(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】光学素子の改良および光学素子に関連する改良
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240312BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240312BHJP
G02F 1/31 20060101ALI20240312BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240312BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240312BHJP
G02B 5/18 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02B5/30
G02F1/31
G02F1/13363
G02F1/1337
G02B5/18
(21)【出願番号】P 2020572835
(86)(22)【出願日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 GB2019051828
(87)【国際公開番号】W WO2020002930
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-24
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョン クリフォード ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】マークス ワール
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/043516(WO,A1)
【文献】特表2016-508970(JP,A)
【文献】特表2010-510552(JP,A)
【文献】特開2014-174321(JP,A)
【文献】特表2006-520919(JP,A)
【文献】特開2005-208644(JP,A)
【文献】特開平09-152612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0309370(US,A1)
【文献】特開2002-357804(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012525(WO,A1)
【文献】特開2009-025489(JP,A)
【文献】特開2007-213057(JP,A)
【文献】特開平02-102031(JP,A)
【文献】国際公開第2006/115147(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/132781(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/13363,1/1337
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調器を透過する光波面を変調するための電気的にスイッチング可能な光変調器であって、
各々がそれぞれの常光屈折率および異常光屈折率を有する、光変調器を透過する光波面を変調するための所望の形状に成形された複屈折性の第1の光学素子および複屈折性の第2の光学素子と、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間に挟まれた複屈折性の液晶材料とを含み、
ここで、前記液晶材料の異常光屈折率は、
第1の値を有する第1の状態と、
前記第1の値とは異なる第2の値を有する第2の状態と
の間で電気的にスイッチング可能であり、
ここで、前記第1の値および前記第2の値のうちの一方または両方が、直線偏光の第1の方向に偏光された光に関して、前記第1の光学素子の異常光屈折率と一致せず、かつ前記第1の方向に直交する直線偏光の第2の方向に偏光された光に関して、前記第2の光学素子の異常光屈折率と一致せず、ここで、前記液晶材料と、前記波面を変調するための前記第1の光学素子および前記第2の光学素子との間での異常光屈折率の相対的なコントラストはスイッチング可能となっており、
前記第1および第2の光学素子が、反応性メソゲンを
用いて形成された複屈折ポリマー
から形成されており、ここで、前記反応性メソゲンは、二官能性アクリレート系を含み、前記反応性メソゲンの配向は、前記反応性メソゲンから形成された前記光学素子全体にわたって維持されて
おり、
前記第1の光学素子が、前記第2の光学素子に対向し、
前記第1および前記第2の光学素子の各々が、前記液晶材料が適合する表面レリーフパターンを提示し、前記第1の光学素子によって提示されるパターンが、前記第2の光学素子によって提示されるパターンと逆のまたは相補的な形状を有する、
電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項2】
前記第1の値が、前記第1の光学素子および前記第2の光学素子のそれぞれの異常光屈折率と一致する、請求項1記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項3】
前記液晶材料の常光屈折率が、前記第1および第2の光学素子の両方の常光屈折率と一致する、請求項1または2記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項4】
前記第1および第2の光学素子が、ダイレクタを規定し、前記第1の光学素子のダイレクタが、前記第2の光学素子のダイレクタに対して横方向である、請求項1から3までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項5】
前記複屈折ポリマーは、正の複屈折を有する複屈折ポリマーである、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項6】
前記液晶材料がねじれネマティック液晶配置であり、ここで、前記第1の状態にあるとき、前記液晶材料の光学軸が、
前記第1の光学素子のダイレクタに実質的に平行に配向しており、かつ
前記第2の光学素子のダイレクタに実質的に平行に配向している、
請求項4記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項7】
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子のうちの一方または各々が、前記液晶材料が適合する曲面を提示する、請求項1から6までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項8】
前記第1の光学素子が、第1の光学軸を規定し、かつ前記第2の光学素子が、前記第1の光学軸と実質的に同軸である第2の光学軸を規定する、請求項1から
7までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項9】
前記液晶材料が、2枚の別々の電極間に配置されており、前記電極は、前記液晶材料の異常光屈折率を前記第1の状態から前記第2の状態にスイッチングするための電場をそれらの間で支持するように構成されている、請求項1から
8までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項10】
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子のうちの一方または各々が、前記2枚の別々の電極の間に配置されている、請求項
9記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項11】
前記2枚の別々の電極のうちの一方が、前記第1の光学素子と前記液晶材料との間に配置されている、請求項
9または
10記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項12】
前記2枚の別々の電極のうちの一方が、前記第2の光学素子と前記液晶材料との間に配置されている、請求項
9から
11までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項13】
前記光学素子のうちの一方または両方が、前記それぞれの光学素子の片側に配置された平面に対して実質的に垂直な円筒対称軸を規定するように成形されている、請求項1から
12までのいずれか1項記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項14】
前記光学素子の両方が、それぞれの前記円筒対称軸を規定するように成形されており、かつ前記第1および第2の光学素子の円筒対称軸が同軸である、請求項
13記載の電気的にスイッチング可能な光変調器。
【請求項15】
光変調器を透過する光波面を変調するための所望の形状に成形された
2つ以上の複屈折光学素子を含む光変調器を製造する方法であって、各複屈折光学素子は、
前記所望の形状に
逆のまたは相補的な形状でエンボス加工されたエンボス加工表面を提示する可撓性シートを提供するステップと、
所定量の未硬化状態の反応性メソゲン材料を基板の表面上に提供するステップと、
前記エンボス加工表面を撓ませることで、前記所定量の反応性メソゲン材料の表面全体にわたって前記所定量の反応性メソゲン材料に漸進的に押し付けて、前記所望の形状を有する成形された複屈折部を形成するステップと、
前記成形された複屈折部を硬化させて前記複屈折光学素子を形成するステップと
を含む方法に従って提供され
、
各前記複屈折光学素子が互いに対向する場合に、各前記複屈折光学素子の前記所望の形状は、互いに逆または相補的である、光変調器を製造する方法。
【請求項16】
前記光変調器が電気的にスイッチング可能である、請求項
15記載の光変調器を製造する方法。
【請求項17】
2枚の前記複屈折光学素子の間に挟まれた電気的にスイッチング可能な液晶材料を含む、請求項
16記載の光変調器を製造する方法。
【請求項18】
前記エンボス加工表面に選択的な表面配向を提供し、それに伴って、前記成形された複屈折部のエンボス加工表面に選択的な表面配向を付与するステップを含み、前記表面配向は、前記液晶材料を配向させるように構成されている、請求項
17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子または光学部品、例えば回折性および/もしくは屈折性の光学素子または光学部品に関する。本発明は、回折光学効果および/もしくは屈折光学効果を電気的にスイッチング可能な光学素子または光学部品に関する。本発明は、電気的にスイッチング可能な液晶材料を含む光学素子または光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ、光学ビームステアラーおよび回折格子またはホログラムなどの偏光無依存型のスイッチング可能な光変調器デバイスを提供する必要性が存在する。これらは、スマートフォン、医用画像および光発電装置での用途に非常に望ましい部品となる。所望の特性は、高速スイッチング、偏光無依存性、低消費電力および低コストで拡張可能な生産能力である。偏光無依存性により、光変調器は、すべての無偏光内の2つの直交する偏光成分の固有の存在に影響を受けない無偏光に所望の光変調を適用することができる。つまり、無偏光はいずれも、直線偏光の2つの等しい成分に分解され得、一方の成分は他方の成分に直交する方向に偏光されるか、または円偏光もしくは楕円偏光の場合は逆掌性に偏光される。
【0003】
光変調器において偏光無依存性の提供を試みるための既存のアプローチには、物理的に無偏光を2つの偏光成分に分離し、次いで各成分を別々に処理してから、処理した2つの成分を再び一緒に戻すというものがある。このような方法は、多くの場合、並列に配置された2つの光学処理トレイン/デバイスを使用するシステムを用いており、無偏光の2つの直交偏光状態のそれぞれの各1つに1つの光学トレイン/デバイスが使用されている。この種の配置は、3Dディスプレイおよびプロジェクターに見られることが多く、それによって、光ビーム中の2つの直交偏光成分は、偏光ビームスプリッター(PBS)を使用して分割され、それぞれの偏光状態に適した光並列処理のために、互いに並んで配置された別々の光学処理デバイスに導かれた後に(例えばスクリーン上に)一緒に戻される。
【0004】
あるいは、直交偏光のそれぞれの1つで各々動作する2枚の別々の光学部品を直列に配置してもよい。これらは、インデックスマッチング流体または接着剤を使用して一緒に取り付けられ、結合されてもよい。しかしながら、こうした配置では、2枚の別々の光学部品間での視差の問題があり、これはレンズシステムにおいて回避することが特に重要である。このような配置は、ビームステアラーなどの一部用途には適していない。これらの視差の問題を軽減するために、他の光学素子を直列に配置する必要がある場合には、直ちに非実用的な配置になる可能性がある。
【0005】
これらの配置は、光学素子の並列配置であろうと直列配置であろうと、高価で、複雑で、比較的かさばる。それらは、無偏光の2つの直交偏光状態の各々に光学処理を重複して行うために、重複した部品を必要とする。本発明は、代替手段を提供する。
【0006】
発明の概要
