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特許7453221貫通案内部のための接続ピンおよび製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】貫通案内部のための接続ピンおよび製造法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/33 20060101AFI20240312BHJP
   F42B 3/10 20060101ALI20240312BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B60R21/33
F42B3/10
C23C26/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021521829
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019078366
(87)【国際公開番号】W WO2020083775
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】102018218001.6
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ハートル
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】オーストリア国特許発明第00513238(AT,B)
【文献】欧州特許出願公開第01710532(EP,A1)
【文献】特開2013-237436(JP,A)
【文献】特開2005-280585(JP,A)
【文献】特表2005-514578(JP,A)
【文献】特表2002-535195(JP,A)
【文献】特開2010-185653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/33
F42B 3/10
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通案内部、特にガラス-金属-貫通案内部(100)のための接続ピン(1)、特に金属ピンであって、
前記接続ピン(1)は、直径Dを備えた、細長い円筒形の少なくとも1つの第1の区分(3)と、続く少なくとも1つの端部区分(7)と、を備え、前記端部区分(7)は、曲率半径を備えた丸み付け部および/または丸み付け区分を有しており、前記丸み付け部および/または前記丸み付け区分は、曲率半径Rを備えた円セグメントの形状を有している接続ピン(1)において、
前記曲率半径Rは、好適には、仕様、特に予め規定された仕様に応じた所定の曲率半径であり、切削式の方法および/または非切削式の方法により得られ
前記丸み付け部および/または前記丸み付け区分の前記曲率半径Rは、0.4・D~0.65・Dの範囲であり、
前記丸み付け部および/または前記丸み付け区分は、円セグメント形の丸み付け区分を備えた頂部を有することを特徴とする、
接続ピン(1)。
【請求項2】
前記丸み付け部および/または前記丸み付け区分の前記曲率半径Rは、0.45・D~0.55・Dの範囲である、
請求項1記載の接続ピン。
【請求項3】
前記端部区分は、端面Fを有しており、前記端面Fの表面は、ピン軸線Aに対してほぼ垂直方向に配置されており、前記端面Fに、前記曲率半径Rを備えた前記丸み付け区分が続いていて、前記円筒形の区分(3)の外周面への移行部を形成する、
請求項1または2記載の接続ピン(1)。
【請求項4】
前記端面(F)は、特に1.0mm±0.1mmの直径Dの場合に、0.4mm未満、特に0.3mm未満の直径を有している、
請求項3記載の接続ピン(1)。
【請求項5】
前記非切削式の方法は、変形加工法、特に圧縮加工、圧延加工、押込み加工、プレス加工、押圧加工、ハンマ加工を含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載の接続ピン。
【請求項6】
前記切削式の方法は、旋盤加工、フライス加工、研削加工を含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載の接続ピン。
【請求項7】
