(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】フィルタ処理を使用して光遺伝デバイスを制御するための方法および関連するデバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61F9/007 190A
(21)【出願番号】P 2021545763
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 EP2020052717
(87)【国際公開番号】W WO2020161117
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-04
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518445724
【氏名又は名称】ジェンサイト・バイオロジクス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・ガルッピ
(72)【発明者】
【氏名】シャルリ・ガレ
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526187(JP,A)
【文献】特表2009-525157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007-9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス(40)の装着者の眼(28)の少なくとも一部の上に画像を投射するようになっている前記デバイス(40)を制御するための、コンピュータ
が実施
する方法であって、
- 前記装着者の眼(28)の視線方向を与えるステップと、
- 投射すべき初期画像(30)を与えるステップと、
- 少なくとも、前記与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するステップと、
- 前記判定されたフィルタを使用して前記初期画像(30)をフィルタ処理するステップと、
- 前記フィルタ処理済み画像(36)を前記眼(28)の中に投射するためのコマンドを前記デバイス(40)に送るステップとを含む方法。
【請求項2】
前記判定ステップにおいて、前記フィルタの特性のうちの少なくとも1つが判定され、前記フィルタの前記特性は、
- 前記フィルタのパターンの位置、
- 前記フィルタのパターンのサイズ、
- 前記フィルタのパターンの形状、および
- 前記フィルタのパターンの値からなる群に属する、請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
前記判定ステップにおいて、前記判定されるフィルタは、少なくとも1つの追加のパラメータに依存し、前記追加のパラメータは、
- 前記眼(28)の疾患に関連するパラメータ、
- 前記眼(28)におけるインプラントに関連するパラメータ、
- 前記眼(28)に関連するパラメータ、および
- 使用される前記デバイス(40)に関連するパラメータからなる群に属する、請求項1または2に記載
の方法。
【請求項4】
前記判定ステップにおいて、前記判定されるフィルタは、少なくとも、中心が定義されるパターンを備え、前記フィルタのパターンの前記中心の位置は、前記視線方向の一次関数である、請求項1から3のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項5】
前記判定ステップにおいて、前記判定されるフィルタは、少なくとも1つのパターンを備え、前記少なくとも1つのパターンの形状は、
- 円形、
- リング形、および
- 多角形からなる群において選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項6】
前記判定ステップにおいて、前記判定されるフィルタは、前記眼(28)の前記一部についての最大光強度および前記眼(28)の前記一部についての最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する、請求項1から5のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項7】
前記眼(28)の前記一部は、光線(38)によって照明すべきいくつかの部分を備え、前記判定ステップにおいて、前記フィルタは、前記一部の各部分の最大光強度および前記一部の各部分の最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する、請求項1から6のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項8】
前記フィルタは、少なくとも1つのパターンを備え、前記判定ステップにおいて、前記フィルタは、前記眼(28)の前記一部の形状に依存し、それによって、前記少なくとも1つのパターンの前記形状は前記一部の前記形状に依存する、請求項1から7のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項9】
前記判定されるフィルタは、少なくとも1つのパターンを備え、前記判定ステップにおいて、前記判定されるフィルタは、前記眼(28)の前記一部の位置に依存し、それによって、前記少なくとも1つのパターンの前記位置は前記一部の前記位置に依存する、請求項1から8のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項10】
前記眼(28)について瞳(32)が定義され、前記瞳(32)は、前記瞳(32)および前記光線(38)の相対位置ならびに前記瞳(32)のサイズによって定義され、前記判定ステップにおいて、前記判定されるフィルタは、前記瞳(32)および前記光線(38)の前記相対位置ならびに前記瞳(32)の前記サイズの群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する、請求項
7に記載
の方法。
【請求項11】
前記与えるステップ、前記判定するステップ、前記フィルタ処理するステップ、および前記送るステップは、50ミリ秒以下の時間間隔をおいて繰り返される、請求項1から10のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項12】
前記眼(28)の前記一部は前記眼(28)の網膜である、請求項1から11のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項13】
装着可能デバイス(40)の装着者の眼(28)の少なくとも一部の上に画像を投射するようになっている装着可能デバイス(40)であって、
- 前記装着者の眼(28)の視線方向を与えるようになっているモジュール(42)と、
- 投射すべき初期画像(30)を与えるカメラ(44)と、
- 少なくとも、前記与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するようになっており、前記判定されたフィルタを使用して前記初期画像(30)をフィルタ処理するようになっているデータ処理ユニット(16)と、
- 前記フィルタ処理済み画像を前記眼(28)の中に投射するためのコマンドを前記デバイスに送るようになっているコマンドモジュール(50)とを備える装着可能デバイス(40)。
【請求項14】
コンピュータプログラム製品(12)が適切なコンピュータデバイス上で実行されるときに請求項1から12のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するための命令を含むコンピュータプログラム製品(12)。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラム製品(12)が符号化されたコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着者の眼の上に画像を投射するようになっているデバイスを制御するための、コンピュータによって実施される方法に関する。装着者は、前記デバイスを装着するようになっている。本発明は、コンピュータプログラム製品、およびコンピュータプログラム製品を記憶するようになっているコンピュータ可読媒体に関する。本発明は、画像を投射するようになっている装着可能なデバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
網膜は、光情報伝達、すなわち、光を視覚系内でイベントのカスケードを伝搬させる電気信号および化学信号に変換し、最終的に世界の表現を生成することによって網膜の光感受性に関与する極めて特殊なニューロンである光受容体から構成される。脊椎動物の網膜において、光情報伝達は、感光性受容体タンパク質、ロドプシンを活性化することによって開始される。
