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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】鋏
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/16 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B26B13/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020147494
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042191
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503200361
【氏名又は名称】株式会社イチネンアクセス
(73)【特許権者】
【識別番号】509293040
【氏名又は名称】日崟興業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】河原 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】何 智文
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-119266(JP,U)
【文献】国際公開第2005/060732(WO,A1)
【文献】特開2017-113527(JP,A)
【文献】実公昭02-011293(JP,Y1)
【文献】実開昭59-078014(JP,U)
【文献】特開2002-095875(JP,A)
【文献】実開昭58-100769(JP,U)
【文献】特開2020-039297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端に第1柄部が設けられ、他方端に第1刃が設けられた第1刃体と、
一方端に第2柄部が設けられ、他方端に第2刃が設けられた第2刃体と、
前記第1柄部と前記第1刃との間、及び、前記第2柄部と前記第2刃との間で、前記第1刃体と、前記第2刃体とを交差させて回動可能に連結する連結部と、
前記第1柄部と前記第2柄部との間隔を拡げる方向に力を付与する拡開部と、
前記第1柄部と前記第2柄部とを一定の間隔に保持するストッパ部と、
を備える、鋏であって、
前記ストッパ部は、
前記第1柄部に設けられ、前記第1柄部及び前記第2柄部の開閉方向を含む平面の法線方向に突出した、凸部と、
前記第2柄部に設けられ、一端に設けられた前記法線方向に沿った回転軸部と、他端に設けられた、前記法線方向から視て、前記凸部を収容可能に切り欠いた切り欠き部と、前記回転軸部と前記切り欠き部との間に設けられた案内部と、を有し、前記回転軸部を中心に回転自在なフック部と、
を有し、
前記凸部が前記切り欠き部内に位置した場合に、前記第1柄部と前記第2柄部との間隔が広がる移動を抑止し、前記凸部が前記切り欠き部外に位置した場合に、前記移動を可能とし、
前記凸部が前記切り欠き部内に位置している状態で、前記第1柄部と前記第2柄部との間隔を狭くすると、前記凸部が前記案内部に接触して、前記フック部が前記回転軸部を中心に回転して、前記凸部を前記切り欠き部外に位置させる、
鋏。
【請求項2】
前記フック部は、前記法線方向に突出した突出部、を有している、
請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
前記拡開部はバネである、
請求項1又は請求項2に記載の鋏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、又は板等を切断する作業工具である鋏には、作業者による、一対の柄部(グリップ)の開操作を省略化して操作性を向上させるために、バネ又は磁石により一対の柄部それぞれの間隔を拡げる方向に力を付与したものがある。この種の鋏は、平時で、刃が開いた状態となるため、収納したり、持ち運んだりする際には刃を閉じた状態にする機構が備えられていることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、一対の柄部の開放を阻止する公知のロックレバーが開示されている。特許文献1に記載のロックレバーは、一方の柄部の基端に設けられていて、柄部を閉じた状態で、他方の柄部の基端に引っ掛けることで、一対の柄部が開かないようにロック状態としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2005/060732号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のロックレバーは、ロック状態から解除する場合、一度柄部を強く握った後、引っ掛けた柄部から取り外すようになっている。