(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】媒体内の受信機の特性を決定するための方法およびこの方法を実現するシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/46 20060101AFI20240312BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20240312BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01S13/46
G01S13/74
H01Q3/26
(21)【出願番号】P 2020564704
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 FR2019051211
(87)【国際公開番号】W WO2019224503
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519416532
【氏名又は名称】グリーナーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョフロワ・ルロゼ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・デル・ウニュ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・フィンク
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・オーブリー
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-270955(JP,A)
【文献】特表2016-536931(JP,A)
【文献】特開2013-061151(JP,A)
【文献】特表2009-543491(JP,A)
【文献】特開2017-175342(JP,A)
【文献】特開2007-143044(JP,A)
【文献】特開2017-122735(JP,A)
【文献】特開2017-116519(JP,A)
【文献】特表2009-521681(JP,A)
【文献】特表2003-529259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0179520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95,
H01Q 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体内の受信機(20)の特性を決定するための方法であって、前記特性が、前記受信機(20)の検出情報および/または識別情報および/またはロケーション情報であり、前記方法が、
前記媒体内で一次波を放射すること、ならびに前記一次波によっておよび前記媒体内の前記受信機(20)の存在によって生じる二次波を受信することが可能なアンテナ(32)と、
前記一次波が反射される方式を変更するために修正され得るインピーダンスを有する複数の調整可能要素と、
前記アンテナ(32)および前記調整可能要素に接続され、パラメータのセットに基づいて前記調整可能要素の状態を制御するコントローラ(12)とを備えるシステム(1)によって実現され、
前記受信機(20)が、前記一次波の受信に応答して、前記二次波を能動的に放射することが可能であり、前記システム(1)が、
a)前記アンテナ(32)に一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間の間に前記調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、前記アンテナ(32)による波の前記放射および/または受信の間に前記一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間の間に前記アンテナ(32)によって受信された信号を記憶し、
前記複数のパラメータのセットは、前記
コントローラ(12)によって
規定され、前記複数のパラメータのセットは、前記媒体内の前記一次波および二次波の伝搬経路を変化させるように決定され、
d)パラメータの各セットに対して受信された前記信号に基づいて、前記アンテナ(32)と前記受信機(20)との間の
間接的な伝搬経路を除外するために、前記媒体内の前記受信機(20)の前記特性を決定することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コントローラ(12)が、前記受信機(20)の前記特性を決定するために、受信信号の平均値または前記受信信号から計算された値の平均値を計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のパラメータのセットがランダムシーケンスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のパラメータのセットが予め保存されたシーケンスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のパラメータのセットが、少数の前記調整可能要素を一度に変更するシーケンスであり、前記少数が、前記システム(1)の前記調整可能要素の10%未満であり、前記コントローラ(12)が、より高い振幅の保存された信号と、このより高い振幅を引き起こした前記調整可能要素の位置の知識とに基づいて前記特性を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記調整可能要素を前記制御することが、閾値のレートよりも大きいレートで前記インピーダンスを修正することによって遂行される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コントローラ(12)が、前記複数のパラメータのセットに対して受信された前記信号と所定の信号の記憶されたデータベースとを比較し、前記データベースが、前記所定の信号に関連する前記受信機(20)の前記特性を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の信号が単一の周波数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記システム(1)が、所定の特性の基準受信機をさらに備え、前記コントローラ(12)が、前記複数のパラメータのセットに対して受信された前記信号とそれらの基準受信機に対する所定の信号の記憶されたデータベースとを比較し、前記データベースが、その基準受信機に対する前記所定の信号に関連する各基準受信機の前記所定の特性を含み、前記受信機(20)の前記特性が、受信された前記信号と前記基準受信機の前記所定の信号との間の最高の尤度の比較を決定することによって決定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記データベースの前記基準受信機の前記所定の信号が周期的に更新される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コントローラ(12)が、前記一次波が1つまたは複数の基準受信機の周りに焦点を合わされるように前記アンテナ(32)および/または調整可能要素に対する制御ロジックを備え、前記一次波が、ステップa)~d)を実行する前に前記基準受信機の周りに焦点を合わされる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記基準受信機から受信された前記信号が、前記複数のパラメータのセットを用いて周期的に測定され、最もコヒーレントな受信信号のみが前記データベース内に保持される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記コントローラ(12)が、受信信号の各々の中に前記受信機(20)が含む少なくとも1つのデータ項目を使用し、前記データ項目が、前記アンテナ(32)と前記受信機(20)との間の伝搬チャネル伝達関数のレベルおよび/または品質および/または推定値に対応する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記調整可能要素に対する前記複数のパラメータのセットが、第1のパラメータのセットおよび第2のパラメータのセットを含み、前記第2のパラメータのセットが、前記第1のパラメータのセットに対してπラジアンの位相シフトに対応し、
前記コントローラ(12)が、前記受信信号の中で、前記第1のパラメータのセットに対応する第1のデータ項目(I
1)および前記第2のパラメータのセットに対応する第2のデータ項目(I
2)を復号し、前記第1および前記第2のデータ項目が、前記受信機(20)によって受信された波のレベルに対応し、
前記受信機(20)の前記特性が、前記第2のデータ項目と前記第1のデータ項目との間の差である第1の計算された値(ψ
1)から決定され、言い換えれば、
ψ
1=(I