【0003】
網膜色素変性(RP)または黄斑変性(MD)の場合のような光受容体の喪失または変性は、網膜内の視覚情報の光情報伝達を完全に阻害しない場合でも著しく損なう。光受容体細胞の喪失および/または光受容体細胞機能の喪失は、視力低下、光感受性低下、および失明の主要な原因である。
【0004】
現在、遺伝子治療、幹細胞治療、オプトジェネティクス、および人工網膜を含む、網膜変性疾患専用のいくつかの治療法が開発されている。
【0005】
たとえば、オプトジェネティクスと呼ばれる遺伝子および神経工学技術により、ニューロンの定義された個体群の活動を、脳内の他のニューロンに影響を与えずに制御することによって対象者の網膜の光感受性を回復することが提案されている。欠陥のある遺伝子を置き換えるかもしくは修復するかまたはタンパク質欠乏症もしくは機能不全を補正することによって遺伝子欠陥を回避することを試みる従来の遺伝子治療とは異なり、光遺伝手法は、網膜内の通常は光感受性を有さない細胞に光に反応する能力を与え、それによって、患者に有効な視界を回復するために使用することができる。双極細胞または神経節細胞に細胞外電気的刺激を施す網膜チップインプラントとは異なり、オプトジェネティクスベースの治療は、細胞内部から細胞を刺激する。
【0006】
オプトジェネティクスは、生体組織の特定の細胞内の明確に定義されたイベントを制御するための遺伝学と光学の組合せを指す。オプトジェネティクスは、(i)目標細胞を細胞膜内の外因性光反応性タンパク質の発現によって光感受性を有するように遺伝子学的に修正することと、(ii)前記光反応性タンパク質に光を与えることのできる照明デバイスを設けることからなる。
【0007】
外因性光反応性タンパク質の例が、光活性化されたイオンチャネルおよびポンプ(たとえば、チャネルロドプシン-2 [ChR2]、ハロロドプシン[NpHR])を符号化する植物および微生物(たとえば、古細菌、細菌、および菌類)から導出されるオプシン遺伝子を使用することを記載したWO2007024391、WO2008022772、またはWO2009127705に記載されており、このオプシン遺伝子は、哺乳類のニューロン内で発現するように操作され、ウイルスベクターを使用して遺伝子学的に特定の神経個体群を標的とすることができる。適切な波長を有する光にさらされたときに、オプシン発現ニューロンにおいて活動電位をトリガすることができ、それによって、このような細胞に光感受性が与えられる。同様に、WO2013071231は、互いに異なるとともに従来技術(たとえば、ChR2/VChR1)と異なる活動スペクトルを有し、それぞれに異なる細胞内で遺伝子学的に発現するそれぞれに異なる活動スペクトルを有するチャネルを発現させ、次いでそれぞれに異なる色の光によって組織を照明することによって、光の複数の異なる波長を同じ組織内の細胞のそれぞれに異なる組を脱分極するために使用するのを可能にする新しいチャネルロドプシン、クロノ、およびクリムゾンを開示している。WO2017187272において開示された光反応性タンパク質は別の代替手段である。
【0008】
オプトジェネティクスは、選択的なニューロンの活性化/阻害のための極めて有力な手段であり、たとえば、ヒトを含む生物、具体的には眼における神経機能を回復するために使用することができる。
【0009】
それにもかかわらず、光の選択される波長が光反応性タンパク質の最適な波長に近くなければならず、かつこれらの光反応性タンパク質の光感受性が非常に低いことがわかっている。したがって、光によって最低レベルのタンパク質活性化を実現するには、目標細胞またはタンパク質が受ける光の強度が最小値を超える必要がある。したがって、正しい波長で十分な放射照度を与える外部デバイスが必須である。
【0010】
代替として、これらの患者において人工視覚システムによって少なくとも部分的に視覚を回復することが提案されている。このようなシステムは、網膜インプラントを備え、網膜組織の一部が変性しているが、網膜の大部分は元のままである場合があり、依然として光依存性電気刺激によって直接刺激を受けることがあるという前記事実を利用することによって、盲目のユーザおよび視覚障害のあるユーザのために適度な視覚および方向感覚を少なくとも部分的に復元するための有効な手段である。一般に、網膜インプラントは、患者の眼に移植され、光刺激時に残りのニューロン細胞を電気的に励起する。これらの残りのニューロン細胞は、刺激されると、人工的に誘発された電気インパルスを視神経を通して脳の視覚野に伝達する。
【0011】
網膜インプラントは、大ざっぱに網膜前インプラントと網膜下インプラントの2つの範疇に分割することができる。網膜の内面上または内面の近傍、すなわち、最初に入射光にさらされ、神経節細胞の神経線維が、視神経に向かう途中で通過する網膜の側に、網膜前デバイスが配置される。網膜前インプラントは一般に、眼球外デバイス(一般に、カメラおよび入射光を復号するための超小型電子回路)によって眼のレンズを通して網膜上に投射される画像を受け取って、画像を電気信号に変換し、さらに信号を伝達して複数の刺激電極を介して電気刺激を施し、チップに隣接する網膜細胞を刺激し、盲目の患者もしくは部分的な視覚障害の患者の視覚を再生または改善することのできる複数の画素素子を含むチップを備える。これに対して、網膜の下方において網膜と下層の網膜色素上皮または他のより深い組織との間に網膜下デバイスが配置される。現在利用可能な網膜下技術は、単一の、剛性が高い、一般に平面状のチップの移植に依存する。さらに、大きい視界を確保するために複数のチップを移植できることが望ましいことがわかっている。
【0012】
人工網膜および光遺伝治療は、2つの主要構成要素に依存する。網膜上で操作される第1の構成要素は、目標網膜細胞の膜電位を変化させることによって光感受性を実現する。光遺伝治療では人工網膜システムにおけるインプラントまたは光ゲートイオンチャネルタンパク質が遺伝子学的に網膜細胞に導入される。第2の構成要素は、視覚情報(通常、カメラまたはフォトダイオードのアレイによって取得される)を符号化し、第1の構成要素によって必要とされる入力信号に変換するために必要である。人工網膜では、入力信号は、能動電極のマトリックスによって給送される電流または受動構成要素を活性化することのできる光のパルスである。光遺伝治療では、給送される入力信号は、既定の空間-時間態様で光遺伝タンパク質を活性化するために必要な適切な強度および波長の光のパルスである。
【0013】
文献WO2014/030158 A1では、機能が低下した網膜を有する視覚障害のある個人の視覚を助けるための装置、システム、および方法を開示する。
【0014】
文献米国特許第8956396号は、視神経を刺激して、加齢による黄斑変性、網膜色素変性、およびその他の疾患に起因して視覚を喪失した患者に有効な視覚を得るための改良された補綴および方法を開示している。この方法は、正常な網膜において可視光によって刺激されたロッドおよびコーンから得られる活動電位に類似した活動電位を網膜神経において生じさせる。いくつかの実施形態では、眼を通じて外部刺激装置アレイからの赤外光の刺激パターンを生成し、赤外光の刺激パターンを網膜、特に窩に合焦させる補綴が提供される。
【0015】
これらの解決手段において、完全な快適さおよび知覚を装着者に与える解決手段は1つもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】国際公開第2007/024391号
【文献】国際公開第2008/022772号
【文献】国際公開第2009/127705号
【文献】国際公開第2013/071231号
【文献】国際公開第2017/187272号
【文献】国際公開2014/030158号
【文献】米国特許第8956396号明細書
【非特許文献】
【0017】
【文献】EN ISO 15004-2:2007 “Ophthalmic instruments - Fundamental requirements and test methods. Part 2: Light hazard protection”
【文献】EN ISO 62471 “Photobiological safety of lamps and lamp systems”
