IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社LIXILグループの特許一覧

<>
  • 特許-浴槽装置 図1
  • 特許-浴槽装置 図2
  • 特許-浴槽装置 図3
  • 特許-浴槽装置 図4
  • 特許-浴槽装置 図5
  • 特許-浴槽装置 図6
  • 特許-浴槽装置 図7
  • 特許-浴槽装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】浴槽装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/20 20060101AFI20240312BHJP
   A47K 3/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61H 9/00 20060101ALI20240312BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A47K3/20
A47K3/02
A61H9/00
A47K3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020155264
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049187
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】西澤 研一
(72)【発明者】
【氏名】今村 竜太
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳彦
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170463(JP,A)
【文献】特開2019-122608(JP,A)
【文献】特開平09-056621(JP,A)
【文献】特開平08-256929(JP,A)
【文献】特開2016-083255(JP,A)
【文献】特開2007-135638(JP,A)
【文献】実開平07-017185(JP,U)
【文献】特開2003-153975(JP,A)
【文献】特開2002-143255(JP,A)
【文献】特開2008-212405(JP,A)
【文献】特開2022-047841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/02-4/00
A47K 3/00
A61H 7/00-15/00
A61H 23/00
A61H 33/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体と、
前記浴槽本体の上縁面に配置される吐水装置と、を備え、
前記浴槽本体の内壁面は、前記内壁面の上部を構成し前記吐水装置に向けて傾斜する背もたれ部を有し、
上下方向における前記背もたれ部の中央よりも上側の部分は、水平方向における断面が、曲率半径で600mm以上2000mm以下の円弧に形成された曲面を有し、
上下方向における前記背もたれ部の中央よりも下側の部分は、水平方向における断面が、前記背もたれ部の前記上側の部分の曲率半径よりも小さい曲率半径の円弧に形成された曲面を有し、
前記背もたれ部は、上下方向における断面が、曲率半径で600mm以上10000mm以下の円弧に形成された曲面を有する浴槽装置。
【請求項2】
前記浴槽本体の内壁面は、底面部と、前記底面部から上側へ延びる底部立面部と、前記背もたれ部と前記底部立面部とを接続する下部接続部と、を更に有し、
前記下部接続部の下端は、前記底面部の上側の100mm以上300mm以下に位置している請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記背もたれ部は、前記上縁面と平行な仮想線に対して40°以上80°以下の角度をなす請求項1又は請求項2に記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記浴槽本体の内部へ吐水する第1吐水口と、
前記第1吐水口とは異なる位置に形成され、前記浴槽本体の内部へ吐水する第2吐水口と、を備え、
前記第1吐水口は、使用者の肩に向けて吐水し、
