(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/08 20060101AFI20240312BHJP
E06B 1/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E06B7/08
E06B1/18 E
(21)【出願番号】P 2020136458
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】藤園 武史
(72)【発明者】
【氏名】山森 雄介
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/128658(WO,A1)
【文献】実開昭57-027087(JP,U)
【文献】特開2013-209876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/08
E06B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側仕切体と内側仕切体と
整流体とを備え、外側仕切体は、下部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、
整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間に配置され且つ内側仕切体の通気部に対向するように設けてあり、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部は、左右にずれた範囲に設けてあることを特徴とする建具。
【請求項2】
外側仕切体と内側仕切体と
整流体とを備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、
整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間に配置され且つ内側仕切体の通気部に対向するように設けてあり、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部は、左右にずれた範囲に設けてあることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、障子を閉めたままで換気ができるようにしたいという要望があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、換気が行える建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、外側仕切体は、下部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間に配置され且つ内側仕切体の通気部に対向するように設けてあり、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部は、左右にずれた範囲に設けてあることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、外側仕切体は、上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は、上部に室内と連通する通気部を有し、整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間に配置され且つ内側仕切体の通気部に対向するように設けてあり、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部は、左右にずれた範囲に設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、外側仕切体は下部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は上部に室内と連通する通気部を有するので、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体と内側仕切体の間に整流体が内側仕切体の通気部に対向するように設けてあること、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部は、左右にずれた範囲に設けてあることにより、遮音性能が良い。
【0007】
請求項2記載の発明による建具は、外側仕切体と内側仕切体と整流体とを備え、外側仕切体は上部に室外と連通する通気部を有し、内側仕切体は上部に室内と連通する通気部を有するので、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体と内側仕切体の間に整流体が内側仕切体の通気部に対向するように設けてあること、外側仕切体の通気部と内側仕切体の通気部は、左右にずれた範囲に設けてあることにより、遮音性能が良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の建具の第1実施形態を示す縦断面図である。
【
図3】(a)は第1実施形態の建具の室外側正面図であり、(b)は同建具の室内側正面図である。
【
図4】(a)は冬期における第1実施形態の建具の働きを示す説明図であり、(b)は夏期における同建具の働きを示す説明図である。
【
