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特許7453205三次元スキャナ、その制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】三次元スキャナ、その制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021200783
(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公開番号】P2023086340
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】反本 啓介
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151239(JP,A)
【文献】特開2014-083397(JP,A)
【文献】国際公開第2005/103658(WO,A1)
【文献】特開2008-046361(JP,A)
【文献】特開2010-243438(JP,A)
【文献】特開2018-004282(JP,A)
【文献】特開2016-167698(JP,A)
【文献】特開2010-054870(JP,A)
【文献】特許第4473337(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合焦法を用いて対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナであって、
筐体の出射端面から前記対象物に対して光を出射するための光源と、
前記対象物で反射された前記光源からの光を検出するセンサと、
前記対象物と前記センサとの間に設けられ、前記対象物に対する焦点位置を変化させる焦点可変レンズと、
前記光源および前記センサと前記焦点可変レンズとの間に設けられ、前記光源から前記対象物に至る光路と、前記対象物から前記センサに至る光路とを分ける偏光ビームスプリッタと、
前記焦点可変レンズと前記対象物との間に設けられ、前記対象物に至る光、および前記対象物から反射される光が通過する波長板と、
前記対象物の三次元の形状情報を取得する過程で、前記焦点可変レンズの前記焦点位置を変化させる制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記焦点可変レンズの前記焦点位置に基づいて、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、三次元スキャナ。
【請求項2】
前記焦点可変レンズの前記焦点位置を検出する焦点位置検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記焦点位置検出部で検出した前記焦点位置に基づいて、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、請求項1に記載の三次元スキャナ。
【請求項3】
前記焦点位置検出部は、前記焦点可変レンズの位置を検出するレンズ位置センサを含み、
前記制御部は、前記レンズ位置センサからの出力に基づいて、前記焦点可変レンズの前記焦点位置を特定する、請求項2に記載の三次元スキャナ。
【請求項4】
前記焦点位置検出部は、前記光源からの光の一部が照射される基準部を含み、
前記制御部は、前記基準部で反射した光を検出した前記センサの一部からの出力に基づいて、前記焦点可変レンズの前記焦点位置を特定する、請求項2に記載の三次元スキャナ。
【請求項5】
前記制御部は、前記焦点可変レンズの前記焦点位置を変化させる制御信号に基づいて、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、請求項1に記載の三次元スキャナ。
【請求項6】
前記制御部は、前記光源の発光量を変更して、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項7】
前記光源から前記対象物に至る光路、および前記対象物から前記センサに至る光路のうち少なくとも一方に調光フィルタをさらに備え、
前記制御部は、前記調光フィルタを透過する光量を変更して、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項8】
前記制御部は、前記センサで検出する期間を変更して、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項9】
前記制御部は、予め定められた変換テーブルに基づき、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項10】
前記変換テーブルは、前記焦点可変レンズの前記焦点位置が、前記出射端面に近い場合、前記光源からの光量を低く、前記焦点可変レンズの前記焦点位置が、前記出射端面から遠い場合、前記光源からの光量を高くしてある、請求項9に記載の三次元スキャナ。
【請求項11】
前記制御部は、校正作業により前記変換テーブルを変更可能である、請求項9または請求項10に記載の三次元スキャナ。
【請求項12】
前記制御部は、撮像画像に基づき前記変換テーブルを変更可能である、請求項9または請求項10に記載の三次元スキャナ。
【請求項13】
前記制御部は、撮像画像に対する機械学習による画像認識に基づき前記変換テーブルを変更可能である、請求項12に記載の三次元スキャナ。
【請求項14】
前記対象物は、口腔内組織である、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の三次元スキャナ。
