(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】トランスポンダを備えた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B60C19/00 G
(21)【出願番号】P 2021545429
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 IB2020050870
(87)【国際公開番号】W WO2020161616
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】102019000001565
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】マルコ ペドリネッリ
(72)【発明者】
【氏名】エミリアーノ サベッティ
(72)【発明者】
【氏名】マウロ ミラビル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエレ ロサ
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-095135(JP,A)
【文献】特開2003-136925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0093422(US,A1)
【文献】特開2010-254044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0090013(US,A1)
【文献】特開2012-161998(JP,A)
【文献】特開2020-55452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の上に部分的に折り返され、したがって2つの側方のフラップを有する、本体プライ(3)からなり、各前記フラップ内において前記本体プライ(3)のエッジ部(19)が前記本体プライ(3)自体の中間部分に当接している、トロイダル状のカーカス(2)と;
それぞれ、前記本体プライ(3)によって取り囲まれ、ビードコア(5)とビードフィラー(6)とを有する、2つの環状のビード(4)と;
環状のトレッド(7)と;
少なくとも1つのトレッドプライ(9)を備える、トレッドベルト(8)と;
前記トレッド(7)と前記ビード(4)との間において前記本体プライ(3)の外側に配置された、一対のサイドウォール(11)と;
前記本体プライ(3)の外側において、前記サイドウォール(11)よりも径方向内側にて、かつ、前記ビード(4)にて、配置されている、一対の摩耗ガム帯状部材(12)と;
空気に対して不透過性であり、前記本体プライ(3)の内側に配置された、インナーライナー(10)と;
トランスポンダ(13)であって、前記本体プライ(3)のフラップにおいて前記本体プライ(3)と接触して配置され、前記トランスポンダ(13)の径方向外側端部が前記本体プライ(3)の前記エッジ部(19)よりも径方向内側に配置され、前記トランスポンダ(13)の径方向内側端部が前記ビードフィラー(6)のエッジ部(20)よりも径方向外側に配置されるように、前記本体プライ(3)の前記エッジ部(19)と前記ビードフィラー(6)のエッジ部(20)との間に全体的に配置された、トランスポンダ(13)と;
を備え、
前記本体プライ(3)の各フラップは、前記本体プライ(3)の各フラップ内において前記本体プライ(3)の前記エッジ部(19)が前記トレッドプライ(9)の下にあるように、前記トレッドプライ(9)の径方向下側で終端し;
前記トランスポンダ(13)は、前記本体プライ(3)と前記インナーライナー(10)との間に配置され、それにより、前記トランスポンダ(13)は、外側において前記本体プライ(3)に横方向に面するとともに直接接触し、内側において前記インナーライナー(10)に横方向に面するとともに直接接触し;
前記トランスポンダ(13)の前記径方向外側端部と前記本体プライ(3)の前記エッジ部(19)との間には、7mmよりも大きい第1径方向距離(D1)が設けられ;
前記トランスポンダ(13)の前記径方向内側端部と前記ビードフィラー(6)の前記エッジ部(20)との間には、7mmよりも大きい第2径方向距離(D2)が設けられる、空気入りタイヤ(1)。
【請求項2】
前記第1径方向距離(D1)は10mmよりも大きい、請求項1に記載の空気入りタイヤ(1)。
【請求項3】