【文献】ANSI Z136-1:2014 “Safe Use of Lasers”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、改善された快適さおよび知覚を得るのを可能にする、装着者の眼の上に画像を投射するための方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書では、デバイスの装着者の眼の少なくとも一部の上に画像を投射するようになっている前記デバイスを制御するための、コンピュータによって実施される方法であって、装着者の眼の視線方向を与えるステップと、投射すべき初期画像を与えるステップと、少なくとも、与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するステップと、判定されたフィルタを使用して初期画像をフィルタ処理するステップと、フィルタ処理済み画像を眼の中に投射するためのコマンドをデバイスに送るステップとを含む方法について説明する。
【0020】
従来技術文献のWO2014/030158 A1と比較して、フィルタは瞳方向ではなく視線方向に依存する。そのような瞳位置は、視線方向とは著しく異なる。与えられた視線方向に依存するフィルタによるフィルタ処理によって、装着者が実際に見ている環境のより正確なフィルタ処理済み画像が得られる。
【0021】
さらに、フィルタ処理ステップを使用しない従来技術文献の米国特許第8956396号と比較して、提案されたフィルタ処理では、フィルタ処理済み画像が、照明すべき眼の部分にのみ投射され、照明してはならない眼の他の部分は照明されない。したがって、本発明の解決手段は、安全規則に準拠し、装着者に改善された快適さおよび知覚を与える。
【0022】
有利であるが必須ではないさらなる態様によれば、デバイスを制御するためのコンピュータによって実施される方法は、以下の特徴のうちの1つまたはいくつかを任意の技術的に許容できる組合せとして組み込んでもよい。
- 判定ステップにおいて、フィルタの特性のうちの少なくとも1つが判定され、フィルタの特性は、フィルタのパターンの位置、フィルタのパターンのサイズ、フィルタのパターンの形状、およびフィルタのパターンの値からなる群に属する。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、少なくとも1つの追加のパラメータに依存し、追加のパラメータは、眼の疾患に関連するパラメータ、眼におけるインプラントに関連するパラメータ、眼に関連するパラメータ、および使用されるデバイスに関連するパラメータからなる群に属する。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、少なくとも、中心が定義されるパターンを備え、フィルタのパターンの中心の位置は、視線方向の一次関数である。そのような特徴は、フィルタ処理済み画像を実質的にリアルタイムに投射するのを可能にする。これによって、実施するのが容易な方法を得ることができる。したがって、計算時間が短縮される。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、少なくともパターンを備え、少なくとも1つのパターンの形状は、円形、リング形、および多角形からなる群において選択される。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、眼の上記の一部についての最大光強度および眼の上記の一部についての最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
- 眼の上記の一部は、光線によって照明すべきいくつかの部分を備え、判定ステップにおいて、フィルタは、上記の一部の各部分の最大光強度および上記の一部の各部分の最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
- フィルタは、少なくともパターンを備え、判定ステップにおいて、フィルタは、眼の上記の一部の形状に依存し、それによって、少なくとも1つのパターンの形状は上記の一部の形状に依存する。
- 判定されるフィルタは、少なくともパターンを備え、判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、眼の上記の一部の位置に依存し、それによって、少なくとも1つのパターンの位置は上記の一部の位置に依存する。
- 眼について瞳が定義され、瞳は、瞳および光線の相対位置ならびに瞳のサイズによって定義され、判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、瞳および光線の相対位置ならびに瞳のサイズの群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
- 与えるステップ、判定するステップ、フィルタ処理するステップ、および送るステップは、50ミリ秒以下の時間間隔をおいて繰り返される。この時間間隔は、眼の2回のサッケード間の平均に実質的に相当する。この方法では、与えるステップ、判定するステップ、および送るステップを50ミリ秒以下の時間間隔で繰り返すことによって、装着者の視線方向の関数として投射される画像を更新することができる。そのような更新は、装着者が自分の環境を調べるときにリアルタイムの知覚を可能にする。
- 上記の一部は眼の網膜である。
- デバイスはまた、装着者の眼の少なくとも一部の上に光線を投射するようになっており、デバイスは、光源を備える光学モジュールを有し、瞳が、眼の上記の一部について定義され、方法は、瞳のサイズを与えるステップと、光源の放射電力のコマンドローを判定するステップであって、コマンドローが、与えられた瞳サイズに対して判定されるステップと、判定されたコマンドローを光源に送るステップとをさらに含む。
- 判定ステップにおいて、コマンドローは、光源の放射電力を時間とともに変化させる。
- 判定ステップにおいて、コマンドローは、少なくとも1つの追加のパラメータに依存し、追加のパラメータは、眼の疾患に関連するパラメータ、眼におけるインプラントに関連するパラメータ、眼に関連するパラメータ、および使用されるデバイスに関連するパラメータからなる群に属する。
- 判定するステップにおいて、コマンドローは、与えられたサイズおよび与えられた相対位置にさらに依存し、相対位置は、光線に対する瞳の位置である。
- 判定するステップにおいて、コマンドローは、光線によって投射すべき画像のサイズにさらに依存する。
- 瞳のサイズは、サイズ変更関数に応じて変更され、判定するステップにおいて、コマンドローは、サイズ変更関数にさらに依存する。
- 眼の上記の一部について最大光強度および最小光強度が定義され、判定するステップにおいて、コマンドローは、最大光強度および最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータにさらに依存する。
- 最大光強度および最小光強度の各々は、眼の上記の一部において空間的に変化する。
- 眼の上記の一部について光照射量が定義され、判定するステップにおいて、コマンドローは、光照射量にさらに依存する。
- 眼の上記の一部について事前に定義される光強度が定義され、コマンドローは、事前に定義される光強度にさらに依存する。
- 眼の上記の一部について事前に定義される光波長範囲が定義され、コマンドローは、事前に定義される光波長範囲にさらに依存する。
- 網膜についての最大光強度および角膜についての最大光強度が定義され、コマンドローは、網膜についての最大光強度および角膜についての最大光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータにさらに依存する。
【0023】
本明細書では、装着者の眼の少なくとも一部の上に光線を投射するようになっているデバイスを制御するための、コンピュータによって実施される方法であって、デバイスが、光源を備える光学モジュールを有し、眼の上記の一部について瞳が定義される方法において、瞳のサイズを与えるステップと、光源の放射電力のコマンドローを判定するステップであって、コマンドローが、与えられた瞳サイズに対して判定されるステップと、判定されたコマンドローを光源に送るステップとを含む方法について説明する。
【0024】
有利であるが必須ではないさらなる態様によれば、投射するための方法は、以下の特徴のうちの1つまたはいくつかを技術的に許容できる組合せとして組み込んでもよい。
- 判定ステップにおいて、コマンドローは、光源の放射電力を時間とともに変化させる。
- 判定ステップにおいて、コマンドローは、少なくとも1つの追加のパラメータに依存し、追加のパラメータは、眼の疾患に関連するパラメータ、眼におけるインプラントに関連するパラメータ、眼に関連するパラメータ、および使用されるデバイスに関連するパラメータからなる群に属する。
- 判定するステップにおいて、コマンドローは、与えられたサイズおよび与えられた相対位置にさらに依存し、相対位置は、光線に対する瞳の位置である。
