(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】多軸サーボ制御システム
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H02P5/46 A
(21)【出願番号】P 2022018751
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】202111231505.5
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502330713
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】No.252,ShanYing Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳建達
(72)【発明者】
【氏名】蔡易軒
(72)【発明者】
【氏名】李佳樺
(72)【発明者】
【氏名】黄靖為
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-100350(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159472(WO,A1)
【文献】特開平08-256500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のモータと、外部のフィールドバスを介して相互に接続された複数の駆動制御装置と、を含む多軸サーボ制御システムであって、
各前記駆動制御装置は、制御ユニットと、複数の駆動ユニットとを含み、
前記複数の駆動ユニット及び前記制御ユニットは、複数のローカルバスを介して直列接続され、データを順次伝送可能な直列通信経路を形成し、各前記駆動ユニットは、前記複数のモータのうち少なくとも1つを制御し、
複数の前記制御ユニットは、
前記外部のフィールドバスを介して相互に接続され、かつ前記外部のフィールドバスを介して多軸位置コマンドを受信し、それに応じて、前記複数の駆動ユニットは、前記ローカルバスを介して多軸コマンドを受信し、前記複数のモータを分散制御する、
多軸サーボ制御システム。
【請求項2】
前記ローカルバスは、
高速バスであり、
前記制御ユニットの出力端子を始端とし、前記複数の駆動ユニットを直列に順次接続し、最後に前記制御ユニットの入力端子にフィードバックして当該入力端子を終端とし、データを順次伝送可能な直列通信経路を形成する、
請求項1に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項3】
各前記駆動ユニットがプロセッサを含み、前記制御ユニットがプロセッサを含み、
前記直列通信経路は、前記制御ユニットの前記プロセッサと、前記制御ユニットの前記出力端子と、各前記駆動ユニットの入力端子と、各前記駆動ユニットの前記プロセッサと、各前記駆動ユニットの出力端子と、前記制御ユニットの入力端子と、前記制御ユニットの前記プロセッサとを含む、
請求項2に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
コマンドプロセッサと、
前記コマンドプロセッサに接続されたコマンドシンクロナイザと、を含む、
請求項1に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、
コマンドジェネレータと、
前記コマンドジェネレータに接続されたコマンドプロセッサと、
前記コマンドプロセッサに接続されたコマンドシンクロナイザと、を含む、
請求項1に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、同一前記駆動制御装置における前記複数の駆動ユニットを制御するためのスレーブ動作モードを提供するスレーブコントローラである、
請求項1に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項7】
前記制御ユニットは、同一前記駆動制御装置における前記複数の駆動ユニットと、他の駆動制御装置の前記複数の駆動ユニットにおける前記制御ユニット及び前記複数の駆動ユニットと、を制御するためのマスター動作モードを提供するマスターコントローラである、
請求項1に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項8】
前記駆動ユニットは、
電流コマンドと電流値とを受信し、前記電流コマンドと前記電流値とを比較して電流制御信号を生成するための電流経路ユニットを含む、
請求項1に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項9】
前記駆動ユニットは、
前記電流コマンドを受信して処理するコマンド処理ユニットと、
前記コマンド処理ユニットに接続され、処理された前記電流コマンドを受信し、前記電流コマンドを同期化して前記電流経路ユニットに供給するコマンド同期ユニットと、をさらに含む、
請求項8に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項10】
前記駆動ユニットは、
サンプリングされた前記電流値を受信し、前記電流値を処理して前記電流経路ユニットに供給する電流処理ユニットをさらに含む、
請求項8に記載の多軸サーボ制御システム。
【請求項11】
前記駆動ユニットは、