前記第2径方向距離(D2)は10mmよりも大きい、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ(1)。
【請求項4】
前記トランスポンダ(13)は、互いに重ね合わされて押圧された2つのゴムの帯状部材(18)からなるスリーブ(17)内に挿入されている、請求項1、2又は3に記載の空気入りタイヤ(1)。
【請求項5】
前記スリーブ(17)の前記2つのゴムの帯状部材(18)は、前記トランスポンダ(13)よりも1~2mmだけ長い/広い、請求項4に記載の空気入りタイヤ(1)。
【請求項6】
前記スリーブ(17)の厚さ(T)は0.6~2mmである、請求項4又は5に記載の空気入りタイヤ(1)。
【請求項7】
前記トランスポンダ(13)は周方向に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記トランスポンダ(13)は、直線形状を有し、したがって、前記空気入りタイヤ(1)内において前記空気入りタイヤ(1)の他のすべての構成要素の円形の進行に追従しない、請求項7に記載の空気入りタイヤ(1)。
【請求項9】
前記トランスポンダ(13)は、前記サイドウォール(11)が存在するとともに前記摩耗ガム帯状部材(12)が存在しない領域内に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本特許出願はイタリア特許出願第102019000001565号(2019年4月2日出願)に基づく優先権を主張するものであり、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、トランスポンダを備えた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、いわゆる「スマート」空気入りタイヤが出現した。これらは、現代の車両のアクティブな部分を形成することができ、取り付けられた空気入りタイヤのタイプに関する情報、空気入りタイヤの状況に関する情報、及び周囲条件に関する情報を供給する。
【0004】
「スマート」空気入りタイヤは、通常、トランスポンダ(すなわち、無線周波数で通信するのに適した電子装置)を備えている。トランスポンダは、空気入りタイヤの識別、特性、及び履歴の遠隔通信(すなわち、タイヤが取り付けられた車両と、空気入りタイヤの確認又は置換を行わなければならないオペレータとの、両方への通信)を可能にする。
【0005】
近年、トランスポンダの存在に基づくRFID(Radio-Frequency IDentification)技術と、TPMS(Tyre Pressure Monitoring Systems)技術との一体化が提案されている。TPMS技術は、トランスポンダ内に有効な空気圧を記憶し、次いでトランスポンダ自体の手段によって有効な空気圧を遠隔通信するために、有効な空気圧を測定する。
【0006】
当初、トランスポンダを空気入りタイヤにおける内面又はサイドウォールの外面に接着することが提案された。この解決策は、設計の観点から極めて単純であり、既存の空気入りタイヤにも適用できるが、それとは対照的に、空気入りタイヤのサイドウォールが受ける周期的な変形によってトランスポンダが空気入りタイヤから外れないこと(特に外面に接着されている場合)を保証するものではない。
【0007】
その後、空気入りタイヤの構造内、すなわち空気入りタイヤを構成する様々な層の内部に、トランスポンダを一体化することが、提案された。
【0008】
米国特許出願公開第20080289736号明細書(特許文献1)は、トランスポンダが空気入りタイヤの構造内のビードにおいて一体化された空気入りタイヤを記載しており、特に、トランスポンダが、本体プライのフラップの上側においてサイドウォールとビードフィラーとの間に配置されている。
【0009】
欧州特許出願公開第2186658号明細書(特許文献2)は、トランスポンダが空気入りタイヤの構造内のビードにおいて一体化された空気入りタイヤを記載しており、特に、トランスポンダが、本体プライのフラップの上側においてサイドウォールとビードフィラーとの間に配置されるか、又は、トランスポンダがビードフィラーと本体プライとの間(すなわち、本体プライのフラップ内)に配置されている。
【0010】