前記第2吐水口は、前記使用者の首に向けて吐水する、請求項1~請求項3のいずれかに記載の浴槽装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入浴中の使用者の頭部を支持するヘッドレストが設けられている浴槽が知られている。例えば浴槽本体に対するヘッドレストが装着される位置を可変とする構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-065457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、浴槽の上縁面に吐水装置を設け、入浴中の使用者の肩に対して吐水する技術は知られている。これに加えて、マッサージ効果を発揮するように首への吐水を行う場合には、吐水を効果的に行うために、枕に頭を置いた入浴姿勢で首へ吐水するだけでなく、頭を枕から離したやや起き上がる姿勢で、肩甲骨の間に吐水を当てるなど、自由な入浴姿勢を取りやすい浴槽形状が望ましい。
【0005】
現行の浴槽では、頭を枕(ヘッドレスト)に置いた入浴姿勢が最も快適となるように設計されている。沈み込む・起き上がるといった入浴中の動作に対しても快適に入浴できる形状とはなっていない。
【0006】
本開示は、沈み込む・起き上がるといった入浴中の動作に対しても快適に入浴できる浴槽装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、浴槽本体と、前記浴槽本体の上縁面に配置される吐水装置と、を備え、前記浴槽本体の内壁面は、前記内壁面の上部を構成し前記吐水装置に向けて傾斜する背もたれ部を有し、上下方向における前記背もたれ部の中央よりも上側の部分は、水平方向における断面が、曲率半径で600mm以上2000mm以下の円弧に形成された曲面を有し、上下方向における前記背もたれ部の中央よりも下側の部分は、水平方向における断面が、前記背もたれ部の前記上側の部分の曲率半径よりも小さい曲率半径の円弧に形成された曲面を有し、前記背もたれ部は、上下方向における断面が、曲率半径で600mm以上10000mm以下の円弧に形成された曲面を有する浴槽装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の浴槽装置を示す斜視図である。
図2】本実施形態の浴槽装置の部分縦断面図である。
図3】本実施形態の浴槽装置の吐水装置の分解斜視図である。
図4】本実施形態の浴槽装置の部分平面図である。
図5】本実施形態の浴槽装置の斜視図である。
図6】本実施形態の浴槽装置の枕部に、使用者の頭部を載せている様子を示す部分断面図である。
図7】本実施形態の浴槽装置の下部接続部に、使用者の腰を当接している様子を示す部分断面図である。
図8】本実施形態の浴槽装置の容器本体の上縁部の平坦面が境界線を有している様子を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、浴槽装置100は、浴槽本体110及び吐水装置1を有し、入浴中に使用者の首や肩等に吐水を行うことが可能な装置である。
【0010】
浴槽本体110は、上部が開口した略直方体の形状を有し、湯水を貯水可能に形成される。浴槽本体110は、底面部111と、側壁部112と、底部立面部113と、背もたれ部115と、下部接続部116と、上縁面120と、を有する。底面部111は、略長方形で四隅が湾曲している。底面部111には、排水口(図示省略)が形成される。
【0011】
側壁部112は、底面部111の四周から上方に延び、所定の厚みを有する。側壁部112のうち、浴槽本体110の一対の短手方向の側縁で、吐水装置1が設けられる側を背側側壁部112aと言う。本明細書の説明において、浴槽装置100の長手方向に平行に、且つ、枕部2が奥側となるように吐水装置1を見た方向を正面とし、正面視において左右を結ぶ方向を吐水装置1の幅方向と言う。幅方向に直交する方向(浴槽装置100の長手方向)を吐水装置1の前後方向と言い、図1における左上から右下へ向かう方向を前方向と言い、その反対方向を後方向と言う。
【0012】
側壁部112における浴槽本体110の内側の面は、内壁面1120である。図1及び図4に示すように、内壁面1120における中央側は浴槽本体110の外側へ緩く膨出するように緩く湾曲している。背側側壁部112aにおける内壁面1120の上端は、平面視で湾曲している。
【0013】
底部立面部113は、背側側壁部112aの内壁面1120の下部に形成される。下部接続部116は、底部立面部113の上部と背もたれ部115と間の、背側側壁部112aの内壁面1120の部分に形成される。背もたれ部115は、背側側壁部112aの内壁面1120の上部に形成される。
【0014】
上縁面120は、浴槽本体110の上端から四周の外側へ延出する部分である。上縁面120は、平坦面1201により構成されており、外側から浴槽本体110側に向かって排水勾配が形成されている。
