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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】測位システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/04 20060101AFI20240312BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01S5/04
G08G5/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021033657
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134508
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトのアドレス:https://ieeexplore.ieee.org/document/9028118 https://dspace.jaist.ac.jp/dspace/bitstream/10119/16219/1/3067.pdf ウェブサイトの掲載日:2020年(令和2年)3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 正
(72)【発明者】
【氏名】チェン メン
(72)【発明者】
【氏名】アジズ,モハンマド レザ カハール
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0021514(KR,A)
【文献】国際公開第2019/167268(WO,A1)
【文献】特開2022-015782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0373855(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G01S 19/00 - 19/55
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を発したターゲットの位置を測定する測位システムにおいて、
タイミングkの時点のターゲットの位置を推定し、推定結果の位置およびその分散を示す推定メッセージを出力する位置推定部と、タイミングkの時点のターゲットの位置を予測し、予測結果の位置およびその分散を示す予測メッセージを出力する位置予測部とを有するファクターグラフ構造の測位部を備え、
前記位置推定部は、タイミングkの時点に観測された電波の到来方向に基づいてタイミングkの時点のターゲットの位置を推定し、推定結果の位置およびその分散を示す推定メッセージを生成して前記位置予測部に与え、
前記位置予測部は、タイミングkより前のタイミング1~k-1の各時点の予測メッセージに基づいてタイミングkの時点のターゲットの位置を予測し、予測結果の位置およびその分散をタイミングkの時点の推定メッセージに基づいて精緻化することでタイミングkの時点の予測メッセージを生成し、タイミングkより後の位置予測で使用すると共にタイミングkより後の位置推定のための事前情報として前記位置推定部に与えることを特徴とする測位システム。
【請求項2】
請求項1に記載の測位システムにおいて、
前記位置予測部は、タイミングkより前のタイミング1~k-1の各時点およびタイミングkより後のタイミングk+1~q(ここで、タイミングqは、タイミングkから見て未来となる過去のタイミング)の各時点の予測メッセージに基づいて、タイミングkの時点のターゲットの位置を予測および平滑化することを特徴とする測位システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の測位システムにおいて、
前記位置予測部は、タイミングkより前のタイミング1~k-1の各時点におけるターゲットの位置を少なくとも用いて線形近似を行って、タイミングkの時点のターゲットの位置を予測することを特徴とする測位システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の測位システムにおいて、
前記位置予測部は、拡張カルマンフィルタを用いて、タイミングkの時点のターゲットの位置を予測することを特徴とする測位システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を発したターゲットの位置を測定する測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の航空交通管制システムでは、安全かつ円滑な運航を行うため、地上の航空管制官と航空機のパイロットの間で交信を行い、パイロットは管制官の指示に従って航行する。管制官とパイロットの交信はアナログ音声AM無線方式を用いて行われており、管制官は言語のコミュニケーションにより指示を行う。
【0003】
