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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20240312BHJP
   G01N 27/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01N27/416 311H
G01N27/18
G01N27/416 371G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020195835
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084164
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆文
(72)【発明者】
【氏名】北野谷 昇治
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅広
(72)【発明者】
【氏名】松倉 佑介
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-049260(JP,A)
【文献】特開2001-35889(JP,A)
【文献】特表2011-526362(JP,A)
【文献】特開2012-251933(JP,A)
【文献】特開2008-070200(JP,A)
【文献】特開2005-291886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/416
G01N 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ素子と、外側底面及び外側側面を含むと共に内側で前記ガスセンサ素子を収容する箱状の本体部と、互いに間隔を保ちつつ少なくとも前記外側底面に形成される複数の端子部とを有するガスセンサパッケージと、
各々が、対応する前記端子部に重ねられる重畳部、及び前記重畳部に延設されると共に前記重畳部が前記端子部に重ねられた際に前記外側側面よりも外側へはみ出す延設部を含み、かつ各々が銅又は銅合金からなると共に、互いに間隔を保ちつつ並ぶように配される複数のパッド部と、前記パッド部が形成される実装面とを有する回路基板と、
各々が対応する前記端子部と前記パッド部とを電気的に接続するために、前記端子部と前記重畳部との間で挟まれると共に、前記延設部に載せられる複数のはんだ部とを備えるガスセンサであって、
前記延設部に載せられた前記はんだ部を封止すると共に、前記外側底面と前記実装面との間に形成される隙間を塞ぐために、前記ガスセンサパッケージの周りを取り囲むように、前記実装面から前記外側側面に亘って形成される防湿膜を備えるガスセンサ。
【請求項2】
前記端子部は、前記外側底面に形成され、前記重畳部に重ねられる底面側端子部と、前記底面側端子部から立ち上がり前記外側側面に形成される側面側端子部とを含み、
前記はんだ部のうち、前記延設部に載せられる部分は、前記側面側端子部を覆うように形成される請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記防湿膜は、主成分として、オレフィン系樹脂を含む請求項1又は請求項2に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
被検出ガス(例えば、水素等の可燃性ガス)の濃度を検出するガスセンサが知られている。この種のガスセンサは、例えば、特許文献1に示されるように、被検出ガスを検出するためのガスセンサ素子が実装された回路基板が、樹脂製の箱状のケーシングに収容された構成を備えている。回路基板とケーシングとの間には、ガスセンサ素子を取り囲むように環状の弾性シール体が介在されており、弾性シール体、回路基板及びケーシングによって密閉された空間が形成される。その空間に、ケーシングに設けられたガス導入口から、被検出ガスを含む雰囲気ガスが導入されると、空間中の被検出ガスの濃度が、ガスセンサ素子により検出される。
【0003】
弾性シール体を構成する材料としては、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等のゴム材料が利用されている。弾性シール体には、通常、ゴム弾性を改善等する目的で、加硫(硫黄架橋)が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-122616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加硫等により、弾性シール体中に硫黄成分が含まれていると、時間の経過と共に、弾性シール体から硫黄を含む腐食成分(例えば、硫黄ガス等の硫黄成分)が発生し、その腐食成分が、回路基板上に形成されたガスセンサ素子を実装するためのパッド部を腐食する虞があった。