2-I
1)
ここで、ψ
1が前記第1の計算された値であり、
I
1およびI
2が、それぞれ前記第1のデータ項目および前記第2のデータ項目である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記調整可能要素に対する前記複数のパラメータのセットが、第1のパラメータのセット、第2のパラメータのセット、第3のパラメータのセット、および第4のパラメータのセットを含み、前記第2のパラメータのセットが前記第1のパラメータのセットに対してπ/2ラジアンの位相シフトに対応し、前記第3のパラメータのセットが前記第1のパラメータのセットに対してπラジアンの位相シフトに対応し、前記第4のパラメータのセットが前記第1のパラメータのセットに対して3・π/2ラジアンの位相シフトに対応し、
前記コントローラ(12)が、前記受信信号の中で、前記第1のパラメータのセットに対応する第1のデータ項目(I
1)、前記第2のパラメータのセットに対応する第2のデータ項目(I
2)、前記第3のパラメータのセットに対応する第3のデータ項目(I
3)、および前記第4のパラメータのセットに対応する第4のデータ項目(I
4)を復号し、前記第1、第2、第3、および第4のデータ項目が、前記受信機(20)によって受信された波のレベルに対応し、
前記受信機(20)の前記特性が、
ψ
2=(I
3-I
1)+i(I
4-I
2)
のように第2の計算された値(ψ
2)から決定され、
ここで、ψ
2は第2の計算された値であり、
I
1、I
2、I
3およびI
4は、それぞれ、前記第1のデータ項目、前記第2のデータ項目、前記第3のデータ項目、および前記第4のデータ項目であり、
iは虚数単位である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記コントローラ(12)が、前記受信信号の中で、前記アンテナ(32)と前記受信機(20)との間の前記伝搬チャネル伝達関数(A(ω))の推定値に対応するデータ項目を復号し、
前記受信機(20)の前記特性が、第3の計算された値(m(ω))から、
【数1】
のように決定され、
ここで、
m(ω)は、前記第3の計算された値であり、
A(ω)は、角周波数ωの関数としての伝達関数であり、
d()/dωは、前記角周波数ωに対する微分演算子であり、
()*は、複素共役演算子である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記受信機(20)の前記特性が、いくつかの計算された量の平均もしくはドット積または組合せまたは関数から決定され、前記計算された量が、第1の計算された量(ψ
1)または第2の計算された量(ψ
2)または第3の計算された量(m(ω))である、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
媒体内の受信機(20)の特性を決定するためのシステム(1)であって、前記特性が、前記受信機(20)の検出情報および/または識別情報および/またはロケーション情報であり、前記システム(1)が、
前記媒体内で一次波を放射すること、ならびに前記一次波によっておよび前記媒体内の前記受信機(20)の存在によって生じる二次波を受信することが可能なアンテナ(32)と、
前記一次波が反射される方式を変更するために修正され得るインピーダンスを有する複数の調整可能要素と、
前記アンテナ(32)および前記調整可能要素に接続され、パラメータのセットに基づいて前記調整可能要素の状態を制御するコントローラ(12)とを備え、
前記受信機(20)が、前記一次波の受信に応答して、前記二次波を能動的に放射することが可能であり、前記システム(1)が、
a)前記アンテナ(32)に一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間の間に前記調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、前記アンテナ(32)による波の前記放射および/または受信の間に前記一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間の間に前記アンテナ(32)によって受信された信号を記憶し、
前記複数のパラメータのセットは、前記
コントローラ(12)によって
規定され、前記複数のパラメータのセットは、前記媒体内の前記一次波および二次波の伝搬経路を変化させるように決定され、
d)パラメータの各セットに対して受信された前記信号に基づいて、前記アンテナ(32)と前記受信機(20)との間の
間接的な伝搬経路を除外するために、前記媒体内の前記受信機(20)の前記特性を決定することを特徴とするシステム(1)。
【請求項19】
前記調整可能要素が、1つの表面(11)の一部または複数の表面である、請求項18に記載のシステム(1)。
【請求項20】
前記受信機(20)が、前記受信機(20)内に記憶されているデータ項目を含む二次波を放射することによって前記一次波に応答し、前記コントローラ(12)が、受信信号を処理し、前記データ項目を復号して前記特性を決定する、請求項18に記載のシステム(1)。
【請求項21】
前記受信機(20)が、ワイヤレスコンピュータネットワークに接続された物体であり、前記一次波および二次波が、前記ワイヤレスコンピュータネットワークの放射および/または受信である、請求項18に記載のシステム(1)。
【請求項22】
前記ワイヤレスコンピュータネットワークが、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi、またはGSMタイプのネットワークである、請求項21に記載のシステム(1)。
【請求項23】
前記受信機(20)が、RFIDタイプのバッジであり、前記二次波が、前記受信機(20)を識別する少なくとも1つのデータ項目を含む、請求項18に記載のシステム(1)。
【請求項24】
前記調整可能要素は、前記アンテナ(32)から独立している要素であり、前記一次波が反射および/または送信される方式を変更する、請求項18から23のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【請求項25】
前記調整可能要素は、前記アンテナ(32)付近の拡散器であり、前記一次波が前記アンテナ(32)によって放射および/または受信される方式を変更する、請求項18に記載のシステム(1)。
【請求項26】
前記調整可能要素が、前記アンテナ(32)のアンテナ素子であり、調整可能位相によって制御される、請求項18に記載のシステム(1)。
【請求項27】
前記調整可能要素が、前記媒体内のモバイルデバイスにある、請求項18から26のいずれか一項に記載のシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体内の受信機の特性を決定するための方法およびシステムに関し、前記特性は、前記受信機の検出情報および/または識別情報および/またはロケーション情報である。
【0002】
より詳細には、本発明は、媒体内の波の伝搬によって受信機を検出、識別または位置特定するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの方法が、これらのアプリケーションのために存在する。
【0004】
たとえば、媒体内で物体を検出/位置特定するための第1の技法によれば、指向性ビームアンテナの機械的回転によるか、または複数のアンテナ素子上で遅延および振幅の重みを調整することによってビームを傾斜させることによる(ビームフォーミング技法)かのいずれかで媒体のエリアをスキャンするアンテナの配列が、従来使用されている。加えて、物体のロケーションは、放射された一次波によって物体が照射された後、物体によって反射された二次波の到来角および飛行時間を推定することによって、受信アンテナによって決定される。
【0005】
しかしながら、このタイプのレーダー技法は、レーダーアンテナと媒体内で検出、位置特定および/または識別されるべき物体との間に多くの経路があるので、残響を含む複雑な媒体の中および特に建物の中では、あまり効果的ではない。
【0006】
たとえば、媒体内の物体を検出/位置特定するための第2の技法によれば、媒体内の多数の場所における物体の存在のシグネチャのデータベースが使用され、一次波が放射され、それが物体によって二次波として反射され、保存された二次波の受信信号が、データベース内のすべてのシグネチャと比較されて、媒体内の物体を検出、位置特定および/または識別するために受信信号に最も似ているシグネチャを決定する。
【0007】
しかしながら、このタイプの技法は、依然として複雑なままである。なぜならば、それは、しばしば、信頼できる比較を確保するために多数の周波数を含む一時的に長い信号を記憶する必要があるからである。このリソース集約的学習にもかかわらず、この技法は、媒体内の変化と、予め保存されたシグネチャの不正確さとに敏感である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、波の伝搬によって媒体内の受信機を検出および/または位置特定および/または識別するための、より効率的でより信頼できる方法を提供することである。
