(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】マルチコアファイバ内のコア選択のための光伝送システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/25 20130101AFI20240312BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
H04B10/25
G02B6/02 461
(21)【出願番号】P 2020560269
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059142
(87)【国際公開番号】W WO2019206640
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510229496
【氏名又は名称】アンスティテュ・ミーヌ・テレコム
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レカヤ,ガーヤ
(72)【発明者】
【氏名】アブーセイフ,アクラム
(72)【発明者】
【氏名】ジャウエン,イーブ
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082318(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019817(US,A1)
【文献】ABOUSEIF, A. et al.,Core Mode Scramblers for ML-detection based Multi-Core Fibers Transmission,Asia Communications and Photonics Conference (ACP),OSA,2017年,M1B.5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
G02B 6/02-6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコアファイバを含む光ファイバ伝送チャネル(13)上でデータを伝送するように構成された光トランスミッタ(11)を含む光伝送システム(100)であって、前記データは、複数のコアに従って前記マルチコアファイバに沿って伝播する1つ又は複数の光信号によって搬送され、前記複数のコアのうちの各コアは、1つ又は複数のコアパラメータに関連付けられ、前記光伝送システム(100)は、少なくとも1つの伝送コアを含む伝送コアの組を、伝送コア選択基準に従って前記複数のコアの中から選択するように構成されたコア選択装置(17)を含み、前記伝送コア選択基準は、前記1つ又は複数のコアパラメータに関係し、各コアパラメータは、コアタイプ、コア損失値、平均受信エネルギー及び隣接コアの数を含む群において選択され、前記光トランスミッタ(11)は、前記データを前記伝送コアの組上で伝送するように構成され
、前記マルチコアファイバは、異種であり、前記コア選択装置(17)は、事前に定義されたコアタイプに関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成されるか、または最高コア損失値に関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成される、光伝送システム(100)。
【請求項2】
前記マルチコアファイバは、ファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に関連付けられ、前記コア選択装置(17)は、前記マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値を前記ファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に応じて特定するように構成される、請求項1に記載の光伝送システム(100)。
【請求項3】
前記ファイバパラメータは、ファイバの長さ、少なくとも2に等しいコアの数、クロストーク係数及び結合係数を含み、各クロストーク係数は、前記マルチコアファイバ内の2つのコア間のクロストークを表し、各結合係数は、前記マルチコアファイバ内の2つのコア間の結合を表す、請求項
2に記載の光伝送システム(100)。
【請求項4】
前記ミスアラインメント損失値は、長さ方向のミスアラインメント、横方向のミスアラインメント及び角度ミスアラインメントを含む群において選択される前記マルチコアファイバのミスアラインメントを表す、請求項
2に記載の光伝送システム(100)。
【請求項5】
前記コア選択装置(17)は、前記マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値を、中央値及び分散値によって定義される対数正規分布の確率変数として特定するように構成され、前記中央値及び分散値は、前記ファイバパラメータ及び前記ミスアラインメント損失値に依存する、請求項
2に記載の光伝送システム(100)。
【請求項6】
前記マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値の前記中央値は、第一の値と第二の値との間の積であり、前記第一の値は、各コアに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す対数正規確率変数の中央値に対応し、前記第二の値は、各コアに関連付けられた全クロストーク係数の二乗に対応し、所与のコアに関連付けられた前記全クロストーク係数は、前記所与のコアと、前記マルチコアファイバの、前記所与のコアと異なる前記コアとの間のクロストークを表すクロストーク係数から特定され、前記マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値の前記分散値は、前記各コアに関連付けられた前記全クロストーク係数と、前記各コアに関連付けられた前記全ミスアラインメント損失を表す前記対数正規確率変数の分散に対応する第三の値との間の積である、請求項
5に記載の光伝送システム(100)。
【請求項7】
前記選択された伝送コアの組上で伝送されるデータを搬送する前記光信号を受信及び復号するように構成された光レシーバ(15)をさらに含み、前記コア選択装置(17)は、受信コア選択基準に応じて前記複数のコアの中から受信コアの組を選択するようにさらに構成され、前記光レシーバ(15)は、前記受信コアの組を使用して前記光信号を受信及び復号するように構成される、請求項1に記載の光伝送システム(100)。
【請求項8】
前記コア選択装置(17)は、伝送コアの組及び/又は受信コアの組を、前記光伝送システム(100)の光学コンポーネントの任意の交換を考慮して適応的又は定期的に選択するように構成される、請求項1に記載の光伝送システム(100)。
【請求項9】
マルチコアファイバを含む光ファイバ伝送チャネル(13)上でデータが伝送される光伝送システム(100)におけるコア選択の方法であって、前記データは、複数のコアに従って前記マルチコアファイバに沿って伝播する1つ又は複数の光信号によって搬送され、前記複数のコアのうちの各コアは、1つ又は複数のコアパラメータに関連付けられ、前記方法は、少なくとも1つの伝送コアを含む伝送コアの組を、伝送コア選択基準に従って前記複数のコアの中から選択するステップを含み、前記伝送コア選択基準は、前記1つ又は複数のコアパラメータに関係し、各コアパラメータは、コアタイプ、コア損失値、平均受信エネルギー及び隣接コアの数を含む群において選択され、前記方法は、前記データを前記伝送コアの組上で伝送するステップを含
み、前記マルチコアファイバは、異種であり、前記選択するステップは、事前に定義されたコアタイプに関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するか、または最高コア損失値に関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、光通信に関し、特にマルチコアファイバ内のコア選択のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年にわたり、ネットワークのバンド幅に対する需要が急増している。光通信ネットワーク内のトラフィックの量は、主としてユーザ及びアプリケーションの数の増加によって生じたインターネットトラフィックの増大が原因となった。
【0003】
バンド幅に対するユーザの需要に応えるために周波数、時間、位相及び偏波が利用されてきた。さらに、波長分割多重化(WDM)、コヒーレンス検出及び偏波分割多重化(PDM)の実践的使用並びに高度な信号処理と共に、シングルモードファイバを使用する光通信システムの伝送容量及びリーチを向上させることができた。
【0004】
