(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】スライド式切換弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/065 20060101AFI20240312BHJP
F16K 3/02 20060101ALI20240312BHJP
F16K 31/04 20060101ALN20240312BHJP
F25B 41/26 20210101ALN20240312BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F16K3/02 B
F16K31/04 Z
F25B41/26 A
(21)【出願番号】P 2021053598
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕正
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-200155(JP,A)
【文献】実開昭62-130276(JP,U)
【文献】米国特許第04213483(US,A)
【文献】実開昭52-089738(JP,U)
【文献】実開昭62-169203(JP,U)
【文献】特開平10-047511(JP,A)
【文献】国際公開第2020/174705(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0137986(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0152366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00 - 6/00
F16K 3/00 - 3/36
F16K 11/00 - 11/24
F16K 31/06 - 31/11
F25B 41/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられて複数の弁ポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられた弁体と、該弁体を前記弁座部に向かって付勢する付勢部材と、を備えたスライド式切換弁であって、
前記弁体は、前記弁座部に向かって開口した碗状に形成されるとともに、その開口端縁が前記弁座部のシール面に摺接するシール部とされ、
前記付勢部材は、前記弁体における前記シール部とは反対側の頂部に取り付けられる取付部と、該取付部から
、前記シール面に直交しかつ前記軸線方向と交差する交差面内
、に沿って径方向外側に延びる延出部と、該延出部の先端に設けられて前記弁本体の内周面に接触可能な接触部と、を有していることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記付勢部材の前記延出部は、前記取付部に接続される基端部と、該基端部から折り返して反対側に延びる折返部と、を有し、該折返部の先端に前記接触部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記付勢部材は、前記取付部、前記延出部および前記接触部が一体とされた板バネから構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記付勢部材の前記接触部は、前記弁本体の前記内周面に向かって凸な球面状に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記付勢部材の前記接触部は、前記軸線方向に沿って複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記付勢部材の前記取付部は、前記軸線方向に延びる板状に形成され、その中央部1箇所で前記弁体に固定され、該弁体には、前記取付部の側端縁に当接して回転を規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のスライド式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムに使用するのに適したスライド式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルなどにおいて冷媒の流路を切り換える切換弁として、筒状の弁本体と、弁本体内部にスライド自在に設けられた碗状の弁体と、弁本体に固定されて複数の弁ポートを有する弁座部と、を備えたスライド式切換弁が知られている(特許文献1)。そして、弁体には、付勢部材が固定され、この付勢部材によって弁体が弁座部に向かって付勢されることで、弁座部のシート面への押圧荷重が付与されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の切換弁において、付勢部材は、弁体の頂部からスライド方向の一方側および他方側に延びるV字形状であり、一方側および他方側の先端が弁本体の内周面に摺接するようになっている。このため、付勢部材の先端が弁本体の内周面に引っ掛かりやすくなるとともに、弁体のスライド方向の違いによってV字形状部が突っ張る時は荷重が強くなり、逃げる時は荷重が弱くなり、付勢力にばらつきが生じ、弁体のシール性が不安定になる可能性がある。