欧州特許出願公開第1366931号明細書(特許文献3)は、トランスポンダが空気入りタイヤの構造内のビードにおいて一体化された空気入りタイヤを記載しており、特に、トランスポンダが、ビードフィラー内に浸漬されるとともに、本体プライのフラップの内部に配置されるか、又は、トランスポンダが、ビードコアよりも内側に配置されたゴム内に浸漬される(したがって、本体プライのフラップの外側に配置される)。
【0011】
韓国特許出願公開第20100082464号明細書(特許文献4)及び韓国特許出願公開第20130067944号明細書(特許文献5)は、トランスポンダが空気入りタイヤの構造内のビードコアよりも上側において一体化された空気入りタイヤを記載しており、特に、トランスポンダは、本体プライ内に埋め込まれ(挿入され)ているとともに、本体プライのフラップ内に少なくとも部分的に位置する。
【0012】
それにもかかわらず、上述した空気入りタイヤ内のトランスポンダの配置は理想的ではない。なぜなら、これらは、トランスポンダが受ける応力や変形(空気入りタイヤの建設中及び空気入りタイヤの使用中の両方)を最小限に抑え、同時に、トランスポンダの無線周波通信の外乱や干渉を最小限に抑えることができるものではないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第20080289736号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2186658号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1366931号明細書
【文献】韓国特許出願公開第20100082464号明細書
【文献】韓国特許出願公開第20130067944号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述の欠点がなく、また、特に、実施が容易かつ安価となるような、トランスポンダを備えた空気入りタイヤを提供することである。
【0015】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されているように、トランスポンダを備えた空気入りタイヤが提供される。
【0016】
特許請求の範囲は、本明細書の不可欠な部分を形成する本発明の好ましい実施形態を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
次に、本発明を、いくつかの非限定的かつ例示的な実施形態を示す添付の図面を参照しつつ説明する。
【
図1】本発明に従って製造された空気入りタイヤの概略断面図であり、明確にするために部品が取り除かれている。
【
図2】
図1の空気入りタイヤのトランスポンダの概略図である。
【
図3】断面線III?IIIによる
図2のトランスポンダの断面図である。
【
図4】断面線IV?IVによる
図2のトランスポンダの断面図である。
【
図6】
図1の空気入りタイヤのビードフィラーの空気入りタイヤの本体プライのエッジ部に対する、
図2のトランスポンダの配置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、空気入りタイヤは全体として符号1で示され、トロイダル状のカーカス2を備え、カーカス2は、それ自体の上に部分的に折り返された単一の本体プライ3を含み、したがって、本体プライ3は、2つの側方フラップ(すなわち、2つの層が互いに重ね合わされ、共同で「ターンアップ」と呼ばれる)を有する。本体プライ3の各フラップ内において、本体プライ3のエッジ部(すなわち、終端部)は、本体プライ3自体の中間部分に当接している。
【0019】
カーカス2の両側には、2つの環状のビード4が配置されている。各ビード4は、本体プライ3によって取り囲まれており(すなわち、本体プライ3のフラップによって取り囲まれており)、多数の金属ワイヤの巻線で補強されたビードコア5と、ビードフィラー6とを、有している。
【0020】
カーカス2は環状のトレッド7を支持し、カーカス2とトレッド7との間には、2つのトレッドプライ9を含むトレッドベルト8が介在している。各トレッドプライ9は多数のコード(図示せず)を含み、これらのコードは、ゴムベルト内に埋め込まれ、所与のピッチで互いに並んで配列され、空気入りタイヤ1の赤道面に関連して決定される傾き角度を形成する。
【0021】
本体プライ3の内側には、インナーライナー10が配置されている。インナーライナー10は、気密であり、インナーライニングを構成し、空気入りタイヤ1内の空気を保持する機能を有し、当該空気入りタイヤ1の空気圧を経時的に維持する。
