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特許7453183チップリペア方法およびチップリペアシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】チップリペア方法およびチップリペアシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20240312BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240312BHJP
【FI】
H01L21/52 C
H01L33/48
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021104001
(22)【出願日】2021-06-23
(65)【公開番号】P2023003062
(43)【公開日】2023-01-11
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川上 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】森 英治
(72)【発明者】
【氏名】武久 翔多
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0286949(US,A1)
【文献】特開2009-059874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 33/48
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リペア処理が必要なリペア対象部を有するリペア対象基板に補充用チップを実装するチップリペア方法であって、
前記補充用チップを保持させた転写用キャリアを準備する転写用キャリア準備ステップと、
前記リペア対象基板の前記リペア対象部と、前記転写用キャリアに保持された前記補充用チップとを位置合わせして対向させ、当該補充用チップを当該転写用キャリアから当該リペア対象基板に転写させる、チップ転写ステップとを有し、
前記転写用キャリアの表面には粘着層が形成されており、
前記粘着層上に前記補充用チップを保持させた後、当該補充用チップが並べられていない当該粘着層の露出部の表面状態を改質する、表面状態改質ステップを有し、
前記転写用キャリア準備ステップでは、
前記リペア対象基板における前記リペア対象部の配置情報を取得し、前記チップ転写ステップにおいて当該リペア対象部と前記補充用チップとを対向させた状態で全てのリペア対象部と補充用チップとが同じ位置関係となる様に、当該補充用チップを前記転写用キャリアに配置して保持させる
ことを特徴とする、チップリペア方法。
【請求項2】
前記リペア対象基板には複数の前記リペア対象部を有する一括処理エリアが複数設定されていることを特徴とする、請求項1に記載のチップリペア方法。
【請求項3】
前記転写用キャリア準備ステップでは、前記一括処理エリア内の複数の前記リペア対象部の配置情報に基づいて、複数の前記補充用チップを前記転写用キャリアに配置して保持させ、
前記チップ転写ステップでは、前記一括処理エリア内の複数の前記リペア対象部に対して、前記転写用キャリアから複数の前記補充用チップを一括で転写させる
ことを特徴とする、請求項2に記載のチップリペア方法。
【請求項4】
前記チップ転写ステップにおいて、
前記リペア対象基板に付されているアライメントマーク、当該リペア対象基板の前記リペア対象部および当該リペア対象基板に既に実装されている実装済チップのいずれかの位置情報と、
前記転写用キャリアに付されているアライメントマーク又は該転写用キャリアに保持されている前記補充用チップの位置情報とを用いて、
前記リペア対象部と前記補充用チップとを位置合わせする
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のチップリペア方法。
【請求項5】
前記チップ転写ステップにおいて、
前記リペア対象基板に付されているアライメントマーク、当該リペア対象基板の前記リペア対象部および当該リペア対象基板に既に実装されている実装済チップのいずれかの位置情報と、
前記転写用キャリアに付されているアライメントマーク又は該転写用キャリアに保持されている前記補充用チップの位置情報とが、
同じ認識手段で取得される
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のチップリペア方法。
【請求項6】
前記表面状態改質ステップは、プラズマ処理を行い、前記粘着層の露出部の表面に微小な凹凸形状を形成する
ことを特徴とする、請求項1~5いずれかに記載のチップリペア方法。
【請求項7】
リペア処理が必要なリペア対象部を有するリペア対象基板に補充用チップを実装するチップリペアシステムであって、
前記リペア対象基板における前記リペア対象部の配置情報を出力するリペア位置出力装置と、
前記補充用チップを保持させた転写用キャリアを準備する転写用キャリア準備装置と、
前記リペア対象基板の前記リペア対象部と、前記転写用キャリアに保持された前記補充用チップとを位置合わせして対向させ、当該補充用チップを当該転写用キャリアから当該リペア対象基板に転写させる、チップ転写装置とを備え、
前記転写用キャリアの表面には粘着層が形成されており、
前記粘着層上に前記補充用チップを保持させた前記転写用キャリアの、当該補充用チップが並べられていない当該粘着層の露出部の表面状態を改質する、表面状態改質装置を備え、
前記転写用キャリア準備装置は、
前記リペア位置出力装置から出力された前記リペア対象部の配置情報に基づいて、前記チップ転写の際に当該リペア対象部と前記補充用チップとを対向させた状態で全てのリペア対象部と補充用チップとが同じ位置関係となる様に、当該補充用チップを前記転写用キャリアに配置して保持させる
ことを特徴とする、チップリペアシステム。
【請求項8】
前記チップ転写装置は、
前記リペア対象基板に付されているアライメントマーク、当該リペア対象基板の前記リペア対象部および当該リペア対象基板に既に実装されている複数の実装済チップのいずれかの位置情報と、
前記転写用キャリアに付されているアライメントマーク又は該転写用キャリアに保持されている前記補充用チップの位置情報とを
取得する、認識手段を備えた
ことを特徴とする、請求項に記載のチップリペアシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リペア処理が必要なリペア対象部を有するリペア対象基板に補充用チップを実装する、チップリペア方法およびシステムに関する。例えば、電子部品やマイクロLED等の半導体チップが実装された基板のリペア処理に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや電子部品等のチップ部品を1つずつピックアップし、基板上に設定された所定の位置にアライメントして実装する装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
さらに、複数の微小チップ(例えば、マイクロLEDチップ等)をピックアップし、これらチップを基板上に一括して(一度に)実装する技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