しかしながら、波が1つの伝播モードに沿って伝播する小さいコア半径の従来のシングルモードファイバを使用するWDM-PDMシステムは、光伝送システムの非線形容量限界にほぼ達し、より高いネットワークバンド幅に対する需要の急増に対処できない。空間は、光伝送システムにおいてリーチ及び容量を増大させるために使用できる最後の自由度として残っている。空間は、独立したデータストリームを多重化し、同じファイバ内で搬送できる、複数の独立した空間チャネルを創出するための多重化次元として使用される。空間分割多重化(SDM)を用いれば、容量は、独立した空間チャネルの数だけ増加され得、したがって光ファイバ伝送リンクのリーチ及び伝送容量の両方が増大する。
【0005】
SDMは、マルチモードファイバ(MMF)又はマルチコアファイバ(MCF)を通じて実現できる。マルチモードファイバは、多くの空間伝播モードによる光の伝播を可能にする。マルチモードファイバのコアは、2つ以上の空間モードの伝播を可能にするように拡大される。光がコア内を通過する際になされる反射の回数が増え、所与の時間スロットでより多くのデータを伝播できることになる。マルチコアファイバは、1つのファイバ内に複数の同じ又は異なるコアを内蔵しており、各コアは、シングルモード又はマルチモードである。
【0006】
マルチモードファイバは、シングルモードファイバより速い伝送速度を提供できる。しかしながら、マルチモードファイバは、主として光学コンポーネント(例えば、ファイバ、増幅器、マルチプレクサ)の不完全さ、空間モード間のクロストーク効果及びモード依存損失(MDL)として知られるノンユニタリクロストーク効果による幾つかの障害によって影響を受ける。
【0007】
マルチコアファイバは、非結合型及び結合型MCFに分類できる。
【0008】
非結合型MCFでは、各コアは、コア間クロストークを長距離伝送応のためのために十分に小さく保ち、各コアからの信号を別々に検出できるように配置されなければならない(すなわち、レシーバにおいて、多入力多出力等化は、不要である)。コア配置の違いによって何種類かの非結合マルチコアファイバが設計されている。これらの設計は、「同種MCF」及び複数の同じコアを内蔵する「トレンチ付加型同種MCF」並びに何種類かの複数のコアを内蔵する異種MCF」を含む。
【0009】
結合型MCFでは、幾つかのコアは、それらが相互に強く且つ/又は弱く結合するように設置される。1つの空間モード及び複数の空間モードに対応する結合型MCFは、高出力ファイバレーザ応用で使用できる。
【0010】
マルチコアファイバは、ミスアラインメント損失及びクロストーク効果による幾つかの障害によって影響を受ける。クロストーク及びミスアラインメント損失は、コア依存損失(CDL)を誘発する。CDLは、マルチモードファイバに影響を与えるMDLと同様の障害効果である。
【0011】
ミスアラインメント損失は、スライス及びコネクタ部における光ファイバの不完全さによって生じる。3種類のミスアラインメント損失が存在し、これには、長さ方向変位損失、横方向変位損失及び角度変位損失が含まれる。
【0012】
クロストーク効果は、1つのクラッド内に複数のコアが存在することによるものであり、これは、隣接コア間のクロストークを発生させる。クロストークは、コア間距離が短くなると増大し、光信号の品質及びマルチコアファイバの内部に組み込まれるコアの数の点で容量に対する主な限定を表す。さらに、クロストーク効果が低ければ、小さいクロストーク値には多入力多出力等化が不要であるため、光レシーバにおける復号の複雑さを軽減できる。
【0013】
クロストーク効果を減少させるための幾つかの光学的解決策が存在し、且つ光ファイバの製造中に適用できる。
【0014】
第一の手法は、コア間距離を増大させることを含む。この手法では、クロストーク効果を削減できるが、これは、クラッドの直径によってファイバの内部のコアの数を限定し、その結果、コア密度及び容量が低下する。
【0015】
第二の手法は、トレンチ付加型同種マルチコアファイバの使用によるトレンチ付加に基づく。トレンチ付加は、各コアを低屈折率のトレンチ層で取り巻くことによって結合係数を低くする。トレンチ付加型ファイバ設計のクロストークは、コア間距離に依存しない。
【0016】
第三の手法は、異種MCFを用いるものであり、隣接コア間に固有屈折率差が導入されて、クロストーク効果を軽減できる。
【0017】
さらに、“A.Abouseif,G.R.Ben-Othman,and Y.Jaouen,Core Mode Scramblers for ML-detection based Multi-Core Fibers Transmission,in Asia Communications and Photonics Conference,OSA Technical Digest,2017”で開示されているランダムコアスクランブリング方式は、異種トレンチ付加型MCFにおけるCDLを緩和し、システム性能を高めるために最近提案されている。このような記事では、ランダムコアスクランブリングにより、誤りの確率の点でより良好な性能を実現できることが記されている。しかしながら、ランダムスクランブリングには、多数のランダムスクランブラを取り付ける必要があり、それによって伝送システムの実装の複雑さ及びコストが増大する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【文献】A.Abouseif,G.R.Ben-Othman,and Y.Jaouen,Core Mode Scramblers for ML-detection based Multi-Core Fibers Transmission,in Asia Communications and Photonics Conference,OSA Technical Digest,2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
既存の解決策は、マルチコアファイバのクロストーク効果を低減させることができるものの、これらは、最適とは言えず、クロストークを完全に取り除くことができない。したがって、マルチコアファイバ内のクロストーク効果を最小化できる伝送技術の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これら及び他の問題に対処するために、マルチコアファイバを含む光ファイバ伝送チャネル上でデータを伝送するように構成された光トランスミッタを含む光伝送システムが提供される。データは、複数のコアに従ってマルチコアファイバに沿って伝播する1つ又は複数の光信号によって搬送され、複数のコアのうちの各コアは、1つ又は複数のコアパラメータに関連付けられる。光伝送システムは、少なくとも1つの伝送コアを含む伝送コアの組を、伝送コア選択基準に従って複数のコアの中から選択するように構成されたコア選択装置を含み、送信コア選択基準は、1つ又は複数のコアパラメータに関係し、光トランスミッタは、データを伝送コアの組上で伝送するように構成される。
【0021】
幾つかの実施形態によれば、コアパラメータは、コアタイプ、コア損失値、平均受信エネルギー及び隣接コアの数を含む群において選択され得る。
【0022】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置は、最高平均受信エネルギーに関連付けられたある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得る。
【0023】
マルチコアファイバが同種である幾つかの実施形態において、複数のコアの各々に関連付けられたコアタイプは、同一であり、コア選択装置は、隣接コアの最低数に関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得る。
【0024】
マルチコアファイバが同種であり、且つ偶数のコアを含む幾つかの実施形態によれば、コア選択装置は、複数のコアをコアのペアにグループ化するように構成され得、コアの各ペアは、2つの隣接コアを含む。このような実施形態において、コア選択装置は、コアの各コアのうちのコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得る。
【0025】
マルチコアファイバが異種である幾つかの実施形態によれば、コア選択装置は、事前に定義されたコアタイプに関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得る。
【0026】
マルチコアファイバが異種である幾つかの実施形態によれば、コア選択装置は、最高コア損失値に関連付けられるある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得る。
【0027】