【0005】
本発明は、スライド式切換弁において、弁体のスライド方向の違いによる付勢力のばらつきを抑制するとともに、弁体の弁座部への押圧荷重を安定させることにより弁体の弁座部に対する良好な作動性とシール性を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスライド式切換弁は、中空筒状の弁本体と、前記弁本体に設けられて複数の弁ポートを有する弁座部と、前記弁本体の内部にて軸線方向にスライド自在に設けられた弁体と、該弁体を前記弁座部に向かって付勢する付勢部材と、を備えたスライド式切換弁であって、前記弁体は、前記弁座部に向かって開口した碗状に形成されるとともに、その開口端縁が前記弁座部のシール面に摺接するシール部とされ、前記付勢部材は、前記弁体における前記シール部とは反対側の頂部に取り付けられる取付部と、該取付部から、前記シール面に直交しかつ前記軸線方向と交差する交差面内、に沿って径方向外側に延びる延出部と、該延出部の先端に設けられて前記弁本体の内周面に接触可能な接触部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この際に、前記付勢部材の前記延出部は、前記取付部に接続される基端部と、該基端部から折り返して反対側に延びる折返部と、を有し、該折返部の先端に前記接触部が設けられていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0008】
また、前記付勢部材は、前記取付部、前記延出部および前記接触部が一体とされた板バネから構成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0009】
また、前記付勢部材の前記接触部は、前記弁本体の前記内周面に向かって凸な球面状に形成されていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0010】
また、前記付勢部材の前記接触部は、前記軸線方向に沿って複数箇所に設けられていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【0011】
また、前記付勢部材の前記取付部は、前記軸線方向に延びる板状に形成され、その中央部1箇所で前記弁体に固定され、該弁体には、前記取付部の側端縁に当接して回転を規制する規制部が設けられていることを特徴とするスライド式切換弁が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスライド式切換弁によれば、弁体のスライド方向の違いによる付勢力のばらつきを抑制することができるとともに、付勢部材の先端が弁本体の内周面に引っ掛かりにくくでき、弁体の弁座部への押圧荷重を安定させることにより、弁体の弁座部に対する良好な作動性とシール性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態のスライド式切換弁の第1状態の縦断面図である。
【
図2】実施形態のスライド式切換弁の第2状態の縦断面図である。
【
図4】実施形態のスライド式切換弁における弁体の斜視図及び平面図である。
【
図5】実施形態のスライド式切換弁における板バネ(付勢部材)の接触部側斜視図、平面図及び取付部側斜視図である。
【
図6】実施形態のスライド式切換弁における変形例の板バネ(付勢部材)の平面図、A-A相当断面図及び弁体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のスライド式切換弁の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態のスライド式切換弁の第1状態の縦断面図、
図2は実施形態のスライド式切換弁の第2状態の縦断面図、
図3は
図1のA-A矢視断面図、
図4は実施形態のスライド式切換弁における弁体の斜視図及び平面図、
図5は実施形態のスライド式切換弁における板バネ(付勢部材)の接触部側斜視図、平面図及び取付部側斜視図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1及び
図2の図面における上下に対応する。
【0015】
図1に示すように、このスライド式切換弁は、弁本体1と、弁体2と、「付勢部材」としての板バネ3と、「弁座部」としての弁座部材4と、ハウジング5と、ホルダ部6と、マグネットロータ7と、ステータコイル8とを備えている。
【0016】