- 判定するステップにおいて、コマンドローは、光線によって投射すべき画像のサイズにさらに依存する。
- 瞳のサイズは、サイズ変更関数に応じて変更され、判定するステップにおいて、コマンドローは、サイズ変更関数にさらに依存する。
- 眼の上記の一部について最大光強度および最小光強度が定義され、判定するステップにおいて、コマンドローは、最大光強度および最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータにさらに依存する。
- 最大光強度および最小光強度の各々は、眼の上記の一部において空間的に変化する。
- 眼の上記の一部について光照射量が定義され、判定するステップにおいて、コマンドローは、光照射量にさらに依存する。
- 眼の上記の一部について事前に定義される光強度が定義され、コマンドローは、事前に定義される光強度にさらに依存する。
- 眼の上記の一部について事前に定義される光波長範囲が定義され、コマンドローは、事前に定義される光波長範囲にさらに依存する。
- 網膜についての最大光強度および角膜についての最大光強度が定義され、コマンドローは、網膜についての最大光強度および角膜についての最大光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータにさらに依存する。
- デバイスはまた、前記デバイスの装着者の眼の少なくとも一部の上に画像を投射するようになっており、方法は、装着者の眼の視線方向を与えるステップと、投射すべき初期画像を与えるステップと、少なくとも、与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するステップと、判定されたフィルタを使用して初期画像をフィルタ処理するステップと、フィルタ処理済み画像を眼の中に投射するためのコマンドをデバイスに送るステップとをさらに含む。
- 判定ステップにおいて、フィルタの特性のうちの少なくとも1つが判定され、フィルタの特性は、フィルタのパターンの位置、フィルタのパターンのサイズ、フィルタのパターンの形状、およびフィルタのパターンの値からなる群に属する。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、少なくとも1つの追加のパラメータに依存し、追加のパラメータは、眼の疾患に関連するパラメータ、眼におけるインプラントに関連するパラメータ、眼に関連するパラメータ、および使用されるデバイスに関連するパラメータからなる群に属する。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、少なくとも、中心が定義されるパターンを備え、フィルタのパターンの中心の位置は、視線方向の一次関数である。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、少なくともパターンを備え、少なくとも1つのパターンの形状は、円形、リング形、および多角形からなる群において選択される。
- 判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、眼の上記の一部についての最大光強度および眼の上記の一部についての最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
- 眼の上記の一部は、光線によって照明すべきいくつかの部分を備え、判定ステップにおいて、フィルタは、上記の一部の各部分の最大光強度および上記の一部の各部分の最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
- フィルタは、少なくともパターンを備え、判定ステップにおいて、フィルタは、眼の上記の一部の形状に依存し、それによって、少なくとも1つのパターンの形状は上記の一部の形状に依存する。
- 判定されるフィルタは、少なくともパターンを備え、判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、眼の上記の一部の位置に依存し、それによって、少なくとも1つのパターンの位置は上記の一部の位置に依存する。
- 眼について瞳が定義され、瞳は、瞳および光線の相対位置ならびに瞳のサイズによって定義され、判定ステップにおいて、判定されるフィルタは、瞳および光線の相対位置ならびに瞳のサイズの群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
- 与えるステップ、判定するステップ、フィルタ処理するステップ、および送るステップは、50ミリ秒以下の時間間隔をおいて繰り返される。
- 上記の一部は眼の網膜である。
【0025】
本明細書では、コンピュータプログラム製品が適切なコンピュータデバイス上で実行されるときにすでに定義されたように方法のステップを実行するための命令を含む前記コンピュータプログラム製品についても説明する。
【0026】
本明細書では、上記に定義したようにコンピュータプログラム製品が符号化されたコンピュータ可読媒体も提案する。
【0027】
装着可能デバイスの装着者の眼の少なくとも一部の上に画像を投射するようになっている装着可能デバイスであって、装着者の眼の視線方向を与えるようになっているモジュールと、投射すべき初期画像を与えるカメラと、少なくとも、与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するようになっており、判定されたフィルタを使用して初期画像をフィルタ処理するようになっているデータ処理ユニットと、フィルタ処理済み画像を眼の中に投射するためのコマンドをデバイスに送るようになっているコマンドモジュールとを備える装着可能デバイスも提案される。
【0028】
有利であるが必須ではないさらなる態様によれば、装着可能デバイスは、装着可能デバイスの装着者の眼の少なくとも一部の上に光線を投射するようになっており、装着可能デバイスは、光源を備える光学モジュールを有し、眼の上記の一部について瞳が定義され、装着可能デバイスは、瞳のサイズを与えるようになっているモジュールと、光源の放射電力のコマンドローを判定するようになっているデータ処理ユニットであって、コマンドローが与えられた瞳サイズに対して判定されるデータ処理ユニットと、判定されたコマンドローを光源に送るようになっているコマンドモジュールとを備える。
【0029】
装着可能デバイスの装着者における眼の少なくとも一部の上に光線を投射するようになっている前記装着可能デバイスであって、光源を備える光学モジュールを有し、眼の上記の一部について瞳が定義される装着可能デバイスにおいて、瞳のサイズを与えるようになっているモジュールと、光源の放射電力のコマンドローを判定するようになっているデータ処理ユニットであって、コマンドローが与えられた瞳サイズに対して判定されるデータ処理ユニットと、判定されたコマンドローを光源に送るようになっているコマンドモジュールとを備える装着可能デバイスについても説明する。
【0030】
有利であるが必須ではないさらなる態様によれば、装着可能デバイスは、前記装着可能デバイスの装着者の眼の少なくとも一部の上に画像を投射するようになっており、装着可能デバイスは、装着者の眼の視線方向を与えるようになっているモジュールと、投射すべき初期画像を与えるカメラと、少なくとも、与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するようになっており、判定されたフィルタを使用して初期画像をフィルタ処理するようになっているデータ処理ユニットと、フィルタ処理済み画像を眼の中に投射するためのコマンドをデバイスに送るようになっているコマンドモジュールとを備える。
【0031】
本発明は、本発明の目的を制限せずに、添付の図に対応して一例として与えられる以下の説明に基づいてよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】相互作用が、画像を投射するためのデバイスを制御するための方法を実施するのを可能にし、および/または光線を投射するためのデバイスを制御するための方法を実施するのを可能にするシステムおよびコンピュータプログラム製品を概略的に示す図である。
【
図3】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図4】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図5】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図6】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図7】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図8】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図9】視線方向の関数としてのフィルタ処理済み画像を示す図である。