【0009】
この目的のために、方法は、
- 媒体内で一次波を放射すること、ならびに一次波によっておよび媒体内の受信機の存在によって生じる二次波を受信することが可能なアンテナと、
- 一次波が放射および/または反射および/または送信される方式を変更するために修正され得るインピーダンスを有する複数の調整可能要素と、
- アンテナおよび調整可能要素に接続され、パラメータのセットに基づいて調整可能要素の状態を制御するコントローラとを備えるシステムによって実現される。
【0010】
加えて、受信機は、一次波の受信に応答して、二次波を能動的に放射することが可能である。
【0011】
方法は、システムが、
a)アンテナに一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間の間に調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、アンテナによる波の放射および/または受信の間に一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間の間にアンテナによって受信された信号を記憶し、
d)パラメータの各セットに対して受信された信号に基づいて、媒体内の受信機の特性を決定することを特徴とする。
【0012】
複数の調整可能要素と、複数のパラメータのセットを用いるそれらの逐次制御とに起因して、方法は、受信機から受信される同じ複数の信号を取得することを可能にし、これらの信号は、媒体内の受信機を検出、位置特定および/または識別するための大量の情報を含む。
【0013】
この方法は、異なるパラメータを有する複数の実験が、媒体内の受信機の複数の異なる観測を可能にするので、アンテナ配列技法よりも簡単であり、かつシグネチャ検出技法よりも正確である。
【0014】
本発明による方法の様々な実施形態では、以下の配列のうちの1つまたは複数が使用される可能性があり得る。
【0015】
一態様によれば、コントローラは、受信機の特性を決定するために、受信信号の平均値または受信信号から計算される値の平均値を計算する。
【0016】
一態様によれば、複数のパラメータのセットは、ランダムシーケンスである。
【0017】
一態様によれば、複数のパラメータのセットは、予め保存されたシーケンスである。
【0018】
一態様によれば、複数のパラメータのセットは、一度に少数の調整可能要素を変更するシーケンスであり、前記少数は、システムの調整可能要素の10%未満であり、コントローラは、より高い振幅の保存された信号と、このより高い振幅を生じた調整可能要素の位置の知識とに基づいて特性を決定する。
【0019】
一態様によれば、調整可能要素を制御することは、閾値のレート、たとえば毎秒10よりも大きいレートにおいて遂行される。
【0020】
一態様によれば、コントローラは、複数のパラメータのセットに対して受信された信号と、所定の信号の記憶されたデータベースとを比較し、前記データベースは、所定の信号に関連する受信機の特性を含む。
【0021】
一態様によれば、所定の信号は、単一の周波数を含む。
【0022】
一態様によれば、システムは、所定の特性の基準受信機をさらに備え、コントローラは、複数のパラメータのセットに対して受信された信号とそれらの基準受信機に対する所定の信号の記憶されたデータベースとを比較し、前記データベースは、その基準受信機に対する所定の信号に関連する各基準受信機の所定の特性を含み、受信機の特性は、受信された信号と基準受信機の所定の信号との間の最高の尤度の比較を決定することによって決定される。
【0023】
一態様によれば、基準受信機の所定の信号は、周期的に更新される。
【0024】
一態様によれば、コントローラは、一次波が1つまたは複数の基準受信機の周りに焦点を合わされるようにアンテナおよび/または調整可能要素に対する制御ロジックを備え、一次波は、ステップa)~d)を実行する前に前記基準受信機の周りに焦点を合わされる。
【0025】
一態様によれば、基準受信機から受信された信号は、複数のパラメータのセットを用いて周期的に測定され、最もコヒーレントな受信信号のみが、データベース内に保持される。
【0026】
一態様によれば、コントローラは、受信信号の各々の中に受信機が含む少なくとも1つのデータ項目を使用し、前記データ項目は、アンテナと受信機との間の伝搬チャネル伝達関数のレベルおよび/または品質および/または推定値に対応する。
【0027】
一態様によれば、
- 調整可能要素に対する複数のパラメータのセットは、第1のパラメータのセットおよび第2のパラメータのセットを含み、第2のパラメータのセットは、第1のパラメータのセットに対してπラジアンの位相シフトに対応し、
- コントローラは、受信信号の中で、第1のパラメータのセットに対応する第1のデータ項目および第2のパラメータのセットに対応する第2のデータ項目を復号し、第1および第2のデータ項目は、受信機によって受信された波のレベルに対応し、
- 受信機の特性は、第2のデータ項目と第1のデータ項目との間の差である第1の計算された値ψ1から決定され、言い換えれば、
ψ1=(I2-I1)
ここで、
ψ1は第1の計算された値であり、
I1およびI2は、それぞれ第1のデータ項目および第2のデータ項目である。
【0028】
一態様によれば、
- 調整可能要素に対する複数のパラメータのセットは、第1のパラメータのセット、第2のパラメータのセット、第3のパラメータのセット、および第4のパラメータのセットを含み、第2のパラメータのセットは第1のパラメータのセットに対してπ/2ラジアンの位相シフトに対応し、第3のパラメータのセットは第1のパラメータのセットに対してπラジアンの位相シフトに対応し、第4のパラメータのセットは第1のパラメータのセットに対して3.π/2の位相シフトに対応し、
- コントローラは、受信信号の中で、第1のパラメータのセットに対応する第1のデータ項目、第2のパラメータのセットに対応する第2のデータ項目、第3のパラメータのセットに対応する第3のデータ項目、および第4のパラメータのセットに対応する第4のデータ項目を復号し、第1、第2、第3および第4のデータ項目は、受信機によって受信された波のレベルに対応し、
- 受信機の特性は、以下の
ψ2=(I3-I1)+i(I4-I2)
のように第2の計算された値ψ2から決定され、
ここで、
ψ2は、第2の計算された値であり、
I1、I2、I3およびI4は、それぞれ、第1のデータ項目、第2のデータ項目、第3のデータ項目および第4のデータ項目であり、
iは虚数単位である。
【0029】
一態様によれば、
- コントローラは、受信信号の中で、アンテナと受信機との間の伝搬チャネル伝達関数の推定値に対応するデータ項目を復号し、
- 受信機の特性は、第3の計算された値m(ω)から、以下の
【0030】
【0031】
のように決定され、
ここで、
m(ω)は、第3の計算された値であり、
A(ω)は、角周波数ωの関数としての伝達関数であり、
d()/dωは、角周波数に対する微分演算子であり、
()*は、複素共役演算子である。
【0032】
一態様によれば、受信機の特性は、いくつかの計算された量の平均もしくはドット積または組合せまたは関数から決定され、前記計算された量は、第1の計算された量または第2の計算された量または第3の計算された量である。
【0033】
本発明の別の目的は、媒体内の受信機の特性を決定するためのシステムを提供することである。特性は、媒体内のこの受信機の検出情報および/または識別情報および/またはロケーション情報である。
【0034】
この目的のために、システムは、
- 媒体内で一次波を放射すること、ならびに一次波によっておよび媒体内の受信機の存在によって生じる二次波を受信することが可能なアンテナと、
- 一次波が放射および/または反射および/または送信される方式を変更するために修正され得るインピーダンスを有する複数の調整可能要素と、
- アンテナおよび調整可能要素に接続され、パラメータのセットに基づいて調整可能要素の状態を制御するコントローラとを備える。
【0035】
加えて、受信機は、一次波の受信に応答して、二次波を能動的に放射することが可能である。
【0036】
システムは、システム(1)が、
a)アンテナに一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間の間に調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、アンテナによる波の放射および/または受信の間に一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間の間にアンテナによって受信された信号を記憶し、
d)パラメータの各セットに対して受信された信号に基づいて、媒体内の受信機の特性を決定することを特徴とする。
【0037】
本発明によるシステムの様々な実施形態では、以下の配列のうちの1つまたは複数が使用される可能性があり得る。
【0038】
一態様によれば、調整可能要素は、1つの表面の一部または複数の表面である。
