(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート、密閉型鉛蓄電池セパレータ、及び密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/437 20210101AFI20240312BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240312BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240312BHJP
D04H 1/4218 20120101ALI20240312BHJP
D21H 13/40 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M50/437
H01M50/403 D
H01M50/403 Z
H01M50/44
D04H1/4218
D21H13/40
(21)【出願番号】P 2020139242
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000241810
【氏名又は名称】北越コーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】楚山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐希
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-206571(JP,A)
【文献】特開2018-037335(JP,A)
【文献】特開2016-173901(JP,A)
【文献】特開平04-106869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
D04H 1/4218
D21H 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラスウールを含有する密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートにおいて、
前記グラスウールは、
重量平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールを含み、
前記グラスウールのうち前記第1グラスウールの含有量は50質量%以上であり、
方法1による前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート中の硫酸イオン量が70mg/kg以上1100mg/kg以下であることを特徴とする密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート。
[方法1]
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート3gを秤取り試料とし、該試料を105℃にて12時間乾燥して絶乾状態にした後、100mlの蒸留水で液温80±5℃で1時間抽出処理を行い、抽出液中の硫酸イオンSO
4
2-量についてイオンクロマトグラフィーで定量を行った。硫酸イオン量(mg/kg)は、絶乾試料3g中の硫酸イオン質量を、絶乾試料単位質量(kg)あたりに含まれる硫酸イオン質量(mg)に換算して求めた。
【請求項2】
前記グラスウールは、前記第1グラスウールに加えて、
重量平均繊維径が2.4μm未満である第2グラスウール若しくは
重量平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウールのいずれか一方又は両方を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート。
【請求項3】
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートが前記グラスウールのみから構成されることを特徴とする請求項2に記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート。
【請求項4】
前記グラスウールの重量平均繊維径は、1.5μm以上5.0μm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート。
【請求項5】
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートが、合成樹脂系バインダー若しくはバインダー繊維のいずれか一方又は両方を含まないことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート。
【請求項6】
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの方法2による沈降容積が450cm
3/g以上970cm
3/g以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート。
[方法2]
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの繊維を繊維破壊しない条件で常温の純水中に再分散して0.04質量%のスラリーを作製し、このスラリー250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数1で求めた。
【数1】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートを用いた密閉型鉛蓄電池セパレータ。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一つに記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法において、
グラスウールを含み、かつ、該グラスウールのうち50質量%以上が
重量平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールである原料を水系分散媒で分散させて原料スラリーにする分散工程と、
該原料スラリーを、水系分散媒で希釈して湿式抄紙して湿紙を得る抄紙工程と、
前記湿紙を乾燥させる乾燥工程と、を有し、
(1)前記分散工程において前記水系分散媒として硫酸水溶液を用いる、(2)前記抄紙工程において前記水系分散媒として硫酸水溶液を用いる、(3)前記抄紙工程後に、前記湿紙に硫酸水溶液を含浸させる含浸工程を設ける、の(1)~(3)の1種以上を行うことを特徴とする密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法。
【請求項9】
前記抄紙工程後に、前記湿紙の水分率を60~75質量%に調整する脱水工程を更に有することを特徴とする請求項8に記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法。
【請求項10】
前記分散工程において、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を調整して、前記原料スラリーの方法3による沈降容積を450cm
3/g以上970cm
3/g以下とすることを特徴とする請求項8又は9に記載の密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法。
[方法3]
常温条件で前記原料スラリーを分取し、これを常温の純水に希釈して0.04質量%とし、この希釈液250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数2で求めた。
【数2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート、密閉型鉛蓄電池セパレータ、及び密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉型鉛蓄電池は、正極板と負極板とをガラス繊維製のシートを介して積層して極板群を構成し、該極板群を電槽に挿入して組み立てるのが一般的である。この密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートは、正極板と負極板とを短絡させないこと、鉛蓄電池の電解液である硫酸をシートの空隙に保持すること、電池反応が起こる際に、正極板と負極板との間のイオン伝導を、保持した電解液を通じてスムースに行うことが重要な特性である。