幾つかの実施形態によれば、マルチコアファイバは、ファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に関連付けられ得、コア選択装置は、マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値をファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に応じて特定するように構成される。
【0028】
幾つかの実施形態によれば、ファイバパラメータは、ファイバの長さ、少なくとも2に等しいコアの数、クロストーク係数及び結合係数を含み得、各クロストーク係数は、マルチコアファイバ内の2つのコア間のクロストークを表し、各結合係数は、マルチコアファイバ内の2つのコア間の結合を表す。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、ミスアラインメント損失値は、長さ方向のミスアラインメント、横方向のアラインメント及び角度アラインメントを含む群において選択されるマルチコアファイバのミスアラインメントを表し得る。
【0030】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置は、マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値を、中央値及び分散値によって定義される対数正規分布の確率変数として特定するように構成され得、中央値及び分散値は、ファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に依存する。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値の中央値は、第一の値と第二の値との間の積であり得、第一の値は、各コアに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す対数正規確率変数の中央値に対応し、第二の値は、各コアに関連付けられた全クロストーク係数に対応し、所与のコアに関連付けられた全クロストーク係数は、前記所与のコアと、マルチコアファイバの、前記所与のコアと異なるコアとの間のクロストークを表すクロストーク係数から特定される。マルチコアファイバの各コアに関連付けられた各コア損失値の分散値は、前記各コアに関連付けられた全クロストーク係数の二乗と、前記各コアに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す前記対数正規確率変数の分散に対応する第三の値との間の積である。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、光伝送システムは、伝送コアの組上で伝送されるデータを搬送する光信号を受信及び復号するように構成された光レシーバをさらに含み、コア選択装置は、受信コア選択基準に応じて複数のコアの中から受信コアの組を選択するように構成され、光レシーバは、受信コアの組を使用して光信号を受信及び復号するように構成される。
【0033】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置は、伝送コアの組及び/又は受信コアの組を、光伝送システムの光学コンポーネントの任意の交換を考慮して適応的又は定期的に選択することにより、コア選択を行うように構成され得る。
【0034】
マルチコアファイバを含む光ファイバ伝送チャネル上でデータが伝送される光伝送システムにおけるコア選択の方法であって、データは、複数のコアに従ってマルチコアファイバに沿って伝播する1つ又は複数の光信号によって搬送され、複数のコアのうちの各コアは、1つ又は複数のコアパラメータに関連付けられる、方法も提供される。方法は、少なくとも1つの伝送コアを含む伝送コアの組を、伝送コア選択基準に従って複数のコアの中から選択するステップを含み、伝送コア選択基準は、1つ又は複数のコアパラメータに関係し、方法は、データを伝送コアの組上で伝送するステップを含む。
【0035】
有利には、本発明の各種の実施形態によるコア選択技術により、データを伝送するためにマルチコアファイバ内で利用可能なコアの選択及び使用を最適化しながら、クロストーク効果の点で光チャネル障害を低減させることができる。
【0036】
有利には、本発明の各種の実施形態によるコア選択技術は、光伝送チャネル上での伝送の改善のために、最大平均受信エネルギーに関連付けられたコアを利用する効率的なツールを提供する。
【0037】
本発明の他の利点は、図面及び詳細な説明をよく参照することで当業者に明らかとなるであろう。
【0038】
添付の図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、本発明の各種の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】光通信システムにおける本発明の例示的な応用の概略図を示す。
【
図2】例示的なマルチコアファイバの断面図を示す。
【
図3】ある実施形態による、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された12のコアを含む12コア
同種マルチコアファイバ及び19コア
同種ファイバの2つのマルチコアファイバの断面図を示す。
【
図4】ある実施形態による、12コア
同種トレンチ付加型マルチコアファイバの断面図を示す。
【
図5】ある実施形態による、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された12のコアを含む12コア
異種マルチコアファイバの断面図を示す。
【
図6】別の実施形態による、7つのコアを含む7コア
異種ファイバと、3つの集合のコアを含み、異なる集合の各々のコアが異なるタイプである19コア
異種ファイバとを含む2つのマルチコアファイバの断面図を示す。
【
図7】幾つかの実施形態による、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された12のコアを含む12コア
異種トレンチ付加型マルチコアファイバ及び7コア
異種トレンチ付加型ファイバを有する2つのマルチコアファイバの2つの断面図を示す。
【
図8】本発明の幾つかの実施形態による光トランスミッタの構造を示すブロック図である。
【
図9】本発明の幾つかの実施形態による光レシーバの構造を示すブロック図である。
【
図10】本発明の幾つかの実施形態による、例示的なコア選択方法である19コア
同種ファイバの断面図を示す。
【
図11】本発明の他の実施形態による、例示的なコア選択方法が適用される12コア
同種ファイバの断面図を示す。
【
図12】本発明の幾つかの実施形態による、光伝送システムにおけるコア選択方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態は、コア間クロストーク及びコア依存損失障害の効果を低減させた、マルチコアファイバ伝送システム上での効率的な伝送を可能にする、マルチコア光ファイバ伝送システムにおけるコア選択装置及び方法を提供する。
【0041】
本発明の各種の実施形態による装置及び方法は、様々な用途に適用される光ファイバ伝送システムにおいて実装され得る。例示的な用途は、以下に限定されることなく、光ファイバ通信、航空宇宙及び航空電子工学、データストレージ、自動車産業、イメージング、運輸、検出及び光工学を含む。
【0042】
例示的通信の用途は、デスクトップコンピュータ、端末及び全国規模のネットワークを含む。光ファイバは、光及びしたがって情報/データを短距離(1メートル未満)又は長距離(例えば、メトロポリタンネットワーク、ワイドエリアネットワーク、大洋横断リンク上の通信では数百又は数千キロメートル)にわたり伝送するために使用され得る。このような用途には、音声(例えば、電話通信)、データ(例えば、ファイバトゥザホームとして知られる家庭及びオフィスへのデータ供給)、画像若しくはビデオ(例えば、インターネットトラフィックの転送)又はネットワークの接続(例えば、スイッチ若しくはルータの接続及び高速ローカルエリアネットワークにおけるデータセンタ接続性)の転送が関わり得る。
【0043】
航空宇宙及び航空電子工学業界の分野における本発明の例示的な実装形態では、光ファイバ系製品は、軍事及び/又は民生用途で使用され得る。光ファイバ技術及び製品は、このような用途では、過酷な環境及び条件下での厳しい試験及び認証に関する要求事項を満たすように設計される。
【0044】
データストレージ応用における本発明の例示的な実装形態では、光ファイバは、ネットワーク内及び/又はストレージシステムの一部としての複数の装置間のリンクとしてデータストレージ機器内で使用され得る。光ファイバ接続性は、長距離であっても非常に高いバンド幅を提供する。
【0045】
自動車業界への本発明の他の例示的な応用では、光ファイバ技術は、例えば、ライト/照明、通信並びに安全及び制御装置及びシステムのための検出において使用され得る。