このとき、このロックレバーは、片手では解除することが難しい。特許文献1には明記されていないものの、図面(特許文献1の図1)を参照して、柄部の基端及びロックレバーそれぞれの形状を考慮すると、ロックレバーは、一対の柄部を強く握っただけでは、柄部の基端の引っ掛かりが外れない構成となっている。このため、例えば、右手で一対の柄部を強く握った場合、左手でロックレバーの引っ掛かりを外す必要があり、作業効率が低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、刃を閉じたロック状態を片手で容易に解除することができる鋏を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を鑑み、本発明は、
一方端に第1柄部が設けられ、他方端に第1刃が設けられた第1刃体と、
一方端に第2柄部が設けられ、他方端に第2刃が設けられた第2刃体と、
前記第1柄部と前記第1刃との間、及び、前記第2柄部と前記第2刃との間で、前記第1刃体と、前記第2刃体とを交差させて回動可能に連結する連結部と、
前記第1柄部と前記第2柄部との間隔を拡げる方向に力を付与する拡開部と、
前記第1柄部と前記第2柄部とを一定の間隔に保持するストッパ部と、
を備える、鋏であって、
前記ストッパ部は、
前記第1柄部に設けられ、前記第1柄部及び前記第2柄部の開閉方向を含む平面の法線方向に突出した、凸部と、
前記第2柄部に設けられ、一端に設けられた前記法線方向に沿った回転軸部と、他端に設けられた、前記法線方向から視て、前記凸部を収容可能に切り欠いた切り欠き部と、前記回転軸部と前記切り欠き部との間に設けられた案内部と、を有し、前記回転軸部を中心に回転自在なフック部と、
を有し、
前記凸部が前記切り欠き部内に位置した場合に、前記第1柄部と前記第2柄部との間隔が広がる移動を抑止し、前記凸部が前記切り欠き部外に位置した場合に、前記移動を可能とし、
前記凸部が前記切り欠き部内に位置している状態で、前記第1柄部と前記第2柄部との間隔を狭くすると、前記凸部が前記案内部に接触して、前記フック部が前記回転軸部を中心に回転して、前記凸部を前記切り欠き部外に位置させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、刃を閉じたロック状態を片手で容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の鋏を示す図である。
図2図2は、フック部の平面視図である。
図3図3は、フック部の斜視図である。
図4図4は、切り欠き部に凸部が位置した状態の鋏を示す図である。
図5図5は、切り欠き部から凸部が外れた状態の鋏を示す図である。
図6図6は、フック部が凸部に干渉する場合の、フック部の動作を説明するため図である。
図7図7は、ロック状態から、凸部を回転軸部側へさらに近づけた状態の鋏を示す図である。
図8図8は、凸部を回転軸部側へさらに近づけたときのストッパ部の動作を順に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施形態の鋏1を示す図である。図1は、鋏1を開いた状態を示す。鋏1は、例えば、鉄板などを切ることができる金切り鋏である。
【0011】
鋏1は、第1刃体11と、第2刃体12とを備えている。第1刃体11の一方端には第1刃111が設けられ、他方端には第1柄部112が設けられている。また、第2刃体12の一方端には第2刃121が設けられ、他方端には第2柄部122が設けられている。第1柄部112と、第2柄部122とで、鋏1のグリップを形成している。
【0012】
第1刃体11と第2刃体12とは、第1刃111と第1柄部112との間、及び、第2刃121と第2柄部122との間で交差して、ボルト(連結部)13で連結されている。また、第1刃体11と第2刃体12とは、ボルト13を中心に回転可能であって、第1柄部112と第2柄部122とを近づけることで、第1刃111と第2刃121とは近づき、第1柄部112と第2柄部122とを離すことで、第1刃111と第2刃121とは離れるようになっている。
【0013】
以下、第1柄部112と第2柄部122とが離れる方向、及び、第1刃111と第2刃121とが離れる方向を開刃方向と言う。また、第1柄部112と第2柄部122とが近づく方向、及び、第1刃111と、第2刃121とが近付く方向を閉刃方向と言う。さらに、第1刃111と第2刃121とが接触した状態を閉刃状態と言い、第1刃111と第2刃121とが離れた状態を開刃状態と言う。
