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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】使い捨ておむつとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/533 20060101AFI20240312BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240312BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61F13/533 200
A61F13/53 100
A61F13/15 320
A61F13/15 352
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021085134
(22)【出願日】2021-05-20
(65)【公開番号】P2022178369
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森谷 晶絵
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/042544(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/217355(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/123781(WO,A1)
【文献】特開2014-117410(JP,A)
【文献】特開2007-195958(JP,A)
【文献】特開2015-231501(JP,A)
【文献】特開2016-10594(JP,A)
【文献】特開2012-179220(JP,A)
【文献】特開2003-33397(JP,A)
【文献】特開2019-25305(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100704(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/106731(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収要素を設け、
前記吸収要素を、排泄物を吸収する吸収体と、前記吸収体の外周部を覆う包装シートで形成し、
前記吸収要素の身体側に、直線部と角部を有しない円形圧搾部と、直線部と角部を有しない楕円形圧搾部を設け、
前記円形圧搾部の第1円形圧搾部を、幅方向と前後方向に所定の間隔を隔てて設け、
前記円形圧搾部の第2円形圧搾部を、前記第1円形圧搾部とは幅方向と前後方向に所定の間隔を半分ずらした位置に、幅方向と前後方向に所定の間隔を隔てて設け、
前記楕円形圧搾部の第1楕円形圧搾部を、幅方向において前記第1円形圧搾部及びこれに隣接する第1円形圧搾部の間と、幅方向において前記第2円形圧搾部及びこれに隣接する第2円形圧搾部の間の中心に幅方向に長軸を延在して設け、
前記楕円形圧搾部の第2楕円形圧搾部を、前記第1円形圧搾部及び幅方向と前後方向においてこれに隣接する第2円形圧搾部の間の中心に、前記第1円形圧搾部及び幅方向と前後方向においてこれに隣接する第2円形圧搾部を結ぶ仮想線に長軸を延在させて設け
前記間隔を12~24mmに形成し、前記吸収要素の身体側面に対して、前記円形圧搾部の面積占有率を0.5~5%に形成し、前記楕円形圧搾部の面積占有率を5~30%に形成したことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記第1円形圧搾部と第2円形圧搾部の直径を1~3mmに形成し、前記第1楕円形圧搾部と第2楕円形圧搾部の短軸長さを1~3mmに、長軸長さを3~5mmに形成した請求項1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記第1円形圧搾部と第2円形圧搾部の凹部深さを0.25~1.00mmに形成し、前記第1楕円形圧搾部と第2楕円形圧搾部の凹部深さを0.25~1.00mmに形成した請求項1又は2記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつとその製造方法に関するものであり、特に、吸収要素の吸収体のヨレや形状変化を抑制し、装着者の動きに合わせて吸収体が変形してフィット性能と装着性能に優れる使い捨ておむつとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸収体の身体側に、包装シートを介して幅方向に所定の間隔を隔てて前後方向に延在する複数の線状圧搾部と、線状圧搾部とこれに隣接する線状圧搾部の間に複数の点状圧搾部を設けて使い捨ておむつのフィット性能等を高める技術が知られている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-179220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、吸収体の剛性が高いので、装着者の動きに合わせて吸収体が変形しない恐れがあった。また、線状圧搾部と点状圧搾部が密集して設けられた包装シートの部位に破れ等が生じ、ホットメルト等の接着剤がそこから露出してロール等の製造装置に付着するので、付着した接着剤を取除くために製造ラインを停止する必要が有り生産効率が低くなる恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、吸収体の剛性を過度に高くすることなく、装着者の動きに合わせて吸収体が変形しフィット性能と装着性能に優れる使い捨ておむつの提供と、包装シートに破れ等を抑制して、生産効率が高いフィット性能と装着性能に優れる使い捨ておむつの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した手段は以下のとおりである。