【0046】
イメージング用途(例えば、遠隔医療)における本発明のまた別の例示的実装において、光ファイバの光伝送特性は、標的又は対象エリアの画像を分析及び/又は解釈するためにイメージビューエンドに転送するために使用され得る。
【0047】
本発明は、運輸システムで使用され得、その場合、インテリジェントトラフィックライト、自動料金所及び可変情報板を備えるスマートハイウェイは、光ファイバに基づくテレメトリシステムを使用し得る。
【0048】
本発明は、検出用途にさらに使用され得、この場合、光ファイバセンサは、温度、変位、振動、圧力、加速度、回転及び化学種の濃度等の何れかの数量を検出するために使用される。光ファイバセンサの例示的な用途は、高電圧及び高出力マシンにおける又は遠隔モニタ(例えば、飛行機の翼、風力タービン、橋、パイプラインのモニタ)のための建物のマイクロ波、温度及び歪の分布における検出、石油探査応用におけるダウンホール検出等を含む。
【0049】
光工学への本発明の他の応用では、光ファイバは、光ファイバ装置内のコンポーネント、例えば干渉計及びファイバレーザを接続するために使用され得る。このような用途では、光ファイバは、電気ワイヤが電子機器で果たすものと同様の役割を果たす。
【0050】
特定の実施形態の以下の説明は、単に例示を目的として、通信応用に関して行われる。しかしながら、当業者であれば、本発明の各種の実施形態が、異なる用途のための他の種類のシステムにも応用され得ることが容易にわかるであろう。
【0051】
図1は、光ファイバ伝送に基づく光伝送システム100(「光通信システム」とも呼ばれる)における本発明の例示的実装形態を示す。光伝送システム100は、少なくとも1つの光トランスミッタ装置11(以下では「光トランスミッタ」とも呼ばれる)を含み、これは、入力されたデータシーケンスを光信号に符号化し、光信号を光学的に少なくとも1つの光レシーバ装置15(以下では「光レシーバ」とも呼ばれる)へと、光をある距離にわたり伝送するように構成された光ファイバ伝送チャネル13(以下では「光ファイバリンク」とも呼ばれる)を通じて伝送するように構成される。
【0052】
光通信システム100は、システムを動作的に制御するためのコンピュータ及び/又はソフトウェアを含み得る。
【0053】
光ファイバ伝送チャネル13は、複数のファイバセクション131(「ファイバスパン」又は「ファイバスライス」とも呼ばれる)のコンカンチネーションを含むマルチコアファイバを含む。ファイバセクション131は、アラインメントの状態又はミスアラインメントの状態であり得る。
【0054】
マルチコアファイバは、円筒形の非線形導波路であり、2つ以上のコア、2つ以上のコアを取り巻くクラッド及びコーティングを含む。マルチコアファイバは、光スペクトルの電磁波を案内する。各コアは、屈折率を有する。光トランスミッタ11により送信される光信号は、多重化され、コアの屈折率とクラッドの屈折率との差によって内部全反射を通じてマルチコアファイバの各コア内を案内される。光は、データを搬送し、ワイヤベース及び無線通信システムより高いバンド幅での長距離にわたる伝送を可能にする。
【0055】
マルチコアファイバが非結合ファイバである幾つかの実施形態において、マルチコアファイバの各コアは、別々の導波路として機能し得、それにより、光信号は、コアを通じて個別に伝播すると考えることができる。
【0056】
マルチコアファイバが結合型ファイバである幾つかの実施形態において、結合は、2つのコア間の距離が非常に小さく、異なるコアに沿って伝播する光信号が重複しない場合、コア間に存在し得る。
【0057】
光ファイバは、典型的には長距離伝送のためにガラス(例えば、シリカ、クオーツガラス、フッ化ガラス)で製造され得る。短距離伝送の場合、光ファイバは、プラスチック光ファイバであり得る。
【0058】
マルチコアファイバは、幾何学パラメータ及び光学パラメータにより特徴付けられ得る。幾何学パラメータは、クラッド径、コア間距離、コア外面-クラッド外面間距離を含み得る。光学パラメータは、波長、マルチコアファイバの異なるコア間のクロストークを表すクロストーク係数及び各コアとクラッドとの間の屈折率差を含み得る。
【0059】
幾つかの実施形態において、光ファイバ通信システム100は、
- 短距離伝送に適した800~900nmの範囲の波長窓、
- 例えば、長距離伝送に使用される約1.3μmの波長窓、
- シリカファイバの損失がこの波長領域で最も低いためにより広く使用される約1.5μmの波長窓
を含む群において選択される領域に対応する波長領域で動作し得る。
【0060】
図2は、6コアファイバの断面図を示し、D
cladは、クラッド径を表し、d
c-cは、コア間距離を表し、d
c-Cladは、コア外面-クラッド外面間距離を表す。
【0061】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバ内のコアは、ファイバ軸の周囲にリング状に、例えば六角形の辺上に配置され得る。他の実施形態において、コアは、ある2次元グリッド上に配置され得る。
【0062】
ある実施形態において、マルチコアファイバは、同一のタイプの2つ以上のコアを含む同種マルチコアファイバであり得る。
【0063】
図3は、2つの例示的な
同種マルチコアファイバの断面図を示し、第一の12コアファイバは、ファイバ軸の周囲にリング状に配置された同一のタイプの12のコアを含み、第二の19コアファイバは、六角形の辺上に配置された18のコア及び中央のコアを含む。
【0064】
ある実施形態において、マルチコアファイバは、同種トレンチ付加型マルチコアファイバであり得、各コアは、低屈折率トレンチ層により囲まれている。
【0065】
図4は、同一のタイプの12のコアを含む例示的なトレンチ付加型
同種マルチコアファイバの断面図を示す。
【0066】
他の実施形態において、マルチコアファイバは、複数のコアを含み、そのうちの少なくとも2つのコアは、異なるタイプの異種マルチコアファイバであり得る。
【0067】
図5は、12のコアを含み、そのうちの2i+1番(i=0,...,5)のコアが同一であり、2i+2番(i=0,...,5)のコアが同一であり、2i+1番のコアが2i+2番(i=0,...,5)のコアタイプと異なるコアタイプである例示的な
異種マルチコアファイバの断面図である。このような
異種マルチコアファイバの各コアは、2つの隣接コアを有し、各コアは、その隣接コアのコアタイプと異なるコアタイプを有する。
【0068】
図6は、2つの例示的な7コアファイバ及び19コア
異種ファイバの断面図を示す。7コアファイバは、六角形の辺上の1~6番の6つのコアと、7番の中央のコアとを含む。この7コアファイバは、3種類の異なるコアタイプを含み、中央のコアは、六角形の辺上のコアのタイプと異なるコアタイプを有し、六角形の辺上に配置された各コアは、隣接コアのコアタイプと異なるコアタイプを有する。19コアファイバは、3種類の異なるコアタイプを含み、中央のコアは、六角形の辺上のコアのタイプと異なるコアタイプを有する。
【0069】
ある実施形態において、マルチコアファイバは、トレンチ付加型異種マルチコアファイバであり得る。
【0070】
図7は、2つの例示的な12コア及び7コアトレンチ付加型
異種マルチコアファイバの断面図を示す。
【0071】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバの各コアは、1つの空間伝播モードを含むシングルモードであり得る。
【0072】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバは、2つ以上の空間伝播モードを含む少なくとも1つのマルチモードコアを含み得る。
【0073】
光ファイバ伝送チャネル13は、光学パワーを再増幅し、ファイバ減衰を補償するためにファイバに挿入された1つ又は複数の増幅器132をさらに含み得、光信号を周期的に増幅する必要のある長距離にわたって十分な信号パワーを保持できるように光信号を再生成する必要がない。
【0074】
増幅器132は、ファイバスライス131の各ペア間に挿入され得、一定のパワーで動作して、光信号のパワーをトランスミッタにおけるその初期の値まで上昇させ得る。特に、光ファイバ伝送チャネルの端に挿入された増幅器132は、レシーバ15での信号検出前に信号増幅を行う。
【0075】
各増幅器132は、マルチコアファイバ内の複数のコアに対応する光信号を同時に増幅するように構成され得る。
【0076】
幾つかの実施形態において、増幅器132は、1つのコアファイバ増幅器の複製を含み得る。
【0077】
他の実施形態において、増幅器132は、光マルチコア増幅器であり得る。例示的な光増幅器は、マルチコアエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)、例えばコア励起型マルチコアEDFA及びクラッド励起型EDFA増幅器を含む。コア励起型及びクラッド励起型増幅器は、1つ又は複数の励起ダイオードを使用し得る。特にEDFA増幅器では、コアごとの励起ダイオードが使用され得る。
