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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】施工支援システムおよび施工支援方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240312BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
H04Q9/00 301Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020195622
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084048
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-12-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 道生
(72)【発明者】
【氏名】青木 浩章
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-022611(JP,A)
【文献】特開2016-132912(JP,A)
【文献】特開2020-020151(JP,A)
【文献】特開2012-113429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能を有する第1建設機械と、
複数用意される土砂置場又は複数用意される整地作業場所で作業する、オペレータが搭乗する第2建設機械とを備え、前記第1建設機械は、当該第1建設機械の待機位置に到着したことを前記第2建設機械に通知する第1通知部を備え、
前記第2建設機械は、
前記待機位置とは異なる所定位置に移動するように前記第1建設機械に指示する指示部と、
所定作業が完了したことを前記所定位置に移動した前記第1建設機械に前記第2建設機械から通知する第2通知部とを備え、
前記第1建設機械は、ダンプトラックであり、
前記第2建設機械は、バックホウ及びブルドーザであり、
前記第2建設機械が前記バックホウである場合、
前記待機位置は、土砂の積込みをするための積込み待機位置であり、
前記所定位置は、前記バックホウの滞在位置から前記バックホウのバケットが届く位置であり、
前記所定作業は、土砂の積込み作業であり、
前記第2建設機械が前記ブルドーザである場合、
前記待機位置は、土砂の荷卸しをするための荷卸し待機位置であり、
前記所定位置は、前記ブルドーザから所定距離だけ前方の位置であり、
前記所定作業は、土砂の荷卸し作業である、施工支援システム。
【請求項2】
自動運転機能を有する第1建設機械が当該第1建設機械の待機位置に到着したことを、複数用意される土砂置場又は複数用意される整地作業場所で作業する、オペレータが搭乗する第2建設機械に通知する工程と、
前記第2建設機械が、前記待機位置とは異なる所定位置に移動するように前記第1建設機械に指示する工程と、
前記第2建設機械が、所定作業が完了したことを、前記所定位置に移動した前記第1建設機械に通知する工程とを備え、
前記第1建設機械は、ダンプトラックであり、
前記第2建設機械は、バックホウ及びブルドーザであり、
前記第2建設機械が前記バックホウである場合、
前記待機位置は、土砂の積込みをするための積込み待機位置であり、
前記所定位置は、前記バックホウの滞在位置から前記バックホウのバケットが届く位置であり、
前記所定作業は、土砂の積込み作業であり、
前記第2建設機械が前記ブルドーザである場合、
前記待機位置は、土砂の荷卸しをするための荷卸し待機位置であり、
前記所定位置は、前記ブルドーザから所定距離だけ前方の位置であり、
前記所定作業は、土砂の荷卸し作業である、施工支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工支援システムおよび施工支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転を行う建設機械を用いた建設作業に関する技術開発が盛んである。例えば、施工作業において、ダンプトラックは、土砂の積込み位置と土砂の荷卸し位置を経由する経路を巡回するように自動運転し、土砂を運搬する。バックホウ(油圧ショベル)は、土砂の積込み位置に到着したダンプトラックに土砂を積み込むことができる。また、ブルドーザは、ダンプトラックが土砂の荷卸し位置に荷卸しした土砂で整地できる。
