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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】骨髄増殖性障害を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/55 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/55
A61K31/519
A61P7/00
A61P7/04
A61P7/06
A61P1/16
A61P1/00
A61P11/00
A61P3/02
A61P25/04
A61P1/08
A61P25/20
A61P17/04
A61P19/08
A61P29/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021530108
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 US2018062534
(87)【国際公開番号】W WO2020112086
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)発行者名/コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 刊行物名/PhaseII Study Document 発行年月日/平成30(2018)年2月20日 (2)発行者名/コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 刊行物名/FormS1 Registration Statement 発行年月日/平成30(2018)年6月22日 (3)発行者名/Frontline Medical Communications Inc. 刊行物名/MDedge Hematology and Oncology 発行年月日/平成30(2018)年11月6日 (4)刊行物名/Blood Journal 発行年月日/平成30(2018)年11月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)発行者名/コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 刊行物名/Phase II Study Document 発行年月日/平成30(2018)年2月20日 (2)発行者名/コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド 刊行物名/Form S1 Registration Statement 発行年月日/平成30(2018)年6月22日 (3)発行者名/Frontline Medical Communications Inc. 刊行物名/MDedge Hematology and Oncology 発行年月日/平成30(2018)年11月6日 (4)刊行物名/Blood Journal 発行年月日/平成30(2018)年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】513137422
【氏名又は名称】コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLATION PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】センデロビッチ,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,マイケル
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-544847(JP,A)
【文献】Cancer Cell,2018年01月,Vol.33,pp.29-43
【文献】J.Med.Chem.,2016年,Vol.59, pp.1330-1339
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における骨髄線維症を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を含む、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記対象が、以前に、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤による治療を受けたことがある、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記対象が、JAK阻害剤に対して進行/再発している、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記対象が、JAK阻害剤に対して難治性/抵抗性である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記対象が、以前に、ルキソリチニブによる治療を受けたことがある、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
さらに、治療有効量のルキソリチニブを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
対象における骨髄線維症を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を含む、治療有効量のルキソリチニブまたはその薬学的に許容される塩とともに用いるものである、前記医薬組成物。
【請求項8】
前記対象が血球減少症である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記対象が貧血である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記対象が、10g/dL未満のヘモグロビン数を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象が血小板減少症である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記対象の血小板数が、120,000個の血小板/μLより少ない、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記対象が血小板血症である、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記対象の血小板数が、500,000個の血小板/μLより多い、請求項1~10および13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象が好中球減少性である、