【請求項15】
筐体の出射端面から対象物に対して光を出射するための光源と、前記対象物で反射された前記光源からの光を検出するセンサと、前記対象物と前記センサとの間に設けられ、前記対象物に対する焦点位置を変化させる焦点可変レンズと、前記光源および前記センサと前記焦点可変レンズとの間に設けられ、前記光源から前記対象物に至る光路と、前記対象物から前記センサに至る光路とを分ける偏光ビームスプリッタと、前記焦点可変レンズと前記対象物との間に設けられ、前記対象物に至る光、および前記対象物から反射される光が通過する波長板と、前記対象物の三次元の形状情報を取得する過程で、前記焦点可変レンズの前記焦点位置を変化させる制御を行う制御部と、を備え、合焦法を用いて前記対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナの制御方法であって、
前記焦点可変レンズの前記焦点位置に関する情報を取得するステップと、
取得した情報に基づいて、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更するステップと、を含む制御方法。
【請求項16】
筐体の出射端面から対象物に対して光を出射するための光源と、前記対象物で反射された前記光源からの光を検出するセンサと、前記対象物と前記センサとの間に設けられ、前記対象物に対する焦点位置を変化させる焦点可変レンズと、前記光源および前記センサと前記焦点可変レンズとの間に設けられ、前記光源から前記対象物に至る光路と、前記対象物から前記センサに至る光路とを分ける偏光ビームスプリッタと、前記焦点可変レンズと前記対象物との間に設けられ、前記対象物に至る光、および前記対象物から反射される光が通過する波長板と、を有し、合焦法を用いて対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナに含まれるコンピュータによって実行可能なプログラムであって、
前記対象物の三次元の形状情報を取得する過程で、前記焦点可変レンズの焦点位置を変化させる工程と、
前記焦点可変レンズの焦点位置に基づいて、前記対象物で反射され前記センサに至る前記光源からの光量を変更する工程と、を前記コンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナ、その制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歯科分野では、コンピュータ上で補綴物等をデジタル的に設計するため、歯の三次元の形状情報を取得する必要があり、三次元スキャナ(口腔内スキャナ)が実用化されている(特許文献1)。特許文献1に開示されている三次元スキャナは、合焦法の一種である「ドット積」の原理を使用して対象物の三次元の形状情報を取得する手持ち式スキャナである。具体的に、当該三次元スキャナでは、線状または市松模様状等のパターンを有する光(以下、パターンともいう)を対象物の表面に投影し、焦点位置を変化させながら複数回撮像した複数の画像から最も焦点の合う距離を求め、対象物の三次元の形状情報を取得している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5654583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、三次元スキャナで撮像する対象物の種類によっては、対象物に投影したパターンが鮮明に映った画像を得ることができず、合焦法に基づいて正しく焦点位置を判断することが難しかった。その結果、三次元スキャナでは、対象物を撮像して得られる三次元の形状情報の測定精度が低下する虞があった。
【0005】
本開示は、上記問題点を解決するためになされたものであり、三次元の形状情報の測定精度を向上させることができる三次元スキャナ、その制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る三次元スキャナは、合焦法を用いて対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナである。三次元スキャナは、筐体の出射端面から対象物に対して光を出射するための光源と、対象物で反射された光源からの光を検出するセンサと、対象物とセンサとの間に設けられ、対象物に対する焦点位置を変化させる焦点可変レンズと、光源およびセンサと焦点可変レンズとの間に設けられ、光源から対象物に至る光路と、対象物からセンサに至る光路とを分ける偏光ビームスプリッタと、焦点可変レンズと対象物との間に設けられ、対象物に至る光、および対象物から反射される光が通過する波長板と、対象物の三次元の形状情報を取得する過程で、焦点可変レンズの焦点位置を変化させる制御を行う制御部と、を備える。制御部は、焦点可変レンズの焦点位置に基づいて、対象物で反射されセンサに至る光源からの光量を変更する。
【0007】
