(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240312BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20240312BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20240312BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K1/32 B
F25B41/35
(21)【出願番号】P 2020137902
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2022-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】土井 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智之
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-329698(JP,A)
【文献】特開2003-148644(JP,A)
【文献】特開2016-151284(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109538772(CN,A)
【文献】特開2019-190496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 1/32
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ポート
と弁室を有する弁本体と、前記弁ポートを開閉する弁体と、駆動軸を回転駆動する駆動部と、前記駆動軸の回転に伴い該駆動軸を軸線方向に進退移動させるねじ送り機構と、を備えた電動弁であって、
前記弁体は、
前記駆動軸の進退移動に伴い前記弁ポートに対して近接または離間する弁部と、
前記駆動軸の先端部と前記弁部の基端部とに亘って設けられる筒状の弁ホルダと、
前記弁ホルダに内蔵されて前記弁部を弁閉方向に付勢するばね部材と、を有して構成され、
前記ねじ送り機構は、
前記弁本体に固定される支持部材と、
前記支持部材に設けられて前記駆動軸と螺合される第1ねじ部と、
前記駆動軸に設けられて前記第1ねじ部と螺合される第2ねじ部と、を有して構成され、
前記弁本体には、前記支持部材よりも前記弁ポート側に位置して前記弁ホルダを軸線方向に沿って案内する
案内面を有した案内部が設けられ、
前記駆動軸の先端部と前記弁ホルダとが軸線方向に進退可能に係合するとともに、前記駆動軸の先端部と前記弁ホルダとの間には径方向の隙間が設けられ
、
前記駆動部は、内部にロータ室を形成するケースを有し、前記支持部材には、その外周側の固定部を軸線方向に貫通する均圧孔が形成され、前記ロータ室は、前記均圧孔によって前記支持部材と前記案内部との間の中間空間に連通され、
前記案内部における前記案内面よりも径方向外側には、前記弁室と前記中間空間とを連通する連通路が設けられ、
前記支持部材の下端部と前記案内部の上端部との間には、隙間が形成され、前記隙間の幅寸法は、前記均圧孔の径寸法よりも小さく形成され、
前記連通路、前記中間空間および前記均圧孔で構成されるルートによって前記弁室と前記ロータ室との均圧が図られていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記案内部は、前記弁本体に固定される筒状の案内部材で構成されるか、または、前記弁本体と一体に形成された案内面で構成されることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記支持部材は、前記第1ねじ部よりも前記弁ポート側に設けられて前記弁ホルダの外周面を覆う筒状部を有し、