基板上に実装された多数の半導体チップは、良否検査が行われ、不良チップと判定されたものは除去加工が行われ、良品チップが再実装(つまり、リペア処理)される(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-274240号公報
【文献】特開2018-163900号公報
【文献】特開平11-8338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テレビやパソコン用モニタ、携帯用情報端末などの高精細ディスプレイを例に挙げると、画素不良の削減に対する要求がシビアになっているため、リペア処理が必要な箇所は多数に及ぶことが多く、位置も不規則である。このような場合、リペアすべき個所に補充用チップを1つずつピックアップ・位置決めして圧着する手法では、ピックアップ時の位置決めや荷重制御、圧着時の位置決めや荷重・温度制御が難しい上に、処理時間がかかり生産性が低かった。
【0007】
そこで本発明は、補修用チップをリペアすべき箇所が不規則かつ多数ある場合でも、迅速かつ安定した処理を行い、生産性を向上させることができる、チップリペア方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明に係る一態様は、
リペア処理が必要なリペア対象部を有するリペア対象基板に補充用チップを実装するチップリペア方法であって、
補充用チップを保持させた転写用キャリアを準備する転写用キャリア準備ステップと、
リペア対象基板のリペア対象部と、転写用キャリアに保持された補充用チップとを位置合わせして対向させ、当該補充用チップを当該転写用キャリアから当該リペア対象基板に転写させる、チップ転写ステップとを有し、
転写用キャリア準備ステップでは、
リペア対象基板におけるリペア対象部の配置情報を取得し、チップ転写ステップにおいて当該リペア対象部と補充用チップとを対向させた状態で全てのリペア対象部と補充用チップとが同じ位置関係となる様に、当該補充用チップを転写用キャリアに配置して保持させることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る別の一態様は、
リペア処理が必要なリペア対象部を有するリペア対象基板に補充用チップを実装するチップリペアシステムであって、
リペア対象基板におけるリペア対象部の配置情報を出力するリペア位置出力装置と、
補充用チップを保持させた転写用キャリアを準備する転写用キャリア準備装置と、
リペア対象基板のリペア対象部と、転写用キャリアに保持された補充用チップとを位置合わせして対向させ、当該補充用チップを当該転写用キャリアから当該リペア対象基板に転写させる、チップ転写装置とを備え、
転写用キャリア準備装置は、
リペア位置出力装置から出力されたリペア対象部の配置情報に基づいて、チップ転写ステップにおいて当該リペア対象部と補充用チップとを対向させた状態で全てのリペア対象部と補充用チップとが同じ位置関係となる様に、当該補充用チップを転写用キャリアに配置して保持させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
補修用チップをリペアすべき箇所が不規則かつ多数ある場合でも、迅速かつ安定した処理を行い、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明を適用してリペア処理するリペア対象基板と、リペアに用いる転写用キャリアの一例を示す平面図である。
図3】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。
図4】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。
図5】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す断面図である。
図6】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。
図7】本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。
図8】本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。
図9】本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。
図10】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す断面図である。
図11】本発明を具現化する形態の別の一例の要部を示す概略図である。
図12】本発明を具現化する形態の別の一例の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX方向、Y方向と表現し、XY平面に垂直な方向(つまり、重力方向)をZ方向と表現する。また、X方向は奥/手前、Y方向は左/右と表現する。また、Z方向は、重力に逆らう方向を上、重力がはたらく方向を下と表現する。また、X方向を中心軸として回転する方向をφ方向、Z方向を中心軸として回転する方向をθ方向とする。
【0013】
図1は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。図1には、本発明に係るチップリペアシステム1の概略図が示されている。
【0014】
チップリペアシステム1は、リペア処理が必要なリペア対象部Cxを有するリペア対象基板W1に補充用チップCbを実装するものである。なお、ここで言うチップの「実装」とは、はんだや導電樹脂を介して、外力や振動を加えても脱落や位置ずれしないように互いに強く固着している状態(完全固定とも言う)に限らず、さほど強くない結合力や粘着力等により暫定的に密着している状態(仮固定とも言う)も含む。
【0015】
具体的には、チップリペアシステム1は、リペア位置出力装置2、転写用キャリア準備装置3、表面状態改質装置4、チップ転写装置5、移載ロボット(不図示)等を含んで構成されている。
【0016】
図2は、本発明を適用してリペア処理するリペア対象基板W1と、リペアに用いる転写用キャリアW2の一例を示す平面図である。図2(a)には、リペア対象基板W1内に良品チップCaとリペアが必要なリペア対象部Cxが混在して配置している様子が示されている。図2(b)には、転写用キャリアW2に補充用チップCbが配置されている様子が示されている。
【0017】
なお、リペア対象基板W1は、リペア対象部Cxがある側(つまり、補充用チップCbが実装される側)の面を上面またはオモテ面と呼び、その反対側を下面またはウラ面と呼ぶ。また、転写用キャリアW2は、補充用チップCbを保持する側(つまり、粘着層Bが形成された側)の面をオモテ面と呼び、その反対側をウラ面と呼ぶ。
【0018】
リペア対象基板W1のオモテ面には、良品チップCaがマトリクス状に所定ピッチで配置されており、良品チップCaの無いところがリペア対象部Cxである。また、リペア対象基板W1のオモテ面には、アライメントマークM1が付されており、アライメントマークM1を基準にしてリペア対象部Cxの相対位置(座標:Xcx,Ycx)がそれぞれ規定されている。
【0019】