本開示に係る制御方法は、筐体の出射端面から対象物に対して光を出射するための光源と、対象物で反射された光源からの光を検出するセンサと、対象物とセンサとの間に設けられ、対象物に対する焦点位置を変化させる焦点可変レンズと、光源およびセンサと焦点可変レンズとの間に設けられ、光源から対象物に至る光路と、対象物からセンサに至る光路とを分ける偏光ビームスプリッタと、焦点可変レンズと対象物との間に設けられ、対象物に至る光、および対象物から反射される光が通過する波長板と、対象物の三次元の形状情報を取得する過程で、焦点可変レンズの焦点位置を変化させる制御を行う制御部と、を備え、合焦法を用いて対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナの制御方法である。制御方法は、焦点可変レンズの焦点位置に関する情報を取得するステップと、取得した情報に基づいて、対象物で反射されセンサに至る光源からの光量を変更するステップと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、筐体の出射端面から対象物に対して光を出射するための光源と、対象物で反射された光源からの光を検出するセンサと、対象物とセンサとの間に設けられ、対象物に対する焦点位置を変化させる焦点可変レンズと、光源およびセンサと焦点可変レンズとの間に設けられ、光源から対象物に至る光路と、対象物からセンサに至る光路とを分ける偏光ビームスプリッタと、焦点可変レンズと対象物との間に設けられ、対象物に至る光、および対象物から反射される光が通過する波長板と、を有し、合焦法を用いて対象物の三次元の形状情報を取得する三次元スキャナに含まれるコンピュータによって実行可能なプログラムである。プログラムは、対象物の三次元の形状情報を取得する過程で、焦点可変レンズの焦点位置を変化させる工程と、焦点可変レンズの焦点位置に基づいて、対象物で反射されセンサに至る光源からの光量を変更する工程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る三次元スキャナは、焦点可変レンズの焦点位置に基づいて、対象物で反射されセンサに至る光源からの光量を変更するので、対象物が難撮像体であっても、当該対象物を撮像して得られる三次元の形状情報の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る三次元スキャナの構成を示す概略図である。
図2】実施の形態1に係るハンドピース内の光学構成を説明するための概略図である。
図3】三次元スキャナにおいて、焦点位置が出射端面に近い場合の撮像画像の明るさを説明するための概略図である。
図4】三次元スキャナにおいて、焦点位置が出射端面から遠い場合の撮像画像の明るさを説明するための概略図である。
図5】三次元スキャナにおいて、光源の発光量と撮像画像の状態との関係を説明するための概略図である。
図6】実施の形態1に係る三次元スキャナの焦点位置と光源の発光量との関係を説明するための概略図である。
図7】実施の形態1に係る三次元スキャナの焦点位置と光源の発光量との関係の一例を示すグラフである。
図8】実施の形態1に係る三次元スキャナの光源の調光制御を説明するためのフローチャートである。
図9】実施の形態1に係る三次元スキャナの焦点位置と光源の発光量との関係の変形例を示すグラフである。
図10】実施の形態2に係る三次元スキャナの構成を示す概略図である。
図11】実施の形態2の変形例に係る三次元スキャナの構成を示す概略図である。
図12】実施の形態3に係る三次元スキャナの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1に係る三次元スキャナは、口腔内組織(例えば、歯)の三次元の形状情報を取得するための三次元スキャナ(口腔内スキャナ)である。なお、口腔内スキャナであっても、口腔内の歯だけでなく、歯肉・粘膜・作製した歯の補綴物・インプラント用のスキャンボディ・矯正装置・各種歯科技工物等の三次元の形状情報を取得してもよい。また、三次元スキャナは、口腔内スキャナに限定されるものではなく、同様の構成を有する他の三次元スキャナについて適用することができる。たとえば、口腔内以外に人の耳の内部を撮像して、外耳内の三次元の形状情報を取得することができる三次元スキャナにも適用できる。
【0012】
[三次元スキャナの構成]
図1は、三次元スキャナ100の構成を示す。図1に示す三次元スキャナ100は、口腔内を撮像するためのハンドピース10と、ハンドピース10と接続され、取得したデータの処理および表示を行うコンピュータ30と、を含んでいる。なお、三次元スキャナは、ハンドピース10内で全ての処理を行い、表示データのみ外部のモニタに出力する構成でもよい。
【0013】
ハンドピース10には、対象物である歯にパターンを投影し、パターンが投影された対象物からの反射光を検出する光学構成と、撮像した画像を処理して三次元の形状情報を取得する制御部20と、を含んでいる。図2は、ハンドピース10内の光学構成を示す。ハンドピース10内の光学構成には、光源1、第1レンズ2、パターン生成部3、光学センサ4、ビームスプリッタ5、焦点可変レンズ6、焦点位置検出部7、第2レンズ8、およびミラー9と、を含んでいる。なお、ハンドピース10は、これ以外に別のレンズや、絞り、光学フィルタ、ウインドウ、偏光素子などの光学部品を必要に応じて設けてもよい。
【0014】
光源1は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。後述するように、光源1は、発光量を変更可能であり、例えばLEDの場合、ドライバ回路1aからLEDに供給する電流量を変更することで発光量を調整することができる。なお、光源1は、LEDやレーザ素子などを1つ設けた点光源に限定されず、複数のLEDやレーザ素子等の要素光源を基板に並べたアレイ光源であってもよい。また、三原色LEDなどの多色光源を用いてもよい。また、LEDをPWМ(Pulse Width Modulation)制御により時間的に変調し、その変調波のデューティー比を変更することや、複数の要素光源から構成されるアレイ光源のうち点灯させる要素光源の数を変更することによっても、光源1の発光量を調整することができる。本開示において特に断らない限り、「電流量の変更」と表現する際には、上述のPWM変調や、アレイ光源における要素光源の点灯数の変更を含むものとする。