前記筒状部の内周面と前記弁ホルダの外周面との隙間寸法S1よりも、前記案内部の内周面と前記弁ホルダの外周面との隙間寸法S2が小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記案内部における前記弁ホルダを軸線方向に沿って案内する部分の長さ寸法L1は、前記弁ホルダの外径寸法L2よりも大きいことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁体が全開位置にあるときに前記弁ホルダの先端部が前記案内部の先端部よりも前記弁ポート側に突出して設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項6】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~5のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気調和機の冷凍サイクルに設けられる電動弁として、内部に弁室を有して一次および二次の継手が接続される弁ハウジング(弁本体)と、コイルからの電磁力によって回転駆動されるマグネットロータおよびロータ軸(駆動軸)を有した電動モータ(駆動部)と、電動モータにより回転駆動されたロータ軸を軸線方向に進退移動させるねじ送り機構と、ロータ軸の進退移動により軸線方向に進退駆動される弁体と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電動弁では、弁本体にガイド部材(支持部材)が固定され、このガイド部材の雌ねじ部にロータ軸の雄ねじ部が螺合されるとともに、ガイド部材のガイド孔に弁体の弁ホルダがガイドされるようになっており、電動モータによって軸線方向に進退駆動される弁体のニードル弁(弁部)が弁室の弁ポートを開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の電動弁では、ガイド部材に設けられたガイド孔に弁ホルダがガイドされる構成となっており、このガイド部材が弁本体の弁ポートから離れた位置に設けられているため、軸線に対する弁体の案内精度が高めにくいという問題がある。また、ガイド部材は樹脂成形品で構成され、金属製の固定部材を介して弁本体に溶接固定されることもあるが、金属製の固定部材を介して弁本体に溶接固定する場合、成形精度や固定時の位置精度が低いと、軸線に対してガイド孔が芯ずれしたり傾斜したりする可能性があり、弁体の案内精度が低下してしまう。このようにガイド孔の芯ずれや傾斜が生じると、弁部が弁ポートの中心からずれたり軸線に対して傾いたりした状態で着座する可能性があり、弁閉しているにも関わらず冷媒が漏れる弁漏れが発生する可能性があるとともに、弁部と弁座部との当接部分に偏った応力集中が起き、局所的な変形や摩耗が進展して耐久性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、弁ポートに対する弁部の偏心や傾きを抑制することでシール性や耐久性を高めることができる電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁ポートと弁室を有する弁本体と、前記弁ポートを開閉する弁体と、駆動軸を回転駆動する駆動部と、前記駆動軸の回転に伴い該駆動軸を軸線方向に進退移動させるねじ送り機構と、を備えた電動弁であって、前記弁体は、前記駆動軸の進退移動に伴い前記弁ポートに対して近接または離間する弁部と、前記駆動軸の先端部と前記弁部の基端部とに亘って設けられる筒状の弁ホルダと、前記弁ホルダに内蔵されて前記弁部を弁閉方向に付勢するばね部材と、を有して構成され、前記ねじ送り機構は、前記弁本体に固定される支持部材と、前記支持部材に設けられて前記駆動軸と螺合される第1ねじ部と、前記駆動軸に設けられて前記第1ねじ部と螺合される第2ねじ部と、を有して構成され、前記弁本体には、前記支持部材よりも前記弁ポート側に位置して前記弁ホルダを軸線方向に沿って案内する案内面を有した案内部が設けられ、前記駆動軸の先端部と前記弁ホルダとが軸線方向に進退可能に係合するとともに、前記駆動軸の先端部と前記弁ホルダとの間には径方向の隙間が設けられ、前記駆動部は、内部にロータ室を形成するケースを有し、前記支持部材には、その外周側の固定部を軸線方向に貫通する均圧孔が形成され、前記ロータ室は、前記均圧孔によって前記支持部材と前記案内部との間の中間空間に連通され、前記案内部における前記案内面よりも径方向外側には、前記弁室と前記中間空間とを連通する連通路が設けられ、前記支持部材の下端部と前記案内部の上端部との間には、隙間が形成され、前記隙間の幅寸法は、前記均圧孔の径寸法よりも小さく形成され、前記連通路、前記中間空間および前記均圧孔で構成されるルートによって前記弁室と前記ロータ室との均圧が図られていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、弁体は、弁部と弁ホルダとばね部材とを有して構成され、ねじ送り機構は、支持部材の第1ねじ部と駆動軸の第2ねじ部とによって構成され、支持部材よりも弁ポート側に位置する案内部によって弁ホルダが軸線方向に案内されるので、弁ホルダの軸線に対する案内精度を高めることができ、弁ポートに対する弁部の偏心や傾きを抑制することができる。