一方、転写用キャリアW2のオモテ面には、アライメントマークM2が付されており、アライメントマークM1,M2は、X方向に互いの間隔Pxが等しく、Y方向に互いの間隔Pyが等しく設定されている。そして、アライメントマークM1,M2が互いに重なり合う様にリペア対象基板W1と転写用キャリアW2とのオモテ面同士を対向配置させたときに、リペア対象部Cxと補充用チップCbが同じ位置関係で対向配置されるように、転写用キャリアW2のオモテ面には、アライメントマークM2を基準にして補充用チップCb(座標:Xcb,Ycb)が配置されている。
【0020】
なお、リペア対象基板W1には、複数のリペア対象部Cxを有する一括処理エリアR(例えば、R1~R4)が複数設定されており、一括処理エリアRは、転写用キャリアW2の有効処理エリア(チップ転写の際に加熱や加圧の条件を概ね均一にできる範囲)と対応して設定されている。
【0021】
リペア位置出力装置2は、リペア対象基板W1におけるリペア対象部Cxの配置情報を出力するものである。
【0022】
図3は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。図3には、本発明に係るリペア位置出力装置2の概略が示されている。
【0023】
具体的には、リペア位置出力装置2は、リペア対象基板W1内のどの位置にリペア対象部Cxがあるかを検出し、リペア対象部Cxの配置情報Jとして出力するものである。
【0024】
より具体的には、リペア位置出力装置2は、光学的検査装置(外観検査装置とも言う)の一部で構成することができ、基板保持台21、撮像カメラ22、処理部23、移動部24等を備えている。
【0025】
基板保持台21は、リペア対象基板W1を所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、基板保持台21は、リペア対象基板W1の下面を支え水平状態で保持するものである。より具体的には、基板保持台21は、保持面(つまり、リペア対象基板W1の下面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、当該保持面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、リペア対象基板W1を保持面上に置いた状態で負圧吸引手段を作動させると、これら細孔や溝とリペア対象基板W1とで形成される空間に吸引力が発生する。そのため、リペア対象基板W1が保持面に吸引されて吸着保持される。
【0026】
撮像カメラ22は、リペア対象基板W1の上面にあるアライメントマークM1や良品チップCa、不良チップ(破損、位置ずれ、欠落、不点灯など)等の外観を所定の観察倍率で撮像するものである。
具体的には、撮像カメラ22は、リペア対象基板W1の上方に配置され、リペア対象基板W1の上面の一部ないし全体を見下ろす様に配置されている。そして、撮像カメラ22は、撮像した画像に対応する映像信号や画像データを外部に出力するものである。なお、撮像カメラ22は、装置フレーム(不図示)等に連結金具等を介して固定されている。
【0027】
処理部23は、撮像カメラ22から出力された画像(つまり、映像信号や画像データ)を取得・処理し、リペア対象部Cxの位置情報Jを出力するものである。具体的には、処理部23は、画像内に含まれるチップの良否を判定し、画像内に含まれるアライメントマークM1や、良品チップCa、不良チップ等の位置を検出し、リペア対象部Cxの位置(例えば、アライメントマークM1やリペア対象基板Wの基準位置等に対する相対的な位置:座標データ等)を算出し、位置情報Jを出力する構成を有している。より具体的には、処理部23は、画像処理機能を有するコンピュータ等が例示できる。
【0028】
移動部24は、基板保持台21と撮像カメラ22とを相対的に移動させるものである。具体的には、移動部24は、基板保持台21をXY方向に所定の速度で移動させ、所定の場所で静止させる機構(例えば、XYステージなど)を備えている。
【0029】
リペア位置出力装置2は、この様な構成をしているため、不良チップや欠落箇所(つまり、リペア対象部Cx)がリペア対象基板W1内のどこに配置されているかを検出して、リペア対象部Cxそれぞれの座標データ等(つまり、配置情報J)を出力することができる。なお、リペア対象基板W1内に複数設定された一括処理エリアR(本例では、R1~R4)については、一括処理エリアR毎に(図では、R1を例示)、当該エリア内のアライメントマークM1を基準にしてリペア対象部Cxの位置情報Jを、一括処理エリアRのアドレス番号等と紐付けて出力する。
【0030】
転写用キャリア準備装置3は、補充用チップCbを保持させた転写用キャリアW2を準備するものである。さらに、転写用キャリア準備装置2は、リペア位置出力装置2から出力されたリペア対象部Cxの配置情報Jに基づいて、チップ転写の際にリペア対象部Cxと補充用チップCbとを対向させた状態で全てのリペア対象部Cxと補充用チップCbとが同じ位置関係となる様に、補充用チップCbを転写用キャリアW2に配置して保持させるものである。
【0031】
具体的には、転写用キャリア準備装置3は、リペア位置出力装置2から出力されたリペア対象部Cxの配置情報Jを取得し、チップ転写の際にアライメントマークM1,M2が互いに重なり合う様にリペア対象基板W1と転写用キャリアW2とのオモテ面同士を対向配置させたときに、リペア対象部Cxと補充用チップCbが同じ位置関係で対向配置されるように、アライメントマークM2を基準にして転写用キャリアW2のオモテ面に補充用チップCbを配置する。すなわち、転写用キャリアW2上の補充用チップCbは、リペア対象基板W1のリペア対象部Cxと線対称となる様にアライメントマークM2を基準にして配置される(図2参照)。
【0032】
より具体的には、転写用キャリア準備装置3は、リペア対象部Cxの配置情報Jに基づいて、転写用キャリアW2上のどの位置に補充用チップCbを配置すべきか(つまり、配置情報J2)を、一括処理エリアR(本例ではR1~R4)それぞれに対して算出し当該配置情報J2に基づいて転写用キャリアW2上に補充用チップCb配置する。この配置情報J2は、例えばX軸を対称軸としたとき、配置情報Jに含まれるリペア対象部CxとはY方向の座標が左右逆となるように、アライメントマークM2を基準にして補充用チップCbの座標を設定する。例えば、オモテ面を上に向けたリペア対象基板W1の座標(Xcx,Ycx):(10,-10)、(10,-30)、(30,-30)等にリペア対象部Cxが配置されていれば、オモテ面を上に向けた転写用キャリアW2には、座標(Xcb,Ycb):(10,10)、(10,30)、(30,30)等に転写用チップCbを配置する。そのため、アライメントマークM1,M2が重なるようにリペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを位置合わせして対向配置させると、転写用チップCbは座標(x,y):(10,-10)、(10,-30)、(30,-30)等に位置するので、リペア対象部Cxに補充用チップCbを同じ位置関係で重ね合わせることができる。
【0033】
図4は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。図4には、本発明に係る転写用キャリア準備装置3の概略と、リペア対象基板W1に設定された一括処理エリアR(本例ではR1)のリペア対象部Cxに対する転写用キャリアW2に配置された補充用チップCbとの位置関係が示されている。