【0006】
パッド部は、銅(Cu)を含んでいるため、パッド部と腐食成分とが反応すると、硫化銅(CuS)が生成される。硫化銅が、例えば、隣り合ったパッド部の間を繋ぐように成長すると、ガスセンサ素子の端子間がショートして、ガスセンサ素子が故障する虞があった。
【0007】
本発明の目的は、硫黄を含む腐食成分による腐食が抑制されたガスセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> ガスセンサ素子と、外側底面及び外側側面を含むと共に内側で前記ガスセンサ素子を収容する箱状の本体部と、互いに間隔を保ちつつ少なくとも前記外側底面に形成される複数の端子部とを有するガスセンサパッケージと、各々が、対応する前記端子部に重ねられる重畳部、及び前記重畳部に延設されると共に前記重畳部が前記端子部に重ねられた際に前記外側側面よりも外側へはみ出す延設部を含み、かつ各々が銅又は銅合金からなると共に、互いに間隔を保ちつつ並ぶように配される複数のパッド部と、前記パッド部が形成される実装面とを有する回路基板と、各々が対応する前記端子部と前記パッド部とを電気的に接続するために、前記端子部と前記重畳部との間で挟まれると共に、前記延設部に載せられる複数のはんだ部とを備えるガスセンサであって、前記延設部に載せられた前記はんだ部を封止すると共に、前記外側底面と前記実装面との間に形成される隙間を塞ぐために、前記ガスセンサパッケージの周りを取り囲むように、前記実装面から前記外側側面に亘って形成される防湿膜を備えるガスセンサ。
【0009】
<2> 前記端子部は、前記外側底面に形成され、前記重畳部に重ねられる底面側端子部と、前記底面側端子部から立ち上がり前記外側側面に形成される側面側端子部とを含み、前記はんだ部のうち、前記延設部に載せられる部分は、前記側面側端子部を覆うように形成される前記<1>に記載のガスセンサ。
【0010】
<3> 前記防湿膜は、主成分として、オレフィン系樹脂を含む前記<1>又は<2>に記載のガスセンサ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、硫黄を含む腐食成分による腐食が抑制されたガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係るガスセンサの構成を模式的に表した断面図
図2図1の測定室付近の拡大断面図
図3】回路基板上に実装された検出素子アッセンブリの上面図
図4図3のA-A線断面図
図5図3のB-B線断面図
図6】回路基板上のパッド部と弾性シール体との配置関係を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、図1図6を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1に係るガスセンサ1の構成を模式的に表した断面図である。説明の便宜上、図1の上側を、ガスセンサ1の上側とし、図1の下側を、ガスセンサ1の下側とする。ガスセンサ1は、被検出ガスへの熱伝導を利用して被検出ガスの濃度を検出する装置である。このようなガスセンサ1は、例えば、エネルギー源として水素ガスを利用した燃料電池を搭載するシステム(例えば、燃料電池自動車、家庭用燃料電池システム)に配置され、可燃性ガスである水素ガスを検出する。これにより、システム内における水素ガスの漏れを検出できる。
【0014】
ガスセンサ1は、図1に示されるように、主として、検出素子アッセンブリ2と、ケーシング3と、回路基板4と、弾性シール体5と、はんだ部26と、防湿膜8とを備えている。
【0015】
図2は、測定室7付近の拡大断面図であり、図3は、回路基板4上に実装された検出素子アッセンブリ2の上面図であり、図4は、図3のA-A線断面図であり、図5は、図3のB-B線断面図である。検出素子アッセンブリ(キャップ付きパッケージ)2は、図2等に示されるように、ガスセンサパッケージ21と、保護キャップ25とを備えている。
【0016】
ガスセンサパッケージ21は、主として、ガスセンサ素子22と、箱状の本体部23と、複数の端子部24とを備えている。ガスセンサ素子22は、自身の温度変化により抵抗値が変化する発熱抵抗体(不図示)を有する熱伝導式の検出素子(熱伝導式ガスセンサ素子)である。本体部23は、内側でガスセンサ素子22を収容する上方に開口した箱状部材であり、概ね直方体状の外観をなしており、外側底面23aと、外側側面23bとを備えている。なお、外側側面23bは、平面視で矩形状をなした本体部23のうち、短辺側に配される1組の第1外側側面23b1と、長辺側に配される1組の第2外側側面23b2とからなる。第1外側側面23b1及び第2外側側面23b2を、まとめて外側側面23bと称する。このような本体部23は、主として、絶縁性セラミックからなる。