前記接続ピン(1)は、ピン表面を有していて、切削式および/または非切削式の方法による曲率半径Rを備えた前記丸み付け部および/または丸み付け区分の加工後に、前記円筒形の区分における前記ピン表面、特に前記ピン表面の全体は、汚染物質、特に振動研削粒子、好適にはAl,SiCから成る汚染物質をほとんど有していないか、またはほぼ限りなく有していないか、または有していない、
請求項1から6までのいずれか1項記載の接続ピン。
【請求項8】
前記ピン表面全体の2%未満、特に1.5%未満、好適には1%未満、特に0.5%未満、好適には0.1%未満は、汚染物質、特に、好適にはAl,SiCから成る振動研削粒子を有している、
請求項7記載の接続ピン。
【請求項9】
前記ピン表面は、好適には0.1μm~10μmの範囲の層厚さを有するコーティング、特にニッケルコーティングおよび/または金コーティングを含んでいる、
請求項1から8までのいずれか1項記載の接続ピン。
【請求項10】
前記コーティングは、ニッケルコーティングであり、前記ニッケルコーティングの層厚さは、2~8μm、好適には4~6μmの範囲にある、
かつ/または
前記コーティングは、金コーティングであり、前記金コーティングの層厚さは、0.5~5μm、好適には0.8~1.5μmの範囲にある、
請求項9記載の接続ピン。
【請求項11】
前記コーティングは、欠陥箇所をほとんど有していない、
請求項9または10記載の接続ピン。
【請求項12】
前記曲率半径Rは、0.25mm~1.0mmの範囲にある、
かつ/または
前記直径Dは、0.5mm~2.0mmの範囲にある、
請求項1から11までのいずれか1項記載の接続ピン。
【請求項13】
少なくとも1つの接続ピンを備えた、好適には高圧に曝されている装置のための貫通案内部(100)、特に金属-位置固定材料-貫通案内部であって、
前記接続ピンは、請求項1から12までのいずれか1項記載の接続ピンであることを特徴とする、
貫通案内部(100)。
【請求項14】
前記貫通案内部(100)は、開口(20)を含んでいて、前記接続ピンは、好適にはガラスまたはガラス材料(60)内で前記開口(20)を貫通して案内される、
請求項13記載の貫通案内部(100)。
【請求項15】
貫通案内部、好適にはガラス-金属-貫通案内部のための接続ピン、特に金属ピンの製造方法であって、以下のステップ、すなわち
-少なくとも1つの端部区分を備えたワイヤ材料から接続ピン中間製品を提供するステップと、
-前記接続ピンの丸み付けされた端部区分が生じるように、前記ワイヤ材料の前記端部区分に、切削式および/または非切削式の方法により、仕様に応じた曲率半径Rを備えた丸み付け部および/または丸み付け区分を加工するステップと、
を含み、
前記丸み付け部および/または前記丸み付け区分の前記曲率半径Rは、0.4・D~0.65・Dの範囲であり、
前記丸み付け部および/または前記丸み付け区分は、円セグメントの形状の丸み付け区分を備えた頂部を有する、
方法。
【請求項16】
前記接続ピンに、コーティング、好適にはニッケルおよび/または金コーティングを備える、
請求項15記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧に曝されている装置、好適にはエアバッグまたはベルトテンショナのための好適には貫通案内部、特に金属-位置固定材料-貫通案内部のための接続ピン、特に金属ピンと、このような接続ピンを備えた貫通案内部と、このような接続ピンの製造法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通案内部、特に金属-位置固定材料-貫通案内部のための接続ピンは、種々異なる構成で先行技術から既に知られている。
【0003】
金属-位置固定材料-貫通案内部とは、金属への特にガラス、ガラスセラミックスまたはプラスチックから成る位置固定材料の真空密閉された溶融結合(Verschmelzen)であると理解される。この場合、金属は、電気的な導体として働く。代表的には、米国特許第5345872号明細書、米国特許第3274937号明細書が示唆される。このような貫通案内部は、電子機器において、かつ電子工学において広く普及している。融合(Einschmelzen)のために使用される材料、特にガラスは、絶縁体として働く。一般的な金属-位置固定材料-貫通案内部は、金属製の内側導体が、予備成形された焼結ガラス部材に融合され、焼結ガラス部材またはガラス管が、環状またはプレート状のエレメントから形成されるいわゆる基体を備えた外側の金属部材に融合される。