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特許7453224構成群を制御装置に無線接続するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】構成群を制御装置に無線接続するシステム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B25J19/00 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021524267
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 DE2019000290
(87)【国際公開番号】W WO2020094166
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】102018008648.9
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509060154
【氏名又は名称】マルティン ツィマー
【氏名又は名称原語表記】Martin Zimmer
【住所又は居所原語表記】Im Salmenkopf 7, 77866 Rheinau, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】509060143
【氏名又は名称】ギュンター ツィマー
【氏名又は名称原語表記】Guenther Zimmer
【住所又は居所原語表記】Im Salmenkopf 11, 77866 Rheinau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ツィマー
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ツィマー
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-514558(JP,A)
【文献】特開2010-36286(JP,A)
【文献】特開2014-34075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
なくとも1つのアクチュエータと少なくとも1つのセンサとを備える-操作装置(1)によりガイドされる-構成群(80)を制御装置に接続するシステムにおいて、
前記制御装置は、前記操作装置(1)から空間的に分離され、少なくとも1つの送受信装置(111)を備えた無線マスタ(110)を有しており、
前記システムは、複数の個別のシステムモジュール(20,30,40,50,90)が多層に直列配置され、前記構成群(80)を支持するアダプタシステム(19)の一部であり、システムモジュール(20,30,40,50,90)のうちの1つは通信モジュール(50)であり、
前記通信モジュール(50)は、前記無線マスタ(110)と通信するための、少なくとも1つの送受信装置(61,63)を有しており、
前記通信モジュール(50)には、負荷線路(101)を有する前記操作装置(1)を介して負荷電圧が供給され、
前記通信モジュール(50)の内部または傍らで、前記負荷電圧はDC/DCまたはAC/DCコンバータ(51)により直流目標電圧に変換され、
該直流目標電圧は、前記通信モジュール(50)の前記送受信装置(61,63)に供給されることを特徴とする、構成群を制御装置に接続するシステム。
【請求項2】
前記DC/DCコンバータ(51)の出力部には、エネルギ蓄え用にコンデンサ(55)が取り付けられている、請求項1記載の構成群を制御装置に接続するシステム。
【請求項3】
前記通信モジュール(50)は、モジュールケーシングに張出し部(73)を有しており、該張出し部(73)内には、把持アーム(89)の間に位置する空間を観察するためのカメラ(74)が配置されている、請求項1記載の構成群を制御装置に接続するシステム。
【請求項4】
前記通信モジュール(50)の前記張出し部(73)の両側には、前記送受信装置(61,63)の個別のアンテナ(62,64)が配置されている、請求項記載の構成群を制御装置に接続するシステム。
【請求項5】