複数のフィードバックコマンドを受信し、前記複数のフィードバックコマンドを通信パケット化して前記ローカルバスの出力に供給するフィードバック処理ユニットをさらに含む、
請求項8に記載の多軸サーボ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸サーボ制御システムに関し、特に位置コマンドと電流コマンドとを分散制御する多軸サーボ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び
図2は、従来の多軸サーボ制御システムの第1タイプ及び第2タイプをそれぞれ示す概略構成図である。
図1に示す第1タイプは、単一の独立したサーボドライバが単軸のモータの回転を制御し、即ち、1台のサーボドライバが1台のモータの回転を制御することを意味する。
図1に示すように、3台のサーボドライバ100Aが対応する3台のモータ200Aと組み合わせて用いられる。このタイプの適用では、2台のサーボドライバ100A同士の間は、フィールドバス(field bus)300Aを介して接続されている。このようにして、各サーボドライバ100Aは、上位コントローラ(又は上位機)の制御コマンドを受信し、さらに対応するモータ200Aを制御することができる。ここで、フィールドバスは、EtherCAT、CANOpen、PROFINET等であってもよいが、これらに限定されない。各サーボドライバ100Aは、少なくとも、モータの回転速度を計画制御するためのコントローラと、ドライバに電流出力を供給するための電源モジュールとを含む。しかしながら、このタイプの制御システムは、各モータ200Aが対応するサーボドライバ100Aによって制御されるため、多軸への適用の場合、フィールドバスの通信周期に同期性が制限され、同期性が劣る。
【0003】
図2に示す第2タイプは、単一の独立したサーボドライバが複数のモータを制御することを意味する。
図2に示すように、1台のサーボドライバ100Aがそれぞれ3台のモータ200Aを制御する。ただし、モータ200Aの数は3台に限定されず、サーボドライバ100Aが供給できる出力電流(パワー)の許容範囲内にモータ200Aの正常運転を維持する数であれば駆動制御することができる。同様に、2台のサーボドライバ100A同士の間は、フィールドバス300Aを介して接続され、フィールドバス300Aを介して上位コントローラからの制御コマンドを受信する。しかしながら、出力電流(電力)の制限により、モータ200Aの数の上限やモータ200Aの定格出力は、サーボドライバ100Aの設計当初から制限され、拡張性や置換性(交換性)に劣る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、従来技術の問題やボトルネックを解決するための多軸サーボ制御システム、特に位置コマンドと電流コマンドとを分散制御する多軸サーボ制御システムをどのように設計するかが、本願発明者によって検討された重要な課題である。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、多軸サーボ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る多軸サーボ制御システムは、複数のモータと、外部のフィールドバスを介して相互に接続された複数の駆動制御装置と、を含み、各前記駆動制御装置は、制御ユニットと、複数の駆動ユニットとを含み、前記複数の駆動ユニット及び前記制御ユニットは、複数のローカルバスを介して直列接続され、データを順次伝送可能な直列通信経路を形成し、各前記駆動ユニットは、前記複数のモータのうち少なくとも1つを制御し、前記制御ユニットは、前記外部のフィールドバスを介して多軸位置コマンドを受信し、それに応じて、前記複数の駆動ユニットは、前記ローカルバスを介して多軸コマンドを受信し、前記複数のモータを分散制御する。
【0007】
一実施形態において、前記ローカルバスは、高速バスであり、前記制御ユニットの出力端子を始端とし、前記複数の駆動ユニットを直列に順次接続し、最後に前記制御ユニットの入力端子にフィードバックして当該入力端子を終端とし、データを順次伝送可能な直列通信経路を形成する。
【0008】
一実施形態において、各前記駆動ユニットがプロセッサを含み、前記制御ユニットがプロセッサを含み、前記直列通信経路は、前記制御ユニットの前記プロセッサと、前記制御ユニットの前記出力端子と、各前記駆動ユニットの入力端子と、各前記駆動ユニットの前記プロセッサと、各前記駆動ユニットの出力端子と、前記制御ユニットの入力端子と、前記制御ユニットの前記プロセッサとを含む。
【0009】
一実施形態において、前記制御ユニットは、コマンドプロセッサと、前記コマンドプロセッサに接続されたコマンドシンクロナイザと、を含む。
【0010】
一実施形態において、前記制御ユニットは、コマンドジェネレータと、前記コマンドジェネレータに接続されたコマンドプロセッサと、前記コマンドプロセッサに接続されたコマンドシンクロナイザと、を含む。
【0011】
一実施形態において、前記制御ユニットは、同一前記駆動制御装置における前記複数の駆動ユニットを制御するためのスレーブ動作モードを提供するスレーブコントローラである。
【0012】
一実施形態において、前記制御ユニットは、同一前記駆動制御装置における前記複数の駆動ユニットと、他の駆動制御装置の前記複数の駆動ユニットにおける前記制御ユニット及び前記複数の駆動ユニットと、を制御するためのマスター動作モードを提供するマスターコントローラである。前記駆動ユニットは、電流コマンドと電流値とを受信し、前記電流コマンドと前記電流値とを比較して電流制御信号を生成するための電流経路ユニットを含む。