第1手段は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収要素を設け、前記吸収要素を、排泄物を吸収する吸収体と、前記吸収体の外周部を覆う包装シートで形成し、前記吸収要素の身体側に、直線部と角部を有しない円形圧搾部と、直線部と角部を有しない楕円形圧搾部を設け、前記円形圧搾部の第1円形圧搾部を、幅方向と前後方向に所定の間隔を隔てて設け、前記円形圧搾部の第2円形圧搾部を、前記第1円形圧搾部とは幅方向と前後方向に所定の間隔を半分ずらした位置に、幅方向と前後方向に所定の間隔を隔てて設け、前記楕円形圧搾部の第1楕円形圧搾部を、幅方向において前記第1円形圧搾部及びこれに隣接する第1円形圧搾部の間と、幅方向において前記第2円形圧搾部及びこれに隣接する第2円形圧搾部の間の中心に幅方向に長軸を延在して設け、前記楕円形圧搾部の第2楕円形圧搾部を、前記第1円形圧搾部及び幅方向と前後方向においてこれに隣接する第2円形圧搾部の間の中心に、前記第1円形圧搾部及び幅方向と前後方向においてこれに隣接する第2円形圧搾部を結ぶ仮想線に長軸を延在させて設け、前記間隔を12~24mmに形成し、前記吸収要素の身体側面に対して、前記円形圧搾部の面積占有率を0.5~5%に形成し、前記楕円形圧搾部の面積占有率を5~30%に形成したことを特徴とする。
【0007】
第2手段は、第1手段において、前記第1円形圧搾部と第2円形圧搾部の直径を1~3mmに形成し、前記第1楕円形圧搾部と第2楕円形圧搾部の短軸長さを1~3mmに、長軸長さを3~5mmに形成したことを特徴とする。
【0008】
【0009】
手段は、第1又は2手段のいずれか1項の手段において、前記第1円形圧搾部と第2円形圧搾部の凹部深さを0.25~1.00mmに形成し、前記第1楕円形圧搾部と第2楕円形圧搾部の凹部深さを0.25~1.00mmに形成したことを特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】
【発明の効果】
【0013】
第1手段によれば、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートの間に吸収要素を設け、吸収要素を、排泄物を吸収する吸収体と、吸収体の外周部を覆う包装シートで形成し、吸収要素の身体側に、直線部と角部を有しない円形圧搾部と、直線部と角部を有しない楕円形圧搾部を設け、円形圧搾部の第1円形圧搾部を、幅方向と前後方向に所定の間隔を隔てて設け、円形圧搾部の第2円形圧搾部を、第1円形圧搾部とは幅方向と前後方向に所定の間隔を半分ずらした位置に、幅方向と前後方向に所定の間隔を隔てて設け、楕円形圧搾部の第1楕円形圧搾部を、幅方向において第1円形圧搾部及びこれに隣接する第1円形圧搾部の間と、幅方向において第2円形圧搾部及びこれに隣接する第2円形圧搾部の間の中心に幅方向に長軸を延在して設け、楕円形圧搾部の第2楕円形圧搾部を、第1円形圧搾部及び幅方向と前後方向においてこれに隣接する第2円形圧搾部の間の中心に、第1円形圧搾部及び幅方向と前後方向においてこれに隣接する第2円形圧搾部を結ぶ仮想線に長軸を延在させて設け、間隔を12~24mmに形成し、吸収要素の身体側面に対して、円形圧搾部の面積占有率を0.5~5%に形成し、楕円形圧搾部の面積占有率を5~30%に形成したので、装着者の動きに合わせて吸収体が第1楕円形圧搾部を起点として前後方向に容易に湾曲し、第2楕円形圧搾部を起点として幅方向に容易に湾曲して吸収体を前後方向と幅方向に容易に変形させて使い捨ておむつのフィット性能と装着性能を高めることができる。また、吸収体を過度に固くすることなく吸収体の剛性を高めて吸収体のヨレ、形状変形等を抑制することができる。
【0014】
第2手段によれば、第1手段による効果に加えて、第1円形圧搾部と第2円形圧搾部の直径を1~3mmに形成し、第1楕円形圧搾部と第2楕円形圧搾部の短軸長さを1~3mmに、長軸長さを3~5mmに形成したので、包装シートの破れや過度に薄くなるのを抑制して、吸収体の外周部を包装シートで覆うことができる。また、吸収体を過度に固くすることなく吸収体の剛性を高めて吸収体のヨレ、形状変形等をより抑制することができる。
【0015】
【0016】
手段によれば、第1又は2手段のいずれか1項の手段による効果に加えて、第1円形圧搾部と第2円形圧搾部の凹部深さを0.25~1.00mmに形成し、第1楕円形圧搾部と第2楕円形圧搾部の凹部深さを0.25~1.00mmに形成したので、包装シートの破れや過度に薄くなるのをより抑制することができる。
【0017】
【0018】
【0019】
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】使い捨ておむつの身体側の平面図である。
図2】使い捨ておむつの反身体側の平面図である。
図3図1のA―A断面図である。
図4】吸収要素の平面図である。
図5】(a)は図4の部分拡大平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。である。
図6】(a)は吸収要素の製造方法の説明図であり、(b)は上側ロールの平面図であり、(c)は下側ロールの平面図であり、(d)は円形突起部の外周端部の説明図である。
図7】伸縮シートの平面図である。