前記通信モジュール(50)の前記アンテナ(62,64)はそれぞれ、前記無線マスタ(110)のアンテナと通信する、請求項記載の構成群を制御装置に接続するシステム。
【請求項6】
前記無線マスタ(110)の前記送受信装置(111)と、前記通信モジュール(50)の前記送受信装置(61,63)との間で、1つまたは複数の前記アクチュエータを制御する信号ならびに1つまたは複数の前記センサの被評価情報が、無線により伝達される、請求項1記載の構成群を制御装置に接続するシステム。
【請求項7】
前記信号の伝達はコード化されて行われる、請求項記載の構成群を制御装置に接続するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数部分、つまり少なくとも1つのアクチュエータと少なくとも1つのセンサとから成るアダプタシステムの一部としての-操作装置によりガイドされる-構成群を制御装置に接続するシステムに関する。
【0002】
PLCに接続された操作装置は、最後のリンクと組み合わせられた、例えば複数のリンクから成る6軸ロボットであり、6軸ロボットは、並列グリッパを支持している。PLCと並列グリッパとの間の通信用に、PLC内にはバスマスタがあり、バスマスタは、例えば少なくとも1つのIO-Linkポートを介して並列グリッパのアクチュエータとセンサとに作用する。
【0003】
独国特許出願公開第102017009319号明細書から公知の、操作装置の運動学チェーンの最後のリンクを操作装置に接続するアダプタシステムでは、最後のリンクが、計算・メモリモジュールならびに少なくとも1つのアクチュエータおよび/または少なくとも1つのセンサを有している。この場合、運動学チェーンの最後から2つめのリンクと最後のリンクとの間には、直列に位置決めされた複数のシステムモジュールが配置されている。1つのシステムモジュールが有する電子機器構成群は、予め設定されたシステムアーキテクチャと交換すべき、インバウンドの電気接続線路の通信データを、最後のリンクの機器インタフェースとの通信用に適合させまたは変換し、伝達箇所を介して有線で通信することができるように提供する。
【0004】
インテリジェントアクチュエータは、一般に複数のインテリジェントセンサも有している。個々のセンサは、基本センサと、電子評価装置と、少なくとも1つの通信インタフェースとから成る。アクチュエータとセンサとは、それぞれインタフェースを有しており、これらのインタフェースは、操作装置の自動化環境において、一般に既存のシステムアーキテクチャに組み込まれる必要がある。アーキテクチャの範囲内で、多少なりとも調和させられた複数の自動化レベルに基づき異なる複数のハードウェアプラットフォームが動作しており、これらのハードウェアプラットフォームは、センサバスおよび/またはアクチュエータバスからフィールドバスとファクトリーバスとを介して制御レベルまで延在している。
【0005】
本発明の根底を成す課題は、アクチュエータとセンサとを備える構成群を、制御しかつ調整するバックグラウンドソフトウェアおよびハードウェアの任意のシステムアーキテクチャに-操作装置にわたり敷設される信号線路無しで-統合することができる、構成群を制御装置に接続するシステムを提供することにある。
【0006】
この課題は、独立請求項記載の特徴により解決される。この場合、制御装置は、操作装置から空間的に分離され、少なくとも1つの送受信装置を備えた無線マスタを有している。構成群は、無線マスタと通信するための、少なくとも1つの送受信装置を有している。構成群には、操作装置を介して負荷電圧が供給される。構成群の内部または傍らで、負荷電圧はDC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータにより直流目標電圧に変換される。直流目標電圧は、構成群の送受信装置に供給される。
【0007】
通常、市販の操作装置は、様々な電力供給手段および異なる通信方法を有している。その結果、操作装置の運動学チェーンの最後のリンクとして配置されている端末機器の製造者は、その端末機器をこれらの電力供給手段と通信方法とに個別に適合させねばならない。手間のかかるハードウェア適合を回避するために、本発明により提供されるシステムは、一方では無線技術、つまりいわゆるブリッジ技術を用いて、操作装置も接続された制御装置から、各端末機器、例えばグリッパへ、制御情報が伝達される。他方では、このシステムは端末機器内に通信モジュールを有しており、通信モジュールにおいて、操作装置のエネルギ供給手段が、端末機器のエネルギ供給手段に適合される。つまり通信モジュールは、供給されたエネルギと、無線により受け取った情報とを、IO-Linkケーブルを介して各端末機器に転送するインタフェースである。