【0022】
本体プライ3は、トレッド7とビード4との間で本体プライ3の外側に配置された一対のサイドウォール11を支持している。
【0023】
最後に、本体プライ3は、サイドウォール11の下側、かつ、ビード4にて、外部に配置された、一対の摩耗ガム帯状部材12を支持する。
【0024】
空気入りタイヤ1は「エンベロープ」と呼ばれる建設モダリティに従って製造される。ここで、本体プライ3の各フラップは、トレッドプライ9の下側(したがって、最も内側のトレッドプライ9と接触するトレッド7の下側)で終端する。すなわち、各フラップ内で、本体プライ3自体の中間部分に対して当接する本体プライ3のエッジ部(すなわち、終端部)は、トレッドプライ9の径方向下側(したがって、最も内側のトレッドプライ9と接触するトレッド7の下側)に位置する。
【0025】
図1に示すものによれば、空気入りタイヤ1の横断面は全体高さH(厚さ、すなわち、空気入りタイヤの回転軸線に垂直に測定された径方向寸法)を有している。
図1で識別されるのは、空気入りタイヤ1の横断面の高さHの中間平面Mである(換言すれば、平面Mは、空気入りタイヤ1の断面の高さHを二分し、空気入りタイヤ1の断面の高さHを、各々がH/2の高さを有する2つの同一の半分に細分する)。
【0026】
トランスポンダ13、すなわち、情報を記憶することができ、無線周波数によって通信することができる、電子機器(通常は受動的で、すなわち、その電力供給を伴わない)は、空気入りタイヤ1の内部、特にサイドウォール11(例えば、外部サイドウォール11、すなわち、空気入りタイヤ1がリムに取り付けられると車両の外側に面するサイドウォール)において一体化される(埋め込まれる)。言い換えれば、トランスポンダ13は、空気入りタイヤ1の内部に一体化され、リーダ(又はポーリング装置)と呼ばれる特定の固定型装置又はポータブル装置による遠隔ポーリングに応答するのに適した小寸法の「スマートラベル」である。リーダは、トランスポンダ13内に含まれる情報を読み取り、かつ/又は修正することができ、すなわち、ポーリングしながら、無線周波数でトランスポンダ13自体と通信することができる。したがって、トランスポンダ13は、いわゆるRFID技術("Radio-Frequency IDentification(無線周波数識別)")に従って動作する、無線読み取り及び/又は書き込みシステムの一部である。
【0027】
図2に示すものによれば、トランスポンダ13は、不揮発性メモリ(典型的にはEEPROM又はFRAM、後者はより高価であるが技術的により進歩したもの)を備えた電子回路14(すなわち、マイクロチップ)と、電子回路14に接続されたアンテナ15と、電子回路14及びアンテナ15の両方を担持し、しばしば「基板」(典型的には、マイラー、PET又はPVCのようなプラスチック、又は他の同様の材料の薄層で作られる)として定義される、支持体16と、を備える。
図2に示す実施形態では、アンテナ15は、ダイポールアンテナ(又は単にダイポール)であり、電磁場を遠隔照射する電流が流れる直線状の導電体で構成された2つの等しい開放アームで作られている。
【0028】
使用時には、アンテナ15が電磁誘導によってアンテナ15内に電位差を誘起する電磁信号を受信し、この電磁信号は電子回路14内に電流の循環を生成して電子回路14自体に電力を供給し、それにより電子回路14は、起動され、アンテナ15によってそのメモリ内に含まれるデータを送信し、適切な場合には、さらに、そのメモリ内に含まれるデータを変更する。
【0029】
図2、
図3及び
図4に示すものによれば、トランスポンダ13は、互いに重ね合わされて押圧された2つのグリーンゴムの帯状部材18を含む、スリーブ17に挿入されている(明らかに、2つのゴム帯状部材18のゴムは、最初は生であり、空気入りタイヤ1自体の最終加硫中に空気入りタイヤ1の残り部分と共に加硫される)。一般に、スリーブ17のグリーンゴムの2つの帯状部材18は、トランスポンダ13よりも(すなわち、電子回路14及びアンテナ15よりも)1~2mm長い/幅広である。2つのグリーンゴムの帯状部材18は、最初は平行六面体であり、トランスポンダ13自体の周囲で互いに対して押圧されると、トランスポンダ13の構成要素の周囲で変形する。代替実施形態によれば、スリーブ17の2つのゴムの帯状部材18は、最初から加硫される(すなわち、2つのゴムの帯状部材18のゴムは、直ちに加硫される)。
【0030】
異なる実施形態(図示せず)によれば、支持体16は存在せず、その機能は、スリーブ17のゴムの帯状部材18によって発揮される。