【0015】
第1レンズ2は、光源1からの光を均一にしてパターン生成部3に照射する。パターン生成部3は、例えば線状または市松模様状等のパターンを有するフィルタであり、対象物の表面に投影するためのパターンを生成する。
【0016】
光学センサ4は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサなどである。光学センサ4は、パターン生成部3を通過し対象物に投影され、当該対象物で反射された光を検出する。ビームスプリッタ5は、光源1から対象物に至る光路と、対象物から光学センサ4に至る光路とを分ける光学部品である。
【0017】
焦点可変レンズ6は、焦点レンズ6aをスライダに固定し、光軸方向に延びるレール6b上をスライダが移動することで対象物での焦点位置と光学センサ4での焦点位置とを変化させている。なお、焦点には、一般的に、対象物での焦点である「物体側焦点」と、光学センサ4での焦点である「像側焦点」との2つあるが、本開示において説明する焦点位置は、特に断らない限り「物体側焦点」の位置である。具体的に、焦点可変レンズ6は、モータドライバ6cから供給される駆動信号によりモータを駆動して、スライダに固定した焦点レンズ6aを位置E~Eの間で往復運動している。焦点可変レンズ6は、焦点レンズ6aの位置を位置E~Eに変化させることで、ハンドピース10(筐体)の出射端面に近い焦点位置Zから、出射端面から遠い焦点位置Zまでの間を変化させている。
【0018】
焦点位置検出部7は、焦点可変レンズ6の焦点位置を検出する。焦点位置検出部7は、焦点位置Z~Zを直接的に検出するのではなく、焦点位置Z~Zに対応する焦点レンズ6aの位置E~Eを検出することで焦点位置Z~Zを間接的に検出している。具体的に、焦点位置検出部7は、焦点レンズ6aの位置E~Eを検出する光学式エンコーダ(レンズ位置センサ)である。なお、焦点位置検出部7は、焦点レンズ6aの位置E~Eを検出できれば、光学式エンコーダ以外の検出器でもよい。例えば磁気センサによる位置の検出などが適用できる。
【0019】
三次元スキャナ100では、後述するが、焦点位置検出部7で検出した焦点位置に基づいて光源1の発光量を変更する。具体的に、三次元スキャナ100では、光学式エンコーダで検出した焦点レンズ6aの位置E~Eに基づいて光源1に供給する電流量I~Iを変更して光源1の発光量を変更する。
【0020】
焦点可変レンズ6を通った光は、第2レンズ8、およびミラー9を経て、対象物に照射される。第2レンズ8は、焦点可変レンズ6を通った光を対象物に集光させる光学部品である。ミラー9は、光源1からの光および対象物で反射された光の方向を変更する光学部品である。第2レンズ8、およびミラー9の構成は一例であって、必要に応じて当該構成は変更される。
【0021】
制御部20は、焦点位置検出部7で検出した焦点位置と、その位置での光学センサ4の検出結果とに基づいて対象物の三次元の形状情報を演算している。制御部20は、合焦法の一種である「ドット積」の原理を用いて三次元の形状情報を取得する。特に、歯科分野において、三次元スキャナ100で撮像する対象物は口腔内組織であり、例えば歯である。歯は、エナメル質等で構成される難撮像体である。
【0022】
具体的に、歯は、材質がエナメル質である事により表面光沢を有し、半透明であるという物性を有している。そのため、三次元スキャナで歯を撮像した場合、エナメル質の半透明性により、歯に投影したパターンが鮮明に映った画像を得ることができず、合焦法に基づいて正しく焦点位置を判断するのが難しかった。また、エナメル質の表面光沢により撮像した画像が輝度飽和を起こすことで歯に投影したパターンが見えなくなったり、強い光沢点が少しぼやけた際に発生する錯乱円がパターンに干渉する事により、同様に合焦法において正しく焦点位置を判断するのが難しかった。そこで、三次元スキャナ100では、焦点位置検出部7で検出した焦点位置に基づいて光源1の発光量を変更することで、三次元の形状情報の測定精度を向上させている。
【0023】
ここで、合焦法は、特許第5654583号公報(特許文献1)で開示されている「ドット積」の他に「焦点法」、「共焦点法」、「SFF(Shape-From-Focus)法」、「DFF(Depth-From-Focus)法」など、様々な名称で呼ばれるものを含み、アルゴリズムの細部を改良したもの、パターンを投影する代わりに対象物の表面の模様で焦点位置の判定に使用するもの、パターンの代わりにピンホールやレンズアレイを用いてドット模様の光を生成するものなどの技術が、様々な文献において開示されている。いずれの技術においても撮影した画像からもっとも焦点の合う位置を計算して三次元の形状情報を求める三次元スキャナである点は共通しており、対象物の種類によって三次元の形状情報の測定精度が低下する同様の課題が生じるため、本開示における構成を適用することができる。
【0024】
制御部20は、三次元の形状情報を演算する以外に、ドライバ回路1aに制御信号を送信して光源1の発光量を制御したり、モータドライバ6cに制御信号を送信して焦点レンズ6aの位置を制御したりする。
【0025】