したがって、弁ポートに対して偏心や傾きなく弁部を着座させることで、弁閉時における弁漏れの発生を抑制するとともに、弁部と弁ポートとの当接部分の局所的な変形や摩耗を抑制して耐久性を向上させることができる。
【0008】
この際、前記案内部は、前記弁本体に固定される筒状の案内部材で構成されるか、または、前記弁本体と一体に形成された案内面で構成されることが好ましい。この構成によれば、弁本体とは別体の案内部材で案内部が構成される場合には、案内部材として、弁本体とは材質や成形方法が異なる部材を選択することができる。一方、弁本体と一体に形成された案内面で案内部が構成される場合には、部品点数を削減できるとともに、弁ポートと案内面との位置精度を高めることで、弁ホルダの案内精度を高めることができる。なお、案内面は、弁室を挟んで弁ポートの反対側(駆動部側)に設けられていてもよいし、弁ポートを構成する弁座部から軸線方向に延びる筒状の部位の内面で構成されていてもよい。
【0009】
また、前記支持部材は、前記第1ねじ部よりも前記弁ポート側に設けられて前記弁ホルダの外周面を覆う筒状部を有し、前記筒状部の内周面と前記弁ホルダの外周面との隙間寸法S1よりも、前記案内部の内周面と前記弁ホルダの外周面との隙間寸法S2が小さいことが好ましい。この構成によれば、支持部材の筒状部の内周面と弁ホルダの外周面との隙間寸法S1よりも、案内部の内周面と弁ホルダの外周面との隙間寸法S2が小さい(S1>S2)ことで、支持部材の筒状部が軸線に対して芯ずれしたり傾斜したりした場合でも、筒状部が弁ホルダに干渉しにくくなり、弁体の案内精度を損ねないようにできる。
【0010】
また、前記案内部における前記弁ホルダを軸線方向に沿って案内する部分の長さ寸法L1は、前記弁ホルダの外径寸法L2よりも大きいことが好ましい。この構成によれば、案内部により弁ホルダを案内する部分の長さ寸法L1が弁ホルダの外径寸法L2よりも大きい(L1>L2)ことで、弁ホルダの案内長さを確保することができ、弁ホルダの傾きを抑制することができる。
【0011】
また、前記弁体が全開位置にあるときに前記弁ホルダの先端部が前記案内部の先端部よりも前記弁ポート側に突出して設けられることが好ましい。この構成によれば、全開位置にある弁体の弁ホルダが案内部の先端部よりも突出していることで、弁室内の流体の流れを安定させることができる。すなわち、全開時に弁ホルダが案内部の内部に没入してしまうと、案内部の先端部が弁室に開口する状態となり、この開口周辺の形状が複雑になって流体の流れが乱れてしまう可能性がある。
【0012】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電動弁および冷凍サイクルシステムによれば、弁ポートに対する弁部の偏心や傾きを抑制することでシール性や耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の弁閉状態における要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】前記電動弁の要部を示す横断面図であり、
図1、2にA-A線で示す位置の断面図である。
【
図4】前記電動弁の弁開状態における要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る電動弁を
図1~
図4に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁本体1と、弁体2と、駆動部3と、ねじ送り機構4と、案内部材5と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0016】