従来、ダンプトラックの自動運転は、決められた積込み位置で土砂の積込みがなされ、決められた荷卸し位置に荷卸しし、決められた経路を移動する、といった繰り返し動作をしていた。一方で、バックホウに関しては、施工作業の進行に伴い、作業場所(土砂置場など)が次々に変わるため、自動運転とせず、オペレータによる手動運転とする場合がある。ところで、自動運転のダンプトラックは、予め決められた経路を移動するため、施工作業の進行に伴い、土砂置場がダンプトラックへの積込み位置から遠ざかる場合もある。この場合には、積込み位置と土砂置場との間でバックホウを手動運転で往復移動させる必要があるため、非効率な動作を要する。その結果、施工作業が遅延する問題がある。また、ブルドーザに関しても、施工作業の進行に伴い、対象にする整地エリアが次々に変わるため、自動運転とせず、オペレータによる手動運転とする場合がある。この場合、施工作業の進行に伴い、ブルドーザは、荷卸し位置と整地エリアとの間の往復移動が必要になるため、非効率な動作を要する。その結果、施工作業が遅延する問題がある。以上のとおり、従来では、施工状況に伴って土砂の積込みや荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面に対応できず、施工作業が遅延する問題がある。
【0003】
特許文献1には、ダンプトラック、ブルドーザ、振動ローラ等異なる作業を行う複数種類の建設機械を自動運転させる施工システムについて開示されている。しかし、特許文献1の技術によれば、結局のところ、各建設機械が決められた位置で土砂の積込みや荷卸しをし、決められた経路を移動する、といった繰り返し動作をしているに過ぎない。このため、施工状況に伴って土砂の積込みや荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面に対応できず、施工作業が遅延する問題を解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような観点から、本発明は、施工状況に伴って土砂の積込みや荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面にも対応できるようにすることで、施工作業の遅延を低減できる施工支援システムおよび施工支援方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、自動運転機能を有する第1建設機械と、オペレータが搭乗する第2建設機械とを備え、前記第1建設機械は、当該第1建設機械の待機位置に到着したことを前記第2建設機械に通知する第1通知部を備え、前記第2建設機械は、前記待機位置とは異なる所定位置に移動するように前記第1建設機械に指示する指示部と、所定作業が完了したことを前記所定位置に移動した前記第1建設機械に前記第2建設機械から通知する第2通知部とを備える施工支援システムである。
また、本発明は、自動運転機能を有する第1建設機械が当該第1建設機械の待機位置に到着したことを、オペレータが搭乗する第2建設機械に通知する工程と、前記第2建設機械が、前記待機位置とは異なる所定位置に移動するように前記第1建設機械に指示する工程と、前記第2建設機械が、所定作業が完了したことを、前記所定位置に移動した前記第1建設機械に通知する工程とを備える施工支援方法である。
かかる施工支援システムおよび施工支援方法では、第1建設機械が待機位置に到着したことが第2建設機械に通知されるので、第2建設機械のオペレータは、第1建設機械に指示できる状態になったことを把握できる。よって、オペレータは、第1建設機械に対して、第2建設機械の往復移動を不要とする所望の位置に移動するように指示できるとともに、第1建設機械に合わせるための非効率な動作を不要にできる。第1建設機械の移動先である「所定位置」は、第2建設機械の位置、方向などに基づいて第2建設機械に備わるコンピュータで計算することが好ましい。また、オペレータは、実空間を把握しつつ、直感的な操作でダンプトラックを制御できる。