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記対象の絶対好中球数が、1000個の好中球/血液μL数より少ない、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記対象が、肥大した脾臓または肝臓を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記対象が、腹部不快感、労作時呼吸困難、早期満腹感、疲労感、頭痛、夜間発汗、めまい、不眠症、掻痒症、または骨痛に罹患している、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記対象が輸血依存性である、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記対象が、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を100mg/日~300mg/日投与される、請求項1~5および8~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記対象が、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を125mg/日投与される、請求項1~5および8~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記対象が、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を100mg/日~300mg/日投与される、請求項6~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記対象が、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を125mg/日投与される、請求項6~19および22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記対象が、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を1日1回投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
骨髄増殖性障害は、骨髄および血液の疾患である。骨髄線維症は、例えば、巨核球における不自然な異常を特徴とする、クローン性骨髄増殖性疾患である。異常な巨核球は、主にJAK/STAT経路の異常調節に起因するが、いくつかの他の経路にも異常調節が存在する。影響を受ける複数の経路および数々の下流の効果に起因して、骨髄線維症は、多くの相互に関連する特徴を有する複雑な異質性疾患である。異常な巨核球は、両方とも炎症促進性および線維化促進性(トランスフォーミング増殖因子ベータ[TGF-β])である過剰な血小板およびサイトカインを骨髄に放出する。炎症促進性サイトカインは、身体を衰弱させる全身症状を引き起こし、線維化促進性経路によってシグナル伝達されるコラーゲンの沈着を悪化させる。骨髄の線維形成は、骨髄線維症の特徴であるが、診断は必ずしもそれに依存しない。骨髄の線維形成は、この疾患に関連する罹患率および死亡率を引き起こす主要な特徴である。骨髄線維症の骨髄の線維形成および炎症状態は、多くの場合、血球減少症、髄外造血(EMH)、脾腫大および肝腫大などの臓器肥大、ならびに多数の全身症状を引き起こす。
【0002】
骨髄線維症は、生命を脅かし、生存に影響を及ぼす前に患者の生活の質を大幅に低下させるという点で、深刻な疾患である。2つの最も一般的な死亡原因は、急性骨髄性白血病(AML)への転換および疾患の進行である。治療パラダイムは、存在する危険因子の数によって左右され、次いで、様々な生存率と相関する。同種異系造血幹細胞移植(HCT)は、治癒的なものであってもよいが、その自身の罹患率および死亡率と関連しており、その使用を、移植を進める危険性よりも予後の方が悪い(5年未満)適格な患者に限定する。残りの治療は、その作用機序(例えば、骨髄線維症に関連することが多い貧血に特に焦点を当てた治療)に起因して、または治療が誘発することができる限定的な効果(例えば、標準治療であるルキソリチニブ)に起因して、本質的により緩和的である。
【0003】
JAK1/2阻害剤であるルキソリチニブは、骨髄線維症の治療に適応される唯一の承認された療法である。JAKは、造血、免疫制御、成長および胚発生における主要な制御因子である(Stahl M,Zeidan AM(2017).Management of Myelofibrosis:JAK Inhibition and Beyond.Expert Rev Hematol;17(5):459-477)。JAKシグナル伝達の異常調節によって、トロンボポエチンシグナル伝達の増加を引き起こす場合があり、これは骨髄線維症における巨核球産生および血小板の増加の原因の1つであると考えられる。さらに、JAKシグナル伝達は、全身症状および脾腫大を引き起こす炎症促進性サイトカインおよび成長因子の放出に関与している。JAK-1は、骨髄線維症における全身症状の原因である炎症促進性サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、TNF-α)のシグナル伝達において役割を果たし、JAK-2は、骨髄線維症において脾腫大を促進すると考えられる成長因子および他のサイトカイン(例えば、IL-3、IL-5)に影響を及ぼす。この作用機序を通じて、ルキソリチニブは、骨髄線維症患者の脾臓の体積および症状を減少させ、それによって、患者の生活の質を改善する能力を示している。しかし、残念ながら、ルキソリチニブの現在の使用にはいくつかの制限が存在する。
【0004】
ルキソリチニブは、疾患修飾効果がないため、緩和治療とみなされる。突然変異対立遺伝子の負荷または骨髄の線維形成には影響を与えない(Novel Therapies for Myelofibrosis,2017,Curr Hematol Malig Rep;12(6):611-624)。加えて、全身症状は、ルキソリチニブ治療を止めて1週間後には元に戻る(Tefferi A(2017);Management of Primary Myelofibrosis;UpToDate;1-23を参照)。次に、貧血は、患者の生活の質に悪影響を与え、生存期間の短縮を予測する最大の力を有し、最適な標準治療へのアクセスを制限する。ルキソリチニブは、赤血球細胞産生およびヘモグロビンレベルを低下させることが知られているため、ルキソリチニブは、一部の貧血患者にとって実行可能な治療オプションではない。貧血患者は、例えば、低用量のルキソリチニブが不十分な応答を引き起こすことを考慮して、ルキソリチニブで全く治療されないか、または完全な用量のルキソリチニブを与え、典型的には、赤血球細胞(RBC)輸血の必要性が生じる。例えば、Haematologica.2016 Dec;101(12):e482-e484を参照されたい。RBC輸血に依存性になった患者は、生活の質および予後のさらなる悪化に苦しむ。別の満たされていない医学的需要は、骨髄線維症を治療する代替療法がないことである。このことは、i)ルキソリチニブに対する十分な応答を達成しない者、ii)ルキソリチニブに対して不耐容である者、およびiii)ルキソリチニブによる治療にもかかわらず、進行する者が、代替治療のオプションをほとんど有さないか、または全く有さず、また、初期応答にもかかわらず時間経過に伴って進行する者(患者のおよそ75%が、進行または毒性に起因してルキソリチニブを中止している)を意味する。