【0078】
幾つかの実施形態において、光信号増幅は、非線形誘導ラマン散乱効果を利用して分散式に行われ得る。このような実施形態において、ファイバは、伝送リンク及び増幅媒質の両方として使用される。
【0079】
他の実施形態において、信号増幅は、規則的に配置された光増幅器及び誘導ラマン散乱効果の共同使用によって実現され得る。
【0080】
さらに別の実施形態において、信号増幅は、光/電気変換(
図1では図示せず)を通じて電気ドメインで行われ得る。このような実施形態では、光ファイバ伝送チャネル13は、各増幅ステージにおいて、
- 光信号を電気ドメインに再び変換するフォトダイオード、
- 変換された電気信号を増幅する電気増幅器、及び
- 増幅された電気信号に対応する光信号を発生するレーザダイオード
を含み得る。
【0081】
幾つかの実施形態(
図1では図示せず)によれば、光伝送チャネル13は、
- 波長分散の効果に対抗する分散補償装置であって、例えばレシーバ15における光信号の検出前に波長分散を取り消すか又は分散を補償するように構成された分散補償装置、
- 波長分割多重化システムで実装される光分岐挿入装置等の光スイッチ及び光マルチプレクサ、
- 電子及び光再生器等、光信号を再生するための1つ又は複数の装置
の1つ又は複数をさらに含み得る。
【0082】
図8は、幾つかの実施形態による光トランスミッタ11のコンポーネントを示す。光トランスミッタ11は、入力データシーケンスを、光伝送チャネル13を通じて送信されることになる光信号に変換するように構成され得る。したがって、光トランスミッタ11は、以下を含み得る:
- 長さkの(すなわちk個のシンボルを含む)入力データシーケンスを、少なくとも1つの順方向誤り訂正符号(FEC)(「誤り補正符号」とも呼ばれる)を適用することにより、長さn>kのコードワードベクトルの形態の符号化シーケンスに符号化するように構成された順方向誤り訂正符号(FEC)エンコーダ81(「誤り補正符号エンコーダ81」とも呼ばれる)、
- 符号化シーケンスを混合して、変調前にバースト誤りに対する保護層を符号化シンボルに追加するように構成されたインタリーバ83、
- 変調スキームをインタリーブされた符号化シーケンスに(又はトランスミッタ11がインタリーバを含まない実施形態ではコードワードベクトルに)適用することにより、変調シンボルベクトルs
cの形態の変調シンボルの集合を特定するように構成された変調器85。2
q個のシンボル又は状態を有する2
q-QAM又は2
q-PSK等、異なる変調スキームが実装され得る。変調ベクトルs
cは、各シンボルがqビットのK個の複素数シンボルs
1,s
2,...,s
Kを含む複素数ベクトルであり得る。2
q-QAM等の変調フォーマットが使用される場合、2
q個のシンボル又は状態は、整数フィールド
【数1】
の部分集合を表す。対応するコンステレーションは、異なる状態又はシンボルを表す2
q個の点で構成される。加えて、二乗変調の場合、情報シンボルの実数部及び虚数部は、同じ有限アルファベットA=[-(q-1),(q-1)]に属する。
- 時空間符号を適用することにより、時間伝送間隔(TTI)中に光伝送チャネル13を通じて送信されることになるデータシンボルを搬送するコードワード行列を特定するように構成された時空間エンコーダ87。時空間エンコーダ25は、Q個の変調シンボルs
1,s
2,...,s
Qの受信シーケンス(又はブロック)の各々を次元N
t×Tのコードワード行列Xに変換するように構成され得る。コードワード行列は、N
t行、T列に配置された複素数を含み、N
tは、光信号の伝播に使用される伝播コアの数を示し、Tは、時空間符号の時間的長さを示し、時間チャネルの使用回数に対応する。コードワード行列の値の各々は、したがって、使用時間及び信号伝播に使用される伝播コアに対応する。時空間エンコーダ87は、線形時空間ブロック符号(STBC)を用いてコードワード行列を生成し得る。このような符号の符号化速度は、チャネル使用1回あたり
【数2】
の複素シンボルに等しく、Kは、この場合、次元Kのベクトルs
c=[s
1,s
2,...,s
K]
tを構成する符号化複素数シンボルの数である。フルレート符号が使用される場合、時空間エンコーダ87は、K=N
tTの複素数シンボルを符号化する。STBCの例は、完全符号である。完全符号は、複素情報シンボルの数
【数3】
を符号化することによってフル符号化速度を提供し、非消失行列特性を満足させる。
【0083】
幾つかの李実施形態において、時空間エンコーダ87は、異なる伝播コアで受信した複素数情報シンボルを多重化することによる、V-BLASTスキームと呼ばれる空間多重化スキームを使用し得、時間次元での符号化を行わない。
【0084】
幾つかの実施形態によれば、入力データシーケンスは、kビットを含むバイナリシーケンスであり得る。FECエンコーダ81は、このような実施形態において、少なくとも1つのバイナリFECコードを適用することにより、入力バイナリシーケンスを、nビットを含むバイナリコードワードベクトルに符号化するように構成され得る。
【0085】
他の実施形態では、入力データシーケンスは、ガロア体の順序を表すガロア体GF(q)(q>2)の値を取るシンボルを含み得る。このような実施形態において、FECエンコーダ22は、入力データシーケンスを、n個のシンボルを含むコードワードベクトルに符号化するように構成され得、コードワードベクトルに含まれる各シンボルは、ガロア体GF(q)内の数値を取る。この場合の符号化プロセスは、GF(q)(q>2)で構成された非バイナリFEC符号を用いて実行され得る。
【0086】
符号化動作を行うことにより、FECエンコーダ81は、入力バイナリシーケンスに冗長ビット(一般に冗長シンボル)を追加し、レシーバは、一般的な伝送誤りを検出及び/又は訂正できる。FEC符号の使用は、伝送誤りに対する追加の保護及びイミュニティを提供し、符号化されない伝送(すなわちFEC符号化を行わない変調データの伝送)に関する性能の大幅な改善が可能となる。
【0087】
誤り確率についての追加の改善及び削減は、2つ以上のFEC符号のコンカンチネーションを通じて実現され得る。符号のコンカンチネーションは、直列、並列又はマルチレベルアーキテクチャに従い得る。FECエンコーダ81は、したがって、2つ以上のFEC符号を実装するように構成され得る。
【0088】
光トランスミッタ11は、多数の直交サブキャリアを含む各光キャリア内でマルチキャリア変調技術を実装することにより、マルチキャリアシンボルを生成するように構成された複数のマルチキャリア変調器88をさらに含み得る。さらに、マルチキャリア変調器は、ファイバの分散及びマルチコアファイバ内の各種のコア間のクロストークから生じるシンボル間干渉に対するよりよい抵抗を提供するために実装され得る。例示的なマルチキャリア変調フォーマットは、直交周波数分割多重化(OFDM)及びフィルタバンクマルチキャリア(FBMC)を含む。
【0089】
マルチキャリア変調器88により伝達される周波数ドメイン信号は、その後、受信した周波数ドメイン信号を光ドメインに変換するように構成されたデジタル光学フロントエンド89により処理され得る。デジタル光学フロントエンド88は、所与の波長の多数のレーザ並びにマルチコアファイバのコア中の使用される偏波状態及び空間伝播モードに関連付けられた複数の光変調器(
図8では図示せず)を用いて変換を実行し得る。レーザは、波長分割多重化(WDM)技術を用いて同じ又は異なる波長のレーザビームを発生するように構成され得る。異なるレーザビームは、その後、光変調器によってOFDMシンボルの異なる出力(又はシングルキャリア変調を使用する実施形態ではコードワード行列の異なる値)を用いて変調され、ファイバの異なる偏波状態に従って偏波され得る。例示的な変調器は、マッハツェンダ変調器を含む。位相及び/又は振幅変調が使用され得る。加えて、異なる光信号を変調するために各種の光変調器によって使用される変調スキームは、同様であるか又は異なり得る。
【0090】
光変調器及びレーザの数は、使用される偏波状態の数、マルチコアファイバの各コアで使用される伝播モードの数及びファイバ内のコアの数に依存する。
【0091】
デジタル光学フロントエンド88は、生成された光信号をマルチコアファイバの各コアに注入し、各コア中で利用可能な伝播モードに従って伝播させるように構成されたFAN-IN装置(
図8では図示せず)をさらに含み得る。FAN-IN装置の出力端とマルチコア光伝送チャネル13の入力端とを接続するために、光コネクタが使用され得る。
【0092】
上述の実施形態の何れかにより生成される光信号は、ファイバに沿って伝搬し、その後、光伝送チャネル13の反対の端に到達し得、そこで光レシーバ15によって処理される。