弁本体1は、切削加工されたSUSや黄銅等の金属製の部材であって、その内部に円筒状の弁室1Aが形成され、側面に第1ポート1Bが形成され、底面に第2ポート1Cが形成され、第2ポート1Cの上側に弁座部1Dが形成されている。弁本体1の第1ポート1Bには、弁室1Aに連通して冷媒が流入又は流出される第1継手管11が取り付けられ、第2ポート1Cには、弁室1Aに連通して冷媒が流出又は流入される第2継手管12が取り付けられている。弁座部1Dには、断面円形状の弁ポート13が形成されている。また、弁本体1には、弁室1Aよりも軸線L方向の上側に延びて後述する案内部材5を収容する第1筒部14と、第1筒部14の上側に延びて第1筒部14よりも内径の大きい第2筒部15と、が形成されている。第2筒部15の上端縁には、駆動部3の外殻を構成するケース16が固定されている。
【0017】
弁体2は、
図2に示すように、弁座部1Dに対して近接または離間して弁ポート13を開閉するニードル部21を有する弁部2Aと、弁部2Aの基端部22を保持する円筒状の弁ホルダ2Bと、弁ホルダ2Bに内蔵されて後述するねじ軸32先端の拡径部32cに当接するばね受2Cと、弁部2Aの基端部22とばね受2Cとの間に圧縮状態で介装されるばね部材である圧縮ばね2Dと、ねじ軸32の拡径部32cと弁ホルダ2Bの上壁部との間に介装されるスラストワッシャ2Eと、を有して構成される。弁部2A、弁ホルダ2B、ばね受2C、圧縮ばね2Dおよびスラストワッシャ2Eは、軸線Lを中心とする同軸上に配設され、弁体2は、駆動部3によって軸線L方向に沿って進退駆動される。弁部2Aは、基端部22から上方(駆動部3側)に突出した突起部23を有し、この突起部23が圧縮ばね2Dに挿入されている。弁ホルダ2Bの上壁部には、ねじ軸32を挿通させる挿通孔24が形成され、ねじ軸32の拡径部32cは、スラストワッシャ2Eを介して弁ホルダ2Bの上壁部に係合している。スラストワッシャ2Eは、ねじ軸32の拡径部32cと弁ホルダ2Bの上壁部に当接可能になっており、その当接面同士の摩擦力が極めて小さくなり、これによりねじ軸32の回転が弁ホルダ2Bに伝達されにくくなっている。
【0018】
駆動部3は、電動モータとしてのステッピングモータ3Aと、ステッピングモータ3Aの回転を規制するストッパ機構3Bと、を備える。ステッピングモータ3Aは、外周部が多極に着磁されたマグネットロータ31と、ケース16の外周に配設された図示しないステータコイルと、マグネットロータ31に固定された駆動軸としてのねじ軸32と、を備えている。ねじ軸32は、固定部材32aを介してマグネットロータ31に固定されるとともに、軸線Lに沿って延び、その上端部はストッパ機構3Bのガイド33に挿入されている。ねじ軸32の中間部には第2ねじ部としての雄ねじ部32bが一体に形成され、この雄ねじ部32bが支持部材4Aの雌ねじ部41aに螺合している。ねじ軸32の先端部には、弁体2の弁ホルダ2Bに係合する拡径部32cが形成されている。
【0019】
ストッパ機構3Bは、ケース16の天井部から垂下された円筒状のガイド33と、ガイド33の外周に固定されたガイド線体34と、ガイド線体34にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ35と、を備えている。可動スライダ35には、径方向外側に突出した爪部35aが設けられ、マグネットロータ31が回転して爪部35aを押すことで、可動スライダ35がガイド線体34に倣って回転かつ上下するようになっている。ガイド33には、マグネットロータ31の最上端位置を規定する上端ストッパ33aが形成され、ガイド線体34には、マグネットロータ31の最下端位置を規定する下端ストッパ34aが形成されている。これらの上端ストッパ33aおよび下端ストッパ34aに可動スライダ35の爪部35aが当接することで、可動スライダ35の回転が停止され、これによりマグネットロータ31の回転が規制され、弁体2の上昇または下降も停止される。
【0020】