【0015】
吐水装置1は、浴槽装置100の上縁面120に配置される。詳細には、吐水装置1は、背側側壁部112a側の上部に形成され平坦面1201により構成された上縁面120の上に配置される。吐水装置1は、枕部2と、本体部3(図3参照)と、ベースプレート4(図3参照)と、給水機構5(図2図3参照)と、を有する。
【0016】
本体部3は、図3に示すように、枕部2の下方内部に配置され、浴槽本体110に湯水を吐水する機構を備える。本体部3は、幅方向に延びる横長の形状を有する。本体部3は、第1吐水口31と、一対の第2吐水口32と、上ケース33と、下ケース34と、照明部としての照明装置35と、整流こま36と、フロントカバー37と、を有する。
【0017】
下ケース34は、上縁面120の上に固定され、本体部3の土台となる部分である。下ケース34は、上縁面120から上方に所定高さを有し、例えば本体部3の半分程度の高さを有する。図3に示すように、下ケース34は、凹部341と、前壁部342と、を有する。
【0018】
凹部341は、長円を半分に割ったような形状に形成され、下ケース34の上面で周囲よりも所定高さ低く形成された面である。凹部341の底面には、さらに高さの異なる段差が形成されている。凹部341は、傾斜部341aと、整流こま設置部341bと、給水機構接続部341cと、を有する。
【0019】
傾斜部341aは、凹部341の前方側が、凹部341の前後方向の略中央部から前端部まで上方に向かって傾斜する部分である。すなわち、凹部341の前方側は、下方から上方へ向かって傾斜する平坦な面に形成される。傾斜部341aは、後述する上ケース33の支持部332の下面に隙間を空けて対向して配置される。
【0020】
整流こま設置部341bは、凹部341の後方側に配置される。整流こま設置部341bは、凹部341の底面から突出するリブ341dによって凹部341の他の部分と区切られる部分であり、後述する整流こま36がリブ341dの後方に固定される。
【0021】
給水機構接続部341cは、凹部341の幅方向中央かつ後方側に形成される。給水機構接続部341cは、凹部341の底面の他の部分よりもより低く窪んでおり、概ね上部が開口した直方体状に窪んでいる。給水機構接続部341cの幅方向中央側には、後述する給水機構5の第1給水ホース51を接続可能な円筒状の突起が下方に向かって突出している。
【0022】
前壁部342は、下ケース34の前壁を形成する部分であり、後述する枕部2の前側に配置される。前壁部342は、凹部341の底面から下方に延び、上縁面120を覆うように浴槽本体110の内壁面1120側へ突出する。前壁部342は、下ケース34の幅方向の一方から他方まで延びる横長の形状を有する。前壁部342は、浴槽本体110の内壁面1120の湾曲形状に沿って湾曲している。前壁部342は、前壁部せり出し部3421と、立面部3422と、を有する。
【0023】
前壁部せり出し部3421は、前壁部342の中央部側よりも端部側が内壁面1120に向かってせり出して形成されている。言い換えれば、図3に示すように、前壁部せり出し部3421は、端部側の方が中央部側よりも平面視で内壁面1120側に突出しており、突出する内壁面1120側の面が、中央部側から連続的に湾曲し、中央部側から端部側に向かうにしたがって徐々に内壁面1120に向かってせり出している。前壁部せり出し部3421は、上部側より下部側が前方の内壁面1120側へ近くなるように傾斜している。側面視で、前壁部せり出し部3421は概ね三角形のようであり、前面が緩く外側に凸となるように湾曲している。前壁部せり出し部3421には、表面に凹凸を形成したシボ加工がなされている。前壁部せり出し部3421は、ざらざらとした表面を有し、表面に形成された凹部と凸部の高低差が低い。これにより、後述する照明装置35から光が照射されても、反射によって眩しくなることを防止することができる。
【0024】
立面部3422は、前壁部せり出し部3421の上端から上下方向に延びる部分である。立面部3422は、前壁部せり出し部3421の上端と後述する第1吐水口31の下端との間で少なくとも1mm以上の長さ上方に起立する背の低い壁状の部分である。
【0025】
整流こま36は、凹部341の上に取り付けられる。整流こま36は、下ケース34に沿って横長に形成され、凹部341側に向かって開口するとともに上面が閉じた蓋のような縦断面視略コの字形状を有する。整流こま36は、整流部361と、接続蓋部362と、水抜き孔363と、を有する。
【0026】