【0017】
端子部24は、本体部23内に収容されたガスセンサ素子22の電極に接続する導電性の部材である。端子部24は複数あり、それらが互いに間隔を保ちつつ少なくとも外側底面23aに形成される。各々の端子部24は、それぞれ、本体部23の外側底面23aに配される底面側端子部24aと、底面側端子部24aから立ち上がり本体部23の外側側面23b(第2外側側面23b2)に形成される側面側端子部24bとを備えている。
【0018】
保護キャップ25は、箱状の本体部23の開口部を覆うように被せられる蓋材であり、上側に凸状に盛り上がった形をなしている。保護キャップ25の上面部25aには、被検出ガスを含む雰囲気ガスを保護キャップ25の内側に導入するための複数の通気孔25b(図3参照)が形成されている。これらの通気孔25bの形成位置は、本体部23内においてガスセンサ素子22の発熱抵抗体が配置されている箇所と、上下方向で重ならないように設定されている。このように通気孔25bの位置が設定されることで、埃等の異物が通気孔25bから保護キャップ25内に侵入した場合でも、異物が発熱抵抗体に近付くことが抑制される。発熱抵抗体で生じた熱が異物に伝わってしまうと、被検出ガスの濃度検出の精度が低下するため、上記のように、保護キャップ25がガスセンサパッケージ21の本体部23に取り付けられる。
【0019】
回路基板4は、被検出ガスの濃度を検出するための回路を備えた基板であり、上側に配される面(実装面)4aに、検出素子アッセンブリ2が実装される。なお、回路基板4には、それ以外に、ガスセンサ素子を制御するマイコンや各種電子部品(不図示)がはんだ付け等により実装されている。
【0020】
また、回路基板4の実装面4aには、検出素子アッセンブリ2の実装時に利用される複数のパッド部41が設けられている。図6は、回路基板4上のパッド部41と弾性シール体5との配置関係を示す説明図である。なお、図6には、説明の便宜上、検出素子アッセンブリ2が実装される前の状態の回路基板4の実装面4aが示されている。パッド部41は、銅又は銅合金からなる薄手の層状部材であり、公知の方法(エッチング等)で回路基板4上に形成される。複数のパッド部41は、各々が平面視で矩形状をなし、互いに間隔を保ちつつ2行×5列のマトリクス状に並ぶように、実装面4a上に配されている。回路基板4上には、パッド部41以外に、図示されないパターン状の配線等が形成されている。
【0021】
検出素子アッセンブリ2は、本体部23に設けられた複数の端子部24が、対応するパッド部41に対してそれぞれ重なるように、回路基板4上に配置される。つまり、複数の端子部24(底面側端子部24a)は、上述したようにマトリクス状に並んだパッド部41と重なるように、本体部23の外側底面23aにおいて、マトリクス状に配置されている。
【0022】
検出素子アッセンブリ2の実装時に、パッド部41上には、ペースト状のはんだが付与されており、そのはんだの上に、端子部24の底面側端子部24aが載せられ、その状態でリフローが行われる。そのため、パッド部41と端子部24の底面側端子部24aとの間には、はんだ部26の一部として、第2はんだ部26b(後述)が介在されている。
【0023】
複数のパッド部41は、各々が、対応する端子部24の底面側端子部24aに重ねられる重畳部41aと、重畳部41aに延設されると共に重畳部41aが端子部24に重ねられた際に本体部23の外側側面23bよりも外側へはみ出す延設部41bとを備えている。
【0024】
はんだ部26は、パッド部41と端子部24とを電気的に接続するために、延設部41bと側面側端子部24bとを覆うように形成されている。なお、はんだ部26は、延設部41bと側面側端子部24bとを覆う第1はんだ部26aと、パッド部41の重畳部41aと、端子部24の底面側端子部24aとの間に介在され、第1はんだ部26aと接続する第2はんだ部26bとを備えている。
【0025】
このように、回路基板4の実装面4aには、ガスセンサ素子22が、検出素子アッセンブリ2のガスセンサパッケージ21(本体部23)に収容された状態で実装されている。そのため、本明細書では、「ガスセンサ素子22が回路基板4の実装面4aに実装されている」、と表現する場合がある。
【0026】
回路基板4は、図1に示されるように、容器状の第1ケーシング部3Aの底側に設けられた複数の支持部3A2,3A3に支持された状態で、ケーシング3の内部に収容されている。ケーシング3の内部において、回路基板4は、実装面4aが、第1ケーシング部3Aの壁部3B1から離された状態であり、かつ回路基板4上に実装された検出素子アッセンブリ2が、ガス導入口3B2と上下方向で重なるように、配置されている。そのような回路基板4と、壁部3B1との間に、弾性シール体5が介在されている。
【0027】