【0003】
従って、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートは、電解液をできるだけ多く保持するよう極めて高い空隙性を有している。この電解液に対する挙動はガラス繊維シートの吸液性又は吸液速度などのパラメーターで示されることがある。
【0004】
密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの吸液性について論じた先行技術としては、セパレータの縦方向と横方向の吸液度の差、およびセパレータの表裏面の差を規定した蓄電池用セパレータが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
一方で、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートは、基本的にグラスウールを主体に構成されているが、グラスウール自体に接着性がなく繊維が絡みあっているだけなので、ガラス繊維シート自体の強度が低い。このため、シートを粗雑に扱うとシートの一部が破損したり、穴が開いたりしてしまう場合がある。破損したシートや穴が開いたシートは正極板と負極板とが短絡するため、使用できなくなってしまう。
【0006】
ガラス繊維シートの強度を向上させる方策として、ガラス繊維、吸水性を有する合成繊維及びこれらの繊維を接着するアクリル系液体バインダーを含む密閉型鉛蓄電池用セパレータが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0007】
また、0.3~1.0μmの平均直径を有する含アルカリ珪酸塩ガラス繊維をpH2~3に保った水の中に一定時間(たとえば5~20分)分散させておき、湿式抄紙し、それによって特別の接着剤なしに相互に接着させた蓄電池用セパレータが提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0008】
その一方で、平均繊維径2μm以下のアルカリガラス繊維から実質的に構成される密閉型鉛蓄電池用セパレータにおいて、セパレータをソフトにして電池組立を容易にして、かつ緊圧のバラツキを少なくするべく、接着を弱めるため、ガラス繊維表面の硫黄Sを0.02%以下にするセパレータが提案されている(例えば、特許文献4を参照。)。
【0009】
MD/CD強度比が1.5以上であって、60kPa注液時圧迫力が65%以上である密閉型鉛蓄電池用セパレータが提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2004/088774号
【文献】特開昭62-252065号公報
【文献】特開昭59-71255号公報
【文献】特開平4-106869号公報
【文献】特開2019-204767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に開示された密閉型鉛蓄電池用セパレータでは、電解液吸液性の縦横差、および表裏差を小さくする方法のみ開示されており、電解液吸収性自体を高めることは示されていなかった。
【0012】
特許文献2に開示された密閉型鉛蓄電池用セパレータでは、吸水性を有する合成繊維自体に接着力がなく、また、アクリル系液体バインダーの親水性が低いことから、電解液の吸収性ならびに保液性が劣るという問題があった。
【0013】
特許文献3では特別の接着剤なしに接着する密閉型鉛蓄電池用セパレータが開示されている。しかし、これらのガラス繊維シートはグラスウールの繊維径が0.3~1.0μmのように細いため、シート密度が高くなってしまう。このため、密閉型鉛蓄電池セパレータとして使用する際の電解液保液性が低めになる問題があった。また電池組立加工において、ガラス繊維シートの引張強さの強度物性が高いもののシートが硬くなりやすいため、シートの曲げ加工で曲げ部に割れが生じて電池使用の際の短絡原因となる問題があった。
【0014】
このため、特許文献4ではセパレータの接着を弱めてソフトにするためガラス繊維表面の硫黄Sを一定量以下に制御する技術が開示されている。しかし、特許文献4は、平均繊維径が2μm以下のグラスウールのみから実質的に構成された密閉型鉛蓄電池セパレータに対する技術であり、これよりも平均繊維径が大きいグラスウールを主体繊維とする密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートに対する検討は行われていなかった。
【0015】
特許文献5では、ガラス繊維の平均繊維径が0.5~4μmであることが好ましいことが開示されている。しかし、ガラス繊維表面の硫黄Sを一定量以上に制御する技術の開示もない。
【0016】
本開示は、このような問題に鑑み、比較的繊維径が大きいグラスウールを主体繊維とする密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートにおいてなされたものであり、その目的とするところは、電解液吸収性が高く、比較的平均繊維径の大きいグラスウールを主体繊維とするガラス繊維シートの課題である電池組立加工におけるシートの曲げ加工時の折り曲げ加工適性が良好である密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート、密閉型鉛蓄電池セパレータ、及び密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートは、グラスウールを含有する密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートにおいて、前記グラスウールは、重量平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールを含み、前記グラスウールのうち前記第1グラスウールの含有量は50質量%以上であり、方法1による前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート中の硫酸イオン量が70mg/kg以上1100mg/kg以下であることを特徴とする。
[方法1]
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート3gを秤取り試料とし、該試料を105℃にて12時間乾燥して絶乾状態にした後、100mlの蒸留水で液温80±5℃で1時間抽出処理を行い、抽出液中の硫酸イオンSO4
2-量についてイオンクロマトグラフィーで定量を行った。硫酸イオン量(mg/kg)は、絶乾試料3g中の硫酸イオン質量を、絶乾試料単位質量(kg)あたりに含まれる硫酸イオン質量(mg)に換算して求めた。
【0018】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートでは、前記グラスウールは、前記第1グラスウールに加えて、重量平均繊維径が2.4μm未満である第2グラスウール若しくは重量平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウールのいずれか一方又は両方を更に含有する形態を包含する。
【0019】
また、本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートでは、前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートが前記グラスウールのみから構成されることが好ましい。より電解液保液性を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートでは、前記グラスウールの重量平均繊維径は、1.5μm以上5.0μm以下であることが好ましい。より電解液保液性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートでは、前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートが、合成樹脂系バインダー若しくはバインダー繊維のいずれか一方又は両方を含有しないことが好ましい。電解液保液性が劣るという問題が生じにくい。