【
図10】光線の断面と眼の瞳の断面との重ね合わせを示す図である。
【
図11】光線に対するそれぞれに異なる瞳位置についての眼の網膜における投射画像を示す図である。
【
図12】光線に対するそれぞれに異なる瞳位置についての眼の網膜における投射画像を示す図である。
【
図13】光線に対するそれぞれに異なる瞳位置についての眼の網膜における投射画像を示す図である。
【
図14】光線に対するそれぞれに異なる瞳位置についての眼の網膜における投射画像を示す図である。
【
図15】画像および/または光線を投射するようになっている、ヒトの装着者によって装着されるようになっている医療デバイスを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
デバイスの装着者の眼の上に画像を投射するようになっているデバイスを制御するための方法が提案される。
【0034】
デバイスの例は第4節に示される。
【0035】
具体的には、フィルタ処理に依存する方法および光線の放射電力の制御に依存する方法について詳述する。
【0036】
どちらの方法もコンピュータによって実施することができる。関連するシステムは第1節に提示される。
【0037】
第1節-制御のための方法を実施するようになっているシステム
【0038】
システム10およびコンピュータプログラム製品12が
図1に示されている。コンピュータプログラム製品12とシステム10との相互作用が制御のための方法を実施するのを可能にする。
【0039】
システム10はコンピュータである。この例では、システム10はラップトップである。
【0040】
より一般的には、システム10は、コンピュータもしくはコンピューティングシステム、または同様の電子コンピューティングデバイスであって、コンピューティングシステムのレジスタおよび/またはメモリ内の電子などの物理的量として表されたデータをコンピューティングシステムのメモリ、レジスタ、または他のそのような情報記憶、送信、もしくは表示デバイス内の物理的量として同様に表された他のデータに操作しならびに/または変換するようになっているコンピュータもしくはコンピューティングシステム、または同様の電子コンピューティングデバイスである。本発明によれば、これらの用語は同義または等価である。
【0041】
システム10は、プロセッサ14と、キーボード22と、表示ユニット24とを備える。
【0042】
変形実施形態によれば、システム10は小型コンピュータである。第2節で定義されるシステムと比較して、本システム10は、キーボードおよび表示ユニットを有さない。
【0043】
システム10はたとえば、プロセッサ、メモリ、および直接メモリアクセス(頭字語はDMA)などの高速コンピューティング機能を含む小型電子ボードである。
【0044】
たとえば、電子ボードは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(頭字語はFPGA)、システムオンチップ(頭字語はSoC)、または特定用途向け集積回路(頭字語はASIC)を備える。
【0045】
たとえば、システムにおいて実施される方法はリアルタイムの方法である。
【0046】
プロセッサ14は、データ処理ユニット16と、メモリ18と、読み取り装置20とを備える。読み取り装置20は、コンピュータ可読媒体を読み取るようになっている。
【0047】
コンピュータプログラム製品12はコンピュータ可読媒体を備える。
【0048】
コンピュータ可読媒体は、プロセッサの読み取り装置によって読み取ることのできる媒体である。コンピュータ可読媒体は、電子命令を記憶するのに適し、コンピュータシステムバスに結合することのできる媒体である。
【0049】
そのようなコンピュータ可読記憶媒体はたとえば、ディスク、フロッピィディスク、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能プログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)、磁気カードもしくは光カード、または電子命令を記憶するのに適し、コンピュータシステムバスに結合することのできる任意の他の種類の媒体である。
【0050】
コンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体内に記憶される。コンピュータプログラムは、プログラム命令の1つまたは複数の記憶されたシーケンスを備える。
【0051】
コンピュータプログラムは、データ処理ユニット16にロード可能であり、制御のための方法を実行させるようになっている。
【0052】
第2節-フィルタ処理を使用することを含む制御のための方法
【0053】
この方法は、装着者の眼28の視線方向(
図3~
図9に示す)を与えるステップと、投射すべき初期画像30(
図2に示す)を与えるステップと、与えられた視線方向に依存するフィルタを判定するステップと、判定されたフィルタを使用して初期画像30をフィルタ処理するステップと、眼28の中にフィルタ処理済み画像36(
図3~
図9に示す)を投射するためのコマンドをデバイスに送るステップとを含む。
【0054】
以下では、まずフィルタの判定について説明し、次にこの方法の範囲内でフィルタを使用することについて説明する。
【0055】
フィルタの判定は、最適化技法として解釈することができる。最適化技法は、入力パラメータを処理して出力パラメータを得る技法である。処理ステップは、最適化式を使用する。
【0056】
入力パラメータは、それぞれ視線方向、疾患、インプラント、装着者の視認挙動、および使用されるデバイスに関連する数種類のパラメータから選択すべきである。
【0057】
視線方向は、眼28の瞳32の位置および眼28の生体構造に依存する。
【0058】
目の瞳の位置は、たとえば、装着者の眼28における瞳32の中心の位置である。
【0059】
瞳の中心の位置は、フレーム内の角度の対によって表されてもよい。
【0060】
疾患に関連するパラメータは、疾患の種類が照明すべき眼28のゾーンの形状を決定する場合がある限り干渉してもよい。
【0061】
したがって、疾患に関連するパラメータは、インプラントに関連するパラメータ、以下に詳述するパラメータと見なされてもよい。
【0062】
フィルタ処理済み画像36が投射される眼28の部分は、たとえば、網膜のトランスフェクト細胞および/または電子網膜インプラントを備える。
【0063】
網膜のトランスフェクト細胞および/または電子網膜インプラントはインプラントを構成する。
【0064】
この説明では、インプラントは刺激する必要のある網膜の部分である。インプラントを含まない網膜の残りの部分は、画像を投射する必要のない正常な網膜に相当する。
【0065】
インプラントは、いくつかのパラメータによって特徴付けられる。
【0066】
いくつかのパラメータは、インプラントの位置、形状、および/またはサイズ、ならびにインプラントの刺激に対する応答を含む。
【0067】
フィルタは、少なくとも1つのパターンを備える。パターンについては、この説明の残りの部分で詳述する。
【0068】
少なくとも1つのパターンの位置について、フィルタは、眼28の一部の位置に依存し、それによって、少なくとも1つのパターンの位置は、眼28の上記の一部の位置に依存する。
【0069】
パターンの位置は、パターンの中心の位置として定義することができる。
【0070】
特定の例では、フィルタは、少なくともパターンを備え、フィルタは、上記の一部の形状に依存し、それによって、少なくとも1つのパターンの形状は上記の一部の形状に依存する。
【0071】
一例として、上記の一部の形状は多角形であるとき、少なくとも1つのパターンについて同じ多角形形状が好ましい。
【0072】
フィルタは、インプラントのサイズにさらに依存してもよい。たとえば、少なくとも1つのパターンのサイズは、インプラントのサイズに依存する。
【0073】
インプラントの刺激に対する応答は、いくつかのパラメータを包含する。
【0074】
たとえば、上記の一部についての最大光強度および上記の一部についての最小光強度を定義することができる。
【0075】
ここで、眼28の上記の一部が光線によって照明すべきいくつかの部分を備える場合、フィルタは、上記の一部の各部分における最大光強度および上記の一部の各部分における最小光強度の群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