【発明の概要】
【0005】
ここで、ブロモドメインおよびエクストラターミナル(BET)ファミリーの阻害剤である2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドが、骨髄線維症の治療に有効であり、現在の標準治療(すなわち、ルキソリチニブ)を上回る多数の利点を有することが見出された。
【0006】
ルキソリチニブとは異なり、骨髄線維症の対象を2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドで治療すると、ヘモグロビンレベルが増加した。このことは、貧血でもある対象にとっては、特に重要である。例えば、以下の実施例の章において、患者247および248は、約8g/dLから約11.5g/dLの正常付近までのヘモグロビンレベルの増加を経験した。例えば、図5を参照。加えて、血小板数は、約8g/dLから約10.9g/dLまで正常化された。例えば、図5を参照。
【0007】
他の結果は、化合物1による治療後に、JAK阻害剤ルキソリチニブを含む全ての標準治療に対して難治性であった対象において、制御されていない血小板増加症を軽減させることができた(すなわち、血小板が正常化された)ことを示した。例えば、図6および以下の実施例の章を参照。頭痛の改善もみられた。
【0008】
さらなる結果は、化合物1による治療後に、輸血依存性を好転させることができたことを示した。例えば、JAK阻害剤ルキソリチニブを摂取している間に輸血依存性であった対象は、化合物1による治療後に輸血非依存性になり、24週間より長く、輸血非依存性のままであった。例えば、図5を参照。ルキソリチニブと2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド両方の組み合わせを使用して、同様の結果がみられた。例えば、以下の実施例の章における患者245および246を参照。例えば、図6を参照。
【0009】
さらなる利点として、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドは、ルキソリチニブに対して抵抗性であった対象であっても、脾臓の大きさを有意に減少させた。例えば、化合物1の投与前に、以下に記載する患者245は、ルキソリチニブに対して抵抗性になっており、彼女の脾臓は、大きさが25%増加していた(脾臓の体積は、触診によって12cmであった)。しかしながら、化合物1とルキソリチニブによる4週間の治療の後、彼女の脾臓の大きさは、5cmまで減少した。
【0010】
したがって、骨髄線維症を治療するために、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を、単独で、またはルキソリチニブなどのJAK阻害剤と組み合わせて使用する方法が本明細書で提供される。
【0011】
特定の態様では、貧血を有する対象において骨髄線維症を治療するために、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を、単独で、またはルキソリチニブなどのJAK阻害剤と組み合わせて使用する方法も本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】IL6およびIL10mRNA転写物レベルに対する化合物1の効果を示す。
図2】巨核球分化に対する化合物1の効果のヒストグラムを図示する。
図3】健康なドナー2に由来する幹細胞由来の巨核球培養物において、化合物1とルキソリチニブによる10日間の治療の後、成熟巨核球マーカーCD42bに対する効果のヒストグラムおよび定量を表し、ここで、灰色のヒストグラムは、DMSO処理された試料であり、青色のヒストグラムは、化合物1で処理された試料であり、CD42b高の計算は、化合物1で処理された試料を指す。
図4】投与から2時間後の循環血液中のBET標的遺伝子IL8およびCCR1の抑制を、化合物1の血漿濃度の関数として示す。
図5】化合物1とルキソリチニブの併用アームにおけるヘモグロビンレベルおよび輸血必要性の変化を示す。
図6】単剤療法アームの患者247における血小板およびヘモグロビンレベルの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドは、米国特許第8,796,261号において化合物144として例示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドは、本明細書において化合物1と互換的に使用され、以下の構造式によって表される:
【化1】
化合物1の結晶形態は、米国特許第9,969,747号に開示されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0014】
化合物1は、BETタンパク質の機能を選択的に阻害することによって、抗腫瘍活性を促進するように設計された、強力かつ選択的な小分子である。例えば、J.Med.Chem.,2016;Feb.25;59(4):1330-9を参照。化合物1は、進行性リンパ腫を含む血液悪性腫瘍を治療する際のその顕著な効果について調査されている。例えば、U.S.Clinical Trials NCT02157636およびNCT01949883を参照。しかしながら、ここで、化合物1が、骨髄線維症の治療にも有効であることが見出された。この目的のために、例えば、化合物1は、ヘモグロビンレベルを増加させ、血小板数を正常化し、脾臓の大きさを減少させた。以前に輸血依存性であった対象は、治療後に輸血非依存性になった。
【0015】
したがって、第1の実施形態において、対象における骨髄線維症を治療する方法であって、治療有効量の2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。対象における骨髄線維症を治療するための医薬の製造における、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩の使用も本明細書で提供される。対象における骨髄線維症を治療するための2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩がさらに提供される。
【0016】
