60が取り付けられている位置が変更されており、下フランジ53の上面側に配置されている。変形例における圧縮力伝達部材60の配置は、大梁2と小梁4との高さ方向の寸法の差が小さい場合に用いられる。大梁2と小梁4との高さ方向の寸法の差が小さい場合、小梁4の下フランジ53と大梁2の下フランジ53との隙間が小さく、断面L字形状の圧縮力伝達部材60を配置できない場合がある。しかし、変形例に係る梁接合構造110によれば、第1梁と第2梁との高さ方向寸法の差が小さくても圧縮力伝達部材60を設置することが可能となる。
【0031】
変形例に係る梁接合構造110は、下フランジ53の上側に圧縮力伝達部材60が配置されている。圧縮力伝達部材60の本体部61は、小梁4の下フランジ53とボルト82により接合されているだけでなく、小梁4のウェブ52ともボルト81により接合されている。ボルト81は、普通ボルト又は高力ボルトを使用することができる。従って、圧縮力伝達部材60は、小梁4により強固に固定されるため、伝達できる圧縮力が向上するという利点がある。
【0032】
(実施の形態1の効果)
上記のように梁接合構造10、110は、第1梁である大梁2と、第1梁の長手方向の中央部に端部が接合される第2梁としての小梁4と、第1梁のウェブ52に接合されたガセットプレート70と、第2梁の下フランジ53に固定された圧縮力伝達部材60と、を備える。第2梁の端部のウェブ52は、ボルト80によりガセットプレート70に接合される。圧縮力伝達部材60は、一方の端部に設けられ第2梁の下フランジ53に固定される固定部63と、他方の端部であり第1梁のウェブ52に当接する支圧部62と、を備える。支圧部62は、ボルト83により第1梁のウェブ52に当接した状態で固定される。
このように構成されることにより、圧縮力伝達部材60が第1梁のウェブ52に確実に当接でき、曲げモーメントを確実に支持することが可能となる。また、圧縮力伝達部材60は、ボルト82及び83により接合されているため、現場において溶接をする必要が無く作業が容易である。
【0033】
また、梁接合構造10、110の圧縮力伝達部材60は、長手方向に垂直な断面がL字形に形成されたアングル部材と、アングル部材の長手方向の端面に板面が接合された板部材と、を備える。板部材は、ボルト83が貫通するボルト孔64が形成されている。
このように構成されていることにより、第1梁である大梁2のウェブ52を挟んで配置される2つの圧縮力伝達部材60の支圧部62を構成する板部材は、ボルト83により大梁2のウェブ52に締結固定されるため、圧縮力を確実に支持できる。
【0034】
また、梁接合構造10、110の第2梁は、第1梁のウェブ52を挟んで両側に端面を対向させて2つ配置されている。そして、一方の第2梁に固定されている圧縮力伝達部材60の支圧部62と他方の第2梁に固定されている圧縮力伝達部材60の支圧部62とは、第1梁のウェブ52を挟んでボルト83により共締めされている。
このように構成されていることにより、2つの圧縮力伝達部材60の支圧部62を構成する板部材は、ボルト83により大梁2のウェブ52に共締めして固定されている。そのため、2つの圧縮力伝達部材60は、大梁2のウェブ52を挟んで対向して配置させることができる。よって、一方の第2梁からの圧縮力を圧縮力伝達部材60から他方の第2梁の圧縮力伝達部材60に伝達させることができ、圧縮力伝達部材60は、第2梁に発生する曲げモーメントを確実に支持することができる。
【0035】
また、第1梁である大梁2は、両端が柱に接続されている。第1梁の高さ方向寸法は、
第2梁である小梁4の高さ方向寸法よりも大きい。
このように、第2梁である小梁4は、高さ方向寸法が大梁2よりも小さく強度が低い。しかし、圧縮力伝達部材60は、小梁4に生じる曲げモーメントを支持することができる。そのため、第2梁である小梁4は、従来と比較して高さ方向寸法を小さく設定することができ、建築物100を構成する梁を小さくすることができ、材料の費用及び建築物を構成する部材の重量を低減させることができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態2に係る梁接合構造210は、実施の形態1に係る梁接合構造10の圧縮力伝達部材60を変更したものである。実施の形態2においては、実施の形態1に係る梁接合構造10との相違点を中心に説明する。