【0014】
鋏1はバネ14を備えている。バネ14は、第1柄部112と、第2柄部122との間に設けられている。バネ14は、第1柄部112と第2柄部122との間隔を拡げる方向(開刃方向)へ力を付与する拡開部である。換言すれば、バネ14が略自然長のときに、第1柄部112と第2柄部122とが離れるようにしてある。これにより、鋏1は、平時で開刃状態となり、第1柄部112と第2柄部122とが作業者に握られて、閉刃方向へ移動させられることで、閉刃状態となる。
【0015】
鋏1は、閉刃状態で第1柄部112と第2柄部122とを一定の間隔に保持するストッパ部17とを備えている。ストッパ部17は、凸部15と、フック部16とを有している。
【0016】
凸部15は、第1柄部112に設けられている。凸部15は円柱形状であって、開刃方向及び閉刃方向を含む平面の法線方向(図1の紙面法線方向)に突出している。凸部15は、第1柄部112の長さ方向の中央位置より第1刃111側に位置している。以下では、この法線方向から視ることを、平面視という。
【0017】
図2は、フック部16の平面視図である。図3は、フック部16の斜視図である。
【0018】
フック部16は、略平板状のフック本体部160の一方端に設けられた貫通孔(図示省略)を軸中心とした回転軸部161を有している。フック部16は、この回転軸部161の部分で、第2柄部122に例えばリベット又はボルトなどで連結されていて、回転軸部161を中心に回転可能となっている。回転軸部161は、第2柄部122の長さ方向の中央位置より第2刃121側に位置している。
【0019】
フック部16は、フック本体部160の他方端に切り欠き部162を有している。切り欠き部162は、平面視で、凸部15よりも大きな円弧状である。鋏1が閉刃状態となったとき、この切り欠き部162の内側に、開放した側から凸部15が入り込むことができるようになっている。閉刃状態となったとき、バネ14の押圧力により第1柄部112及び第2柄部122は開刃方向へ移動しようとするが、凸部15が切り欠き部162に位置することで、移動が阻止される。これにより、鋏1は閉刃状態が維持されるようになる。以下、移動が阻止される状態を、ロック状態と言う。
【0020】
フック部16は、回転軸部161と切り欠き部162との間に案内部163を備えている。案内部163は、回転軸部161の中心と切り欠き部162の中心とを結ぶ直線A上に位置していて、平面視で、切り欠き部162の開放側と一続きに形成されている。また、案内部163は、切り欠き部162から回転軸部161に向かって、直線Aに対して傾斜している。案内部163は、直線状に傾斜していてもよいし、湾曲状に傾斜していてもよい。
【0021】
詳しくは後述するが、鋏1がロック状態の場合、作業者が第1柄部112及び第2柄部122を握って閉刃方向へ移動させ、凸部15が回転軸部161側へさらに近づくと、案内部163は、凸部15と接触して切り欠き部162を凸部15から離れる方向へ案内する。これにより、切り欠き部162が凸部15から外れるようになり、ロック状態が解除されるようになる。
【0022】
また、フック部16の切り欠き部162側の端部164は、切り欠き部162の開放側に向かって直線Aに対して傾斜している。端部164は、直線状に傾斜していてもよいし、湾曲状に傾斜していてもよい。詳しくは後述するが、端部164は、鋏1を開刃状態から閉刃状態にする際に凸部15と接触すると、切り欠き部162を凸部15から離れる方向へ案内する。
【0023】
さらに、フック部16は、法線方向(図1の紙面法線方向)に突出した突出部165を備えている。突出部165は、平板状のフック部16の側面に設けられている。突出部165の形状及び形成位置は特に限定されず、切り欠き部162及び案内部163が形成されたフック部16の平面部分よりも、法線方向に突出していればよい。詳しくは後述するが、突出部165は、作業者がフック部16を回転軸部161を中心に回転させる際に、作業者の指を引っ掛ける部位である。
【0024】
このように構成されたフック部16は、作業者が第1柄部112及び第2柄部122を握って閉刃方向へ移動させ、回転軸部161と凸部15との距離が所定距離L1となったとき、回転軸部161を中心に回転することで、凸部15を切り欠き部162内に位置させ(図4)、又は、凸部15を切り欠き部162から外す(図5)ことができるようになっている。凸部15が切り欠き部162に位置した状態では、第1柄部112と第2柄部122との間隔が広がる移動が抑止される。また、凸部15が切り欠き部162外に位置した状態では、第1柄部112と第2柄部122との間隔が広がる移動が可能となる。図4は、切り欠き部162に凸部15が位置した状態の鋏1を示す図である。図5は、切り欠き部162から凸部15が外れた状態の鋏1を示す図である。