ねじ送り機構4は、ステッピングモータ3Aにより回転するねじ軸32を軸線L方向に進退移動させることで弁体2を進退させるものであって、支持部材4Aを備えている。支持部材4Aは、樹脂成形品である支持部材本体41と、支持部材本体41にインサート成形される金属製の固定部42と、を備え、固定部42が弁本体1の第2筒部15の上端縁に溶接固定されている。支持部材本体41は、ねじ軸32の雄ねじ部32bと螺合される第1ねじ部としての雌ねじ部41aと、雌ねじ部41aよりも弁ポート13側に設けられて弁ホルダ2Bの外周面を覆う筒状部41bと、を有して形成されている。筒状部41bの周方向の複数箇所には、径方向に貫通して筒状部41b内部とケース16の内部(ロータ室)とを連通させる均圧孔41cが設けられている。また、固定部42の周方向の複数箇所には、軸方向に貫通して弁本体1の第2筒部15内部とケース16の内部(ロータ室)とを連通させる均圧孔42aが設けられている。ねじ送り機構4は、ねじ軸32の雄ねじ部32bと支持部材4Aの雌ねじ部41aとが螺合しているとともに、マグネットロータ31によってねじ軸32が回転駆動されることで、マグネットロータ31およびねじ軸32を軸線L方向に進退移動させ、これに伴って弁体2も軸線Lに沿って上昇または下降する。
【0021】
案内部材5は、例えばSUSや黄銅等の金属製、あるいはPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の樹脂製であり、全体円筒状の部材であって、支持部材4Aよりも弁ポート13側に位置して設けられ(すなわち、案内部材5の上端部と支持部材4Aの下端部との間には隙間が設けられ)、弁本体1の第1筒部14に挿入されるとともに、第1筒部14の上端部のカシメ部14aにカシメ固定されている。案内部材5は、カシメ部14aにカシメ固定される円環状の鍔部51と、鍔部51の下側に連続して第1筒部14に圧入される圧入部52と、圧入部52の下側に連続して圧入部52よりも薄肉に形成された円筒部53と、を有している。鍔部51、圧入部52および円筒部53の内周面は同一の内径を有して連続する円柱状の案内面5Aとなっており、案内面5Aは、弁ホルダ2Bの外周面とわずかな隙間を介して対向し、弁ホルダ2Bを軸線L方向に沿って案内する案内部を構成している。また、
図3にも示すように、弁室1Aと第2筒部15の内部空間とを連通する連通路としてのDカット部54が、鍔部51および圧入部52の外周側に2箇所設けられており、これらのDカット部54を介して、弁室1Aと第2筒部15の内部空間とが連通されている。
【0022】
案内部材5は、
図2に示すように、その高さ寸法であり案内面5Aの軸線方向に沿った長さ寸法L1が、弁ホルダ2Bの外径寸法L2よりも大きく形成されており(L1>L2)、案内面5Aの長さ寸法L1は、弁ホルダ2Bの外径寸法L2の1.5倍以上であることが好ましい。案内部材5の案内面5Aと弁ホルダ2Bの外周面との間には隙間が形成されており、支持部材4Aの筒状部41bの内周面と弁ホルダ2Bの外周面との隙間寸法S1よりも、案内面5Aと弁ホルダ2Bの外周面との隙間寸法S2が小さく設定されている。また、
図2に示す弁閉時において、ねじ軸32の拡径部32c上面とスラストワッシャ2Eの下面との間には間隔寸法S3の隙間が形成され、
図4に示す弁開時において、ねじ軸32の拡径部32c先端面とばね受2Cの上面との間には間隔寸法S3の隙間が形成されるようになっている。すなわち、弁開時には、ねじ軸32の拡径部32cにスラストワッシャ2Eを介して弁ホルダ2Bが吊り下げ支持されており、ねじ軸32から弁体2に対して圧縮ばね2Dの付勢力が作用しないようになっている。また、
図4に示す弁開時(全開時)において、弁ホルダ2Bの先端部が案内部材5の先端部よりも弁ポート13側に突出して設けられている。
【0023】
次に、電動弁10の動作について説明する。
図4に示す弁開状態からステッピングモータ3Aを駆動してねじ軸32を回転させると、ねじ送り機構4によってねじ軸32が下降し、これに伴って弁体2も下降し、ニードル部21が弁ポート13に挿入されていく。さらにねじ軸32を回転させて下降させると、弁体2が弁座部1Dに当接した状態、すなわち、ニードル部21の基端部のテーパ面21aが弁座部1Dの上面角部に着座するが、着座した瞬間においては、ねじ軸32の拡径部32c先端がばね受2Cに当接していないため、弁体2に対して圧縮ばね2Dの付勢力が作用していないため、ニードル部21と弁座部1Dとの間に摺れ回りの摩擦力が生じないようになっている。さらにねじ軸32を回転させて下降させると、
図2に示すように、ねじ軸32の拡径部32c先端がばね受2Cに当接し、ばね受2Cを押し下げることで、圧縮ばね2Dの付勢力が弁体2に作用し、ニードル部21が弁座部1Dに押し付けられて弁閉状態が維持される。