弁本体1は樹脂成形により略円筒形状に形成されており、その内側に略円柱状の弁室1Aを有している。また、弁本体1は、軸線Xと平行な弁体2のスライド方向と平行な側壁部11と、この側壁部11と交差する底部12とを有している。そして、弁本体1の側壁部11には第1ポート13E、出口ポート13Sおよび第2ポート13Cが設けられ、さらに、弁本体1の前記底部12には、入口ポート13Dが設けられている。なお、第1ポート13E、出口ポート13Sおよび第2ポート13Cは、側壁部11の一部に弁体2のスライド方向に沿って一直線状に設けられている。また、弁本体1の外側面には係合突起1Bが形成されており、係合溝5Bと係合することでハウジング5に対する弁本体1の回転位置が規制される。これにより、弁本体1の第1ポート13E,出口ポート13S、および第2ポート13Cと、後述のハウジング5側のハウジング側流路51E、51S、51Cとの相対位置の位置合わせを容易に行える等、ハウジング5に対する弁本体1の組付けが容易になっている。なお、弁本体1側に係合溝を設け、ハウジング5側に係合突起を設けることによりハウジング5に対する弁本体1の回転位置を規制してもよい。なお、本形態では材質をポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂としたが、この他真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属等、適宜な材質で構成してもよい。
【0017】
弁体2は、主にポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製であり、弁座部材4(弁座部)に向かって開口した碗状の膨出部21と、膨出部21からホルダ部5側に延設されたフック部22とを有し、膨出部21の内側には椀状凹部21Aが形成されている。また、膨出部21の開口端縁は、弁座部材4の「シール面」である弁座面4Aに摺接するシール部2Bとされている。そして、弁体2は、
図1の下側(第1状態)の切換の端部位置において、出口ポート13Sと第1ポート13Eとを椀状凹部21Aにより連通させる。このとき、第2ポート13Cは弁室1A内で入口ポート13Dに連通する。また、弁体2は、
図2の上側(第2状態)の切換の端部位置において、出口ポート13Sと第2ポート13Cとを椀状凹部21Aにより連通させる。このとき、第1ポート13Eは弁室1A内で出口ポート13Dに連通する。
【0018】
また、弁体2のフック部22は、軸線Xに沿って延びる角丸角柱状のガイド軸23の端部に係合されている。すなわち、ガイド軸23はホルダ部6に嵌挿されて弁体2側の外周に係合溝231を有し、一対の弁体2のフック部22が係合溝231に係合されている。さらにガイド軸23の中心には、軸線Xと同軸の雌ねじ部23aとそのねじ孔が形成されている。さらに、弁体2の膨出部21の頂部には、「付勢部材」としての板バネ3が取り付けられている。
【0019】
板バネ3(付勢部材)は、弁体2におけるシール部2Bとは反対側の頂部に取り付けられる「取付部」としての基部31と、基部31から軸線X方向と交差する交差面内に沿って径方向の外側に延びる一対の延出部32と、延出部32の先端に設けられて弁本体1の内周面に接触可能な凸状の接触部33と、を有し、基部31と延出部32と接触部33とが、SUSや特殊鋼等のばね用鋼帯の材料から、プレス成形等で一体とされ形成されている。なお、「径方向」とは軸線Xを中心とする円周の半径方向である。
【0020】
弁体2の頂部の中央にはボス部21aが形成されるとともに、このボス部21aの脇には、スライド方向(軸線X方向)と平行に延設された規制部21bが形成されている。また、板バネ3の基部31の軸線X方向の中央には、取付け孔34が形成されている。そして、基部31の中央部1箇所の取付け孔34にボス部21aが係合され、接触部33を弁本体1の内周面に当接させることにより生じる延出部32の弾性力で、板バネ3(基部31)が弁体2の頂部に固定されるともに弁体2のシール部2Bは弁座部材4の弁座面4Aに押圧される。また、板バネ3の基部31の片側縁が規制部21bに当接されることにより、板バネ3の回転が規制される。なお、板バネ3の弁体2の頂部への固定は、上記方法に拘らず接着剤で固定してもよいし、ボス部21aを熱で溶かして溶着させてもよく、適宜な方法で固定すればよい。
【0021】
また、この実施形態では、板バネ3(付勢部材)の延出部32は、基部31(取付部)に接続される基端部32aと、基端部32aから折り返して反対側に延びる折返部32bと、を有している。そして、折返部32bの先端に接触部33が設けられている。
【0022】
弁本体1の弁室1A内には、弁本体1に接着剤等で接着して固定された、または弁本体1と共にインサート成形されて固定された薄型金属板からなり、プレス成形等で加工された「摺接部材」としての弁座部材4を備えるとともに、弁本体1の底部12とは反対側の端部にはケース15が固定されている。弁座部材4の軸線X側の面は弁体2が摺接する「摺接面」としての弁座面4Aとなるとともに、この弁座部材4には、第1ポート13Eに対向する弁ポート4Eと、出口ポート13Sに対向する弁ポート4Sと、第2ポート13Cに対向する弁ポート4Cとが形成されている。また、なお、弁ポート4S,4E,4Cの弁座面4A側の内周縁には、R面やテーパ面からなる面取りが形成されており、弁体2が弁座面4A上を摺動するとき、弁体2が弁ポート4S,4E,4Cの縁に引っ掛かることなく安定した作動が得られる。なお、弁座部材4の材質は、真鍮、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属等、適宜な材質で構成すればよい。また加工方法も、プレス成形の他に板材から切削加工にて加工してもよい。