図8】伸縮シートの襞の形態の説明図である。
【0021】
図1~3に示すように、使い捨ておむつは、身体側に設けられた液透過性のトップシート10と、反身体側に設けられた液不透過性のバックシート11と、トップシート10とバックシート11の間に設けられた吸収要素20から形成されている。
【0022】
トップシート10の身体側面の表面には、予め親水性剤を塗布するのが好ましい。これにより、トップシート10上に排出された尿等をトップシート10から吸収要素20に移動させて外部への漏れ出しを防止することができる。また、吸収要素20は、吸収体21と、吸収体21を覆う包装シート22とから形成されている。
【0023】
図4に示すように、吸収体21と包装シート22の身体側には、直線部や角部を有しない円形状の円形圧搾部70と直線及び角部を有しない楕円形状の楕円形圧搾部71が、一側に偏移することなく均一に設けられている。これにより、包装シート22の破れを抑制すると共に、吸収体21のヨレ、形状変化等を抑制することができる。また、排泄された尿等の液体を吸収した吸収体21の形状の崩れを抑制することができる。さらに、吸収体21と包装シート22の身体側には、円形圧搾部70と楕円形圧搾部71が身体側に均一に設けられているので、排泄された液体は、吸収体21の幅方向と前後方向の全域に拡散し吸収されるので、吸収体21に吸収された液体が、再び包装シート22を介してトップシート10に逆戻りする、いわゆる、ウエットバックも抑制することができる。なお、本実施形態では、吸収体21と包装シート22の身体側に円形圧搾部70と楕円形圧搾部71が設けられているが、吸収体21と包装シート22の反身体側にも設けることができる。
【0024】
図5(a)に示すように、円形圧搾部(請求項の「第1円形圧搾部」)70Aは、幅方向と前後方向に所定の間隔Wを隔てて設けられている。また、円形圧搾部(請求項の「第2円形圧搾部」)70Bは、円形圧搾部70Aとは幅方向と前後方向に間隔Wを半分ずらした位置に、幅方向と前後方向に所定の間隔Wを隔てて設けられている。
【0025】
楕円形圧搾部(請求項の「第1楕円形圧搾部」)71Aは、円形圧搾部70A及び幅方向でこれに隣接する円形圧搾部70Aの間と、円形圧搾部70B及び幅方向でこれに隣接する円形圧搾部70Bの間の中心に、幅方向に長軸を延在させて形成されている。これにより、吸収体21が楕円形圧搾部71Aを起点として前後方向に容易に湾曲するので、使い捨ておむつのフィット性能と装着性能を高めることができる。
【0026】
楕円形圧搾部(請求項の「第2楕円形圧搾部」)71Bは、円形圧搾部70A及び幅方向と前後方向でこれに隣接する円形圧搾部70Bの間の中心に、円形圧搾部70A及び幅方向と前後方向でこれに隣接する円形圧搾部70Bを結ぶ仮想線に長軸を延在させて形成されている。これにより、吸収体21が楕円形圧搾部71Bを起点として幅方向に容易に湾曲するので、使い捨ておむつのフィット性能と装着性能を高めることができる。
【0027】
円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bの直径は1~3mmに形成し、楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bの短軸長さは1~3mmに形成し、長軸長さは3~5mmに形成するのが好ましい。これにより、包装シート22の破れを抑制して、吸収体21を過度に固くすることなく吸収体21の剛性を高めて吸収体21の形状変形を抑制することができる。また、吸収要素20の製造時に、吸収体21の身体側に塗布されたホットメルト等の接着剤が、過度に薄くなった包装シート22を漏出して包装シート22の身体側に浸出してくるのを抑制することができる。
【0028】
間隔Wは12~24mmに形成して、円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bの面積占有率は0.5~5%に形成し、楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bの面積占有率は5~30%に形成するのが好ましい。これにより、吸収体21を過度に固くすることなく吸収体21の剛性を高めて吸収体21の形状変形をより抑制することができる。
【0029】
図5(b)に示すように、円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bの凹部深さは0.25~1.00mmに形成し、同様に楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bの凹部深さは0.25~1.00mmに形成するのが好ましい。これにより、包装シート22の破れをより抑制することができる。また、吸収要素20の製造時に、吸収体21の身体側に塗布されたホットメルト等の接着剤が、過度に薄くなった包装シート22を漏出して包装シート22の身体側に浸出してくるのをより抑制することができる。
【0030】
本実施形態では、円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bの直径は2mmに形成され、幅方向と前後方向の間隔Wは18mmに形成され、円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bの面積占有率は約2%に形成されている。また、楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bの短軸長さは2mmに形成され、楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bの面積占有率は約12%に形成されている。なお、本明細書では、円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bを総称して円形圧搾部70といい、楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bを総称して楕円形圧搾部71という。