制御部20は、制御中枢としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUが動作するためのプログラムや制御データ等を記憶しているROM(Read Only Memory)、CPUのワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)、周辺機器との信号の整合性を保つための入出力インターフェイス等が設けられている。また、制御部20は、取得した三次元の形状情報をコンピュータ30に出力することが可能であるとともに、設定などの情報やコマンドなどをコンピュータ30から入力可能である。制御部20で実行されるプログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されても、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0026】
なお、撮像した画像を処理して三次元の形状情報を取得するための演算の少なくとも一部は、制御部20のCPUによってソフトウェアとして実現されてもよいし、当該CPUとは別に処理を行うハードウェアとして実現されてもよい。また、当該CPUやハードウェアなどの処理部のうち少なくとも一部は、ハンドピース10の内部に組み込まれていてもよい。さらに、図2ではハンドピース10にコンピュータ30と接続するためのケーブルが描かれているが、ケーブルを設けずに無線通信によってコンピュータ30と接続されてもよい。
【0027】
制御部20で得られた対象物の三次元の形状情報は、コンピュータ30の表示部に表示される。表示部は、コンピュータ30に内蔵されたディスプレイであっても、コンピュータ30に接続された据え置き式のディスプレイ、ヘッドマウント式やメガネ式のウェアラブルディスプレイなどであってもよい。三次元スキャナ100は、図示していないが、光源1、モータドライバ6c、および制御部20などを駆動する電力を供給するための電源装置も有している。
【0028】
[光源の調光制御]
次に、三次元スキャナ100において光源1の発光量を変化する制御(調光制御)について説明する。まず、三次元スキャナ100において光源1の調光制御の必要性について説明する。図3は、三次元スキャナ100において、焦点位置が出射端面に近い場合の撮像画像の明るさを説明するための概略図である。図4は、三次元スキャナ100において、焦点位置が出射端面から遠い場合の撮像画像の明るさを説明するための概略図である。
【0029】
焦点レンズ6aの位置が、図3のように位置Eの場合、光学センサ4上の一点が対象物の焦点位置Zに結像する。光学センサ4で撮像される画像の明るさは、対称物の表面において様々な角度で反射する光のうち、光学センサ4に結像する角度θ(=θ)内の光束により決まる。そのため、光束の角度θが大きいほど光学センサ4で撮像される画像は明るくなる。
【0030】
一方、焦点レンズ6aの位置が、図4のように位置Eの場合、光学センサ4上の一点が対象物の焦点位置Zに結像する。そのため、光束の角度θは、焦点位置Zの場合の角度θに比べて狭い角度θとなり、光学センサ4で撮像される画像は暗くなる。
【0031】
図3および図4において、光束の角度θは、焦点位置(Z~Z)と、ハンドピース10の先端に設けた第2レンズ8の口径Hとの比によりおおむね決まる。しかし、狭い口腔内にハンドピース10の先端を挿入しなければならない歯科分野の三次元スキャナ100においては、第2レンズ8の口径Hを大きくすることができない制約があり、焦点位置Zで結像する場合と焦点位置Zで結像する場合とで撮影画像の明るさの差が大きくなる。さらに歯科分野の三次元スキャナ100では、交差感染防止の観点から、生体に挿入する先端部分を、滅菌するためにハンドピースから着脱可能な構造をとることが有利である。しかし、図3および図4に示す第2レンズ8の口径Hの外側にあるホルダ部材の肉厚が二層になっているぶん、歯科分野の三次元スキャナ100では口径Hを大きくすることがさらにできなくなり、焦点位置による撮影画像の明るさの差が顕著となる。このような焦点位置による撮影画像の明るさの差が三次元計測結果にどのように影響するのかについて以下に図を用いて説明する。
【0032】
まず、三次元スキャナ100は、合焦法で三次元の形状情報を取得している。合焦法では、光学センサ4で撮像される画像のパターン(例えば、市松模様)の黒い部分と白い部分との明暗差(コントラスト量)でピントの合う度合いを判定(ピント判定)している。そのため、三次元スキャナ100は、光学センサ4で撮像される画像の明るさにより、取得する三次元の形状情報の測定精度に影響を与えることになる。
【0033】
図5は、三次元スキャナにおいて、光源の発光量と撮像画像の状態との関係を説明するための概略図である。図3および図4で説明したように、光源1の発光量に一定にすると、出射端面に近い焦点位置Zでは光学センサ4で撮像される画像は明くなり、エナメル質の光沢性に起因する輝度飽和の影響を受けやすくなる。逆に出射端面から遠い焦点位置Zでは光学センサ4で撮像される画像は暗くなり、測定ノノイズが増えることからエナメル質の半透明性に起因してパターンのコントラストが低下する。そのため、三次元スキャナでは、エナメル質が表面にある歯Tを撮像した場合、図5(a)に示すように、光学センサ4の輝度飽和を避ける目的で、光源1を常時暗く発光させると、出射端面に近い画像は良好であるが、出射端面から遠い画像は暗くなってしまい、パターンのコントラストが鮮明に検出できないため、測定ノイズが多くなる。なお、図5(a)では、図中上側が出射端面に近く、図中下側が出射端面から遠いものとする。
【0034】
逆に、三次元スキャナは、図5(b)に示すように、測定ノイズの増加を避ける目的で、光源1を常時明るく発光させると、出射端面から遠い画像は良好になるが、出射端面に近い画像は光学センサ4において輝度飽和となり測定エラーとなる。なお、図5(b)では、図中上側が出射端面に近く、図中下側が出射端面から遠いものとする。