管制官が担当する空域には複数の航空機が航行しており、それらの航空機は同一の周波数を用いることが定められている。しかしながら、現状の音声無線通信による航空管制システムでは、管制官は、コールサインの確認などの交信以外に、どのパイロットと交信しているかを知ることはできない。このシステム制約により、管制官の混乱やパイロットの認識誤り等によるインシデントが発生している状況である。
【0004】
この問題を緩和するため、欧州では、図9に示すように、複数のRDF(Radio Direction Finder)110で、航空機140から送信された音声無線の到来方向(以下、DOA:Direction Of Arrival)φm (mはRDF番号)を推定する。図9のRDFシステムでは、RDF110-1~110-6の6台を設置してある。それぞれのRDF110にて推定されたDOA φm は、測位部120に転送される。測位部120では、各到来方向線の交点に航空機140が存在すると推定する。測位部120による測位結果はレーダコンソール130に転送され、レーダコンソール130上にマーキングされる。航空機の位置自体は他のレーダシステムで把握しているため、このRDFシステムによるマーキングにより、管制官が現在交信している機体を特定することができるので、上記の問題を軽減することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】M.R.Kahar Aziz,et al.,“A new DOA-Based factor graph geolocation technique for detection of unknown radio wave emitter position using the first-order Taylor series approimation”,EURASIP J.Wireless Common.Netw.,vol.2016,2016
【文献】Meng Cheng,et al.,“A DOA-Based Factor Graph Technique for 3D Multi-Target Geolocation”,IEEE Access,vol7,2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のRDFシステムの測位部120では、各RDF110からのDOA φm に基づいて航空機位置(x,y)を算出する。この測位方式としては、例えば、LSE(Least Square Estimation;最小二乗推定)法やGN(Gauss-Newton)法を適用可能である。これらの手法でも航空機位置の測位が可能であるが、測位精度の更なる向上や演算量の削減のために、更なる改善が求められている。
【0007】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、測位性能の改善を実現することが可能な測位システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、測位システムを以下のように構成した。
すなわち、
電波を発したターゲットの位置を測定する測位システムにおいて、電波の到来方向に基づいてターゲットの位置を推定する位置推定部と、過去に推定されたターゲットの位置に基づいて、現在のターゲットの位置を予測する位置予測部とを有するファクターグラフ構造の測位部を備え、位置推定部と位置予測部が各々の処理結果を相互に伝達し合うことで、ターゲットの位置の測定を行うことを特徴とする。
【0009】
ここで、位置予測部は、過去に推定されたターゲットの位置と未来に推定されたターゲットの位置に基づいて、現在のターゲットの位置を予測するようにしてもよい。
【0010】
また、位置予測部は、過去あるいは未来に推定されたターゲットの位置に基づく線形近似を行うようにしてもよい。
【0011】
また、位置予測部は、拡張カルマンフィルタを用いて現在のターゲットの位置を予測するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、測位性能の改善を実現することが可能な測位システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】EKFに対するFG構造の例を示す図である。
図2】DOAに基づく測位のためのFG検出器の例を示す図である。
図3】本提案方式と従来方式の性能比較例を示す図である。
図4】追跡タイミングインデックスの収束解析例を示す図である。
図5】FG反復時間の収束解析例を示す図である。
図6】誤警報を伴うFG-GEの性能評価例を示す図である。
図7】本提案方式によるP-CRLB、実CRLB、平均MSEの性能比較例を示す図である。
図8】観測雑音分散が異なる手法での平均RMSEの評価例を示す図である。
図9】RDFシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態の説明に先立ち、その本発明の理論について説明する。