このような金属-位置固定材料-貫通案内部の好適な用途として、例えば点火装置がある。点火装置は、特に自動車のエアバッグまたはベルトテンショナのために使用される。この場合、金属-位置固定材料-貫通案内部は、点火装置の構成部分である。点火装置全体は、金属-位置固定材料-貫通案内部の他に、点火ブリッジ、爆薬ならびに金属カバーを含んでいる。金属カバーは、点火機構を密に取り囲んでいる。貫通案内部を通して、1つまたは2つ、または2つよりも多くの接続ピン、特に金属製のピンを貫通案内させることができる。金属製のピンを備えた特に好適な1つの実施形態では、ケーシングが、アース上に位置していて、好適な2極の構成では、複数のピンのうちの1つのピン上に位置している。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0222881号明細書、米国特許出願公開第2004/0216631号明細書、欧州特許出願公開第1455160号明細書、米国特許出願公開第2007/0187934号明細書ならびに米国特許第1813906号明細書に基づいて、特にエアバッグまたはベルトテンショナの点火装置のための金属-位置固定材料-貫通案内部が公知となっている。これらの金属-位置固定材料-貫通案内部は、接続ピン、特に金属ピンのための貫通開口が、基体から打ち抜かれていることにある。基体の製造時に、米国特許出願公開第2007/0187934号明細書によれば、1mm~5mm、好適には1.5mm~3.5mm、特に1.8mm~3.0mm、極めて特に好適には2.0mm~2.6mmの範囲の厚さを有する帯材から、基体の厚さ全体を通る開口が、打ち抜きプロセスにより貫通させられる。
【0005】
位置固定材料内の接続ピン、特に金属ピンは、上述の範囲にある基体の厚さ全体にわたって、基体に打抜き加工された入口開口内に入れられる、もしくはガラスにより取り囲まれる。
【0006】
さらに、貫通開口は、米国特許出願公開第2007/0187934号明細書による、1つ以上のピンを備えた貫通案内部では偏心して配置されている。
【0007】
米国特許出願公開第2007/0187934号明細書による金属薄板材料からの打抜きは、多数の欠点を有している。1つの欠点は、帯材、例えば基体の金属薄板からの打抜き時に、大きな割合の材料屑が生じてしまうことにある。
【0008】
独国特許出願公開第1020060560077号明細書からは、着火式の保護装置のための点火装置が公知となっている。この点火装置は、金属ピンの電流貫通案内部を位置固定するための被覆部を有していて、被覆部と金属ピンとの間の相対運動を阻止するための手段を有している。米国特許出願公開第2007/0187934号明細書と同様に、独国特許出願公開第102006056077号明細書でも、金属薄板、例えば帯材から基体が打ち抜かれており、このことは、大きな材料屑をもたらす。さらに、米国特許出願公開第2007/0187934号明細書と同様に、貫通開口は軸線から外れて配置されている。
【0009】
欧州特許出願公開第1491848号明細書は、ピン状の導体のための中心に配置された貫通開口を備えた電流貫通案内部を示している。貫通開口の製造法は記載されておらず、貫通開口は、基体の厚さ全体にわたって延びている。
【0010】
米国特許第8978557号明細書からは、ベルトテンショナおよび/またはエアバッグ点火装置のための環状でプレート状のエレメントが公知となっていて、このエレメントは、打抜きにより貫通開口が加工される自由領域を備えている。環状でプレート状のエレメントを備えた貫通案内部構成部材は、2つの金属ピンを含んでいる。米国特許第8978557号明細書には、金属ピンをどのように製造するかに関する記載がなされていない。
【0011】
独国特許出願公開第102017123278号明細書は、貫通案内部エレメントのための基体を示しており、この基体は、金属製の基体と、特に電気的に絶縁性の位置固定材料内に機能エレメントを収容するための少なくとも1つの貫通開口と、ろう接部により基体に導電接続されている少なくとも1つの導体と、を含んでいる。ろう接部は、金属製のろう接材料を含んでいて、金属製のろう接材料は、基体の表面領域を覆い、これにより、基体の表面上にろう接領域を形成する。基体は、少なくともろう接領域において、マイクロ構造を有している。このマイクロ構造は、基体の表面において少なくとも凹部を含んでいる。