【0034】
より具体的には、転写用キャリア準備装置3は、キャリア保持部31、チップ供給基板保持部32、撮像カメラ33,34、ピックアンドプレース部35、制御部39等を備えている。
【0035】
キャリア保持部31は、転写用キャリアW2を所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、キャリア保持部31は、転写用キャリアW2のウラ面を支え水平状態で保持するものである。
より具体的には、キャリア保持部31は、保持面(つまり、転写用キャリアW2のウラ面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、当該保持面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、転写用キャリアW2のウラ面側を負圧状態にして保持するものである。
【0036】
チップ供給基板保持部32は、チップ供給基板W3を所定の姿勢で保持するものである。具体的には、チップ供給基板W3は、補充用チップCbを供給するものである。チップ供給基板W3の上面には補充用チップCbが所定ピッチで多数配列されている。
より具体的には、チップ供給基板保持部32は、保持面(つまり、チップ供給基板W3の下面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、当該保持面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、チップ供給基板W3の下面側を負圧状態にして保持するものである。
【0037】
撮像カメラ33は、転写用キャリアW2のオモテ面にあるアライメントマークM2を所定の観察倍率で撮像するものである。
具体的には、撮像カメラ33は、転写用キャリアW2の上方に配置され、転写用キャリアW2のオモテ面の一部ないし全体を見下ろす様に配置されている。
【0038】
撮像カメラ34は、チップ供給基板W3の上面にあるアライメントマークM3を所定の観察倍率で撮像するものである。
具体的には、撮像カメラ34は、チップ供給基板W3の上方に配置され、チップ供給基板W3の上面の一部ないし全体を見下ろす様に配置されている。
そして、撮像カメラ33,34は、撮像した画像に対応する映像信号や画像データを制御部39に出力する。なお、撮像カメラ33,34は、装置フレーム(不図示)等に連結金具等を介して固定されている。
【0039】
ピックアンドプレース部35は、補充用チップCbをチップ供給基板W3から1つずつピックアップし、当該補充用チップCbを転写用キャリアW2の所定位置に並べる装置である。具体的には、ピックアンドプレース部35は、補充用チップCbを吸着等により保持する保持部と、保持部を水平方向および上下方向に移動させる移動部(移載ロボットなど)等を含んで構成されている。
より具体的には、ピックアンドプレース部35は、X軸アクチュエータ35X、Y軸アクチュエータ35Y、Z軸アクチュエータ35Z、保持ヘッド35H等を備えている。
X軸アクチュエータ35Xは保持ヘッド35をX方向に、Y軸アクチュエータ35Yは保持ヘッド35をY方向に、Z軸アクチュエータ35Zは保持ヘッド35をZ方向に、所定の速度で移動させ、所定の場所で静止させるものである。
保持ヘッド35Hは、補充用チップCbを一時的に保持するものである。
具体的には、保持ヘッド35Hは、その下面が軟質または硬質の部材で構成されており、当該部材の表面の粘着力や負圧吸引力、静電気力等により、補充用チップCbの上面を保持したり、保持を解除したりすることができる。
【0040】
制御部39は、転写用キャリア準備装置3の各部を制御するものである。
具体的には、制御部39は、下記の機能を有している。
・リペア位置出力装置2から出力されたリペア対象部Cxの位置情報Jを取得する。
・キャリア保持部31やチップ供給基板保持部32の切替バルブを制御して、転写用キャリアW2やチップ供給基板W3を保持したり、保持を解除する。
・撮像カメラ33,34から取得したアライメントマークM2,M3を含む画像に基づいて、リペア対象基板W1内に設定された一括処理エリアR(本例ではR1~R4)毎に、それぞれのエリア内のリペア対象部Cxと補充用チップCbとが同じ位置関係となる様に転写用キャリアW2上の補充用チップCbの配置位置J2を算出する。具体的には、リペア対象部Cxと線対称となる様に、補充用チップCb配置する座標を算出する。より具体的には、リペア対象部Cxの配置情報Jに基づいて、一括処理エリアRに対応させた転写用キャリアW2毎のアドレス情報等を紐付けた、補充用チップCbの配置情報J2を算出し、当該配置情報J2に基づいて転写用キャリアW2上に補充用チップCb配置する。
・ピックアンドプレース部35を制御し、補充用チップCbの配置位置J2に従って、補充用チップCbをチップ供給基板W3側から転写用キャリアW2側に転写させる。
・一括処理エリアRに対応させた転写用キャリアW2毎のアドレス情報等を紐付けた、補充用チップCbの配置情報J2を出力する。
より具体的には、制御部39は、コンピュータとそのプログラムで構成されている。
【0041】
この様な構成をしているため、転写用キャリア準備装置3を用いて準備した転写用キャリアW2は、詳細を後述するチップ転写において、リペア対象基板W1と位置合わせして対向させると、全てのリペア対象部Cxと補充用チップCbとが同じ位置関係となる。
【0042】
表面状態改質装置4は、粘着層B上に補充用チップCbを保持させた転写用キャリアW2の、補充用チップCbが並べられていない粘着層Bの露出部の表面状態を改質するものである。
【0043】
具体的には、表面状態改質装置4は、転写用キャリアW2のオモテ面に対してプラズマ処理を行い、粘着層Bの露出部の表面に微小な凹凸形状を形成する構成を備えている。
【0044】
図5は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す断面図である。図5(a)には、表面状態改質装置4を用いて転写用キャリアW2の表面を改質している様子が示されている。図5(b)には、表面状態改質装置4を用いて転写用キャリアW2の表面を改質した後の様子が示されている。
【0045】
より具体的には表面状態改質装置4は、キャリア保持部41、プラズマ照射部42を備えている。
【0046】
キャリア保持部41は、転写用キャリアW2を所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、キャリア保持部31は、転写用キャリアW2のオモテ面(補充用チップCbおよび粘着層B)がプラズマ照射部42側に向くように、転写用キャリアW2を保持するものである。
より具体的には、キャリア保持部41は、上面(つまり、転写用キャリアW2のウラ面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、上面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、転写用キャリアW2のウラ面側を負圧状態にして保持するものである。
【0047】
プラズマ照射部42は、転写用キャリアW2のオモテ面に形成された粘着層Bの表面状態を改質するものである。