【0022】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートでは、前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの方法2による沈降容積が450cm
3/g以上970cm
3/g以下であることが好ましい。グラスウールの繊維長を長く保つことができ、電解液保持性を向上することができる。また、電池組立加工におけるシートの曲げ加工時の折り曲げ加工適性を良好とすることができる。
[方法2]
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの繊維を繊維破壊しない条件で常温の純水中に再分散して0.04質量%のスラリーを作製し、このスラリー250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数1で求めた。
【数1】
【0023】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータは、本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートを用いたことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法において、グラスウールを含み、かつ、該グラスウールのうち50質量%以上が重量平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールである原料を水系分散媒で分散させて原料スラリーにする分散工程と、該原料スラリーを、水系分散媒で希釈して湿式抄紙して湿紙を得る抄紙工程と、前記湿紙を乾燥させる乾燥工程と、を有し、(1)前記分散工程において前記水系分散媒として硫酸水溶液を用いる、(2)前記抄紙工程において前記水系分散媒として硫酸水溶液を用いる、(3)前記抄紙工程後に、前記湿紙に硫酸水溶液を含浸させる含浸工程を設ける、の(1)~(3)の1種以上を行うことを特徴とする。
【0025】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、前記抄紙工程後に、前記湿紙の水分率を60~75質量%に調整する脱水工程を更に有することが好ましい。シート中の硫酸イオン量を適量に調整することができる。
【0026】
本発明に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、前記分散工程において、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を調整して、前記原料スラリーの方法3による沈降容積を450cm
3/g以上970cm
3/g以下とすることが好ましい。グラスウールの繊維長を長く保つことができ、電解液保持性を向上することができる。また、電池組立加工におけるシートの曲げ加工時の折り曲げ加工適性を良好とすることができる。
[方法3]
常温条件で前記原料スラリーを分取し、これを常温の純水に希釈して0.04質量%とし、この希釈液250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数2で求めた。
【数2】
【発明の効果】
【0027】
本開示によれば、電解液保液性が高く、電池組立加工におけるシートの曲げ加工時の折り曲げ加工適性が良好である密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート、密閉型鉛蓄電池セパレータ、及び密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0029】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートは、グラスウールを含有する密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートにおいて、グラスウールは、平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールを含み、グラスウールのうち第1グラスウールの含有量は50質量%以上であり、方法1による前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート中の硫酸イオン量が70mg/kg以上1100mg/kg以下である。
[方法1]
密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート3gを秤取り試料とし、試料を105℃にて12時間乾燥して絶乾状態にした後、100mlの蒸留水で液温80±5℃で1時間抽出処理を行い、抽出液中の硫酸イオンSO4
2-量についてイオンクロマトグラフィーで定量を行った。硫酸イオン量(mg/kg)は、絶乾試料3g中の硫酸イオン質量を、絶乾試料単位質量(kg)あたりに含まれる硫酸イオン質量(mg)に換算して求めた。
【0030】
本実施形態で使用されるグラスウールは、耐酸性を有するホウケイ酸ガラスで構成されている原綿状のもので、ガラス短繊維とも呼称されている。その製造方法としては火焔法や遠心法などがある。これら方法で製造されたグラスウールは繊維径にばらつきの幅を有するものである。従ってグラスウールの繊維径は平均繊維径として示される。本実施形態では、グラスウールには、平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウール、平均繊維径が2.4μm未満である第2グラスウール及び平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウールが包含される。
【0031】
本実施形態において、グラスウールは主体繊維として配合され、グラスウールとして、平均繊維径が2.4μm以上6.0μm以下である第1グラスウールを含有する。第1グラスウールの含有量は、グラスウールのうち50質量%以上であり、60質量%以上であることが好ましい。第1グラスウールの含有量の上限値は、特に限定されないが、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。80質量%を超えると電解液の保液力の点ではより好ましいが、条件によってはガラス繊維シートの引張強度が低下することもある。第1グラスウールの含有量がグラスウールに対して50質量%未満では、電解液の保液性が不足する。ここで記載する主体繊維とは、ガラス繊維シートの骨格を形成する繊維のことをいう。主体繊維のガラス繊維シート全体に占める割合は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。また、主体繊維がグラスウールのみからなることが好ましい。
【0032】
なお、グラスウールは様々な平均繊維径の銘柄があり、平均繊維径が2.4μm以上6.0μm以下である第1グラスウールをグラスウールに対して50質量%以上配合する条件を満たせば、様々な平均繊維径の銘柄のグラスウールを2種類以上配合してもよい。グラスウールは、第1グラスウールに加えて、平均繊維径が2.4μm未満である第2グラスウール若しくは平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウールのいずれか一方又は両方を更に含有する形態を包含する。第2グラスウールを配合することで、グラスウール同士の接点が増えるので抄紙工程でのシート形成が行いやすくなる。また、第3グラスウールを配合することで、条件によってはさらに電解液の保液性を向上できる。また、ここで記載する平均繊維径とは、BET法を用いた比表面積、あるいは比表面積と相関のあるショッパーリグラーフリーネス法によって求められる。したがって本明細書において平均繊維径とは「重量平均繊維径」を意味するが、「平均繊維径」と表記する場合がある。平均繊維径が2.4μm以上6.0μm以下である第1グラスウールをグラスウールのうち50質量%以上配合すると、グラスウール間の空隙が大きくなり、この結果、電解液の保液性が向上する。平均繊維径がより大きいことが好ましいが、大き過ぎるとガラス繊維シートの引張強さが低下してしまうので、平均繊維径は最大6.0μmであることが好ましい。第1グラスウールの平均繊維径は、2.4~4.5μmであることがより好ましい。