「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用されてもよく、治療を必要とする哺乳動物、例えば、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。典型的には、対象は、治療を必要とするヒトである。
【0017】
「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、本明細書に記載されるように、骨髄線維症、またはその1つ以上の症状の発生を好転させ、軽減し、その可能性を減らすこと、またはその進行を抑制することを指す。いくつかの実施形態において、治療は、1つ以上の症状が発生した後に行われてもよい(すなわち、治療的治療)。他の実施形態において、治療は、症状が存在しない状態で行われてもよい。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症状の既往に照らして、および/または遺伝的もしくは他の感受性因子に照らして)、感受性のある個体に行われてもよい(すなわち、予防的治療)。症状が解消した後、例えば、その再発を予防するか、または遅らせるために、治療を継続することもできる。骨髄線維症に特異的な症状としては、限定されないが、腹部不快感、労作時呼吸困難、早期満腹感、疲労感、頭痛、夜間発汗、めまい、熱、寒気、不眠症、掻痒症、または骨痛が挙げられる。
【0018】
以下の実施例の章で詳述されるように、化合物1は、ルキソリチニブなどのJAK阻害剤による骨髄線維症の治療を受けたことがある対象に有効であった。したがって、第2の実施形態において、対象における骨髄線維症を治療する方法であって、治療有効量の2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩を対象に投与することを含み、対象が、以前に、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)による治療を受けたことがある、方法が本明細書で提供される。以前に、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)による治療を受けたことがある対象における骨髄線維症を治療するための医薬の製造における、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩の使用も提供される。以前に、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)による治療を受けたことがある対象における骨髄線維症を治療するための2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミド、またはその薬学的に許容される塩がさらに提供される。
【0019】
第3の実施形態において、第1および第2の実施形態に記載される対象は、JAK阻害剤に対して進行/再発しているものとして特徴付けられる。第4の実施形態において、第1および第2の実施形態に記載される対象は、JAK阻害剤に対して難治性/抵抗性であると特徴付けられる。
【0020】
進行/再発しているものとして特徴付けられる対象は、JAK阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)による治療に一度は応答したが、もはや応答しない対象である。難治性/抵抗性であるとして特徴付けられる対象は、JAK阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)による治療の間に、非応答性であるか、または疾患の悪化を示す対象である。
【0021】
化合物1は、JAK阻害剤ルキソリチニブによる併用治療として有効であることも示された。したがって、第5の実施形態において、対象における骨髄線維症を治療する方法であって、治療有効量の2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドおよび治療有効量のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む、方法が本明細書で提供される。対象における骨髄線維症を治療するための医薬の製造における、2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドおよびヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩の使用も提供される。対象における骨髄線維症を治療するための2-((4S)-6-(4-クロロフェニル)-1-メチル-4H-ベンゾ[c]イソオキサゾロ[4,5-e]アゼピン-4-イル)アセトアミドおよびヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、ルキソリチニブ)、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩がさらに提供される。
【0022】
本明細書で使用される場合、ルキソリチニブは、以下の式を有するJAK阻害剤(R)-3-(4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル)-3-シクロペンチルプロパンニトリルホスフェートを指す。
【化2】
【0023】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、互換的に使用され、骨髄線維症を有する対象において所望の医学的応答を誘発する、例えば、疾患の症状を減少させ、および/または疾患の進行を遅らせる、本明細書に記載の化合物の量を含む。
【0024】
第6の実施形態において、本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第5の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、血球減少症である。血球減少症とは、1つ以上の血液細胞型の産生が停止するか、または大幅に減少した対象を指す。細胞減少症の種類としては、例えば、貧血(赤血球細胞の欠乏)、白血球減少症または好中球減少症(白血球細胞の欠乏)、血小板減少症(血小板における欠乏)、および汎血球減少症(赤血球細胞、白血球細胞、および血小板数の3つ全てにおける欠乏)が挙げられる。
【0025】