無線セルラーネットワークが果たすべき役割は、移動通信からより専用的なインフラストラクチャを支援するアプリケーションへとパラダイムシフトが起きている。新たなユースケースには、スマート交通、工場自動化、遠隔建設制御、インテリジェント農業などが含まれる。特に、位置情報に基づくサービスは、セルラーネットワークの急速な進化を通じて注目を集めており、ユーザーの位置の追跡が非常に重要であると考えられている。更に、第5世代(5G)及び第5世代以降(B5G)のネットワークにおけるミリ波(mmWave)信号の激しい減衰に対処するには、正確な方向識別技術が必要である。ビーム追跡は、例えば、mMIMO(massive Multiple-Input Multiple-Output)システムに適用される。無線デバイスの密度及び移動性の向上を図るために、将来のネットワークでは、低複雑性でありながら非常にロバストな測位(ジオロケーション)及び追跡技術が強く求められている。
【0015】
追跡を実行するには、状態空間モデル(SSM)の観測プロセスと見做される、正確な測位方式が必要となる。従来の測位方式は、時間、信号強度及び角度領域における一連の距離関連測定に依存している。例えば、ターゲット、センサー、及び統合センターの間の時間同期を前提として、到来時間(TOA)を利用するアプリケーションが提案されている。また、センサーとターゲットの間の同期の必要がない、到来時間差(TDOA)の利用も提案されている。しかしながら、これはTOAの性能を上回ることはできない。また、受信信号強度(RSS)を使用した、よりエネルギー効率の高い測位技術が提案されている。この場合、基準信号を用いたオフライントレーニングを事前に実行する必要があり、更に、ターゲットからの送信信号電力を知る必要がある。上記の制約より、ターゲットが未知である場合には、時間と信号強度に基づく方式は適用することができない。
【0016】
そこで、以下のようなメリットがある、到来方向(DOA)の効率的な利用方法を提案する。
(1)時間同期もオフライントレーニングも必要としない。
(2)カメラなどのセンシングデバイスを使用することにより、電波や音を発しないターゲットでもDOA測定が可能である。
(3)ミリ波技術を適用した非常に高密度に配置されたセンシングデバイスにより、DOA測定に対するマルチパスの影響を将来のネットワークでは無視できると考えられる。
なお、DOA測定技術に関して多くの研究が行われているが、本提案では特に言及しない。
【0017】
ここでは、分散型センサーネットワークにおける上りリンク伝送の輻輳を回避するために、ファクターグラフ(FG)アルゴリズムを適用し、DOA測定の確率密度関数(PDF)を記述するキーパラメータのみをセンサーから統合センターに送信する。FGを使用した測位(GEolocation)を、以下では「FG-GE」と称する。FG-GEによれば、従来方式よりも高精度な測位及び演算の低複雑性を実現することができる。また、単一の未知ターゲットを検出するために、非特許文献1にはDOAに基づく二次元(2D)FG-GEが提案されており、最小二乗(LS)法よりも二乗平均平方根誤差(RMSE)が低くなっている。また、FG-GEを三次元(3D)に拡張することも行われている。
【0018】
更に、マルチターゲットシナリオでのターゲットとDOAのマッチング問題を解決するために、非特許文献2にはセンサー分離アルゴリズムが提案されている。FG-GEを介して伝播されるメッセージは全てガウス近似であるため、平均と分散のみが必要となる。従って、必要な演算の複雑性は非常に低い。メッセージのPDFのガウス性を保つために、非特許文献1では、一次テイラー展開による三角関数の線形化が行われている。しかしながら、このような近似には依然としてある程度の計算コストを必要としており、FG構造が大きく複雑になると更に深刻になる可能性がある。
【0019】
本発明では、線形近似の計算コストを更に削減するために、DOAに基づく新たなFG-GEを提案する。非特許文献1、2の従来のアプローチとは異なり、本提案に係るFG-GEでは、前のタイミングでの追跡結果に基づいて予測された状態情報を利用する。また、測位と追跡を1つのフレームワークで融合して機能させ、統合的なFGを形成する。また、実際のターゲットの挙動を適切に表現するために、拡張カルマンフィルター(EKF)を使用する。従来のEKFの複雑性は、主に一次テイラー級数展開による線形化の結果に基づく行列演算にある。本提案では代わりに、FGを使用したEKFを使用し、以下では「FG-EKF」と称する。FG-EKFでは、行列演算をスカラー演算に置き換えることで、計算の複雑性を大幅に軽減することができる。本明細書では、FG-GEのみを考慮して複雑性の分析を行っており、FG-EKFの分析は行わない。
【0020】
予測状態情報は、複雑性の軽減のほかに、突然の検知エラーの影響を低減するためにも利用することができる。突然の検知エラーの一例として誤警報があり、所望の信号に加えて干渉信号がセンサーで検出された場合などに発せられる。具体的には、無線信号の到来方向を推定するセンサーにおいて、同一周波数に他の方向から干渉波が混入してしまうような場合にセンサーが誤警報を発することがある。ターゲットの現在の状態は、前のタイミングの状態から大幅に変化してはならないという原則がある。この原則を利用して、センサーで認識できない突然の検知エラーを統合センターで特定し、FG-GE検出で除去することができる。また、EKFによる予測は、測定データを評価するための事前情報として使用することができる。本明細書では単純な誤警報のシナリオについて検討し、センサーが誤警報にみまわれても、FG-GEはそのセンサーから有用な測定データを取得できることについても説明する。
