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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ハイパースペクトルカメラ
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20240312BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20240312BHJP
   G01J 3/04 20060101ALI20240312BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G01J3/36
G02B3/06
G01J3/04
G01J3/18
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021523544
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 NO2019050146
(87)【国際公開番号】W WO2020013704
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】20180965
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】521013323
【氏名又は名称】ノルスク エレクトロ オプティック アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】NORSK ELEKTRO OPTIKK AS
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン、アンドレイ エル.
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-089895(JP,A)
【文献】特開2001-041821(JP,A)
【文献】特開2017-110931(JP,A)
【文献】特開2002-013980(JP,A)
【文献】特開2013-040952(JP,A)
【文献】特開昭58-027029(JP,A)
【文献】特開昭54-043082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0157295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
G02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイパースペクトルカメラ用の光学システムであって、前記光学システムは、
描写されているシーンの画像を生成するように構成された光学サブシステムであるフォアオプティクス(1000)と、
イメージセンサ(1800)と、
スリット表面と、スリット(1500)を貫通するスリット開口部とを備えるスリット(1500)であって、前記スリット開口部前記スリット表面上での輪郭であるストライプは前記ストライプの中心に沿った長さ及び前記ストライプの前記中心の各点で垂直に前記ストライプを横切る幅を有し、前記ストライプの前記長さはその最大幅より少なくとも一桁大きく、前記スリット(1500)は前記スリット開口部を通過する光を除いてシーンからの光を遮断し、シーンから狭い領域を効果的に切り取るように構成される、スリット(1500)と、
分散要素(1250)を備えるリレーオプティクス(1200)であって、狭いシーンからの光を前記ストライプの前記中心線における中央の点での接線に対して垂直な方向にスペクトル分散しつつ、前記シーンの前記狭い領域の画像をイメージセンサ(1800)に投影するように構成された光学サブシステムであるリレーオプティクス(1200)と、を備え、
前記光学システムは、
前記スリット(1500)の前に配置され、前記ストライプの前記接線に対して垂直な方向のフォーカスを維持しながら、前記ストライプの前記接線に平行な方向に光をデフォーカスする形態を有する第1の光学要素(2000)と、
前記スリット(1500)の後に配置され、前記第1の光学要素(2000)によってもたらされたデフォーカスを補償する第2の光学要素(2100)と、をさらに備えることを特徴とする光学システム。
【請求項2】
前記スリット表面が平面又は面のいずれかである、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