また、第2建設機械による所定作業が完了したことを第1建設機械に通知することで、オペレータによる第1建設機械の制御を解除できる。よって、第1建設機械は、自動運転に切り替えることができ、次の待機位置に移動できる。
このように、本発明によれば、施工状況に伴って土砂の積込みや荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面での第1建設機械の制御を、第2建設機械のオペレータに委ねることができる。このため、オペレータの判断や指示により、最適な位置が動的に変化する局面に対応可能な臨機応変な動作を実現でき、施工作業の遅延を低減できる。また、第1建設機械自身は、例えば、決められた積込み位置で土砂の積込みがなされ、決められた荷卸し位置に荷卸しし、決められた経路を移動する、といった繰り返し動作のみをすればよく、追加的な複雑な制御をしない。また、オペレータが搭乗する第2建設機械は、その機種によらず、第1建設機械の制御に関するロジックを同じにできる。よって、本発明の施工支援システムのソフトウェアを簡略化できる。
【0007】
また、前記第1建設機械は、ダンプトラックであり、前記第2建設機械は、バックホウであり、前記待機位置は、土砂の積込みをするための積込み待機位置であり、前記所定位置は、前記バックホウの滞在位置から前記バックホウのバケットが届く位置であり、前記所定作業は、土砂の積込み作業であるとよい。
かかる構成によれば、施工状況に伴って土砂の積込みを行うのに最適な位置が動的に変化する局面に対応でき、施工作業の遅延を低減できる。
【0008】
また、前記第1建設機械は、ダンプトラックであり、前記第2建設機械は、ブルドーザであり、前記待機位置は、土砂の荷卸しをするための荷卸し待機位置であり、前記所定位置は、前記ブルドーザから所定距離だけ前方の位置であり、前記所定作業は、土砂の荷卸し作業であるとよい。
かかる構成によれば、施工状況に伴って土砂の荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面に対応でき、施工作業の遅延を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建設機械に搭乗するオペレータが、ダンプトラックに対して、建設機械の往復移動を不要とする所望の位置に移動するように指示することができるとともに、ダンプトラックに合わせるための非効率な動作を不要にできる。このため、施工状況に伴って土砂の積込みや荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面に対応できるようになり、施工作業の遅延を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ダンプトラックの情報端末の機能構成図である。
図2】バックホウの情報端末およびブルドーザの情報端末の機能構成図である。
図3】バックホウがダンプトラックの移動指示点を決定するための説明図である。
図4】ブルドーザがダンプトラックの移動指示点を決定するための説明図である。
図5】ダンプトラックが移動指示点に移動する際の画面例である。
図6】施工支援処理のシーケンス図である。
図7】ダンプトラックのラストワンマイル制御に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
[構成]
図1に示す情報端末100は、ダンプトラックが備えるコンピュータである。また、図2に示す情報端末200,300はそれぞれ、バックホウ、ブルドーザが備えるコンピュータである。情報端末100~300はそれぞれ、入力部、出力部、制御部、および、記憶部といったハードウェアを備える。例えば、制御部がCPU(Central Processing Unit)から構成される場合、その制御部を含むコンピュータによる情報処理は、CPUによるプログラム実行処理で実現される。また、そのコンピュータに含まれる記憶部は、CPUの指令により、そのコンピュータの機能を実現するためのさまざまなプログラムを記憶する。これによりソフトウェアとハードウェアの協働が実現される。前記プログラムは、記録媒体に記録したり、ネットワークを経由したりすることで提供可能となる。