【0008】
複数の部分から成るアダプタシステムは、多層に直列配置された複数の個別のシステムモジュールの一群から成っている。これらのシステムモジュールの順序は、部分的に任意に交換可能である。通信モジュールには、無線IO-Linkポートの代わりに、複数ポート用の無線IO-Linkマスタが組み込まれていてもよいため、複数のグリッパを支持しかつ制御するための複数の分岐を備えたシステムモジュールを提供する可能性が生じる。
【0009】
本発明のさらなる詳細は、下位請求項および略示した少なくとも1つの実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】アダプタシステムを介して適合させられるグリッパを備えた操作装置を示す斜視図である。
図2】アダプタシステムを、図1に示したグリッパと共に拡大して示す斜視図である。
図3】グリッパの供給電圧の電圧変換と組み合わせた、PLCとグリッパとの間の無線通信の原理図である。
【0011】
図1には、多関節型ロボットとして形成された、いわゆるRRR運動学を有する操作装置(1)が示されている。多関節型ロボット(1)の直列式の運動学的な構造は、3つの回転主軸と3つの回転副軸とを有している。主軸は、A軸(3)、B軸(5)およびC軸(7)である。A軸(3)は、鉛直方向の回転軸線を備えた回転台(4)であり、回転台(4)は、操作装置の基底板(2)に支承されている。回転台(4)は、第1の運動学チェーンリンクとして、水平方向のB軸(5)を中心として-例えば210度だけ-旋回可能なフットレバー(6)を支承している。フットレバー(6)の自由端部には、やはり水平方向の旋回軸線を備えた関節としてC軸(7)が着座しており、C軸(7)は、ニーレバー(8)を支持している。ニーレバー(8)は、フットレバー(6)に対して、例えば270度だけ旋回可能である。
【0012】
第1の副軸、つまりD軸(11)は、回転軸であり、その長手方向軸線を中心として回転可能な支持アーム(12)から成っており、支持アーム(12)は、ニーレバー(8)の自由端部に支承されている。第2の副軸は、E軸(13)であり、E軸(13)を中心として、ハンドレバー(14)が例えば270度だけ旋回可能に支承されている。ハンドレバー(14)は、F軸(16)を中心として回転可能に支承された、360度だけ旋回可能な回転プレートを支持している。回転プレートは、運動学チェーンの最後から2つめのリンク(15)である。このリンク(15)には、アダプタシステム(19)がグリッパ(80)と共に取り付けられている。アダプタシステム(19)には、本実施例では複数のシステムモジュール(20,30,40,50,90)が含まれる。システムモジュールの数は決まっていない。システムモジュール(30)とシステムモジュール(90)との間には、複数の別のシステムモジュールが組み込まれてよい。
【0013】
個々の軸(3,5,7,11,13,16)を相応に協調させて制御することにより、多関節型ロボット(1)の作業空間内に任意に位置するほぼ全ての直線区間または湾曲した軌道曲線を移動することができる。このことは、直角座標型ロボット、円筒座標型ロボットまたは極座標型ロボットに基づく操作装置によっても実現され得る。この場合、ロボットは相応して、TTT運動学、RTT運動学またはRRT運動学を有している。この場合、「T」は並進主軸もしくは並進ガイドを表し、「R」は回転主軸もしくは回転ガイドを表す。
【0014】
これらのロボットに代えて、直列式の構造の代わりに並列式の構造またはハイブリッド式の構造を有する操作装置がそれぞれ利用されてもよい。並列式の構造としては、トライポッド、ペンタポッドまたはヘキサポッドが使用され得る。
【0015】