第7の実施形態において、本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、貧血である。本開示の対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、男性対象についてそのヘモグロビン値が13.5g/血液のdL数より低い場合、または女性対象について12.0g/血液のdL数より低い場合、貧血であるといわれる。いくつかの態様において、対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、そのヘモグロビン値が10.0g/dLより低い場合に、本明細書では貧血であると定義される。したがって、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象としては、男性対象について13.0g/dL未満、12.5g/dL未満、12.0g/dL未満、11.5g/dL未満、11.0g/dL未満、10.5g/dL未満、10.0g/dL未満、9.5g/dL未満、9.0g/dL未満、または8.5g/dL未満、女性対象について11.5g/dL未満、11.0g/dL未満、10.5g/dL未満、10.0g/dL未満、9.5g/dL未満、9.0g/dL未満、または8.5g/dL未満のヘモグロビン値を有する対象が挙げられる。他の態様において、対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、そのヘモグロビン値が、男性対象について7.5g/血液のdL数~13.5g/血液のdL数の範囲である場合、または女性対象について7.5g/血液のdL数~12.0g/血液のdL数の範囲である場合、本明細書では貧血であると定義される。他の態様において、対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、そのヘモグロビン値が、男性対象について7.5g/血液のdL数~10.5g/血液のdL数の範囲である場合、または女性対象について7.5g/血液のdL数~10.5g/血液のdL数の範囲である場合、本明細書では貧血であると定義される。他の態様において、対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、そのヘモグロビン値が、男性対象について7.5g/血液のdL数~10.0g/血液のdL数の範囲である場合、または女性対象について7.5g/血液のdL数~10.0g/血液のdL数の範囲である場合、本明細書では貧血であると定義される。他の態様において、対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、そのヘモグロビン値が、男性対象について7.7g/血液のdL数~10.7g/血液のdL数の範囲である場合、または女性対象について7.7g/血液のdL数~10.5g/血液のdL数の範囲である場合、本明細書では貧血であると定義される。他の態様において、対象(例えば、第1~第6の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、そのヘモグロビン値が、男性対象について7.7g/血液のdL数~10.0g/血液のdL数の範囲である場合、または女性対象について7.7g/血液のdL数~10.0g/血液のdL数の範囲である場合、本明細書では貧血であると定義される。
【0026】
第8の実施形態において、本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第7の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、血小板減少症である。本開示の対象(例えば、第1~第7の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、その血小板数が150,000個の血小板/血液のμL数より低い場合、血小板減少症であるといわれる。したがって、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第7の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象としては、140,000個の血小板/μL未満、130,000個の血小板/μL未満、120,000個の血小板/μL未満、110,000個の血小板/μL未満、100,000個の血小板/μL未満、90,000個の血小板/μL未満、80,000個の血小板/μL未満、70,000個の血小板/μL未満、60,000個の血小板/μL未満、または50,000個の血小板/μL未満の血小板レベルを単独で、または上に記載したヘモグロビン値の1つ以上と組み合わせて有する対象が挙げられる。
【0027】
第9の実施形態において、本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第7の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、血小板血症である。本開示の対象本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第7の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、その血小板数が450,000個の血小板/血液のμL数を超える場合、血小板血症であるといわれる。したがって、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第7の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象としては、450,000個の血小板/μLを超え、500,000個の血小板/μLを超え、550,000個の血小板/μLを超え、または600,000個の血小板/μLを超える血小板レベルを単独で、または上に記載したヘモグロビン値の1つ以上と組み合わせて有する対象が挙げられる。
【0028】
第10の実施形態において、本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第9の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、白血球減少性である。対象(例えば、第1~第9の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、その白血球細胞(WBC)数が、4,000個のWBC/血液のμL数より低い場合、白血球減少性であるといわれる。特定の態様において、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第9の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象としては、3,500個のWBC/μLより低い、3,200個のWBC/μLより低い、3,000個のWBC/μLより低い、または2,500個のWBC/μLより低いWBC数を単独で、または上に記載したヘモグロビン値および/もしくは血小板値の1つ以上と組み合わせて有する対象が挙げられる。
【0029】