記ストライプが線形である、請求項1又は2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第1の光学要素(2000)は凹型のシリンドリカルレンズを含み、前記第2の光学要素(2100)は凸型のシリンドリカルレンズを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1の光学要素(2000)は凸型のシリンドリカルレンズを含み、前記第2の光学要素(2100)は凹型のシリンドリカルレンズを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第1の光学要素(2000)は、前記スリット表面上の画像が前記ストライプの前記接線に平行な方向にデフォーカスされるように非点収差を有するフォアオプティクスであり、前記第2の光学要素は、前記非点収差を有するフォアオプティクスの非点収差を打ち消すように構成された非点収差を有するリレーオプティクスである、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記非点収差を有するフォアオプティクス及び前記非点収差を有するリレーオプティクスの非点収差は、光軸Zに直交しかつ2つの直交するX方向とY方向とで屈折力が異なる光学面を使用して生成される、請求項6に記載の光学システム。
【請求項8】
前記非点収差を有するフォアオプティクス及び前記非点収差を有するリレーオプティクスは、前記非点収差を有するフォアオプティクス及び前記非点収差を有するリレーオプティクスの両方で光軸からずれて配置された少なくとも1つの光学面を有し、前記スリット(1500)の前にデフォーカスをもたらし、前記スリット(1500)の後でデフォーカスを補償する非点収差を生成する、請求項6に記載の光学システム。
【請求項9】
前記非点収差を有するフォアオプティクス及び前記非点収差を有するリレーオプティクスの非点収差は、収差が光軸から離れていることを利用し、かつ前記スリット(1500)全体を光軸から離して配置する、部分的に補正されていない収差の非点収差である、請求項6に記載の光学システム。
【請求項10】
請求項4、6~9のいずれか1つの第1の光学要素は、請求項1~3のいずれかによる光のデフォーカスのために使用され、請求項4、6~9のいずれか1つの第2の光学要素は、請求項1~3のいずれかによるデフォーカスを補償するために使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項11】
請求項5~9のいずれか1つの第1の光学要素は、請求項1~3のいずれかによる光のデフォーカスのために使用され、請求項5~9のいずれか1つの第2の光学要素は、請求項1~3のいずれかによるデフォーカスを補償するために使用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項12】
前記光学システムは、前記スリット(1500)を保護するモジュール内の窓として前記第1の光学要素(2000)及び前記第2の光学要素(2100)を使用することで、塵の粒子及び湿気から前記スリット(1500)を保護するモジュールを備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項13】
前記スリットを保護する前記モジュールは、(1)密閉され、かつ窒素又は不活性ガスで満たされているもの、又は(2)内部が真空になるように排気されているもののいずれかである、請求項12に記載の光学システム。
【請求項14】
求項1~13のいずれか一項に記載の光学システムを備えるハイパースペクトルカメラであって、(1)画像センサ及び他のカメラ機能を制御するため、(2)空間及びスペクトル画像情報を含む画像又は画像ラインを取得するため、及び(3)前記空間及びスペクトル画像情報の(a)格納及び(b)送信のうちの少なくとも1つを行うために構成された制御電子機器をさらに備える、ハイパースペクトルカメラ。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の光学システムを備えるハイパースペクトルカメラを使用してハイパースペクトルデータを取得するための方法。
【請求項16】
ハイパースペクトルカメラの画質を改善するための方法であって、
シーンからの光がスリット(1500)に到達する前に、前記スリット(1500)の開口部の中心線における中央の点での接線に平行な方向においてシーンからの光をデフォーカスすることと、
前記スリット(1500)の表面によってシーンからの光を遮断し、狭い領域からの光のみが前記スリット(1500)の開口部を通過できるようにすることで、シーンから狭い領域を切り取ることと、
狭い領域からの光が前記スリットを通過した後でデフォーカスを補正することと、