出力部は、画面表示をする表示部の機能を含めてもよい。本実施形態のダンプトラックは、無人で自動運転をするため、表示部を備えていなくてもよい。また、本実施形態のバックホウ、ブルドーザは、オペレータが搭乗して運転するため、表示部を備えることが好ましい。
ダンプトラック、第1建設機械の具体的手段である。バックホウおよびブルドーザは、第2建設機械の具体的手段である。
【0013】
(情報端末100)
図1に示す情報端末100は、走行制御部11と、出力制御部12と、通知部13を備えている。また、情報端末100は、積込み待機位置情報14と、荷卸し待機位置情報15を記憶する。
走行制御部11は、ダンプトラックの自動運転による走行を制御する。つまり、走行制御部11は、ダンプトラックの自動運転機能を担当する。ダンプトラックの自動運転は、例えば、中央制御室(図示せず)のコンピュータからの運転開始指令で開始される。ダンプトラックは、自動運転において決められた経路を移動し、決められた位置に待機する。走行制御部11は、バックホウの情報端末200またはブルドーザの情報端末300からの指示より、自動運転の待機位置とは異なる位置にダンプトラックを移動させるように走行を制御できる。
出力制御部12は、ダンプトラックの各種出力を制御する。例えば、ダンプトラックの荷台の昇降を制御することができる(いわゆる、ダンプアップ、ダンプダウン)。また、出力制御部12は、周知の技術により、ダンプトラックの荷台に積み込まれた土砂の積載量または積載重量を判定できる。
通知部13は、自動運転において決められた待機位置にダンプトラックが到着したことをバックホウおよびブルドーザに通知する。通知部13は、第1通知部の具体的手段である。なお、情報端末100は情報端末200,300と通信可能に接続することができ、所定の情報をやり取りできる。
積込み待機位置情報14は、自動運転において決められた待機位置であり、バックホウによる土砂の積込み作業をするための位置を積込み待機位置として示す情報である。中央制御室(図示せず)のコンピュータからの運転開始指令には積込み待機位置情報14が含まれており、情報端末100は、当該積込み待機位置情報14を取得できる。
荷卸し待機位置情報15は、自動運転において決められた待機位置であり、ブルドーザに対する土砂の荷卸し作業をするための位置を荷卸し待機位置として示す情報である。中央制御室(図示せず)のコンピュータからの運転開始指令には荷卸し待機位置情報15が含まれており、情報端末100は、当該荷卸し待機位置情報15を取得できる。
【0014】
(情報端末200,300)
図2に示す情報端末200は、位置演算部21と、指示部22と、通知部23を備えている。
位置演算部21は、所定の演算処理により、ダンプトラックの待機位置からの移動先となる位置を移動指示点として計算する。
指示部22は、ダンプトラックの待機位置とは異なる所定位置(つまり、移動指示点)に移動するようにダンプトラックに指示する。
通知部23は、バックホウまたはブルドーザによる所定作業(土砂の積込み作業、または、土砂の荷卸し作業)が完了したことを所定位置(つまり、移動指示点)に移動したダンプトラックに通知する。当該通知により、情報端末200,300による制御が解除され、ダンプトラックは自動運転を再開できる。通知部23は、第2通知部の具体的手段である。
【0015】
[バックホウによる移動指示点の計算]
図3に示すように、例えば、ダンプトラック1は、積込み待機位置情報14が示す積込み待機位置にて、荷台をバックホウ2に向けるようにして待機している。通知部13がダンプトラック1の待機位置への到着をバックホウ2の情報端末200に通知することで、情報端末100,200間でセッションが確立し、情報のやり取りができる。また、ダンプトラック1に対するバックホウ2からの制御(いわゆるラストワンマイル制御)が可能となる。