図2には、アダプタシステム(19)がグリッパ(80)と共に拡大されて示されている。アダプタシステム(19)には、本実施例では直列に配置された4つのモジュールが含まれる。これらのモジュールは順に、機構モジュール(20)、接続モジュール(30)、変形モジュール(40)および通信モジュール(50)である。
【0016】
機構モジュール(20)は、少なくとも部分的に円錐台カバー状のベースモジュールケーシングを有しており、このベースモジュールケーシングを介して機構モジュール(20)は、回転プレート(15)に不動に取り付けられている。このためにベースモジュールケーシングはその上面に、例えば大型の四角ピンを有しており、この四角ピンは、回転プレート(15)に設けられた対応する凹部に形状結合式に係合する。ベースモジュールケーシングの上面と下面とは、中心の貫通孔を介して互いに接続されている。貫通孔には-ここには図示しないが-気送管と、多数の心線とより線とから成るケーブルバンドルとが通される。
【0017】
機構モジュール(20)は、後続モジュール、つまり接続モジュール(30)と共に、1つの機構インタフェースを形成する。接続モジュール(30)もやはり、部分的に円錐台カバー状の接続ケーシングを有している。接続ケーシングの上面には、圧縮空気を供給するための供給管が配置されている。供給導管の隣にはケーブルクリップが位置しており、ケーブルクリップにより、上述したケーブルバンドルが機構モジュール内で引張り強さを有するように拘束される。
【0018】
接続モジュール(30)の中空の接続ケーシング内では、ケーブルクリップに保持されたケーブルバンドルの個々の心線とより線とが、例えば接続ケーシング(30)の下面中心に配置された接続ブシュに取り付けられている。
【0019】
図2では、接続モジュール(30)に変形モジュール(40)が続いている。2つのモジュール(30)と(40)とを接続するために、変形モジュール(40)はその上面中心に、接続モジュール(30)の接続ブシュに嵌合する接続コネクタを有している。
【0020】
変形モジュール(40)は実質的に、ケーシング上部と、ケーシング下部と、その間に位置するエラストマ層とから成っている。エラストマ層は、可撓性のケーシング壁を成している。
【0021】
変形モジュール(40)内には、例えば力・トルクセンサがスポーク構成形式で組み込まれている。このセンサは、複数の四角スポークを備え、中心ディスクを有するフットリングと、ヘッドリングと、4つの四角柱とから成る。四角柱は、ディスクとヘッドリングとを結合している。各柱と各スポークとには、ひずみゲージ対が1つずつ配置されている。柱および/またはスポークの弾性変形から、ひずみゲージの抵抗変化を介して、作用する力とトルクとを、座標軸に関して求めることができる。この場合、フットリングは変形モジュール(40)のケーシング上部に取り付けられている一方で、ヘッドリングは変形モジュール(40)のケーシング下部に取り付けられている。センサから送られた信号は、6×8の行列・ベクトル乗算を介して力・トルク値に変換される。このために変形モジュールは、専用の計算デバイスを有している。計算値は、アダプタシステムの各モジュールの線路およびコンタクト箇所を介して、グリッパのコンピュータ・メモリユニットに送られ、そこで計算値は、-アダプタシステムの構成に応じて-変形モジュール(40)と把持アーム(89)との間に生じるレバー長さに適合させられる。
【0022】
変形モジュール(40)は、ケーシング上部において中心に配置された接続コネクタを有している一方で、ケーシング下部の中心には、接続モジュール(30)から既に周知の接続ブシュを有している。
【0023】
変形モジュール(40)は、互いに垂直に位置する2つの平面内で、少なくとも1つのシステムモジュールと、最後のリンク(80)とから成る組合せの曲げを測定し、この場合、2つの平面の交線はシステムモジュール(20,30,40,50)の中心線(16)である。求められた曲げは、例えば荷重が加えられるグリッパ(80)の荷重に関する基準である。
【0024】
変形モジュール(40)には、同様に中心の接続コネクタを介して通信モジュール(50)が接続しており、接続コネクタを介してとりわけ、上面から、下面に配置された接続ブシュに対して-DC/DCコンバータを介して-エネルギも供給されるようになっている。通信モジュール(50)は部分的に、少なくとも部分的に円筒形の外壁を備えた通信ケーシングを有している。