前記狭い領域からの補正後の光をスペクトル分散し、前記狭い領域のスペクトル分散画像をイメージセンサ(1800)に投影することと、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して「プッシュブルーム(push broom)」方式のハイパースペクトルカメラに関する。より具体的には、本発明は、ハイパースペクトルカメラ用の光学システム、及びそのような光学システムを含むハイパースペクトルカメラに関する。本発明はまた、ハイパースペクトルデータの品質の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラ、すなわちシーンをラインごとにスキャンするハイパースペクトルカメラは、フォアオプティクス(fore optics)、描写されているシーンのラインを規定するスリット、分散要素を有するリレーオプティクス(relay optics)、及びイメージセンサを備えている。ハイパースペクトルカメラの設計は、通常、カメラから生成されるデータのエラー及び狂いを減らすための様々なトレードオフ及び最適化に従う。スリットの機械的欠陥により、スリットの厚みがスリットに沿って変化する結果、スリットを通過する光の量がスリットの位置によって異なる可能性がある。これにより、得られる画像において、明暗の縞模様が現れる可能性がある。
【0003】
プッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラは、典型的には、次のものを備えている。
・フォアオプティクス-描写されているシーンの画像を生成する光学サブシステム。
【0004】
・スリット-狭いストライプを除いてシーンからのすべての光を遮断し、シーンから狭い領域を効果的に切り取る構成要素。
・分散要素を備えたリレーオプティクス-スリットに対して垂直な方向にスペクトル分散された光によって、シーンの非常に狭い領域の画像をイメージセンサに投影する光学サブシステム。
【0005】
・イメージセンサ。
このようなカメラの瞬間的な視野は狭いストライプである。シーンの2次元画像は、シーンに対してスリットに垂直な方向にカメラを移動し、その過程で複数回に亘る露光を行うことによって実現される。
【0006】
図2は、これらすべての要素及びサブシステムを含む簡略化されたハイパースペクトルカメラを示す。実際のハイパースペクトルカメラでは、光学画像の要求される品質を実現するために、各サブシステムは通常、単一の要素よりも複雑である。図2は透過要素及び屈折要素を示しているが、光学要素のすべて又はいずれかを反射型とすることができる。
【0007】
特許文献1(カリフォルニア工科大学)には、「オフナー」設計に基づくハイパースペクトルカメラが記載されている。特許文献1の第4図は、オフナー分光計の典型的なレイアウトを示す。フォアオプティクス(この場合、3ミラーアナスチグマート(three-mirror anastigmat))は、シーンの中間画像を形成する。スリットは中間画像と同じ平面に配置される。スリットは画像から狭い領域を切り取る。この領域は、リレーオプティクスによってセンサに投影される。リレーオプティクスは分散要素(凸型回折格子)を有するため、シーンの狭い領域の画像が2次元センサアレイ上にスペクトル分散される。アレイの異なるピクセル行は、異なるスペクトルバンドでのシーンの狭い領域の画像である。完全な3次元ハイパースペクトルデータキューブ(2つの空間次元と1つのスペクトル次元)は、カメラをシーンに対してスリットに垂直な方向に移動することによって取得される。
【0008】
非特許文献1には、画像データの縞模様を含むデータの較正についての課題が記載されている。
非特許文献1の図1は、どのように可変幅のスリットが取得した画像にアーティファクト(縞模様)を引き起こすかを示している。本文では、このようなスリット幅の変化を特徴づけることが可能であり、この較正データを使用して、取得したデータから縞模様を除去できると説明されている。使用中や輸送中に光学システムが影響を受け、較正データが無効になる場合があることが指摘されている。非特許文献1の著者は、画像について様々な想定を行い、縞模様の強度を低下させる可能性が高いいくつかの画像処理方法について説明している。
【0009】