【0076】
眼28に関連するパラメータが関与する場合もある。
【0077】
眼28は、いくつかの因子によって特徴付けることができる。
【0078】
すなわち、瞳32および眼28の光学収差は、眼28に関連するパラメータの例である。
【0079】
眼28について瞳32が定義されるとき、瞳32は、瞳32および光線の相対位置ならびに瞳32のサイズなどのいくつかのパラメータによって特徴付けることができる。そのような場合、フィルタは、瞳および光線の相対位置ならびに瞳のサイズの群において選択される少なくとも1つのパラメータに依存する。
【0080】
眼28自体が、近視、遠視、乱視のような収差を含み、瞳サイズに依存する回折を含む光学収差を有する光学系である。光学収差は、正視の眼にも存在し、光生物学的評価および眼科的標準において考慮される。これらの収差は、光活性化可能タンパク質または網膜インプラントが受ける光強度を低減させることがある。
【0081】
眼28は、光活性化可能タンパク質または網膜インプラントが受ける光強度に影響を与える透過率(個人間で異なる)を有する。
【0082】
第4節で詳述するデバイスに関連するパラメータは特に、デバイスの光源の放射電力、投射系の特性、デバイスから出射する光線の特性、およびカメラの特性などのいくつかのパラメータを包含する。
【0083】
光源のパラメータは、光源の放射電力を含む。
【0084】
一例によれば、光源が複数の光素子を備えるとき、光源の特性は、各光素子の放射電力を含む。
【0085】
投射系の特性は光学系の光学パラメータを含む。
【0086】
たとえば、光学パラメータは、被照明領域全体にわたる放射電力の変化として定義される、光学系の透過率および/または光学系の均質性を含む。この例では、光学系の均質性とは、被照明領域全体にわたって放射電力が一様であることなどである。
【0087】
光線の特性は、デバイスから出射する光線の形状データを含む。
【0088】
たとえば、形状データは、光線の断面のサイズを含む。
【0089】
たとえば、放出された光線の形状データは、光線の断面の形状を含む。
【0090】
たとえば、光線の断面の形状は円板形である。
【0091】
特定の例によれば、光線の断面の形状はリング形である。
【0092】
定義上、光線の断面は、光線の概略出射方向と垂直な平面と光線の交点に相当する。
【0093】
初期画像30はたとえば、カメラによって取り込まれることを目的としている。
【0094】
初期画像30の一例が
図2に示されている。初期画像30は猫34を表す。
【0095】
カメラの特性は、カメラの待ち時間の最大値を含む。
【0096】
カメラの待ち時間は、与えられた視線方向の変更に応じたカメラによる新しい初期画像30の取得時間に相当する。
【0097】
出力パラメータは、フィルタを特徴付けるのを可能にするパラメータである。
【0098】
出力パラメータは、フィルタのサイズ、フィルタのパターンの位置、フィルタのパターンの形状、および/またはフィルタのパターンのサイズを含む。
【0099】
フィルタは、変換素子の行の数×列の数によって定義される。この場合、フィルタは変換素子のマトリックスである。
【0100】
各変換素子は、利得係数と呼ばれる乗法因子であるスカラー値を有する。
【0101】
フィルタの少なくとも1つの変換素子は、初期画像30の画素に適用されて画素を送信するかまたはフィルタ処理済み画像36内の画素を抑制するようになっている。
【0102】
フィルタのサイズは、変換素子の行および列の総数に相当する。
【0103】
たとえば、フィルタのサイズは、初期画像30のサイズに等しい。
【0104】
上述のように、フィルタは少なくとも1つのパターンを備える。
【0105】
フィルタのパターンは、初期画像30中の少なくとも1つの対象領域を区画するようになっている。
【0106】
パターンは、選択される変換素子の数によって定義される。
【0107】
パターンの変換素子の利得係数はゼロとは異なる。言い換えれば、パターンは、非ゼロ値個の変換素子を有するフィルタの部分である。たとえば、パターンの変換素子の利得係数は、1に等しい。
【0108】
パターンに属しない変換素子の利得係数はそれぞれ、ゼロに等しい。
【0109】
したがって、フィルタの変換素子は、初期画像30の画素を送信するのを可能にし、また送信しないのを可能にする。
【0110】
特定の例によれば、変換素子の利得係数は、初期画像30の画素に適用され、光学系における不均質性を補償する。
【0111】
変形実施形態によれば、パターンの利得係数はグレースケール値を含む。
【0112】
たとえば、パターンの変換素子のグレースケール値は、ゼロよりも大きく1以下である。
【0113】
フィルタのパラメータは、少なくとも1つのパターンの位置を含み、パターンの位置は、フィルタ内のパターンの位置に相当する。
【0114】
たとえば、パターンの中心は、パターンの重心として定義される。パターンの中心は、パターンの重心に配置された変換素子の位置に相当する。
【0115】
フィルタのパラメータは、パラメータの形状を含む。
【0116】
パターンの形状は、パターンの変換素子によって区画される外形に相当する。
【0117】
パターンの形状は、たとえば円形である。
【0118】
別の例によれば、パターンの形状はリング形である。
【0119】
さらに別の例によれば、パターンの形状は多角形である。
【0120】
1つのパターンしかないとき、パターンの形状はフィルタの形状と呼ばれる。
【0121】
フィルタのパラメータはパターンのサイズを含む。
【0122】
たとえば、パターンのサイズは、フィルタの変換素子の総数に対するパターンの変換素子の数の正規化された比に相当する。
【0123】
フィルタの別の例によれば、パターンのサイズは、パターンの幾何学的特性によって定義される。たとえば、パターンの幾何学的特性は、パターンの形状に応じたパターンの半径、直径、長さ、および/または幅を含む。
【0124】
変形実施形態または追加実施形態として、パターンのサイズは、初期画像のサイズなどの、初期画像30の要素に対して定義される。
【0125】
最適化式は、たとえば、そのような値を改善するか、またはそのような値を所与のしきい値よりも優れた値にする基準に相当する。
【0126】
一例によれば、基準は対象者の快適さである。快適さの最適化は、対象者の快適さを改善することからなる。
【0127】
対象者の快適さは、光驚動反応または正常な網膜によって生成される残存視覚に対する干渉として定義される。
【0128】
しかし、任意の基準が考えられてもよい。
【0129】
この方法が使用されるときは、3つの基本ステップを含む。
【0130】
この方法は、上記で定義された入力パラメータをプロセッサに与えるステップを含む。
【0131】
入力パラメータは、プロセッサ14のメモリ18に記憶される。
【0132】
この方法は、データ処理ユニット16によって入力パラメータに基づいてフィルタを生成するステップを含む。
【0133】
データ処理ユニット16は、入力パラメータによるフィルタを生成する。
【0134】
フィルタを生成するステップは、与えられた視線方向に従ってフィルタの少なくとも1つのパターンの位置を判定するステップを含む。
【0135】
したがって、パターンの位置は、与えられた視線に依存する。
【0136】
この方法は、生成されたフィルタを初期画像30に適用するステップを含む。
【0137】
図3~
図9に示すように、フィルタ処理済み画像36は視線方向に依存する。具体的には、フィルタのパターンによって初期画像30において選択される関心領域の位置は、眼28の視線方向に依存する。
【0138】
図3~
図6、
図8、および
図9では、パターンによって初期画像30において選択される関心領域の形状は、円形であり、一方、
図7では、関心領域の形状は、フィルタ処理済み画像36を眼の上記の一部に適合するためにリング形である。
【0139】
さらに、
図8と
図9を比較すると、
図8における関心領域のサイズは、
図9における関心領域のサイズよりも大きい。初期画像30において選択される関心領域のサイズは、特にパターンのサイズに依存する。さらに、装着者の眼28において給送される
図8におけるフィルタ処理済み画像36の光強度は、
図9におけるフィルタ処理済み画像36の光強度よりも大きい。したがって、投射されるフィルタ処理済み画像の光強度はフィルタのパターンのサイズに依存する。このことは、パターンのサイズが、眼28に給送される光の総量を変調させるようになっていることを意味する。
【0140】
同じ方法が、カメラによって経時的に取得された各々の新しい初期画像30に適用される。
【0141】