【0039】
一態様によれば、受信機は、受信機内に記憶されているデータ項目を含む二次波を放射することによって一次波に応答し、コントローラは、受信信号を処理し、前記データ項目を復号してこの特性を決定する。
【0040】
一態様によれば、受信機は、ワイヤレスコンピュータネットワークに接続された物体であり、一次波および二次波は、ワイヤレスネットワークの放射および/または受信である。
【0041】
一態様によれば、コンピュータネットワークは、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi、またはGSMタイプのネットワークである。
【0042】
一態様によれば、受信機は、RFIDタイプのバッジであり、二次波は、前記受信機を識別する少なくとも1つのデータ項目を含む。
【0043】
一態様によれば、調整可能要素は、アンテナから独立している要素であり、一次波が反射および/または送信される方式を変更する。
【0044】
一態様によれば、調整可能要素は、アンテナ付近の拡散器であり、一次波が前記アンテナによって放射および/または受信される方式を変更する。
【0045】
一態様によれば、調整可能要素は、アンテナのアンテナ素子であり、調整可能位相によって制御される。
【0046】
一態様によれば、調整可能要素は、媒体内のモバイルデバイスにある。
【0047】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として与えられる以下の、その実施形態のうちの少なくとも1つの説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明による方法を実現するために好適なシステムの第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による方法を実現するために好適なシステムの第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
様々な図において、同じ参照番号は同一または同様の要素を指定する。
【0050】
本発明は、特にこの媒体内の波の放射/受信によって、媒体内の受信機を検出および/または位置特定および/または識別するための方法に関する。この波は一次波と呼ばれ、実際は、電磁気、音響または振動の波であり得る。
【0051】
簡単にするために、本発明は、主に、特にワイヤレス送信タイプ、たとえば、
- 電磁エネルギーの送信、または
- GSM、3G、4G、5Gモバイル電話通信、または
- Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)タイプのワイヤレスネットワーク、または
- 接続された物体間のネットワーク、
たとえば、IoT、または
- RFIDタイプのバッジ読取り機、または
- 電波によるワイヤレス接続を有するデバイス間の任意の他のワイヤレス送信
の電磁波のアプリケーションの文脈で説明されることになる。
【0052】
しかしながら、本発明は、任意の波の周波数領域に適用される。
【0053】
方法は、たとえば、
図1に概略的に表されるようなシステム1によって実現される。
【0054】
媒体Mは受信機20を備え、この受信機20は、たとえば、媒体Mの中の波の場に影響を及ぼす物体またはデバイスである。
【0055】
この受信機は能動タイプであり、それ自体が媒体内に波を放射することができることを意味する。実際には、
- 受信機自体が、媒体Mの中に電磁波を放射することが可能であるか、
- または、受信機が、受信機に到達する入射電磁波を修正することができる、たとえば、受信機は、この入射波を(たとえばその周波数を修正することによって)別の放射波に変換することが可能であるかのいずれかである。
【0056】
それゆえ、この能動受信機20は、内部動作、すなわち内部処理または内部修正に関連する電磁波に応答する。それゆえ、この受信機20は、能動デバイスステータスを受信機に与える内部ロジックを備える。
【0057】
それゆえ、この受信機20は受動ではなく、受動は、前記物体によって能動的に修正されない電磁応答を有する大部分の(受動)物体に対応する。そのような応答は、単に、物体の材料および形状の関数であり、物体の何らかの内部ロジックまたは内部動作の関数ではない。
【0058】
加えて、この受信機20は、エネルギー源によって作動されてもされなくてもよい。任意選択で、受信機20は、受信波から、および任意選択で受信機20を検出および/または識別および/または位置特定するためにシステムによって使用される一次波から、それ自体を作動させるためのエネルギーを抽出する。
【0059】
システム1は、
- 波伝搬媒体Mの中で少なくとも一次波40を放射すること、および場合によっては逆に、この媒体Mの中で一次波を受信することが可能な、送信機30と呼ばれる第1のデバイスと、
- 送信機30によって放射され、送信された一次波43として受信される一次波40の受信を受信機20において修正することが可能な、波形整形デバイス10と呼ばれる第2のデバイスと
を備える。
【0060】
これらの2つのデバイス、送信機30および波形整形デバイス10は、リンクLRによって接続される。たとえば、リンクLRはデジタルリンクであり、たとえば、すでに言及したプロトコルのうちの1つに従って、有線リンク(たとえば、イーサネット)であるか、またはコンピュータタイプもしくは電話タイプのワイヤレスリンクである。
【0061】
送信機30および波形整形デバイス10は、
図2に示すように、同じ筐体または別々の筐体の中に一体化されてよい。送信機30をアプリケーションに好適なロケーションに設置し、波形整形デバイス10を媒体Mおよびその環境の容積に好適なロケーションの中に設置するために、有利には、送信機30および波形整形デバイス10は、別々の筐体内にあることになる。
【0062】
代替的に、システム1は、各々が送信機30にリンクによって接続される、いくつかの同一のまたは異なる波形整形デバイス10を備えてよく、それによって、受信機20によって受信される送信された一次波43に前記波形整形デバイスが及ぼす影響を改善することが可能になる。
【0063】
送信機30はワイヤレス送信デバイスであり、
- 媒体Mの中で伝搬する一次波40を放射するアンテナ32であって、前記アンテナ32はまた、場合によっては逆に波を受信する、アンテナ32と、
- 前記アンテナ32を制御し、リンクLRによって波形整形デバイス10に接続される通信ユニット31とを備える。
【0064】
アンテナ32は、任意選択で、各々が独立した信号の放射および/または受信を可能にするいくつかの独立したアンテナ素子から構成されてよく、それによって、たとえば、フェーズドアレイアンテナタイプのマルチビーム焦点合わせまたは任意の他の技法などの様々な技法によって、チャネルの数を増加させて、検出および/または識別および/またはロケーションの特性の決定を改善することが可能になる。
【0065】
当然、送信機30および波形整形デバイス10を有する異なるシステムアーキテクチャは、特にシステムの機能の分散および/または統合に関して、当業者にとって実行可能でかつ入手可能である。
【0066】
受信機20は、送信機30のアンテナ32から到来する一次波を、直接的に、および/または媒体(環境)の要素上の反射によって間接的に、すべてのこれらの直接的または間接的経路の寄与の組合せである送信された一次波43の形態で受信する。
【0067】
波形整形デバイス10は、
- 入射一次電波41を反射波42として反射する調整可能(電磁)面11であって、前記波は、同じ媒体内で伝搬する、調整可能(電磁)面11と、
- 特に、入射波41が反射波42として反射される方式を変える、調整可能面11の(電磁)インピーダンスを変化させるための前記調整可能面11を制御するために、調整可能(電磁)面11に接続されたコントローラ12と
を備える。
【0068】
従って、波形整形デバイス10の目的は、この受信機20および波形整形デバイス10を含む領域内の受信機20による一次波の受信を変えることである。たとえば、この波形整形デバイス10は、波に対する多数のおよび/または複雑な反射を有する環境において有用であり、前記反射は、受信機20による受信と干渉する。波形整形デバイス10は、受信機20による受信を変えるために制御される別の反射を生成する。
【0069】
逆に、波形整形デバイス10の範囲内の、媒体内の受信機20の存在およびアクションは、この波形整形デバイス10に影響を及ぼす。
【0070】
従って、波形整形デバイス10は、受信機20の範囲内でかつ送信機30の範囲内に、すなわちゼロでない入射波41の受信を可能にする距離においてかつゼロでない送信波寄与43の受信を可能にする受信機20からの距離において存在する。これは、距離ばかりでなく、上で説明したような伝搬媒体(複数の反射)にも依存する。
【0071】
波形整形デバイス10は、送信機30によって放射された、または別の波形整形デバイスによって反射波42として反射された、入射波41を反射する。非常に簡略化された方式では、反射波42は、次いで同じく、たとえば、前記受信機20によって受信された一次の送信された電波43に反射波42が寄与する受信機20の方に、媒体内を伝搬する。