【0025】
通信ケーシングの内室内には、DC/DCコンバータ(51)が電力インタフェースとして配置されている(図3参照)。DC/DCコンバータ(51)は、制御装置(100)から負荷線路(101)を介して操作装置(1)にわたり提供される供給電圧、例えば48ボルトの直流電圧を、直流目標電圧に変換する。本実施例では、24Vの直流目標電圧が必要とされ、この直流目標電圧は、負荷線路(53)を介してグリッパ(80)もしくは通信モジュール(50)に続くシステムモジュールに送られる。
【0026】
ロボット(1)が例えば交流電圧を供給する場合には、DC/DCコンバータ(51)の代わりにAC/DCコンバータが利用される。ロボット(1)が直流目標電圧を下回る電圧を供給する場合には、ロボット電圧を必要とされる直流目標電圧に上げるコンバータが組み込まれる。
【0027】
追加的に、DC/DCコンバータ(51)にはいわゆるブースタとして、コンデンサ(55)が並列接続され得る(図3参照)。追加的なエネルギ蓄え器として、コンデンサは一時的なピーク電流を捕捉しひいては比較的短時間の間、構成群(80)に、操作装置(1)から持続的に提供され得るよりも多くのエネルギを提供することができる。この時間は、電力供給量に応じて数ミリ秒~1秒である。コンデンサの容量は、例えば最大100mFであってよい。
【0028】
通信モジュール(50)の内部または傍らには、少なくとも1つのアンテナ(62,64)が接続された、少なくとも1つの送・受信装置(61,63)が配置されている。これらの送受信装置(61)および/または(63)は、図3では負荷線路(102)と信号線路(103)とを介して制御装置(100)に接続された無線マスタ(110)の対応する送受信装置(111)と双方向通信する。無線マスタ(110)は、本実施例ではIO-Link無線マスタである。図2に示す各送受信装置(61,63)は、無線マスタ(110)内に対応する送受信装置を有している。
【0029】
IO-Link無線マスタは、例えば2.4GHzで通信し、その通常の無線到達距離は、出願時点では例えば10mである。
【0030】
IO-Linkブリッジとも呼ばれる送受信装置(61,63)は、例えば複数の基板上に構成された電子機器構成群に属する電気機器の一部である。もちろんIO-Linkブリッジを、1つまたは複数のアンテナ(62,64)と共に別個のデバイスとして、電子機器構成群に含めることもできる。
【0031】
電子機器構成群は、アダプタシステム(19)内でワイヤまたはグラスファイバを介して、グリッパ(80)と、取り付けられたシステムモジュール(20,30,40,50,90)のうちの少なくとも一部とに接続している。IO-Linkブリッジ(61,63)と電子機器構成群とは、電圧供給線路(65)(図3参照)を介してDC/DCコンバータ(51)の出力部に接続されている。
【0032】
よって本システムでは、グリッパ(80)はそのエネルギを、ロボット(1)のエネルギ供給部から受け取る。これとは異なり、グリッパ(80)はその制御信号を、ロボット(1)に沿って案内されたケーブルハーネスを介してではなく、通信モジュール(50)の送受信装置(61,63)と、制御装置の領域に配置された無線マスタ(110)との間で無線を介して受け取る。
【0033】
図2では、通信モジュール(50)のケーシングは側方にカメラケーシングとして、少なくともほぼ直方体形の張出し部(73)を有している。張出し部内には、場合によりカメラ(74)が収納されている。カメラのカメラレンズは、張出し部(73)の下面に設けられた凹部の後方に配置されている。カメラレンズの光軸は、グリッパ(80)の各把持アーム(89)の間に位置する緊締空間のほぼ中心と交わる。これにより、カメラ(74)の視野が、把持されるべきワークと把持アーム(89)とを捉えるようになっている。張出し部(73)の下面においてカメラレンズの周りには、緊締空間を照らす例えば4つの照明用発光ダイオード(75)が配置されている。
【0034】
張出し部(73)の両側の側方には、送受信装置(61,63)として例えば2つの無線IO-Linkアダプタが配置されている。各送受信装置(61,63)にはアンテナ(62,64)が配置されている。両方のアンテナ(62,64)は、送受信特性の改善のために、互いに90°だけ旋回させられて配置されている。この場合、アンテナ(64)は、例えばアダプタシステム(19)の中心線に対して平行に位置決めされている。もちろん、両方のアンテナ(62,64)が互いに平行に方向付けられていてもよい。