第1の態様では、本発明は、光変調器を透過する光波面を変調するための電気的にスイッチング可能な光変調器であって、各々がそれぞれの常光屈折率および異常光屈折率を有する複屈折性の第1の光学素子および複屈折性の第2の光学素子と、第1の光学素子と第2の光学素子との間に挟まれた複屈折性の液晶材料とを含み、ここで、液晶材料の異常光屈折率は、第1の値を有する第1の状態と、第1の値とは異なる第2の値を有する第2の状態との間で電気的にスイッチング可能である、電気的にスイッチング可能な光変調器を提供することができる。第1の値および第2の値のうちの一方または両方は、直線偏光の第1の方向に偏光された光に関して、第1の光学素子の異常光屈折率と一致せず、かつ第1の方向に直交する直線偏光の第2の方向に偏光された光に関して、第2の光学素子の異常光屈折率と一致せず、それによって、液晶材料と、上記波面を変調するための第1の光学素子および第2の光学素子との間での異常光屈折率の相対的なコントラストをスイッチング可能にする。液晶材料の異常光屈折率の第1および第2の値は、それぞれの平均値、または全体としての液晶材料の本体のバルク値であり得る。
【0007】
このように、光伝搬方向において光学素子の間に挟まれた液晶の複屈折成分を制御することによって、2枚の光学素子のうちの第1の素子に、光の1つの偏光成分/状態に関して光変調機能を持たせると同時に、2枚の光学素子のうちの第2の素子に、光の他の(横方向の)偏光成分/状態に関して光変調機能を持たせることができる。光変調機能には、レンズ化;フォーカシング;デフォーカシング;屈折、回折;ビームステアリングが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、第1の光学素子の光変調機能、効果または作用は、第2の光学素子の変調機能、効果または作用と実質的に同じである(例えば、両方ともレンズ、プリズム、または回折格子として機能し、これらは光を集束させるか、または光のそれぞれの偏光成分を実質的に同じ方法で回折するようにそれぞれの波面を変調し、実質的に同じ結果をもたらす)。その結果、光変調器は、それに入射する光の偏光状態に実質的に依存しない正味の作用または効果を有するスイッチング可能な光変調器を提供することができる。本発明は、両方の偏光を単一のデバイスで操作できるようにすることによって、先行技術の直列光学配置によって生じる視差の問題を実質的に回避するか、または軽減する。
【0008】
すべての液晶光学デバイスと同様に、本発明の光変調器は2つの表面を含み、一方の表面が1つの光偏光状態に作用し、他方の表面が直交光偏光状態に作用するように配置されている。
【0009】
望ましくは、多色性色素が液晶材料に含まれていてもよい。液晶材料は、特定の波長域で、ある偏光を他よりも多く吸収する素子を含んでいてもよい。このような場合、光変調は意図的に波長依存にすることができるため、ある波長帯域は必要に応じて変調され、かつ異なる波長帯域は光変調を受けないか、または異なる光変調を受ける。
【0010】
望ましくは、第1の値は、第1の光学素子および第2の光学素子の両方のそれぞれの異常光屈折率と一致する。したがって、光変調器は、液晶材料とその周囲の光学素子との間に実質的に有効屈折率コントラストが存在しないことから、入射光に対して実質的に有効な変調作用を及ぼさない状態(例えば第1の状態)と、このようなコントラストが存在する状態(例えば第2の状態)との間でスイッチング可能であり得る。第1の値および第2の値のいずれもが第1および第2の光学素子のそれぞれの異常光屈折率と一致しない場合には、光変調器は、液晶と2枚の光学素子との間での異常光屈折率の異なるそれぞれのコントラストを誘起する状態間をスイッチングするように操作可能である。望ましくは、液晶材料の常光屈折率は、第1および第2の光学素子のそれぞれの常光屈折率と一致する。材料の屈折率の値は、典型的には波長依存である(すなわち、光学材料は分散を示す)ことが理解され、当業者には容易に明らかになるであろう。この範囲内で、本明細書における屈折率が「一致する」または「一致しない」という言及は、少なくとも光変調器の動作スペクトル/バンド内に収まる波長または電磁放射に対して生じる条件を指すことができる。好ましくは、一方の屈折率値が別の屈折率値と「一致する」とみなすことができるのは、対象となる2つの値が互いに小数点以下2桁以内で一致する(すなわち、相違しない)場合である。例えば、第1の屈折率値は、a、b、cおよびdの各々が整数値である10進数値:a.bcdであり得、かつ第2の屈折率値は、α,β,γおよびδが各々整数である10進数値:α.βγδであり得る。これらの2つの屈折率値を小数点以下2桁以内で「一致する」とみなすことができるのは、a=α、b=β、c=γの場合であり、dはδと等しくなくてもよい(が、等しくてもよい)。このことは、複屈折材料の場合、異常光屈折率neおよび常光屈折率noのいずれかまたは両方に適用することができる。より好ましくは、1つの屈折率値が別の屈折率値と「一致する」とみなすことができるのは、対象となる2つの値が±0.005以内で(すなわち、0.005以下の差で)一致する場合である。さらにより好ましくは、1つの屈折率値が別の屈折率値と「一致する」とみなすことができるのは、対象となる2つの値が小数点以下第3位以内で一致する場合である。しかしながら、本発明者らは、屈折率があまり密接に一致しない場合に、満足のいく動作が達成され得ることを見出した。
【0011】
第2の状態では、液晶材料の異常光屈折率は、直線偏光の第1の方向に偏光された光に関して、第1の光学素子の異常光屈折率と異なっていてもよい。第2の状態では、液晶材料の異常光屈折率は、第1の方向と直交する直線偏光の第2の方向に偏光された光に関して、第2の光学素子の異常光屈折率と異なっていてもよい。
【0012】
第1の状態では、液晶材料の異常光屈折率は、直線偏光の第1の方向に偏光された光に関して、第1の光学素子の異常光屈折率と異なっていてもよいし、実質的に同じ(例えば「一致する」)ものであってもよい。第1の状態では、液晶材料の異常光屈折率は、第1の方向に直交する直線偏光の第2の方向に偏光された光に関して、第2の光学素子の異常光屈折率と異なっていてもよいし、実質的に同じ(例えば「一致する」)ものであってもよい。
【0013】
その結果、光変調器は、液晶材料と、上記波面を変調するための第1および第2の光学素子との間での異常光屈折率の相対的なコントラスト(または1つのコントラストから別のコントラストへの変化、異なるコントラスト)をスイッチング可能にすることができる。
【0014】
液晶材料の異常光屈折率は、第1の光学素子および第2の光学素子のそれぞれの異常光屈折率と一致する第1の状態と、第2の状態との間で電気的にスイッチング可能であり得る。第2の状態では、液晶材料の異常光屈折率は、直線偏光の第1の方向に偏光された光に関して、第1の光学素子の異常光屈折率と一致していなくてもよい。また、液晶材料の異常光屈折率は、第1の方向と直交する直線偏光の第2の方向に偏光された光に関して、第2の光学素子の異常光屈折率と一致していなくてもよい。
【0015】
望ましくは、液晶材料の常光屈折率は、第1の光学素子および第2の光学素子のそれぞれの常光屈折率と一致する。
【0016】
望ましくは、第1および第2の光学素子は、複屈折ポリマー材料(例えば、反応性メソゲン材料を用いて形成されたもの)から形成されており、各々がそれぞれのダイレクタを規定してもよく、ここで、第1の光学素子のダイレクタは、第2の光学素子のダイレクタに対して横方向である。
【0017】
望ましくは、液晶材料はネマティック液晶材料であり、それによって、上記第1の状態にあるとき、液晶材料の光学軸は、第1の光学素子のダイレクタに実質的に平行に配向しており、かつ第2の光学素子のダイレクタに実質的に平行に配向している。望ましくは、第1および第2の光学素子は、互いに相対的に、光学素子間のネマティック液晶内で90°ねじれた構成を規定するように配置されている。
【0018】
ネマティックにロングピッチのコレステリックを加えて、ピッチが液晶本体の厚さ(すなわち、光学素子間の離間、セルギャップ)の何倍にもなるようにしてもよいが、傾きおよびねじれの掌性は、不要な散乱欠陥を生じることなく両状態ともに実質的に維持される。
【0019】
望ましくは、第1の光学素子および第2の光学素子は、各々複屈折ポリマー材料(例えば、反応性メソゲン材料を用いて形成されたもの)を含む。第1の光学素子および第2の光学素子は、反応性メソゲンを反応状態から硬化させて複屈折ポリマーを形成したものであってもよい。
【0020】
ねじれネマティック(TN)液晶材料は、(変調器の光学軸に対する)光の幅広い一連の入射角度に対して、また、電磁放射の広いスペクトル波長にわたって良好に機能することから、有益である。当該液晶材料はまた、それが挟まれる第1および第2の光学素子上の構造化された表面レリーフパターンにより(例えば、逆表面構造が使用されていない場合)液晶セルの厚さに生じる可能性のある変動/変化の影響を比較的受けない。
【0021】
光変調器は、半波長板を提供するように構成されていてもよい。液晶材料は、好ましくは、ダイレクタがセルを横切って互いに平行になるように配置されていてもよいが、セルギャップおよび複屈折は、入射光に対して半波のリタデーションを与えるように配置されている。これにより、両方の偏光が90°方向に向きを変え、ひいては所望の結果が得られることになる。一方または両方の光学素子の表面(例えばRM表面)における液晶材料の配向は、表面に(例えば、そのRM表面の最上層に)強いアンカリングエネルギーを有する別個の配向層を提供することによって達成されてもよい。TN液晶の配置では、RM表面を提示する光学素子と共に、液晶のダイレクタはRMのダイレクタに追従する必要があるため、正しい配向が自動的にサポートされる。
【0022】
望ましくは、第1の光学素子および第2の光学素子のうちの一方または各々は、上記液晶材料が適合する曲面を提示する。
【0023】
望ましくは、第1の光学素子および第2の光学素子のうちの一方または各々は、液晶材料のバルク形状が適合する表面レリーフパターンを提示する。
【0024】
望ましくは、第1および第2の光学素子の各々は、液晶材料のバルク形状が適合する表面レリーフパターンを提示する。表面レリーフパターンに適合するとは、液晶材料の流動性が表面レリーフ形状に密接に追従することができ、レリーフパターンの表面との接触を、その表面全体にわたって実質的に連続的に、液晶材料の液体と表面レリーフパターンの表面との間に実質的にギャップを残さずに達成することを意味している。材料の流動性の特性は温度に依存し得る。例えば、このことは、光変調器が強誘電性スメクチック液晶材料で動作するように設計されている場合に適用され得る。
【0025】
このような場合、液晶は、液晶が正常にまたは最適に動作するように設計されている温度よりも高い温度で第1/第2の光学素子の表面レリーフパターンまたは表面形状に適合させられていてもよい。例えば、液晶は、製造工程中に等方性液晶またはネマティック液晶である温度で第1/第2の光学素子の表面レリーフパターンまたは表面形状に適合した状態にもたらされ、動作のために低温液晶相に冷却されてもよい。
【0026】
望ましくは、第1および第2の光学素子の各々は、液晶材料のバルク形状が適合する表面レリーフパターンを提示し、ここで、第1の光学素子によって提示されるパターンは、第2の光学素子によって提示されるパターンとの対応関係を示すもの(例えば、逆のまたは相補的な形状)である。
【0027】
望ましくは、第1および第2の光学素子の各々は、上記液晶材料が適合する表面レリーフパターンを提示し、ここで、第1の光学素子によって提示されるパターンは、第2の光学素子によって提示されるパターンと実質的に同じである。
【0028】
望ましくは、第1の光学素子は、第2の光学素子と対向する。一方または両方の光学素子は、それぞれの表面レリーフパターンが形成された表面で実質的に平面の基板を含んでいてもよい。基板は非複屈折性であってもよく、表面レリーフパターンは、いずれか一方の基板の表面に堆積された複屈折材料から形成されてもよい。あるいは、平面基板は、全体として複屈折性であってもよい(例えば、複屈折性を有する材料から形成されてもよい)。
【0029】
望ましくは、第1の光学素子は第1の光学軸を規定し、かつ第2の光学素子は第1の光学軸と実質的に同軸である第2の光学軸を規定する。
【0030】
望ましくは、光学素子のうちの一方または両方は、それぞれの光学素子の片側に配置された平面に対して実質的に垂直な円筒対称軸を規定するように成形されている。好ましくは、光学素子の両方は、それぞれの上記円筒対称軸を規定するように成形されており、かつ第1および第2の光学素子の円筒対称軸は同軸である。
【0031】
望ましくは、液晶材料は2枚の別々の電極間に配置されており、当該電極は、液晶材料の異常光屈折率を上記第1の状態から上記第2の状態にスイッチングするための電場をそれらの間で支持するように構成されている。液晶材料は、その局所的なダイレクタが実質的にホメオトロピックに配向している状態と、その連続した局所的なダイレクタが漸進的にねじれ配向してねじれネマティック状態を規定する状態との間で電気的にスイッチング可能であり得る。第1の光学素子と第2の光学素子との間に挟まれた液晶材料の厚さは、その局所的なダイレクタにおける1個の360度ねじれのピッチ長の4分の1に実質的に等しいものであり得る。
【0032】
液晶材料の異常光屈折率の第1の状態は、液晶材料の局所的なダイレクタが第1および第2の光学素子の光学軸に対して実質的に横方向(例えば垂直方向)にある液晶材料のねじれネマティック状態に対応していてもよい。液晶材料の異常光屈折率の第2の状態は、液晶材料の局所的なダイレクタが第1および第2の光学素子の光学軸に沿って(例えば平行に)実質的に配向している液晶材料のホメオトロピック配向状態に対応していてもよい。
【0033】
望ましくは、第1の光学素子および第2の光学素子のうちの一方または各々が、2枚の別々の電極の間に配置されている。