【0093】
図9は、幾つかの実施形態による光レシーバ15のブロック図である。光レシーバ15は、光トランスミッタ11により伝送チャネル13を通じて伝送された光信号を受信し、当初の入力データシーケンスの推定を生成するように構成される。したがって、光レシーバ15は、以下を含み得る:
- 例えば、1つ又は複数のフォトダイオードを用いて光信号を検出し、これらをデジタル信号に変換するように構成された光学デジタルフロントエンド91。光学デジタルフロントエンド91は、FAN-OUT装置(
図9では図示せず)を含み得る。
- サイクリックプレフィックスを除去し、時空間デコーダ93に送達されることになる決定変数の組を生成するように構成された複数のマルチキャリア復調器92。
- 時空間復号アルゴリズムを適用することにより、決定変数の組から変調データシーケンスの推定を生成するように構成された時空間デコーダ93。
- 時空間デコーダ93により推定された変調データシーケンスの変調を実行することにより、バイナリシーケンスを生成するように構成された復調器94。
- 復調器94により送達されたバイナリシーケンス内のビット(一般にはシンボル)の順序を再配置して、ビットの当初の順序を回復するように構成されたデインタリーバ95。
- デインタリーバ95により送達される再整列されたバイナリシーケンスに軟又は硬判定FECデコーダを適用することにより、光トランスミッタ11により処理される入力データシーケンスの推定を送達するように構成されたFECデコーダ96(「誤り訂正符号デコーダ96」とも呼ばれる)。例示的な軟判定FECデコーダは、ビタビアルゴリズムを含む。
【0094】
時空間デコーダ93は、最尤デコーダ、ゼロフォーシングデコーダ、ゼロフォーシング判定帰還型等化器及び最小平均二乗誤差デコーダからなる群において選択される時空間復号アルゴリズムを実装し得る。
【0095】
例示的な最尤デコーダは、スフィアデコーダ、シュノール・オイヒナ型デコーダ、スタックデコーダ、スフェリカルバウンドスタックデコーダを含む。
【0096】
シングルキャリア変調を使用する実施形態において、複数のマルチキャリア変調器92は、1つの変調器に置き換えられ得る。同様に、マルチキャリア復調器92は、1つの復調器に置き換えられ得る。
【0097】
FECエンコーダ81が2つ以上の順方向誤り訂正符号のコンカンチネーションを実装する幾つかの実施形態において、対応する構造は、FECデコーダ96により実装され得る。例えば、内符号及び外符号の直列コンカンチネーションに基づく実施形態では、FECデコーダ96は、内符号デコーダ、デインタリーバ及び外符号デコーダ(
図9では図示せず)を含み得る。並列アーキテクチャの2つの符号を含む実施形態では、FECデコーダ96は、デマルチプレクサ、デインタリーバ及びジョイントデコーダ(
図9では図示せず)を含み得る。
【0098】
本発明の特定の実施形態の以下の説明は、単に例示を目的として、単一偏波、単一波長、単一キャリア変調、時空間符号化を用いない単一誤り訂正符号及びシングルモードマルチコアファイバを使用する光通信システム100に関して行われる。しかしながら、当業者であれば、本発明の各種の実施形態が、2つの偏波を用いる偏波多重化と組み合わせて、且つ/又は複数の波長を使用する波長多重化と組み合わせて、且つ/又はマルチモードファイバコアを用いるモード多重化と組み合わせて、且つ/又はマルチキャリア変調フォーマットと組み合わせて、且つ/又は時空間符号化と組み合わせてマルチコアファイバも応用できることが容易にわかるであろう。
【0099】
本発明の幾つかの実施形態を理解しやすくするために、以下で使用する幾つかの注釈及び定義を以下に記す:
- Lは、光ファイバ伝送チャネル13におけるマルチコアファイバの全長を指す。
- Kは、マルチコアファイバ内にコンカンチネートされるファイバセクション(「ファイバスライス」又は「ファイバスパン」とも呼ばれる)の数を指す。
- dは、相関長さを指す。
- Rbは、曲げ半径を指す。
- Nc≧2は、マルチコアファイバ内のコア総数を指し、コアは、コアがコア-nとして指定され、nが1~Ncの値をとるように番号が付けられる(すなわち、各コアは、1~Ncで変化する1つのコア番号に関連付けられる)。
- Rnは、コア-nの半径を指す。
- 各コア、コアn(n=1,...,Nc)は、{Tn;λn;En;Nneigh,n}で表されるコアパラメータに関連付けられ、Tnは、コア-nのコアタイプを指し、λnは、コア-nに関連付けられたコア損失値を指し、Enは、コア-nに関連付けられた平均受信エネルギーを指し、Nneigh,nは、コア-nの隣接コアの数を指す。
- XTn,mは、コア-nとコア-m(n≠m)との間のクロストーク(「コア間クロストーク」とも呼ばれる)を定量化するクロストーク係数(「コア間クロストーク係数」とも呼ばれる)を指す。
- kn,mは、コア-nとコア-m(n≠m)との間の結合(「コア間結合」とも呼ばれる)を定量化する結合係数(「コア間結合」とも呼ばれる)を指す。
- Δβnmは、コア-nとコア-m(n≠m)との間の伝播定数差を表す。
- NTX,setは、伝送側で選択されるコアの数を示す。
- NRX.setは、受信側で選択されるコアの数を指す。
【0100】
本発明の各種の実施形態は、トランスミッタにおいて及び/又はレシーバにおいて、マルチコアファイバ内で利用可能なコアのうちのコアの選択された部分集合のみが光伝送システム100内のデータの伝送に使用され、且つ/又は光レシーバ15において利用可能なコアのうちの選択されたコアの部分集合を用いてデータが光伝送システム100内で受信及び復号されるように、コア選択を実行するための効率的なコア選択装置を提供する。
【0101】
したがって、
図1を参照すると、光伝送システム100は、N
TX,set個の伝送コアの組を、マルチコアファイバに含まれる複数のコアの中から伝送コア選択基準に従って選択するように構成されたコア選択装置17を含み、伝送コア選択基準は、1つ又は複数のコアパラメータに関係する。光トランスミッタ11は、特定された伝送コアの組上でのみデータを伝送するように構成される。
【0102】
幾つかの実施形態において、コア-nに関連付けられたコアパラメータは、コアタイプTn、コア損失値λn、平均受信エネルギーEn及び隣接コアの数Nneigh,nを含む群において選択され得る。
【0103】
幾つかの実施形態によれば、伝送コア選択基準は、複数のコア、コア-n(n=1,...,N
c)の中から、最大平均受信エネルギーに関連付けられた所与の数N
TX,setのコアを選択することに対応する。このような実施形態において、コア選択装置17は、最高平均受信エネルギーを有するある数のコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得、それにより、
【数4】
により示される選択コアは、以下による最大化問題を満たす。
【数5】
【0104】
コア選択装置17は、マルチコアファイバに含まれる複数のコアの各コアに関連付けられた平均受信エネルギーを、単位エネルギーですべてのコアを励起させ、光レシーバ15で1コアあたりの平均受信エネルギーを計算することにより、オフラインで事前に特定するように構成され得る。
【0105】
マルチコアファイバが
同種である、すなわちマルチコアファイバに含まれる複数のコアの各々に関連付けられたコアタイプが同種である(T
i=T
j、それぞれi≠j、i=1,...,N
c、且つj=1,...,N
c)幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、N
c個の複数のコアの中から、隣接コアの最低数に関連付けられたある数N
TX,setのコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用するように構成され得、それにより、
【数6】
により示される選択コアは、以下による最小化問題を満たす。
【数7】
【0106】
図11は、伝送コア選択基準が、マルチコアファイバのコアに関連付けられた隣接コアの数に基づく、19コア
同種ファイバにおけるコア選択の例を示す。したがって、白い丸は、選択されていないコアに対応し、黒い丸は、伝送選択コアの組に対応し、選択された各コアは、選択されていないコアに関連付けられた隣接コアの数と比較して隣接コアの最低数に関連付けられる。
【0107】
マルチコアファイバが
同種であり、且つ偶数N
cのコアを含む幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、複数のコア、
【数8】
を、
【数9】
で示されるコアのペアにグループ化するように構成され得、コアの各ペア{コア
i,コア
i+1}(i=1,3,5,...N
c-1)は、隣接する2つのコア、コア
i及びコア
i+1を含む。このような実施形態において、コア選択装置17は、コアの各ペア{コア