【0035】
図2では、通信モジュール(50)にグリッパ(80)が運動学チェーンの最後のリンクとして結合されている。
【0036】
グリッパ(80)は、電子機器部分と機構部分とから成る。グリッパはそのケーシングを介して通信モジュール(50)に取り付けられている。この場合、グリッパはその接続コネクタを、通信モジュール(50)の接続ブシュに差し込んでいる。
【0037】
各モジュール(30,40,50)とグリッパ(80)とを互いに確実に、簡単にかつ迅速に結合することができるようにするために、各モジュールとグリッパ(80)とはそれぞれ、例えばバヨネットクロージャを介して機械的に連結されている。このために全ての個々のモジュールケーシングおよびグリッパケーシングは、各上面の縁部領域に、周に沿って分散された複数のバヨネット舌片を有している。モジュールケーシングおよびグリッパケーシングは、その各下面の縁部領域に、そこで細目ねじ山に支承された個別のバヨネットリングを有している。個別のバヨネットリングは、その下面に環状のバヨネットウェブを有しており、バヨネットウェブは周に沿って少なくとも、各モジュールケーシングが有するバヨネット舌片と同数の中断部を有している。
【0038】
各モジュールケーシングを互いに結合するためには、結合しようとする各モジュールの接続コネクタと接続ブシュとが互いに内外になるように差し込まれ、このときバヨネット舌片は、バヨネットリングの中断部を、遊びをもって通過する。バヨネットリングのねじ締結により、個別のバヨネットウェブは隣接するバヨネット舌片に軸方向において当接し、これにより各モジュールケーシングは、細目ねじ山に基づき互いに引き寄せられることになる。所定の保持力を予め設定するために、バヨネットリングは回転ストッパを有していてよい。
【0039】
バヨネットリングを回転させて締めると、各モジュール(30,40,50)とグリッパ(80)とは手の力により-工具を使用せずに-互いに形状安定的に結合された状態になる。この場合、互いに接触し合うアダプタ幾何学形状の間に、全ての電気的なコンタクトが形成される。
【0040】
連結時に、各モジュールは空圧式にも互いに結合される。このために、個々の接続ブシュの中心に組み込まれた各供給管は、各接続コネクタの中心に配置された供給孔内に、センタリングされてかつ気密に侵入している。
【0041】
場合により、各モジュール(30,40,50)ならびにグリッパ(80)は、嵌合ピン-嵌合孔の組合せにより、中心線(16)を中心として互いに回転しないように位置固定されている。
【0042】
もちろん、各モジュール(30,40,50)とグリッパ(80)とは、別の方法で互いに位置固定されてもよい。
【0043】
グリッパ(80)では、ベースケーシングにグリッパケーシングが接続しており、グリッパケーシングはベースケーシングに、例えば支持挿入部-図示せず-を介して取り付けられている。支持挿入部は、背面係合により、グリッパケーシングを位置固定する。グリッパケーシング内には、単なる例に過ぎないが、把持アーム(89)の調整駆動装置としてシリンダ・ピストンユニットが配置されている。シリンダ・ピストンユニットのピストンは、ダブル楔フック伝動装置を介して、キャリッジに着座している把持アーム(89)を動かす。ピストンロッドが行程運動する度に、キャリッジはそのガイドを中心線(16)に対して横方向に強制案内されて動かされる。少なくとも2つのセンサを用いて、ピストンの終端位置に手を入れることができる。場合により、圧力センサが楔フックにおいて、ワークを保持する際に把持アームに印加される緊締力を測定する。
【0044】
さらに、ベースケーシング内には少なくとも1つの空気圧弁が配置されていてよく、これにより、シリンダ・ピストンユニットのシリンダの圧力室に圧縮空気を電子制御して供給するかまたは吹き出すことができる。
【0045】
図2に示したグリッパ(80)の代わりに、電気機械式の駆動装置を備えたグリッパも使用可能である(独国特許出願公開第102015012779号明細書の並列グリッパ参照)。