整流部361は、縦断面視略コの字状の横長の部分が、本体部3の幅方向に沿って、二つ並んで配置される。凹部341に接する整流部361のそれぞれは、一対の側壁部361aと、上面部361bと、開口部361cと、を有する。一対の側壁部361aは、凹部341から上方へ起立し、整流こま36の前側と後側で互いに向き合うように配置される。前側と後側のそれぞれの側壁部361aは、整流こま36の幅方向の端部側で近づき、接続される。上面部361bは、一対の側壁部361a同士を接続し、上部に広がる平坦な面である。開口部361cは、上面部361bに形成される貫通孔であり、整流こま36の幅方向に沿って複数並んで形成される。
【0027】
接続蓋部362は、下ケース34の凹部341に設けられた給水機構接続部341cを覆うように蓋状に形成されるとともに、蓋状に形成された部分の後側の幅方向の中央部が後方に突出し、二つ並んだ整流部361を凹部341の底面側で接続する。二つ並んだ整流部361と接続蓋部362は、一体に形成されている。
【0028】
水抜き孔363は、二つ並ぶ整流部361同士の間で、接続蓋部362の後方に突出する部分に形成された貫通孔である。水抜き孔363は、接続蓋部362を貫通して形成され、下ケース34の凹部341の給水機構接続部341cの上方に位置する。水抜き孔363は、水を給水機構接続部341cへ通過させることができる。
【0029】
上ケース33は、下ケース34の上部に配置されるとともに、下ケース34の後部を覆うように取り付けられる。上ケース33は、カバー面331と、支持部332と、中空部333と、を有する。
【0030】
カバー面331は、本体部3の後方から、前後方向における中央部からやや手前まで延び、本体部3を覆う部分である。カバー面331は、本体部3の前端まで至らない。
【0031】
支持部332は、カバー面331の前端から下方に延び、屈曲して前方側へ突出する。支持部332は、本体部3の幅方向に沿って形成される。支持部332には、後述する照明装置35が取り付けられる。支持部332は、下ケース34の幅方向の一方から他方まで略直線状に延びる形状を有する。
【0032】
中空部333は、図2に示すように、上ケース33と下ケース34との間に形成される空間である。中空部333は、整流こま36の開口部361cを通って給水された湯水が流通する流路を構成する。
【0033】
照明装置35は、上ケース33の前方にスペーサー38を介して取り付けられる。照明装置35は、本体部3に沿う横長の形状を有し、吐水装置1の幅方向の一方から他方まで略直線状に延びる形状を有する。照明装置35は樹脂製のケースの内部に光源が配置されて形成され、第1吐水口31から吐水される湯水を照らすように配置される。
【0034】
フロントカバー37は、上ケース33の前端に上ケース33から連続するように取り付けられ、照明装置35の上部を覆う。フロントカバー37は、本体部3に沿う横長の形状を有し、吐水装置1の幅方向の一方から他方まで略直線状に延びる形状を有する。フロントカバー37は、本体部3の上部全面に、本体部3の幅方向に沿って取り付けられる。
【0035】
第1吐水口31は、図示しない給水源から湯水を供給され、浴槽本体110の内部へ吐水可能な開口である。第1吐水口31は、図2に示すように、上ケース33の支持部332の下面と、下ケース34の上面、すなわち凹部341の傾斜部341aとの間の細い溝により構成される。第1吐水口31は、上ケース33の支持部332が略直線状に形成されていることから、前壁部342の上方で吐水装置1の幅方向の一方から他方まで略直線状に形成されている。
【0036】
第1吐水口31の下端よりも下方に前壁部せり出し部3421の上端が位置している。第1吐水口31の下端と、前壁部せり出し部3421の上端との間は、上下方向に離れている。詳細には、前壁部せり出し部3421の上端から上方に立面部3422が形成されているので、この立面部の高さによって、第1吐水口31の下端と、前壁部せり出し部3421の上端とが離されている。このため、第1吐水口31から吐水された湯水が前壁部せり出し部3421に誘引されずに、前方の浴槽本体110の内壁面1120へ吐水される。
【0037】
第2吐水口32は、第1吐水口31とは異なる位置に形成され、浴槽本体110の内部に湯水を吐水可能な開口である。第2吐水口32は、第1吐水口31の下方に配置され、図3に示すように、本体部3における下ケース34の前壁部342に形成される。第2吐水口32は、第1吐水口31の下方で、前壁部342の幅方向中央側に、間を空けて二つ配置されている。第2吐水口32は、使用者の首に向けて吐水する吐水口である。第2吐水口32の内側には、第2吐水口32から吐出される水を波打つように発射するための首湯ユニット320が配置されている。首湯ユニット320は、下ケース34に取り付けられる。首湯ユニット320の前方の開口から吐出された湯水は、前壁部342に形成された開口である第2吐水口32を通って吐出されるように構成される。