【0031】
好ましい実施形態によれば、スリーブ17(その内部にトランスポンダ13を含む)の厚さTは、全体として0.6~2mmであり、スリーブ17の幅Wは、約8~12mmであり、スリーブ17の長さLは、約60~80mmである。
【0032】
トランスポンダ13は周方向に配置され、すなわち、空気入りタイヤの回転軸線を中心とする円周に沿って配置される。トランスポンダ13(スリーブ17内に収容される)は、直方体形状を有しており、したがって、空気入りタイヤ1内では(
図6に概略的に示すように)空気入りタイヤ1の他のすべての構成要素の円形進行に追従しないことを、強調することが重要である。
【0033】
図5に示されるものによれば、トランスポンダ13(スリーブ17内に収容される)は、本体プライ3のエッジ部19(すなわち、終端部)(トレッドプライ9の下側に配置され、したがって、トレッド7の下側において最内側のトレッドプライ9に接触し、本体プライ3自体の中間部分に当接する)から径方向距離D1(ゼロではない)だけ離れた位置に配置され、すなわち、トランスポンダ13の径方向外側上エッジ部(端部)は、本体プライ3のエッジ部19から径方向距離D1だけ離れた位置に配置される。さらに、トランスポンダ13(スリーブ17内に収容される)は、ビード4のエッジ部20(すなわち、終端部)(特に、ビードフィラー6のエッジ部であり、そこでビードフィラー6が終端する)から径方向距離D2(ゼロではない)だけ離れた位置に配置され、すなわち、トランスポンダ13の径方向内側エッジ部(端部)は、ビードフィラー6のエッジ部20から径方向距離D2だけ離れた位置に配置される。
【0034】
より一般的に、(スリーブ17内に挿入された)トランスポンダ13は、本体プライ3のエッジ部19から径方向距離D3だけ離れて配置され、かつ、ビード4のエッジ部20から径方向距離D4だけ離れて配置された、バンド21内に、全体的に収容されている。トランスポンダ13と本体プライ3のエッジ部19との間の径方向距離D3は、7mm(好ましい実施形態によれば10mm)よりも大きく、同様に、トランスポンダ13とビード4のエッジ部20との間の径方向距離D4は、7mm(好ましい実施形態によれば10mm)よりも大きい。その結果、トランスポンダ13の径方向外側エッジ部(端部)と本体プライ3のエッジ部19との間の径方向距離D1は、7mm(好ましい実施形態によれば10mm)よりも大きく、トランスポンダ13の径方向内側エッジ部(端部)とビード4の(特にビードコア6のビードフィラーの)エッジ部20との間の径方向距離D2は、7mm(好ましい実施形態によれば10mm)よりも大きい。通常(必ずしもそうではないが)、径方向距離D1は径方向距離D2とは異なり(例えば
図5に示されるように)、したがって、トランスポンダ13は、本体プライ3のエッジ部19とビード4のエッジ部20との間のちょうど中間には配置されないことに注意することが重要である。
【0035】
トランスポンダ13(スリーブ17内に収容されている)は、本体プライ3とインナーライナー10との間に配置され、従って、トランスポンダ13は、外側において横方向に(すなわち、軸線方向に、又は、空気入りタイヤ1の回転軸線に平行に)本体プライ3に面し(直接接触し)、内側において横方向にインナーライナー10に面する(直接接触する)。換言すれば、トランスポンダ13の外面は本体プライ3に直接当接(又は接触)し、トランスポンダ13の内面は、インナーライナー10に直接当接(又は接触)する。トランスポンダ13(スリーブ17内に収容されている)は、本体プライ3のフラップよりも内側に配置されており、したがって、横方向に(すなわち、軸線方向に、又は、空気入りタイヤ1の回転軸線に平行に)、一方側において(外側において)本体プライ3に面し、また、反対側において(内側において)インナーライナー10に面し、換言すれば、トランスポンダ13は、本体プライ3の対応する部分と外側で接触し、インナーライナー10の対応する部分と内側で接触している。
【0036】
トランスポンダ13は、本体プライ3のフラップに配置され、したがって、トランスポンダ13の近傍において「二重化」されており、すなわち、それ自体の上に曲げられ、それによって二重層を形成している。
【0037】
好ましい実施形態によれば、トランスポンダ13は、サイドウォール11が存在するとともに摩耗ガム帯状部材12が存在しない領域内、すなわち、トランスポンダ13に対してサイドウォール11が存在するとともに摩耗ガム帯状部材12が存在しない側(及び、トランスポンダ13よりも外側)に配置される。