i,コア
i+1}(i=1,3,5,...N
c-1)のうちの1つのコア、コア
i又はコア
i+1を選択することを含む伝送コア選択基準を適用することにより、N
TX,set個の伝送コアの組を選択するように構成され得る。
【0108】
図11は、2つのコアのうちの1つのコアが選択される、12コア
同種ファイバにおける例示的コア選択を示す。
【0109】
マルチコアファイバが異種である他の実施形態によれば、コア選択装置17は、Nc個の複数のコアの中から、事前に定義されたコアタイプTpredに関連付けられたある数NTX,setのコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用することにより、NTX,set個の伝送コアの組を選択するように構成され得る。マルチコアファイバに含まれるコア、コアn(n=1,...,Nc)は、したがって、そのコア、コアnに関連付けられたコアタイプTnが、事前に定義されたコアタイプTpredと同じであれば選択される。
【0110】
マルチコアファイバが
異種である幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、N
c個の複数のコアの中から、最高コア損失値に関連付けられたある数N
TX,setのコアを選択することを含む伝送コア選択基準を適用することにより、N
TX,set個の伝送コアの組を選択するように構成され得る。したがって、
【数10】
により示される選択コアは、以下のように表現される最大化問題を満たす。
【数11】
【0111】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、マルチコアファイバの各コア-nに関連付けられた各コア損失値λnを、マルチコアファイバに関連付けられたファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に応じて事前に特定するように構成され得る。
【0112】
幾つかの実施形態によれば、ファイバパラメータは、ファイバの長さL、少なくとも2に等しいコアの数Nc≧2、クロストーク係数XTn,m(n,m∈{1,...,Nc})及び結合係数kn,m(n,m∈{1,...,Nc})を含み、各クロストーク係数XTn,mは、マルチコアファイバ内のコア-nとコア-m(n≠m)との間のクロストークを表し、各結合係数kn,mは、マルチコアファイバ内のコア-nとコア-m(n≠m)との間の結合を表す。
【0113】
ファイバパラメータは、曲げ半径、ファイバスライスの数K、クラッド径、マルチコアファイバの各コアの半径及びマルチコアファイバの各コアのタイプをさらに含み得る。
【0114】
幾つかの実施形態において、ミスアラインメント損失は、光ファイバのファイバスパンにおける及びコネクタ(例えば、FAN-IN/FAN-OUT装置と光ファイバ伝送チャネルの入力/出力端との間のコネクタ)の不完全性によって生じ得る。ミスアラインメント損失は、長さ方向ミスアラインメント、横方向ミスアラインメント及び角度ミスアラインメントを含む群において選択されるミスアラインメントを含み得る。
【0115】
幾つかの実施形態によれば、ミスアラインメント損失は、ガウス確率変数としてモデル化され得る。より具体的には、コア-nに関連付けられたミスアラインメント損失は、中央値ゼロ及びσ
(x,y),nで示される標準偏差のガウス確率変数としてモデル化され得、以下のように表現される。
【数12】
【0116】
式(4)中、rdは、「x」及び「y」方向へのマルチコアファイバの横方向の変位を示す。
【0117】
光ファイバ伝送チャネル13にコア間クロストーク効果及びミスアラインメント効果が発生する実施形態において、光伝送チャネル13は、以下の関係により説明される光マルチ入力マルチ出力(MIMO)システムにより表され得る。
Y=H.X+N (2)
【0118】
式(5)中、
- Xは、光伝送チャネル13上において、n番目のシンボルがコア-n(n=1,...,Nc)上で伝送されるように伝送されるNc個のシンボルを含む長さNcの複素数ベクトルを指す。
- Yは、光レシーバ15での受信信号を指定する長さNcの複素数ベクトルである。
- Hは、光チャネル行列を指定し、発生した減衰及びミスアラインメント損失に加えてマルチコアファイバ内の異なるコア上の光信号伝播中にコアに生じる損失を表す次元Nc×Ncの複素数行列である。
- Nは、光チャネルノイズを指定する長さNcの実数ベクトルである。
【0119】
幾つかの実施形態によれば、光チャネルノイズは、中央値ゼロ、分散N0の白色ガウスノイズであり得る。
【0120】
コア間クロストーク効果は、以下のように表現されるH
XTにより示されるクロストークチャネル行列によって表され得る。
【数13】
【0121】
式(6)中、クロストークチャネル行列の対角成分は、XTn=1-Σn≠mXTn,mで与えられる。クロストークは、コア間の交換エネルギーを表し、当業者の間で知られるパワー結合理論に基づいて推定できる。
【0122】
マルチコアファイバが
同種である幾つかの実施形態によれば、各コア-n及びコア-m(n≠m)間のクロストークを定量化するクロストーク係数XT
n,mは、以下によって表現される。
【数14】
【0123】
式(7)中、Λは、コア間距離を指し、β2は、伝播定数である。
【0124】
マルチコアファイバが
異種である幾つかの実施形態によれば、各コア-n及びコア-m(n≠m)間のクロストークを定量化するクロストーク係数XT
n,mは、以下によって表現される。
【数15】
【0125】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、各コア、コア-n(n=1,...,Nc)に関連付けられたコア損失値λnを、光ファイバ伝送チャネル13を表す光チャネル行列Hに特異値分解を適用することによって特定するように構成され得る。
【0126】
光チャネル行列の特異値分解は、以下に従って表現できる。
H=U.Σ.V (9)
【0127】
式(9)中、行列Σは、N
c×N
c対角行列であり、以下により与えられる。
【数16】
【0128】
式(10)中、αiは、コア、コア-iに関連付けられた全ミスアラインメント損失を指し、XTi=1-Σi≠mXTi,mは、光伝送チャネル13の端におけるコア、コア-iに関連付けられた全クロストークを定量化する全クロストーク係数を指し、コア、コア-iに関連付けられた全クロストーク係数は、前記コア、コア-iとマルチコアファイバ内の残りのコアとの間のクロストークを定量化するクロストーク係数に依存する。
【0129】
マルチコアファイバは、K個のファイバスパンのコンカンチネーションで製作され、各スパンは、クロストークチャネル行列とミスアラインメントチャネル行列との乗算と均等である。したがって、式(5)の光MIMOシステムは、以下によって均等に表現できる。
【数17】
【0130】
式(11)中、
- Lは、光ファイバリンク損失を補償するために使用される正規化係数を指し、
- HXT.kは、k番目のファイバスパンに関連付けられたクロストークチャネル行列を指し、
- Mkは、k番目のファイバスパンに関連付けられたミスアラインメントチャネル行列を指す。
【0131】
ファイバスパンへのファイバ分解を用いると、ミスアラインメント損失係数α
iは、以下によって与えられ得る。
【数18】
【0132】
式(12)中、
【数19】
及び
【数20】
(i=1,...,N
c)は、1自由度、(σ
(x,y),i)
2に等しい中央値及び2(σ
(x,y),i)
4に等しい分散のカイ二乗分散確率変数を指す。
【0133】
ファイバスパンの数Kが高い実施形態を考慮し、本発明者らは、各変数Z
iを中央値
【数21】
及び分散
【数22】
の正規分布変数としてモデル化できることを示した。したがって、ミスアラインメント損失係数α
iは、それぞれ以下により与えられる中央値
【数23】
及び分散値
【数24】
の対数正規確率変数によりモデル化できる。
【数25】
【0134】
光チャネル行列の特異値分解の微分により、式(5)の光MIMOシステムは、以下に従って表現できる。
【数26】
【0135】
式(15)によれば、コア選択装置17は、各コア、コア-n(n=1,...,N
c)に関連付けられたコア損失値λ
nを、コア損失値λ
nが中央値
【数27】
及び分散
【数28】
の対数正規分布変数であるように特定するように構成され得、各コア損失値の中央値及び分散は、前記各コアに関連付けられた全クロストーク係数XT
nを含むファイバパラメータと、ミスアラインメント損失係数α
iの対数正規分布の中央値及び分散において生じるミスアラインメント損失とに依存する。
【0136】
より具体的には、マルチコアファイバの各コア、コア-nに関連付けられた各コア損失値λ
nの中央値
【数29】
は、第一の値と第二の値との間の積であり、第一の値
【数30】