【0034】
光変調器は、電圧ユニットであって、第1および第2の電極の両方と電気的に接続して配置され、それを用いて2枚の電極間に所定の電圧(V)をスイッチング可能に印加して光変調器の液晶材料全体にわたって向けられる電場を生成するように構成された電圧ユニットを含んでいてもよいし、それを含むように構成されていてもよい。2枚の電極は、電場が、第1および第2の光学素子のうちの一方または両方の共有光学軸に実質的に平行な方向に向けられるように配置されていてもよい。
【0035】
望ましくは、2枚の別々の電極のうちの一方が、第1の光学素子と液晶材料との間に配置されている。
【0036】
望ましくは、2枚の別々の電極のうちの一方が、第2の光学素子と液晶材料との間に配置されている。
【0037】
一方または両方の光学素子は、それぞれの表面レリーフパターンが形成される表面で基板を含んでいてもよい。基板は非複屈折性であってもよく、かつ表面レリーフパターンは、基板の表面に堆積された複屈折材料から形成されてもよい。上記電極は基板の表面に配置され、かつ表面レリーフパターンは電極の表面/表面上に配置されていてもよい。上記電極は、表面レリーフパターンの表面に配置されていてもよく、または表面レリーフパターンの部材間に存在する場合には、基板の表面レリーフパターンの露出した表面の両方の表面に配置されていてもよい。
【0038】
複屈折光学素子を形成するために、カラミティック反応性メソゲン(RM)を使用してもよい。カラミティックネマティック液晶を、それらと光学的に接触する、それらの間に挟まれた液晶材料として使用してもよい。RMの複屈折(Δn)の適切な値の範囲は、好ましくはΔn=0.05~0.35、より好ましくはΔn=0.07~0.3、さらにより好ましくはΔn=0.17~0.27である。実質的には、複屈折は、光の安定性を損なうことなく可能な限り高くてもよい。したがって、Δn=0.2~0.27もまた適切な範囲である。これらの各ケースでは、複屈折は動作波長域に対して引合いに出され、使用される値は、光変調器内の、安定しているが高複屈折の液晶に典型的なものである。
【0039】
しかしながら、本発明は、光変調器を、赤外線(IR)波長域、ミリ波波長域またはマイクロ波波長域などの光学波長域外で動作可能にするために使用することができる。
【0040】
液晶を収容するための第1の光学素子と第2の光学素子との間の離間(d)、ひいては液晶材料の厚さは、望ましくは、次式:
【数1】
[式中、Δnは液晶の複屈折であり、dは対向する2枚の光学素子間の間隔である(例えば、構造化された光学素子による間隔のばらつきを含めたときの平均間隔とみなされる)]で与えられるGooch-Tarryの条件を満たすように選択することができる。
【0041】
典型的には、間隔dは、少なくとも約5μm、好ましくはそれ以上であってもよい。セルギャップdは、対象となる複屈折光学素子における表面/パターンフィーチャの高さ/振幅よりもはるかに大きいことが好ましい。例えば、d>3hが望ましい基準であってもよい。好ましくは、d>10h、またはd>15h、またはd>20h、またはd>25hとして、ねじれネマティック状態のときに光が液晶を透過するときに光の偏光方向が実質的に完全に90°回転するようにする。
【0042】
光学的品質および無彩色性のためには、好ましくはm>4である。レンズ速度がより重要である場合、または狭い波長域のレンズが必要とされる場合には、mの値がより低いものを選択してもよい。
【0043】
液晶材料は、任意の適切なネマティック液晶であってもよい。例としては、MLC-6204-000が挙げられる。あるいは、Δεが正の他のネマティック材料、例えばE7、MDA1551、MLC6437、TL213、MLC14200、および特に複屈折性の高いネマティック混合物、例えばBLO36およびBLO37を使用してもよい。反応性メソゲン材料は、任意の適切なRMであってもよい。例としては、RMM1850(Merck Chemicals Ltd.)、または反応性メソゲンRM257が挙げられる。通常、反応性メソゲンは、正の複屈折を有するポリマーを形成させるのに役立てるために、二官能性アクリレート系から形成される。反応性メソゲンは、強架橋性化合物(例えばTMPTMA)、粘度調整剤、平均屈折率を向上させるための成分、複屈折を増加させるための成分、屈折率の温度依存性を低下させるための成分、ポリマーの波長依存性を変化させるための成分(例えば、染料、分散素子、フッ素樹脂)ならびに光開始剤および増感剤(例えばITX)をはじめとする、複屈折ポリマーの特性を適切に適合させるための他の光架橋性および非架橋性成分を含んでいてもよい。複屈折性表面レリーフ構造が基板上に配置されている実施形態では、基板の材料はITOであってもよい。第1および第2の電極の材料は、ITOであってもよい。
【0044】
代替的な電極材料としては、蒸着された金、銀またはアルミニウム、PEDOTなどの導電性有機層、銀または金でできた焼結・導電性ナノ粒子、カーボンナノチューブおよびグラフェンが挙げられる。液晶と電場(例えば電磁波の電場)との間の相互作用は、液晶のダイレクタに平行方向(εpara)および垂直方向(εperp)に測定した誘電率の大きさに依存する。この2つの値の差が誘電異方性(Δε)として知られている:
Δε=εpara-εperp
【0045】
光変調器は、選択された動作周波数において値が正である誘電異方性を有する液晶材料を用いてもよいし、値が負である誘電異方性を有する液晶材料を用いてもよい。
【0046】
デバイスの第1の表面を形成する光学素子は、第2の表面が(例えば、第2の(直交)偏光の光に)適用するように構成されている光変調と比較して、異なる光変調(例えば、第1の偏光の光に関して)を提供するように構成されていてもよい。
【0047】
第1の光学素子は、レンズを規定していてもよい。第2の光学素子は、レンズを規定していてもよい。(例えば、第1の偏光状態の光に対する)第1の光学部品の焦点距離は、(例えば、第2の偏光状態の光に対する)第2の光学素子の焦点距離と異なっていてもよい。第1の光学素子の焦点距離は、第2の光学素子の焦点距離よりも長くてもよい。
【0048】
(例えば、光の第1の偏光状態に作用する)第1の光学素子の焦点距離は、焦点距離の差が2枚の光学素子間の液晶媒体の光学的厚さに実質的に等しくなるように、(例えば、第2の偏光状態に作用する)第2の光学素子の焦点距離よりも十分に大きい/高いものであってもよい。このように、第1の表面と第2の表面との間のわずかな光学的差異を補正して、所望の(例えば、可能な限り低い)焦点深度を達成することができる。
【0049】
第2の態様では、本発明は、光変調器を透過する光波面を変調するための所望の形状に成形された1つ以上の複屈折光学素子を含む光変調器を製造する方法であって、各複屈折光学素子は、所望の形状に対応する形状(例えば、逆形状または相補的な形状)でエンボス加工されたエンボス加工表面を提示する可撓性シートを提供するステップと、未硬化状態の反応性メソゲンを含む所定量の光反応性材料を基板の表面上に提供するステップと、エンボス加工表面を撓ませることで、所定量の光反応性材料の表面全体にわたって所定量の光反応性材料に漸進的に押し付けて、上記所望の形状を有する成形された複屈折部を形成するステップと、成形された複屈折部を硬化させて上記複屈折光学素子を形成するステップとを含む方法に従って提供される、光変調器を製造する方法を提供することができる。
【0050】
エンボス加工表面の撓みは、可撓性シートを撓ませることによって引き起こされてもよい。可撓性シートの撓みは、エンボス加工表面を担持/提示する側とは反対側に可撓性シートの局所的な表面領域を押し付けて、撓みにより可撓性シートを反応させて局所的な表面領域に陥凹を形成し、かつ局所的にエンボス加工表面を提示する側であるシート裏面に逆の凸面を形成することによって引き起こされてもよい。エンボス加工表面のこの局所的な凸面は、基板上の所定量の光反応性材料に押し付けられてもよく、それに付勢された場合は基板の表面に部分的に平行であるエンボス加工表面を提示し、局所的な凸面が基板の表面からのエンボス加工表面の離間を徐々に引き起こす場合は部分的にそれに傾斜したエンボス加工表面を提示することができる。エンボス加工表面の撓みの位置を基板の表面に沿った方向に漸進的に移動させることによって、エンボス加工表面の傾斜部が基板の表面を横切って掃引し、その進行に伴って所定量の反応性メソゲン流体材料を前方に押し出す。位置撓みの移動は、ローラーを上記局所的な表面領域に押し当て、ローラーを可撓性シート全体に転がして、新たな隣接する局所的な表面領域に漸進的に前進させることによって達成することができる。
【0051】
光変調器は、電気的にスイッチング可能であり得る。光変調器は、このような2枚の複屈折光学素子の間に挟まれた電気的にスイッチング可能な液晶材料を含み得る。
【0052】
この方法は、エンボス加工表面に選択的な表面配向を提供し、それに伴って、成形された複屈折部のエンボス加工表面に選択的な表面配向を付与することを含み得、ここで、表面配向は、上記液晶材料を配向させるように構成されている。このような選択的な表面配向の手段としては、成形された複屈折部をラビングするか、もしくはそこにオーバーコートポリマーを適用するか、またはそこに光反応性オーバーコーティングと、そこに適用される偏光を使用して当該オーバーコーティングの光配向を適用するか、または界面活性剤を含む適切なコーティングを適用することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態を概略的に示した図である。
【
図1B】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態を概略的に示した図である。
【
図2】
図1Bの電気的にスイッチング可能な光変調器の構成要素間の界面の機能を概略的に示した図である。
【
図3A】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態のうちの1つを概略的に示した図である。
【
図3B】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態のうちの1つを概略的に示した図である。
【
図3C】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態を概略的に示した図である。
【
図3D】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態を概略的に示した図である。
【
図3E】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態を概略的に示した図である。
【
図4】
図3Aの電気的にスイッチング可能な光変調器の一部の分解図を概略的に示した図である。
【
図5】
図3Bの電気的にスイッチング可能な光変調器の一部の分解図を概略的に示した図である。
【
図7】
図7の(a)~(h)は、反応性メソゲンを用いて形成された複屈折ポリマーを含む材料でエンボス加工された光学素子を示す。
【
図8】
図8の(a)~(c)は、スイッチング可能な光変調器を透過したレーザービームの横方向ビームプロファイルと、印加されたスイッチング電圧の関数としての関連する回折効率とを示す。
【
図9】スイッチング可能な光変調器を透過したレーザービームの横方向ビームプロファイルと、関連する入力光学ビームの偏光状態とを示す図である。
【
図10】
図10の(a)~(c)と
図10の(d)~(f)とは、それぞれ、スイッチング可能な光変調器で透過された光学ビームに関する、光学ビームのピーク光学パワー値とその光学ビーム径とを示す。
【
図11】
図11の(a)と
図11の(b)~(e)とは、それぞれ、スイッチング可能な光変調器の点拡がり関数を示すシミュレーション結果と実測結果とを示す。
【
図12】
図12の(a)~(i)は、それぞれ、(a)光学素子の製造に使用するためのマスターモールド;(b),(c)
図12の(a)のマスターモールドを用いてエンボス加工された光学素子(フレネルレンズ)を透過した光を、2つの異なる光学偏光状態に従って観察した画像;(d),(e),(f)マスターモールドを用いてエンボス加工された光学素子(回折格子)の画像と、その光学回折パターン;(g),(h),(i)マスターモールドを用いてエンボス加工された光学素子(マイクロレンズアレイ)の画像と、そこを透過したレーザービームのビームプロファイルの表示と、マイクロレンズアレイを介して画像化された写真の画像とを示す。
【
図13】
図13の(a)と(b)とは、2枚のフレネルゾーンプレートの断面形状を示す。
【
図14】
図14の(a)と(b)とは、2枚のフレネルゾーンプレートの断面形状を示す。
【
図15】
図15の(a)と(b)とは、2枚のフレネルゾーンプレートの断面形状を示す。
【
図16】
図16の(a)~(f)は、異なる印加スイッチング電圧を受ける電気的にスイッチング可能な光変調器の画像を示す。
【
図17】光変調器(フレネルレンズ)の回折効率を測定するための装置を概略的に示す図である。
【
図18A】液晶配列を含む材料の光学軸(ダイレクタ)に対する常光および異常光ビーム配列を概略的に示した図である。
【
図18B】液晶配列を含む材料の光学軸(ダイレクタ)に対する常光および異常光ビーム配列を概略的に示した図である。
【
図19A】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態のうちの1つを概略的に示した図である。
【
図19B】電気的にスイッチング可能な光変調器の2つの状態のうちの1つを概略的に示した図である。