特許文献2には、プッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラ又は一時的二次元カメラのいずれかとして使用できる光学システムが記載されている。光学システムは、光路に出入りできるスリットと、可変分散要素とを有している。スリットが光学システムの光路に配置され、分散要素が分散動作モードにある場合、光学システムはプッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラとして機能する。スリットが光路の外に移動し、分散要素が非分散動作モードにある場合、光学システムは一時的二次元カメラとして機能する。また、スリット位置と分散強度の両方が連続的に調整可能であるため、ハイパースペクトルカメラモードの光学システムには、従来のプッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラと比較してさらなる利点がある。スリットの動きはシーン全体のスキャンに使用できるため、外部のスキャン機構が不要となる。分散強度は、スペクトル分解能を向上させるために増加させるか、信号対ノイズ比を改善するために減少させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第6100974号明細書
【文献】米国特許第9891107号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Luis Gomez-Chova et al.,”Modelling spatial and spectral systematic noise patterns on CHRIS/PROBA hyperspectral data”,Image and Signal Processing for Remote Sensing XII,Proc. of SPIE,2006,Vol. 6365,63650Z
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、スリットの機械的欠陥に起因して出現し得る縞模様のアーティファクトを減少させることによって、プッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラにより得られる画質を改善することである。
【0013】
理想的には、スリットは真っ直ぐなエッジを持つ長方形状であるが、実際のスリットは、通常、エッジの機械的欠陥のために幅がわずかに変化する。センサ面におけるスリット及びシーンの両方を鮮明に画像化することが要求されるため、これらの小さな欠陥はセンサの明るさにばらつきを生じさせる。
【0014】
これらのばらつきはシーンの特徴を表すものではなく、スリットに沿った不均一な光の透過に起因したアーティファクトである。想定される例としては、スリットのエッジにおける機械的欠陥や、スリットに詰まった塵の粒子があり得る。プッシュブルーム方式のハイパースペクトルカメラを使用した画像の取得には、スキャンが必要である。取得した画像において、スリットの狭い領域ではかすかに暗い縞模様が生成され、スリットの広い領域ではかすかに明るい縞模様が生成される。
【0015】
この影響は、カメラを注意深く特性評価することで軽減できる。つまり、不要な明るさのばらつきが割り出され、取得した画像に適切な補正が適用される。問題は、時間の経過とともにスリットがセンサ面に対してわずかに移動し得ること(並びに塵の粒子が出現し得ること)である。この小さな移動は、スリットに沿って徐々にと変化する大きなサイズのスリットの欠陥(例えば、スリットのエッジが互いにわずかに平行でない等)には重要な影響を与えないが、小さなセレーション(serration)、バリ、塵のスペックを考慮した較正が正しいものではなくなってしまう。その結果、画像にはスキャン方向と平行に延びる真っ直ぐで細いかすかな縞模様が現れる。
【0016】
カメラの再較正は、例えばスリットの新たな小さい動きが生じるまで、あるいはスリットに新しいスペックの塵が入り込むまでであれば、問題を解決するだろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、本発明による、独立請求項1の前文に規定され、請求項1の特徴部分の特徴を有するハイパースペクトルカメラ用の光学システムによって達成される。
本発明のいくつかの非網羅的な実施形態、変形例又は代替例は、従属請求項によって規定される。
【0018】
本発明の基本的な概念は、スリットの前に第1の光学要素(2000)を配置し、スリットの後に第2の光学要素(2100)を配置することである。第1の光学要素の目的は、ビームを一方向にのみ、すなわちスリットに沿って拡大することであり、これにより、通常はシーン内及び画像ライン内の点に関連する光がスリットに沿う長い距離に沿って拡散され、その結果、スリットの開口部におけるばらつきは、描かれている画像ラインの各ポイントでの画像信号に影響を与えにくくなる。
【0019】
第2の光学要素の目的は、第1の光学要素によってもたらされる効果を補正し、結果として得られる画像データが、画像における明暗の縞模様をぼかして減少させることを除き、通常の場合と同様に見えるようにすることである。
【0020】