【0021】
また、調整問題として知られている、観測誤差の分散の推定は、EKFにおいて重要な役割を果たす。本提案に係る追跡システムでは、観測はガウス誤差で直接モデル化されていないことに留意されたい。代わりに、一連のガウス分布DOA測定に基づいて、分散配置された複数のセンサーによってターゲットの位置を検出する。観測誤差の最小分散は、Cramer RAO下限(CRLB)によって決定することができる。本提案に係るFG-GEはCRLBに非常に近い性能を達成できるため、CRLBを用いて観測誤差の分散をリアルタイムで推定することは合理的である。しかしながら、CRLBの計算には現実のターゲットの位置が必要であるが、現実のターゲットの位置を実際に利用することはできない。従って、本提案では、前のタイミングの結果に基づいて予測されたターゲットの位置を用いて、予測CRLB(P-CRLB)を計算する。この手法により、本提案に係るFG-EKFは、観測雑音分散の固定推定のみを想定する従来の方式よりも、高いロバスト性を達成することができる。
【0022】
本明細書では主に、下記の事項について説明する。
(1)EKFとGE(測位)を1つのFGフレームワークに統合することにより、DOAに基づく新たな追跡システムを提案する。
(2)事前情報として状態予測値を利用することにより、突然の検知エラーの影響を除去することができる。
(3)本提案に係るFG-GEは、従来の方式に比べて極めて低い計算複雑性を示す。
(4)P-CRLBを使用してFG-EKFの観測誤差分散をリアルタイムで推定することにより、追跡のロバスト性が更に強化される。
【0023】
以下、本発明の理論について、「システムモデル」セクションにて本提案に係る追跡モデルについて説明し、「追跡アルゴリズム」セクションにて本提案に係るFG-EKF及びFG-GEアルゴリズムの詳細なステップを紹介し、「複雑性の比較」セクションにてFG-GEの複雑性の分析を行い、「シミュレーション」セクションにて本提案に係る追跡システムを一連のシミュレーションによって評価し、「結論」セクションにて総括する。
【0024】
<システムモデル>
本提案では、非線形離散SSMに焦点を当てる。タイミングkにおけるターゲットの状態はsk =[xk ,yk T で表され、2次元平面におけるターゲットの位置を定義する。ここで、kはタイミングを示し、k={1,2,・・・,K}である。
【0025】
このときの状態方程式は、下記の式(1)で与えられる。
【数1】
ここで、f(・)は、非線形状態関数である。また、wk =[wx,k 、wy,k T は、ガウス分布の雑音ベクトルであり、各要素はN(0,σw 2)に従う。ここで、N(0,σw 2)は、平均0、分散σw 2で、確率密度がガウス分布を呈する信号である。
【0026】
EKFの原理では、f(・)を線形近似するために一次テイラー展開を用いる。すなわち、f(sk-1 )≒f(α)+f’(α)(sk-1 -α)となる。しかしながら、f(・)は追跡側では不明であるため、位置追跡のために直接適用することはできない。代わりに、f(α)=sk-1を満たすαが存在すると仮定すると、式(1)は、下記の式(2)で表すことができる。
【0027】
【数2】
ここで、勾配vk-1 =f’(sk-1 -α)であり、動的EKFのプロセス中に更新することができる。ただし、式(2)が正確なのは、連続する2つのタイミング間でターゲットが非常に早く移動することがない場合だけである。
【0028】
更に、N個のセンサーが位置(Xn ,Yn )(ただし、n={1,2,・・・,N})に分散して設置されていることが、統合センターによって既知であるとする。このとき、n番目のセンサーでのタイミングkにおける測定方程式は、下記の式(3)で与えられる。
【数3】
ここで、un,k ~N(0,σw 2)であり、測定された雑音を表す。また、θ^n,k は、測定されたDOA θn,k を表す。
【0029】
また、非線形測定関数h(・)の出力は、下記の式(4)で表される。
【数4】
【0030】
各サンプリングタイミングの間、N個のセンサーはDOAのL個のスナップショットを取得し、これらを用いてPDFパラメータを抽出する。ここで、mθ^及びσθ^ 2 は、それぞれ、θ^の平均及び分散を表すものとする。なお、説明の簡略化のためにn、kは省略する。Lの値が大きいほど、mθ^及びσθ^ 2 は、それぞれmθ及びθ 2に近づく。センサーと統合センターの間の伝送チャネルでは誤りが発生しないと仮定するため、本提案では特定の伝送方式を考慮しない。
【0031】
現実のターゲットの状態が与えられる場合、有効な観測方程式は、下記の式(5)で表される。
【数5】
ここで、ek は、観測雑音ベクトルを表す。
【0032】