具体的には、プラズマ照射部42は、チャンバーと呼ばれる密閉空間や半密閉空間内を真空ないし減圧状態にして反応ガスを導入し、当該空間の内部または周囲に配置した電極に対して交流の高電圧を印加することで、当該空間内にプラズマ(電子、イオン、ラジカル等)が発生・充満させ、当該空間内から外部にプラズマを放出(つまり、照射)するものである。
より具体的には、プラズマ照射部42は、反応ガスとしてアルゴンガスや酸素、CF4ガス等を用いるものが例示できる。
【0048】
表面状態改質装置4は、この様な構成をしているため、粘着層Bの露出部の表面に対してアブレーションや化学エッチングを行うことで、当該露出部の表面に微小な凹凸形状を形成(つまり、表面状態を改質)することができる。
【0049】
チップ転写装置5は、リペア対象基板W1のリペア対象部Cxと、転写用キャリアW2に保持された補充用チップCbとを位置合わせして対向させ、補充用チップCbを転写用キャリアW2からリペア対象基板W1に転写(つまり、実装)させるものである。
【0050】
具体的には、チップ転写装置5は、リペア位置出力装置2から出力されたリペア対象部Cxの配置情報Jと、転写用キャリア準備装置3から出力された転写用キャリアW2に紐づけた配置情報J2とを取得し、リペア対象基板W1に付されたアライメントマークM1と転写用キャリアW2に付されたアライメントマークM2とを認識し、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを位置合わせして対向させ、転写用キャリアW2からリペア対象基板W1に熱や荷重を加えた後、転写用キャリアW2を引き剥がすことで、補充用チップCbを転写用キャリアW2からリペア対象基板W1に転写させる構成を備えている。なお、補充用チップCbの転写は、一括処理エリアR毎に一括で行われる。
【0051】
図6は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。図6には、本発明に係るチップ転写装置5の概略構成とチップ転写の動作イメージが示されている。
【0052】
より具体的には、チップ転写装置5は、基板保持台51、キャリア保持部52、撮像カメラ53,54、移動部55、制御部56等を備えている。
【0053】
基板保持台51は、リペア対象基板W1を所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、基板保持台51は、リペア対象基板W1の下面を支え水平状態で保持するものである。より具体的には、基板保持台51は、保持面(つまり、リペア対象基板W1の下面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、当該保持面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、リペア対象基板W1の下面側を負圧状態にして保持するものである。
【0054】
キャリア保持部52は、転写用キャリアW2を所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、キャリア保持部52は、転写用キャリアW2のウラ面を支え水平状態で保持するものである。より具体的には、キャリア保持部52は、保持面(つまり、転写用キャリアW2のウラ面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、当該保持面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、転写用キャリアW2のウラ面側を負圧状態にして保持するものである。また、キャリア保持部52は、転写用キャリアW2を所定の温度に加熱する手段(ヒータ等)を備えている。
【0055】
撮像カメラ53は、リペア対象基板W1の上面にあるアライメントマークM1を所定の観察倍率で撮像するもの(つまり、認識手段)である。
具体的には、撮像カメラ53はリペア対象基板W1の上方に配置され、リペア対象基板W1の上面の一部ないし全体を見下ろす様に配置されている。
【0056】
撮像カメラ54は、転写用キャリアW2のオモテ面にあるアライメントマークM2を所定の観察倍率で撮像するもの(つまり、認識手段)である。
具体的には、撮像カメラ54は、転写用キャリアW2の上方に配置され、転写用キャリアW2のオモテ面の一部ないし全体を見下ろす様に配置されている。
そして、撮像カメラ53,54は、撮像した画像に対応する映像信号や画像データを制御部39に出力する。なお、撮像カメラ53,54は、装置フレーム(不図示)等に連結金具等を介して固定されている。
【0057】
移動部55は、リペア対象基板W1に対して転写用キャリアW2を相対的に移動させたり、撮像カメラ53,54の位置を変更するものである。
具体的には、移動部55は、制御部56の指令に基づいて、キャリア保持部52をφ方向に回転させて上下反転させたり、XYZθ方向に所定量を移動や回転させて所定の位置や姿勢で静止させる機構が例示できる。
【0058】
制御部56は、チップ転写装置5の各部を制御するものである。
具体的には、制御部56は、下記の機能を有している。
・リペア位置出力装置2から出力されたリペア対象部Cxの位置情報Jを取得する。
・転写用キャリア準備装置3から出力された、転写用キャリアW2毎のアドレス情報等を紐付けた、補充用チップCbの配置情報J2を取得する。
・基板保持台51やキャリア保持台52の切替バルブを制御して、リペア対象基板W1や転写用キャリアW2を保持したり、保持を解除する。
・リペア対象基板W1内に設定された一括処理エリアR(本例ではR1~R4)毎に、撮像カメラ53,54から取得したアライメントマークM1,M2を含む画像に基づいて、リペア対象基板W1に対して転写用キャリアW2を位置合わせして対向配置する。具体的には、転写用キャリアW2をX軸周り(つまり、φ方向)に反転させてオモテ面を下に向け、アライメントマークM1,M2が重なるようにリペア対象基板W1と転写用キャリアW2のオモテ面同士を対向配置させて位置合わせする。そうすることで、リペア対象部Cxに補充用チップCbを同じ位置関係で重ね合わせることができる。
・キャリア保持台52に内蔵されたヒータの温度を調節する。
・リペア対象基板W1側に向けて転写用キャリアW2を加圧し、補充用チップCbをチップ供給基板W3側から転写用キャリアW2側に転写させる。
・リペア対象基板W1から転写用キャリアW2を離隔させ、転写用キャリアW2から補充用チップCbを引き剥がす。
より具体的には、制御部56は、コンピュータとそのプログラムで構成されている。
【0059】
チップ転写装置5は、この様な構成をしているため、リペア対象基板W1のリペア対象部Cxと転写用キャリアW2に保持された補充用チップCbとを位置合わせして対向させ、転写用キャリアW2からリペア対象基板W1に補充用チップCbを転写させることができる。
【0060】
移載ロボット(不図示)は、リペア対象基板W1や転写用キャリアW2を保持して、所望の場所に移動するものである。具体的には、移載ロボットは、リペア対象基板W1や転写用キャリアW2のウラ面を支持しつつ吸着保持したり、外周側面を把持(サイドクランプ)したりしつつ、所定の場所から別の場所に移動させ、吸着保持や把持を解除する構成が例示できる。より具体的には、移載ロボットとして、リペア対象基板W1や転写用キャリアW2を保持するハンド部と、ハンド部を水平方向や上下方向に移動させる多軸アクチュエータ(多軸ロボット、多関節ロボットとも言う)を備えている。
【0061】
[動作フロー]