【0072】
加えて、波形整形デバイス10は、エネルギー源によって作動されてもされなくてもよい。任意選択で、波形整形デバイス10は、受信波から、および任意選択で送信機30のアンテナ32によって放射され、能動受信機20を検出および/または識別および/または位置特定するためにシステムによって使用される一次波から、それ自体を作動させるためのエネルギーを抽出する。
【0073】
調整可能(電磁)面11は、いくつかの方法で構築され得る。
【0074】
米国特許第6,538,621号は、インピーダンスが調整可能または修正可能である電磁面の一例を示す。この電磁面11は、複数の共振器要素を含み、各共振器要素は調整可能である。本明細書の電磁面11は、接地面から少し離れて位置するプレート素子を含み、隣接するプレート素子は、可変キャパシタによって互いに接続され、各可変キャパシタは、制御電圧によって操作され得る。従って、電磁面のインピーダンスは、たとえば、反射波42の焦点を合わせるため、または空間方向を反射波42に与えるために修正される。任意選択で、電磁面11は、複数のセルから成り、各セルは、2つの異なる共振器要素を含む。
【0075】
特許第WO2015/039769号は、調整可能なインピーダンスを有する電磁面内で使用され得る他のタイプの共振器要素に言及してそれを示している。
- 可変ダイオードが、可変キャパシタと置き換わることができ、
- 共振器要素は、単一の分極タイプまたは2つの分極タイプを有してよく、任意選択で、表面上に交互に分配されてもよく、
- 共振器要素は、所定の周波数帯域を制御するために1つまたは複数の共振周波数を有し、
- 共振器要素は、たとえば、修正された波の位相または振幅を変えることによって規定される2つの状態を有する2進要素である。
【0076】
知られている共振器要素の多くの変形体が、調整可能なインピーダンスを有する電磁面11を形成するために使用され得る。
【0077】
従って、調整可能面11の共振器要素の状態は、波形整形デバイス10のコントローラ12によって規定されるパラメータのセットによって規定される。
【0078】
たとえば、波形整形デバイス10のコントローラ12は、電磁面11のすべての調整可能要素(たとえば、可変ダイオードまたは可変キャパシタンス)を制御し、それによって、そのインピーダンスを変えることが可能になる。この変化は、空間指向性または焦点合わせよりもいっそう複雑である。それは、波形整形デバイス10の周りから受信機20までのエリア内の第1の伝搬チャネルC1の電波の空間分布を変化させる。
【0079】
特許第WO2015/039769号では、波形整形デバイス10は、受信機20(モバイル電子デバイス)に接続するため、および受信機20のこの送信デバイスから到来するパイロット波に含有される情報を検索するための送信デバイスを備え、この情報は、場合によっては、送信機(ネットワーク局またはアクセスポイント)と受信機(モバイル電子デバイス)との間の通信のレベルまたは品質である。これは、波形整形デバイス10を一次波のソースから独立させる。
【0080】
これに対し、本特許出願では、波形整形デバイス10は、リンクLRによって通信ユニット31に接続されて、そのユニットによって制御される。それゆえ、整形デバイス10は、通信ユニット31に依存し、システム1の一部である。
【0081】
最後に、システム1または波形整形デバイス10または調整可能面11のみが、建築構造要素、すなわち軽量コンクリートブロック、れんが、絶縁体、断熱板、石こうボード、またはいくつかの他の要素の中に直接一体化されてよい。
【0082】
システム1または波形整形デバイス10または調整可能面11のみが、同じく、建築被覆要素、すなわち寄木床張り、カーペット床張り、タイル床張り、装飾用パネル、壁面裏張り、天井、吊天井パネル、またはいくつかの他の要素の中に直接一体化され得る。
【0083】
システム1または波形整形デバイス10または調整可能面11のみが、同じく、調度品要素、すなわちデスク、食器棚、キッチン棚、棚、鏡、装飾用写真、照明、レジの引き出しなどの容器の中に直接一体化され得る。
【0084】
システム1または波形整形デバイス10または調整可能面11のみが、同じく、建物内または戸外で移動可能な輸送要素、すなわち乗用車、トラック、飛行機、トレーラー、トロリー、品物輸送用カートの中に直接一体化され得る。
【0085】
この要素は、少なくとも反射デバイスの調整可能面11、または波形整形デバイス10全体を含む。この要素は、外部から作動されてもよく、またはバッテリを含んでもよく、または場合によっては継続的に、誘導によってリモートに作動されてもよい。
【0086】
本特許出願では、受信機20は、(反射波42から生じた)修正された送信された電波43を受信し、この受信機が媒体M内に単に存在することで、送信された電波43の反射および/または送信である二次波44が生成される。この二次波44は、受信機20によって受信された送信された電波43の受信の、言い換えればアンテナ32と受信機20との間の無線受信の関数である物理特性を有する。
【0087】
前記物理特性は、受信機20によるこの受信の一種のシグネチャである。
【0088】
受信機20における一次波の受信によって作成される二次波44は、伝搬されて送信機30のアンテナ32に戻り、送信機は生じた波を測定する。
【0089】
上で説明したシステム1は、一次波が、前記調整可能要素のセットによって反射および/または送信される方式を変えることが可能な調整可能要素を含む波形整形デバイス10を含む。これは、この調整可能要素のセットの(電磁)インピーダンスを変える。
【0090】
従って、この点に対して説明される波形整形デバイス10は、受動タイプの調整可能要素を含み、調整可能要素は、電磁インピーダンスを変えるためにエネルギーを消散しないか、またはきわめてわずかのエネルギーしか消散しないことを意味する。この受動変化は、媒体内の一次波の反射および/または送信を変える。従って、調整可能要素は、一次波がない場合は波を放射しないアンテナ32とは無関係の要素である。調整可能要素は、一次波が媒体内で反射および/または送信される方式を修正する。
【0091】
方法は、任意選択で、上で説明したシステム1とわずかに異なるシステム1によって実現される。
【0092】
たとえば、波形整形デバイス10は、ソース、送信機30の中に一体化される。
【0093】
一変形形態によれば、パラメータのセットによって制御される調整可能要素は、特許出願第WO2008/007024号に記載されているような金属拡散器などの調整可能要素であり得る。そのような要素は、前記1つの伝搬波をエバネッセント波に変換する要素である。そのような要素は、アンテナ、送信機30のアンテナ32の近くに配置され、このアンテナ32の特性を修正する。特に、これらの拡散器は、一次波の波長よりも小さい間隔で存在してよく、場合によっては、一次波の波長の10分の1よりも小さい間隔で存在する。次いで、拡散器の各々は、本発明の調整可能要素を形成するために、調整可能電子成分と電気的に結合される。これらの調整可能要素は、依然として受動要素であるが、それらは、それらが影響を及ぼす能動アンテナ素子に電磁結合される要素である。この変形形態では、これらの調整可能要素は、それゆえ、アンテナ付近の拡散器であり、それらは、一次波がアンテナ32によって放射および/または受信される方式を変更する。
【0094】
一変形形態によれば、パラメータのセットによって制御される調整可能要素は、フェーズドアレイアンテナ(アンテナ32)のアンテナ素子であり得、パラメータのセットは、共通参照に対する各アンテナ素子(調整可能要素)の位相を調整する。この場合、調整可能要素は能動要素であり、エネルギーを放射して媒体内に伝搬する波を生成する要素を意味する。
【0095】
最後に、システム1は、媒体Mの中にあるモバイルデバイスであり得る。任意選択で、送信機30は媒体Mの中でモバイルであり、かつ/または波形整形デバイス10は媒体Mの中でモバイルである。このモビリティにより、受信機の検出および/または識別および/またはロケーションの特性は、より良好に決定される。
【0096】
二次波のこの測定値は、波形整形デバイス10を含まない従来技術のシステムにおけるよりも速やかにかつ正確に、受信機20を検出および/または識別および/または位置特定することを可能にする信号であり、以下で説明する特定の方法に基づいてそのように行われることを、発明者らは観察した。
【0097】
本発明の方法によれば、システム1は、
a)送信機30のアンテナ32に一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間Pの間に波形整形デバイス10の調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、アンテナ32による波の放射および/または受信の間に一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間Pの間にアンテナによって受信された信号を記憶し、