【0012】
独国特許出願公開第102012009765号明細書は、少なくとも2つの接触ピンもしくは接続ピンを備えた、車両安全システムのガス発生器のための点火装置を示している。接続ピンは、電気的に絶縁性の材料により互いに対して空間的に分離されている。各接触ピンは、塩素を含まない金コーティングを備えている。金層は、電着プロセスにより被着させることができる。塩素捕捉剤は、前置されたクリーニングステップにおいて使用されるクリーニング溶剤に導入される。
【0013】
独国特許出願公開第102017123278号明細書および独国特許出願公開第102012009765号明細書にも、導体もしくはコンタクトピンがどのように製造されるかは開示されていない。
【0014】
特に、2つの接続ピン、特に金属ピンと、偏心して配置された貫通開口と、を備えた金属-位置固定材料-貫通案内部では、偏心した貫通開口が、封止ガラス(Einglasung)の弱化部をもたらす。
【0015】
先行技術では、特に貫通案内部、特にガラス-金属-貫通案内部のための接続ピン、特に金属ピンに、少なくとも1つの端部区分において、丸み付け部、いわゆる曲率半径が備えられている。接続ピンの丸み付け部、特に曲率半径は、通常、振動研削(Gleitschleifen)により形成されていた。振動研削媒体として、例えばAlまたは炭化ケイ素(SiC)または振動研削砥石から成る別の研削材が使用される。研削材を用いた丸み付けのこのような方法において不都合であるのは、振動研削媒体の小さな粒子が、ピン表面に導入されてしまうことであった。加工後に表面に沈着したこれらの粒子は、表面コーティング時、例えばニッケルメッキ時に、コーティング自体において欠陥箇所が発生することにつながる。さらにこれらの欠陥箇所は、例えば金属-位置固定材料-貫通案内部の場合に貫通案内部のソケットの領域にまで広がる腐食の出発点であった。さらに、予め規定された丸み付け部を確実に実現することはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の課題は、先行技術の欠点を回避し、これらの欠点を回避する貫通案内部、特に金属-位置固定材料-貫通案内部のための接続ピン、特に金属性の接続ピンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、これは、貫通案内部、特にガラス-金属-貫通案内部のための接続ピン、特に金属ピンであって、直径Dを備えた、細長い円筒形の第1の区分と、この細長い第1の区分に続く少なくとも1つの端部区分と、を有していて、端部区分が、曲率半径を備えた丸み付け部および/または丸み付け区分を有しており、丸み付け部および/または丸み付け区分が、曲率半径Rを備えた円セグメントの形状を少なくとも有していて、振動研削材を使用しない切削式および/または非切削式の方法により、仕様、特に予め規定された仕様に応じた曲率半径Rが得られる、接続ピンにより達成される。
【0018】
振動研削粒子を回避することは、接続ピンの表面における欠陥箇所を抑制し、かつ/または回避することを確実にする。欠陥箇所を有しない、もしくはほとんど有していない表面の利点は、コーティング、例えばピン上に被着されたニッケルコーティングおよび/または金コーティングにおける欠陥箇所が発生しないことである。表面が欠陥箇所をほとんど有していない場合、閉じた表面コーティングを比較的容易に行うことができる。
【0019】
当業者であれば、振動研削材を使用しない切削式および/または非切削式の方法による丸み付けを思いとどまるだろう。なぜならば、このような方法は、振動研削材を用いた削り取りもしくは丸み付けに対して手間がかかりすぎ、時間を消耗するからである。
【0020】
特に好適には、丸み付け部および/または丸み付け区分の曲率半径Rは、0.4・D~0.65・D、特に0.45・D~0.55Dの範囲にあり、好適にはおおよそ、円筒形の領域の半分の直径Dである。したがって、特に良好な接触および低い接触抵抗が達成される。
【0021】
改良された1つの実施形態では、端部区分は、端面を有しており、端面の表面は、ピン軸線に対してほぼ垂直方向に配置されており、この端面に、曲率半径Rを備えた丸み付け区分が続いていて、円筒形の区分の外周面への移行部を形成する。
【0022】
特に円筒形の部分の直径Dが1.0mm±0.1mmである場合に、端面が、0.4mm未満、特に0.3mm未満の直径Fを有していると特に好適である。