以下に、上述のチップリペアシステム1を用いて、リペア処理が必要なリペア対象部Cxを有するリペア対象基板W1に補充用チップCbを実装するチップリペア方法について、動作フローを例示しつつ詳細な手順の説明を行う。
【0062】
図7は、本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。
【0063】
本発明に係るチップリペア方法は、転写用キャリア準備ステップs1と、チップ転写ステップs2とを有している。
転写用キャリア準備ステップs1では、補充用チップCbを保持させた転写用キャリアW2を準備する。
チップ転写ステップs2は、リペア対象基板W1のリペア対象部Cxと、転写用キャリアW2に保持された補充用チップCbとを位置合わせして対向させ、当該補充用チップCbを転写用キャリアW2からリペア対象基板W1に転写させる。
【0064】
図8は、本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。図8には、本発明にかかる転写用キャリア準備ステップs1の詳細フローが示されている。
【0065】
具体的には、転写用キャリア準備ステップs1では、次のような処理を行う。
先ず、リペア対象基板W1におけるリペア対象部Cxの配置情報Jを取得する(ステップs11)。リペア対象部Cxの配置情報Jは、例えば上述のリペア位置出力装置2を用いて出力させたものを、上述の転写用キャリア準備装置2にて取得する。
【0066】
次に、転写用キャリア準備装置2を用いて、転写用キャリアW2上のどこに補充用チップCbを配置させるかを算出する(ステップs12)。このとき、チップ転写の際にリペア対象部Cxと補充用チップCbとを対向させた状態で全てのリペア対象部Cxと補充用チップCbとが線対称となる様に、補充用チップCbの配置情報J2を算出する。
【0067】
そして、転写用キャリア準備装置2では、算出した補充用チップCbの配置情報J2に従って、ピックアッププレース部35によりチップ供給基板W3から転写用キャリアW2の所定位置に補充用チップCbを配置して保持させる(ステップs13)。
【0068】
その後、上述の表面状態改質装置4を用いて、転写用キャリアW2の補充用チップCbが並べられていない粘着層Bの露出部の表面状態を改質する(ステップs14)。
具体的には、図5(a)に示す様に、転写用キャリアW2のオモテ面(つまり、粘着層Bの露出部Bn)に対してプラズマ照射部42からプラズマPを所定時間、照射する。そうすることで、図5(b)に示す様に、補充用チップCbが配置されていない、粘着層Bの露出部の表面Bsには微小な凹凸形状を形成される。
【0069】
図9は、本発明を具現化する形態の一例におけるフロー図である。図9には、本発明にかかるチップ転写ステップs2の詳細フローが示されている。
【0070】
具体的には、チップ転写ステップs2では、チップ転写装置5を用いて下述のような処理を行う。
先ず、リペア対象基板W1におけるリペア対象部Cxの配置情報Jをリペア位置出力装置2から取得し、リペア対象基板W1を基板保持台51で保持する(ステップs21)。
続いて、転写用キャリアW2毎のアドレス情報等を紐付けた、補充用チップCbの配置情報J2を転写用キャリア準備装置3から取得し、転写用キャリアW2をキャリア保持台52で保持する(ステップs22)。
そして、リペア対象基板W1のアライメントマークM1と転写用キャリアW2のアライメントマークM2を読み取り、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを位置合わせして対向配置する(ステップs23)。このとき、リペア対象基板W1内に設定された一括処理エリアR(本例ではR1~R4)毎に、それぞれのエリアに対応した転写用キャリアW2を保持し、位置合わせして対向配置する。
【0071】
その後、リペア対象基板W1側に転写用キャリアW2を押し付け、転写用キャリアW2上に配置された補充用チップCbをリペア対象基板W1側に転写する(ステップs24)。そして、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを離隔し(ステップs25)、転写用キャリアW2を搬出する(ステップs26)。
そして、次の一括処理エリアRに転写させるかどうかを判定し(ステップs27)、転写を行う場合は上述のステップs22~s27を繰り返す。転写を行わない場合は、リペア対象基板W1を搬出し(ステップs28)、一連のフローを終了する。
【0072】
図10は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す断面図である。図10(a)には、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを位置合わせして対向配置させたとき(ステップs23)の状態が、図10(b)には、補充用チップCbをリペア対象基板W1側に転写しているとき(ステップs24)の状態が、図10(c)には、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを離隔した後(ステップs25)の状態が、それぞれ図示されている。
【0073】
この様な本発明に係るチップリペア方法およびチップリペアシステム1であれば、補修用チップをリペアすべき箇所が不規則かつ多数ある場合でも、迅速かつ安定した処理を行い、生産性を向上させることができる。
【0074】
[表面改質について]
さらに、上述の表面状態改質装置4および表面改質ステップs14により、転写用キャリアW2のオモテ面に対してプラズマ処理を行い、粘着層Bの露出部の表面に微小な凹凸形状を形成するので、リペア対象基板W1上に既に実装されている正常チップCaとの密着性を低減ないし無くすことができる。そのため、正常チップCaとリペア対象基板W1との密着度が弱い場合であっても、チップ転写後の転写用キャリアW2の引き剥がしをスムーズに行えるだけでなく、正常チップCaの位置ずれや落脱を防止することができるので好ましい。
【0075】
なお上述では、粘着層Bの露出部の表面改質の具体例として、プラズマ処理を例示した。プラズマ処理であれば、粘着層Bのごく僅かな表層部に限定して、迅速かつ確実な改質処理が行えるので好ましい。
しかし、表面改質はプラズマ処理に限定されず、他の手段や方法により、粘着層Bの露出部の表面の粘着力を弱めても良い。例えば、粘着層Bの露出部の表面にレーザビームをスキャン照射して、微小な凹凸を形成しても良い。或いは、ドライアイスや水、氷等の微粒や、離型剤(シリコン)等を噴霧させて、表面に微小な凹凸を形成させても良い。
【0076】
なお上述では、本発明を具現化する上で、粘着層Bの露出部の表面改質を行う構成および手順を例示した。しかし、正常チップCaとリペア対象基板W1との密着度が極めて強い場合、転写用キャリアW2の引き剥がしに要する時間がさほど増えず、正常チップCaの位置ずれや落脱が生じることも無い。この様な場合であれば、表面改質は必須ではなく省略しても良く、迅速かつ安定した処理を行い、生産性を向上させることができる。
【0077】
なお表面状態改質装置4は、転写用キャリア準備装置3内に備えられていても良いし、チップ転写装置4内に備えられていても良いし、転写用キャリアW2を転写用キャリア準備装置3からチップ転写装置5に搬送する搬送装置(移載ロボットなど)や転写用キャリアW2の搬送系路に備えられていても良い。