光学設計の観点から、スリットの欠陥は第2の光学要素によってデフォーカス(焦点ぼけ)されるのみであるのに対し、シーンの特徴は、最初に第1の光学要素によってデフォーカスされ、それから第2の光学要素によってフォーカス(集束)される。本発明の1つの可能な実施形態は、第1の光学要素としてスリットの前に弱い凹型のシリンドリカルレンズを配置し、第2の光学要素としてスリットの後に対応する弱い凸型のシリンドリカルレンズを配置することである。この考えは、第2の光学要素が第1の光学要素によってもたらされる効果を打ち消す又は補正することになっているというものである。
【0021】
本発明の第1の態様は、ハイパースペクトルカメラ用の光学システムである。光学システムは、描写されているシーンの画像を生成するように構成された光学サブシステムであるフォアオプティクス、画像センサ、及びスリットを備える。スリットは、スリット表面と、スリットを貫通するスリット開口部とを備える。スリット開口部はスリット表面上にストライプを形成する。ストライプは、ストライプの中心に沿った長さ及びストライプの中心の各点で垂直にストライプを横切る幅を有し、ストライプの全長はその最大幅より少なくとも一桁大きい。スリットは、スリット開口部を通過する光を除いてシーンからの光を遮断し、シーンから狭い領域を効果的に切り取るように構成される。光学システムは、分散要素を備えるリレーオプティクスをさらに備える。リレーオプティクスは、狭いシーンからの光をストライプの接線に対して垂直な方向にスペクトル分散しつつ、シーンの狭い領域の画像をイメージセンサに投影するように構成された光学サブシステムである。光学システムは、スリットの前に配置され、中心の各点でストライプの接線に対して垂直な方向のフォーカスを維持しながらストライプの接線に平行な方向に光をデフォーカスする形態を有する第1の光学要素と、スリットの後に配置され、第1の要素によってもたらされたデフォーカスを補償する第2の光学要素と、をさらに備える。
【0022】
選択的に、スリット表面は平面であり、選択的に、狭いストライプは線形又は円柱形のいずれかである。
選択的に、第1の光学要素は凹型のシリンドリカルレンズを含み、第2の光学要素は凸型のシリンドリカルレンズを含む。
【0023】
選択的に、第1の光学要素は凸型のシリンドリカルレンズを含み、第2の光学要素は凹型のシリンドリカルレンズを含む。
選択的に、第1の光学要素は、スリット表面上の画像がスリットの接線に平行な方向にデフォーカスされるように非点収差を有するフォアオプティクスであり、第2の光学要素は、フォアオプティクスの非点収差を打ち消すように構成された非点収差を有するリレーオプティクスである。
【0024】
選択的に、フォアオプティクス及びリレーオプティクスの非点収差は、光軸Zに直交しかつ2つの直交するX方向とY方向とで屈折力が異なる光学面を使用して生成される。
選択的に、フォアオプティクス及びリレーオプティクスは、フォアオプティクス及びリレーオプティクスの両方で光軸から離れて配置された少なくとも1つの光学面を有し、スリットの前でデフォーカスをもたらし、スリットの後でデフォーカスを補償する非点収差を生成する。さらに選択的に、フォアオプティクス及びリレーオプティクスの非点収差は、収差が光軸から離れていることを利用し、かつスリット全体を光軸から離して配置する、部分的に補正されていない収差の非点収差である。
【0025】
選択的に、第1の光学要素は光をデフォーカスするために使用され、第2の光学要素はこのデフォーカスを補償するために使用される。
選択的に、光学システムは、スリットを保護するモジュール内の窓として第1の光学要素及び第2の光学要素を使用することで、塵の粒子及び湿気からスリットを保護するモジュールを備える。
【0026】
選択的に、スリットを保護するモジュールは、(1)密閉され、かつ窒素又は不活性ガスで満たされているもの、又は(2)内部が真空になるように排気されているもののいずれかである。
【0027】
本発明のさらなる態様は、ハイパースペクトルカメラであり、カメラは、本発明による光学システムを備える。カメラは、(1)画像センサ及び他のカメラ機能を制御するため、(2)空間及びスペクトル画像情報を含む画像又は画像ラインを取得するため、及び(3)前記空間及びスペクトル画像情報の(a)格納及び(b)送信のうちの少なくとも1つを行うために構成された制御電子機器をさらに備える。
【0028】
本発明のさらなる態様は、本発明による光学システムを備えるハイパースペクトルカメラを使用してハイパースペクトルデータを取得するための方法である。