【0033】
本実施形態において、グラスウールを2種類以上配合する際、グラスウールの重量平均繊維径は1.5μm以上とすることが好ましく、さらに好ましくは1.7μm以上である。なお、ここで記載される重量平均繊維径とは、配合される各銘柄のグラスウールの平均繊維径に各グラスウールの重量配合率を乗じて求めたものである。重量平均繊維径が大きいと電解液の保液性が向上するが、大き過ぎるとガラス繊維シートの引張強さが低下してしまうので、重量平均繊維径は最大5.0μmであることが好ましく、最大4.2μmであることがより好ましい。グラスウールを2種類以上配合する形態は、例えば、グラスウールが、第1グラスウールと平均繊維径が2.4μm未満である第2グラスウールとである形態、第1グラスウールと平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウールとである形態、第1グラスウールと平均繊維径が2.4μm未満である第2グラスウールと平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウールとである形態、又は繊維径の異なる2種以上の第1グラスウールである形態を包含する。
【0034】
本実施形態においては、グラスウールとして平均繊維径を2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールをグラスウールに対して50質量%以上含有させることによって電解液保液性を向上させるが、繊維径が大きくなることでシートを構成するグラスウールネットワークの繊維交点数が減少するため、電池組立加工におけるシートの曲げ加工時に曲げ部に割れが生じることがわかった。これは主体繊維として平均繊維径が2.4μm未満のような比較的繊維径の小さいグラスウールのみが使用されたガラス繊維シートでは見られなかった現象である。この問題を解決するため、本発明者らの鋭意検討の結果、ガラス繊維シート中の硫酸イオン量を70mg/kg以上とすることで、曲げ部の割れが生じなくなり、折り曲げ加工適性が改善されることが分かった。
【0035】
ガラス繊維シートの折り曲げ加工適性が向上する作用としては、明白ではないが、硫酸がガラス繊維表面のアルカリ金属と反応することでガラス繊維表面に水酸基が生成し、水酸基同士が水素結合することで、ガラス繊維間が結合すると見られる。シート中の硫酸イオン量が規定量以上になると結合強度が向上し、結果、折り曲げ加工適性が向上する。従来は、例えば特許文献4に記載されているように、セパレータであるガラス繊維シートをソフトにして吸液量を大きくするため、シート中の硫酸量を減らして繊維間の結合を弱めることが一般的であった。しかし、これらは平均繊維径2μm以下のグラスウールのみから実質的に構成されたガラス繊維シートに対する技術であり、本実施形態のように平均繊維径を2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールを主体繊維として用いるガラス繊維シートでは適用できないものであった。本発明者らは、これとは真逆の発想でシート中の硫酸量を増やす方向に適正に制御するにより、本発明の課題を解決するに至った。
【0036】
本実施形態において、ガラス繊維シート中の硫酸イオン量が70mg/kg以上1100mg/kg以下であり、好ましくは100mg/kg以上1000mg/kg以下である。70mg/kgより少ないと、シートの折り曲げ加工適性を改善することができない。また、シート強度が足りずにセパレータとして使用した際、電解液中でのシート崩れが生じやすくなる。硫酸イオン量が増えるとシート強度をさらに向上させることができ、シートは電解液中で崩れなくなる。また、ガラス繊維シート中の硫酸イオン量が1100mg/kgを超えると、ガラス繊維シートが硬くなりすぎるため、電解液保持性が悪くなり、電池組立加工におけるシートの曲げ加工で曲げ部に割れが生じやすくなる。なお、ここで記載されるガラス繊維シート中の硫酸イオン量は、次の方法1によって求められるものである。
[方法1]
密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シート3gを秤取り試料とし、試料を105℃にて12時間乾燥して絶乾状態にした後、100mlの蒸留水で液温80±5℃で1時間抽出処理を行い、抽出液中の硫酸イオンSO4
2-量についてイオンクロマトグラフィーで定量を行った。硫酸イオン量(mg/kg)は、絶乾試料3g中の硫酸イオン質量を、絶乾試料単位質量(kg)あたりに含まれる硫酸イオン質量(mg)に換算して求めた。
【0037】
本実施形態のガラス繊維シートは、主体繊維として平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールを含有するが、本発明の効果を損なわない限り、その他の主体繊維として異種繊維を配合することが可能である。異種繊維の配合率は主体繊維に対して50質量%未満であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがより更に好ましい。異種繊維としては、平均繊維径2.4μm未満の第2グラスウール、平均繊維径が6.0μmを超える第3グラスウール、ガラスチョップド繊維、本発明の製造工程で熱溶融しない、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフルオロエチレン樹脂などの合成樹脂繊維、木材やコットンなどのセルロースパルプなどが挙げられる。第2グラスウールの平均繊維径は、0.2μm以上2.4μm未満であることが好ましく、0.5~1.0μmであることがより好ましい。第3グラスウールの平均繊維径は、6.0μmを超え10μm以下であることが好ましく、6.0~8.0μmであることがより好ましい。ガラスチョップド繊維の平均繊維径は、5~15μmであることが好ましく、5~13μmであることがより好ましい。合成樹脂繊維の平均繊維径は、3~15μmであることが好ましく、6~13μmであることがより好ましい。セルロースパルプの平均繊維径は、5~100μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。
【0038】
また、本実施形態に係るガラスシートでは、バインダー繊維又は粉体材料などの副資材を更に含有してもよい。バインダー繊維は、例えば、本発明の製造工程で繊維の全部が溶融する全溶融タイプのバインダー繊維、又は本発明の製造工程で繊維の一部が溶融する部分溶融タイプのバインダー繊維である。部分溶融タイプのバインダー繊維は、例えば、繊維の芯部が非溶融成分からなり、繊維の鞘部が溶融成分からなる芯鞘タイプ熱溶融型バインダー繊維である。粉体材料としては、シリカ、タルク、カオリン等の粘土鉱物粉体などが挙げられる。これらの材料については、電解液である硫酸に対する耐酸性のあるものを選択すべきである。
【0039】
本実施形態では、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートがグラスウールのみから構成されることが好ましい。ガラス繊維シートがグラスウールのみから構成される形態は、例えば、ガラス繊維シートが第1グラスウールのみからなる形態、第1グラスウールと第2グラスウールとからなる形態、第1グラスウールと第3グラスウールとからなる形態、又は第1グラスウールと第2グラスウールと第3グラスウールとからなる形態を包含する。
【0040】
本実施形態のガラス繊維シートの坪量は、電解液保持性、電極間の短絡防止などの観点から、50~500g/m2であることが好ましく、100~450g/m2であることがより好ましい。
【0041】
本実施形態において、グラスウールの繊維長は、繊維長と繊維径との比の分布{繊維長(μm)/繊維径(μm)}で500/1~3000/1であることが好ましい。500/1より比が小さいとシートの空隙が小さくなり、電解液保持力が低下したり、シート自体の強度が低下したりする恐れがある。3000/1より比が大きいと、シート抄紙工程でグラスウールの分散性が悪くなり、シートが不均一になる恐れがある。
【0042】