【
図20A】本発明の一実施形態に従ったスイッチング可能な偏光無依存型の回折格子を概略的に示した図であり、回折格子は、回折が生じず、かつ両方の界面(反応性メソゲン/液晶)がインデックスマッチしている「外場オフ」状態にある。
【
図20B】本発明の一実施形態に従ったスイッチング可能な偏光無依存型の回折格子を概略的に示した図であり、回折格子は、回折が生じ、かつ両方の界面(反応性メソゲン/液晶)がインデックスマッチしていない「外場オン」状態にあり、上部/下部の界面で異なる偏光が回折されるようになっている。
【
図21】本発明の実施形態の屈折レンズの撮像用途での使用を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1Aおよび
図1Bは、2つのスイッチング状態の各々1つにおける電気的にスイッチング可能な光変調器1の断面図を概略的に示したものであり、下記に詳細を説明する。
【0055】
本実施形態における光変調器は、複合フレネルレンズである。複合レンズは、第1のフレネルレンズプレート2と、ねじれネマティック液晶材料6で充填されている間隔(d)によって第1のフレネルレンズプレートから離隔した対向する第2のフレネルレンズプレート4とを含む、光学的に透明で光学的に複屈折性の一対の光学素子(2,4)を含む。第1および第2のフレネルレンズプレートの各々は、それぞれの光学軸を規定しており、対向する2枚のレンズプレートは、それぞれの光学軸9が共線的に配置された状態で平行に対向して配置されている。
【0056】
2枚のフレネルレンズプレートの対向する表面は、それぞれ、対応する従来の凹レンズ表面の環状部分とそれぞれ機能的に同等であるリング形状の同心円環状の凹部またはセグメントからなる表面レリーフパターン(7,8)を互いに提示する。表面レリーフフィーチャの高さ(h)、すなわち振幅は、各レンズプレートのパターン化された表面全体にわたって実質的に同じである。言い換えれば、環状凹部のうちの任意の1つによって形成される陥凹の深さは、それらの環状凹部のうちの任意の他のものによって形成される陥凹の深さと実質的に同じである。第1のフレネルレンズプレートの焦点距離は、第2のフレネルレンズプレートの焦点距離と実質的に等しい。
【0057】
2枚のフレネルレンズプレートの各々は、複屈折ポリマーから形成され、かつ反応性メソゲン(RM)として知られている複屈折重合性液晶材料を用いて、樹脂を固形状に硬化させた成形体の形態で作られている。複屈折性であることから、各フレネルレンズプレートは、常光屈折率noおよび異常光屈折率neを有している。複屈折ポリマー材料は、実質的に均質であり、少なくとも透過が発生する波長範囲に対して透明である。材料を透過する光の速度は、光の振動の振動方向によって決定される。単一の光ビームが複屈折材料に入射すると、互いにずれた2本の光ビームが現れ得る。光の直線偏光の方向には、明確な屈折率が存在する方向があり、直線偏光の直交する2つの方向の各々に関連する屈折率は異なる。
【0058】
光の電場(E)の振動の伝搬方向に対する複屈折材料の「光学軸」の方向が、材料の屈折特性を決定する。光学軸の方向に沿って光が伝搬する場合、光の電場成分のすべての方向が光学軸に対して垂直に振動し、複屈折は存在しない。これは、
図18Aに概略的に示されており、光(a)および(b)の偏光の垂直配向もそれぞれ光学軸に対して垂直である。ここでは、光学軸は、液晶材料の「ダイレクタ」によって規定される。しかしながら、光の伝搬が光学軸に対して横方向にある場合、複屈折材料であれば、光波の電場成分が光学軸に沿った方向に振動する(または光学軸に沿って少なくとも分解可能である)ということを条件に複屈折が発生する。そうでなければ、光学リタデーションは発生しない。これは
図18Bに概略的に示されており、光(a)および(b)の偏光の垂直配向が示されている。光ビーム(b)の偏光は、光学軸に対して完全に垂直であり、材料の常光屈折率を受ける。しかしながら、光線(a)は、その電場成分が光学軸と面内で振動するように配向されていると、材料の異常光屈折率を受けることになる。これは、光線(c)によって示されているように、光線が光学軸に対して角度(θ)をつけて傾斜している場合でも同様である。
【0059】
異常光屈折率の値は、この光線伝搬角度に応じて次のように変化する:
【数2】
【0060】
したがって、この光線を
図18Aに示すように角度(θ=0)で傾斜させると、異常光屈折率と常光屈折率とは等しくなり、複屈折は発生しない。逆に、この光線を
図18B(a)のように角度(θ=90度)をつけて傾斜させると、最大複屈折が生じ、最大光学リタデーションが発生する。
【0061】
複屈折は、異常光屈折率と常光屈折率との値の差として定量化され、一方で、リタデーションは、複屈折材料を一定距離だけ移動した後の直交偏光に対して生じる位相差の合計として定義される。その距離は、光変調器の光学素子や、その光学素子間に適用され得るような、反応性メソゲンまたは液晶材料などの対象となる光学媒体の厚さであるとみなされ得る。
【0062】
メソゲン材料は、固体のような特性と液体のような特性とを示すことができる。この液晶状態(LC)はメソフェーズと呼ばれ、異なる温度範囲で結晶性固体状態と等方性液体状態との間で発生する。液晶は、隣接する分子の長軸が互いにほぼ整列した棒状の分子を含み得る。任意の所与の点の材料中の分子の選択的配向の方向を表すために、「ダイレクタ」と呼ばれるベクトルが使用される。第1および第2のフレネルプレートの複屈折ポリマー材料は、反応性メソゲンがもはや反応性ではなくなったが、そのダイレクタが保持されている硬化樹脂の形態である。
【0063】
第1のフレネルレンズプレート2では、反応性メソゲン材料のダイレクタ3は、レンズプレートの光学軸9に垂直な方向に配向されている。同様に、第2のフレネルレンズプレート4では、反応性メソゲン材料のダイレクタ5は、レンズプレートの光学軸9に垂直な方向に、かつ第1のレンズプレート2の材料のダイレクタ3の方向に垂直な方向に配向されている。
【0064】
第1のフレネルレンズプレートと第2のフレネルレンズプレートとの間に挟まれたねじれネマティック液晶材料6は、複屈折液晶材料である。液晶材料のダイレクタは、液晶材料とレンズプレートとが界面を形成する第1および第2のレンズプレートの各々で局所的に反応性メソゲン材料のダイレクタに別々に配向されている。液晶6の第1の静止状態では、このねじれネマティック材料のダイレクタの漸進的なねじれが、対向する第1および第2のフレネルレンズプレートの2つの相互に直交するダイレクタの両方に液晶ダイレクタを配向させるようにする。この静止状態では、液晶材料の常光屈折率と異常光屈折率との両方が、2枚のフレネルレンズプレートの各々の常光屈折率および異常光屈折率と一致する。その結果、液晶材料と対向するレンズプレートとの境界では、光変調器のこれらの3つの構成要素の常光屈折率および異常光屈折率のいずれにも屈折率コントラストが存在しない。この結果、無偏光(または任意に偏光された光、楕円偏光または円偏光など)10は、第1のフレネルレンズプレートから液晶材料に通過し、その後、液晶材料から第2のフレネルレンズプレートに通過する際、実質的にいかなる屈折も受けずに光変調器を透過することができる。この状況は、
図1Aに概略的に示されている。
【0065】
逆に、
図1Bに概略的に示されているように、光変調器がレンズ機能を獲得する第2の状態では、液晶材料は、第1および第2のフレネルレンズプレートの共有光学軸に実質的に平行になるように液晶ダイレクタ17の方向を変化させる印加電場の作用を受ける。光変調器は、第1のフレネルレンズプレートに隣接する第1の電極12と、第2のフレネルレンズプレートに隣接する第2の電極13とを含む一対の透明導電性電極(
図1Aには示されていない)を含む。電圧ユニット(図示せず)は、第1および第2の電極の両方に電気的に接続されて配置され、それを用いて2枚の電極間に所定の電圧(V)をスイッチング可能に印加して、第1および第2のフレネルレンズプレートの共有光学軸9に実質的に平行な方向に光変調器の液晶材料全体にわたって向けられる電場14を生成するように構成されている。
【0066】
図1Bに示される実施形態では、第1および第2のフレネルレンズプレートは、液晶材料と共に第1および第2の電極の間に配置されている。しかしながら、代替的な実施形態(
図3C参照)では、2枚の電極のうちの一方が、第1のフレネルレンズプレートと液晶材料との間に、または第2のフレネルレンズプレートと液晶材料との間に配置されていてもよい。更なる実施形態では、(
図3D参照)2枚の電極のうちの一方が、第1のフレネルレンズプレートと液晶材料との間に配置されていてもよく、かつ2枚の電極のうちの他方が、第2のフレネルレンズプレートと液晶材料との間に配置されていてもよい。
【0067】
電場14を液晶材料に印加し、その結果として液晶ダイレクタの配向が変化した結果、液晶材料の異常光屈折率は、直線偏光の第1の方向に偏光された光15に関して、第1のフレネルレンズプレート3の異常光屈折率と一致しなくなる。同時に、液晶材料の異常光屈折率はまた、直線偏光の第1の方向に直交する直線偏光の第2の方向に偏光された光16に関して、第2のフレネルレンズプレート4の異常光屈折率と一致しなくなる。当然、光変調器1に向けられた入射光10は無偏光であり、したがって、直線偏光の第1および第2の方向に偏光された光の等しい成分/割合からなるか、またはそれらに分解可能であるとみなすことができる。光変調器の動作中のレンズは、液晶材料と第1および第2のフレネルレンズプレートそれぞれとの間の2枚の別々の連続した界面で直線偏光の2つの直交成分/割合に別々に作用する。これは、
図1Bに概略的に示されている。
【0068】
光変調器のこの特性と、変調器の個々の光学部品によって実装される機能的なステップとをより明確に説明するために、これから、光変調器の4つの光学界面が概略的に表され、それぞれの光学機能が示されている
図2を参照する。
【0069】
特に、光変調器は、無偏光または任意の偏光10が光変調器に入射する第1のフレネルレンズプレート2の上面間の界面である第1の光学界面20を含んでいるとみなすことができる。
【0070】
第1の態様における本発明に従った光変調器、および本明細書に記載された実施形態は、完全に無偏光の入射光に関してだけでなく、任意の程度(%)の偏光を有する入射光に関しても同様に動作可能であることが重要である。したがって、入射光にある程度の偏光(例えば、反射太陽光)がある場合、または円偏光もしくは楕円偏光が入射する場合、光変調器は同じように光を変調する。
【0071】
第1のレンズプレートの材料の複屈折は、直線偏光の第1の方向に偏光された光24の第1の成分が、直線偏光の第2の方向に偏光された光25の第2の成分が受ける屈折率とは異なる屈折率を受けることを意味する。その結果、複屈折が発生し、これは、光のこれらの2つの直交偏光成分(24,25)の分離によって
図2に概略的に示されている。光のこれらの2つの成分の前方への伝搬は、光変調器内の第2の界面21であって、第1のレンズプレート2とその第2の状態の液晶材料17との間の界面にそれらを導く。この界面では、第1のレンズプレートの異常光屈折率は、光の第2の成分に関してのみ、液晶材料の異常光屈折率と一致せず、それによって、界面全体にわたって屈折率コントラストを受け、第1のレンズプレートは、その意図されたレンズ機能26を実行することになる。しかしながら、第1のレンズプレートの常光屈折率は、界面全体にわたって屈折率コントラストを受けない光の第1の成分に関して、液晶材料の常光屈折率と一致したままであり、それによって、第1のレンズプレートが、その光の成分に関して、いかなるレンズ機能の実行も妨げる。
【0072】
光の2つの成分の前方への伝搬は、第2のレンズプレート4とその第2の状態の液晶材料17との間の界面である光変調器内の第3の界面22にそれらを導く。この界面では、第2のレンズプレートの異常光屈折率は、光の第1の成分に関してのみ、液晶材料の異常光屈折率と一致せず、それによって、界面全体にわたって屈折率コントラストを受け、第2のレンズプレートは、その意図されたレンズ機能27を実行することになる。しかしながら、第2のレンズプレートの常光屈折率は、界面全体にわたって屈折率コントラストを受けない光の第2の成分に関して、液晶材料の常光屈折率と一致したままであり、それによって、第2のレンズプレートが、その光の成分に関して、いかなるレンズ機能を実行することも妨げる。
【0073】
最後に、光の2つの成分の伝搬に続いて、第2のレンズプレートの外縁と光変調器を越えた周囲環境との間の界面である第4の界面23にそれらの両方を導く。この出力光28は、相互に直交する直線偏光の2つの組み合わされた成分を含み、これらは、各々が光変調器内で別々に変調される(すなわち、この場合では集束される)が、1つの組み合わされた変調された光出力として出力する。
【0074】
図3Aおよび
図3Bは、光変調器30が、間隔「d」によって離間された2つの対向する光学的に透明で平行な基板を用いる、本発明の別の実施形態を概略的に示している。各基板は、それぞれの基板の表面に複屈折フレネルゾーンプレートパターンを担持する。第1の光学素子は、第1の光学基板32上に、第1の光学基板の平面に平行な第1のダイレクタ33を有する複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)材料を含む第1のフレネルゾーンプレートパターン34がパターン化された第1の光学基板32によって提供される。第2の光学素子は、第2の光学基板38上に、第2の光学基板の平面に平行であるが、第1のダイレクタ33の方向に垂直な第2のダイレクタ39を有する複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)材料を含む第2のフレネルゾーンプレートパターン37がパターン化された第2の光学基板38によって提供される。