有利なことに、与えるステップ、判定するステップ、フィルタ処理するステップ、および送るステップは、200ミリ秒以下の時間間隔をおいて繰り返される。この方法の特定の例によれば、時間間隔は50ミリ秒以下である。
【0142】
この方法の変形実施形態によれば、フィルタは数学関数である。
【0143】
この方法の別の例によれば、判定ステップは、少なくとも1つのフィルタを判定するステップを含む。
【0144】
この場合、この方法は、少なくとも1つのフィルタを判定することができる。
【0145】
フィルタは、上記に定義したパターンに類似している。各フィルタは、初期画像30における1つの関心領域を区画する。
【0146】
フィルタの外側に位置する初期画像30の画素は、フィルタ処理済み画像36を形成する際に送信されない。
【0147】
したがって、少なくとも1つのフィルタの位置は、少なくとも視線に依存する。
【0148】
第3節-光強度を変更することによる制御のための方法
【0149】
デバイスを制御するための方法は、装着者の眼28の少なくとも一部の上に光線38を投射するようになっており、デバイスは、光源を備える光学モジュールを有し、眼28の上記の一部について瞳32が定義され、この方法は、瞳32のサイズを与えるステップと、光源の放射電力のコマンドローを判定するステップであって、コマンドローが、与えられた瞳サイズに対して判定されるステップと、判定されたコマンドローを光源に送るステップとを含む。
【0150】
以下では、まずコマンドローの判定について説明し、次いでこの方法の範囲におけるコマンドローの使用について説明する。
【0151】
コマンドローは、光源の放射電力を与える。
【0152】
対象の絞りサイズにかかわらず対象の上記の一部の上で、安定した放射照度を確保するのに必要な放射電力は、光強度とも呼ばれ、微積分によって判定されてもよい。
【0153】
図10は、光学モジュールから出射する光線38の断面と瞳32の断面との重なり合いを示す。
【0154】
光線38と瞳32の相対位置が特定され、動径座標r0および角度座標θ0を備える中心Oを有する極座標系で表される。極座標系の中心Oは、光線38の中心と混同される。
【0155】
第1の近似では、眼28の上記の一部における光強度は、光学モジュールから出射し、眼28に入射するか、もしくはそれとは異なるように出射し入射する光線38の放射電力に比例するか、またはこの放射電力の関数であると想定され、この場合、放射電力は瞳32を横切る。この第1の近似の枠組みにおいて法則を導くには、より単純なケースからより包括的なケースまで3つのケースを与えることができる。
【0156】
光線38の断面が、直径Dの瞳32よりも大きい均質な円板形であり、光線38と瞳32が心合わせされている特定のケースである第1のケースでは、光線38の放射電力は次式のように調整される。
【0157】
【0158】
より包括的なケースである第2のケースでは、瞳平面における断面形状を有する光線38は極座標における断面f(r,θ)によって特徴付けられる。光線38と瞳32が心合わせされている場合、放射電力は次式のように表される。
【0159】
【0160】
矩形関数は次式のように定義される。
【0161】
【0162】
第3の場合、光線38と瞳32が心合わせされない場合、瞳32が極座標において値(r0,θ)だけ変位した場合、放射電力は次式のように表される。
【0163】
【0164】
網膜放射照度の値を安定化するために使用されるコマンドローは、光学シミュレーションによって判定することもできる。
図11~
図14に示す画像は、4mmに等しい絞り径を有する光遺伝治療の臨床試験で使用されるデバイスGS030-MD-V1bの光学系を使用した光学シミュレーションの結果である。光学シミュレーションは、対象の側における放射照度を直接算出する。最小放射照度、平均放射照度、および最大放射照度は、(r
0, D)の所定のサブセットについて算出され、Dは4mmに等しく、その場合、他の対(r
0, D)の値は外挿によって判定される。
【0165】
結果は以下のTable 1(表1)に開示される。
【0166】
【0167】
網膜放射照度の値を安定化するのに使用されるコマンドローは、光学測定を使用して判定することもできる。放射電力は、人工瞳または絞りを光学モジュールの前に配置し、r0の値を変更し、絞り径の値を変更することによって測定される。これらの値は、表に示されており、すべての他の放射電力は、測定によって外挿される。
【0168】
前述のように、コマンドローを得ることは、最適化式に従って入力パラメータを処理して出力パラメータを得ることを含む最適化プロセスと解釈される。
【0169】
説明の残りの部分では、第2節の方法との主な違いを強調する。この2つの方法では多くの特徴が類似している。
【0170】
入力パラメータは、いくつかの種類のパラメータから選択すべきである。
【0171】
第2節のパラメータを、コマンドローを判定するためにここでも使用することができる。以下ではそれぞれに異なるパラメータを繰り返すことはない。
【0172】
以下ではこの実施形態の特定のパラメータについてのみ説明する。
【0173】
コマンドローは瞳サイズに依存する。
【0174】
装着者の頭部の前方平面が画定される。目28の瞳サイズは、前方平面において判定された瞳32の直径Dである。
【0175】
瞳32は、相対位置などの複数の他のパラメータによって特徴付けることもできる。
【0176】
コマンドローは、光線38に対する瞳32の位置である相対位置にさらに依存する。
【0177】
光線38に対する瞳32の相対位置は、眼28に入射する光線の光強度を制御する。
【0178】
他の実施形態によれば、以下の依存性のうちの1つまたは複数を好都合に使用することができる。
- コマンドローは、投射すべき画像のサイズにさらに依存する。
- 瞳32のサイズは、サイズ変更関数に応じて変更され、コマンドローは、サイズ変更関数にさらに依存する。
- 網膜の一部について最大光強度および最小光強度が定義され、コマンドローは、最大光強度および最小光強度の群から選択される少なくとも1つのパラメータにさらに依存する。
- 最大光強度および最小光強度の各々は網膜の上記の一部において空間的に変化する。
- 網膜の上記の一部について光照射量が定義され、コマンドローは光照射量にさらに依存する。照射量(積分された網膜光強度)は24時間または48時間当たりに定義される(光毒症規格EN ISO 15004-2:2007 “Ophthalmic instruments - Fundamental requirements and test methods. Part 2: Light hazard protection”、EN ISO 62471 “Photobiological safety of lamps and lamp systems”、ANSI Z136-1:2014 “Safe Use of Lasers”で使用される標準間隔である)。照射量は、24時間または48時間の間の照明時間と網膜における光強度の積である。この照明時間は、制御モジュールから出射する全光線38がオンである時間または網膜の所与の部分が照明される時間もしくはフィルタ処理済み画像からの所与の画素がオンである時間のいずれかに相当する。
- 網膜の上記の一部について事前に定義された光強度が定義され、コマンドローは、事前に定義された光強度にさらに依存する。
- 網膜の上記の一部について事前に定義された光波長範囲が定義され、コマンドローは、事前に定義された光波長範囲にさらに依存する。
- 網膜についての最大光強度および角膜についての最大光強度が定義され、コマンドローは、網膜についての最大光強度および角膜についての最大光強度にさらに依存する。
【0179】
出力パラメータとして、最適化技法は、時間とともに放射電力を変化させるコマンドローを適用するのを可能にする。
【0180】
この変化は様々な方法で表すことができる。
【0181】
たとえば、変化の値および変化の瞬間のみを与えることができる。
【0182】
代替として、経時的な放射電力の整関数を与えることができる。
【0183】
最適化は前節の最適化に非常に類似している。
【0184】
使用時に、コマンドローが判定されると、光源の判定されたコマンドローが使用するデバイスに送られる。
【0185】
このプロセスはリアルタイムに実施することができる。
【0186】
どちらの方法でも装着者の快適さを改善することができる。
【0187】
具体的には、対象者が眼球運動を使用してシーンを調べることができ、これは現行の解決手段では不可能であり、装着者はより狭い刺激領域で、知覚を向上させる眼球運動を使用することによって視野のより広い部分を調べることができる、という事実により快適さが得られる。
【0188】
第2節および第3節で開示された方法を組み合わせてもよいことに留意されたい。