【0038】
枕部2は、使用者の頭部を載せることが可能な高さを有し、上縁面120から凸となるように配置される。枕部2は、吐水装置1の外形を規定する部分であり、吐水装置1の他の要素を覆うように配置される。図1に示すように、枕部2は、吐水装置1の幅方向に沿う横長の形状である。枕部2は、浴槽本体110の内壁面1120の湾曲形状に沿って湾曲している。すなわち、図4に示すように、枕部2は、平面視で前方側から後方側へ向かって弧を形成するように湾曲する。さらに、枕部2は、正面視で上縁面120から上方に向かって弧を形成するように湾曲する。図2に示すように、枕部2は、浴槽装置100の側面から視た縦断面視では、上縁面120から後方に向かってなだらかに湾曲しながら延び、枕部2の前後方向の中心よりも後方側で最高点に達する。枕部2は、最高点から上縁面120の後方に向かって湾曲しながら下り傾斜する。枕部2の前方側の方が、後方側よりも傾斜が緩やかであり、この緩やかな傾斜面に頭部が載せられる。
【0039】
図2に示すように、枕部2の高さの最高点は、枕部2の幅方向の中央部21である。枕部2の中央部21とは、図4に示すように、幅方向の中心から一対の第2吐水口32までの部分を指す。中央部21は、枕部2のうちで高さが最も高くなるように形成されている。中央部21に使用者の頭部が載せられることで、首の付け根から頭部の背面を枕に載せやすくなる。そして、使用者の頭部の位置が上記の範囲に規定されることにより、肩や首等の適切な位置に吐水を行うことができる。
【0040】
枕部2は、幅方向の端部に枕部せり出し部22を有する。枕部せり出し部22は、中央部側よりも端部側が内壁面1120に向かってせり出すように突出して形成される。言い換えれば、図4に示すように、枕部せり出し部22は、幅方向の端部側の方が中央部側よりも平面視で内壁面1120側に突出している。枕部せり出し部22の前方側の端部は、前壁部せり出し部3421の前方側の端部よりも内壁面1120に近い前方側に位置している。枕せり出し部22の前方端部は、内壁面1120の上端から離れて上縁面120の後方側に位置している。
【0041】
ベースプレート4は、図3に示すように、本体部3の下面と浴槽装置100の上縁面120との間に配置され、本体部3を固定するための板状の部材である。
【0042】
給水機構5は、外部の給水源から本体部3に接続される第1給水ホース51、第2給水ホース52、ポンプ及び弁等(図示省略)を有する。第1給水ホース51は、上縁面120の裏側を介して本体部3の下方に接続され、第1吐水口31から吐水される湯水を供給される。第2給水ホースは、同様に本体部3の下方に接続される。第2給水ホース52は、首湯ユニット320に接続され、第2吐水口32から吐水される湯水を供給する。
【0043】
次に、浴槽本体110の背側側壁部112aについて、詳細に説明する。浴槽本体110の背側側壁部112aの部分においては、底面部111、底部立面部113、下部接続部116、背もたれ部115、浴槽本体110の上縁面120は、互いに一体成形されることによりこの順で下から上へ向かって接続されている。具体的には、底部立面部113は、底面部111から垂直に上側へ延びており、底部立面部113の上端部は、下部接続部116によって背もたれ部115の下端部に接続されている。背もたれ部115の上端部は、浴槽本体110の上縁面120に接続されている。即ち、背もたれ部115は、背側側壁部112aの内壁面1120が、底面部111から所定高さ上方に延びた位置から後方側の吐水装置1に向けて傾斜することで形成されている。
【0044】
図5に示すように、上下方向における背もたれ部115の中央よりも上側の部分は、水平方向における断面が、曲率半径R1で600mm以上2000mm以下、好ましくは800mm以上1500mm以下の、後方向に凸となる円弧に形成された曲面を有しており、本実施形態においては、背もたれ部115の上部は、水平方向における断面が、曲率半径R1で1000mmの円弧に形成された断面の曲面を有している。曲率半径R1が600mmに満たない場合には、背中を背もたれ部115にもたれた際に肩がすぼまり、窮屈に感じる人がいるためである。800mm以上であれば、窮屈に感じる人はいないためである。曲率半径R1が2000mmを超える場合には、背中に当接する背もたれ部115の内面が直線に近づき形状的特徴が弱くなるためである。曲率半径R1が1500mm以下であれば、形状的特徴が明確になるためである。