本実施形態においては、グラスウールの繊維長を製造工程において繊維切断により繊維長が短くなることを出来うる限り防ぐことが重要である。特に平均繊維径2.4μm以上のグラスウールはこれより短いグラスウールに比べて製造工程の影響を受けて繊維長が短くなりやすい。繊維長が短くなると電解液保持性が低くなり、電池組立加工におけるシートの曲げ加工で曲げ部に割れが生じやすくなる。製造工程でグラスウールの繊維長に影響を与えるのは主にグラスウールの分散工程である。グラスウールを水系分散媒に分散させてスラリーを作製する際に、分散機によって多かれ少なかれグラスウールが粉砕される。分散機による粉砕を制御し繊維長をコントロールすることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートでは、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの方法2による沈降容積が450cm
3/g以上970cm
3/g以下であることが好ましい。本実施形態において、グラスウールの繊維長は方法2による沈降容積で間接的に規定される。沈降容積が450cm
3/g以上であれば、グラスウールの粉砕が少なく、電解液保持性の低下や曲げ加工での曲げ部に割れを防ぐことができる。沈降容積は470cm
3/g以上970cm
3/g以下であることがより好ましい。沈降容積は450cm
3/g未満では、グラスウールの繊維長が短過ぎて折り曲げ加工工程の加工適性が悪化する場合がある。沈降容積が970cm
3/gを超えると、グラスウールが十分に分散していない部分的に絡み合った状態になることがあり、この状態でガラス繊維シートを作成すると繊維空隙が不均一になり、大きな空隙があると密閉型鉛蓄電池セパレータとして使用した際に部分短絡を起こす場合がある。
[方法2]
前記密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの繊維を繊維破壊しない条件で常温の純水中に再分散して0.04質量%のスラリーを作製し、このスラリー250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数1で求めた。
【数1】
【0044】
ここで、方法2において放置時間を12時間としたのは、原料の沈降現象がある程度安定する条件であるからである。本実施形態において、沈降容積値は希釈濃度によって大きく変動するものではないが、多少の影響はあるので、0.04質量%に限定した。測定に使用する容器は読み取り精度を高めるため、本発明では目盛付のメスシリンダーを使用しているが、シリンダー状の形状を有するものであれば、トールビーカー、試験管なども使用でき、特に限定するものではない。密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの絶乾質量は、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートを105℃にて12時間乾燥して絶乾状態にした質量である。繊維破壊しない条件とは、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートがほぐれて繊維が分散するが、分散した繊維自体は破壊されない分散条件である。このような条件は、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維シートを、撹拌機又は分散機などを用いて回転数100~500rpmで、10秒~1分間で分散させる条件である。
【0045】
沈降容積の指標を用いれば間接的にグラスウールの平均繊維長の情報を得られる。すなわち、ガラス繊維の比重は約2.5であり、水中分散した後、静置すると水分散体から遊離し沈降してくる。ところが、平均繊維長が長いと繊維が互いに水中で保持しあうなど影響しあって、沈降しにくい現象がおこる。本発明の沈降容積はこの現象を利用し、一定条件でガラス繊維を分散した後の沈降の状態を数値化したものであり、この数値が高いほど、ガラス繊維の平均繊維長が長いことを示す平均繊維長の指標となる。なお、沈降容積は製品となった密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートについてだけではなく、原料スラリーについても測定可能である。製品となった密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートについて測定する場合は、ガラス繊維シートを繊維破壊しない条件で常温の純水中にて分散してスラリーを作製し方法2で測定する。有機バインダーを付与したガラス繊維シートにおいても、いったんガラス繊維シートを450℃の加熱炉で2時間加熱することにより有機バインダー分を焼成除去することによりほぼ完全にノーバインダーすることにより、前記の方法で沈降容積を測定できる。原料スラリーについて測定する場合は、方法3で測定することができる。方法3において放置時間を12時間とした理由、沈降容積値の希釈濃度を0.04質量%に限定した理由、測定に使用する容器の限定については、方法2と同様である。沈降容積は、方法2で測定しても方法3で測定しても概ね同じ値となる。
[方法3]
常温条件で原料スラリーを分取し、これを常温の純水に希釈して0.04質量%とし、この希釈液250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数2で求めた。
【数2】
【0046】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートは、合成樹脂系バインダー若しくはバインダー繊維のいずれか一方又は両方を含まないことが好ましい。これによって、電解液保液性が劣るという問題が生じにくい。合成樹脂系バインダーは、例えばバインダー液として濾材に付与される樹脂であり、例えば、アクリル酸エステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂又はエポキシ樹脂などである。
【0047】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法において、グラスウールを含み、かつ、グラスウールのうち50質量%以上が平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールである原料を水系分散媒で分散させて原料スラリーにする分散工程と、原料スラリーを、水系分散媒で希釈して湿式抄紙して湿紙を得る抄紙工程と、湿紙を乾燥させる乾燥工程と、を有し、(1)分散工程において水系分散媒として硫酸水溶液を用いる、(2)抄紙工程において水系分散媒として硫酸水溶液を用いる、(3)抄紙工程後に、湿紙に硫酸水溶液を含浸させる含浸工程を設ける、の(1)~(3)の1種以上を行う。
【0048】
本実施形態のガラス繊維シートは、一般の湿式抄紙法で製造できる。湿式抄紙法としては、グラスウールを水系分散媒に分散させたスラリーの一定量についてさらに水系分散媒で薄めて金網などの網上に抄き上げて、この湿紙シートを乾燥機で乾燥させてシート化する方法が挙げられる。工業的に大量生産する方法としては、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機で分散スラリーを連続的に抄きあげて、この湿紙シートを熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ドラム式乾燥機などで乾燥させ、乾燥シートを巻き取る方法が挙げられる。水系分散媒は、例えば、水または硫酸水溶液である。また、水系分散媒は、pH調整剤、消泡剤などの各種助剤を含有していてもよい。
【0049】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、分散工程において、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を調整して、原料スラリーの方法3による沈降容積を450cm
3/g以上970cm
3/g以下とすることが好ましい。グラスウールの繊維長を長く保つことができ、電解液保持性を向上することができる。また、電池組立加工におけるシートの曲げ加工時の折り曲げ加工適性を良好とすることができる。
[方法3]
常温条件で原料スラリーを分取し、これを常温の純水に希釈して0.04質量%とし、この希釈液250mlを内径38mmの250mlメスシリンダー内に入れて12時間放置する。そして、沈降容積を以下の数2で求めた。