情報端末100の走行制御部11は、例えば、ダンプトラック1が備える各種センサ(図示せず)から取得した値、および、情報端末100に入力されたパラメータに基づいて、ダンプ位置基準点31を計算できる。各種センサは、例えば、ダンプトラック1の位置を検出する位置センサ(例えば衛星測位システムの受信機など)や、ダンプトラック1の方向(方角)を検出する方向センサ(例えばジャイロなど)であるが、これらに限定されない。各種センサから取得した値は、ダンプトラック1の現在位置や進行方向(運転席がどちらを向いているか)であるが、これらに限定されない。パラメータは、例えば、位置センサが検出するダンプトラック1の位置をダンプ位置基準点31に合わせるための値であり、具体的には、位置センサが検出するダンプトラック1の位置とダンプ位置基準点31との間のオフセット量とすることができるが、これに限定されない。ダンプ位置基準点31は、3次元の各方向に所定量の寸法を有するダンプトラック1内の任意の1点とすることができ、本実施形態では、図3に示す通りである。走行制御部11は、ダンプ位置基準点31を垂直に下ろしたときの仮想地面Gとの交点をダンプ座標32として計算できる。
【0016】
情報端末200の位置演算部21は、例えば、バックホウ2が備える各種センサ(図示せず)から取得した値、および、情報端末200に入力されたパラメータに基づいて、先端点33を計算できる。各種センサは、例えば、バックホウ2の位置を検出する位置センサ、バックホウ2の方向(方角)を検出する方向センサ、および、バックホウ2のアーム類の角度を検出する角度センサ(例えば傾斜計など)であるが、これらに限定されない。各種センサから取得した値は、バックホウ2の現在位置、進行方向、および、アーム類の角度であるが、これらに限定されない。パラメータは、例えば、位置センサが検出するバックホウ2の位置を先端点33に合わせるための値であり、具体的には、位置センサが検出するバックホウ2の位置と先端点33との間のオフセット量とすることができるが、これに限定されない。先端点33は、バックホウ2のバケットの中心とすることができ、本実施形態では、図3に示す通りである。位置演算部21は、先端点33を垂直に下ろしたときの仮想地面Gとの交点を移動指示点34として計算できる。
【0017】
[ブルドーザによる移動指示点の計算]
図4に示すように、例えば、ダンプトラック1は、荷卸し待機位置情報15が示す荷卸し待機位置にて、荷台をブルドーザ3に向けるようにして待機している。通知部13がダンプトラック1の待機位置への到着をブルドーザ3の情報端末300に通知することで、情報端末100,300間でセッションが確立し、情報のやり取りができる。また、ダンプトラック1に対するブルドーザ3からの制御(ラストワンマイル制御)が可能となる。
情報端末100の走行制御部11は、図3での説明と同様、ダンプ位置基準点31およびダンプ座標32を計算できる。
情報端末300の位置演算部21は、例えば、ブルドーザ3が備える各種センサ(図示せず)から取得した値、および、情報端末300に入力されたパラメータに基づいて、仮想先端点41を計算できる。各種センサは、例えば、ブルドーザ3の位置を検出する位置センサ、ブルドーザ3の方向(方角)を検出する方向センサ、および、ブルドーザ3のブレードの角度を検出する角度センサであるが、これらに限定されない。各種センサから取得した値は、ブルドーザ3の現在位置、進行方向、および、ブレードの角度であるが、これらに限定されない。パラメータは、例えば、位置センサが検出するブルドーザ3の位置を仮想先端点41に合わせるための値であり、具体的には、位置センサが検出するブルドーザ3の位置と仮想先端点41との間のオフセット量とすることができるが、これに限定されない。仮想先端点41は、ブルドーザ3から所定距離だけ前方の点とすることができ、本実施形態では、図4に示す通りである。前記所定距離は、例えば、ブルドーザ3のオペレータが情報端末300に入力した任意の距離とすることができる。位置演算部21は、仮想先端点41を垂直に下ろしたときの仮想地面Gとの交点を移動指示点42として計算できる。
【0018】
[ダンプトラックによる移動指示点への移動]
ブルドーザ3のオペレータからの入力に応じて、情報端末300の指示部22は、荷卸し待機位置で停止しているダンプトラック1に対し、移動指示点42に移動するように指示する。指示には、移動指示点42の座標値が含まれる。走行制御部11は、情報端末300からの指示を受信すると、ダンプトラック1は自動走行をし、ダンプ位置基準点31を移動指示点42に一致させる。図5に示すように、ブルドーザ3の情報端末300は、オペレータに対し、ダンプトラック1が移動指示点42に移動する様子の画面例を表示できる。当該画面例は、例えば、ブルドーザ3に搭載したカメラ(図示せず)からの撮影画像を、情報端末300の表示部に表示したものとすることができるが、これに限られない。走行制御部11は、ダンプ位置基準点31と移動指示点42との距離が所定値以下となるとダンプトラック1の移動完了とし、その旨を情報端末300に通知する。