ターゲットの状態は複数の真のDOAによって決定されるので、g(sk )をg(θk )に置き換えることができる。本提案に係るFG-GEアルゴリズムにおける全てのメッセージはガウス分布に近似し、観測雑音も同様であること、すなわち、ek の各要素はN(0,σw 2)に従うことに留意されたい。ただし、σθ 2を直接測定することはできない。CRLBによれば、理論的に達成可能な最小のσθ 2は、θ^k の分散により決定される。
【0033】
<追跡アルゴリズム>
本提案に係るDOAに基づく追跡アルゴリズムは、以下に説明するように、FG-EKFとFG-GEの両方を含む。
【0034】
(A)FG-EKF
式(2)及び式(5)によれば、位置追跡の目的は、事後確率p(sk ,vk |z1:k )が最大となるsk 及びvk を見つけることである。ここで、(・)1:k は、タイミング1からkまでのデータ系列である。
【0035】
k 及びvk の周辺関数はp^(sk ,vk )で表され、下記の式(6)で与えられる。
【数6】
ここで、「~」は、除外演算子である。
【0036】
式(6)の条件付きPDF関数は、次のように因数分解することができる。
【数7】
ここで、式(7-1)は、ベイズの定理に基づいて導出される。また、式(7-2)は、zk がsk によってのみ決定されることで得られる。
【0037】
更に、sk がsk-1 とvk-1によってのみ決定され、vk がvk-1によってのみ決定されると仮定すると、下記の式(8)が得られる。
【数8】
【0038】
式(8)を式(7)に代入することで、p(s1:k ,v1:k |z1:k )は下記の式(9)に書き換えることができる。
【数9】
【0039】
ここで、式(8)の分母、すなわち、p(zk |zk-1 )は無視される。式(8)のp(s1:k-1 ,v1:k-1 |z1:k-1 )は、前のタイミングでのFG-EKFのフィルタリング結果を表しているので、タイミング番号1~kを用いて式(9)にΠが導入される。式(9)に基づいて、本提案に係るFG-EKFアルゴリズムは、以下の3つのステップで表すことができる。
【0040】
(ステップ1)状態予測
まず、前のタイミングでのFG-EKFの出力に基づいて、現在の状態の予測を行う。図1に示すように、予測された状態のメッセージフローμc (sk k-1 )は、下記の式(10)で与えられる。
【数10】
ここで、メッセージフローμa (sk-1 )及びμb (vk-1 )は、タイミングk-1でのFG-EKFの出力として、関数f(sk|k-1 |sk-1 ,vk-1)=sk-1 +vk-1 で得られる。
【0041】
(ステップ2)状態精緻化
次に、予測された状態sk|k-1 が観測によって更に精緻化され、現在のタイミングkでのFG-EKFの結果が得られる。図1に示すように、FG-EKFの出力のメッセージフローμe (sk )は、下記の式(11)で与えられる。
【数11】
ここで、μd (zk )は、本提案に係るFG-GE方式によって得られた、観測のメッセージフローである。
【0042】
(ステップ3)勾配更新
精緻化された状態を取得した後、ベクトルvk も更新する必要がある。状態方程式(1)は未知であると仮定するので、vk は、vk-1 を補正項v^k で精緻化することによってのみ更新される。図1によれば、vkのメッセージフローは、下記の式(12)で与えられる。
【数12】
ここで、μf (sk )は、精緻化された状態のメッセージフローであり、f(v^k |sk-1 ,sk)=sk -sk-1 である。
【0043】
更新されたベクトルvk のメッセージフローは、下記の式(13)で与えられる。
【数13】
【0044】
(B)FG-GE
FG-EKFで要求される状態観測値zk を得るために、以下に説明する、本提案に係るFG-GEが適用される。以下の説明では、センサー番号nは省略される。
【0045】
式(4)で表される真のDOAは、一次テイラー級数展開により、下記の式(14)のように、ポイントβを中心として線形近似することができる。
【数14】
ここで、β=[βx ,βy T である。
【0046】
明らかに、式(14)の近似はβがsk に近い場合に精度がよい。ここでは、βが前のタイミングからFG-EKFによって予測された状態に等しいこと、すなわち、すなわち、β=sk|k-1 であることを提案する。
【0047】
従って、式(14)は、下記の式(15)で表すことができる。
【数15】
【0048】
ここで、λ1 、λ2 、λ3 は、下記の式(16)~式(18)で与えられる定数である。
【数16】
【0049】
【数17】
【0050】
【数18】
【0051】
従って、ターゲットの位置は、下記の式(19)、式(20)によって線形的に表すことができる。
【数19】
【0052】
【数20】
【0053】
FG-GEの入力としてガウス分布のDOA測定値が与えられると、FG-GE内で交換される全てのメッセージもガウス分布となり、関数ノードでの線形近似は式(19)、式(20)に従う。
【0054】