【数2】
【0050】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、分散工程において、パルパーの回転数を100~500rpmとすることが好ましく、150~350rpmとすることがより好ましい。これらの範囲は、通常のパルパーの回転数に対して、20~80%減とした範囲であることが好ましく、25~60%減とした範囲であることがより好ましい。パルパーの回転数を通常の回転数よりも減少させることで、分散機によるグラスウールの粉砕を制御し繊維長を長く保つことができる。
【0051】
乾燥工程において、乾燥条件は、例えば、100~180℃であることが好ましく、110~160℃であることがより好ましい。乾燥時間は、1~15分であることが好ましく、3~10分であることがより好ましい。
【0052】
本実施形態において、ガラス繊維シート中に硫酸イオンを存在させる方法としては、(1)分散工程において水系分散媒として硫酸水溶液を用いる方法、(2)抄紙工程において水系分散媒として硫酸水溶液を用いる方法が挙げられる。また、(3)抄紙工程後に、湿紙に硫酸水溶液を含浸させる含浸工程を設ける方法であってもよい。本実施形態において、前出の方法のいずれか1つの方法か、あるいはいくつかの方法を組み合わせるか、は適宜選択できる。いくつかの方法の組合せは、例えば、(1)及び(2)、(1)及び(3)、(2)及び(3)、又は(1)、(2)及び(3)である。
【0053】
(1)分散工程において水系分散媒として硫酸水溶液を用いる場合、硫酸水溶液の硫酸濃度は、0.002~0.080質量%であることが好ましく、0.003~0.050質量%であることがより好ましい。0.002質量%未満では、硫酸イオンがシート中に留まらない場合がある。0.080質量%を超えると、逆に硫酸イオンがシート中に留まりすぎる場合がある。分散工程における水系分散媒は、原料を分散させる分散媒であり、具体例としては、離解用パルパーに投入する水系分散媒である。
【0054】
(2)抄紙工程において水系分散媒として硫酸水溶液を用いる場合、硫酸水溶液の硫酸濃度は、0.002~0.080質量%であることが好ましく、0.003~0.050質量%であることがより好ましい。0.002質量%未満では、硫酸イオンがシート中に留まらない場合がある。0.080質量%を超えると、逆に硫酸イオンがシート中に留まりすぎる場合がある。抄紙工程における水系分散媒は、原料スラリーを希釈する分散媒である。
【0055】
(3)抄紙工程後に、湿紙に硫酸水溶液を含浸させる含浸工程を設ける場合、硫酸水溶液の硫酸濃度は、0.003~0.130質量%であることが好ましく、0.005~0.080質量%であることがより好ましい。0.003質量%未満では、硫酸イオンがシート中に留まらない場合がある。0.130質量%を超えると、逆に硫酸イオンがシート中に留まりすぎる場合がある。含浸工程において、湿紙に硫酸水溶液を含浸させる方法は特に限定されず、例えば、湿紙を硫酸水溶液にどぶ付けする方法、湿紙に硫酸水溶液を塗布する方法、又は湿紙に硫酸水溶液を噴霧する方法であってもよい。
【0056】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法は、抄紙工程後に、湿紙の水分率を60~75質量%に調整する脱水工程を更に有することが好ましい。本実施形態において、ガラス繊維シート中の硫酸イオン量をコントロールする方法は特に限定するものではなく、前述した硫酸の添加量の調整などで行うことが可能であるが、乾燥機で乾燥させる前の湿紙シートの水分コントロールは、ガラス繊維シート中の硫酸イオン量をコントロールするうえで重要である。多くの場合、製造において湿紙シートを乾燥する前に余分な水分を除去するための脱水工程がある。脱水工程としてはロールプレスでシートの水分を絞り取る方法、真空吸引でシートの水分を吸い取る方法などが挙げられる。その脱水工程の際、ガラス繊維シート中の硫酸イオン量が減少するので、本発明の方法1によりガラス繊維シート中の硫酸イオン量をチェックしながら、脱水条件を制御する必要がある。湿紙の水分率が60質量%未満では、硫酸イオン量が不足する場合がある。湿紙の水分率が75質量%未満を超えると、硫酸イオン量が過剰となる場合がある。湿紙の水分率は60~70質量%とすることがより好ましい。
【0057】
密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法が脱水工程及び含浸工程を有する場合、製造方法は、分散工程と、抄紙工程と、脱水工程と、含浸工程と、乾燥工程と、を順に有することが好ましい。密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法が脱水工程を有し、かつ、含浸工程を有さない場合、製造方法は、分散工程と、抄紙工程と、脱水工程と、乾燥工程と、を順に有することが好ましい。また、密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートの製造方法が脱水工程を有さず、かつ、含浸工程を有する場合、製造方法は、分散工程と、抄紙工程と、含浸工程と、乾燥工程と、を順に有することが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータは、本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータ用ガラス繊維シートを用いてなる。本実施形態に係る密閉型鉛蓄電池セパレータは、密閉型鉛蓄電池における正極板及び負極板が、本実施形態に係るガラス繊維シートを挟んだ状態となっている。ここで、密閉型鉛蓄電池セパレータは、正極板と負極板とを短絡させないこと、鉛蓄電池の電解液である硫酸をシートの空隙に保持すること、電池反応が起こる際に、正極板と負極板との間のイオン伝導を、保持した電解液を通じてスムースに行うことを実現している。
【実施例】
【0059】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施することができる。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0060】
(実施例1)
平均繊維径2.44μmのグラスウール(ラウシャ社製、銘柄C-26-R)50質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール(ラウシャ社製、銘柄C-08-F)50質量部と、あらかじめ水に濃硫酸を溶解して硫酸濃度0.0049質量%とした水系分散媒を離解用パルパーに投入し、原料濃度を1質量%とした。パルパーを通常回転数の50%減となるよう、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を設定した条件で、前記原料を分散し原料スラリーを調成した。次にこの原料スラリーを硫酸濃度0.0049質量%の水系分散媒で原料濃度を0.1質量%に希釈し、傾斜型抄紙機で連続抄紙を行い、湿紙を得た。湿紙の水分率は脱水工程によって64%とした。次いで湿紙を120℃のロールドライヤーで乾燥し、坪量397g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0061】
(実施例2)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール60質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール40質量部とし、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量399g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0062】
(実施例3)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.003質量%、湿紙の水分率を73%とした以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0063】