本発明のさらに別の態様は、ハイパースペクトルカメラの画質を改善するための方法であり、シーンからの光がスリットに到達する前に、スリットの開口部の接線に平行な方向においてシーンからの光をデフォーカスすることと、スリットの表面によってシーンからの光を遮断し、狭い領域からの光のみがスリットの開口部を通過できるようにすることで、シーンから狭い領域を切り取ることと、狭い領域からの光がスリットを通過した後でデフォーカスを補正することと、狭い領域からの補償後の光をスペクトル分散し、狭い領域のスペクトル分散画像をイメージセンサに投影することと、を含む。
【0029】
本発明の上記の及びさらなる特徴は、添付クレームに具体的に記載されており、添付図面を参照して示された本発明の例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明を考慮すれば、本発明の利点とともに明らかになるであろう。
【0030】
以下、本発明を、図面に概略的に示されている例示的な実施形態とともにさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1a及び図1bは、本発明によるハイパースペクトルカメラの光学システムの原理を示す図である。図1aは、描画面に対して垂直なスリット(1500)を備えたカメラの光学レイアウトの側面を示す図である。図1bは、光学システムが光軸を中心に90度回転していることを除いて、図1aと同様の図である。
図2図2は、光学システムの標準的な実装を示す図である。図2図1と同様の図である。ただし、図2に示すシステムは、非点収差要素(2000,2100)を含まない。図2aは、描画面に対して垂直なスリット(1500)で見た光学システムを示す図である。図2bは、90度回転した図2aの光学システムを示す図である。
図3図3は、小さな機械的欠陥(1550)のあるスリット(1500)、及び取得した画像への影響を示す図である。図3aは、一箇所でスリットが狭くなる機械的欠陥(1550)のあるスリット(1500)を示す図である。図3bは、スリット(1500)の機械的欠陥(1550)が結果の画像(1830)にどのように影響し得るかを示す図である。
図4図4は、様々なケースでスリット面(1500)を通過するときの光線(1600,1620)の断面を示す図である。図4aは、従来技術によるハイパースペクトルカメラのスリット面(1500)に欠陥が存在しない場合に、光線がスリット面(1500)を通過するときのシーンの1点からの光線(1600)の断面を示す図である。図4bは、その領域に機械的欠陥(1550)が存在する場合の同じ光線の断面を示す。図4cは、本発明によるハイパースペクトルカメラのシーン内の1点からの光線(1620)の断面を示す図である。図4eは、本発明によるハイパースペクトルカメラの正常な場合における画像内の点(1836)を表示する結果の画像(1832)を示す図である。図4fは、本発明によるハイパースペクトルカメラのスリット(1500)に機械的欠陥(1550)がある場合の結果の画像(1834)内の点(1838)を示す図である。
図5図5aは、長方形状のスリット開口部(1520)を備えるスリット面(1510)を示す図である。図5bは、湾曲したスリット開口部(1520)を備えるスリット面(1510)を示す図である。図5cは、スリット開口部(1520)に沿って幅が異なるスリット開口部(1520)を備えるスリット表面(1510)を示す図である。図5dは、スリット開口部(1520)の長辺において取り得る接線(1560)を、示されている接線(1560)に対する垂直方向(1565)とともに示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の様々な態様は、以下において添付図面を参照して十分に説明されている。しかし、この開示は、多くの異なる形態で具体化することができ、この開示を通して提示されているいかなる特定の構造又は機能にも限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、それらの態様は、この開示が緻密で完全になるように、及び本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように記載されている。本願明細書における示唆に基づいて、当業者は、本開示の他の何らかの態様と無関係に実施されるか、又は、他の何らかの態様と組合せて実施されるかにかかわらず、本発明の範囲が、本願明細書に開示されているいかなる態様も含むことが意図されていることを理解すべきである。例えば、装置は、本願明細書に記載されている任意の数の態様を用いて実施することができ、また、方法は、任意の数の態様を用いて実行することができる。さらに、本開示の範囲は、他の構造、機能を用いて、又は、本願明細書に記載されている本開示の様々な態様に加えて、又はそれらの態様以外の構造及び機能を用いて実施されるような、装置又は方法を含むことが意図されている。本願明細書に開示されている開示のいかなる態様も、クレームの1つ以上の要素によって具体化することができることを理解すべきである。