【0075】
第1および第2のゾーンプレートパターンは、それらの空間形状に関して互いに相補的である。すなわち、第1のゾーンプレートパターンが第1の基板上に複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)の本体を提示する場合、第2のゾーンプレートの直接対向する領域は、その基板上に複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)の隣接する本体間に第2の基板の開放領域を提示する。このように、第1の基板32上の複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)34の存在を示す位置は、複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)37の非存在による第2の基板38の対向部分と対応しており、その逆もまた同様である。
【0076】
第1および第2の光学素子の反応性メソゲンダイレクタ(33,39)は、互いに垂直であるそれぞれの光学軸を規定する。これは、2枚の光学素子間に挟まれた液晶材料35のねじれ構成をもたらす。光変調器30が
図3Aに概略的に示されるオフ状態にあるとき、構造体を伝搬する無偏光31の2つの垂直偏光成分の各々は、90°のそれぞれの偏光回転を受けるが、それぞれの波面40(位相面)の歪みなしに通過する。
【0077】
光変調器30がオン状態にあるとき、第1および第2の光学素子上に配置された電極(図示せず)間に電圧41を印加することによって
図3Bに概略的に示されているように、液晶43は、この電圧によって生成された電場に沿って、第1および第2の基板の各々の平面に垂直な方向に再配向する。
【0078】
この再配向は、オフ状態で提供される90°のそれぞれの偏光回転を妨げ、入射光42内に存在する2つの垂直な偏光成分(44,45)の両方が、第1および第2の光学素子のそれぞれの1つにおいて、それぞれの波面(位相面46および47)の歪みを受ける。これは、偏光2つの成分のうちの一方の成分44に関して、第1の光学素子からのレンズ化と、偏光の2つの成分のうちの他方の成分45に関して、第2の光学素子からの別個のレンズ化とをもたらす。
【0079】
第1および第2の光学素子上の(34,37)のフレネルゾーンプレートパターンの相補的な設計は、フレネルゾーンプレートパターンが相補的でない代替的な設計と比較して、セル全体でより均一な電場分布を達成する。その結果、臨界電圧を超えると電圧に依存しないレンズ化を達成することができ、それによって、印加電圧(V)の変化に対してレンズ効果は安定したままであった。この配置は、液晶材料の屈折率と複屈折フレネルゾーンプレートの屈折率との間のような不完全な屈折率マッチングの影響をあまり受けない。なぜなら、最初に歪んでいない入射波面31に、存在する場合、このような不完全性によって、第1の光学素子(32,43)によって(わずかに歪んだ位相面36を生じる)加えられた歪みは、
図3Aに示されているように、第2の光学素子(37,38)を通過するときに、実質的に歪んでいない出力波面40を生成するために、わずかに歪んだ位相面36に加えられた相補的な歪みによって実質的に補正されるからである。これにより、この設計は、デバイス内の屈折率の変化により発生する可能性のある屈折率マッチングの不完全性に対して修復力を持つようになる。
【0080】
図3Aおよび
図3Bに示される実施形態では、第1および第2のフレネルゾーンプレートは、液晶材料と共に第1および第2の電極(12,13:例えば
図1B参照)の間に配置されている。しかしながら、代替的な実施形態(
図3C参照)では、2枚の電極のうちの一方12は、第1のフレネルゾーンプレートと液晶材料との間に、または第2のフレネルゾーンプレートと液晶材料との間に配置されている。更なる実施形態では、(
図3D参照)2枚の電極のうちの一方12は、第1のフレネルゾーンプレートと液晶材料との間に配置され、2枚の電極のうちの他方13は、第2のフレネルゾーンプレートと液晶材料との間に配置されている。さらに別の実施形態では、(
図3Cおよび
図3E参照)2枚の電極(12,13)のうちの一方(12;
図3C)または各々(12,13;
図3E)は、それぞれのフレネルゾーンプレートにおいて、RM表面レリーフパターン(フレネルゾーンパターン)と、RM表面レリーフパターンが形成された透明な平面プレート/基板との間に配置されている。このような配置では、導電性電極の光学的影響を最小限に抑えることが好ましい。しかしながら、これらの配置の使用は、電気的に不活性な反応性メソゲン光学素子全体にわたって発生する外場の損失を無くし、したがって、動作電圧および電力を低減する。
【0081】
図19Aおよび
図19Bは、本発明に従った代替的な実施形態を示す。この代替的な実施形態では、第1および第2の光学素子の間に挟まれた液晶への電場の印加は、光変調器の変調機能を停止させる可能性があり、一方で、その電場の除去は、変調器の変調を再開させることを可能にする。これは、
図3Aおよび
図3Bを参照して上述した配置の逆である。この代替的な配置では、第1および第2の光学素子(32,38)の間に、鉛直配向のねじれネマティック液晶310が用いられる。
【0082】
図19Aは、光変調器が「電場オフ」状態にあるときの液晶310のホメオトロピック状態を示している。この状態では、電圧ユニット41によって系の電極(12,13)間に電圧(V)が印加されておらず、プレチルト(挿入図:
図19A)が液晶に存在している。プレチルトは、隣接するフレネルゾーンプレート34を形成する複屈折ポリマーの光学軸33の方向にある。
【0083】
本実施形態における光変調器の配置は、
図3A~
図3Eを参照して上述したエンボス加工された異方性フレネルゾーンプレート(34,37)に基づいている。しかしながら、さらに、この実施形態では、フレネルゾーンプレートは、それぞれ、ホメオトロピック配向材料300(例えば、ポリイミド、シラン、レシチン、光整列材料)でオーバーコートされている。
【0084】
液晶は、その下のフレネルゾーンプレートの光学軸の方向にプレチルト310を有し、これは、ラビングまたは光配向によって誘起され得る。変調器は、第1および第2の光学素子(32,33;37,38)を含み、それらの各々は、他方のものに垂直な光学軸(すなわち、フレネルレンズの複屈折材料のダイレクタ:33,39の光学軸)を有している。
【0085】
液晶は、「外場オフ」状態のホメオトロピック構成310を想定しており[
図19(A)]、この状態により、
図3Aを参照して上述したように、光変調器による偏光無依存のレンズ化が可能になる。
【0086】
図19Bは、電圧ユニット41によって系の電極(12,13)間に電圧(V)が印加された「電場オン」状態を示している。ここでは、液晶に電場誘起ねじれネマティック構成311が設けられている。液晶は、負の誘電異方性を有していてもよい。「外場オン」状態では、負の誘電異方性により液晶311は電場に対して垂直に配向する。ここでは、液晶311は、
図3Aを参照して上述したように、フレネルゾーンプレートを形成する複屈折材料、例えば硬化反応性メソゲンから形成された複屈折材料の常光屈折率および異常光屈折率とインデックスマッチしている。この状態では、実質的にレンズ化は起こらない。その下の複屈折フレネルレンズの光学軸の方向(ダイレクタ:33,39)への液晶310のプレチルトにより、ねじれネマティック構成となる[
図19(B)]。この状態では、異方性フレネルゾーンプレートが液晶にインデックスマッチしているため、光変調器は光を集束しない。
【0087】
代替的な実施形態では、2枚の光学素子(32または38)のうちの一方のみがプレチルト310を示し/提供し、他方は基板に対して垂直である。印加電圧下でのねじれは、d/p≒0.25のキラルネマティックを使用して誘起することができ、ここで、dはセルギャップであり、pはキラルネマティックのピッチである。
【0088】
複屈折光学素子/ポリマーを形成するために、カラミティック反応性メソゲン(RM)を使用してもよいし、カラミティックネマティック液晶を、それらと光学的に接触する、それらの間に挟まれた液晶材料として使用してもよい。ネマティック液晶は、
図3Aおよび
図3Bのように、ほぼ平面状になるように配置されていてもよく、散乱を防ぐために均一に配向するように配置されていてもよい。
【0089】
RMは、好ましくは高い複屈折を有する。RMの複屈折(Δn)の適切な値の範囲は、好ましくはΔn=0.05~0.35、より好ましくはΔn=0.07~0.3、さらにより好ましくはΔn=0.17~0.27であり、ここで、各値は可視波長域に対して与えられている。当然、デバイスは、IR、ミリ波、マイクロ波およびTHzを含む他の波長域で動作するように設定されていてもよい。実質的には、複屈折は、光の安定性を損なうことなく可能な限り高くてもよい。したがって、Δn=0.2~0.27もまた適切な範囲である。
【0090】
RMは、実質的に二官能性であってもよい。例えば、これは、RMの両端にカラミティック(棒状)重合性基(例えばアクリレート基)が結合されている場合であり得る。これにより、RMが液晶の平面配向を誘導することが保証される。RM材料の所望の配向は、最も好ましくは、RMから形成された光学素子全体にわたって維持される。これは、ハイブリッド配向またはねじれ配向であってもよいが、ほとんどの場合、いくつかの実施形態では、光学素子全体にわたってRMダイレクタの平面状のホモジニアス配向が好ましい。それにもかかわらず、光変調器内の液晶のねじれネマティック構成は、いくつかの有益な特性をもたらし得る。特に、改善された波長依存性と、より少ない分散とが達成され得る。本明細書で提供される光変調器の実施例では、一般的に平面状の構成/構造を使用している。なぜなら、この構造体の製造および設計が簡単であるからである。しかしながら、本発明は、このような一般的に平面状の構造または設計に限定されるものではない。
【0091】
光学素子は、接触する液晶と、所望の効果を与えるために成形されたRM光学素子との間の屈折率の差を介して、透過された光波面に屈折光学効果および/または回折光学効果を提供するように構造化(例えば、成形またはパターン化)されていてもよい。例えば、光学素子は、屈折レンズ(例えば、単純レンズ、もしくはフレネルレンズ)の形態で、または屈折プリズムの形態で成形されて、回折格子またはフレネル回折光学素子などの回折構造体を形成することができる。液晶材料は、バルク液体が、それが界面を形成している光学素子の形状または構造に適合する(すなわち、逆の形状/構造を形成する)形状を採用することができるように、適合するように選択される。これにより、光波面を変調するための屈折性または回折性の界面/表面が提供される。
【0092】
好ましくは、各光学素子は、約100nm未満の厚さの配向層上に堆積され、これは、次いで、好ましくは透明電極上に堆積される。好ましくは、光学素子は、2枚の対向電極間の液晶材料に最大電場が印加され得るように設計および作製される。すなわち、配向層と液晶材料に隣接する光学素子の表面との間の最小距離は、好ましくは可能な限り小さい。例えば、光学素子のRM材料によって形成された光学構造体は、好ましくは、配向層および電極層に可能な限り近いパターン振幅(例えば、格子構造体またはフレネルレンズ/プレートのトラフ)を示す。これにより、電極と隣接する活性液晶層との間の最小距離の値を最小化し、スイッチング電圧を可能な限り低く抑えることができるようになる。
【0093】
液晶材料と光学素子(回折性または屈折性)とは、好ましくは、それぞれカラミティック液晶と複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)とから形成されてもよいが、前者にはディスコティック液晶材料を用いてもよい。複屈折光学素子とそれらの間の液晶との両方に正の複屈折カラミティック型を用いると、複屈折光学素子の光学軸(ダイレクタ)に平行に偏光された光の成分は屈折/回折されるのに対し、複屈折光学素子の光学軸(ダイレクタ)に垂直に偏光された光の成分は、上述したように大きな屈折または回折を伴わずに透過される。
【0094】
光変調器の2枚の光学素子は、望ましくは、光変調器の動作波長域において実質的に透過可能である接触する液晶媒体によって分離されている。光変調器の2枚の光学素子間の液晶は、好ましくは、2枚の光学素子の界面に近接して少なくとも局所的にインデックスマッチするように配置されている。これは、液晶のダイレクタプロファイルが、望ましくは90°ねじれて、ねじれネマティックを形成するように配置されていることを意味する。
【0095】
光学素子の間隔、ひいてはねじれネマティック液晶材料の厚さは、望ましくは、次式:
【数3】
[式中、Δnは液晶の複屈折であり、dは対向する2枚の光学素子間の間隔である(例えば、構造化された光学素子による間隔のばらつきを含めたときの平均間隔とみなされる)]で与えられるGooch-Tarryの条件を満たすように選択することができる。
【0096】
光学的品質および無彩色性のためには、好ましくはm>4である。速度がより重要である場合、または狭い波長域のレンズが必要とされる場合には、mの値がより低いものを選択してもよい。典型的には、間隔dは、少なくとも約5μm、好ましくはそれ以上であってもよい。
【0097】