【0078】
[一括処理について]
なお上述では、リペア対象基板W1には複数のリペア対象部Cxを有する一括処理エリアRが複数設定されており、一括処理エリアRが転写用キャリアW2と対応している
構成を示した。そして、転写用キャリア準備ステップs1では、一括処理エリアR内の複数のリペア対象部Cxの配置情報Jに基づいて、複数の補充用チップCbを転写用キャリアW2に配置して保持させ、チップ転写ステップs2では、一括処理エリアR内の複数のリペア対象部Cxに対して、転写用キャリアW2から複数の補充用チップCbを一括で転写させる手順を例示した。
【0079】
この様な構成及び手順によれば、リペア対象基板W1が大面積であっても、一括処理エリアRの縦横寸法や面積を限定し、複数のエリアに分割して処理するので、補充用チップCbに対して加熱および加圧を行う条件をエリア内で均一化しやすくなり、好ましい。また、一括処理エリアR内において補充用チップCbの多少に関わらず、正常チップCaと補充用チップCbに対して加熱および加圧を行うことができる。そのため、各補充用チップCbにかかる熱や荷重は、補充用チップCbの多少の配置に影響されず、常に同じ条件を繰り返し再現することができるので、好ましい。また、一括処理エリアR内に複数の正常チップCaと補充用チップCbが配置されていれば、加圧した荷重が各チップに分散されるので、微荷重(ゼロ荷重とも言う)で圧着・転写させることができるので、好ましい。
【0080】
[一括処理エリアについて]
なお上述では、リペア対象基板W1に一括処理エリアRが複数(本例ではR1~R4の4つ)設定されている構成を示した。
この様な構成であれば、一括処理エリアR(R1~R4)毎に位置決めし、複数の補充用チップCbを一括して転写をするため、補充用チップCbが多く含まれていても処理時間が増えず、迅速に処理ができるので好ましい。また、一括処理エリアRが多数設定されていても、転写用キャリア準備装置3を複数備え、転写用キャリアW2に補充用チップCbを配置する作業をそれぞれ並列的に行う構成とすることができる。そうすることで、より迅速な処理が可能となるので好ましい。
【0081】
しかし、リペア対象基板W1に対して一括処理エリアRをどのように分割して複数設定するかは、転写用キャリアW2の有効処理エリアの縦横寸法とリペア対象基板W1の縦横寸法やリペア対象部Cxの分布範囲等とに基づいて、適宜決定すれば良い。このとき、重複エリアが生じないように分割しても良いし、部分的にオーバーラップする様に設定しても良い。
【0082】
なお上述では、リペア対象基板W1に一括処理エリアRが複数設定されている構成を示したが、リペア対象基板W1がさほど大面積でなければ、転写用キャリアW2がリペア対象基板W1と同様のサイズで、全てのリペア対象部Cxに対して補充用チップCbを一度に転写させる形態であっても良い。
【0083】
[変形例]
[チップ転写の位置合わせについて]
なお上述では、チップ転写装置5における認識手段として、撮像カメラ53,54を備え、アライメントマークM1,M2を別々に撮像する構成を例示した。
しかし、本発明を具現化する上では、アライメントマークM1,M2を同じ認識手段で撮像する構成であっても良い。
具体的には、認識手段として、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2との間に位置し、アライメントマークM1とアライメントマークM2とを同時に撮像するもの(いわゆる、2視野カメラ)を例示する。
【0084】
2視野カメラは、1つの撮像素子に入射・結像される撮像エリアを2分割し、一方の撮像エリアでは上方を、他方の撮像エリアでは下方を撮像する構成としたものである。
具体的には、2視野カメラは、位置合わせするリペア対象基板W1と転写用キャリアW2を対向配置させてその間に2視野カメラのレンズ先端を配置させ、これらに付されたアライメントマークM1,M2を同時に撮像し、撮像した画像に対応する映像信号や画像データを制御部39に出力する。
【0085】
この様な構成の認識手段であれば、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2とを対向配置させた状態で位置合わせし、位置合わせ後に駆動させるアクチュエータ(軸数ともいう)を減らしたり、駆動させるアクチュエータの移動ストロークを短くしたりでき、チップ転写の位置精度を向上させることができるので、好ましい。
【0086】
[チップ転写の位置合わせ/位置情報について]
なお上述では、チップ転写装置5におけるリペア対象基板W1と転写用キャリアW2との位置合わせにおいて、アライメントマークM1,M2を認識する構成を示した。
しかし、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2の位置合わせは、アライメントマークM1,M2以外の位置情報を用いても良い。
【0087】
例えば、リペア対象基板W1に付されているアライメントマークM1に代えて、リペア対象基板W1のリペア対象部Cxの位置情報Jを算出して用いても良い。或いは、リペア対象基板W1に既に実装されている実装済の良品チップCaの位置情報Jを算出して用いても良い。一方、転写用キャリアW2に付されているアライメントマークM21に代えて、転写用キャリアW2に保持されている補充用チップCbの位置情報J2を算出して用いても良い。
【0088】
この様な構成の認識手段を用いてチップ転写を行えば、リペア対象部Cxや補充用チップCbが微小であっても、高精度に位置合わせを行うことができるので、好ましい。
【0089】
しかし、本発明を具現化する上では、認識手段は必須の構成では無く、リペア対象基板W1や転写用キャリア2の外形が所定の位置に揃うように、リペア対象基板W1と転写用キャリアW2の側面をクランプして位置合わせする構成であっても良い。
【0090】
[転写用キャリアの準備について]
なお上述では、転写用キャリア準備装置3の一例として、ピックアンドプレース工法により暫定的に保持(仮置き)する構成を示した。しかし、本発明を具現化する上で、この様な構成に限らず、下述の様な構成(レーザリフトオフ工法とも言う)の転写用キャリア準備装置3Bであっても良い。
【0091】
転写用キャリア準備装置3Bは、補充用チップCbにレーザビームLBを照射し、補充用チップCbをチップ供給基板W3から1つずつ転写用キャリアW2の所定位置に転写して配置する装置である。
【0092】
図11は、本発明を具現化する形態の別の一例の要部を示す概略図である。図11には、転写用キャリア準備装置3Bの概略が示されている。
【0093】
具体的には、転写用キャリア準備装置3Bは、キャリア保持部31、チップ供給基板保持部32B、撮像カメラ33,34、レーザ転写部36、移動部37、制御部39B等を備えている。
【0094】
キャリア保持部31は、転写用キャリアW2を所定の姿勢で保持するものである。
具体的には、キャリア保持部31は、転写用キャリアW2のウラ面を支え水平状態で保持するものである。
より具体的には、キャリア保持部31は、上面(つまり、転写用キャリアW2のウラ面と接する側)が平坦な板状部材で構成されており、当該上面には細孔や溝が形成されている。これら細孔や溝は、切替バルブ等を介して負圧吸引手段と接続されており、転写用キャリアW2のウラ面側を負圧状態にして保持するものである。
【0095】