第11の実施形態において、本明細書に記載の方法によって治療される(例えば、第1~第10の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、好中球減少性である。一態様において、本開示の対象(例えば、第1~第10の実施形態のいずれか1つにおけるように)は、その好中球数が、1500個の好中球/血液のμL数より低い場合、好中球減少性であるといわれる。特定の態様において、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第10の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象としては、1250個の好中球/μLより低い、1000個の好中球/μLより低い、750個の好中球/μLより低い、または500個の好中球/μLより低い好中球数を単独で、または上に記載したヘモグロビン、血小板および/もしくはWBC値の1つ以上と組み合わせて有する対象が挙げられる。
【0030】
骨髄線維症は、多くの場合、脾臓の肥大と関連する。脾臓の肥大は、満腹感、消化不良、および食欲不振を引き起こす可能性がある。第12の実施形態において、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第11の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象としては、肥大した脾臓または肝臓を有する対象が挙げられる。
【0031】
第13の実施形態において、本方法によって治療可能な(例えば、第1~第12の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、1つ以上のさらなる症状も経験していてもよい。これらの症状としては、限定されないが、腹部不快感、労作時呼吸困難、早期満腹感、疲労感、頭痛、夜間発汗、めまい、不眠症、掻痒症、または骨痛が挙げられる。
【0032】
第14の実施形態において、本方法によって治療される(例えば、第1~第13の実施形態のいずれか1つにおけるように)対象は、化合物1による治療の前に、輸血依存性である。いくつかの態様において、「輸血依存性」とは、対象が、許容レベルのヘモグロビンを維持するために、赤血球細胞(RBC)の輸血を必要とすることを意味する。ヘモグロビンの許容レベルは、当業者によって決定され、例えば、男性について13.5~17.5g/血液のdL数、女性において12.0~15.5g/血液のdL数の範囲であってもよい。ruxによる治療を受ける対象が、上に記載したよりも低いヘモグロビンレベルを有していてもよく、治療を継続するために依然として「許容」レベルであるとみなされてもよいことが理解されるであろう。
【0033】
本明細書に記載の方法の化合物は、薬学的組成物として製剤化することができ、ヒトなどの対象に、選択された投与経路に適合した様々な形態で投与することができる。このような薬学的組成物を投与する典型的な経路としては、限定されないが、経口、局所、口腔、経皮、吸入、非経口、舌下、直腸、膣、および鼻内が挙げられる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、髄腔内、胸骨内注射または輸注技術を含む。薬学的組成物を製剤化する方法は、例えば、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”University of the Sciences in Philadelphia,ed.,21st edition,2005,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,PAに開示されるように、当該技術分野で周知である。
【0034】
本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載される方法の化合物と、適切な薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを組み合わせることによって調製することができ、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、注射、吸入剤、ゲル、微粒子、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体、または気体形態の調製物に製剤化され得る。したがって、本明細書に記載の方法の本発明の化合物は、不活性希釈剤または吸収可能な食用担体などの薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて、全身(例えば、経口)投与されてもよい。本発明の化合物は、硬質もしくは軟質シェルゼラチンカプセルに封入されてもよく、錠剤へと圧縮されてもよく、または患者の食事の食品と共に直接的に取り込まれてもよい。経口治療投与のために、活性化合物が1つ以上の賦形剤と組み合わされ、摂取可能な錠剤、口腔錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形態で使用されてもよい。
【0035】
任意の特定の患者に対する特定の投薬量および治療レジメンは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、および治療する医師の判断、ならびに治療される特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存するであろう。組成物中の本明細書に記載の化合物の量は、組成物中の特定の化合物にも依存する。しかしながら、一態様において、単剤療法として(すなわち、ルキソリチニブなどのJAK阻害剤なしで)使用される場合、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、1日に1回、2回、または3回投与するために、50mg~500mgの用量で製剤化され得る。例えば、単剤療法では、化合物1は、100mg~300mg/日、150mg~250mg/日、または150mg/日、175mg/日、200mg/日、225mg/日、もしくは250mg/日の投薬量で投与され得る。他の態様において、ルキソリチニブなどのJAK阻害剤と組み合わせて使用される場合、化合物1、またはその薬学的に許容される塩は、例えば、1日に1回、2回、または3回投与するために、50mg~500mgの用量で製剤化され得る。例えば、併用療法では、化合物1は、100mg~300mg/日、100mg~200mg/日、または100mg/日、125mg/日、150mg/日、175mg/日、もしくは200mg/日の投薬量で投与され得る。
【実施例
【0036】
化合物1は、米国特許第8,796,261号およびWO2015/195862号に記載される手順に従って得ることができ、これらの両方は参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
インビトロでのサイトカイン放出に対する阻害効果