図5に示すように、画面には、ダンプトラック1の移動の残距離(「ダンプ移動中 あと××m」)をリアルタイムに表示してもよい。また、ダンプトラック1の荷台に積まれた土砂の積載量をリアルタイムに表示してもよい。また、ダンプトラック1およびブルドーザ3に関する所定の状態をリアルタイムに表示してもよい。
バックホウ2に関しても、上記のブルドーザ3の場合と概ね同様の処理がなされる。バックホウ2のオペレータからの入力に応じて、情報端末200の指示部22は、積込み待機位置にいるダンプトラック1に対し、移動指示点34に移動するように指示する。指示には、移動指示点34の座標値が含まれる。走行制御部11は、情報端末200からの指示を受信すると、ダンプトラック1は自動走行をし、ダンプ位置基準点31を移動指示点34に一致させる。図5と同様、バックホウ2の情報端末200は、オペレータに対し、ダンプトラック1が移動指示点34に移動する様子や、残距離等の画面例を表示できる。
【0019】
[作業完了およびその後]
バックホウ2のオペレータは、ダンプトラック1の積込み荷重等を監視しながら土砂の積込み作業を行う。移動指示点34は、バックホウ2のバケットからダンプトラック1の荷台への受け渡し箇所となるが、指示部22は、再度の移動指示を行うためにダンプトラック1の位置調整をしたり、所定の指示(例えば、出力制御部12によるクラクションの合図や状態表示のランプの点灯)をしたりしてもよい。積込み作業が完了すると、バックホウ2のオペレータからの入力により、通知部23は、ダンプトラック1の情報端末100に対し、積込み作業の完了通知をする。当該完了通知により、情報端末100は、バックホウ2から指示を受け付けるモードを解除する。ダンプトラック1は、走行制御部11の制御に従って、決められた経路に戻り、自動運転を再開し、荷卸し待機位置に移動する。
ブルドーザ3のオペレータは、ダンプトラック1の荷卸し作業を監視する。移動指示点42は、ブルドーザ3から所定距離だけ前方の位置となるが、指示部22は、再度の移動指示を行うためにダンプトラック1の位置調整をしたり、所定の指示(例:出力制御部12によるダンプアップやダンプダウン)をしたりしてもよい。荷卸し作業が完了すると、ブルドーザ3のオペレータからの入力により、通知部23は、ダンプトラック1の情報端末100に対し、荷卸し作業の完了通知をする。当該完了通知により、情報端末100は、ブルドーザ3から指示を受け付けるモードを解除する。ダンプトラック1は、走行制御部11の制御に従って、決められた経路に戻り、自動運転を再開し、積込み待機位置に移動する。
【0020】
[処理]
図6に示すように、情報端末100~300は、以下の施工支援処理を実行する。すなわち、まず、情報端末100は、中央制御室(図示せず)のコンピュータからの運転開始指令を受信し、ダンプトラック1の自動運転を開始する(ステップS1)。次に、情報端末100は、積込み待機位置移動処理をする(ステップS2)。具体的には、走行制御部11が、ダンプトラック1を決められた積込み待機位置に移動させる。次に、情報端末100は、到着通知を送信する(ステップS3)。具体的には、通知部13は、ダンプトラック1が積込み待機位置に到着したことを情報端末200に通知する。次に、情報端末200は、移動指示点演算処理をする(ステップS4)。具体的には、情報端末200の位置演算部21が移動指示点34を計算する。次に、情報端末200は、情報端末100に向けて移動指示を送信する(ステップS5)。具体的には、情報端末200の指示部22が、移動指示点34に移動するように情報端末100に指示する。次に、情報端末100は、積込み処理をする(ステップS6)。具体的には、情報端末100は、ダンプトラック1に積載された土砂の重量を計測し、取得した重量値をバックホウ2に通知する処理(土砂の積込み作業の支援となる処理)をする。次に、情報端末200は、積込み完了通知をする(ステップS7)。具体的には、情報端末200の通知部23は、積込み作業完了を判断したオペレータからの入力により、情報端末100に対して積込み作業の完了通知をする。