本提案に係るFG-GE構造を、追跡システムの一部として図2に示す。ここで、ηn は、関数ノードhn に関連付けられたDOA測定値のメッセージフローを示す。上方向プロセスにおいて、ξzx,n及びξzy,nは、それぞれhn からzx 及びzy に転送されるメッセージを表す。また、ρzx,n及びρzy,nは、それぞれzx 及びzy からhn に到達する下方向のメッセージを表す。
【0055】
関数ノードhn での詳細な更新は、以下の2つのステップで説明することができる。
(ステップ1)ξzx,nの更新:
【数21】
【0056】
【数22】
【0057】
【数23】
【0058】
【数24】
【0059】
(ステップ2)ρzx,nの更新:
【数25】
【0060】
【数26】
【0061】
【数27】
【0062】
【数28】
【0063】
下記の式(29)~式(32)により取得される推定位置mz =[mzx,mzy2 を使用して、反復が関数ノード1~Nで実行される。
【数29】
【0064】
【数30】
【0065】
【数31】
【0066】
【数32】
【0067】
ここで、σz 2=[σzx 2 ,σzy 2 T は、FG-GE推定のベクトルの分散を表すことに留意されたい。ただし、式(5)の観測式によればg(sk )は定数であるため、zk の観測分散はσe 2と等しくなり、式(32)、式(33)の結果とは異なる。観測分散の計算については、説明を省略する。
【0068】
<複雑性の比較>
ここでは、本提案に係るFG-GEと非特許文献1で提案された従来のFG-GEの複雑性の比較を行う。具体的には、1回の反復時間内でそれぞれの方式に必要な加算(ADD)、乗算(MUL)、及び三角関数(TRI)の演算を下記の(表1)及び(表2)に示す。表1は、本提案に係るFG-GEの複雑性の分析結果を示す。表2は、従来のFG-GEの複雑性の分析結果を示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
簡略化のために、減算と除算は、それぞれ加算と乗算と同じ複雑性を持つと仮定していることに留意されたい。更に、図2に示すように、上向きのメッセージフローのみが考慮される一方で、変数ノードzx及びzyから関数ノードに向かう下向きのメッセージは、比較する2つの方式で同一であるため、今回の比較では含めていない。
【0072】
(表1)に示すように、λ1 、λ2 、λ3 は、各タイミングにおける本提案に係るFG-GE検出中の全ての定数であり、必要な演算は反復時間Jに比例して増加しない。更に、本提案に係るFG-GEでは、三角関数演算を1回行うだけでよい。ところが、(表2)に示すように、従来のFG-GEの複雑性は、反復時間Jに完全に比例することがわかる。更に、反復時間Jが増加するにつれて、より多くの三角関数が含まれる。従って、本提案に係るFG-GE方式は、従来の方式に比べて複雑性が低いことがわかる。
【0073】
<シミュレーション>
以下、本提案に係る追跡アルゴリズムを使用して、例示的な非線形状態空間モデルを評価する。タイミングk={1,2,・・・,100}の場合、プロセス方程式は下記の式(33)、式(34)で与えられる。
【数33】
【0074】
【数34】
ここで、φはπ/60に設定されている。初期状態s0 =[x0 ,y0 T =[0,0]T である。様々な調査目的に向けたシミュレーションについて、以下に説明する。
【0075】
(A)FG-GE比較
本提案方式と従来方式の比較を、2つのシナリオの下で提供する。第1シナリオでは、3つのセンサーがそれぞれ(0,-1)、(8,10)、(15,-2)の位置に設置された室内環境について、単位としてメートルを用いて考察する。各タイミングで、全てのセンサーが60のDOAサンプルを測定すると仮定する。すなわち、L=60、σw 2=0.05、σθ 2 =3°と仮定する。第2シナリオでは、屋外環境に焦点を当て、それぞれ(0,-10)、(80,100)、(150,-20)の位置に設置された3つのセンサーを用い、測定スナップショット数L=70とする。また、σw 2=1、σθ 2 =5°とする。公平に比較するために、FG反復時間J=10を固定し、同じ乱数シードを使用した。なお、シミュレーションに適用した従来のFG-GEには、非特許文献1に記載されているものを使用した。
【0076】
FG-GEを用いて検出されたターゲット位置と追跡結果を図3に示す。同図から明らかなように、本提案に係るFG-GEは、2つのシナリオの両方で、従来方式の場合よりも僅かに低い二乗平均平方根誤差(RMSE)を達成することができる。このような安定したセンシング環境では、従来方式でさえ近接CRLB性能を達成することができ、また、更なる改善の余地も限られているため、改善は重要ではない。シミュレーションで他の乱数シードをテストした場合も同様なパフォーマンス傾向が観察されているが、説明の簡略化のためにテスト結果を省略する。図3(a)に示すように、本提案方式は、室内環境においてセンチメートルレベルのRMSEを達成することができ、6Gシステムにおける測位要求を満たすと想定される。
【0077】