【0023】
本発明の第1の構成では、非切削式の方法が、特に変形加工法、例えば圧縮加工(Stauchen)、圧延加工(Rollen)、押込み加工(Praegen)、プレス加工(Pressen)、ハンマ加工(Haemmern)または押圧加工(Druecken)を含んでいることが規定されている。
【0024】
切削式の方法では、旋盤加工、フライス加工または研削加工(Schleifen)が可能な方法である。
【0025】
特に好適な1つの実施形態では、接続ピンが、ピン表面を有している。切削式および/または非切削式の方法による丸み付け部の加工後に、汚染物質、特にAl,SiCを有していないか、またはほとんど有していないピン表面に、コーティング、特にニッケルコーティングが備えられる。汚染物質を有していない、またはほとんど有していないとは、本出願において、ピン表面全体の2%未満、好適には1.5%未満、特に1%未満、好適には0.5%未満、特に極めて好適には0.1%未満に、コーティングにおける欠陥箇所をもたらしてしまう、特にAl、SiCのようなセラミックス製材料を有する汚染が存在していると理解される。特にピンに導入され得る振動研削粒子による汚染が本発明により存在していないことに基づいて、ピン表面上に被着されたコーティングは、欠陥箇所を有していないか、またはほとんど有していない。このことは、汚染に対応して、ピン表面全体の2%未満、特に1.5%未満、好適には1%未満、特に好適には0.5%未満、極めて特に好適には0.1%未満が、欠陥箇所を有していることを意味している。
【0026】
先行技術においてピン表面の加工時に使用される振動研削砥石は、45%~65%のアルミナおよび25~45%の酸化ケイ素を含んでおり、このことは、ピン表面全体の3.2%~6.5%のAl汚染につながる。表面の加工および丸み付け部の加工が、振動研削粒子なしに単に切削式または非切削式の方法により行われる本発明の場合、ピン表面全体の汚染は、2%未満、極めて好適には、1.5%未満、特に1%未満、好適には0.5%未満、極めて好適には0.1%未満である。
【0027】
欠陥箇所をほとんど有していないことは、特に、金属ピン上に被着されたコーティングの層厚さが小さい場合に有利である。金属ピン上に被着されたコーティングの層厚さは、0.1μm~10μmである。金属ピン上に被着されたNi層の層厚さが、2~8μm、好適には4~6μmの範囲であると特に有利である。金層の層厚さは、好適には0.5~5μmであり、好適には0.8~1.5μmの範囲である。Ni層およびAu層から成る層の全体厚さとして、好適には4.5μm~7.5μmの値が生じる。このような薄いコーティングでは、本発明により提供されるような欠陥箇所をほとんど有していない表面が、欠陥箇所が抑制されるコーティングにとって重要である。
【0028】
切削式または非切削式の方法により端部区分に加工すべき曲率半径Rを備えた丸み付け部および/または丸み付け区分が、特に仕様に応じて予め規定されていると特に好適である。通常、記載された接続ピンは、コネクタシステム内に導入される。特に差込システム内でできるだけ低い接触抵抗を提供し、より確実な接触を保証するために、この仕様は、曲率半径Rが、接続ピンの端部領域における半球もしくは半球形のボディに一致するようであると極めて特に好適である。
【0029】
別の好適な1つの実施形態では、接続ピンの端部領域が、特にピン軸線の中心に位置する所定の幅を備えた平坦領域を有している。この平坦領域に、曲率半径Rを備えた丸み付け区分が続く。平坦領域は、実質的にその端面の直径Fにより特徴付けられている。
【0030】
好適には、曲率半径Rは、円筒形の接続ピンの半分の直径Dにほぼ一致する。曲率半径Rが、0.4・D≦R≦0.65・Dの範囲、特に、0.45・D≦R≦0.55・Dの範囲にあると、特に有利である。特に好適には、接続ピンは、1mmの直径を備えたピンにおいて、端部領域の丸み付けされた区分が0.65mm延びてから直径Dを備えた円筒形の区分に至るように構成されている。これとは異なり、1mmの直径を備えた、振動研削粒子により丸み付けされた接続ピンもしくはピンでは、0.7mmよりも長く延びてからようやく、予め規定された直径Dを備えた円筒形の部分が達成される。本発明により切削式または非切削式の方法による丸み付け部もしくは曲率半径の加工の利点は、接続ピンの円筒形の領域への短縮された移行領域を可能にする曲率半径を、予め規定された仕様に応じて製造することができることである。