【0021】
次に、情報端末100は、荷卸し待機位置移動処理をする(ステップS8)。具体的には、走行制御部11がダンプトラック1を決められた荷卸し待機位置に移動させる。次に、情報端末100は、到着通知を送信する(ステップS9)。具体的には、通知部13は、ダンプトラック1が荷卸し待機位置に到着したことを情報端末300に通知する。次に、情報端末300は、移動指示点演算処理をする(ステップS10)。具体的には、情報端末300の位置演算部21が移動指示点42を計算する。次に、情報端末300は、情報端末100に向けて移動指示を送信する(ステップS11)。具体的には、情報端末300の指示部22が、移動指示点42に移動するように情報端末100に指示する。次に、情報端末100は、荷卸し処理をする(ステップS12)。具体的には、情報端末100は、情報端末300からの指示に従い、ダンプトラック1による土砂の荷卸し作業の支援となる処理(例:ダンプアップ、ダンプダウン)をする。次に、情報端末300は、荷卸し完了通知をする(ステップS13)。具体的には、情報端末300の通知部23は、荷卸し作業完了を判断したオペレータからの入力により、情報端末100に対して荷卸し作業の完了通知をする。
その後、情報端末100は、すでに述べた積込み待機位置移動処理(ステップS2)をし、ステップS3以降の処理を繰り返す。
【0022】
[ダンプトラックを移動指示点に移動させるラストワンマイル制御]
図7に示すように、ダンプトラック1は、決められた経路(実線片方向矢印)を移動する際、積込み待機位置71に待機する。土砂置場72の傍にいるバックホウ2は、車体の並進移動無しで土砂の積込みが可能な位置に移動指示点73aを設定する。ダンプトラック1は、バックホウ2からの指示に従い、積込み待機位置71から移動指示点73aに移動する。バックホウ2は、前後移動することなく、移動指示点73aにいるダンプトラック1の荷台に土砂を積み込むことができる。
ここで、作業の進行に伴い、土砂置場72の土砂が無くなり、バックホウ2は、土砂置場74の傍に移動する。土砂置場74の傍にいるバックホウ2は、車体の前後移動無しで土砂の積込みが可能な位置(移動指示点73aとは異なる)に移動指示点73bを設定できる。ダンプトラック1は、バックホウ2からの指示に従い、積込み待機位置71から移動指示点73bに移動できる。したがって、バックホウ2は、前後移動無しで、移動指示点73bにいるダンプトラック1の荷台に土砂を積み込むことができる。
作業がさらに進行すれば、バックホウ2は、さらに異なる土砂置場の傍に移動することになる。しかし、上記に倣い、バックホウ2は、車体の前後移動無しで土砂の積込みが可能な位置に新たな移動指示点を設定でき、当該移動指示点にダンプトラック1を移動させることで、前後移動無しで、土砂の積込みを実現できる。よって、従来のように、積込み待機位置71に待機するダンプトラック1に向けてバックホウ2が移動する必要はない。
【0023】
また、図7に示すように、ダンプトラック1は、決められた経路(実線片方向矢印)を移動する際、荷卸し待機位置75に待機する。所定位置にいるブルドーザ3は、当該ブルドーザ3前方の所望の排土位置に移動指示点76aを設定する。ダンプトラック1は、ブルドーザ3からの指示に従い、荷卸し待機位置75から移動指示点76aに移動し、ダンプアップ、ダンプダウンにより移動指示点76aに積み込まれた土砂を荷卸しする。荷卸ししたダンプトラック1の自動運転による移動後、ブルドーザ3は、荷卸しされた土砂で整地作業を行うことができる。
ここで、作業の進行に伴い、ブルドーザ3は別の所定位置に移動する。別の所定位置にいるブルドーザ3は、当該ブルドーザ3前方の所望の荷卸し位置に移動指示点76bを設定できる。ダンプトラック1は、ブルドーザ3からの指示に従い、荷卸し待機位置75から移動指示点76bに移動し、ダンプアップ、ダンプダウンにより移動指示点76bに積み込まれた土砂を荷卸しできる。荷卸ししたダンプトラック1の自動運転による移動後、ブルドーザ3は、荷卸しされた土砂で整地作業を行うことができる。