図5】第1実施形態の建具及び比較例の遮音性能試験の結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の建具の第2実施形態を示す縦断面図である。
【
図8】第2実施形態の建具に整流体を付けた例を示す縦断面図である。
【
図9】本発明の建具の第3実施形態を示す縦断面図である。
【
図10】第3実施形態の建具に整流体を付けた例を示す縦断面図である。
【
図11】(a)は冬期における第3実施形態の建具(整流体付き)の働きを示す説明図であり、(b)は夏期における同建具の働きを示す説明図である。
【
図12】外窓及び内窓の通気部の配置の他の例を示す横断面図である。
【
図13】本発明の建具の第4実施形態を示す縦断面図である。
【
図14】本発明の建具の第5実施形態を示す縦断面図である。
【
図15】同建具の外窓の上部を拡大して示す縦断面図である。
【
図16】
図14のA矢視図であって、外窓の通気部の通気孔の配置の例を示す。
【
図17】第5実施形態の建具の遮音性能試験の結果を示すグラフである。
【
図18】本発明の第6実施形態を示す図であって、(a)は外窓の通気部の通気孔の配置を示し(
図14のA矢視図)、(b)は内窓の通気部の通気孔の配置を示す(
図14のB矢視図)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明の建具の第1実施形態を示している。本建具は、建物の窓開口部の室外側に設置した外窓(外側仕切体)1と、窓開口部の室内側に設置した内窓(内側仕切体)2とを備える二重窓となっている。
【0010】
外窓1は、
図1,2に示すように、建物の窓開口部に固定される枠6と、枠6内に引違い状に開閉自在に収めた外障子7a及び内障子7bとを備えており、閉鎖した状態で外障子7aは室内側から見て左側に、内障子7bは右側に位置している。
枠6は、アルミ形材よりなる上枠8と下枠9と左右の縦枠10,10とを枠組みして構成されている。外障子7a及び内障子7bは、アルミ形材よりなる上框11と下框12と戸先框13と召合せ框14とを框組みし、その内側にガラス15を嵌め込んで構成されている。
外障子7a及び内障子7bの下框12の内周側には、
図1に示すように、換気框16が設けてある。換気框16は、室外側壁と室内側壁とに通気孔17,18を設け、室外から外窓・内窓間の中間層19に連通する通気部4を形成してある。通気孔17,18は、
図3(a)に示すように、縦長のスリット状で、左右方向に間隔をあけて框の長手方向の全長に亘って多数設けてある。室外側壁の通気孔17は、
図1に示すように、斜め下方に面した傾斜面に形成してあり、室内側壁の通気孔18より低い位置に設けてある。これにより、通気部4から雨水が入りにくくしている。通気部4内には、通気部4を開閉するシャッター板20が設けてある。
【0011】
内窓2は、
図1,2に示すように、四周の額縁21の内周側面に取付けた上枠22と下枠23及び左右の縦枠24,24と、上下枠間に引違い状に開閉自在に収めた外障子25a及び内障子25bを備えており、閉鎖した状態で外障子25aは室内側から見て左側に、内障子25bは右側に位置している。枠22,23,24は、樹脂製である。外障子25a及び内障子25bは、ガラス(複層ガラス)26と、ガラスの周囲を囲む樹脂製の框とを有している。外窓1の枠6と内窓2の枠22,23,24の間には木製の額縁21があるため、外窓1と内窓2とは熱的に分離されている。
上枠22の上部には、換気ブレス27を備えている。換気ブレス27は、室外側と室内側の見付面に多数の通気孔28を設け、中間層19から室内に連通する通気部5が設けてある。通気孔28は、
図3(b)に示すように、縦長のスリット状で、左右方向に間隔をあけて上枠22の長手方向の全長に亘って多数設けてある。通気部5の室内側には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター29が設けてある。
【0012】
中間層19には、
図1に示すように、整流体3が上側の額縁21より垂下して設けてある。整流体3は、透明な樹脂板で形成してあり、換気ブレス27の室外側面にスペーサー30を介してノブボルト31で着脱自在に取付けてあり、通気部5の室外側に隙間をあけて対向している。
【0013】
本建具は、外窓1の下部に室外と連通して設けた通気部4と、内窓2の上部に室内と連通して設けた通気部5を通じて、外窓1と内窓2の障子7a,7b,25a,25bを閉めたままで換気を行うことができる。本建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5の位置が上下に離れていることで、遮音性能が良い。
【0014】
第1実施形態の建具について、遮音性能を測定した。比較のために、外窓1の通気部4を内外障子7a,7bの上部に設けた(換気框16を上框11の内周側に配置)比較例についても遮音性能を測定した。遮音性能の測定は、JIS A1416「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準拠して行った。
図5は、遮音性能試験の結果を示している。
同図より明らかなように、比較例では400~1000Hz付近に落ち込みがあるが、第1実施形態ではそのような落ち込みがなくなり、遮音性能が向上していることが分かる。
【0015】
また、第1実施形態の建具は、中間層19を空気が流れることで、断熱性能を向上する働きがある。
冬期には、室内に設けた換気扇等により室内を負圧に調整し、