【0033】
図面を参照して実施形態を説明する前に、本発明をより一般的な方法で紹介する。
シーンの画像は、スリット面において、スリットにほぼ平行な方向Xにデフォーカスされ、スリットに垂直な方向Yで良好なフォーカスが維持される。スリットの後で、画像は、方向Xにフォーカスされ、方向Yで良好なフォーカスが継続して維持される。
【0034】
ここで、「スリットの前」は、フォアオプティクスの前の位置を含む、スリットの前の任意の位置を示す。同様に、「スリットの後」は、リレーオプティクスの後を含め、「スリットの後のどこでも」を意味する。
【0035】
これらのデフォーカス要素をフォアオプティクス及びリレーオプティクスに埋め込むことで、同じ機能を実装することができる。例えば、いくつかの光学面は非点収差を有するように形成できる、すなわち2つの直交する方向でわずかに異なる屈折力を有することができる。代替的に、光学システムは残留非点収差を有し得、光学システムの少なくとも1つの要素が軸外で使用され得る。このような実施形態の例は、3ミラー又は4ミラーのアナスチグマートである。あまり理想的ではないが、想定される解決策は、非補正の非点収差を有する完全に軸対称のシステムを使用することである。このような光学システムは、視野の中央を除く画像内のあらゆる場所で縞模様のアーティファクトを低減する。2つの弱いシリンドリカルレンズの場合と同様に、これらの解決策のいずれも、フォアオプティクスの非点収差を補償する非点収差を備えたリレーオプティクスが必要である。
【0036】
図1は、本発明によるハイパースペクトルカメラの光学システムの原理を示す。図1aは、スリット(1500)が描画面に対して垂直になるように片側から見た光学システムを示す。フォアオプティクス(1000)は、光を集め、焦点面がスリット面(1500)となるように光をフォーカスさせる。その後、光は、分散要素(1250)を含むリレーオプティクス(1200)を通って伝播し、画像センサ(1800)上にフォーカスされる。分散要素(1250)によって、異なる波長の光がイメージセンサ(1800)上の異なる部分にフォーカスされる。例示的な波長λ1の光線は矢印(1900)によって示され、例示的な波長λ2の光線は矢印(1910)によって示される。光はまた、スリット(1500)の前に第1の非点収差要素(2000)を通過し、光はまた、スリットの後の第2の非点収差要素(2100)を通過する。図からわかるように、2つの非点収差要素(2000,2100)は、図1aに示す視点/断面ではニュートラルである。
【0037】
図1bの視点は、光学システムが光軸を中心に90度回転し、スリットが描画面と平行である以外は、図1aと同様である。光はフォアオプティクス(1000)によって集められてスリット面にフォーカスされ、第1の非点収差要素(2000)は、スリットに垂直な方向においてフォーカスを保ちながら(図1a)、スリットに平行な方向において光をデフォーカスする(図1b)。それから光は、第2の非点収差要素(2100)によって集められ、分散要素(1250)を含むリレーオプティクス(1200)を通って伝播する。それから光は、イメージセンサ(1800)上にフォーカスされる。第2の非点収差要素(2100)は、第1の非点収差要素(2000)の影響を無効化する。
【0038】
図1では、光は一点にフォーカスされることなくスリット面(1500)を通過し、代わりに光は、はるかに大きな断面(1620)に分散される。断面が広い(1620)ため、スリット(1500)の小さな欠陥がイメージセンサ(1800)での信号強度に与える影響は、はるかに少なくなる。
【0039】
図2は、光学システムの標準的な実装を示す。図2図1と同様の図である。ただし、図2に示すシステムは、非点収差要素(2000,2100)を含まない。図2aは、描画面に対して垂直なスリット(1500)を有する光学システムを示し、図2bでは光学システムが90度回転されている。図2aと図2bの両方で、光はスリット面(1500)にフォーカスされる。スリット開口部の厚さの狂いは、スリットを通過する実際の光の量に影響を与える可能性があり、結果の画像に縦の縞模様を生じさせ得る。フォアオプティクス(1000)は光を集め、この光をスリット面(1500)にフォーカスさせる。分散要素(1250)を含むリレーオプティクスは、スリットを通過する光を集め、その光をイメージセンサ(1800)上にフォーカスさせる。第1の波長の光は、矢印(1900)によって示されるイメージセンサ(1800)上の1つの位置にフォーカスされ、第2の波長の光は、矢印(1910)によって示される別の位置にフォーカスされる。
【0040】