d)パラメータの各セットに対して受信された信号に基づいて、媒体内の受信機の特性を決定する。
【0098】
たとえば、一時間期間である探査期間Pの間に、システムは、調整可能面11のインピーダンスをN回修正するために、調整可能要素を制御するパラメータのセットをN回変更する。Nは、2よりも大きい正の自然数である。Nは、望ましくは10よりも大きく、それにより多くのパラメータのセットが適用される。任意選択で、この数Nは、パラメータのセットの数および媒体Mの中の実験の数を増すため、従って特性の決定の精度を高めるために、20よりも大きい。
【0099】
実際、この方法は、調整可能面11の調整可能要素を制御するパラメータのセットを逐次変更することによって、媒体の複数の実験を数回実行する。それゆえ、この方法は、調整可能面11のインピーダンスを数回変化させる。
【0100】
従って、この方法は、媒体内の波の伝搬を変化させ、特に、この方法は、最も直接的な経路が保持されながら、間接的な多数の経路を変化させる。特に、すべての実験に対して、受信機20の特性の推定におけるその寄与が優勢であるように、アンテナ32と受信機20との間の直接的な経路が保持される。
【0101】
各実験において(すなわち、パラメータの各セット、すなわち調整可能面11の各インピーダンスに対して)、受信機20からの帰還信号は、システム1によって保存され、それは、あまり直接的でない経路を除外するため、すなわちすべての実験に共通して卓越した伝搬経路、およびアンテナ32と受信機20との間の主たる直接的な経路を決定するための処理を可能にする。
【0102】
システムは、たとえば、従来技術の方法において適用されるような処理を使用するが、複数のパラメータのセットに対してシステムによって受信された信号に基づいて、所望の特性(検出、識別またはロケーション)に対応する処理を適用するために信号を処理する。
【0103】
一変形形態によれば、ステップd)における特性の決定は、たとえば、これらの受信信号に共通する成分を抽出して受信機20の特性を決定するために、受信信号に対する相関計算を含む。
【0104】
一変形形態によれば、ステップd)における特性の決定は、たとえば、これらの受信信号に共通する事前情報を抽出して受信機20の特性を決定するために、受信信号に対する統計計算を含む。
【0105】
たとえば、検出特性は、所定のしきい値よりも大きい受信信号の検出に基づき得る。従って、受信機20は、受信信号がこの所定のしきい値を超えるならば検出され、超えなければ検出されない。
【0106】
たとえば、検出および/または識別および/またはロケーションの特性は、(一次波を放射した後に帰還した)アンテナ32によって受信された各信号と、特定のシグネチャ、すなわち予め保存された、知られている受信機20に対して予期される帰還信号との比較に基づき得る。比較は、2つの信号間、および/または受信信号とシグネチャ信号(または基準信号)との間のコヒーレンスの任意のプロセスを意味すると理解される。たとえば、比較は、信号間のコヒーレンスが所定のしきい値よりも大きいならば受信機20の検出をもたらし、そうでなければ非検出をもたらす。
【0107】
たとえば、受信機の検出および/または識別および/またはロケーションの特性は、(一次波を放射した後に帰還した)アンテナ32によって受信された各信号と、保存された所定の信号のデータベースとの比較に基づいてよく、前記データベースは、各所定の信号に対して、受信機20の所定の検出および/または識別および/またはロケーションの特性を含む。従って、データベースの所定の信号は、すべてを比較して最高の尤度の比較を決定することによって、受信信号に最も近いものとして決定される。このプロセスは、相関計算に類似する。および、決定された受信機特性は、最高の尤度の所定の信号に割り当てられた所定の特性である。
【0108】
有利には、この所定の信号のデータベースは、いくつかのパラメータのセットに基づいて満たされる。次いで、受信機の特性は、方法のステップd)において説明されたように、すべてのパラメータのセットの尤度結果から決定される。従って、決定された受信機特性は、一部または全部のパラメータセットの可能性の中の最大の尤度の所定の信号に割り当てられた所定の特性である。
【0109】
次いで、これらの配列は、経時的な媒体の変動またはドリフト、およびたとえば、調整可能面11によって生じる変化を考慮することおよび/またはそれらに対してロバストであることを可能にする。
【0110】
任意選択で、システム1は、媒体Mの中に置かれた所定の特性の基準受信機をさらに備える。言い換えれば、媒体は、知られている基準受信機の分布を含み、すなわち、その分布に対して、この基準受信機の検出/識別/ロケーションの特性は、前記基準受信機に対応する所定の信号の各々に関連するデータベース内に保存される。この所定の特性は、(たとえば、システムの較正または学習のステップの間に、システムに対してあらかじめ決定された)識別子および/または媒体内の位置を含む。
【0111】
次いで、コントローラ12は、複数のパラメータのセットに対して受信された信号と、これらの基準受信機の所定の信号(たとえば、較正ステップの間にこれらの基準受信機によって受信された信号)のデータベースとを比較する。このデータベースは、その基準受信機に対する所定の信号に関連する各基準受信機の所定の特性も含む。
【0112】
これらの基準受信機を用いて、データベースを周期的に更新することができ、すなわち、基準受信機の所定の信号は、複数のパラメータのセットを用いて周期的に測定される。たとえば、前に受信された有効な信号(所定の信号)と最もコヒーレントな受信信号のみ、または互いに最もコヒーレントな受信信号のみが、新しい所定の信号としてデータベース内に保持される。
【0113】
基準受信機のこの配列によって、経時的な媒体の変動またはドリフト、特に受信された基準信号の変動またはドリフトを追跡することが可能になる。これに対し、基準受信機の識別子および位置は、較正段階の間、事前の決定から不変のままである。次いで、いくつかの基準受信機が移動、追加または削除される場合、データベースは、較正段階の間などに、別のプロセスによって更新されなければならない。
【0114】
任意選択で、データベースは、基準受信機および基準受信機に対応する所定の信号に関連しない所定の信号を含み、これらの所定の信号は、定期的に更新され得る。次いで、方法は、前記データベースの一部または全部を使用して受信機の特性を決定する。特に、特にたとえば、目標のパラメータの値に近い、または目標の特性(ロケーションに対する媒体内の空間位置など)の値に近いパラメータのセットの値に基づいて、受信機の特性を決定するためにデータベースの一部だけを選択することが可能である。
【0115】
加えて、コントローラ12は、アンテナ32に対する制御ロジックを含んでよく、それにより、一次波が1つまたは複数の基準受信機の周りに焦点を合わされ、それにより、システムが一次波の焦点を合わせる前記基準受信機の周りの受信機20(未知の受信機)を探索することが可能になる。従って、たとえば、アンテナ32は、たとえばビームフォーミングによる焦点合わせを可能にするフェーズドアレイタイプの、いくつかの独立したアンテナ素子から成るアンテナである。次いで、方法/システムは、基準受信機の周りのその領域の中で受信機を検出/識別/位置特定するために、ステップa)~d)を実行する前に基準受信機の周りに一次波の焦点を合わせる。
【0116】
任意選択で、アンテナ32を制御するためのコントローラ12のロジックは、上記のようなアンテナ素子を駆動するばかりでなく、いくつかの調整可能要素またはすべての調整可能要素を駆動し、それにより、一次波が、1つまたは複数の基準受信機の周りに焦点を合わされ、それにより、システム(アンテナおよび調整可能要素)が一次波の焦点を合わせている前記基準受信機の周りの受信機20(未知の受信機)に対して、よりいっそう効率的な探索を実行することが可能になる。上記のように、アンテナ32は、従って、たとえば、ビームフォーミングを実行するために多数の素子を有するフェーズドアレイアンテナである。次いで、方法/システムは、基準受信機の周りの領域の中で媒体Mの中の受信機を検出/識別/位置特定するために、ステップa)~d)を実行する前に、基準受信機の周りに一次波の焦点を合わせる。
【0117】
次いで、決定された受信機の特性は、周りに焦点を合わされた基準受信機の所定の特性の関数であり得る。特に、受信機20から受信された信号に応じて、受信機の特性は、前記基準受信機の基準特性の線形結合であってもなくてもよい。
【0118】
次いで、基準受信機の周りを次々に、またはこれらの基準受信機のうちの一部の基準受信機のみの周りに、焦点を合わせることが可能である。
【0119】
たとえば、識別特性が、アンテナ32によって(一次波の放射の後に帰還したときに)受信された信号の各々の中に含まれる。言い換えれば、受信機20は、識別データ項目が記憶されているメモリを含み、受信機20は、この識別データ項目を、放射される二次波44とともに送信する。次いで、システム1は、各受信信号に対してこの識別データ項目を復号する。任意選択で、受信機20は、従って、その識別データ項目を有する二次波44を放射することによって一次波40に応答するRFIDバッジを有する。