このことは、切削式もしくは非切削式の方法により曲率半径を調節することができるので可能であり、このことは先行技術では可能ではなかった。なぜならば、振動研削によって、丸み付け部の形状、特に曲率半径には影響を与えることができないからである。したがって、滑らかに研削されたピンの外形は、常にたる形の延在形状を示している、つまり曲率半径から円筒形のピンへの移行部は、曲率半径を超える比較的に長い延在形状を有している。このことは、特にこの接触ピンがコネクタシステム内に押し込まれる場合に、接触ピンの接触確実性にとって欠点となってしまう。
【0031】
接続ピンの形状は、例えば1mmの直径Dを備えた円筒形の形状である。円筒形の形状を備えた接続ピンの端部において、この円筒形の形状は丸み付けされた領域、理想的には、所定の曲率半径Rを備えた半球形の頂部に移行する。理想的には、この曲率半径Rは、円筒形の領域の半分の直径に一致するか、もしくは0.4・D≦R≦0.65・Dの範囲にあり、このことは、本発明によれば、切削式もしくは非切削式の方法によってのみ、例えば変形加工によって達成することができる。曲率半径は、切削式もしくは非切削式の方法では、仕様に応じて予め規定することができ、このことは、振動研削粒子による丸み付け時には不可能である。
【0032】
接続ピンの表面に振動研削粒子が食い込まないことに基づいて、曲率半径の作成後に、閉じた表面コーティングを製造することが可能である。この閉じた表面コーティングは、欠陥箇所をほとんど有しておらず、したがって表面コーティングされたピンにおける腐食のおそれを著しく減じる。
【0033】
特に金属ピンの形の本発明に係る接続ピンの他に、本発明は、このような形式の少なくとも1つの接続ピンを備えた、好適には高圧に曝されている装置のための貫通案内部、特に金属-位置固定材料-貫通案内部も提供する。貫通案内部が開口を有していて、接続ピンが、ガラス材料またはガラスセラミックス材料内でこの開口を貫通して案内される。
【0034】
接続ピンおよび貫通案内部の他に、本発明は、このような接続ピンの製造法も提供する。この場合に、まず、例えばワイヤ材料から切断により得ることができ、端部区分を有している接続ピン中間製品を提供する。次いで、接続ピン中間製品に、曲率半径、好適には予め規定された仕様に応じた曲率半径を備えた丸み付けされた区分を、切削式および/または非切削式の方法により端部区分に加工する。好適には、丸み付け部もしくは丸み付け区分の曲率半径は、0.4・D≦R≦0.65・Dの範囲にあり、ここでDは、円筒形の部分の直径である。切削式もしくは非切削式の方法によるピンの丸み付けもしくは曲率半径の加工後に、接続ピンにコーティング、好適にはニッケルコーティングおよび/または金コーティングを備えることが規定されていてよい。
【0035】
本発明を以下に図面につき制限することなしに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る接続ピンを示す図である。
図2】丸み付け部を備えた本発明に係る接続ピンの端部区分を示す図である。
図3】接続ピンを備えた例示的な貫通案内部を示す図である。
図4a】仕様に応じた接続ピンを示す図である。
図4b】振動研削粒子を用いて製造された接続ピンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明による接続ピンを例示的に示している。接続ピン1は、図1に図示された実施形態では、3つの領域を有している。すなわち、参照符号3が付されている実質的に真っ直ぐである第1の領域と、参照符号5が付されている湾曲させられた領域と、参照符号7が付されている端部領域もしくは端部区分と、である。ピン1の端部区分10.1,10.2は、本発明により、非切削式の方法および/または切削式の方法を用いて丸み付けされていて、丸み付け部の曲率半径Rは、予め規定されている。曲率半径Rは、例えば0.5mmであってよく、接続ピン1の直径Dは、1mmであってよい。切削式および/または非切削式の方法により、好適には接続ピンの円筒形の部分の直径の半分である予め規定された曲率半径を調節することが可能である。接続ピンは、ワイヤ区分からの切り離しにより得られる。ピンの真っ直ぐではない、つまり湾曲させられた区分5は、真っ直ぐな領域3および端部区分7に対して45°だけ傾斜させられている。ピンの直径Dは、例えば0.5~2.5mmである。0.5mmよりも小さな直径を有するピンも可能である。