化合物1は、2つの実験において、NF-κB標的遺伝子の発現を抑制する能力について評価された。1つの実験では、THP-1急性白血病細胞株をリポ多糖治療に曝露し、次いで化合物1に16時間曝露した。THP-1急性白血病細胞からのIL6放出を、0.069μMのIC50で阻害した。他の実験では、化合物1がTMD8 ABC-DLBCL細胞におけるIL6およびIL10の両方の発現を抑制する能力を調べた(社内資料)。TMD8細胞を、DMSOまたは1.6μMの化合物1と共に6時間または24時間インキュベートした。次いで、RNAを細胞から抽出し、qRT-PCRを使用して定量した。図1に示すように、化合物1は、6時間および24時間の治療後にIL6およびIL10の両方のmRNA転写を大幅に抑制した。
【0038】
巨核球分化に対する単剤としての化合物1の効果
健康なドナー骨髄から単離されたCD34+細胞を使用して、巨核球分化および増殖に対する化合物1の効果を評価した(社内資料)。CD34+細胞を、巨核球誘発サイトカインカクテルを含む巨核球分化無血清幹細胞分化基本培地中、DMSOまたは3nM~500nMの範囲の濃度の化合物1と共に14日間成長させた。次に、細胞をCD34(前駆体マーカー)、CD45(白血球マーカー)およびCD41a(成熟巨核球マーカー)について染色し、生存率およびマーカー発現についてFACSによって評価した。CD41a発現および細胞の大きさを巨核球分化のマーカーとして使用した。化合物1は、濃度依存性の様式で高CD41a発現を伴う細胞の数を減少させた。高CD41a発現から低CD41a発現へのシフトは、図2に示すように、約50nMで開始し、200~500nMで顕著な効果が観察された。CD41a高発現細胞の消失は、巨核球分化障害および成熟巨核球の消失を示唆している。
【0039】
巨核球分化および増殖に対する、単独で、またルキソリチニブと組み合わせた化合物1の効果
同様の実験において、2人の健康なドナーの骨髄から単離されたCD34+細胞を、DMSO、30~500nMの濃度の化合物1単独、8~1000nMの濃度のルキソリチニブ単独、またはそれらが単独で試験されたのと同じ濃度でのルキソリチニブと組み合わせた化合物1と共に、巨核球分化培地中、10日間インキュベートした(社内資料)。次に、細胞を生/死染色を用いたFACS分析のために採取し、CD34(前駆体マーカー)ならびにCD41aおよびCD42b(成熟巨核球マーカー)でゲーティングした。化合物1は、全体的な生存率(生/死染色による生存細胞の割合)に対する限定的な効果を示したが、それは、全細胞増殖(全生存数)および巨核球分化(CD41aおよびCD42bに対して二重陽性の細胞の割合)に対して強力な効果を示し、それにより生存成熟巨核球の全体的な消失を引き起こした(平均EC50が28nM、表1)。
【0040】
化合物1とは対照的に、ルキソリチニブは、前駆細胞を死滅させた同様の濃度で巨核球分化に対して影響を及ぼし(平均EC50値はそれぞれ526および644nM、表1)、このことは、巨核球に対するルキソリチニブの阻害効果が、その細胞毒性に基づくことを示唆している。化合物1の段階希釈液をルキソリチニブの段階希釈液と組み合わせると、巨核球分化に対する相加阻害効果が観察された(図3)。250nMのルキソリチニブ存在下で試験された最小用量を下回る、化合物1についての平均EC50が38nMから17nMまで減少した(外挿した)ときに全細胞増殖に対して同様の相加効果がみられ、このことは、巨核球分化および増殖についてそのIC50値に近い濃度の化合物1およびルキソリチニブが、同じ効果を誘発するのに必要な他の薬剤の量を減らすのに有効であることを示している。
【表1】
【0041】
末梢血中のサイトカインレベルの減少
化合物1の全身暴露とBET阻害剤感受性遺伝子の抑制との間の関係を決定するために、選択されたBET標的遺伝子(CCR1、CCR2、IL8、FN1、CSF1RおよびTHBS1)のパネルを、化合物1の第1相臨床試験に参加する患者由来の末梢血試料において評価した。遺伝子発現分析は、時間に対する化合物1の血漿濃度のデータと共に、時間依存性および濃度依存性の関係があることを示す。非臨床データと一致して、化合物1によって誘導される発現の変化は、治療から2時間後のIL8およびCCR1について最も一貫して観察され、このことは、転写に対するBET阻害の迅速な効果を示している。CCR1およびIL8の曝露-応答関係の例を図4に示す。示されるデータは、Study0610-01において、化合物1で治療されたリンパ腫患者から採取した試料を含む。遺伝子発現値を、単一時間点の前治療で測定したもの(100%)に対して正規化した。このデータは、主要な炎症促進性遺伝子に対するBET阻害の迅速なオンターゲット効果を示し、この臨床バイオマーカーアッセイの使用を裏付ける。
【0042】
骨髄線維症患者における活性の臨床徴候
Study0610-02に登録された最初の4名の骨髄線維症患者は、2018年7月時点で少なくとも6ヶ月延長された臨床的利益を示している。登録する最初の2名の骨髄線維症患者(患者245および246)は、ルキソリチニブと組み合わせて化合物1を摂取し、この記載の時点で18治療サイクル(11ヶ月の治療)を受けている。登録する次の2名の患者(患者247および248)は、これまでに単剤療法として10サイクルの化合物1(6ヶ月の治療)を受けている。4名の患者全員が治療中であり、全身症状の減少、脾臓体積の減少、およびヘモグロビンの増加を経験している。試験参加時に輸血依存性であった1名の患者は、輸血非依存性になった(赤血球細胞(RBC)輸血を必要とせずに12週間より長いと定義される)(2018年7月時点で、最後の輸血から7ヶ月が経過している)。直近のヘモグロビン測定は10.9g/dLであった。この所見と一致して、4名全ての患者が、化合物1による複数の治療サイクルでヘモグロビンレベルの増加を経験している。加えて、制御されていない血小板増加症(ベースライン血小板は895×10/Lである)を有する試験に参加した1名の患者は、維持された化合物1による単剤療法治療の最初の1ヶ月以内に血小板数の正常化を経験した(直近の血小板測定は132×10/Lであった)。血小板の回復は、頭痛の顕著な改善と関連付けられた。少なくとも6ヶ月間治療された4名全ての患者の簡潔な説明を以下に提示する。
【0043】
併用療法アーム
66歳の女性である患者245は、2014年5月に骨髄線維症と診断され、1日2回(BID)のルキソリチニブ15mgによる治療を開始した2016年1月まで、治療未経験のままであった。2016年2月にパノビノスタットが追加され、貧血の発生により、2017年3月に中止された。2017年3月から、ルキソリチニブ単独では、患者はルキソリチニブに対して抵抗性になり、彼女の脾臓は、大きさが25%増加した。
【0044】
2017年7月のStudy0610-02への参加時、MRIによる患者245の脾臓体積は、1404ccであり、触診によって12cmであった。この患者は、試験開始時に、早期満腹感、夜間発汗、および呼吸困難を呈していた。化合物1の125mgのQDおよびルキソリチニブ15mgのBIDによる治療の4ヶ月以内に、この患者は、早期満腹感が解消し、彼女の脾臓は、触診によって5cmであり、彼女の肝臓は、もはや触診することができなかった。MRIによる最小脾臓体積は、6ヵ月時点でのMRIで1144ccであり、19%の減少であった。ルキソリチニブの用量は、減少する血小板数に対処するために、サイクル10では7.5mgのBIDまで減少した。このルキソリチニブの用量減少の後、彼女の血小板数は、徐々に改善されているが、化合物1の用量増加を可能にするために、2つの治療サイクルについてプロトコル指定基準である100×10/Lを依然として下回っている。患者は、それ以外は良好であり、症状に実質的な変化はない。