【0120】
受信された複数の識別を(たとえば、比較によって)処理することで、最も可能性が高い識別および/または各々が異なる識別データ項目を有する複数の受信機を決定することが可能になる。
【0121】
たとえば、ロケーション特性は、媒体Mの中に受信機20が存在することに起因する二次波の到来角および/または飛行時間を推定することによって決定される。任意選択で、アンテナ32は、複数のアンテナ素子を含み、各アンテナ素子によって受信された信号のセットは、受信機20のロケーション特性の推定を改善することを可能にする。
【0122】
たとえば、検出および/または識別および/またはロケーションの特性は、帰還する二次波44の中に含まれるデータ項目を使用して決定される。たとえば、GSM、Wi-Fi、またはブルートゥース(登録商標)によってワイヤレス無線受信機20と通信するためのいくつかのアプリケーションでは、受信機20は、受信機20が受信する一次波の受信に関する情報、およびたとえばアンテナ32と受信機20との間の伝搬チャネルC1の伝達関数のレベルおよび/または品質および/または推定値をその放射の中に導入する。次いで、システム1は、受信信号を復号してこの情報を信号から抽出するように適応される。次いで、この情報は、たとえば、アンテナ32と受信機20との間の距離を推定することを可能にし、それゆえ、媒体Mの中の受信機20のロケーションを決定することを可能にする。
【0123】
従って、コントローラ12は、受信機20によって受信された信号の各々の中に受信機20が含む少なくとも1つのデータ項目を使用することができ、このデータ項目は、場合によっては、受信機20による一次波の受信のレベル(振幅または強度)および/または受信機20による一次波の受信の品質および/またはアンテナ32と受信機20との間の伝搬チャネル伝達関数の推定に対応する。
【0124】
第1の変形形態によれば、システム1(たとえば、コントローラ12または通信ユニット31)は、平均信号を決定しかつこの平均信号から受信機20の特性を決定するために、アンテナ32によって受信された信号の平均を計算する。従って、システムは、アンテナ32によって受信された信号の平均を直接計算して、受信機20の特性を決定する。
【0125】
代替的に、システム1は、受信機20の特性を決定するために、アンテナ32によって受信された信号から計算された値の平均を計算する。従って、システムは、アンテナ32によって受信された信号の平均を間接的に計算して、受信機20の特性を決定する。
【0126】
第2の変形形態によれば、探査期間Pの持続時間は短く、たとえば、一次波40および/または帰還した二次波44の持続時間以下である。これは、パラメータのセットが、一次波および/または二次波が伝搬する間に少なくとも数回変更されることを意味する。従って、アンテナ32によって受信されて記憶される信号は、この複数のパラメータのセット、すなわち複数のインピーダンスを考慮に入れる。
【0127】
この第2の変形形態は、システムの計算リソースを何も使用することなく、アナログ方式で第1の変形形態と同等のものを実現する。次いで、システム1は、アンテナ32によって受信された信号を直接処理して、受信機20の特性を決定する。
【0128】
調整可能面11のインピーダンスの修正のレートCは、パラメータのセットの数Nを探査期間Pの持続時間で割ったもの、すなわち、C=N/Pである。たとえば、このレートCは、閾値のレートよりも大きく、閾値のレートは、たとえば、非常に速いインピーダンスの変化を有するために毎秒100であり、または単に速い変化を有するために毎秒10である。
【0129】
一変形形態によれば、複数のパラメータのセットは、ランダムシーケンスであり、
- パラメータのセットの値は、互いに対してランダム値であり、すなわち、調整可能要素の状態は、互いに対してランダムであり、かつ
- 調整可能要素に対応するパラメータのセットの値は、前のパラメータのセット、またはこの同じ調整可能要素に対応する任意の他のパラメータのセットの値に対してランダムであることを意味する。
【0130】
一変形形態によれば、複数のパラメータのセットは、予め保存されたシーケンスであり、複数のパラメータのセットは、シーケンスが完全に行われると再生される値のセットであることを意味する。
【0131】
このようにして、システム1は、経時的にランダムにまたは疑似ランダムに調整可能面11のインピーダンスを変え、それにより、媒体内の一次波および二次波の伝搬経路を変えることが可能になる。
【0132】
一変形形態によれば、複数のパラメータのセットは、調整可能要素のうちの少数の要素の状態が、各ステップにおいて修正されるシーケンスであり、パラメータのセットは、調整可能面11のこれらの調整可能要素に対応する少数の値だけ前のパラメータのセットと異なるのみであることを意味する。少数は、たとえば、システム1の調整可能要素の総数の10%未満である。任意選択で、この少数は、1にまで減じられ、1つだけの調整可能要素が、パラメータのセットのうちの1つだけの値によって修正される。
【0133】
このタイプのパラメータのセットによって、受信信号の処理が簡略化され得る。
【0134】
特に、受信機20を位置特定するための処理の場合、および表面11の各調整可能要素の空間位置が知られている場合、受信信号の振幅および/または飛行時間は、たとえば、受信機20と調整可能要素の各々との間の距離を推定することを可能にする。これらの距離は、媒体Mの中の受信機20の空間位置を推測することを可能にし、媒体Mの中のそのロケーションを意味する。
【0135】
一変形形態によれば、システム1は、各受信信号から単一の周波数成分を抽出し、複数の受信信号に、すなわち、たとえば調整可能面11のパラメータまたはインピーダンスの各セットに対する信号に起因して、システム1は、次いで、上で説明した処理例のうちの1つに従って、受信機20の特性(検出および/または識別および/またはロケーション)を決定することが可能になる。
【0136】
次に、受信機20が、送信された一次波43の中に一次波のその受信に対応するデータ項目を挿入する方法/システムのいくつかの変形形態が詳述される。
【0137】
第1の変形形態によれば、データ項目は、受信機20によって受信された波のレベルに対応し、その強度を意味する。
【0138】
探査期間の間に、コントローラ12は、2つのパラメータのセット、すなわち第1のパラメータのセットおよび第2のパラメータのセットを使用し、第2のパラメータのセットは、第1のパラメータのセットの位相に対してπラジアンだけシフトされた調整可能要素の位相調整に対応する。これは、調整可能要素の反射波および/または送信波が、パラメータの第1のセットと第2のセットとの間でπラジアンだけ変化するその位相を有することを意味する。
【0139】
次に、コントローラ12は、受信信号の中で、第1のパラメータのセットに対応する第1のデータ項目I1と第2のパラメータのセットに対応する第2のデータ項目I2とを復号し、第1および第2のデータ項目は、従って、各(第1および第2の)パラメータのセットに応答して受信機によって受信された波のレベルに対応し、言い換えれば、第1のデータ項目I1は、第1の位相を有するレベルに対応し、第2のデータ項目I2は、第1の位相に対してπラジアンの位相シフトを有するレベルに対応する。
【0140】
次いで、受信機20の特性は、第2のデータ項目I2と第1のデータ項目I1との間の差である第1の計算された値ψ1に基づいてコントローラ12によって決定され、言い換えれば、
ψ1=(I(π)-I(0))=(I2-I1)
【0141】
受信機の決定された特性は、媒体内の検出および/または識別および/またはロケーションであり得る。
【0142】
次いで、受信機の特性は、たとえば、複数のパラメータのセットに対して復号されたデータから計算されたいくつかの第1の計算された量ψ1に基づいて決定され、これらのパラメータのセットは、第1のパラメータのセットおよび第2のパラメータのセットのいくつかのペアを含み、各ペアは、前式で説明したような第1の計算された値ψ1を計算することを可能にする。
【0143】
たとえば、受信機の特性は、第1のパラメータのセットおよび第2のパラメータのセットを含有するパラメータのセットの各ペアから計算された第1の計算された量ψ1の平均もしくはドット積または組合せまたは関数によって決定され得る。
【0144】
第2の変形形態によれば、データ項目は、同じく、受信機20によって受信された波のレベルに対応し、その強度を意味する。
【0145】
探査期間の間に、コントローラ12は、4つのパラメータのセット、すなわち、第1のパラメータのセット、第2のパラメータのセット、第3のパラメータのセットおよび第4のパラメータのセットを使用する。
【0146】