【0045】
上下方向における背もたれ部115の中央よりも下側の部分は、水平方向における断面が、背もたれ部115の上側の部分の曲率半径R1よりも小さい曲率半径R2に形成された、後方向に凸となる曲面を有している。より具体的には、上下方向における背もたれ部115の中央よりも下側の部分は、水平方向における断面が、曲率半径R2で500mm以上1000mm以下の、後方向に凸となる円弧に形成された曲面を有しており、本実施形態においては、背もたれ部115の下部は、水平方向における断面が、曲率半径R2が500mmの円弧に形成された曲面を有している。曲率半径R2が500mmに満たない場合には、腰のおさまりが窮屈に感じる人がいるためである。例えば、ジェットバスとしてのジェットノズルを取り付ける場合には、図5において一点鎖線で示す丸の位置に取り付けるのであるが、このためには、この位置の水平方向における背側側壁部112aの断面が、曲率半径で1000mm以上の円弧に形成された曲面を有している必要がある。これに対して曲率半径R2は、この曲率半径よりも小さくする必要があるため、曲率半径R2を1000mm以下としたものである。
【0046】
背もたれ部115は、上下方向における断面が、曲率半径R3で600mm以上10000mm以下、好ましくは600mm以上1500mm以下の、後方向に凸となる円弧に形成された曲面を有しており、本実施形態においては、曲率半径R3で1000mmの円弧に形成された曲面を有している。曲率半径R3が600mmに満たない場合には、背中を背もたれ部115にもたれた際に背中が丸まり、体勢がきつくなりフィット感が悪いためである。曲率半径R3が10000mmを超える場合には、背中から腰にかけての部分に当接する背もたれ部115の内面が直線に近づくため、形状的特徴が弱くなるためである。曲率半径R3が1500mm以下であれば、背中から腰にかけての部分に当接する背もたれ部115の内面が直線というよりもむしろ曲線となるため、形状的特徴が明確になるためである。
【0047】
下部接続部116は、上下方向における断面が、前方向に凸となる円弧形状の曲面により構成されており、曲面の下端、即ち、下部接続部116の下端は、底面部111の上側の100mm以上300mm以下、好ましくは、200mm以上300mm以下に位置しており、本実施形態では、底面部111の上側の250mmに位置している。100mmに満たない場合には、例えば、ジェットバスとしてのジェットノズルを取り付ける場合には、ジェットノズルの吸水口を形成するカバーの上端を下部接続部116に収めることができなくなるためである。200mm以上であれば、ジェットノズルの吸水口を形成するカバーの上端を下部接続部116に収めることが可能である。300mmを超える場合には、前述のように上下方向における背もたれ部115の中央よりも下側の部分を、水平方向における断面が、上下方向における背もたれ部115の中央よりも上側の部分の曲率半径R1よりも小さい曲率半径R2の円弧に形成された曲面とした効果を得られなくなる高さとなってしまうため、より具体的には、上下方向における背もたれ部115の中央よりも下側の部分は、水平方向における断面が、曲率半径R2で500mm以上1000mm以下の円弧に形成された曲面とした効果を得られなくなる高さとなってしまうためである。下部接続部116は、水平方向における断面が円弧形状の曲面により構成されてもよく、または、水平方向における断面が直線状に構成されてもよい。
【0048】
図2に示すように、背もたれ部115は、浴槽本体110の上縁面120の平坦面1201と平行な仮想線に対して40°以上80°以下、好ましくは、50°以上80°以下の角度θ1で傾斜しており、本実施形態においては、65°の角度θ1で傾斜している。角度θ1が、40°に満たない場合には、これ以上寝かせる角度となると、寝浴浴槽となり、汎用的でなくなるためである。角度θ1が、50°以上であれば、寝浴浴槽との差異が明らかになり、汎用的であるためである。角度θ1が、80°を超える場合には、浴槽本体110を成形する際の抜き勾配に鑑みると、これ以上起こした角度とすることは困難であるためである。
【0049】