【0035】
そこで、実施の形態1に係る三次元スキャナ100では、焦点可変レンズ6の焦点位置に基づいて、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更する。図6は、三次元スキャナ100の焦点位置と光源1の発光量との関係を説明するための概略図である。三次元スキャナ100は、図6のように、出射端面に近い焦点位置Zの場合、光源1の発光量を焦点位置Z、Zの場合よりも暗く(低い電流量Iで点灯)して、出射端面から遠い焦点位置Zの場合、光源1の発光量を焦点位置Z、Zの場合よりも明るく(高い電流量Iで点灯)する。つまり、制御部20は、焦点位置検出部7で検出した焦点位置Z~Z(焦点レンズ6aの位置E~Eに対応)に基づいて光源1の発光量(発光量に対応する電流量I~I)を変更する。
【0036】
そのため、三次元スキャナは、歯Tを撮像する場合、図5(c)に示すように、焦点位置が出射端面に近いとき光源1の発光量を出射端面に遠いときよりも暗くして良好な画像を取得し、出射端面から遠いとき光源1の発光量を出射端面に近いときよりも明るくして良好な画像を取得する。なお、図5(c)では、図中上側が出射端面に近く、図中下側が出射端面から遠いものとする。
【0037】
図7は、実施の形態1に係る三次元スキャナ100の焦点位置と光源1の発光量との関係の一例を示すグラフである。制御部20は、図7に示すように、焦点位置検出部7で検出した焦点位置Z~Zに対して光源1の発光量(発光量に対応する電流量I~I)が直線的に変化する変換テーブル等をあらかじめ設定しておくことで、当該変換テーブルに従い光源1の調光制御を行う。
【0038】
次に、フローチャートを用いて光源1の調光制御について説明する。図8は、実施の形態1に係る三次元スキャナ100の光源の調光制御を説明するためのフローチャートである。まず、制御部20は、ユーザが対象物のスキャンを開始した場合(例えば、起動ボタンの押下など)、モータドライバ6cを制御して焦点レンズ6aを固定したスライダをモータで駆動する(ステップS11)。制御部20は、光源1を点灯させる(ステップS12)。
【0039】
制御部20は、光学式エンコーダで焦点レンズ6aの現在位置を取得する(ステップS13)。制御部20は、光学センサ4で対象物の画像を取得する(ステップS14)。制御部20は、取得した画像が所定枚数に到達したか否かを判断する(ステップS15)。
【0040】
取得した画像が所定枚数に到達していない場合(ステップS15でNO)、制御部20は、ステップS13で取得した焦点レンズ6aの現在位置から焦点位置を特定し、図7に示したグラフの変換テーブルに基づき光源1の発光量(発光量に対応する電流量I)を変更する(ステップS16)。なお、制御部20は、焦点レンズ6aの現在位置から焦点位置を特定し変換テーブルに基づいて光源1の発光量を変更すると説明したが、焦点レンズ6aの現在位置に基づき光源1の発光量(発光量に対応する電流量I)を変更してもよい。
【0041】
取得した画像が所定枚数に到達した場合(ステップS15でYES)、制御部20は、取得した画像群から、ピント判定を行い三次元の形状情報を取得する(ステップS17)。
【0042】
制御部20は、図7に示すように、焦点位置検出部7で検出した焦点位置Z~Zに対して光源1の発光量(発光量に対応する電流量I~I)が直線的に変化する変換テーブル等を、装置製造時(つまり、工場出荷時)にあらかじめ設定しておき、メンテナンス時に当該変換テーブルを変更してもよい。例えば、経年劣化により光源1が暗くなり、キャリブレーション(校正)作業により変換テーブルを更新する。具体的に、キャリブレーション作業時、三次元スキャナ100で、白色平面板等の基準物体を撮影して光源1の発光量を評価する。例えば装置製造直後には100%であった光源1の発光量が、経年変化により80%に低下していた場合、制御部20は、図7に示す光源1の発光量(発光量に対応する電流量I~I)をそれぞれ1.25倍(=100%/80%)した変換テーブルに更新する。
【0043】
制御部20は、メンテナンス時に変換テーブルを変更する以外に、あらかじめ複数種類の変換テーブルをROMに記憶しておき、スキャンする対象物により変換テーブルを変更したり、光源の種類により変換テーブルを変更したり、撮像画像に基づき変換テーブルを変更したりしてもよい。制御部20は、例えば、スキャンの際の初めの数フレームの撮像画像で対象物の反射率を判定し、所定の反射率以上の場合(眩しすぎる場合)、より暗く発光させるよう、ROMに記憶されている複数種類の変換テーブルの中から適切な変換テーブルに変更する。
【0044】
前述の方法以外に、三次元スキャナ100の制御部20に人工知能(AI)を搭載し、機械学習したデータに基づいて撮影画像から最適な変換テーブルを判定しても良い。例えば、撮影画像が人間の口腔内であるとAIが判断するならば、口腔内用の変換テーブルを参照し、撮影画像が人間の口腔内よりも明るい石膏製の歯科技工模型であるとAIが判断するならば、口腔内用よりも発光量を抑えた変換テーブルを参照するように動作する。
【0045】