図4(a)に示すように、建具を室外から室内に向けて空気が流れるようにする。外窓1の通気部4より流入した冷たい外気は、内窓2のガラス26から室内の熱が伝わることで暖められ、内窓2のガラス26の室外側面に沿って上昇し、この間にガラス26から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収する。また、窓に日射を受ける場合は、このように中間層19をガラス26の外側面に沿うように流れる間に、日射熱を取得することができる。その後、暖められた外気の大部分が内窓2上部に設けた通気部5より室内に流入し、これにより回収した熱を室内に戻すことができる。内窓2の外側面に沿って上昇する外気の一部は、室外側に逆流して回収した熱の一部をロスするが、内窓2の通気部5の室外側に整流体3が設けてあることで、室外側に逆流する空気の量を少なくできる。
【0016】
このように、中間層19内を内窓2のガラス26の外側面に沿うように下から上に外気が流れることで、日射熱を取得できるとともに、内窓2のガラス26から逃げる熱を空気の流れによって回収し、室内に戻すことで、室内から室外への熱の損失が軽減され、これにより空気が流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、断熱性が得られると共に、外気を暖めて室内に導入するため、暖房負荷を抑えることができる。また、外気を暖めて室内に採り入れるので、室内に居る人が冷たい風を感じることがない。
【0017】
夏期には、室内を換気扇等により正圧に調整し、
図4(b)に示すように、室内から室外に向けて空気が流れるようにする。内窓2の通気部5から中間層19に流出した内気は、室外より温度が低いために内窓2のガラス26の室外側面に沿って下降し、この間に外窓1のガラス15を通じて室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収する。その後、外窓1の下部に設けた通気部4より室外に流出し、回収した熱を室外に捨てる。
このように室外から室内に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室外に捨てることで、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられ、優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれる。
【0018】
図6,7は、本発明の建具の第2実施形態(請求項1に係る発明の実施形態)を示している。本実施形態の建具も、外窓1と内窓2を備える二重窓となっており、外窓1の枠6と内窓2の枠が一体に形成してある。
外窓1は、
図6に示すように、枠6内で引き違い状に開閉する外障子7aと内障子7bを有し、外障子7aの下框12の内周側にだけ換気框16を設け、外障子7aの下部にだけ室外と連通する通気部4を設けてある。
内窓2は、
図6に示すように、枠6内で引き違い状に開閉する外障子25aと内障子25bを有し、内障子25bの上框32の内周側にだけ換気框16を設け、内障子25bの上部にだけ室内と連通する通気部5を設けてある。したがって、第2実施形態の建具は、
図7に示すように、外窓1の通気部4が設けてある範囲33と、内窓2の通気部5が設けてある範囲34とが、左右にずれた位置にある。
【0019】
第2実施形態の建具は、第1実施形態と同様に、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5を通じて換気が行え、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5が上下に離れている上に、左右にずれた位置に設けてあることで、音がより一層伝わりにくくなり、遮音性能がさらに向上する。
【0020】
図8は、第2実施形態の建具に整流体3を取付けた例を示している。整流体3は、上枠8の下面に取付けたアングル35にノブボルト31で着脱自在に取付けてあり、内窓2の通気部5の室外側に対向している。
このように整流体3を取付けることで、先に説明した第1実施形態と同様に、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで断熱性能が向上し、冷暖房負荷を抑えることができる。
【0021】
図9は、本発明の建具の第3実施形態(請求項2に係る発明の実施形態)を示している。本実施形態の建具も、外窓1と内窓2を備える二重窓となっており、外窓1の枠6と内窓2の枠が一体に形成してある。
外窓1は、
図9に示すように、枠6内で引き違い状に開閉する外障子7aと内障子7bを有し、外障子7aの上框11の内周側にだけ換気框16を設け、外障子7aの上部にだけ室外と連通する通気部4を設けてある。
内窓2は、
図9に示すように、枠6内で引き違い状に開閉する外障子25aと内障子25bを有し、内障子25bの上框32の内周側にだけ換気框16を設け、内障子25bの上部にだけ室内と連通する通気部5を設けてある。したがって、第3実施形態の建具は、第2実施形態と同様に、外窓1の通気部4が設けてある範囲33と、内窓2の通気部5が設けてある範囲34とが、左右にずれた位置にある(
図7参照)。
【0022】
第3実施形態の建具は、第1・第2実施形態と同様に、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5を通じて換気が行え、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5が左右にずれた範囲に設けてあるため、遮音性能が良い。