(実施例4)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール100質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量402g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0064】
(実施例5)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径4.10μmのグラスウール50質量部(ラウシャ社製、銘柄C-50-R)および平均繊維径0.80μmのグラスウール50質量部とし、離解用パルパーに投入する水と原料スラリーを希釈する水の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を64%とした以外は、実施例1と同様にして坪量402g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0065】
(実施例6)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径4.10μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量398g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0066】
(実施例7)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を75%とした以外は、実施例1と同様にして坪量397g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0067】
(実施例8)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.022質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量401g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0068】
(実施例9)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.022質量%、湿紙の水分率を75%とした以外は、実施例1と同様にして坪量403g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0069】
(実施例10)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.036質量%、湿紙の水分率を75%とした以外は、実施例1と同様にして坪量399g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0070】
(実施例11)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール60質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール40質量部とし、前記グラスウール100質量部に対して更に繊維径13μm、繊維長6mmのガラスチョップド繊維(Cガラス、ジョンズマンビル社製)10質量部を配合し、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を64%とした以外は、実施例1と同様にして坪量398g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0071】
(実施例12)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール60質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール40質量部とし、前記グラスウール100質量部に対して更に繊維径1.7dtex(推定径12.5μm)、繊維長5mmの芯鞘タイプ熱溶融型バインダー繊維(芯:ポリエステル繊維、鞘;変性ポリエステル繊維、帝人ファイバー社製)10質量部を配合し、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を64%とした以外は、実施例1と同様にして坪量397g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0072】
(実施例13)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、パルパーを通常回転数の75%減となるよう、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を設定した条件とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を64%とした以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0073】
(実施例14)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒を硫酸無添加とし、傾斜型抄紙機で連続抄紙して得た水分率67%の湿紙に対し硫酸濃度0.013質量%の硫酸水溶液を含浸し湿紙の水分率を70%とした以外は、実施例1と同様にして坪量401g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0074】
(実施例15)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.059質量%とし、傾斜型抄紙機で連続抄紙して得た水分率68%の湿紙に対し、硫酸無添加の水のみを含浸し湿紙の水分率を72%とした以外は、実施例1と同様にして坪量401g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0075】
(実施例16)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、パルパーを通常回転数の25%減となるよう、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を設定した条件とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量398g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0076】
(実施例17)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、パルパーを通常回転数(0%減)となるよう、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を設定した条件とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を68%とした以外は、実施例1と同様にして坪量399g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0077】
(実施例18)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール70質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール30質量部、離解用パルパーに投入する水系分散媒を硫酸無添加とし、原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.036質量%、湿紙の水分率を72%とした以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0078】
(実施例19)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール70質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール30質量部、離解用パルパーに投入する水系分散媒の硫酸濃度を0.0048質量%、原料スラリーを希釈する水系分散媒を硫酸無添加とし、湿紙の水分率を67%とした以外は、実施例1と同様にして坪量398g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0079】