従来のFG-GEでは、検出性能が、異なるタイミングで優位に変化しないことに留意されたい。しかしながら、本提案に係るFG-GEでは、現在の状態の予測が常に必要である。従って、初期状態予測の欠如により、初期段階で大きな誤差が発生する可能性がある。ここでは、初期状態予測が追跡側にとって既知であると仮定することで、初期化の影響は無視される。詳細については以下で説明する。
【0078】
(B)収束
理論的分析が困難であるため、本提案に係るFG-GEの収束挙動を以下のシミュレーションのみによって検証する。具体的には、2つのパラメータ、つまり、タイミングインデックスとFG反復の観点から評価する。
【0079】
まず、タイミングインデックスに対する収束挙動を評価する。平均RMSEを比較するために、本提案に係るFG-GE方式と従来のFG-GE方式に対して、各タイミングで100回のシミュレーションを行った。その他のパラメータは、上述した第2シナリオと同様に設定した。本提案に係るFG-GEの場合、第1の状態s^1|0 の予測がランダムに選択されることに留意されたい。最初のシミュレーションでは、s^1|0 =[10,15]T を使用した。図4(a)から明らかなように、タイミングk=1の平均RMSEは、従来の方式では約1.8メートルであるのに対し、本提案に係るFG-GEは約9メートルであった。しかしながら、3回目以降は、従来方式とほぼ同じレベルに急速に収束した。
【0080】
図4(b)によると、s^1|0 =[15,25]T の場合、s^1|0 が実際のターゲットの位置から離れているため、本提案に係るFG-GEの平均RMSEはタイミングk=1で17.5メートルであり、上記のケースより大きくなっている。本提案に係るFG-GEの初期RMSEは、タイミングk=1での状態予測に依存するが、僅か3~4ラウンドの計算後に急速に収束することが分かる。従って、本提案に係るFG-GEの初期収束の問題は、追跡フェーズでは無視することができる。
【0081】
次に、FG反復に対する収束挙動を評価する。上述したように、本提案に係るFG-GEは、各FG反復に対して従来の方式よりも少ない計算で済む。しかしながら、実際のシステムの複雑性は、性能の収束を達成するために必要なFG反復時間も考慮する必要がある。具体的には、反復時間Jに対して両方の方式の平均RMSEをシミュレートする。その他のパラメータは、上述した第2シナリオと同様に設定した。
【0082】
図5によると、FG反復の最初のラウンドの後、本提案に係るFG-GEは、30.5メートルで平均RMSEを達成する。これは、従来の方式よりも約6メートル大きい。しかしながら、両方の方式の平均RMSEは、約5~6回の反復後に急速に収束する。この観察結果は、本提案に係るFG-GEが従来の方式と比較して、より多くのFG反復を必要としないことを明確に示している。
【0083】
(C)誤警報
DOA測定が誤警報を受けた場合の本発明に係るFG-GEのロバスト性について説明する。本シミュレーションでは単純なシナリオを評価する。すなわち、配備された複数のセンサーのうちの1つのみに対して、確率pf を伴って各タイミングで誤警報が発生するとする。このとき、実ターゲットの測定に加えて、ランダムDOAを伴う干渉信号がセンサーで観測される。
【0084】
従来のFG-GEでは、実際のDOA測定と干渉DOA測定を分離することが困難なため、誤警報中のセンサーからの測定データは、統合センターでの検出には使用されない。これに対し、本提案に係るFG-GEでは、測定したDOAが角度範囲閾値外の場合には、誤警報信号を識別することができる。角度範囲閾値は、事前情報に基づいて予測されたDOAと比較して±20°に設定され、pf =1/5であった。残りのパラメータは、前述の第2シナリオに従うものとする。
【0085】
図6に示すように、本提案に係るFG-GEの方がより安定しており、平均RMSEは1.65メートルである。従来方式は、誤警報に起因する推定分散が大きく、平均RMSEは本提案方式の2倍ほど大きい。従って、FG-GEでの事前情報を使用することで、より高い安定性を達成できることが理解できる。なぜならば、有用なDOA測定値が多いほど、検出性能がよくなるからである。平均RMSEは、初期の収束挙動の影響を排除するために、タイミングk>5でのパフォーマンスのみを考慮して計算されることに留意されたい。
【0086】
(D)P-CRLB
P-CRLBの利用は、分散σe 2で表される観測安定性が実際の追跡環境で動的に変化する可能性があるという事実に基づいたものである。追跡性能を安定させるために、リアルタイムのσe 2の推定値としてP-CRLBを使用する。推定精度は、本提案に係るFG-GEによって得られるP-CRLB、実際のCRLB、及び二乗平均誤差(MSE)の平均の3つの項目を比較することで評価される。上記の平均MSEは、平均σe 2に相当する。σe 2は、実際には測定分散σθ 2 によって決定され、全体的な影響傾向を観察するために全てのセンサーで常に同じに保たれることに留意されたい。その他のパラメータは、上述した第2シナリオと同様に設定した。
【0087】