【0013】
一実施形態において、前記駆動ユニットは、前記電流コマンドを受信して処理するコマンド処理ユニットと、前記コマンド処理ユニットに接続され、処理された前記電流コマンドを受信し、前記電流コマンドを同期化して前記電流経路ユニットに供給するコマンド同期ユニットと、をさらに含む。
【0014】
一実施形態において、前記駆動ユニットは、サンプリングされた前記電流値を受信し、前記電流値を処理して前記電流経路ユニットに供給する電流処理ユニットをさらに含む。
【0015】
一実施形態において、前記駆動ユニットは、複数のフィードバックコマンドを受信し、前記複数のフィードバックコマンドを通信パケット化して前記ローカルバスの出力に供給するフィードバック処理ユニットをさらに含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る多軸サーボ制御システムの主な効果は次の通りである。(1)駆動ユニットによる電流(トルク)コマンドの処理制御及び制御ユニットによる位置(速度)コマンドの処理制御によって実現される分散演算により、制御ユニットの演算量を大幅に削減するだけでなく(電流(トルク)コマンドの処理制御は駆動ユニットによって実行されるため)、コストが良く、機能が比較的低いコントローラを選択することができ、駆動制御装置の拡張性及び交換性を向上させることができる。(2)高速のローカルバスはバックプレーンの配線方式で実現され、直列フィードバックの完全な通信伝送経路を形成し、データの歪みと減衰を避けることができる。(3)コマンドデータは制御ユニットによる精緻化演算により細分化され、さらに各軸のモータを制御する駆動ユニットに供給され、駆動ユニットが各軸のモータを詳細に制御することができる。(4)制御ユニットはスレーブモードとマスターモードで動作できるため、制御ユニットの柔軟性と多様性が向上する。
【0017】
本発明の目的を達成するためになされた本発明の技術、手段、及び効果をより良く理解するために、本発明の目的及び特徴は、本発明の詳細な説明及び添付図面を参照することによってより良く理解されると考えられるが、添付図面は、参照及び説明のみを提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の多軸サーボ制御システムの第1タイプを示す概略構成図である。
【
図2】従来の多軸サーボ制御システムの第2タイプを示す概略構成図である。
【
図3】本発明に係る多軸サーボ制御システムを示す概略構成図である。
【
図4】本発明に係る高速のローカルバスの設計を示す概略図。
【
図5】本発明に係る制御ユニットの制御方式を示す概略図。
【
図6】本発明に係る駆動ユニットの制御方式を示す概略図。
【
図7】本発明に係る制御ユニットをスレーブとした場合を示す概略図である。
【
図8】本発明に係る制御ユニットをマスターとした場合を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の技術内容及び詳細な説明について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0020】
図3は、本発明に係る多軸サーボ制御システムを示す概略構成図である。多軸サーボ制御システムは、複数のモータ200と複数の駆動制御装置100とを含む。複数の駆動制御装置100は、外部のフィールドバス(field bus)300を介して相互に接続されている。
図3に示すように、2群の駆動制御装置100を例に挙げているが、本発明はこれに限定されない。なお、本発明において、多軸のモータ200は、搬送装置、ピックアンドプレース装置、表面接着技術(SMT)、視覚検査による位置決め装置、スポット溶接や往復測定等の機械的自動化操作、ロボットアーム作業の分野に適用されるが、これらに限定されない。
【0021】
各駆動制御装置100は、制御ユニット10と、複数の駆動ユニット20とを含む。複数の駆動ユニット20同士間、及び駆動ユニット20と制御ユニット10とは、複数のローカルバス(local bus)400を介して直列接続され、データを順次伝送可能な直列通信経路を形成する。各駆動ユニット20は、これらのモータ200のうち少なくとも1つを制御するが、各駆動ユニット20が制御するモータ200の数と形態は、
図3に示す形態に限定されない。
【0022】
制御ユニット10は、外部のフィールドバス300を介して多軸位置コマンド(又は多軸速度コマンド)を受信し、こられの駆動ユニット20は、ローカルバス400を介して多軸コマンドを受信して、モータ200を分散制御する。具体的な説明については後述する。
【0023】
図3に示すように、本発明に係る多軸サーボ制御システム(多軸のモータ制御用のサーボドライブ設計)は、従来の多軸のモータ制御を分散化し、制御ユニット10、駆動ユニット(又はサーボユニット、サーボ駆動ユニットと称する)20、ローカルバス400、モータ200によってそれぞれ独立して構成され、単一の外部のフィールドバス300の接続方式を維持する。この制御システム構成の特徴は、以下の通りである。
【0024】
(1)高速のローカルバス400は、入力(input)と出力(output)とが接続されている。詳細については後述する。
【0025】