【0038】
上述したように、トランスポンダ13は、周方向に配置され、直方体形状を有し、空気入りタイヤ1内では空気入りタイヤ1の他の構成要素の全ての円形の進行に追従せず、その結果、
図6に示すように、トランスポンダ13が矩形の進行を有するとともに対応するエッジ部19又は20が円形の進行を有する限り、トランスポンダ13の各エッジ部と対応するエッジ部19又は20との間の径方向距離D1又はD2は、トランスポンダ13の全長に沿って連続的に可変である(最大1~3mmだけであり得るが)。この点に関して、トランスポンダ13の各エッジ部と対応するエッジ部19又は20との間の最大(すなわち、可能な限り最大の)径方向距離D1又はD2は、常に7mm(好ましい実施形態によれば10mm)よりも大きいことを強調することが重要である。
【0039】
本体プライ3には、本体プライ3の限定された部分に適用される局所的な補強要素を設けることができ、例えば、本体プライ3には、ビード4の近くに適用される不織布補強材、及び/又は、ビード4の近くに適用されるカレンダー加工された「スキージ」を、設けることができることを述べることが重要である。この場合、このような補強要素は本体プライ3の一体部分となり、したがって、トランスポンダ13は、このような補強要素においても本体プライ3と接触して配置されることができる。
【0040】
空気入りタイヤ1は、「標準」型又は「非標準」型とすることができ、例えば、空気入りタイヤ1は、「ランフラット」型、「スポンジ」型(すなわち、内部に音響効果を有するスポンジ状体が設けられている)、又は「シーラント」型(すなわち、任意の穴を閉鎖することができるシール剤が設けられている)のものとすることができる。
【0041】
本明細書に記載の実施形態どうしは、本発明の保護範囲から逸脱することなく組み合わせることができる。
【0042】
上述した空気入りタイヤ1は、多くの利点を有する。
【0043】
第一に、上記空気入りタイヤ1において、トランスポンダ13の位置は、(空気入りタイヤ1の製造中及び空気入りタイヤ1の使用中の両方において)トランスポンダ13が受ける応力及び変形を最小限に抑えることを可能にし、同時に、トランスポンダ13の無線周波通信の外乱及び干渉を最小限に抑えることを可能にする(これにより、空気入りタイヤ1が金属リム上に取り付けられていない場合、3メートル超の距離だけ離れた位置で、また、空気入りタイヤ1が金属リム上に取り付けられている場合、2メートル超の距離だけ離れた位置で、トランスポンダ13を読み取ることができる)。
【0044】
さらに、上述の空気入りタイヤ1では、トランスポンダ13(それにもかかわらず、これは、空気入りタイヤ1内に浸漬された「異物」である)の存在は、空気入りタイヤ1自体の性能及び耐久性(又は動作寿命)に悪影響を及ぼさない。
【0045】
トランスポンダ13は、本体プライ3よりも内側に配置されている限り、外部から非常に良好に保護されている。さらに、トランスポンダ13を収容するための空間が(インナーライナー10の内側に向かう膨らみによって)本体プライ3に対して外部に配置されるので、本体プライ3に対する局所的な変形が回避され、本体プライ3内に空気が閉じ込められるおそれがトランスポンダ13において完全に回避される。
【0046】
最後に、本体プライ3がまだ完全に平坦である場合(すなわち、本体プライ3を成形ドラムに巻き付ける前に)、トランスポンダ13を本体プライ3に容易に接着させることができるので、上述した空気入りタイヤ1の製造は、単純である。あるいは、インナーライナー10自体を装着する前に、トランスポンダ1は、容易にインナーライナー10に接着させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 空気入りタイヤ
2 カーカス
3 本体プライ
4 ビード
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 トレッド
8 トレッドベルト
9 トレッドプライ
10 インナーライナー
11 サイドウォール
12 摩耗ガム帯状部材
13 トランスポンダ
14 電子回路
15 アンテナ
16 支持材
17 スリーブ
18 帯状部材
19 エッジ部
20 エッジ部
21 バンド
H 高さ
L 長さ
W 幅
T 厚さ
A 振幅
D1 距離
D2 距離
D3 距離
D4 距離