【0038】
図2に図示されているのは、丸み付け部を備えた端部区分である。理想的には円錐形であるが、必ずしも円錐形でなくてもよい丸み付け部もしくは丸み付け区分は、曲率半径Rを含んでいる。この曲率半径は、0.25mm~1.0mmの範囲にある。丸み付け区分は、同様に曲率半径の範囲、つまり0.25mm~1.0mmの範囲にある側面長さを有している。例えば、円筒形の領域への移行部に至るまでの丸み付け部の高さは、0.5mmであってよい。したがって、ピンの直径は、同時に約1.0mmである。
【0039】
非切削式および/または切削式の方法により基準にしたがって丸み付けした後に、つまり少なくとも1つの端部区分における領域の曲率半径、直径高さおよび高さを規定された丸み付けで加工した後に、接続ピンに、ピン表面上のコーティングを備えることができる。通常は、防食部としてまずニッケル層が接続ピンに被着される。次いで、ニッケルコーティングに、金層が被着される。ニッケルコーティングおよび金コーティングの厚さは、μmの範囲にあり、好適には0.1μm~10μmの範囲にあってよい。金コーティングの代わりに、パラジウムを備えたコーティングを実施することもできる。ニッケルおよび金を備えたコーティングにより、小さな接触抵抗を有する安全に接触するコネクタが提供される。曲率半径を加工するための本発明による切削式および/または非切削式の方法によって、ピン表面は汚染物質、例えば振動研削材をほとんど有しないで維持されるので、例えばニッケルから成る、接続ピン上に被着されたコーティングは欠陥箇所を有していない。このことは、接続ピンが腐食をほとんど有していないままであることにつながる。汚染物質を有していない、もしくはほとんど有していないとは、本出願において、ピン表面の2%未満、特に1.5%未満、好適には1%未満、極めて好適には0.5%未満、特に好適には0.1%未満が、例えば振動研削粒子によって汚染されていると理解される。望ましくない振動研削粒子は、特に、例えばAlまたはSiCのようなセラミックス材料の粒子である。例えば鉄粒子のような別の材料から成る粒子は、欠陥箇所に関してあまり害をなさず、したがって許容可能である。したがって、このことは、小さな接触抵抗につながる。特に、振動研削材を省くことにより、腐食につながる欠陥箇所を回避することができる。腐食に基づいて、接触抵抗が増し、最終的に電流ラインが時間の経過と共に失われてしまう。
【0040】
図3には、貫通案内部内の本発明に係る接続ピン、特に金属ピンの使用が図示されている。図3は、高圧に曝されている装置のための貫通案内部100、特に金属-位置固定材料-貫通案内部を示している。
【0041】
開口を備えた環状のエレメント106を含む貫通案内部100を明瞭に確認することができる。さらに、解放領域105が示されている。環状のエレメント106の残りの材料から、厚さDRで貫通開口20が打ち抜かれる。この貫通開口20は、本実施形態では、テーパ形の延在形状200を有している。図示された実施例では、貫通開口の全長にわたってテーパが加工されているが、代替的な実施形態では、テーパは貫通開口の長さの一部のみにわたって延びていてもよく、つまり貫通開口が2つの区分、すなわちテーパ形の区分と、このテーパ形の区分に続くテーパ形ではない区分と、を有している。テーパ形の区分は、例えば変形加工もしくは成形により製造することができ、テーパ形ではない区分は打抜きにより製造することができる。
【0042】
環状またはプレート状のエレメント106は、本発明により全部で2つの接続ピン50,52を備えた金属-位置固定材料-貫通案内部のための基部として働く。好適には金属ピン50である接続ピンは、位置固定材料60(本実施形態ではガラス材料であるが、ガラスセラミックス材料またはセラミックス材料であってもよい)内で、環状またはプレート状の基体106に対して絶縁されて、正面側から背面側へと貫通案内される一方で、第2の接続ピン、特に金属ピン52は、アースピンとして働く。このためには、第2の金属ピン52は、直接に環状またはプレート状のボディ106に結合されている。接続ピン、特に金属ピン50も、接続ピン、特に金属ピン52も、湾曲させられて形成されている。両金属ピンの湾曲は、符号54もしくは56で示されていて、明確に確認可能である。
【0043】