セルギャップdは、対象となる複屈折光学素子における表面/パターンフィーチャの高さ/振幅よりもはるかに大きいことが重要である。例えば、d>3hが望ましい基準であってもよい。なぜなら、望ましいダイレクタプロファイルは、光の偏光成分の偏光方向が90°回転するように実質的に均一になるためである。好ましくは、d>>3h、例えばd>10h、またはd>15h、またはd>20h、またはd>25hとして、ねじれネマティック状態のときに光が液晶を透過するときに光の偏光方向が実質的に完全に90°回転するようにする。光学素子の表面パターンフィーチャの上部/外側部分から約1hの距離で、この条件に望ましくは近づき、したがって、条件3hは、このような2つの対向する表面と、ねじれネマティック液晶が実質的に均一である均一な中央領域とを考慮に入れたときに生じる。この中央の均一にねじれた領域は、好ましくはhよりも大きい厚さを有する。
【0098】
エンボス加工および配向された複屈折ポリマーの製造
本発明は、光変調器用光学素子の製造方法を提供することができる。例えば、上述した電気的にスイッチング可能な光変調器であって、光変調器を透過した光波面を変調するための所望の形状に成形された2枚の複屈折光学素子の間に挟まれた電気的にスイッチング可能な液晶材料を含む光変調器の製造方法が提供される。変調器の複屈折光学素子のうちの任意の1つまたは各々は、上記所望の形状に対応する形状でエンボス加工されたエンボス加工表面を提示する可撓性シートを提供するステップと、所定量の未硬化状態の反応性メソゲン材料を基板の表面上に提供するステップと、所定量の反応性メソゲン材料の表面全体にわたって、エンボス加工表面を所定量の反応性メソゲン材料に漸進的に押し付けて、上記所望の形状を有する成形された複屈折部を形成するステップと、成形された複屈折部を硬化させて上記複屈折光学素子を形成するステップとを含む方法に従って提供することができる。この方法は、エンボス加工表面に選択的な表面配向を提供し、それに伴って、成形された複屈折部のエンボス加工表面に選択的な表面配向を付与することを含み得、ここで、表面配向は、液晶材料を配向させるように構成されている。
【0099】
RMは、透明電極を含む基板と、液体のままRMに接触し、所望の形状をエンボス加工し、同時にRMの表面に所望の配向を付与するエンボス加工配向層との間で、液体形態のまま所望の形状(例えば、レンズ形状または他のパターン)に形成することができる。以下の手順を用いることができる。
【0100】
最初のステップでは、例えばダイヤモンドカッティングまたはリソグラフィー法(フォトリソグラフィー、電子ビームなど)を使用して、複屈折光学素子のオリジナルマスターを規定する。当業者が容易に利用することができるような手順をこのステップに用いることができ、例えば、光学格子、レンズまたはプリズム素子を製造するために適用される。
【0101】
このオリジナルマスターは、その後、例えば電鋳を用いて金属シム(例えばニッケル)にコピーされてもよい。あるいは、オリジナルマスターを使用してコピーを行ってもよい。
【0102】
第2のステップでは、所望のパターンまたは形状の対応形状が、PETフィルムなどの可撓性のバッキング基板上に配置された樹脂材料(例えば、箔押しまたはフォトエンボス加工のいずれかを使用して)にエンボス加工される。これにより、RM材料のエンボス加工に使用するためのエンボス加工表面が形成される。
【0103】
第3のステップでは、エンボス加工表面の上面に選択的な優先配向が付与される。これは、樹脂(ポリマー)上面をラビングすることによって、またはエンボス加工された樹脂構造体を液晶ポリマー、界面活性剤もしくは光配向剤などの配向層(好ましくは薄い)でコーティングして、逆光学素子の表面に正しい方向を付与することによって誘導されてもよい。
【0104】
第4のステップでは、光学素子(RM材料)が堆積されるべき光学基板(例えば、ガラスまたは透明な非複屈折プラスチック)であって、電極構造と、その上に堆積された適切に配向された平面配向層(通常、ラビングされたポリイミドまたは光配向層)とを有する光学基板を提供する。次いで、その基板の一方の表面に所定量の未硬化/液体RM材料を線状または帯状に堆積させ、可撓性のエンボス加工表面を液体RM材料に接触させて配置する。可撓性のバッキング基板の裏面にローラーを適用して、基板とその上のエンボス加工表面とを撓ませ、同時にエンボス加工表面を液体RM材料に押し込む。適切な圧力および速度で、RM材料をエンボス加工表面に接触させた状態で、ローラーを可撓性バッキング基板の裏面に沿って押圧し、エンボスを光学基板の表面全体にわたって漸進的に液体RM材料の中に撓ませて、RM材料を光学基板全体に広げると同時にエンボス加工を行う。すなわち、エンボス加工は、RMがオリジナル光学的マスター構造の形状に押し込まれ、この要素のフィーチャの基部と電極との間のオフセットが最小になるように行われる。
【0105】
フィルム上の樹脂は、通常、その表面コーティングの配向方向が表面の配向方向と同等(平行または逆平行)になるように配置されている。RMの両側の配向層の効果により、RMで可能な完全な(またはそれに近い)複屈折を有する均一な複屈折状態が形成される。次いで、RMを硬化させてポリマーを形成し、フィルムと樹脂モールドとを取り除くと、ガラス基板上に配向ポリマーRMが残される。
【0106】
エンボス加工プロセスは、実用的なエンボス加工速度および圧力に最適な粘度を得るために、高温で行われてもよい。このプロセスは、RMが等方性液体である温度で行われてもよい。この場合、フィルムと接触しているRMの冷却は、制御された方法で行われてもよい。冷却時の熱勾配は、RMの光学軸方向であることが好ましい。
【0107】
硬化は、秩序パラメータ、ひいては複屈折が最大になるように、低温であるが、未硬化RMのネマティック相で行われることが望ましい。
【0108】
好ましくは、硬化は、RMのネマティック相の可能な限り低い温度で行われて、層の秩序パラメータ、ひいては複屈折が最大化される。このような場合、液晶は、RMを硬化させる温度ではなく、デバイスの動作温度範囲全体にわたってRMに実質的に一致する。配向されたRMは、通常、接触するネマティック液晶に十分な強さの配向を付与する。この配向は、正しい動作のために必要な方向に自発的に行われる。しかしながら、デバイスの動作は、追加のラビング、光配向または界面活性剤層によってこの配向を強化することによって改善され得る。
【0109】
ガラスと硬化RMとの間の接着性を向上させるために、RMに薬剤を添加してもよい。あるいは、硬化樹脂と樹脂との間の接着性を選択的に低下させる異なる薬剤を添加してもよい。いずれの場合も、添加剤の濃度は、樹脂の特性が影響を受けないように十分に小さいことが望ましい。好ましくは、これらの添加剤は、効力を高めるために表面特異的である。
【0110】
同様に、硬化RMと樹脂との間の接着性を低下させるのに役立てるために、樹脂のUVO3またはプラズマ処理を使用してもよい。RMの接着促進剤の適切な領域を印刷してRMの構造をパターン化してもよく、その結果、RMの接着促進剤が堆積されている領域ではRMがガラス基板に選択的に接着するが、フィルムの樹脂との接着がより強いガラスからは取り除かれる。
【0111】
光学素子は、単純形態またはフレネル形態のいずれかの屈折レンズであってもよいし、フレネルゾーンを使用した回折レンズであってもよい。あるいは、プリズムなどの他の屈折構造を形成してもよいし、格子素子もしくはホログラフィック素子などの回折構造を形成してもよい。
【0112】
別の設計では、導電性電極を光学素子の上に堆積させる。この設計は、より低いスイッチング電圧を最小限に抑える必要がある場合に選択することができる。例えば、フレネル型であっても、大きな屈折レンズでは、構造の高さが誘電材料全体にわたって高い電圧降下を引き起こすことになる。これは、電極(またはその下の電極に接続された第2の電極)がRM光学構造体の上面に堆積されている場合に最小限に抑えられる。電極は、ITOなどのスパッタリングされた層から形成されてもよいし、導電性(例えばAg)ナノ粒子の薄いコーティングを設け、その後、高温でアニールして均一な導電性コーティングが形成されてもよいし、PEDOTなどの導電性ポリマーの薄い層を使用することによって形成されてもよい。いずれの場合も、導体の上に追加の平面状のホモジニアス配向層が必要である。好ましい配向の方向は、配向されたRMの方向と平行であることが望ましい。
【0113】
図4は、
図3Aの光変調器の一部を概略的に示したものであって、RMの表面パターン34を担持する透明基板32を含む上部光学素子を含み、RMはダイレクタ33を有している。
【0114】
液晶材料35は、上部光学素子に隣接する領域にのみ示されている。「オフ」状態では、液晶材料のダイレクタ51は、平均して、レンズ光学軸48に垂直な方向に配向されており、これは、透明基板32の平面に垂直なフレネルレンズの円筒対称軸である。
【0115】
図4は、上部光学素子のフレネルゾーンプレートを形成するRM表面パターンの一部に直接隣接する液晶材料35の一部の分解図を示している。これは、局所的な液晶ダイレクタ51の大部分は、レンズ軸48に対して垂直に、かつ同時にフレネルゾーンプレート34の材料内でRM光学軸(ダイレクタ)33に対して実質的に平行に配向されており、液晶材料35とRMパターンの鉛直面との間の直接の界面は、局所的な液晶ダイレクタ51がレンズ軸48に対して実質的に平行であり、かつRM光学軸(ダイレクタ)33に対して実質的に垂直である表面固定境界層52を形成していることを説明する。この分解図はまた、透明基板32の上面における電極50の位置と、基板の下面に、光変調器内の液晶材料35およびRM材料34の両方と接触する配向層49を設けたこととを示している。
【0116】
図5は、光変調器が「オン」状態にスイッチングされた
図4に示されている図を示している。ここでは、光変調器の対向電極間に生じる電場は、RM材料が存在せず、液晶材料43が存在していた(外場配向状態で示されている)変調器内の領域において相対的に高くなる。しかしながら、光変調器内のRM材料の領域に直接隣接する液晶材料の領域は、誘電体RM物質のシールド効果に起因するほか、RM表面に形成された表面固定境界層52にも起因して、より低い電場強度を受ける。この結果、RM材料に直接隣接する液晶材料のダイレクタが、レンズ軸48に対して垂直である配向を採用することになる。これは、フレネルゾーンプレート要素34の有効高さを実際の高さよりもわずかに高くするという正味の効果を有する。
【0117】
低電圧では、オン状態のダイレクタは表面近くで鉛直にならず、フレデリクス転移よりもかなり高い外場が必要となる。フレデリクス転移は、歪んでいない状態の液晶に十分に強い電場または磁場が印加されたときに生じる液晶の相転移である。特定の外場閾値未満では、ダイレクタは歪まないままである。この閾値から徐々に外場値を上げていくと、ダイレクタは外場と整列するまで広がり始める。
【0118】
この結果、第1の内面(すなわち入射側)は、ダイレクタが表面で鉛直でない低い外場では不完全な屈折効果を与える(オン状態については
図5を参照)。
【0119】
レンズに使用される材料は、オン状態とオフ状態との間のコントラストの増加を最適化するのに役立てるために、RMの常光屈折率がLCの屈折率よりもわずかに高くなるように選択されてもよい。電極がレンズの下にある場合、例えば回折型フレネルレンズが使用されている場合、同じ効率を得るために、レンズ構造体の深さをマスターの深さと比べて小さくしてもよい。なぜなら、レンズの誘電効果により、それらの領域の表面近くの外場が減少し(
図5のオン状態の場合に示されているように)、ひいては構造体の同等の深さが増幅されるためである。すなわち、
図4に示されているように、回折構造体の有効高さは、オフ状態よりもスイッチング状態の方がhよりも高くなる。
【0120】
完全に鉛直な場合は、ビームの角度依存性により、1つの偏光が第1の表面によって屈折または回折されるという誤差が生じる。印加された外場の屈折が光学効果と同様の性質になるように、材料の誘電率を調整することが好ましい。電極が格子素子またはレンズ素子の上に堆積されている場合、光学的および電気的な屈折効果は自動的に類似しているはずである。
【0121】
本発明は、広範囲の受動光学素子に適用して電気的にスイッチング可能にすることができる偏光無依存型の補償光学系への新たなアプローチを可能にする。所望の形状を光学的に異方性の液晶材料にエンボス加工する方法が提供される。偏光無依存性は、例えば直交する光学軸を有する2枚の基板をセルへと組み合わせることによって達成され得る。セルは、ねじれたネマティック構成のネマティック液晶で満たされていてもよい。液晶の屈折率は、基板の屈折率とインデックスマッチしていてもよい。
【0122】
フレネルゾーンレンズでの第1の適用の更なる例をこれから説明する。これは、電場が存在しない非集束状態から外場オン状態での集束状態にスイッチングすることができる。これをマルチレベルフレネルレンズに拡張することで、バイナリ構造の41%の効率限界を克服することができる。さらに、偏光無依存型の光学格子およびマイクロレンズアレイの例を示すことで、この技術が幅広い光学素子に適用可能であることを証明する。
【0123】
フレネルゾーンプレート(FZP)は、回折効果に依存して焦点Mに光を集束させる。コリメートされた光源から透過し、FZPを透過した光は、FZP平面内の点から焦点までの経路長さに応じて、点Mでの強め合いまたは弱め合いの干渉のいずれかによって特徴付けることができる。Mでの集束は、弱め合って干渉する領域の光を他の領域に対してπだけ位相シフトすることによって達成される。これは、命名ゾーンのプレートの分割をもたらす。
【0124】
単純な幾何学的引数と干渉条件とから、ゾーン半径rmが次式:
rm=[nλ(f+mλ/4)]1/2