【0023】
図10は、第3実施形態の建具に整流体3を取付けた例を示している。整流体3は、上枠8の下面に取付けたアングル35にノブボルト31で着脱自在に取付けてあり、外窓1の通気部4の室内側と内窓2の通気部5の室外側に対向している。
本実施形態の建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5が左右にずれた範囲に設けてある上、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5とに対向して整流体3が設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられるため、遮音性能が向上する。
【0024】
また本実施形態の建具は、中間層19を空気が外窓1のガラス15の内側面と内窓2のガラス26の外側面に沿うように迂回して流れることで、換気を行いながら熱の出入りを少なくして断熱性能を向上する働きがある。
冬期には換気扇等により室内を負圧に調整し、
図11(a)に示すように、本建具を空気が室外から室内に向けて流れるようにする。外窓1の通気部4から流入した冷たい外気は、整流体3に当たることで下向きに流れの向きを変え、その後、温度が低く下降流の勢いが強い外窓1のガラス15の内側面に沿う流れに引き寄せられながら下降する。その後、冷たい外気は中間層19の下まで流れてから折り返し、内窓2のガラス26から室内の熱が伝わることで暖められ、ガラス26の室外側面に沿って上昇し、この間にガラス26から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収する。また、窓に日射を受ける場合は、このように中間層19を空気が外窓1の内側面と内窓2の外側面に沿うように流れる間に、日射熱を取得することができる。その後、暖められた外気は内窓2上部の通気部5を通って室内に流入する。そうして暖められた外気を室内に取り入れることで、回収した熱を室内に戻すことができる。
【0025】
このように、中間層19を外窓1と内窓2に沿うように迂回して空気が流れることで、日射熱を取得できると共に、室内から室外に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室内に戻すことで、室内から室外への熱の損失がほとんどなくなり、これにより空気が流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、非常に高い断熱性が得られると共に、外気を暖めて室内に採り込めるので、暖房負荷を抑えることができる。中間層19内の空気の流れが内外温度差によって生じる自然対流の流れの向きと一致し、
図4(a)の場合のように空気が室外側に逆流することがないから、断熱性能をより一層向上させられる。
【0026】
夏期には、換気扇等により室内を正圧に調整し、
図11(b)に示すように、冬期とは逆に室内から室外に空気が流れるようにする。内窓2の通気部5から中間層19に流れ出た内気は、整流体3に当たって下向きに流れを変え、内気の温度は室外よりも低いので、内窓2のガラス26の室外側面に沿って下向きに流れる。その後、内気は中間層19の下部で折り返し、外窓1のガラス15等の熱が伝わることで外窓1のガラス15の室内側面に沿って上昇し、この間にガラス15を通じて室外から室内に入ってくる熱と日射熱を空気の流れによって回収する。その後、外窓1の通気部4を通って空気が室外に放出される。そして、空気が室外に放出されることで、ガラス15等から回収した熱と日射熱を室外に捨てる。
【0027】
このように日射熱及び室外から室内に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室外に捨てることで、日射熱の取得を抑制でき、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられるので、優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれ、冷房負荷を抑えることができる。中間層19内の空気の流れが内外温度差によって生じる自然対流の流れの向きと一致し、
図4(b)の場合のように空気が室内側に逆流することがないから、断熱性能をより一層向上させられる。
【0028】
外窓1の通気部4が設けられる範囲33と内窓2の通気部5が設けられる範囲を左右にずらして配置する他の例としては、
図12(a)に示すように、外窓1の通気部4が設けられる範囲33を左右方向の中間部(中央部)に配置し、内窓2の通気部5が設けられる範囲34を左右の両端部に配置してもよい。また、
図12(b)に示すように、外窓1の通気部4が設けられる範囲33を左右の両端部に配置し、内窓2の通気部5が設けられる範囲34を左右方向の中間部(中央部)に配置してもよい。
【0029】
図13は、本発明の建具の第4実施形態を示している。外窓1は、枠6内に外障子7aと内障子7bを引き違い状に開閉自在に設けてあり、外障子7aの上框11の内周側にだけ換気框16を配置し、外障子7aの上部にだけ室外と連通する通気部4を設けてある。
内窓2は、第1実施形態と同様に上枠22上に換気ブレス27を設け、換気ブレス27に室内と連通する通気部5が設けてある。