【0023】
ハウジング5はアルミダイキャスト製で、軸線Xを中心とする略円筒形状の収容室5Aを有しており、この収容室5A内に弁本体1が収容されている。ハウジング5は、内周に弁本体1の係合突起1Bと係合する係合溝5Bを有している。なお、弁本体1とハウジング5との間は所定位置でOリング10によりシールされている。また、ハウジング5には、収容室5Aの側壁部に開口するハウジング側流路51E,51S,51Cが形成され、弁本体1とハウジング5との間の間隙を介して、弁本体1側の第1ポート13E,出口ポート13S、および第2ポート13Cのそれぞれと連通している。また、ハウジング5の弁本体1の底部12と対向する位置には、ハウジング側流路51Dが形成され、入口ポート13Dを介して弁室1Aと連通している。
【0024】
ホルダ部6は主に樹脂製であり、略円柱状の弁ガイド部61と、弁ガイド部61の上端部に形成された軸受部62と、弁ガイド部61の外周にインサート成形により設けられた金属製で略円盤状の固定蓋63とで構成されている。そして、ホルダ部6は固定蓋63を介して弁本体1に固定されたケース15の上端部に溶接により固定されている。なお、ハウジング5の上端部と固定蓋63との間には、ハウジング5と弁本体1とを固定するCリング20が嵌合されている。弁ガイド部61には、軸線Xと同軸で角丸の角柱空洞のガイド孔61aが形成されている。そして、ガイド孔61a内に、弁体2のフック部22に係合されたガイド軸23が挿通されている。
【0025】
また、固定蓋63には、弁本体の弁室1A及びケース15の内部を密閉するキャン64が固定されており、このキャン64内にマグネットロータ7が収容されている。マグネットロータ7の中心にはロータ軸71が取り付けられ、ロータ軸71の弁体2側の外周には、弁体2に係合されたガイド軸23の雌ねじ部23aに螺合する雄ねじ部71aが形成されている。また、このロータ軸71はホルダ部6の軸受部62にて支持されている。これによりマグネットロータ7は、キャン64内で回動自在に支持されている。なお、ガイド孔61aの上部において、軸受部62とロータ軸71のフランジ部72との間、および、マグネットロータ7と軸受部62との間には摺動ワッシャ66,67が配設されている。
【0026】
ステータコイル8は、樹脂製のボビン81にコイル82A、82Bを巻装することで、軸線X方向に一対のコイル部を積層して構成され、ボビン81には、磁極歯83aを持つ継鉄(ヨーク)83がモールド成形により一体に組み付けられている。また、ステータコイル8は、中央に軸線Xを中心とする円柱形状の嵌挿孔8Hを有しており、この嵌挿孔8Hの内周面の一部に継鉄83の磁極歯83aが配置されている。そして、ステータコイル8は、嵌挿孔8H内に弁本体1のキャン64が嵌挿されることで弁本体1に装着されている。これにより、ステータコイル8の磁極歯83aがキャン64の外周面に対向配置される。
【0027】
以上の構成により、ステータコイル8のコイル82A、コイル82Bへのパルス出力の印加によりコイル82A、コイル82Bが磁力線を発生する。これにより、磁極歯83aの磁極(N、S極)が交互に変化し、マグネットロータ7に対して磁気吸引力及び磁気反発力を発生し、マグネットロータ7とロータ軸71が回転する。これによりロータ軸71の雄ねじ部71aと、弁体2に係合されたガイド軸23の雌ねじ部23aとによるネジ送り機構によりこのガイド軸23が軸線X方向に移動し、このガイド軸23と共に弁体2が軸線X方向にスライドする。そして、
図1の第1状態から
図2の第2状態へ、あるいは、
図2の第2状態から
図1の第1状態へと、流路が切換られる。
【0028】
ハウジング側流路51Dは、圧縮機の吐出口に接続され、高温高圧の冷媒を弁本体1の弁室1Aに導入し、ハウジング側流路51Sは、圧縮機の吸入口に接続され、圧縮機に冷媒を戻す。また、ハウジング側流路51Eは、冷凍サイクルの蒸発器に連通され、ハウジング側流路51Cは、冷凍サイクルの凝縮器に連通される。そして、
図1の第1状態では、入口ポート13Dから流入する高温冷媒は、弁室1Aを介して第2ポート13Cへ流れ、
図2の第2状態では、入口ポート13Dから流入する高温冷媒は、弁室1Aを介して第1ポート13Eへ流れる。
【0029】
以上のように、「付勢部材」としての板バネ3は、弁体2におけるシール部2Bとは反対側の頂部に取り付けられる基部31(取付部)と、基部31から軸線X方向と交差する交差面内に沿って径方向の外側に延びる延出部32と、延出部32の先端に設けられて弁本体1の内周面に接触可能な接触部33と、を有している。したがって、弁体2の頂部から弁座面4Aの側に付勢力を付与することができる。またスライド方向に対し交差して弁本体1の内周面に接触しているので、弁体のスライド方向の違いによる付勢力のばらつきを抑制することができるとともに、板バネ3の先端が弁本体1の内周面に引っ掛かりにくくできる。このため、弁体2のシール部2Bが、弁座部材4の弁座面4Aを押圧する荷重を安定させることができて、シール部2Bと弁座面4Aとの摺動抵抗も安定するので、弁体2と弁座部材4との良好な作動性とシール性を得ることができる。また、必要以上にアクチュエータを大型化する必要がなく、アクチュエータを小型化することができる。なお、本体1の内周面の接触部33が接触する部位は、弁座面4Aに対し平行な平面で形成されると、弁体2の作動時における板バネ3の付勢力の変化を抑制できるので好ましい。