【0025】
以下に、作業者による鋏1をロック状態にする方法について説明する。
【0026】
作業者は、第1柄部112及び第2柄部122を握って、鋏1を開刃状態から閉刃状態にする。回転軸部161と凸部15との距離が所定距離L1となったときに、作業者は回転軸部161を中心にフック部16を回転させて、凸部15を切り欠き部162内に位置させる。このとき、作業者は、突出部165に指を掛けることで、フック部16の回転作業を行いやすくなる。例えば、作業者が右手の母指球で第1柄部112を、右手の人差し指から小指までで第2柄部122を握っている場合、右手の親指がストッパ部17に位置するようになるので、その親指を突出部165に引っ掛けつつフック部16を回転させる。この場合、突出部165がない場合と比べて、指が滑ってフック部16を回転させやすくなる。これにより、作業者は、片手で鋏1をロック状態にすることができる。
【0027】
なお、鋏1を開刃状態から閉刃状態にする場合、フック部16が凸部15とが干渉することがある。図6は、フック部16が凸部15に干渉する場合の、フック部16の動作を説明するため図である。図6(A)に示すように、鋏1を開刃状態から閉刃状態にする際に、フック部16が凸部15に接触することがある。この場合、凸部15が回転軸部161側にさらに近づくと、図6(B)に示すように、フック部16は、傾斜した端部164が、凸部により押されて、回転軸部161を中心に回転するようになる。その結果、図6(C)に示すように、フック部16を回転させることで、凸部15が切り欠き部162に位置することができる状態となる。このように、ロック状態にするために、第1柄部112及び第2柄部122を閉刃方向へ移動させる前に、作業者は、フック部16を回転させて、フック部16の位置をずらす必要がない。
【0028】
次に、作業者による鋏1のロック状態の解除方法について説明する。図7は、ロック状態から、凸部15を回転軸部161側へさらに近づけた状態の鋏1を示す図である。図8は、凸部15を回転軸部161側へさらに近づけたときのフック部16の動作を順に示す図である。
【0029】
図8(A)は、鋏1がロック状態の場合であって、回転軸部161と凸部15との距離が所定距離L1であり、凸部15が切り欠き部162に位置している。この状態から、作業者は、第1柄部112及び第2柄部122を握って閉刃方向へさらに移動させる。凸部15が回転軸部161側へさらに近づくと、図8(B)に示すように、凸部15が案内部163に接触するようになる。案内部163は、直線A(図2参照)に対して傾斜している。凸部15は回転軸部161側へさらに近づくと、この傾斜部分を押して、フック部16を、回転軸部161を中心に回転させる。そして、図8(C)に示すように、回転軸部161と凸部15との距離が所定距離L2(L2<L1)となると、切り欠き部162が、回転軸部161と凸部15とを結ぶ直線B上から外れるまで移動する。この状態で、第1柄部112及び第2柄部122を開刃方向へ移動させることで、凸部15は切り欠き部162に引っ掛かることなく回転軸部161から離れて、鋏1を開刃状態とすることができる。
【0030】
以上のように、ロック状態から解除する場合、凸部15が回転軸部161に近づくように、第1柄部112及び第2柄部122を閉刃方向へ移動させることで、フック部16の切り欠き部162を、凸部15から外すことができる。つまり、作業者は、第1柄部112及び第2柄部122を握っている手と同じ手で、ロック状態の解除を行うことができる。
【0031】
なお、第1柄部112と第2柄部122とを互いに反対方向へ力を付与する拡開部を、バネ14として説明したが、磁石の磁力を利用して第1柄部112と第2柄部122とを互いに反対方向へ押圧するようにしてもよい。また、案内部163の形状は、特に限定されない。案内部163は、回転軸部161と切り欠き部162との間であって、平面視で、切り欠き部162の開放側と一続きに形成されていればよく、接触した凸部15に押されることで、凸部15と回転軸部161とを結ぶ直線B(図8参照)上から外れる位置まで、切り欠き部162を案内する形状であればよい。
【符号の説明】
【0032】
1 鋏
11 第1刃体
12 第2刃体
13 ボルト
14 バネ
15 凸部
16 フック部
17 ストッパ部
111 第1刃
112 第1柄部
121 第2刃
122 第2柄部
161 回転軸部
162 切り欠き部
163 案内部
164 端部
165 突出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8