また、図7では変換テーブルの例として、焦点位置と発光量とが線形に対応する関係を示していたが、非線形に対応するような変換テーブルであってもよい。図9は、実施の形態1に係る三次元スキャナ100の焦点位置と光源の発光量との関係の変形例を示すグラフである。図9(a)では、焦点位置検出部7で検出した焦点位置Zから焦点位置Zに進むに従い、光源1の発光量(発光量に対応する電流量I~I)の変化が大きくなっている。図9(b)では、焦点位置検出部7で検出した焦点位置Zから焦点位置Zに進むに従い、光源1の発光量(発光量に対応する電流量I~I)の変化が小さくなっている。図9(c)では、焦点位置検出部7で検出した焦点位置Zの辺りで光源1の発光量が変化せず一定値となっている。このように非線形な変換テーブルとすることで、ビネッティング等によって非線形に明るさが変化するような複雑な光学系の三次元スキャナ100に対しても、精度よく三次元の形状情報を取得できるようになる。
【0046】
(実施の形態2)
実施の形態1に係る三次元スキャナ100では、焦点位置検出部7を用いて焦点可変レンズ6の焦点位置を検出し、検出した焦点位置に基づいて光源1の発光量を変更する構成について説明した。しかし、実施の形態2に係る三次元スキャナでは、焦点位置検出部7を用いて焦点可変レンズ6の焦点位置を検出せずに、焦点可変レンズ6の制御信号に基づいて光源1の発光量を変更する構成である。図10は、実施の形態2に係る三次元スキャナ100Aの構成を示す概略図である。なお、図10に示す三次元スキャナ100Aの構成において、図1で示した三次元スキャナ100の構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。
【0047】
三次元スキャナ100Aは、ハンドピース10A内の光学構成のうち焦点位置検出部7を有していない以外、図1で示した三次元スキャナ100の構成と同じである。三次元スキャナ100Aは、焦点位置検出部7で焦点可変レンズ6の焦点位置を検出する代わりに、焦点可変レンズ6の焦点位置を変化させる制御信号に基づいて、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更する。
【0048】
具体的に、制御部20は、モータドライバ6cに制御信号を送信して焦点レンズ6aの位置を制御している。そのため、モータドライバ6cに送信する制御信号に基づいて、焦点レンズ6aの位置E~Eを間接的に特定することができ、制御部20は、モータドライバ6cに送信する制御信号に基づいて、光源1の発光量を変更することができる。
【0049】
(変形例)
歯科分野において、三次元スキャナで撮像する対象物は歯であり、エナメル質等で構成される難撮像体である。そのため、偏光を利用して、半透明な難撮影体であるエナメル質に投影されたパターンをより明瞭に撮影することが有効である。そこで、偏光を利用した三次元スキャナの変形例について説明する。図11は、実施の形態2の変形例に係る三次元スキャナ100Bの構成を示す概略図である。なお、図11に示す三次元スキャナ100Bの構成において、図10で示した三次元スキャナ100Aの構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。
【0050】
三次元スキャナ100Bは、ハンドピース10B内の光学構成のうち偏光ビームスプリッタ5aと、波長板8aとをさらに設ける以外、図10で示した三次元スキャナ100Aの構成と同じである。偏光ビームスプリッタ5aは、光源1および光学センサ4と焦点可変レンズ6との間に設けられ、光源1から対象物に至る光路と、対象物から光学センサ4に至る光路とを分ける。また、偏光ビームスプリッタ5aは、プレポラライザ/ポストポラライザを追加して、偏光消光比を増加するように構成してもよい。波長板8aは、焦点可変レンズ6と対象物との間に設けられ、対象物に至る光、および対象物から反射される光が通過する。また、波長板8aは、波長板8aからのフレネル反射光が光学センサ4へ映り込むことを回避するため、光軸に対して傾いているのが好ましい。なお、波長板8aは、図11で図示しているのとは異なる方向に傾いていてもよい。さらに、波長板8aは、1/4波長板であることが好ましい。三次元スキャナ100Bは、このような構成とすることで、歯の表面で反射した必要光の偏光状態と、歯の内部で散乱反射する不要光の偏光状態が異なる現象を利用し、選択的に必要光を光学センサ4へと導光することができる。そのため、三次元スキャナ100Bは、三次元の形状情報の測定精度を向上することができる。しかし、三次元スキャナ100Bは、このような構成とすることで、エナメル質の光沢による正反射(非常に眩しい反射)が強調され、輝度飽和が生じやすくなってしまうデメリットが生じる場合もある。
【0051】
三次元スキャナ100Bでは、焦点可変レンズ6の焦点位置を変化させる制御信号に基づいて、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更するので、エナメル質の光沢による正反射(非常に眩しい反射)が強調されて光学センサ4が輝度飽和となる問題を回避できる。そのため、偏光を利用した光学系に対して、焦点位置に応じて光源1からの光量を変更する三次元スキャナの構成は、特に有用な解決手段である。したがって、図10で示した三次元スキャナ100Aだけでなく、図1に示した三次元スキャナ100など本開示で説明する他の三次元スキャナについても同様に、偏光ビームスプリッタ5aと、波長板8aとをさらに設けてもよい。
【0052】
(実施の形態3)
実施の形態1に係る三次元スキャナ100では、機械的にレンズの位置を移動させて対象物の焦点位置を変化させる構成について説明した。しかし、実施の形態3に係る三次元スキャナは、機械的にレンズの位置を移動させない焦点可変レンズを使用した構成である。図12は、実施の形態3に係る三次元スキャナ100Cの構成を示す概略図である。なお、図12に示す三次元スキャナ100Cの構成において、図1で示した三次元スキャナ100の構成と同じ構成については、同じ符号を付与して詳細な説明を繰り返さない。