壁部3B1のうち、回路基板4の実装面4aと対向する側の部分には、下側(回路基板4側)に向かって円環状に盛り上がった円環部3Fが設けられており、その円環部3Fと、回路基板4の実装面4aとの間で、弾性シール体5が挟まれた状態となっている。なお、円環部3Fは、壁部3B1の一部として構成されている。円環部3Fの内側に、開口部3B4が配されている。
【0028】
回路基板4、弾性シール体5及びケーシング3の壁部3B1で囲まれた空間が、被検出ガスの濃度を検出するために外部からガス導入口3B2を介して導入された雰囲気ガスを収容する測定室7として利用される。
【0029】
ケーシング3は、検出素子アッセンブリ2、回路基板4等を収容する略箱状の部材であり、非導電性の樹脂で構成されている。ケーシング3は、その内部に、検出素子アッセンブリ2等を収容する空間31を備えている。ケーシング3は、第1ケーシング部3Aと、第2ケーシング部3Bとを備えている。空間31は、第1ケーシング部3Aと第2ケーシング部とで囲まれている。
【0030】
第1ケーシング部3Aは、全体的には、上方に開口した容器状をなしており、その底側(下側)を構成する壁部3A1には、回路基板4を支持する凸状の支持部3A2,3A3が設けられている。また、第1ケーシング部3Aの側方(図1の右側)には、コネクタ部3A4が設けられている。なお、第1ケーシング部3Aの上方に開口した部分を、開口部3A5と称する。
【0031】
第2ケーシング部3Bは、第1ケーシング部3Aの開口部3A5を覆うような蓋状(板状)をなしており、第2ケーシング部3Bを構成する壁部3B1に、ガス導入口3B2が設けられている。ガス導入口3B2は、被検出ガスを、測定室7に導入するためのものであり、第2ケーシング部3Bの略中央に設けられている。なお、ガス導入口3B2の内部には、金属製の網部材3Dが配置されている。
【0032】
第2ケーシング部3Bの壁部3B1には、上方に向かって環状に突出した環状部材3B3が設けられており、その内側に、網部材3Dを保持する枠部3Cが収容されている。枠部3Cの内側には、上下方向に貫通する孔部が設けられており、その孔部が、ガス導入口3B2として利用されている。枠部3Cは、網部材3Dを上下で挟持できるように2部品で構成されている。なお、他の実施形態においては、網部材と枠部とをインサート成形等により一体成形することで、枠部を1部品で構成してもよい。
【0033】
なお、第2ケーシング部3Bの壁部3B1には、ガス導入口3B2と重なる部分に、開口部3B4が設けられており、その開口部3B4を覆うと共に、ガス導入口3B2と重なるように、撥水フィルタ3Eが設けられている。なお、本明細書では、環状部材3B3や、網部材3Dを保持する枠部3Cも、第2ケーシング部3Bの壁部3B1の一部を構成するものとする。
【0034】
網部材3Dは、例えば、メッシュ状の金網からなり、ガスセンサパッケージ21が有するガスセンサ素子の発熱抵抗体(後述)が高温になって可燃性の被検出ガスが発火した場合でも、火炎がガスセンサ1の外部に出るのを防止する機能(フレームアレスタ機能)を備えている。撥水フィルタ3Eは、ガス導入口3B2からケーシング3の内部に、水が浸入することを防止する機能を備えている。なお、被検出ガスは、撥水フィルタ3Eを通過可能である。
【0035】
第1ケーシング部3Aに設けられたコネクタ部3A4は、外部回路との電気的接続に利用される。コネクタ部3A4の内部には、複数のコネクタピン6が設けられている。回路基板4には、複数のコネクタピン6を接続するための複数のスルーホール4Aが形成されている。個々のコネクタピン6は、スルーホール4Aに挿入された状態で、回路基板4上にはんだ付けにより固定される。
【0036】
弾性シール体5は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の公知のゴム材料が利用されている。ゴム材料は、加硫処理が行われていてもよい。
【0037】
なお、回路基板4の実装面4a上のパッド部41は、図6に示されるように、弾性シール体5の近くに配置されている。特に、パッド部41の延設部41bは、弾性シール体5の近くに配置されている。延設部41bは、対応する端子部24との電気的な接続のために、はんだ部26(第1はんだ部26a)によって覆われているものの、その付近に、腐食成分(硫黄ガス等の硫黄成分)が存在していると、銅を含むパッド部41(延設部41b)は、時間の経過と共に、腐食成分によって腐食されてしまう。なお、図6において、一点鎖線で囲まれた範囲Sに、検出素子アッセンブリ2が実装される。
【0038】
本実施形態のガスセンサ1は、パッド部41が硫黄成分を含む腐食ガスによって腐食されないように、パッド部41を保護するための防湿膜8を備えている。
【0039】
防湿膜8は、パッド部41の延設部41bに載せられたはんだ部26(第1はんだ部26a)を封止すると共に、ガスセンサパッケージ21の本体部23における外側底面23aと、回路基板4の実装面4aとの間に形成される隙間を塞ぐために、ガスセンサパッケージ21の周りを取り囲むように、実装面4aから本体部23の外側側面23bに亘って形成される。