【0189】
したがって、第2節の方法に従って得られたフィルタ処理済み画像36は、第3節で開示された制御のための方法に従って、光学モジュールから出射した制御された光線38によって眼28の上に投射される。
【0190】
第4節-特定のデバイスの説明
【0191】
前述の方法の使用時にヒトの装着者によって装着されるようになっている医療デバイス40の例が
図15に示されている。
【0192】
たとえば、医療デバイスはヘッドマウント機器である。医療デバイスは、眼鏡と同様の形状を有する。
【0193】
変形実施形態によれば、医療デバイス40は、ヘッドマウント機器を備える。この場合、医療デバイス40の一要素または一部は眼鏡と同様の形状を有する。
【0194】
特定の実施形態によれば、医療デバイス40の電子回路46は、別個のポケットユニットに配置することができる。
【0195】
医療デバイスは、医療用途に適合された第2節で開示されたシステム10を備える。
【0196】
すなわち、システム10は、第1節で開示された小型コンピュータである。
【0197】
たとえば、医療デバイス40において実施される方法はリアルタイム方法である。
【0198】
医療デバイス40は、2つのそれぞれの側の2つのアーム(図示せず)に固定されたフレーム(図示せず)をさらに備える。
【0199】
医療デバイス40は、2つのそれぞれの側の2つのアームに固定されたフレームを備える。
【0200】
フレームは医療デバイス40の本体である。
【0201】
医療デバイスはまた、フレームに含まれるアイトラッカー42と、カメラ44と、電子回路46と、光学モジュール48とを備える。光学モジュール48は、投射系を形成する。
【0202】
カメラ44は、初期画像30を取り込むようになっている。
【0203】
アイトラッカー42は、視線方向のデータを収集するようになっている。視線方向は、たとえば、眼28のモデルまたは較正のいずれかによって判定される。一例によれば、アイトラッカー42は、瞳の中心および赤外光を使用して角膜からの光反射を収集し、瞳中心から角膜反射までのベクトルを使用して視線方向を算出する。
【0204】
より厳密には、最も一般に使用される技法は角膜反射法(PCCR)である。基本概念は、光源を使用して眼を照明し、高度に視認可能な反射を生じさせ、カメラを使用してこのような反射を示す目の画像を取り込むことである。次いで、カメラによって取り込まれた画像を使用して角膜上の光源の反射(閃光)および瞳内の光源の反射を特定する。次いで、角膜反射と瞳反射との間の角度によって形成されるベクトルを算出することができる。次いで、このベクトルの方向を、反射の幾何学的特徴と組み合わせて、視線方向を算出する。
【0205】
視線方向は、アイトラッカー42の出力である。
【0206】
アイトラッカー42は、瞳32のサイズを測定するようになっている。
【0207】
電子回路46は電子構成要素の群である。
【0208】
電子回路46は、第2節で開示されたシステム10とコマンドモジュール50とを含む。
【0209】
電子回路46は、カメラ44から電子データの形で初期画像30を受信し、光学モジュール48にコマンドを発行するように構成される。
【0210】
他の入力パラメータがシステム10のメモリに事前に記録される。
【0211】
システム10は、第2節で開示された方法に従ってフィルタを生成する。
【0212】
さらに、システム10は、生成されたフィルタによって初期画像30をフィルタ処理するようになっている。
【0213】
コマンドモジュール50は、少なくとも1つの電子チップを含む電子回路である。
【0214】
コマンドモジュールは、システム10および光学モジュール48に接続される。
【0215】
光学モジュール48は発光デバイスであり、光学モジュールから出射する光の制御されたビーム38によって装着者の眼を照明するようになっている。
【0216】
上述のように、光学モジュール48は、光源52と、光線38を放出してフィルタ処理済み画像36を再生するようになっている光学系54と、光源52の放射電力を制御するようになっている制御モジュール56とを備える。
【0217】
光学系54は、光源52によって放出された光の形状および方向を変更するようになっている光学素子の組合せである。
【0218】
光学系54は、被制御ビーム38において光源52によって放出された光線38を整形し、被制御ビームの一部の出力先を眼28の上に変更するようになっている。
【0219】
光学系54は、たとえば、コリメータと、複数のミラーと、マイクロミラーアレイと、フォトダイオード、および/または液体レンズとを含む。
【0220】
光源52は、光を発生させる少なくとも1つの光素子から構成される。代替として、光源52は、光を発生させる光素子と、光学系54に光を伝えるようになっている光ファイバなどの光伝送素子とを備える。したがって、光を発生させる光素子は、光源52が光ファイバなしで光を発生させる光素子を含む場合よりも光学系54から遠くに位置することができる。
【0221】
コマンドモジュール50は、フィルタ処理済み画像36を眼28の上記の一部の上に投射するためのコマンドを光学モジュール48に送るようになっている。より厳密には、コマンドモジュール50は、コマンドを制御モジュール56に送るようになっており、制御モジュール56は光源52に命令を下す。光学系54は、光源52によって放出された光を受け取るようになっている。
【0222】
具体的には、光源52はマイクロミラーマトリックスの素子を照明する。マイクロミラーマトリックスの各被照明素子は、フィルタ処理済み画像36中の伝達される画素に相当する光を伝える。
【0223】
医療デバイスの変形実施形態によれば、光学系がマイクロミラーマトリックスを有さないとき、発光ダイオードなどの光源52の離散素子は、フィルタ処理済み画像36中の伝送される画素に相当する光を伝える。
【0224】
第5節-適用例
【0225】
この方法は、網膜インプラントなどの視覚補綴を使用する視覚再生分野で使用することができる。
【0226】
特定の実施形態によれば、この方法はオプトジェネティクスにおいて使用されてもよい。
【0227】
第2節の方法は、網膜色素変性(RP)または黄斑変性(MD)の場合のように光受容体を喪失するかまたは光受容体が変性した対象者に使用されてもよい。前述のように、これらの影響によって対象者の視力が低下するか、光感受性が低下するか、または視野の一部が見えなくなる。
【0228】
上述のように、いくつかの治療法は、光線38によって網膜のトランスフェクト細胞および/または網膜インプラントを刺激することからなる。
【0229】
画像が投射される眼28の上記の一部は、眼28の網膜の一部に相当する。
【0230】
画像が投射されることになる網膜の上記の一部は、刺激する必要のある網膜のトランスフェクト細胞および/または網膜インプラントを含む。
【0231】
網膜の上記の一部は、フィルタ処理済み画像を再生する光線38によって刺激される。
【0232】
フィルタ処理済み画像36は、光受容体の喪失または変性に起因する失われた視野を対象者の視線方向の関数として再構築する。
【0233】
網膜の上記の一部を刺激する光線38は、たとえば、第3節の方法によって得られる。
【0234】
第3節の方法によれば、網膜の上記の一部は、瞳サイズとは無関係の必要な光特性によって刺激される。
【0235】
そのような場合、光強度のしきい値(最大値および最小値)が、光毒症規格によって与えられ、眼科または光遺伝治療用の光刺激の適用に関連する文献においてさらに分析されていることに留意されたい(Yanら、2016年、Delori、Webb、およびSliney、2007年、Slineyら、2005年)。たとえば、波長が595nmの光の場合、
〇 網膜における最大光強度は7mW/mm2であり(ISO 15004-2 2007、ISO 62471 2006)、
〇 角膜(前部)において、最大光強度は、直径1mmの任意の円板全体にわたって32mWである(ISO 15004-2 2007)。
【0236】
さらに、輝度照射量制限を考慮したときの網膜放射露光量限界は48時間において6.6J.cm-2である(輝度照射量制限、ANSI Z136.1 2014)。
【符号の説明】
【0237】
10 システム
12 コンピュータプログラム製品
14 プロセッサ
16 データ処理ユニット
18 メモリ
20 読み取り装置
22 キーボード
24 表示ユニット
28 眼
30 初期画像
32 瞳
34 猫
36 フィルタ処理済み画像
38 光線
40 医療デバイス
42 アイトラッカー
44 カメラ
46 電子回路
48 光学モジュール
50 コマンドモジュール
52 光源
54 光学系
56 制御モジュール