接続ピン、特に金属ピン50には、さらにこの金属ピン50自体において手段62が備えられていてよい。この手段62は、ガラス栓60に係合し、これにより、当該金属ピンをガラスにより取り囲んでいるガラス栓60からこの金属ピンが押し出されることを、高圧時にも回避する。
【0044】
位置固定材料60内で接続ピン、特に金属ピン50をガラスにより取り囲むことは、融合により行われる。接続ピン、特に金属ピンが位置固定材料60に融合されるや否や、ガラス栓は、金属ピンと一緒に貫通開口20内に導入される。次いで、ガラス栓は、環状またはプレート状のエレメント、つまり基体と一緒に加熱され、これにより、冷却後に、環状またはプレート状のエレメントの金属が位置固定材料、ここではガラス材料上で、接続ピン、特に金属ピンがガラス栓内に導入されるガラス栓の製造時と同様に、収縮する。アースとして働く接続ピン、特に金属ピン52は、プレート状のエレメントに導電式に、例えば硬ろうにより接続される。ろう接箇所は、符号70で示されている。使用されたすべての金属ピンは、端部区分72において、本発明により、切削式および/または非切削式の方法により丸み付けされている。これにより、接続ピン、特に金属ピンの表面の汚染が生じないので、欠陥箇所を有しない接続ピンにコーティングを備えることができる。コーティングされた接続ピンは、低い接触抵抗を有している。欠陥箇所が回避されるので、例えばNiまたはAuの後続のコーティングが、閉じた表面でほとんど欠陥箇所なしに可能である。閉じた表面は、さらに腐食を十分に排除することができるように働く。
【0045】
図4aには、本発明に係る方法により丸み付けされたピンが図示されていて、図4bには、振動研削粒子を用いて製造された丸み付けされたピンが図示されている。
【0046】
図4aは、本発明により製造された、予め規定された仕様に応じた接続ピンを示している。図4aにより製造された接続ピンは、頂部110が冷間成形により製造されている。頂部は、ピン軸線Aに対して垂直方向の表面を有する端面Fを備えた頂部であり、この端面Fに、R=0.65mmの曲率半径を備えた丸み付け区分が続いている。丸み付け区分の断面は、円セグメントに幾何学的に一致し、ピンの円筒形の部分の直径Dは、1mmである。示された実施例では、端面Fの直径は、0.1mmである。理想的には、曲率半径Rは、ピン1の円筒形の部分の半分の直径Dと同一であり、つまり0.5mmである。しかし、曲率半径のための0.4D≦R≦0.65Dの範囲も、本発明によるものと見なすことができる。別の好適な構成規定は、以下の式に一致する。
R=D/2-(Fの直径)/2
ここで、Fは、端面の直径である。図4aに示したように、円筒形の領域の直径Dが1mmであり、直径Fが0.1mmである場合、図示の例では、Rは好適には0.45mmである。本発明は、端面Fの直径が0.4mmよりも小さく、特に0.3mmよりも小さいことを特に有利に可能にする。
【0047】
冷間成形された接続ピンが、予め規定された曲率半径Rと、円セグメント形の丸み付け区分を備えた頂部と、を備えた端部区分の丸み付けを示す一方で、このことは、図4bに図示されているように、振動研削粒子により丸み付け部が製造される接続ピンでは、達成されない。丸み付け区分は、特に双曲線状である。ピンの接続領域は、参照符号1100で示されている。接続ピンの円筒形の部分は、D=1mmの直径を有している。図4bにおいて明確に確認することができるように、ピンの外形の形状は、たる形であり、つまり接続領域1100から円筒形の部分への移行部Oは、図4aに示した上述のように製造された接続ピンにおける0.65mmとは異なり、0.9mmであり、したがって延在長さが著しく長い。このことは、図4aに示した構成の場合よりもはるかに高い接触抵抗が存在することにつながる。同様に、端面が、比較的に大きな直径を有していることを観察することができる。これは、丸み付け区分への急な移行部をもたらし、この移行部上にコーティングが付着することは困難であるか、または容易に剥離してしまうことにつながる。
【0048】
したがって、本発明によれば、接続ピンの、仕様に応じて製造可能な丸み付け部を提供することができ、この丸み付け部は、特に表面の汚染を有しておらず、特にコネクタシステム内への導入のために幾何学的に定義された接続領域を有している。これにより低い接触抵抗と、極めて良好な長寿命の接触特性を達成することができる。
図1
図2
図3
図4a
図4b