【0046】
このようなグリッパのケーシング内には、完全に見合ったサーボ調整器もしくはサーボ軸調整器が、付随する計算・メモリモジュールと共に組み込まれている。サーボ調整器は工場側で、エンドユーザもしくは機械オペレータが把持装置を対応する把持物もしくはワークに対して調整するために特別な専門知識を必要としないようにプログラミングされる。この場合、把持物は形状安定性であっても弾性であってもよい。
【0047】
例えば把持行程や、弾性・把持幅に関連した把持行程上乗せ分等の簡単なパラメータの他に、計算・メモリモジュール内には、例えば顧客固有の特定の把持物に関してカタログ化され、機械オペレータが把持物番号を介して呼び出すことができる特別な把持法が格納されていてよい。このようにして、2つの異なる周知の把持課題の間での迅速な切替えが可能である。
【0048】
このためにサーボ調整器と、これに付随する計算・メモリモジュールとは、グリッパのケーシング内に直接に着座している。把持装置固有の値と調整器の設定とは全て、製造者側で把持装置ソフトウェア内に直接にプログラミングされる。新規の把持課題用の把持法は、顧客側の機械オペレータにより手動制御されて訓練により習得され、装置側の計算・メモリモジュールに直接にかつ永続的に、例えば新規の把持物番号と共に記憶させられる。新規の把持物番号としては、次の空き番号が自動的に選択されるか、またはPLC入力キーボードを介して数値が入力される。その他の調整過程または訓練習得過程も、一般にこのキーボードを介して予め設定される。
【0049】
機械オペレータにより入力された把持物番号に関連するデータセットは変更または消去され得、このために工作機械側のプログラマブルロジックコントローラに介入する必要はない。
【0050】
把持装置側の計算・メモリモジュール内には、任意に測定・評価アルゴリズムがプログラムされており、この測定・評価アルゴリズムは、一般的な把持機能の最中に、ケーシング温度、ケーシング振動、固体伝搬音等といった周辺環境パラメータをも測定し、記録することができる。これらのデータは摩耗統計に変換され、これに基づき、次の保守整備または装置オーバーホールの時点を求めることができると共に、この時点に到達したことを、例えば音響的または視覚的に装置に表示することができる。周辺環境パラメータおよび/または計算・メモリモジュールによる周辺環境パラメータの評価および解釈も、把持装置固有のデータインタフェース、つまり通信モジュール(50)を介して、操作装置(1)もしくは設備のプログラマブルロジックコントローラに、無線により伝送し戻すことができる。
【0051】
図2では、グリッパケーシングに例えば2つの抵抗式力センサが、それぞれFSRセンサ(96)の形態で配置されている。これらのセンサの補助により、機械オペレータが現場でグリッパ(80)を開閉することができるようになっている。
【符号の説明】
【0052】
1 操作装置、多関節型ロボット、6軸ロボット
2 基底板
3 A軸
4 回転台、第1のリンク
5 B軸
6 フットレバー
7 C軸
8 ニーレバー
11 D軸
12 支持アーム
13 E軸
14 ハンドレバー
15 最後から2つめのリンク;回転プレート
16 F軸、旋回軸、中心線
19 アダプタシステム(全モジュール)
20 機構モジュール、第1のシステムモジュール
30 接続モジュール、第2のシステムモジュール
40 変形モジュール、第4のモジュール
50 通信モジュール、第3のモジュール
51 DC/DCコンバータ
53 (80)の負荷線路
55 コンデンサ、エネルギ蓄え器、ブースタ、任意
61,63 送受信装置、ブリッジモジュール
62,64 アンテナ
65 (61,63)の電圧供給線路
67 (80)への信号線路および(80)からの信号線路
73 張出し部;カメラケーシング、任意
74 カメラ、任意
75 照明用発光ダイオード、任意
80 構成群、最後のリンク;グリッパ
89 把持アーム
90 グリッパベースモジュール、システムモジュール、ベースケーシング
96 FSRセンサ
100 制御装置(PLC)
101 (51)に通じる負荷線路、可変
102 (110)に通じる負荷線路
103 (110)に通じる信号線路
110 無線マスタ
111 (110)の送受信装置
図1
図2
図3