【0030】
また、この実施形態では、板バネ3(付勢部材)の延出部32は、基部31(取付部)に接続される基端部32aと、基端部32aから折り返して反対側に延びる折返部32bと、を有している。そして、折返部32bの先端に接触部33が設けられている。このように、延出部32が基端部32aと折返部32bとを有した「くの字状」に形成されているので、「くの字」の高さや延出部32の長さを変えることにより、弁体2に付与する押圧荷重を調整しやすくなる。また、板バネ3は、基部31(取付部)と、延出部32および接触部33とが一体に形成されている。したがって、板ばね3の小型化が可能となる。なお、本形態では、板バネ3は、基部31と、延出部32および接触部33とが一体に形成されているが、基部31と、延出部32および接触部33とを別部材として、板状の基部31の上に延出部32を溶接等で固定してもよい。また、板バネ3の接触部33は、弁本体1の内周面に向かって凸な球面状に形成されている。このように、接触部33が球面状に形成されているので、接触部33が弁本体1の内周面に当接されスライド方向に移動する際、更に引っ掛かりにくくなる。また、弁本体1の内周面に当接した球面状の凸の中心は、弁体2のシール部2Bにおける軸線中心線上に位置するように形成すると、弁体2の頂部からシール部2Bに対して垂直に押圧荷重を付与しやすいので、シール部2B全面に均一な押圧荷重が付与され、弁体2と弁座部材4との更に良好な作動性とシール性が得られ好ましい。なお、本形態では接触部33は、弁本体1の内周面に向かって凸な球面状に形成されているが、本体1の内周面に向かって凹部、または開口部を形成し、該凹部や開口部にSUS等の球を固定して、球の球面を接触させると、弁本体1の内周面との摺動抵抗が更に小さくなり好ましい。
【0031】
また、板バネ3の接触部33は、軸線X方向に沿って複数箇所(2カ所)に設けられている。このように、接触部33が複数設けられているので、接触部33の1箇所当たりに必要とされる押圧荷重が小さくなる。したがって、板バネ3の薄板化が可能となるとともに、シール部2Bと弁座面4A、接触部33と弁本体1の内周面との摺動抵抗性が小さくなり、各摺動面における摩耗を抑制できる。また、板バネ3の基部31(取付部)は、軸線X方向に延びる板状に形成され、その中央部1箇所で前記弁体2に固定されている。そして弁体2には、基部31の側端縁に当接して回転を規制する規制部21bが設けられている。このように、基部31が軸線X方向に延びる板状に形成されているので、弁体2との設置面積を大きくすることができるので、シール部2B全面に均一に押圧荷重を付与できる。また、規制部21が設けられているので、弁体2が作動しても板バネ3はずれることがない。
【0032】
図6は実施形態のスライド式切換弁における変形例の板バネ(摺接部材)の平面図、A-A相当断面図及び弁体の平面図である。この変形例では弁体2の頂部に「付勢部材」としての板バネ9を備えている。板バネ9は、弁体2におけるシール部2Bとは反対側の頂部に取り付けられる「取付部」としての基部91と、基部91から軸線X方向と交差する交差面内に沿って径方向の外側に延びる二対(4組)の延出部92と、延出部92の先端に設けられて弁本体1の内周面に接触可能な凸状の二対(4組)の接触部93と、を有している。また、板バネ9の基部91の軸線X方向の中央には、取付け孔94が形成されている。そして、基部91の中央部1箇所の取付け孔94にボス部21aが係合され、接触部93を弁本体1の内周面に当接させることにより生じる延出部92の弾性力で、板バネ9(基部91)が弁体2の頂部に固定されるとともに、弁体2のシール部2Bは弁座部材4の弁座面4Aに押圧される。この変形例では、板バネ9の二対(4組)の延出部92が軸線Xに対して対称な位置に形成されているので、4つの接触部93が弁本体1の内周面に均等な位置で接触することができ、弁体2の姿勢を安定させることができる。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 弁本体
1A 弁室
11 側壁部
12 底部
13E 第1ポート
13C 第2ポート
13S 出口ポート
13D 入口ポート
2 弁体
21 膨出部
21a ボス部
21b 規制部
23 ガイド軸
23a 雌ねじ部
3 板バネ(付勢部材)
31 基部(取付部)
32 延出部
33 接触部
4 弁座部材(弁座部)
4A 弁座面
4B 固定面
5 ハウジング
51E ハウジング側流路
51C ハウジング側流路
51S ハウジング側流路
51D ハウジング側流路
6 ホルダ部
61 弁ガイド部
62 軸受部
63 固定蓋
7 マグネットロータ
71 ロータ軸
71a 雄ねじ部
8 ステータコイル