次に、浴槽本体110の上縁部について、詳細に説明する。図1等に示すように、浴槽本体110の上縁面120は、凹凸を有していない平坦面1201により構成されている。平坦面1201は、図8に示すように、浴槽本体110の内壁面1120に、上下方向における断面が、曲率半径が10mm以上の円弧形状の曲面により構成される接続部118により接続されている。平坦面1201の一部から接続部118を介して内壁面1120に至るまでの部分101と、それ以外の部分102とは、視覚的に異なって見える部分を構成している。
【0050】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態においては、上下方向における背もたれ部115の中央よりも上側の部分は、水平方向における断面が、曲率半径で600mm以上2000mm以下の円弧に形成された曲面を有し、上下方向における背もたれ部115の中央よりも下側の部分は、水平方向における断面が、背もたれ部115の前記上側の部分の曲率半径よりも小さい曲率半径の円弧に形成された曲面を有し、背もたれ部115は、上下方向における断面が、曲率半径で600mm以上10000mm以下の円弧に形成された曲面を有する。
【0051】
これにより、図6に示すように、沈み込んだ入浴中の動作の状態で、首へ吐水する場合に、安定して身体の肩まわりの部分を支えることが可能となる。更に、図7に示すように、起き上がった入浴中の動作の状態で、首吐水を首以外の肩甲骨の間等に当てたりする場合においても、身体の腰回りの部分を安定して支えることが可能となる。更に、このようなそれぞれの状態で身体を支えることが可能であるため、沈み込む・起き上がるといった入浴中の上下動作を容易とすることができる。図6は、浴槽装置100の枕部2に、使用者Pの頭部を載せている様子を示す部分断面図である。図7は、浴槽装置100の下部接続部116に、使用者Pの腰を当接している様子を示す部分断面図である。
【0052】
また、本実施形態においては、下部接続部116の下端は、底面部111の上側の100mm以上300mm以下に位置している。これにより、前述の効果をより確実に得ることが可能となる。また、ジェットバスとしてのジェットノズルを取り付ける場合には、ジェットノズルの吸水口を形成するカバーの上端を下部接続部116よりも下側に収めることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態においては、背もたれ部115は、上縁面120と平行な仮想線に対して40°以上80°以下の角度をなしている。これにより、寝浴浴槽との差異が明らかになり、且つ、浴槽本体110を成形する際の抜き勾配を担保することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態においては、浴槽本体110の内部へ吐水する第1吐水口と、第1吐水口とは異なる位置に形成され、浴槽本体110の内部へ吐水する第2吐水口と、を備え、第1吐水口は、使用者の肩に向けて吐水し、第2吐水口は、使用者の首に向けて吐水する。これにより、沈み込む・起き上がるといった入浴中の上下動作が容易であることと相まって、第1吐水口、第2吐水口からの吐水を身体の肩、首のみならず他の箇所に対しても行うことが可能となる。
【0055】
本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。例えば、浴槽本体の各部の構成、例えば、各部の寸法や形状等は、本実施形態における浴槽本体110の構成(各部の寸法や形状等)に限定されない。
また、上下方向における前記背もたれ部115の中央よりも上側の部分、及び、下側の部分は、水平方向における断面が円弧に形成された曲面を有していたが、この曲面は、水平方向における断面が1種類の曲率半径を有する1種類の円弧に形成された1種類の曲面に限定されない。例えば、上下方向における前記背もたれ部の中央よりも上側の部分、及び、下側の部分は、水平方向における断面が複数種類の曲率半径を有する複数種類の円弧に形成された複数種類の曲面を有していてもよく、また、水平方向における断面が円弧に形成された曲面と、水平方向における断面が直線に形成された平面とを有していてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 吐水装置、 31 第1吐水口、 32 第2吐水口、 100 浴槽装置、 120 上縁面、 101 第1の表面特徴、 102 第2の表面特徴、 110 浴槽本体、111 底面部、 113 底部立面部、 115 背もたれ部、 116 下部接続部、 118 接続部、 1120 内壁面、 1201 平坦面、 P 使用者、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8