【0045】
患者246は、2009年に骨髄線維症と診断された53歳の女性である。2002年から2006年の間、この患者は、エポエチンアルファ、レナリドミドおよびサリドマイドをサイクル投薬され、次いで、2013年までレナリドミドを7年間摂取した。彼女は、2013年の間にRBC輸血を必要とし、2014年にインターフェロンを開始し、輸血非依存性にすることができた。インターフェロンは、ほぼ1年後に、疲労感のために中止された。この患者は、輸血非依存性を維持し、2016年後半に再び輸血依存性になるまで、さらなる治療は行われなかった。ルキソリチニブ5mgのBIDが2017年1月に開始された。ルキソリチニブを、2017年4月に10mgのBIDまで増やしたが、この患者は、輸血依存性のままであり、症状が残った。彼女は、脾臓の大きさの増加のため、ルキソリチニブ抵抗性とみなされ、ルキソリチニブ療法中に、症状が悪化した(極度の疲労感、息切れ、労作時の苦痛、時折起こる嘔吐および夜間発汗)。
【0046】
患者246が、2017年7月に化合物1の125mgのQDおよびルキソリチニブ10mgのBIDによる併用治療を開始したとき、彼女の脾臓の体積はMRIによって607ccであり、触診によって2cmであり、定期的な輸血を必要とした(3~4週間ごとに2単位のRBC)。化合物1の用量を、5回の治療サイクル後、併用療法の7ヶ月以内に、175mgのQDまで増量し、患者は、輸血非依存性になり(輸血せずに12週間を超え、ヘモグロビンが8g/dLを超えると定義される、図5を参照)、これが30週間を超えて維持されている(直近のヘモグロビン測定は、10.9g/dLであった)。彼女は、関連する全身症状(疲労感および呼吸困難)における臨床的に意味のある改善も経験し、脾臓体積が漸進的に減少し、サイクル12までに脾臓体積の37%減少(380cc)を達成した。
【0047】
単剤療法アーム
患者247は、2014年4月に骨髄線維症と診断された46歳の女性である。2009年に、この患者は、本態性血小板増加症(ET)を患っているという疑いがあり、そのため、2009年4月から2017年12月までヒドロキシ尿素治療を受けた。この患者はまた、2015年に1ヶ月間のエポエチンアルファ、2016年に3ヶ月間のイメテルスタット、2017年に4ヶ月間のペムブロリズマブを摂取した。ルキソリチニブは、2015年10月から2016年5月まで投与された。ルキソリチニブは、症候性脾腫大、貧血、白血球増加症、および血小板増加症の悪化に起因して、中止された。
【0048】
2017年12月にStudy0610-02に参加した際に、患者247は、MRIによって脾臓体積が858ccであり、触診によって5cmであり、腹部不快感、労作時呼吸困難、早期満腹感、疲労感、頭痛、夜間発汗、めまい、不眠症、掻痒症、および骨痛を含む多くの全身症状を有していた。この患者は、試験参加時に、ヒドロキシ尿素にもかかわらず、制御されない血小板増加症も呈していた(ベースラインでの血小板数が895×10/L)。加えて、この患者は、疼痛制御のために複数回の入院を必要とする、持続的で身体を衰弱させる頭痛を経験していた。血小板は、化合物1の単剤療法を最初の2週間受けた後に正常化し(183×10/L)、試験に参加していた残りの期間にわたって、正常範囲内に留まっていた(図6を参照)。化合物1単剤療法の2ヶ月以内に、この患者の重度の頭痛は回復し、夜間発汗は、頻度が少なくなり、症状の37%の減少が、Myeloproliferative Neoplasm Symptom(MNS)スコアによって評価された。CPI-0610による2回の治療サイクルの後、ECOGパフォーマンススコアは、2から1に減少し、直近の測定である8回の治療サイクルの後に、脾臓体積の25%減少(640cc)がMRIによって評価された。
【0049】
2011年9月に骨髄線維症と診断された76歳の男性である患者248は、フレソレムニブ(fresolemunib)(2011年12月から2012年10月まで)およびイタシチニブ(2012年12月から2014年7月まで)により治療された。ルキソリチニブ5mgのBIDは、2015年1月に開始され、2015年12月に15mgのBIDまで増やした。ルキソリチニブは、この患者が、一般的に疲労感、貧血および血小板減少症の悪化を経験していたため、2016年9月に中止された。ルキソリチニブ治療の後、この患者は、2016年6月から2017年3月までイメテルスタットを摂取し、その後、2017年6月から10月までペムブロリズマブを摂取した。
【0050】
2017年12月に、患者248は、Study0610-02において、CPI-0610単剤療法を開始した。当時、この患者は、脾臓体積がMRIによって1148cc、触診によって5cmであった。試験参加時の全身症状には、疲労感、早期満腹感、および集中力低下が含まれていた。この患者は、開始用量の225mgのQDのCPI-0610に忍容性ではなく(嘔吐、下痢、不快感およびめまいを経験した)、サイクル1の最初の5回の用量の後に、投与中断を必要とした。この患者は、サイクル2の開始時に、化合物1の用量を175mgに減らして再開始し、この試験での残りの期間(6ヶ月を超える)にわたって、忍容性であった。この患者の脾臓は、触診によって最小限の変化を示しているが、CPI-0610による治療の3ヶ月後に、脾臓体積の11%減少(1023cc)がMRIによって測定された。そのMNSスコアは、175mgのQD用量で2ヶ月後に19%改善し、化合物1治療の6ヶ月後、骨髄の線維形成グレードが、局所病理学者の評価に基づいて、ベースライン時のMF-2からMF-1に減少した。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態を説明してきたが、本開示の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、本願発明者らの基本的な実施例が変更され得ることは明らかである。したがって、本開示の範囲は、例によって表された特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
【0052】
本出願全体で引用される全ての参考文献(参考文献、発行された特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語には、当業者に一般的に知られる意味が付与される。
図1
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