外窓1の通気部4は外障子7aのみに設けてあり、内窓2の通気部5は上枠22の全長にわたって設けてあるため、外窓1の通気部4の面積(通気孔18の合計面積)は内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)のほぼ半分になっている。
中間層19には、上側の額縁21より垂下して整流体3が設けてあり、整流体3は外窓1の通気部4と内窓2の通気部5とに対向している。
【0030】
第4実施形態の建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5を通じて換気が行え、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5とに対向して整流体3が設けてあることで、遮音性能が良い。さらに、外窓1の通気部4の面積を内窓2の通気部5の面積に対して小さくしたことで、室外の音が中間層19に伝わりにくくなるため、遮音性能が向上する。
また、中間層19を空気が外窓1の内側面と内窓2の外側面に沿うように迂回して流れることで、冬期には室内から室外に逃げる熱を回収し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を回収して室外に捨てることで、換気を行いながら熱の出入りを少なくし、冷暖房負荷を抑えることができる。
【0031】
図14~16は、本発明の建具の第5実施形態を示している。外窓1は、上枠8上に通気枠36が設けてあり、通気枠36に室外から中間層19に連通する通気部4が設けてある。内窓2は、第1実施形態と同様に、上枠22上に換気ブレス27を設け、換気ブレス27に室内と連通する通気部5が設けてある。
【0032】
通気枠36は、横枠のみからなり、
図15に示すように、通気枠本体37と、通気枠本体37の室外側に取付けた室外側カバー材38と、通気枠本体37の室内側に取付けた室内側カバー材39とを有する。通気枠36は、室外側に室外側カバー材38により室外側空間40が形成され、室内外方向の中間部に通気枠本体37により中間空間41が形成され、室内側に室内側カバー材39により室内側空間42が形成されている。通気枠本体37と室外側カバー材38と室内側カバー材39は、それぞれアルミ形材で形成した長尺材である。
【0033】
室外側カバー材38は、
図15に示すように、見付壁43と上壁44と下壁45とを有し、上壁44の先端部に設けた鉤状に曲がった係止部46を通気枠本体37の室外側上部に設けた溝に係止し、下壁45を上枠8の室内側面に取付けたL形断面の補助材47の横壁の室外側端部に重ね、下方からねじ(図示省略)で固定して取付けてある。補助材47の横壁には、室外に面した室外側通気孔49が下向きに開口して設けてある。室外側通気孔49の室外側には、垂下片50が室外側通気孔49よりも垂下して設けてある。室外側通気孔49には、虫の侵入を防ぐ防虫網51が取付けてある。このように室外側通気孔49を下向きに開口して設け、その室外側に垂下片50を設けることで、室外側通気孔49から雨水が浸入するのを防いでいる。
【0034】
通気枠本体37は、
図15に示すように、上壁52と下壁53と室外側壁54と室内側壁55とで中間空間41が形成されている。室外側壁54には、通気孔56が大きく形成してあり、通気孔56の室外側に防虫網51を取付けている。通気孔56の下方に隣接する位置には、室外側に向けて突出する水返し片57が設けてあり、該水返し片57により雨水が通気孔56に浸入するのを防いでいる。室内側壁55には、通気孔58が室外側の通気孔56に比べて小さく形成してある。
通気枠36は、上記のように通気枠本体37の室外側壁54に通気孔56を大きく、室内側壁55に通気孔58を小さく形成してあることで、室外側空間40と中間空間41とが外気と等圧になっている。これにより、雨水が通気部4に吸い込まれないようにしている。室内側空間42は、室内に近い気圧になっている。
【0035】
室内側カバー材39は、
図15に示すように、略L形断面の二部材を組み合わせて矩形断面の中空状に形成され、室外側壁に通気孔59が通気枠本体37の通気孔58に連通して形成してある。室内側カバー材39の底壁には、室内(中間層)に面した通気孔60が下向きに開口して設けてある。通気孔60には、埃や花粉等の侵入を防ぐフィルター61が取付けてある。
【0036】
図16は、通気孔60の配置の例を示している。
図16(a)に示す例は、通気孔60を通気枠36の全長に亘って多数設けている。外窓1の通気部4の面積(通気孔60の合計面積)は、内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)と略同じになっている。
図16(b)に示す例は、通気孔60の数を少なくし、通気枠36の全長に等間隔で分散して配置している。外窓1の通気部4の面積(通気孔60の合計面積)は、内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)の約1/10としてある。
図16(c)に示す例は、通気孔60を通気枠36の左右両端部に寄せて配置してある。外窓1の通気部4の面積(通気孔60の合計面積)は、内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)の約1/10としてある。
図16(d)に示す例は、通気孔60を通気枠36の左右方向の中間部(中央部)に寄せて配置してある。外窓1の通気部4の面積(通気孔60の合計面積)は、内窓2の通気部5の面積(通気孔28の合計面積)の約1/10としてある。