【0040】
防湿膜8は、例えば、主成分として、ポリオレフィン等のオレフィン系樹脂を含む膜からなる。防湿膜8は、湿気を防ぐ機能を有すると共に、腐食成分(硫黄ガス等の硫黄成分)を防ぐ機能を有する。このような防湿膜8としては、例えば、回路基板4の実装面4aのち、環状の弾性シール体5よりも外側の範囲にある外側実装面4a1に形成される公知の防湿膜と、同種のものを用いることができる。
【0041】
防湿膜8は、例えば、以下の方法により形成される。先ず、原材料(例えば、オレフィン系樹脂)を所定の溶剤に溶解させて組成物液を作製する。得られた組成物液を、公知の塗布機(例えば、ディスペンサ等)を利用して目的箇所に付与し、その付与物を適宜、乾燥することで、防湿膜8が得られる。
【0042】
防湿膜8は、図3に示されるように、回路基板4上に実装された検出素子アッセンブリ2のガスセンサパッケージ21の周りを取り囲むように形成されている。防湿膜8は、延設部41bが露出しないように、延設部41bに載せられたはんだ部26(第1はんだ部26a)を覆うように形成されている。延設部41bは、通常、はんだ部26(第1はんだ部26a)によって覆われているため、延設部41bに載せられているはんだ部26(第1はんだ部26a)を、防湿膜8で覆えば、延設部41bもはんだ部26(第1はんだ部26a)を介して防湿膜8で覆われた状態となる。これに対して、延設部41bがはんだ部26(第1はんだ部26a)から露出している場合、その露出した部分の延設部41bを覆うように、はんだ部26(第1はんだ部26a)に防湿膜8が形成される。
【0043】
なお、はんだ部26(第1はんだ部26a)は、延設部41bと共に、端子部24の側面側端子部24bを覆うように形成されている。側面側端子部24bは、本体部23の第2外側側面23b2に形成されており、そのような側面側端子部24bを覆うように形成されたはんだ部26(第1はんだ部26a)を、覆うように防湿膜8が、本体部23の第2外側側面23b2に形成されている(図5参照)。また、防湿膜8は、図4に示されるように、端子部24等が形成されていない本体部23の第1外側側面23b1を覆うように、形成されている。
【0044】
また、防湿膜8は、本体部23の外側底面23aと、回路基板4の実装面4aとの間に形成される隙間を塞ぐように形成されている。本体部23の下側にも、パッド部41(重畳部41a)が形成されており、そのようなパッド部41(重畳部41a)が、腐食成分と接触しないように前記隙間が防湿膜8により塞がれる(図4及び図5参照)。なお、防湿膜8は、本体部23の外側底面23aの下側にあるパッド部41(重畳部41a)が露出しないように(封止されるように)覆うことが好ましい。
【0045】
このように、防湿膜8がガスセンサパッケージ21の周りに形成されていると、回路基板4上に形成されたパッド部41が、弾性シール体5から発生した腐食成分(例えば、硫黄ガス等の硫黄成分)と接触することが防止され、パッド部41が腐食成分により腐食することが防止される。
【0046】
図6に示されるように、回路基板4の実装面4a上のパッド部41は、弾性シール体5の近くに配置されている。特に、パッド部41の延設部41bは、弾性シール体5の近くに配置されている。このようにパッド部41(延設部41b)が、腐食成分の発生源である弾性シール体5の近くに配置されていても、上述したように、ガスセンサ1は、防湿膜8を備えているため、腐食成分によるパッド部41の腐食が防止される。したがって、本実施形態のガスセンサ1では、隣り合ったパッド部41の間が繋がるように腐食生成物(硫化銅)が形成されて、ガスセンサ素子22の端子部24間がショートすること(ガスセンサ素子22の故障)が防止される。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
(1)上記実施形態において、防湿膜8は、弾性シール体5と接触しないように実装面4a上に形成されていたが、本発明の目的を損なわない限り、防湿膜の一部が、弾性シール体(例えば、内周縁側)と接触してもよい。なお、弾性シール体から発生した腐食成分が、回路基板の実装面と防湿膜との間に侵入することを防止する等の観点より、防湿膜は、弾性シール体と接触しない方が好ましい。
【符号の説明】
【0049】
1…ガスセンサ、2…検出素子アッセンブリ、21…ガスセンサパッケージ、22…ガスセンサ素子、23…本体部、24…端子部、24a…底面側端子部、24b…側面側端子部、25…保護キャップ、26…はんだ部、26a…第1はんだ部、26b…第2はんだ部、3…ケーシング、4…回路基板、4a…実装面、41…パッド部、41a…重畳部、41b…延設部、5…弾性シール体、7…測定室
図1
図2
図3
図4
図5
図6