[式中、mはリングの数、fは公称焦点距離、λは対象の光の波長である]によって与えられる。
【0125】
以下の例では、反応性メソゲンにフレネルゾーンプレートをインプリントするためにエンボス技術を使用している。エンボス加工は、実質的にオフセットなしで構造体の複製を可能にするため、ここで選択される方法である。ゼロオフセット条件は、デバイス全体での不要な電圧降下および大きな電気的変動を回避するために、電気光学デバイスにおいて非常に望ましい。他のインプリント技術は、液体フォトポリマーが剛性の構造化要素の周りを流れるのを防ぐので、圧力の高さに関係なく、多少のオフセットが生じやすい傾向にある。エンボス加工により、本実施例では、構造化要素は可撓性フィルム上に形成され、これは、液体フォトポリマーを基板の一方の面から他方の面に押圧して、電極と当該フィルムとの間に形成されたギャップを満たすことを可能にする。
【0126】
図6Aおよび
図6Bは、エンボス加工プロセスを概略的に表したものである。所望の構造の逆構造体61を担持した可撓性の構造化フィルム60は、ローラー62によって圧力pで基板63上に押し付けられ、所定量の液体反応性メソゲン64を基板の表面全体にわたって漸進的に広げる。特に、
図6Aを参照して、ゴムコーティングされたローラー62が、基板の表面に予め構造化された可撓性フィルム60を押圧する。基板63は、ガラス、ITOまたはシリコンのような剛性のものであってもよいし、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの可撓性のものであってもよい。基板と構造化フィルムとの間では、ローラーを一定の圧力および速度で押し下げることによって、反応性メソゲンが拡散される。これらの量は、ゼロオフセットにつながる範囲内に適切に調整されてもよい。系の温度を変更して、固定可能な材料の粘度を制御することで、プロセスに必要な圧力および速度を望ましい範囲内に収めることが可能である。例えば、約4~7barの圧力が、RM材料に使用されてもよい。RM材料の室温での粘度は、約500~800cPであってもよい。ローラーおよびベースプレートは、粘度が100~200cPになるように50℃~70℃に加熱されてもよい。エンボス加工速度は、約0.1~2cm/minであってもよい。エンボス加工ステップの後、反応性メソゲンは、UV硬化(すなわち紫外線照射)され、所望の重合構造を残して構造化フィルムが除去される。硬化が行われる温度は、エンボス加工の温度、すなわち実際には周囲温度とは異なっていてもよい。本発明者らは、硬化プロセス中にフィルムを周囲温度未満(ただし凍結温度およびガラス転移温度よりも高い温度)に冷却することによって、RMからより高い複屈折光学構造が形成され得ることを見出した。本明細書に記載された粘度の値は、国際標準化機構(ISO)規格「ISO3219:1993」に従って測定され得る。
【0127】
図6Bは、複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)エンボス加工フレネル構造体を製造するプロセスを示している。フレネルゾーンレンズの第1の実施例にはマスターモールドが使用され、このマスターは直接レーザー書き込みによって作製された。しかしながら、一般的には、既存の構造体をこのプロセスに使用することができる。マスターは、剥離層でコーティングされ、紫外線硬化型の成形材料を用いて成形される。この材料は、本発明のエンボス加工プロセスの前提条件である可撓性バッキング上に配置されている。次いで、ネガ型に配向層がコーティングされ、ラビングされる。反応性メソゲンは、配向層で処理されたITO被覆ガラス上に堆積される。ラビングされたモールドは、液体RM上に配置され、ゴムローラーを使用してエンボス加工される。RMをUV硬化させた後、モールドは除去され、RM中のマスターのコピーが得られる。エンボス加工が最適化されていれば、インプリント技術に起因したオフセットは実質的に消失し得る。
【0128】
本発明の実施形態は、複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)エンボス加工フレネルゾーンプレートに基づく偏光無依存型のデバイスを提供する。このデバイスは、各々がフレネルゾーンプレートを担持する2枚の基板からなる。上述したように、フレネルゾーンレンズのレンズ化は、π/2の交互位相シフトに依存しているため、どのゾーン(偶数または奇数)がこの位相変化を示しているのかは問題ではない。デバイスの性能を向上させるために、相補的な構造をした2枚の基板を使用することが有利である(
図3A)。複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)層は均一に配向しており、RM基板の光学軸は互いに垂直である。液晶で満たされたセルは、この垂直配向により、ねじれネマティックセルとなる。用いられた液晶は、常光屈折率および異常光屈折率の両方ともにRMとインデックスマッチしている。
【0129】
動作原理を
図3Aおよび
図3Bにまとめた。外場オフ状態では、複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)と液晶とが同じ(または非常に類似した)常光屈折率および異常光屈折率を有するので、入射コリメート光は、位相面の歪みを受けない。したがって、コリメート光は、集束されずにコリメートされたままとなる。しかしながら、ねじれ形状のため、各入力偏光は90°回転される。上部および下部構造での相補的な構造体の使用は、不完全なインデックスマッチングを補正することを意図している。インデックスミスマッチにより上部で発生する光学位相の空間的変動は、下部の相補的な場所で発生するため、両方のバランスが取られることになる。
【0130】
十分に高い電圧(臨界電圧よりも高い電圧)での外場オン状態では、液晶の偏光変換機能が停止し、出力偏光は入力偏光と同じになる。液晶ダイレクタのホメオトロピック状態への再配向は、その前に達成されていたインデックスマッチングをさらに停止し、上部および下部の基板でレンズ効果が現れる。したがって、このフレネルレンズセルによって、両偏光のレンズ化が達成される。フレネルゾーンセルの相補的な設計は、デバイス全体でより均一な電場分布を達成するのに役立ち、電圧依存性を低減することになる。
【0131】
したがって、液晶により採用される位相シフトは、横方向の位相変調が複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)によってのみ決定されるように、レンズ全体で一定であることが望ましい。偏光無依存性を達成するために提示された技術は、フレネルゾーンプレートに限定されるものではなく、後に示されるように、広範囲の光学部品に拡張され得ることに言及する必要がある。
【0132】
図7のa~dは、RMエンボス加工された標準的な(a,b)および相補的な(c,d)フレネルゾーンプレート(FZP)の偏光光学顕微鏡写真を示す。複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)エンボス加工基板。(a),(b)は偏光子に対して、(a)45°および(b)0°の角度でダイレクタを有する交差偏光子間の標準的な構造。
図7の(c),(d)は相補的な構造を示している。画像は一定の露光時間で記録されている。
図7の(e)~(h)は、両方の基板のダイレクタが互いに垂直な状態で組み立てられたセルを示している。交差偏光子間の未充填セルは、(e)偏光子に対して45°の角度と、(f)0°の角度とで示されている。交差偏光子の場合の
図7の(g)および平行偏光子の場合の
図7の(h)には、充填された(TN様)セルが示されている。どちらの構造体もマスターを正確に再現しており、さらに、硬化RMの非常に良好な配向を示している(プロファイル測定については、
図13および
図14を参照)。RMリング間の暗い領域から確認されるのは、目に見える複屈折がないため、エンボス加工プロセスでオフセットが非常に小さいかまたはゼロの構造体が生成されることである。
図7の(d)の暗状態では、テクスチャー表面のラビングプロセスである可能性が最も高い、いくつかの小さな欠陥が見られる。
【0133】
標準的なFZPと相補的なFZPとは、基板のダイレクタが互いに垂直になるようにセルへと組み立てられる。このセルの未充填状態を
図7の(e),(f)に示している。相補的な設計により、偏光子に対してダイレクタが45°の角度をとった場合、交差偏光子間でセルはほぼ均一に明るく見える[
図7の(e)]。偏光子と平行に配置されたサンプルは、良好な暗状態を示す[
図7の(f)]。このセルに液晶を充填すると、ねじれネマティックセルとなり、交差偏光子間は明るく見え[
図7の(g)]、平行な偏光子の間は暗く見える[
図7の(h)]。このことから、RMの配向が液晶にうまく伝わっていることが確認される。
【0134】
図8の(a),(b)は、フレネルゾーンプレートセルを透過した対角偏光のコリメートされたガウシアンビームを示している。オフ状態では、ビームはコリメートされたままであるが、充填されたFZLセルの誤差から小さな歪みが生じる。オン状態では、光は中央スポットに集束される。
【0135】
特に、
図8は、フレネルゾーンセルを通過したレーザービーム(波長=594nm)の透過率を、CCDカメラで20cmの距離をとって測定したものである。
図8の(a)はオフ状態、
図8の(b)はオン状態(10Vの電圧を印加した状態)を示している。
図8の(c)は、レンズの仕様(黒の破線)に従ってモデル化されたねじれネマティック(TN)セルの異なる入力偏光および透過特性について中央スポットに集束された電力の効率を示している。
【0136】
図8の(c)は、異なる入力偏光に対するデバイスの効率を示している(測定セットアップについては
図17を参照)。この効率は、偏光とは無関係に約33%の類似した値に飽和している。しかしながら、水平偏光は急速に飽和するのに対し、鉛直偏光は低電圧で同様に開始するが、その後は飽和が遅くなる。対角偏光入力は、鉛直偏光と水平偏光とが混在しているため、中間的な挙動を与えている。一般的なスイッチング挙動は、参照としてプロットされたねじれネマティックセルによく似ている。シミュレーションの詳細は以下の通りである。ダイレクタプロファイルは、COMSOL Multiphysics 5.3を用いて計算した。
【数4】
によって定義される自由エネルギーは、強いアンカリング条件を持つ弱い形式として実装された。ここで、n
iは直交座標(i=x,y,z)におけるダイレクタn=[n
x,n
y,n
z]
Tの成分であり、K
jjは弾性定数(j=1,2,3)である。E
zはz方向の電場、ε
0は液晶の真空誘電率、Δεは液晶の誘電異方性、ε
⊥は液晶の垂直方向の誘電率を表す。次いで、ダイレクタ場を用いて、ジョーンズ定式化の適用により直線偏光の透過率を計算した。シミュレーションには、液晶(MLC6204-000)の物理的性質を以下のように用いた:
【表1】
【0137】
理論的には、約41%の回折効率が期待される。回折効率に悪影響を与える3つの要因がある。これらの要因は、エンボス加工構造のプロファイルと、液晶に及ぼすシャープなエッジの影響と、複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)の配向品質とである。エンボス加工されたRMレンズのプロファイル(
図13)から、マスターレンズと比較した、エンボス加工された構造を見ることができる。
【0138】
ビームプロファイルのより詳細な研究を
図9に示している。これは、異なる入力偏光(赤矢印)について測定された一連の透過レーザービームプロファイルを示している:鉛直方向、水平方向、対角方向、異なる印加されたスイッチング電圧で測定。
【0139】
光変調器の2枚の電極間に印加される電圧が異なる場合、強度が増加する中央スポットが現れる。異なる入力偏光(水平方向、鉛直方向、対角方向)では、強度または形状の変動はほとんどない。しかしながら、顕著な違いは、水平偏光および鉛直偏光の場合、プロファイルがそれぞれの軸に沿って伸びていることである。これは、水平軸および鉛直軸がレンズの主軸であるデバイス設計に適合する対角入力では発生しない。したがって、対角偏光入力は水平方向と鉛直方向とに等分して分割され、純粋な水平入力と鉛直入力とで観測される楕円率を補正する。
【0140】
図10は、異なる入力偏光のxカットおよびyカットのビームの電圧依存性のピーク強度(
図10の(a)~(c))と、ビーム幅(半値全幅、FWHM)とを示している。特に、
図10の(a)~(c)は、印加されたスイッチング電圧の関数として、異なる入力偏光および出力偏光に対する透過レーザービームの中央ピークのピーク強度を示している。
図10の(d)~(f)は、ピーク位置を通過したxカットおよびyカットで見られた半値全幅の電圧依存性を示している。入力偏光は、
図10の(a),(d)は鉛直方向;
図10の(b),(e)は水平方向;
図10の(c),(f)は対角方向である。
【0141】
出力偏光子がない場合のピーク電力密度は、効率測定と非常によく似た挙動を示しており、急激な上昇後はすぐに飽和状態が続く。偏光依存性の出力測定では、臨界電圧を超えた後にTN効果による偏光変換が急速に停止することが示されている。したがって、出力偏光は入力偏光に対応する。振幅の減少は偏光子によって引き起こされ、これは入射光の約80%を透過する。対角入力の場合、偏光出力は水平偏光と鉛直偏光とを等分して示す。水平成分は鉛直成分よりも早く飽和するが、これは効率測定ですでに観察されている[
図10の(c)]。
【0142】
ビーム径(半値全幅、FWHM)[