【0037】
通気枠36の室内側面には、
図15に示すように、整流体3が室内側からのノブボルト31で着脱自在に取付けてある。整流体3は、下部が室外側に向けて少し曲がっており、これにより通気孔60から流出する空気を室外側に曲げて外窓1の障子7a,7bのガラス面に沿わせられる。整流体3は、
図14に示すように、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5に対向している。
【0038】
第5実施形態の建具で、外窓1の通気部4に通気孔60を
図16(a)~(d)の4通りのパターンで設けたものについて、遮音性能試験を行った。試験結果を
図17に示す。
同図に示すとおり、通気孔60を全長に多数設けた
図16(a)のものは、400~1000Hz付近で落ち込みが見られるが、通気孔60の数を少なくした
図16(b),(c),(d)では、そのような落ち込みが無くなり、遮音性能が向上している。通気孔60の数を少なくしたもののうちでは、全長に分散して配置した
図16(b)よりも、端部寄り又は中央寄りにかためて配置した
図16(c),(d)のものの方が、遮音性能が良かった。
【0039】
第5実施形態の建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5を通じて換気が行え、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5とに対向して整流体3が設けてあることで、遮音性能が良い。さらに、外窓1の通気部4の面積を内窓2の通気部5の面積に対して小さくしたことで、室外の音が中間層19に伝わりにくくなりため、遮音性能が向上する。特に、通気孔60を左右方向の中間部又は端部にかためて配置することで、遮音性能がさらに向上する。
また、中間層19を空気が外窓1の内側面と内窓2の外側面に沿うように迂回して流れることで、冬期には室内から室外に逃げる熱を回収し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を回収して室外に捨てることで、換気を行いながら熱の出入りを少なくし、冷暖房負荷を抑えることができる。
【0040】
第5実施形態の建具は、内窓2の通気部5の面積を外窓1の通気部4の面積に対して小さくした場合でも、外窓1の通気部4の面積を内窓2の通気部5の面積に対して小さくした場合と同様に、遮音性能を向上する効果がある。要するに、外窓1の通気部4の面積と内窓2の通気部5の面積を違わせてあればよい。この点は、第5実施形態以外の実施形態(第1~4,6実施形態)についても同様である。なお、外窓1の通気部4の面積を内窓2の通気部5の面積に対して小さくした方が、雨水の浸入を防止する上でより好ましい。
【0041】
図18は本発明の建具の第6実施形態(請求項2に係る発明の実施形態)を示している。第6実施形態の建具は、建具の構造自体は
図14に示す第5実施形態と同じであり、外窓1の通気部4の通気孔60の配置と内窓2の通気部5の通気孔28の配置が異なっている。外窓1の通気部4の通気孔60は、
図18(a)に示すように、左半分の領域に設けてある。内窓2の通気部5の通気孔28は、
図18(b)に示すように、右半分の領域に設けてある。すなわち、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5は、左右にずれた範囲に設けてある。
【0042】
第6実施形態の建具は、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5を通じて換気が行え、外窓1の通気部4と内窓2の通気部5が左右にずれた範囲に設けてあるため、遮音性能が良い。
【0043】
以上に述べたように第1実施形態の建具は、外側仕切体(外窓)1と内側仕切体(内窓)2とを備え、外側仕切体1の下部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2の上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の位置が上下に離れているため、遮音性能が良い。
また、換気の際に、外側仕切体1の通気部4から入った外気が内側仕切体2の外側面に沿って上昇してから内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って下降してから外側仕切体1の通気部4から室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
中間層19に整流体3を設けたことで、空気の逆流を抑制することができ、上記の作用がより効率よく発揮される。
【0044】
第2実施形態の建具(請求項1に係る発明の実施形態)は、外側仕切体(外窓)1と内側仕切体(内窓)2とを備え、外側仕切体1は下部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5は、上下に離れている上、左右にずれた範囲に設けてあるため、遮音性能が良い。
また、換気の際に、外側仕切体1の通気部4から入った外気が内側仕切体2の外側面に沿って上昇してから内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って下降してから外側仕切体1の通気部4から室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