【0024】
なお、本実施形態の電動弁としては、
図1~
図4に示す電動弁10に限らず、
図5に示すような構造を備えていてもよい。
図5に示す電動弁10Aは、弁本体1と一体に形成された案内面17によって案内部が構成されている点が電動弁10と相違する。案内面17は、弁室1Aと第2筒部15の内部とを連通するように弁本体1を上下に貫通し、軸線Lを中心とした円柱面として形成されている。この案内面17と弁ホルダ2Bの外周面との隙間寸法S2は、支持部材4Aの筒状部41bの内周面と弁ホルダ2Bの外周面との隙間寸法S1よりも小さく設定されている。また、案内面17の軸線L方向に沿った長さ寸法L1は、弁ホルダ2Bの外径寸法L2よりも大きく設定されている。また、案内面17の周囲には、弁室1Aと第2筒部15の内部とを連通する連通路としての連通孔18が1または複数設けられている。
【0025】
以上の本実施形態によれば、ねじ送り機構4の支持部材4Aよりも弁ポート13側に案内部材5が設けられ、この案内部材5によって弁ホルダ2Bが軸線L方向に案内されるので、弁ホルダ2Bの軸線Lに対する案内精度を高めることができ、弁ポート13に対するニードル部21の偏心や傾きを抑制することができる。したがって、弁ポート13に対して偏心や傾きなくニードル部21を弁座部1Dに着座させることで、弁閉時における弁漏れの発生を抑制するとともに、ニードル部21と弁座部1Dとの当接部分の局所的な変形や摩耗を抑制して耐久性を向上させることができる。
【0026】
また、弁本体1とは別体の案内部材5を弁本体1に固定し、この案内部材5の案内面5Aで弁ホルダ2Bを案内することで、案内部材5として、弁本体1とは材質や成形方法が異なる部材を選択することができる。一方、
図5に示すように、弁本体1と一体に形成された案内面17で弁ホルダ2Bを案内する構成を採用すれば、部品点数を削減できるとともに、弁ポート13と案内面17との位置精度を高めることで、弁ホルダ2Bの案内精度を高めることができる。
【0027】
また、支持部材4Aの筒状部41bの内周面と弁ホルダ2Bの外周面との隙間寸法S1よりも、案内部材5の案内面5Aまたは弁本体1の案内面17と弁ホルダ2Bの外周面との隙間寸法S2が小さい(S1>S2)ことで、支持部材4Aの筒状部41bが軸線に対して芯ずれしたり傾斜したりした場合でも、筒状部41bが弁ホルダ2Bに干渉しにくくなり、弁体2の案内精度を損ねないようにできる。
【0028】
また、案内部材5の案内面5Aまたは弁本体1の案内面17により弁ホルダ2Bを案内する部分の長さ寸法L1が弁ホルダ2Bの外径寸法L2よりも大きい(L1>L2)ことで、弁ホルダ2Bの案内長さを確保することができ、弁ホルダ2Bの傾きを抑制することができる。
【0029】
また、全開位置にある弁体2の弁ホルダ2Bが案内面5A,17の先端部よりも弁ポート13側に突出していることで、弁室1A内の流体の流れを安定させることができる。
【0030】
また、弁開時にねじ軸32から弁体2に対して圧縮ばね2Dの付勢力が作用せず、着座した瞬間にも弁体2に対して圧縮ばね2Dの付勢力が作用しないため、ニードル部21と弁座部1Dとの間に摺れ回りの摩擦力が生じないことで、ニードル部21と弁座部1Dとの当接部分の局所的な変形や摩耗を抑制して耐久性をさらに向上させることができる。
【0031】
また、弁室1Aと第2筒部15の内部とを連通する連通路(Dカット部54や変形例における連通孔18)が設けられ、この連通路(Dカット部54や連通孔18)を介して、弁室1Aと弁本体1の第2筒部15の内部空間とが連通されているとともに、案内部の上端部(案内部材5の上端部や変形例における案内面17の上端部)と支持部材4Aの下端部との間に隙間が設けられていることで、弁室1Aとケース16の内部空間(ロータ室)とを均圧しやすくできる。すなわち、弁本体1の第2筒部15は、案内部(案内部材5や変形例における案内面17の上端部)と支持部材4Aとの隙間、支持部材本体41の筒状部41bの内部、および均圧孔41cを介してロータ室に連通されるとともに、支持部材4Aの固定部42の均圧孔42aを介してロータ室に連通され、これらの2通りのルートを介して弁室1Aとロータ室との均圧が図られるようになっている。