【0031】
<吸収要素の製造方法>
図6(a)に示すように、先ず、吸収体21の外周部を包装シート22で覆い、加工前吸収要素23を製造する。なお、吸収体21と包装シート22はホットメルト等の接着剤で接合されている。
【0032】
次に、上下一対のロールの間に、加工前吸収要素23を通過させて、上下方向に加工前吸収要素23を圧縮して、上下方向の厚みを0.5~1.2mm圧縮して吸収要素20を製造するのが好ましい。これにより、尿等の液体を吸収した吸収体21の形状の崩れをより抑制することができる。
【0033】
図6(b)に示すように、加工前吸収要素23の身体面側に対向する上側ロール80の外周面には、円形圧搾部70を形成する円形突起部81と、楕円形圧搾部71を形成する楕円形突起部82が形成されている。
【0034】
(c)に示すように、加工前吸収要素23の反身体面側に対向する下側ロール83の外周面は凹凸部がないフラットな円形圧搾部70を形成する円形突起部81と、楕円形圧搾部71を形成する楕円形突起部82が形成されている。
【0035】
図6(d)に示すように、円形突起部81と楕円形突起部82の外周端部には、所定の半径を有するR加工が施されている。これにより、包装シート22の破れを抑制して、包装シート22の破れから接着剤が漏出して上側ロール80の円形突起部81と楕円形圧搾部71の外周部に付着するのを防止することができる。また、上側ロール80と下側ロール83の外周部にはシリコン系材料でコーティングするのが好ましい。これにより、包装シート22の破れをさらに抑制することができる。
【0036】
本実施形態では、加工前吸収要素23の上下方向の厚みを約4~8mmに形成し、加工前吸収要素23を上側ロール80と下側ロール83で圧縮して吸収要素20の厚みを約3~7mmに形成した。また、円形圧搾部70Aと円形圧搾部70Bの凹部深さは0.25~1.00mmに形成し、同様に楕円形圧搾部71Aと楕円形圧搾部71Bの凹部深さも0.25~1.00mmに形成した。
【0037】
図1~3に示すように、バックシート11の反身体側には、外装シート12が設けられている。また、トップシート10と吸収要素20の間には、トップシート10を透過した排泄物を吸収要素20に移動させ、排泄物の逆戻りを防止する中間シート15を設けるのが好ましい。
【0038】
吸収要素20の幅方向の両側には、所定の間隔を隔てて排泄物の外部への漏れを防止する立体ギャザー30が設けられている。立体ギャザー30は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート31と、ギャザーシート31の前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材32から形成されている。
【0039】
立体ギャザー30の折れ線30Aの外側には、所定の間隔を隔てて排尿の外部への漏れを防止する平面ギャザー40が形成されている。平面ギャザー40は、バックシート11と、ギャザーシート31の間に前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材41から形成されている。
【0040】
ギャザーシート31における立体ギャザー30の先端と折れ線30Aの幅方向の長さL1と、ギャザーシート31における折れ線30Aと側端部の長さL2を同一長さに形成するのが好ましい。これにより、立体ギャザー30をトップシート10の身体側面に折曲げて、トップシート10の広い範囲に親水性剤を塗布することができる。また、親水性剤の塗布時に、立体ギャザー30に親水性剤が塗布されて撥水性能の低下を防止することができる。
【0041】
吸収要素20の前後方向の両側には、エンドフラップ部EFが形成され、吸収要素20の幅方向の両側には、サイドフラップ部SFが形成されている。
【0042】
サイドフラップ部SFにおける背側部の幅方向の両側には、ファスニングテープ50が設けられている。ファスニングテープ50は、サイドフラップ部SFに固定される基材51と、基材51の身体側に設けられた係止部52から形成されている。
【0043】
外装シート12の反身体側の腹側部には、ファスニングテープ50の係止部52が係止される前後方向に所定の間隔を有して幅方向に延在する矩形状のターゲットシート55が設けられている。
【0044】
背側のエンドフラップ部EFを形成するトップシート10とバックシート11の間には、後述する伸縮シート60が設けられている。
【0045】
図7に示すように、伸縮シート60は、トップシート10に対向する内側シート61と、バックシート11に対向する外側シート62と、内側シート61と外側シート62の間に幅方向に沿って伸長状態で固定された細長状の伸縮部材63から形成されている。
【0046】
伸縮部材63は、内側シート61の反身体側面に幅方向に所定の間隔を隔てて形成された矩形状の第1接着部65Aと、外側シート62の身体側面に幅方向に所定の間隔を隔てて形成された第2接着部65Bに固定されている。これにより、図8に示すように、伸縮シート60の身体側面と反身体側面に略山形の皺68を形成して、使い捨ておむつを装着者の背側ウエスト部にフィットさせることができる。第1接着部65Aと第2接着部65Bは、ホットメルト接着剤を塗布して形成することができる。なお、本明細書では、第1接着部65Aと第2接着部65Bを総称して接着部65と言い、接着部65とこれに隣接する接着部65の間の部位を非接着部66と言う。