中間層19に整流体3を設けた場合には、空気の逆流を抑制することができ、上記の作用がより効率よく発揮される。
外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5を、左右方向の中間に寄せて設けるか、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けることで、遮音性能が向上する。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0045】
第3,6実施形態の建具(請求項2に係る発明の実施形態)は、外側仕切体(外窓)1と内側仕切体(内窓)2とを備え、外側仕切体1は上部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5は、左右にずれた範囲に設けてあるため、遮音性能が良い。
中間層19に整流体3を設けた場合には、外側仕切体1の通気部4から入った外気が外側仕切体1の内側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に流れ、内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に流れ、外側仕切体1の通気部4より室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。また、整流体3を設けることで、遮音性能が向上する効果もある。
外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5を、左右方向の中間に寄せて設けるか、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けることで、遮音性能が向上する。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0046】
第4,5,6実施形態の建具は、外側仕切体(外窓)1と内側仕切体(内窓)2と整流体3を備え、外側仕切体1は上部に室外と連通する通気部4を有し、内側仕切体2は上部に室内と連通する通気部5を有するので、外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5を通じて換気を行うことができ、しかも外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5に対向して整流体3が設けてあることで、整流体3で音の通過が妨げられるので、遮音性能が良い。
整流体3が外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5に対向して設けてあることで、外側仕切体1の通気部4から入った外気が外側仕切体1の内側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、内側仕切体2の外側面に沿って他方向に流れ、内側仕切体2の通気部5より室内に流入するか、内側仕切体2の通気部5から出た内気が内側仕切体2の外側面に沿って一方向に流れ、中間層19の端部付近で折り返し、外側仕切体1の内側面に沿って他方向に流れ、外側仕切体1の通気部4より室外に流出することで、冬期には室内から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収して室内に戻し、夏期には室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収して室外に捨てることで、換気をしながら熱の出入りを少なくでき、冷暖房負荷を抑えることができる。
外側仕切体1の通気部4又は内側仕切体2の通気部5を、左右方向の中間に寄せて設けるか、左右方向の一方又は両方の端部に寄せて設けることで、遮音性能が向上する。
外側仕切体1の通気部4と内側仕切体2の通気部5の面積を異ならせることで、遮音性能が向上する。
【0047】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。外窓及び内窓の通気部の通気孔の形状、配置は、適宜変更することができる。外窓と内窓の窓種は任意であり、引き違い窓に限らず、嵌め殺し窓、すべり出し窓等であってもよい。
外側仕切体は、室外空間と中間層とに仕切るものであればよく、ガラス入りの外窓の他、シャッター、雨戸、ロールスクリーン等であってもよい。内側仕切体は、中間層と室内空間とに仕切るものであればよく、ガラス入りの内窓の他、カーテン、ロールスクリーン、障子等であってもよい。
整流体は、外側仕切体と内側仕切体の間で下降する空気と上昇する空気とがぶつかり合って空気の流れが阻害されるのを防ぎ、外側仕切体の内側面と内側仕切体の外側面に沿うように迂回する空気の流れを形成できるものであればよく、板状のものの他、ブラインド、ロールスクリーン、ハニカムスクリーン等であってもよい。
本発明の建具は、空気が流れる向きが室外から室内だけのもの、室内から室外だけのもの、室外から室内と室内から室外の両方向に空気が流れるものの何れであってもよい。
本発明は、新築の建物に外窓と内窓を新たに設置する場合の他、既存の単体のサッシ(外窓)が取付けられた窓に、後から内窓を増設して二重窓とする場合にも適用でき、既存の外窓を利用することで、コストが抑えられる。
【符号の説明】
【0048】
1 外窓(外側仕切体)
2 内窓(内側仕切体)
3 整流体
4 外窓の通気部
5 内窓の通気部