図7によれば、本提案に係るFG-GEと実際のCRLBの間の平均MSE曲線のギャップは、σθ 2の値が小さい場合には、非常に小さいことが分かる。この観察結果は、本提案に係るFG-GEの優れた測位性能を示している。更に、P-CRLB曲線は、シミュレーションによって達成された平均MSEの曲線に非常に近いことが分かる。従って、P-CRLBによる観測雑音分散の推定は非常に正確であることが証明される。
【0088】
P-CRLBを用いたFG-EKFのロバスト性を更に評価するために、動的DOA測定分散を用いてシミュレーションを行った。本シミュレーションでは、各タイミングで、{2°,6°,10°,14°,18°}のセットからランダムにσθ 2が選択されたが、全てのセンサーで同じままだった。本提案に係る手法を用いて、P-CRLBをFG-EKF計算に必要なσθ 2の推定値として動的に計算した。ただし、比較方式では、観測誤差統計がオフライン試験で得られると仮定して、固定σθ 2のみを使用した。実際、前述したように、本提案に係るFG-GEをFG-EKFとは別に評価することは現実的ではない。したがって、このシミュレーションでは、本提案に係るFG-GEでMSEとして計算された近似平均σθ 2のみを使用する。
【0089】
図8に示すように、動的P-CRLBを用いた平均RMSEは、一般に、固定σθ 2を用いたものよりも低い。全タイミングにわたってRMSEを更に平均した後、本提案に係る手法によって得られる最終的な平均RMSEは1.64メートルであり、従来の方式と比較した場合よりも1.24メートル小さくなっている。従って、P-CRLBを用いる本提案に係るFG-EKFは、オフライン平均誤差推定の場合に比べ、動的な環境変化に対して高いロバスト性を示している。
【0090】
<結論>
本明細書では、EKFとGE(測位)を1つのFGフレームワークに統合する追跡アルゴリズムを提案した。EKFから得られた予測状態情報は、フィルタリングのために使用されるだけでなく、FG-GEの事前情報として観測のためにも使用される。シミュレーション結果によれば、本提案に係るFG-GEは、従来方式よりも僅かに低い平均RMSEを達成することができる。正確な事前情報の欠如に起因して、追跡の開始時に大きな誤差が生じる可能性があるが、検出性能は3~4回程度のタイミング後に急速に収束することが分かる。また、事前情報を使用することで、誤警報などの突発的な感知エラーの影響を効果的に低減することができる。更に、観測誤差の分散を推定するために、FG-EKFでP-CRLBを用いた。この手法により、観測分散の固定推定を用いる方法と比較して、動的な環境変化が生じる中での追跡のロバスト性をより高めることができる。本提案に係る追跡システムは、その低複雑性のために、実際の実装が容易になる。
【0091】
以上、本発明の理論について説明した。次に、本発明の幾つかの実施形態について説明する。本発明は、例えば、図9に示したようなRDFシステムの形態で実施される。すなわち、第1実施形態では、電波を発したターゲットの位置を測定するRDFシステムにおいて、電波の到来方向に基づいてターゲットの位置を推定するFG-GE部と、過去に推定されたターゲットの位置に基づいて、現在のターゲットの位置を予測するFG-EKF部とを有するファクターグラフ構造の測位部102を備え、FG-GE部とFG-EKF部が各々の処理結果を相互に伝達し合うことで、ターゲットの位置の測定を行う。ここで、上記の実施形態におけるFG-GE部は本発明に係る位置推定部に対応し、FG-EKF部は本発明に係る位置予測部に対応する。
【0092】
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態は、過去の状態から現在の状態を予測する状態予測に関する発明であるが、第2実施形態は、未来の状態から現在の状態を予測する平滑化に関する発明である。現実的には、過去のあるサンプル時点kの状態予測、状態平滑化を行うにあたり、サンプル1~k-1からkサンプルの状態を予測することは第1実施形態と同様である。第2実施形態では、k+1~q(k<q)までの状態を用いて、kサンプルの状態を平滑化する。このときのメッセージフローは下記の式(35)で示され、式(11)のメッセージフローの逆順となっている。
【数35】
【0093】
第1実施形態と同様に、未来のサンプルqから巡回的にメッセージ伝搬を行うことでカルマンフィルタの平滑化処理をファクターグラフ上に展開し、少ない演算量で実現することが可能となる。このように第2実施形態では、qサンプルまでの観測データを保持しておけば、過去のkサンプルの状態を高精度に推定することが可能となる。
【0094】
以上、本発明について幾つかの実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0095】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、電波を発したターゲットの位置を測定する測位システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
110-1~110-6:RDF、 120:測位部、 130:レーダコンソール、 140:航空機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9