図3は、小さな機械的欠陥(1550)のあるスリット(1500)、及び取得した画像への影響を示す。図3aは、一箇所でスリットが狭くなる機械的欠陥(1550)のあるスリット(1500)を示す。狭いスリットは通常、通過する光を少なくする。小さな断面を規定よりも狭くするような機械的欠陥(1550)のあるスリットは、機械的欠陥(1550)のある領域を通過する光を少なくし、暗い縞模様(1850)を結果の画像(1830)に生じさせる。
【0041】
図3bは、スリット(1500)の機械的欠陥(1550)が結果の画像(1830)にどのように影響し得るかを示す。縦の縞模様(1850)が画像(1830)に表示される。
【0042】
図4は、様々なケースでスリット面(1500)を通過するときの光線(1600,1620)の断面と、いくつかの結果の画像の例を示す。図4aは、従来技術によるハイパースペクトルカメラのスリット面(1500)に欠陥が存在しない場合に、光線がスリット面(1500)を通過するときのシーンの1点からの光線(1600)の断面を示す。図4bは、その領域に機械的欠陥(1550)が存在する場合の同じ光線の断面を示す。容易に理解できるように、機械的欠陥(1550)のある領域を通過する光の量が大幅に減少し得る。
【0043】
図4cは、本発明によるハイパースペクトルカメラのシーン内の1点からの光線(1620)の断面を示す。光線は、点状の断面(1600)ではなく、広い断面(1620)を有する状態でスリット(1500)を通過する。
【0044】
図4dは、本発明によるハイパースペクトルカメラにおいて、機械的欠陥(1550)を有するスリットを示す。光線は、図4cと同様に広い断面を有する。図4dに示す場合、機械的欠陥(1550)は断面の一部にのみ影響を与えるため、光の強度の低下は図4bに示す例よりもはるかに小さくなる。
【0045】
図4eは、本発明によるハイパースペクトルカメラの正常な場合における画像内の点(1836)を表示する結果の画像(1832)を示す。図4fは、本発明によるハイパースペクトルカメラのスリット(1500)に機械的欠陥(1550)がある場合の結果の画像(1834)内の点(1838)を示す。本発明によるハイパースペクトルカメラでは、画像は、スリット(1500)の機械的欠陥(1550)の影響をほとんど受けない。
【0046】
図5は、スリット表面とスリット開口部の様々な態様を示す。示された実施形態の1つの代替例は、スリット表面の開口部を使用するスリット設計の代わりに反射スリットを使用することである。このとき開口部は鏡のような反射面に置き換えられるが、他の設計は同様の方法で本発明を使用することができる。
【0047】
図5aは、長方形状のスリット開口部(1520)を備えるスリット面(1510)を示す。スリット開口部(1520)はまた、図5bに示されるように湾曲させることができる。図5cは、スリット表面(1510)にストライプを形成するスリット開口部(1520)を備えたスリット表面(1510)を示し、スリット開口部(1520)はスリット開口部(1520)に沿ってその幅が異なる。ストライプの接線とは、ストライプの2つの長辺又はストライプの中心線のうちの1つの線、あるいはこれら3本の線の間の線に対し、それぞれ長辺又は中心線の各点で接する線を意味する。図5dは、スリット開口部(1520)の長辺において取り得る接線(1560)を、示されている接線(1560)に対する垂直方向(1565)とともに示す。
【0048】
スリットは、直線状又は曲線状のスリットのいずれかであり得る。直線状のスリットの場合、スリットはスリット面と呼ばれる平面に配置される。曲線状のスリットの場合、スリットは湾曲した幾何学的表面に配置される。簡略化のために、本出願全体を通して、スリットが直線状又は曲線状であっても、「スリット面」という用語が両方の場合に使用される。
【符号の説明】
【0049】
1000:フォアオプティクス
1200:リレーオプティクス
1250:分散要素
1500:スリット面
1510:スリット表面、もしくは面又は3D表面
1520:スリット開口部、異なる形状、アスペクト比であり得、長さ:幅が10:1以上
1560:スリット開口部の長辺に対する接線
1565:接線に対して垂直な方向
1550:機械的欠陥
1600:光線の断面
1620:光線(光)の断面
1800:イメージセンサ
1830:結果の画像
1832:結果の画像
1834:結果の画像
1836:本発明による点の画像
1838:スリットに欠陥が存在する場合の本発明による点の画像
1850:縦のストライプ
1900:第1の波長の光
1910:第2の波長の光
2000:第1の非点収差要素
2100:第2の非点収差要素
2200:スリット面の後ろの面/点
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図5c
図5d