図10の(d)~(f)]は、集束量の増加により、電圧の増加とともに減少する。水平偏光および鉛直偏光の入力に対する楕円性がはっきりと見て取れる。また、対角入力の補正は、2次元ビームプロファイルから予想される通りである(
図10の(d))。このことは、FWHMの絶対値を調べることでさらに裏付けられる。対角の場合、35μmのビーム幅は、水平偏光および鉛直偏光で見られるより大きな直径の36μmおよび37μmに非常に近い。比較として、より小さな直径は約30μmである。
【0143】
この楕円性は、RMリングの縁に近いところでの不完全な配向によって引き起こされると考えられ、これは液晶の配向に反映される。完全に配向された複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)フレネルゾーンレンズでは、RMダイレクタは、リング内で均一に配向されており、これにはダイレクタがリングの縁で垂直になる領域が含まれる。しかしながら、実際には、モールドのPVA処理は、その位置での平面アンカリングを促進するため、これらのエッジでの歪みが表示される可能性が高くなる。
【0144】
水平偏光の場合、これは、水平軸に沿って、インデックスコントラストが低下し、この軸に沿ってスポットサイズが増加するため、焦点が合わなくなることを意味する。
【0145】
図11は、集束されたレーザービームの焦点周辺のzスキャンを示している。特に、
図8は、フレネルレンズの点拡がり関数の次のzスキャンを示している:
図11の(a)はシミュレーション;
図11の(b)~(e)は10Vのスイッチング電圧を印加して実験的に決定したものであり;入力光の偏光は以下のとおりであった:
図11の(b),(c)は水平方向;
図11の(d),(e)は垂直方向。理論的な結果[
図11の(a)]は、完全なバイナリ位相分布と、ビーム径(FWHM)を24μmとしたものとに基づいている。実験から得られた最小値は30μmおよび32μmであり[
図11の(b)および(d)]、両方のビーム径は入力偏光に対して垂直に測定される。予想どおり、偏光に平行な直径が著しく大きくなっている[
図11の(c)および(e)]。
【0146】
前述したように、提示された技術は、単純なフレネルゾーンプレートに限定されるものではなく、多くの種類の光学素子に適用することが可能である。まず、バイナリフレネルレンズの効率制限を克服するために、偏光無依存の設計と共にエンボス加工プロセスをマルチレベルフレネルレンズに適用した[
図12の(a)~(c)]。3レベル設計で測定された効率は53%であり、このアプローチが50%を超える可能性があることを証明している。これはまだ理論的に予測されている68%には達していないが、技術を最適化することによって、デバイスをこの効率に近づけることができると考えている(表面プロファイルについては
図15を参照)。
図15は、2つの3レベルフレネルレンズの表面プロファイルを示している;(a)はシリコン上のSU-8で作製したマスター、(b)は反応性メソゲン(RM)での再生である。
【0147】
図12は、以下のとおりである:
図12の(a)~(c)は、以下の3レベルフレネルレンズの光学顕微鏡写真である:
図12の(a)はシリコン上のマスター、
図12の(b),(c)は交差偏光子間にエンボス加工されたレンズ基板である。
図12の(d)は、交差偏光子間にエンボス加工された回折格子(2μmのピッチ、125nmの振幅)を示す。
図12の(e),(f)は、異なる入力偏光に対する電気的にスイッチング可能な回折図である。
図12の(g)は、交差偏光子間にエンボス加工されたマイクロレンズアレイ(MLA)を示す。
図12の(h)は、光変調器に10Vのスイッチング電圧が印加されたMLAセルによって集束されたガウスレーザービームのカメラ画像である。
図12の(i)は、交差偏光子間で見たエンボス画像である。
【0148】
図12の(d)~(h)は、既存の光学素子を再現した2つの例を示している。
図12の(d)では、市販の格子フィルムを用いて1次元の格子をRMにエンボス加工している。この例では、マスターを成形する工程をスキップすることができる。2枚の基板(一方は溝の方向にダイレクタがあり、他方は溝に対して垂直方向にダイレクタがある)を使用して、スイッチング可能な偏光無依存型の格子を作製した[
図12の(e),(f)]。
【0149】
図12の(g)は、一般的により高価な部品であるマイクロレンズアレイ(MLA)のRM再現を表示している。MLAの損傷を避けるために、PDMSで成形し、次いで硬質樹脂でスタンプして、さらに加工するためのマスターを取得した。
【0150】
2つの複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)の複製を作製し、次いで、それらを液晶セルへと組み立てた。スイッチオンしたMLAの結果を
図12の(h)に示しているが、これは、RMダイレクタに対して45度の入力偏光を有するガウスレーザービームの集束を表示している。
【0151】
図13および
図14は、
図3の実施例で使用されているような2レベルフレネルレンズ(
図13)および相補的な2レベルフレネルレンズ(
図14)の表面プロファイルを示している:
図14の(a)はシリコン上のSU-8で作製されたマスター、
図14の(b)は複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)(RM)での再現である。
図16は、異なる印加スイッチング電圧(0V、1V、2V、5V、10Vおよび50V)で交差偏光子間に配置された、
図3に従った液晶充填2レベルフレネルレンズを示している。反応性メソゲンのダイレクタn(光学軸)は、偏光子(P)/アナライザー(A)と平行に配向されている。
図17は、本発明の実施形態のフレネルレンズの回折効率を測定するために使用されるセットアップを概略的に示している(図の注釈は以下のとおりである-POL:偏光子、QWP:四分の一波長板、FZL:フレネルゾーンレンズ、PD:フォトダイオード)。
【0152】
マスター製作
一実施例では、フレネルレンズの焦点距離は594nmで200mm、外径は5mm、公称フィーチャの高さは2.1μmである。後者は、複屈折ポリマー(硬化反応性メソゲン)の複屈折とπの所望の位相シフトとに由来する。ゾーンプレートには2つのバージョンがある:1つは奇数ゾーンがすべてRMでできている標準的な構造と、もう1つは偶数ゾーンにRMを有する補完的な構造である。フレネルゾーンプレートマスターは、直接書き込みレーザーシステムを使用して製造されている。シリコン上のSU-8-2025(シクロペンタノン中38%)を500rpm(100rpm/s)で10秒および1000rpm(300rpm/s)で40秒スピンコートする。膜厚調整には、適切なSU-8の希釈を用いた。サンプルを30℃で30分間ソフトベークした。書き込みプロセスは、公称線量3000mJ/cm2の375nm(波長)レーザーを用いて行った。露光後ベークを50℃で30分間行った。SU-8現像液をスピンコートしてマスターを現像し、IPAですすぐ。最後に、180℃で1時間のハードベークを行う。表面プロファイル(Dektak XT)を測定することによって、2.1μmのフィーチャの高さを検証する。
【0153】
より剥離しやすくするために、マスターをFC40中のTeflon AF1600(1.7%)(共にSigma Aldrich)からなる剥離層で500rpm(100rpm/s)にて10秒間および3000rpm(300rpm/s)にて40秒間スピンコートし、180℃で15分間乾燥する。
【0154】
モールド製作
マスターの成形に使用される等方性樹脂は、45%のHDDA(Sigma Aldrich)、15%のTMPTA(Sigma Aldrich)、40%のActilane 420からなる。この樹脂をマスター上に堆積させ、可撓性の厚さ125μmのPETフィルム(Melinex 506、HIFI films)で覆い、次いで、10mW/cm2のUVAで10分間硬化した。
【0155】
硬化後、フィルムを持ち上げ、硬化した樹脂がプラスチックバッキングに付着する。モールドを、5分間UVオゾン処理(T10X10/OES、UVOCS)してから、PVA溶液(水中1%)を500rpm(100rpm/s)で10秒間および1500rpm(300rpm/s)で30秒間スピンコートする。
【0156】
PVA層を90℃で10分間および130℃で30分間乾燥させる。最後のステップでは、ベルベットクロスを装着したラビングマシンを使用してモールドをラビングする。
【0157】
基板の準備およびエンボス加工
ITO基板を、異なる溶剤を使用して完全に洗浄し、UV/オゾン(T10X10/OES,UVOCS)処理で30分間仕上げ加工する。サンプルを配向および接着のためにポリイミドSE3510(66重量%、日産化学)、ジメチルホルムアミド(33重量%、Sigma Aldrich)および反応性メソゲンRM257(1重量%、Merck)からなる溶液で被覆する。この溶液を300rpm(100rpm/s)で10秒間および3000rpm(300rpm/s)で60秒間スピンコートし、180℃で1時間硬化させる。最後に、サンプルを平面配向のためにラビングする。
【0158】
エンボス加工のために、反応性メソゲン混合物RMM1850(Merck Chemicals Ltd.)の液滴をITO基板上に堆積させ、ラビングしたモールドをその上に配置する。エンボス加工プロセスは、ベースプレート温度85℃、ローラー圧力4.5barおよび基板速度6.5mm/sで行う。エンボス加工後、サンプルを5分以内に室温まで冷却する。サンプルを10mW/cm2のUV-A強度(放射計RM-12、Opsytec Dr Groebel GmbHで測定)で10分間UV硬化させる。最後に、再現された構造を残してフィルムを除去する。
【0159】
レンズの組み立ておよび測定
標準的および相補的なフレネルゾーンプレート基板を、ダイレクタが90°の角度を形成するようにセルに組み立てる。位置合わせは、構造体を適切に配置させるために、顕微鏡下に手作業で行う。セルギャップを、マイラースペーサーを使用して制御する。セルを、真空充填を可能にするために4つの側面のうち3つで封止する。通常、毛細管充填では気泡がセル内に閉じ込められてしまうため、この充填方法が必要である。セルにはネマティック液晶MLC-6204-000が充填されている。
【0160】
充填して電気的に接触させた後、セルは、約300μmのビーム径(FWHM)に拡大されたHeNeレーザー(λ=594nm)を用いて測定する。出力状態はビームプロファイラー(Thorlabs社製BC106N-VIS)を用いて測定する。
【0161】
上述したように、本発明によって提供される光変調機能には、レンズ化;フォーカシング;デフォーカシング;屈折、回折;ビームステアリングが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の第1の光学素子の光変調機能、効果または作用は、本発明の第2の光学素子の変調機能、効果または作用と実質的に同じである。
【0162】
例えば、両方ともレンズ、プリズム、または回折格子として機能することができ、これらは光を集束させるか、または光のそれぞれの偏光成分を実質的に同じ方法で回折するようにそれぞれの波面を変調し、実質的に同じ結果をもたらす。以下に、本発明の使用例を示す。
【0163】
図20Aおよび
図20Bは、液晶によって複屈折性の第2の回折光学素子から間隔をあけて複屈折性の第1の回折光学素子を含む、本発明の実施形態に従ったスイッチング可能な偏光無依存型の回折格子を概略的に示している。各光学素子は、
図6Bを参照して本明細書に記載された方法に従って作製される。
図20Aでは、回折格子は、回折が起こらない「外場オフ」状態にあり、両方の界面(反応性メソゲン/液晶)がインデックスマッチしている。
図20Bでは、回折格子は、両方の界面(反応性メソゲン/液晶)がインデックスマッチしていない「外場オン」状態にあり、この状態では、上部/下部の界面で異なる偏光が回折される。
【0164】
図21は、本発明の実施形態の屈折レンズの撮像用途における使用を概略的に示している。フレネルレンズ(1)において、両方の界面(反応性メソゲン/液晶)がインデックスマッチしている「外場オフ」状態(「オフ」)にあるとき、レンズ(100)の焦点距離は、CMOSカメラにおいて、被撮像物体(シート上に印刷された同心円状のリングおよび直線状のスケール)の像形成を支配する。しかしながら、フレネルレンズ(1)において、フレネルレンズ(1)で屈折が起こるように両方の界面(反応性メソゲン/液晶)がインデックスマッチしていない「外場オン」状態(「オン」)にあるとき、レンズ(100)とフレネルレンズ(1)とを組み合わせた焦点距離は、CMOSカメラにおける被撮像物体(シート上に印刷された番号「1」)の像形成を支配する。CMOSカメラで形成された像は、
図21に示されているように、各場合において、当該被撮像物体に隣接している。
【0165】
本発明のいくつかの好ましい実施形態を示し、説明してきたが、添付の特許請求の範囲に定義されているように、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正が行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書に開示された特徴の任意の新規な1つもしくは任意の新規な組み合わせ(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)、またはこのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規な1つもしくは任意の新規な組み合わせにも及ぶ。