【0047】
また、内側シート61と外側シート62に接着部65を形成するのに替えて、伸縮部材63の外周部に、幅方向に上述の非接着部66に相当する所定の間隔を隔てて接着部65を形成して、伸縮部材63に内側シート61と外側シート62を固定することもできる。
【0048】
本明細書においては、トップシート10の腹側部は、トップシート10の腹側端部から背側に向かってトップシート10の前後方向の長さの10~30%の部位をいい、トップシート10の中間部は、トップシート10の腹側部の背側端部からトップシート10の背側部の腹側端部の間でトップシート10の前後方向の長さの40~80%の部位をいい、トップシート10の背側部は、トップシート10の背側端部から腹側に向かってトップシート10の前後方向の長さの10~30%の部位をいう。
【0049】
次に、トップシート10等の素材および特徴部分について順に説明する。
(トップシート)
トップシート10は、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等で形成されている。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維等を例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
なお、トップシート10の表面には、予め親水性剤が塗布されているのは好ましい。
【0050】
(バックシート)
バックシート11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とでバックシート11が構成される。)等で形成されている。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、バックシート11として用いることができる。
【0051】
(外装シート)
外装シート12は、吸収要素20を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。
【0052】
外装シート12は、不織布で形成するのが好適である。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互を接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m、特に15~30g/mのものが望ましい。
【0053】
(中間シート)
中間シート15は、トップシート10と同様の素材で形成されている。中間シート15は、トップシート10に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート15の素材は、トップシート10と同程度の融点をもつものが好ましい。中間シート15に不織布を用いる場合、その不織布の繊維の繊度は2.0~7.0dtex程度とするのが好ましい。
【0054】
(吸収体)
吸収体21は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0055】
吸収体21は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0056】
吸収体21の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート22上にある形態も排除されるものではない。
【0057】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150~400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系等のものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体等のものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0058】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体21内に供給された液が吸収体21外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0059】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体21の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/mとすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/mを超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0060】
(包装シート)
包装シート22は、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等で形成されている。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン等を使用できる。繊維目付けは、5~40g/m、特に10~18g/mのものが望ましい。
【0061】
(立体ギャザー)
立体ギャザー30のギャザーシート31としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材32としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0062】