は、コア、コア-nに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す対数正規確率変数α
nの中央値に対応し、第二の値XT
n
2は、前記コア、コア-nに関連付けられた全クロストーク係数の二乗に対応する。マルチコアファイバの各コア、コア-nに関連付けられた各コア損失値λ
nの分散値
【数31】
は、コア、コア-nに関連付けられた全クロストーク係数XT
nと、コア、コア-nに関連付けられた全ミスアラインメント損失を表す対数正規確率変数α
nの分散
【数32】
に対応する第三の値との間の積である。
【0137】
幾つかの実施形態によれば、コア選択は、NTX.set個の伝送コアの組上で光トランスミッタ11により伝送された伝送光信号を、レシーバ側で利用可能なコアの部分集合を用いて受信及び復号するためにレシーバ側で実行され得る。したがって、コア選択装置17は、NRX,set個の受信コアの組を、受信コア選択基準に従ってNc個の複数のコアの中から特定するようにさらに構成され得、光レシーバ15は、NRX,set個の受信コアの組を用いて光信号を受信及び復号するように構成される。
【0138】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、NRX.set≧NTX,set個の受信コアの組を特定するように構成され得、受信コアの数は、伝送コアの数より多いか又はそれに等しい。したがって、光レシーバ15は、データを受信及び復号するために、データが光トランスミッタ11により伝送されたときの選択された伝送コアに対応する受信コアを使用するか、又は利用可能なコア全部の部分集合を使用することができる。コア選択装置17は、NRX,set個の受信コアの組を性能と複雑さとの間のトレードオフ基準に従って特定するように構成され得る。
【0139】
幾つかの実施形態によれば、コア選択装置17は、光伝送システム100の取付け中並びに光トランスミッタ11の構成及び/又は光レシーバ15の構成中にコア選択を実行する(すなわち光トランスミッタ11でのコア選択に使用されるNTX,set個の伝送コアの組を選択し、且つ/又は光レシーバ15でのコア選択に使用されるNRX,set個の受信コアの組を選択する)ように構成され得る。
【0140】
他の実施形態において、コア選択装置17は、光伝送システム100の取付け後にオフラインでコア選択を実行するように構成され得る。特に、コア選択装置17は、光伝送システム100のコンポーネント(例えば、増幅器)の任意の交換を考慮して適応的又は定期的に送信コアの組及び/又は受信コアの組を選択することにより、コア選択を実行するように構成され得る。このような実施形態において、コア選択装置17は、選択されたNTX,set個の伝送コアの組(又は選択されたNRX,set個の受信コアの組)を光トランスミッタ11(又は光レシーバ15)に送信するように構成され得る。
【0141】
マルチコアファイバで製作された光ファイバ伝送チャネル13上でデータが伝送される光伝送システム100におけるコア選択の方法であって、データを搬送する光信号は、Nc個の複数のコアに従ってマルチコアファイバに沿って伝播し、複数のコアのうちの各コア、コア-nは、1つ又は複数のコアパラメータに関連付けられる、方法も提供される。方法は、伝送コアの組を、伝送コア選択基準に従って複数のコアの中から特定するステップを含み、伝送コア選択基準は、マルチコアファイバのコアに関連付けられた1つ又は複数のコアパラメータに依存し、方法は、特定された伝送コアの組上でデータを伝送するステップを含む。
【0142】
図12は、単一偏波、単一波長、時空間符号化を適用しない単一キャリア非符号化変調が使用され、マルチコアファイバの各コアがシングルモードコアである、本発明の幾つかの実施形態による光伝送システム100における伝送時のコア選択方法を示すフローチャートである。
【0143】
ステップ1201では、マルチコアファイバの各コアに関連付けられた少なくとも1つのコアパラメータが受信され得る。
【0144】
幾つかの実施形態において、コア-nに関連付けられたコアパラメータは、コアタイプTn、コア損失値λn、平均受信エネルギーEn及び隣接コアの数Nneigh,nを含む群において選択され得る。
【0145】
幾つかの実施形態において、マルチコアファイバの各コア-nに関連付けられた各コア損失値λnは、マルチコアファイバに関連付けられたファイバパラメータ及びミスアラインメント損失値に応じて事前に特定され得る。特に、マルチコアファイバのコアに関連付けられたコア損失値は、式(17)に従ってクロストーク係数及びミスアラインメント損失係数に応じて特定され得る。
【0146】
幾つかの実施形態において、ファイバパラメータは、コアの数Nc≧2、ファイバの長さL、クロストーク係数XTn,m(n,m∈{1,...,Nc})及び結合係数kn,m(n,m∈{1,...,Nc})を含み、各クロストーク係数XTn,mは、マルチコアファイバ内のコア-nとコア-m(n≠m)との間のクロストークを表し、各結合係数kn,mは、マルチコアファイバ内のコア-nとコア-m(n≠m)との間の結合を表す。
【0147】
幾つかの実施形態において、ファイバパラメータは、曲げ半径Rb、クラッド径、ファイバスライスの数K、マルチコアファイバの各コアの半径及びマルチコアファイバの各コア、コア-nのタイプTn(n=1,...,Nc)をさらに含み得る。
【0148】
幾つかの実施形態において、ミスアラインメント損失は、長さ方向のミスアラインメント、横方向のミスアラインメント及び角度ミスアラインメントを含む。
【0149】
幾つかの実施形態において、ミスアラインメント損失値は、式(4)に従って事前に特定され得る。
【0150】
ステップ1203では、マルチコアファイバのNc個のうちのNTX,set個の伝送コアの組が、マルチコアファイバのコアに関連付けられた1つ又は複数のコアパラメータに関係する伝送コア選択基準に従って特定され得る。
【0151】
幾つかの実施形態によれば、伝送コア選択基準は、複数のコア、コア-n(n=1,...,Nc)のうちの、式(1)の最適化問題に従い、最高平均受信エネルギーに関連付けられたある数NTX,set個のコアを選択することを含み得る。
【0152】
マルチコアファイバが同種である幾つかの実施形態において、伝送コア選択基準は、複数のNc個のコアの中から、式(2)の最適化問題に従い、隣接コアの最低数に関連付けられたある数NTX,set個のコアを選択することを含み得る。
【0153】
マルチコアファイバが同種である他の実施形態によれば、伝送コア選択基準は、隣接コアのペアにグループ化されたそれぞれ2つの隣接コアのうちの1つのコアを選択することを含み得る。
【0154】
マルチコアファイバが異種である幾つかの実施形態によれば、伝送コア選択基準は、事前に定義されたコアタイプと同一のコアタイプに関連付けられたコアを選択することを含み得る。
【0155】
マルチコアファイバが異種である幾つかの実施形態によれば、伝送コア選択基準は、複数のNc個のコアの中から、式(3)の最適化問題に従い、最高コア損失値に関連付けられたある数NTX,set個のコアを選択することを含み得る。
【0156】
ステップ1205では、データは、光伝送システム100において、特定された伝送コアの組上で伝送され得る。
【0157】
幾つかの実施形態によれば、方法は、光伝送システム100内で伝播するデータの受信時でのコア選択をさらに含み得る。このような実施形態において、方法は、NRX,set個の受信コアの組を、受信コア選択基準に従って複数のNc個のコアの中から選択するステップを含み得、光伝送システム内で伝播するデータ搬送光信号は、NRX,set個の受信コアの組を用いて受信及び復号される。
【0158】
各種の実施形態は、単一偏波、単一波長及び単一キャリア変調が使用されるシングルコアマルチモードファイバの場合について詳細に説明されているが、本発明は、2つの偏波を用いる偏波多重化と組み合わせて、且つ/又は幾つかの波長を使用する波長多重化の使用と組み合わせて、且つ/又はマルチキャリア変調フォーマットを用いて、マルチコアマルチモードファイバでも応用できることに留意すべきである。
【0159】
さらに、本発明は、通信の用途に限定されず、データストレージ及び医療用イメージング等の他の応用に組み込まれ得る。本発明は、複数の光伝送システム内において、例えば自動産業用、石油又はガス市場、航空宇宙及び航空電子工学、検出用途等でも使用され得る。
【0160】
本発明の実施形態を様々な例の説明によって解説し、これらの実施形態をかなり詳細に説明したが、本出願人は、付属の特許請求の範囲をそのような詳細に制限することを意図しておらず、又は決して限定することを意図していない。他の利点及び改良も当業者に容易に明らかとなるであろう。したがって、本発明は、その最も広い態様において、図示及び説明された特定の詳細、代表的方法及び例示的な例に限定されない。