【0053】
三次元スキャナ100Cでは、焦点レンズ6aをスライダに固定し、光軸方向に延びるレール6b上を移動させる焦点可変レンズ6ではなく、機械的にレンズの位置を移動させない焦点可変レンズ6として液体レンズ6dを採用している。液体レンズ6dとして、たとえば水溶液と油とを封入した容器の側面に電極を設け、当該電極に電圧を印加することで水溶液とオイルとの界面の形状を変化させて、焦点位置を変化させる方式を採用したものがある(図12では液体レンズ6dを、1枚の両凸レンズとして模式的に示しており、水溶液やオイルなどの詳細構造は省略している)。
【0054】
三次元スキャナ100Cでは、焦点可変レンズ6として液体レンズ6dを採用したことで、焦点位置検出部として光源1からの光の一部が照射される基準部Sを設けている。基準部Sには、既知の模様が形成されている。焦点位置検出部は、当該基準部Sに設けてある模様の撮像結果を利用して、液体レンズ6dの状態(焦点位置)を正確に把握することができる。
【0055】
具体的に、光源1の一部から出力された光は、液体レンズ6dを通って基準部Sに照射され、基準部Sで反射される。基準部Sで反射された光は、再び液体レンズ6dを通って光学センサ4の一部で検出される。なお、基準部Sはハンドピース10Cの筐体内に設けられているので、光源1の一部から基準部Sを経て光学センサ4の一部に至る光路が、光源1から対象物を経て光学センサ4に至る光路よりも短い。そこで、光源1から対象物を経て光学センサ4に至る光路長と、光源1の一部から基準部Sを経て光学センサ4の一部に至る光路長とを調整する光路長調整部8bが、光源1の一部から基準部Sを経て光学センサ4の一部に至る光路上に設けられている。
【0056】
光路長調整部8bは、光源1の一部から基準部Sを経て光学センサ4の一部に至る光路上の光路長を調整することができる光学部品であればよく、ガラスブロック、ライトガイド、レンズやレンズアレイ、オフセットミラー/プリズム、ダイクロイックミラー、ディレイライン、ペンタプリズムなどがある。光路長調整部8bを用いて両者の光路長をほぼ一致させることで、対象物と基準部Sの両方にて、概ね焦点の合った画像を光学センサ4にて撮像することができる。すなわち、対象物で焦点が合う位置と基準部Sで焦点が合う位置との間に対応関係を持たせることができる。そのため、光学センサ4の一部を用いて撮像した基準部Sの画像を解析し、基準部S上での焦点が合っている位置を求めることで、液体レンズ6dの状態(焦点位置)を正確に把握することができる。
【0057】
三次元スキャナ100Cでは、光学センサ4の一部で撮像した基準部Sの画像により液体レンズ6dの焦点位置を特定し、特定した液体レンズ6dの焦点位置に基づいて、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更する。なお、液体レンズ6dの制御信号に基づいて焦点位置を概ね特定できるのであれば、三次元スキャナ100Cは、液体レンズ6dの制御信号に基づいて、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更してもよい。
【0058】
(変形例)
実施の形態1~3に係る三次元スキャナでは、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更する手段として、光源1の発光量を変更すると説明した。つまり、制御部20は、光源1を駆動するドライバ回路1aを制御して、光源1に供給する電流量Iを変更して光源1の発光量を変更していた。しかし、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更する手段は、これに限られず、例えば、光源1から対象物に至る光路、および対象物から光学センサ4に至る光路のうち少なくとも一方に調光フィルタ(図12に示す調光フィルタF1,F2)をさらに設けてもよい。制御部20は、調光フィルタF1,F2を透過する光量を変更して、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更してもよい。調光フィルタF1,F2は、例えば液晶式の調光フィルタや電子シャッターなどが利用できる。さらに、制御部20は、光学センサ4で検出する期間(いわゆる露光時間/光学センサ4の内部に備わった電子シャッターの時間)を変更して、対象物で反射され光学センサ4に至る光源1からの光量を変更してもよい。
【0059】
また、実施の形態1~3に係る三次元スキャナの撮像の対象は、口腔内の歯や歯肉に限ったものではなく、外耳道などの生体組織や、液体で表面が濡れた物体、光沢塗装やコーティング、表面研磨がなされた工業製品などであっても良く、本発明は、光沢性/半透明性などを有する難撮像体を三次元計測する用途に対し広く適用可能である。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 光源、1a ドライバ回路、2 第1レンズ、3 パターン生成部、4 光学センサ、5 ビームスプリッタ、5a 偏光ビームスプリッタ、6 焦点可変レンズ、6a 焦点レンズ、6b レール、6c モータドライバ、6d 液体レンズ、7 焦点位置検出部、8 第2レンズ、8a 波長板、8b 光路長調整部、9 ミラー、10,10A~10C ハンドピース、20 制御部、30 コンピュータ、100,100A~100C 三次元スキャナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12