(実施例20)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール70質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール30質量部、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.0048質量%、傾斜型抄紙機で連続抄紙して得た水分率67%の湿紙に対し硫酸濃度0.022質量%の硫酸水溶液を含浸し湿紙の水分率を72%とした以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0080】
(比較例1)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール40質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール60質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.008質量%、湿紙の水分率を64%とした以外は、実施例1と同様にして坪量401g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0081】
(比較例2)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール20質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール80質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.0049質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量398g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0082】
(比較例3)
実施例1において、平均繊維径0.80μmのグラスウール100質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.0049質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量397g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0083】
(比較例4)
実施例1において、平均繊維径1.88μmのグラスウールラウシャ社製、銘柄C-18-F)100質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.0049質量%、湿紙の水分率を73%とした以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0084】
(比較例5)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.003質量%、湿紙の水分率を69%とした以外は、実施例1と同様にして坪量403g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0085】
(比較例6)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.003質量%、湿紙の水分率を55%とした以外は、実施例1と同様にして坪量402g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0086】
(比較例7)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径0.80μmのグラスウール100質量部とし、パルパーを通常回転数の25%減となるよう、モーターとパルパー羽回転軸とのプーリー比を設定した条件とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒の硫酸濃度を0.0049質量%、湿紙の水分率を60%とした以外は、実施例1と同様にして坪量398g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0087】
(比較例8)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール80質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール20質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒への硫酸を無添加とし、湿紙の水分率を66%とした以外は、実施例1と同様にして坪量401g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0088】
(比較例9)
実施例1において、繊維配合を平均繊維径2.44μmのグラスウール20質量部および平均繊維径0.80μmのグラスウール80質量部とし、離解用パルパーに投入する水系分散媒と原料スラリーを希釈する水系分散媒への硫酸を無添加とし、湿紙の水分率を63%とした以外は、実施例1と同様にして坪量400g/m2のガラス繊維シートを得た。
【0089】
各実施例及び比較例で得られたガラス繊維シートについて、以下に示す方法により各特性の測定を行った。結果を表1~表3に示す。
(1)坪量 : 試料質量を試料面積で除して得た。
(2)厚さ : 電池工業会規格SBA S 0401:1998に準じて、試料をその厚み方向に20kg/100cm2の荷重で押圧した状態で測定した。
(3)吸液度 : 電池工業会規格SBA S 0406:2005に準じて、ガラス繊維シートの抄紙機流れ方向、および直角方向が長手方向となるよう、各々シートから幅30mm、長さ150mmの試験片をサンプリングして吸液度を測定した。硫酸は比重1.300(20℃)のJIS K 1321:1994「硫酸」に規定する精製希硫酸を用いた。測定値は抄紙機流れ方向と直角方向のデータの平均値とした。吸液度が35mm/分以上を実用レベル、吸液度が35mm/分未満を実用不適レベルと判定した。
(4)折り曲げ加工適性 : ガラス繊維シートの抄紙機流れ方向に対して直角方向が長手方向となるよう、シートから幅100mm、長さ150mmの試験片をサンプリングした。このシートの長手方向中央部にシート長手方法に対して直角となるよう厚さ2mmの板を当て、180°折り曲げた。折り曲げ部に亀裂がないものを〇、一部細かい亀裂が見られるものを△、大きな亀裂が多く見られるものを×とし、〇、△を合格(実用レベル)、×を不合格(実用不適レベル)と判定した。
(5)シート中の硫酸イオン量 : [方法1]により測定した。
(6)沈降容積 : [方法3]により測定した。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表1~表3の結果から明らかなように、実施例1~20で得られたガラス繊維シートは、吸液度が高く、折り曲げ加工適性も合格レベルであり、本願発明の効果が見られた。一方、比較例1~4、7では、シート中の硫酸イオン量を70mg/kg以上としたため、折り曲げ加工適性が良好であったが、平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールをグラスウールに対して50質量%以上含有させなかったため、吸液度が35mm/分未満と低く、不合格レベルとなった。比較例5,6,8では、平均繊維径2.4μm以上の6.0μm以下の第1グラスウールをグラスウールに対して50質量%以上含有させたため、吸液度が35mm/分以上と高かったが、シート中の硫酸イオン量が70mg/kg未満としたため、折り曲げ加工適性が悪化し不合格レベルとなった。比較例9では、シート中の硫酸イオン量が70mg/kg未満であっても折り曲げ加工適性は良好であったが、平均繊維径2.4μm以上6.0μm以下の第1グラスウールをグラスウールに対して50質量%以上含有させなかったため、吸液度が35mm/分未満と低く、不合格レベルとなった。