ギャザーシート31の反身体側面は、トップシート10の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、バックシート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤等により固着されている。
【0063】
脚周りにおいては、立体ギャザー30の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート10上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材32の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材32の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材32の収縮力により立体ギャザー30が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0064】
(平面ギャザー)
ギャザーシート31とバックシート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材41が前後方向に沿って伸長された状態で固定されている。脚周り弾性伸縮部材41は、複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0065】
(ファスニングテープ)
ファスニングテープ50の基材51の基部は、ホットメルト接着剤等によってギャザーシート31と外装シート12の間に固定されている。また、基材51は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材から形成されている。
【0066】
係止部52は、メカニカルファスナーのフック材から形成されている。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ50の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0067】
(ターゲットシート)
ターゲットシート55は、ループ糸が表面に多数設けられたプラスチックフィルムや不織布等から形成されている。
【0068】
(伸縮シート)
伸縮シート60は、背側のエンドフラップ部EFを伸縮させて装着者の背中周りに背側のエンドフラップ部EFを密着させる伸縮シートである。図7に示すように、伸縮シート60は、不織布から形成された内側シート61と、不織布から形成された外側シート62と、内側シート61と外側シート62の間に設けられた前後方向に所定の間隔を隔てて幅方向に延在する複数の細長状の伸縮部材63から形成されている。なお、伸縮部材63は、太さ470~620dtexのゴム糸を、伸長率200~250%に伸ばして設けている。
【0069】
幅方向における伸縮シート60の両側部は、左右一対のギャザーシートの両側部の近傍に位置し、幅方向における伸縮部材63の両側部は、バックシート11の両側部に位置している。
【0070】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0071】
・「前後(縦)方向」とは腹側(前側)と背側(後側)を結ぶ方向を意味し、「幅方向」とは前後方向と直交する方向(左右方向)を意味する。
・「表側」とは装着者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは装着者の肌から遠い方を意味する。「表面」とは部材の、装着者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは装着者の肌から遠い方の面を意味する。
・「MD方向」及び「CD方向」とは、製造設備における流れ方向(MD方向)及びこれと直交する横方向(CD方向)を意味し、いずれか一方が製品の前後方向となるものであり、他方が製品の幅方向となるものである。不織布のMD方向は、不織布の繊維配向の方向である。繊維配向とは、不織布の繊維が沿う方向であり、例えば、TAPPI標準法T471の零距離引張強さによる繊維配向性試験法に準じた測定方法や、前後方向及び幅方向の引張強度比から繊維配向方向を決定する簡易的測定方法により判別することができる。
・「展開」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
・「人工尿」は、尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したものであり、特に記載の無い限り、温度40度で使用される。
・「目付け量」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm、及び加圧面積:2cmの条件下で自動測定する。
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0073】
10 トップシート
11 バックシート
20 吸収要素
21 吸収体
22 包装シート
70 円形圧搾部
70A 円形圧搾部(第1円形圧搾部)
70B 円形圧搾部(第2円形圧搾部)
71 楕円形圧搾部
71A 楕円形圧搾部(第1楕円形圧搾部)
71B 楕円形圧搾部(第2楕円形圧搾部)
80 上側ロール
81 円形突起部
82 楕円形突起部
83 下側ロール
W 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8