【0032】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図7に基づいて説明する。
図6は、実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。図において、符号100は前記各実施形態の電動弁10,10Aを用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。膨張弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0033】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁100を介して室内熱交換器300側に流れ、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0034】
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300側から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10,10Aを例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0036】
また、前記実施形態では、駆動部3がステッピングモータ3Aとストッパ機構3Bと、を備えて構成されていたが、このような構成に限らず、駆動部としては、駆動軸を介して弁体を軸線方向に沿って駆動できるものであればよい。また、前記実施形態では、駆動部3のねじ軸32の雄ねじ部32bが支持部材4Aの雌ねじ部41aに螺合することでねじ送り機構4が構成されていたが、これに限らず、駆動軸の側に雌ねじ(第2ねじ部)が形成され、支持部材の側に雄ねじ(第1ねじ部)が形成され、これらの雄ねじと雌ねじとが螺合することでねじ送り機構が構成されていてもよい。
【0037】
また、前記実施形態では、弁体2の弁部2Aの先端部が先細形状のニードル部21とされ、このニードル部21が弁ポート13に挿入されて着座する構成であったが、これに限らず、弁部2Aの先端が平板状に形成され、弁ポートを覆うように着座する構成であってもよい。また、前記実施形態では、弁部2Aが弁ホルダ2Bと別体に形成されて固定される構成であったが、これに限らず、弁部2Aと弁ホルダ2Bとが相対回転可能に接続されていてもよい。また、前記実施形態では、弁部2Aの基端部22に圧縮ばね2Dが直接当接する構成であったが、弁部2Aの基端部22と圧縮ばね2Dとの間にスラストワッシャ2Eと同様の摩擦力を軽減させる部材が介装されていてもよい。また、弁部2Aと弁ホルダ2Bとが相対回転可能に接続される構成を採用した場合には、ねじ軸32の先端部と弁ホルダ2Bとが相対回転不能に固定されていてもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、弁本体1の弁ポート13に対して弁室1Aを挟むようにして案内部材5や案内面17が設けられていた(すなわち、案内部材5の下端や案内面17の下端と弁ポート13との間に弁室1Aが設けられていた)が、これに限らず、弁ポートに連続した筒状の案内部が設けられ、この案内部に弁ホルダが案内される構成であってもよい。この際、弁ポートに連続した筒状の案内部には、側面に連通孔が設けられて第1ポートと案内部の内部とが連通されていればよく、筒状の案内部の内部空間が弁室として機能すればよい。この際、筒状の案内部は、弁本体と一体に形成されてもよいし、弁本体と別体に形成されて弁本体に固定されてもよい。さらに、弁本体と弁座部材とが別体に形成される場合には、弁座部材に筒状の案内部が一体に設けられていてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 弁本体
1A 弁室
2 弁体
2A 弁部
2B 弁ホルダ
2D 圧縮ばね
3 駆動部
4 ねじ送り機構
4A 支持部材
5 案内部材(案内部)
13 弁ポート
17 案内面(案内部)
22 基端部
32 ねじ軸(駆動軸)
32b 雄ねじ部(第2ねじ部)
41a 雌ねじ部(第1ねじ部)
100 膨張弁(電動弁)
200 室外熱交換器(凝縮器又は蒸発器)
300 室内熱交換器(蒸発器又は凝縮器)
400 流路切換弁
500 圧縮機