【0037】
図6は、実施の形態2に係る梁接合構造210の側面図である。図6(a)は、大梁2の長手方向に見た側面図であり、図6(b)は、小梁4の長手方向に見た側面図である。実施の形態2に係る梁接合構造210は、圧縮力伝達部材260が板状の部材であり、大梁2のウェブ52を貫通して配置されている。圧縮力伝達部材260の両端部は固定部263となっており、大梁2を挟んで配置された2つの小梁4のそれぞれの下フランジ53にボルト82を用いて固定されている。
【0038】
実施の形態2に係る圧縮力伝達部材260は、対向して配置される小梁4の下フランジ53を直接接続している。そのため、小梁4の端部に生じる曲げモーメントを他方の小梁4に伝達することができる。
【0039】
実施の形態2に係る梁接合構造210は、第1梁である大梁2と、第1梁のウェブ52を挟んで両側に端面を対向させて2つ配置され、第1梁の長手方向の中央部に端部が接合される第2梁である小梁4と、第1梁のウェブ52に接合されたガセットプレート70と、第2梁の下フランジ53に固定された圧縮力伝達部材260と、を備える。そして、第2梁の端部のウェブ52は、ボルト80によりガセットプレート70に接合されている。圧縮力伝達部材260は、第1梁のウェブ52を貫通して配置され、長手方向の両端部に2つの固定部263を備える。2つの固定部263のそれぞれは、2つの第2梁のそれぞれの下フランジ53に固定される。
このように構成されることにより、第1梁を挟んで端部を対向させて配置されている第2梁同士の間で、圧縮力伝達部材260を介して圧縮荷重を伝達させることができる。このため、一体の部品である圧縮力伝達部材260は、第2梁の端部に生じる曲げモーメントにより生じる圧縮力を他方の第2梁に確実に伝達する。これにより、梁接合構造210を構成する第2梁の強度を過剰に大きくする必要が無い。
【0040】
実施の形態2に係る梁接合構造210の第1梁のウェブ52は、貫通孔254が形成されており、圧縮力伝達部材60は、貫通孔254を通して配置されている。
このように構成されることにより、圧縮力伝達部材260は、第1梁と当接せずに2つの対向する第2梁同士の間で圧縮力を伝達する。そのため、梁接合構造210は、第1梁のウェブ52を損傷や変形などを生じさせることなく圧縮力を確実に支持できる。
【0041】
上記に説明した梁接合構造210は、図1の梁接合構造10A、10B、又は10Cに適用することができる。また、上記の説明においては、第1梁を大梁2、第2梁を小梁4として説明した。つまり、図1の梁接合構造10Aの箇所について説明したが、背骨梁3と小梁4とが接合された梁接合構造10B、又は大梁2と背骨梁3とが接合する梁接合構造10Cにも同様な構造を採用することができる。大梁2、背骨梁3、及び小梁4のそれぞれは、断面形状及び長さなどの具体的な寸法が異なるものである。従って、梁接合構造10A、10B、又は10Cにおいて圧縮力伝達部材60、260は、適宜寸法を変更して適用することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施の形態の構成のみに限定されるものではない。また、建築物100においては、各実施の形態に開示された梁接合構造10及び210を適宜組み合わせて採用することもできる。要するに、いわゆる当業者が必要に応じてなす種々なる変更、応用、利用の範囲をも本発明の要旨(技術的範囲)に含むことを念のため申し添える。
【符号の説明】
【0043】
1 柱、2 大梁、3 背骨梁、4 小梁、10 梁接合構造、10A 梁接合構造、10B 梁接合構造、10C 梁接合構造、50 H形鋼、51 上フランジ、52 ウェブ、53 下フランジ、60 圧縮力伝達部材、61 本体部、62 支圧部、63 固定部、64 ボルト孔、70 ガセットプレート、74 先端部、80 ボルト、81 ボルト、82 ボルト、83 ボルト、84 床スラブ、85 スタッドボルト、86 鉄筋、90 格子目、100 建築物、110 梁接合構造、210 梁接合構造、254 貫通孔、260 圧縮力伝達部材、263 固定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6