チップ供給基板保持部32Bは、チップ供給基板W3を所定の姿勢で保持するものである。チップ供給基板W3は、補充用チップCbを供給するものである。チップ供給基板W3の下面には補充用チップCbが所定ピッチで多数配列されている。
具体的には、チップ供給基板保持部32Bは、キャリア保持部31で保持した転写用キャリアW2の上方で所定の間隔Gを維持しつつ、チップ供給基板W3を対向配置させる構成を備えている。
より具体的には、チップ供給基板保持部32Bは、チップ供給基板W3の補充用チップCbが配列されている領域より外側の外周部を下面から支える枠体や保持機構(不図示)を備えている。この枠体は、上面の内周側が凹んだ略L字状の断面形状(点線楕円内を参照)をしており、水平方向や上下方向の位置ずれを規制する保持機構(不図示)を備えている。保持機構は、チップ供給基板W3を水平方向または上下方向から挟持したり、負圧や静電力等によりチップ供給基板W3が位置ずれしないようにするものである。
【0096】
撮像カメラ33は、転写用キャリアW2のオモテ面にあるアライメントマークM2を所定の観察倍率で撮像するものである。
具体的には、撮像カメラ33は、転写用キャリアW2の上方に配置され、転写用キャリアW2のオモテ面の一部ないし全体を見下ろす様に配置されている。
【0097】
撮像カメラ34は、チップ供給基板W3の下面にあるアライメントマークM3を所定の観察倍率で撮像するものである。
具体的には、撮像カメラ34は、チップ供給基板W3の下方に配置され、チップ供給基板W3の下面の一部ないし全体を見上げる様に配置されている。
そして、撮像カメラ33,34は、撮像した画像に対応する映像信号や画像データを制御部39Bに出力する。なお、撮像カメラ33,34は、装置フレーム(不図示)等に連結金具等を介して固定されている。
【0098】
レーザ転写部36は、補充用チップCbをチップ供給基板W3から1つずつ、レーザビームを照射して転写用キャリアW2の所定位置に転写する装置である。
具体的には、レーザ転写部36は、補充用チップCbを転写する前の転写用キャリアW2と、補充用チップCbを多数備えたチップ供給基板W3とを位置合わせして対向配置させ、チップ供給基板W3側から補充用チップCbにレーザビームを照射することで、補充用チップCbをチップ供給基板W3側から転写用キャリアW2側に転写させる。
より具体的には、レーザ転写部36は、レーザ発振器36L、ビーム走査部36S等を備えている。
【0099】
レーザ発振器36Lは、レーザビームLBを出力するものである。
具体的には、レーザ発振器36Lは、制御部39Bからの制御信号に基づいてレーザビームLBのパワーや照射ON/OFFが制御される。
ビーム走査部36Sは、レーザビームLBの照射位置を変更するものである。具体的には、ガルバノスキャナと呼ばれる、ミラーとその回転角度を変更する機構を備えたものが例示できる。より具体的には、ビーム走査部36Sは、転写用キャリアW2に転写させる補充用チップCbが配置されている範囲をカバーするように、レーザビームLBの照射位置をXY方向に変更できる。
【0100】
移動部37は、転写用キャリアW2やレーザ転写部36と、チップ供給基板W3とを相対移動させるものである。
具体的には、移動部37は、チップ供給基板W3を保持しているチップ供給基板保持部32Bの枠体をXY方向に移動・静止させたり、θ方向に回転・静止させる構成をしている。より具体的には、移動部37は、XYθステージ機構が例示できる
制御部39Bは、転写用キャリア準備装置3Bの各部を制御するものである。
具体的には、制御部39Bは、下記の機能を有している。
・リペア位置出力装置2から出力されたリペア対象部Cxの位置情報Jを取得する。
・キャリア保持部31の切替バルブやチップ供給基板保持部32Bの保持機構を制御して、転写用キャリアW2やチップ供給基板W3を保持したり、保持を解除したりする。
・撮像カメラ33,34から取得した画像に基づいて移動部37を制御し、転写用キャリアW2とチップ供給基板W3とを位置合わせして対向配置させる。
・レーザ転写部36を制御して、補充用チップCbにレーザビームLBを照射し、補充用チップCbをチップ供給基板W3側から転写用キャリアW2側に転写させる。
・一括処理エリアRに対応させた転写用キャリアW2毎のアドレス情報等を紐付けた、補充用チップCbの配置情報J2を出力する。
より具体的には、制御部39Bは、コンピュータとそのプログラムで構成されている。
【0101】
図12は、本発明を具現化する形態の別の一例の要部を示す断面図である。
である。図12(a)(b)には、レーザリフトオフ工法によりチップ転写する様子が例示されている。図12(a)には、チップ転写前の転写用キャリアW2とチップ供給基板W3とが位置合わせして対向配置されており、転写対象となる補充用チップCbに向けてレーザビームLBをチップ供給基板W3越しに照射している様子が示されている。図12(b)には、レーザビームLBが照射された補充用チップCbが、チップ供給基板W3側から転写用キャリアW2に移動(つまり、転写)された後の様子が示されている。なお、レーザビームLBが照射されていない補充用チップCbは、チップ供給基板W3側に保持されたままである。
【0102】
なお上述では、転写用キャリア準備装置3Bとして、1枚の転写用キャリアW2に対して補充用チップCbを配置する構成を示したが、複数枚の転写用キャリアW2に対して補充用チップCbを配置する構成であっても良い。或いは、チップリペアシステム1として、転写用キャリア準備装置3Bを複数台備え、並列処理により転写用キャリアW2を準備する構成としても良い。
【0103】
[リペア位置出力について]
なお上述では、リペア対象基板W1のリペア対象部Cxの配置情報Jを出力する構成として、リペア位置出力装置2(具体的には、光学的検査装置)を例示した。本発明を具現化する上で、リペア位置出力装置2は、光学的検査装置に限定されず、種々の変形例を取り得る。例えば、上述の撮像カメラ22に代えてラインセンサや変位センサ等を備えた構成であっても良いし、電気プローブ検査等を用いた電気的検査(導通検査や絶縁検査など)等により、位置情報Jを取得・出力する構成であっても良い。
【符号の説明】
【0104】
1 チップリペアシステム
2 リペア位置出力装置(検査装置など)
3,3B 転写用キャリア準備装置
4 表面状態改質装置
5 チップ転写装置
21 基板保持台
22 撮像カメラ
23 処理部
24 移動部
31 キャリア保持部
33,32B チップ供給基板保持部
33,34 撮像カメラ
35 ピックアンドプレース部
35H 保持ヘッド
36 レーザ転写部
37 移動部
39,39B 制御部
41 キャリア保持部
42 プラズマ照射部
51 基板保持台
52 キャリア保持台
53,54 撮像カメラ
55 移動部(ボンディングヘッド、加熱・加圧機構)
56 制御部
W1 リペア対象基板
W2 転写用キャリア
W3 チップ供給基板
Ca 良品チップ
Cx リペア対象部(不良チップ)
Cb 補充用チップ
R 一括処理エリア
M1,M2,M3 アライメントマーク
G ギャップ(隙間)
B 粘着層
Bn 粘着層(未改質の表面)
Bs 改質された粘着層の表面(プラズマ処理等の後)
J リペア対象部の配置情報
J2 補充用チップの配置情報
LB レーザビーム
図1
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