第2のパラメータのセットは、第1のパラメータのセットに対してπ/2ラジアンだけシフトされた調整可能要素の位相調整に対応し、第3のパラメータのセットは、第1のパラメータのセットに対してπラジアンだけシフトされた調整可能要素の位相調整に対応し、第4のパラメータのセットは、第1のパラメータのセットに対して3・π/2ラジアンだけシフトされた調整可能要素の位相調整に対応する。これは、調整可能要素から反射および/または送信された波が、対応する角度だけ変わるその位相を有することを意味する。
【0147】
次に、コントローラ12は、受信信号の中で、第1のパラメータのセットに対応する第1のデータ項目I1、第2のパラメータのセットに対応する第2のデータ項目I2、第3のパラメータのセットに対応する第3のデータ項目I3、および第4のパラメータのセットに対応する第4のデータ項目I4を復号する。第1、第2、第3および第4のデータ項目は、それぞれ、対応するパラメータのセットに対して受信機によって受信された波のレベルに対応する。
【0148】
次いで、受信機の特性は、下式によって計算される第2の計算された値ψ2からコントローラ12によって決定され、
ψ2=(I(π)-I(0))+i(I(3π/2)-I(π/2))=(I3-I1)+i(I4-I2)
iは虚数単位である。
【0149】
決定された特性は、媒体内の検出および/または識別および/またはロケーションであり得る。
【0150】
次いで、受信機の特性は、たとえば、複数のパラメータのセットに対する復号されたデータから計算されたいくつかの第2の計算された量ψ2に基づいて決定され、これらのパラメータのセットは、上記で規定したような4つのパラメータのセットのグループを含む。
【0151】
たとえば、受信機の特性は、4つのパラメータのセットの各グループから計算された第2の計算された量ψ2の平均もしくはドット積または組合せまたは関数によって決定され得る。より多数のパラメータのセットに対する一般化が可能である。
【0152】
第3の変形形態によれば、データ項目は、アンテナ32と受信機20との間の伝搬チャネル伝達関数の推定値に対応し、それにより、特に、推定がこの基準で遂行されるならば、この伝達関数の振幅および位相またはこの伝達関数の実部および虚部を取得することが可能になる。
【0153】
探査期間の間に、コントローラ12は、受信信号の中で、アンテナ32と受信機20との間の伝搬チャネル伝達関数(A(ω))の推定値に対応するデータを復号する。この場合、送信機30および受信機20は、一次波40に対して、多周波数伝搬チャネルC1または所定の帯域幅を有する伝搬チャネルを使用し、それにより、伝達関数は、少なくとも複数の角周波数ωiにおいて推定され得、ここで角周波数ωiは2・π・fiに等しく、fiは伝達関数の推定周波数のうちの1つである。
【0154】
次いで、受信機の特性は、下式
【0155】
【0156】
によって第3の計算された値m(ω)からコントローラ12によって決定され、
ここで、
A(ω)は、アンテナ32と受信機20との間の角周波数ωの関数としての伝達関数であり、
d()/dωは、角周波数に対する微分演算子であり、
()*は、複素共役演算子である。
【0157】
第3の計算された値の計算は、特に、角周波数に対する導関数を計算するために、前の式の任意の他の同様のまたは等価の式化によって遂行され得る。
【0158】
決定された特性は、媒体内の検出および/または識別および/またはロケーションの決定であり得る。
【0159】
次いで、受信機の特性は、たとえば、複数のパラメータのセットに対して復号されたデータから計算されたいくつかの第3の計算された量m(ω)に基づいて決定される。
【0160】
たとえば、受信機の特性は、様々なパラメータのセットから計算された第3の計算された量m(ω)の平均もしくはドット積または組合せまたは関数によって決定され得る。
【0161】
本発明の変形形態および実施形態では、受信信号の数を増すために、および受信機20の特性の決定を、この特性が検出および/または識別および/またはロケーションであれ改善するために、一次波の放射を繰り返すことが可能である。
【0162】
最後に、本発明によるシステムおよび/または方法は、特に、以下のアプリケーションの中に存在する。
【0163】
第1のアプリケーションによれば、方法およびシステムは、たとえばRFIDタグまたはバッジタイプの1つまたは複数の受信機20の検出および/または識別および/またはロケーションに対して好適であり、調整可能要素は、本明細書で説明するように受動タイプである。これらの調整可能要素は、一次波を放射するアンテナ32から独立している。
【0164】
有利には、本出願の調整可能要素は、媒体Mの容積に対して好適な1つまたは複数のロケーションにおいて設置され、場合によっては媒体の容積の中に分散される。
【0165】
この第1のアプリケーションでは、方法/システムは、媒体内の受信機20の特性を決定し、この特性は、前記受信機20の検出情報および/または識別情報および/またはロケーション情報であり、方法は、
- 媒体内で一次波を放射すること、ならびに一次波によっておよび媒体内の受信機の存在によって生じる二次波を受信することが可能なアンテナ32と、
- 一次波が反射および/または送信され、これらの調整可能要素がアンテナ32から独立している方式を変更するために修正され得るインピーダンスを有する、複数の調整可能要素と、
- アンテナおよび調整可能要素に接続され、パラメータのセットに基づいて調整可能要素の状態を制御するコントローラ12とを備えるシステム1によって実現され、
受信機20は、一次波の受信に応答して二次波を能動的に放射することが可能であり、この受信機は、RFIDタイプのバッジまたはタグであり、この受信機によって帰還される二次波は、前記受信機の少なくとも1つの識別データ項目を含み、
前記方法は、システムが、
a)アンテナに一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間の間に調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、アンテナによる波の放射および/または受信の間に一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間の間にアンテナによって受信された信号を記憶し、
d)パラメータの各セットに対して受信された信号に基づいて、媒体内の受信機の特性を決定することを特徴とする。
【0166】
第2のアプリケーションによれば、方法およびシステムは、本明細書で説明するように、RFIDバッジもしくはタグタイプ、またはワイヤレスネットワーク(GSM、3G、4G、5G)によって接続される携帯電話タイプ、またはワイヤレスネットワーク(Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標))に接続されるモバイルコンピュータタイプ、またはワイヤレスネットワークに接続される結合された物体のタイプの1つまたは複数の受信機20と通信するのに好適であり、方法およびシステムでは、調整可能要素は、(アンテナ32に一体化されるかまたはされない)受動タイプまたは能動タイプである。この場合、コントローラ12は、有利には、受信信号の中で、特定の処理を適用して受信機の特性、特にその空間ロケーションを決定するために、受信機20から発信されたデータ項目を復号する。
【0167】
この第2のアプリケーションでは、方法/システムは、媒体内の受信機20の特性を決定し、この特性は、受信機20に対するロケーション情報であり、方法は、
- 媒体内で一次波を放射すること、ならびに一次波によっておよび媒体内の受信機の存在によって生じる二次波を受信することが可能なアンテナ32と、
- 一次波が放射および/または反射および/または送信される方式を変更するために修正され得るインピーダンスを有する、複数の調整可能要素と、
- アンテナおよび調整可能要素に接続され、パラメータのセットに基づいて調整可能要素の状態を制御するコントローラ12とを備えるシステム1によって実現され、
受信機20は、一次波の受信に応答して、二次波を能動的に放射することが可能であり、
前記方法は、システムが、
a)アンテナに一次波を放射させ、
b)少なくとも1つの探査期間の間に調整可能要素を、複数のパラメータのセットを用いて逐次的に制御し、パラメータの各セットは、アンテナによる波の放射および/または受信の間に一次波および/または二次波の伝搬を修正するために前のパラメータのセットと異なり、
c)前記探査期間の間にアンテナによって受信された信号を記憶し、
d)パラメータの各セットに対して受信された信号に基づいて、媒体内の受信機の特性を決定することを特徴とする。
【0168】
すべてのこれらのアプリケーションでは、本明細書に提示する様々な変形形態が適用され得るかまたは適応され得る。
【0169】
すべてのこれらのアプリケーションでは、複数のパラメータのセットは、システムが受信機の決定された特性を改善することを可能にする。
【符号の説明】
【0170】
1 システム
10 波形整形デバイス
11 調整可能(電磁)面、電磁面
12 コントローラ
20 受信機
30 送信機
31 通信ユニット
32 アンテナ
40 一次波
41 入射一次電波、入射波
42 反射波
43 送信された一次波、送信波寄与
44 二次波