作業がさらに進行すれば、ブルドーザ3は、さらに別の所定位置に移動することになる。しかし、上記に倣い、ブルドーザ3は、前方の所望の荷卸し位置に新たな移動指示点を設定でき、当該移動指示点にダンプトラック1を移動させることで、後の整地作業のための前方移動のみで済むように、ダンプトラック1による土砂の荷卸しを実現できる。よって、従来のように、荷卸し待機位置75に待機するダンプトラック1にブルドーザ3が近づく必要はない。
【0024】
本実施形態によれば、バックホウ2およびブルドーザ3に搭乗するオペレータが、ダンプトラック1に対して、バックホウ2およびブルドーザ3の往復移動を不要(あるいは最小)とする所望の位置に移動するように指示することができるとともに、ダンプトラック1に合わせた非効率な動作を不要にできる。このため、施工状況に伴って土砂の積込みや荷卸しを行うのに最適な位置が動的に変化する局面に対応できるようになり、施工作業の遅延を低減できる。
また、ダンプトラック1自身は、バックホウ2およびブルドーザ3からの指示が無い場合、例えば、決められた積込み位置で土砂の積込みがなされ、決められた荷卸し位置に荷卸しし、決められた経路を移動する、といった繰り返し動作のみをすればよく、追加的な複雑な制御をしない。
また、バックホウ2であってもブルドーザ3であってもダンプトラック1に対する制御は、計算した移動指示点にダンプトラックを移動させるという同じロジックを適用できる。このため、本実施形態の施工支援システムのソフトウェアを簡略化できる。
【0025】
[変形例]
(a):バックホウ2およびブルドーザ3は、オペレータが搭乗する型式に限らず、オペレータが搭乗しない遠隔操作式であってもよい。
(b):ダンプトラック1は、無人で自動運転を行う型式に限らず、有人操作式であってもよい。有人操作式は、直接操作式でも遠隔操作式でもよい。有人操作式の場合、ダンプトラックのオペレータは、所定の情報端末(情報端末100でもよいし他の情報端末でもよい)を用いて、他の建設機械等のオペレータからの指示や座標値などの情報を、文字やグラフィックなどの視覚的情報として表示する手段を利用できる。
(c):自動運転を行う建設機械は、ダンプトラック1に限られない。また、本発明は、決められた経路に沿って自動運転を行う建設機械が複数存在する場合にも適用できる。また、本発明は、自動運転を行う建設機械に指示する建設機械(バックホウ2やブルドーザ3など)が複数存在する場合にも適用できる。
(d):バックホウ2の情報端末200の位置演算部21が計算する移動指示点34は、ダンプトラック1の待機位置とバックホウ2の位置とを結ぶ線分上に存在する必要はなく、任意の方向に設定でき、バックホウ2から任意の距離に設定できる。
(e):ブルドーザ3の情報端末300の位置演算部21が計算する移動指示点42は、ダンプトラック1の待機位置とブルドーザ3の位置とを結ぶ線分上に存在する必要はなく、任意の方向に設定でき、ブルドーザ3から任意の距離に設定できる。
(f):本発明の所定作業は、土砂の積込み作業や、土砂の荷卸し作業に限らず、建設機械を用いる任意の施工作業を対象にしてよい。所定作業は、ダンプトラック1などの第1建設機械が行う作業でもよいし、バックホウ2やブルドーザ3などの第2建設機械が行う作業でもよいし、第1建設機械と第2建設機械が協同で行う作業でもよい。
【0026】
(g):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(h):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(i):その他、ハードウェア、ソフトウェア、フローチャートなどについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 ダンプトラック
2 バックホウ
3 ブルドーザ
11 走行制御部
12 出力制御部
13 通知部
14 積込み待機位置情報
15 荷卸し待機位置情報
21 位置演算部
22 指示部
23 通知部
31 ダンプ位置基準点
32 ダンプ座標
33 先端点
34 移動指示点
41 仮想先端点
42 移動指示点
100~300 情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7