(2)制御ユニット10は、各軸のモータ200の位置と速度との同期制御、及び各軸のモーションフローを担当する。詳細については後述する。
【0026】
(3)駆動ユニット20は、モータ200の電流制御、電流サンプリング、及び位置フィードバックを担当する。ここで、1つの駆動ユニット20は1つ以上のモータ200を制御する。したがって、出力電力の大きい駆動ユニット20に交換すれば、機械全体の動作に影響を与えることなく、数がもっと多い、又は定格出力がもっと大きいモータ200を駆動制御できるため、拡張性や置換性(交換性)が向上する。
【0027】
(4)制御ユニット10は、マスター(master)とスレーブ(slave)の2つのモードとして、コマンドを供給して各軸のモータ200を制御することができる。マスターとした場合には、外部のフィールドバス300を介して、他のサーボドライバ(即ち、駆動制御装置100)、及び自身の複数のサーボドライバが接続された複数のモータ200を能動的に制御することができる。スレーブとした場合には、自身の複数のサーボドライバが接続された複数のモータ200を制御し、外部バスコマンドを受動的に受信する。
【0028】
図4は、本発明に係る高速のローカルバスの設計を示す概略図。
図4に示すように、本発明に係る高速のローカルバス400は、ハードウェア設計と組み合わせ(例えば、本実施形態ではバックプレーンの配線方式で実現する)、直列フィードバック方式(左の駆動制御装置100内のローカルバス400は右の駆動制御装置100内のローカルバス400の展開)により、制御ユニット10を始端とし、データを1つ目の直列接続された駆動ユニット20の入力端子in(又は入力モジュールinと称する)に伝送する。受信したデータはプロセッサ402によって処理された後、出力端子out(又は出力モジュールoutと称する)により2つ目の直列接続された駆動ユニット20の入力端子inにデータを伝送する。このようにして、最後の直列接続された駆動ユニット20の入力端子inにデータを順次伝送する。最後に、直列接続された最後の駆動ユニット20の出力端子outを介して、前の駆動ユニット20の他の入力端子inに出力され、制御ユニット10の他の入力端子に順次返送されることにより、完全な通信伝送経路が形成される。これにより、直列フィードバック方式によってデータを通信伝送することで、データの歪みや減衰を回避することができる。
【0029】
図5は、本発明に係る制御ユニットの制御方式を示す概略図。制御ユニット10は、外部のフィールドバス300が伝送する多軸コマンドデータ(即ち、第1軸へのコマンド、第2軸へのコマンド、…第N軸へのコマンド)を受信する。ここで、多軸コマンドデータは、上位コントローラより提供され、位置、速度、トルク等を含む。本実施形態において、制御ユニット10は、コマンドプロセッサ102とコマンドシンクロナイザ104とを含む。制御ユニット10は、これらの多軸コマンドデータを受信すると、コマンドプロセッサ102により、多軸コマンドデータに対してコマンド平滑化の処理やコマンド補間の処理等を含む処理を行う。次に、コマンドシンクロナイザ104により、処理されたコマンドデータを同期した後、高速のローカルバス400を介して同期後のコマンドデータを1つ目の駆動ユニット20に伝送し、ローカルバス400を介して各駆動ユニット20のコマンドデータを順次伝送し、最終にコマンドデータを制御ユニット10に返送する。その後、制御ユニット10は、各軸の状態情報を処理し、処理した情報をフィールドバス300に返送する。換言すれば、各軸のモータ200が制御するタイムスケジュールは、制御ユニット10によって実行される。そのため、上位コントローラから供給される多軸コマンドデータは、制御ユニット10のコマンドプロセッサ102及びコマンドシンクロナイザ104による精緻化演算により、秒(second)級やミリ秒(ms)級のコマンドデータからマイクロ秒(us)級やナノ秒(ns)級のコマンドデータに細分化され、各軸のモータ200を制御する駆動ユニット20に供給されるので、駆動ユニット20は各軸のモータ200を精密(精緻)に制御することができる。本実施形態では、制御ユニット10がコマンドデータの処理のみを担当すればよく、各軸のモータ200の電流制御は、対応する各駆動ユニット20が担当することで、分散演算効果を実現することができる。
【0030】
なお、制御ユニット10は、位置コマンド制御と電流コマンド制御とを有する。ここで、位置コマンドが速度コマンドに対応し、電流コマンドがトルクコマンドに対応する。従来の制御メカニズムでは、位置(速度)コマンド制御及び電流(トルク)コマンド制御は、通常、同じプロセッサ又はコントローラによって処理される。しかし、本発明では、電流(トルク)コマンドの処理制御は、駆動ユニット20によって実行され、位置(速度)コマンドの処理制御は、制御ユニット10によって実行される。換言すれば、本発明によるモジュール化の利点により、電流(トルク)コマンド及び位置(速度)コマンドは、それぞれ異なるプロセッサ又はコントローラ(即ち、駆動ユニット20及び制御ユニット10)で実行されてもよい。これにより、制御ユニット10の演算量を大幅に削減することができるだけでなく(電流(トルク)コマンドの処理制御は駆動ユニット20によって実行されるため)、コストが比較的安価で機能が比較的低いコントローラを選択することができ、駆動制御装置100の拡張性及び交換性を向上させることができる。
【0031】
図6は、本発明に係る駆動ユニットの制御方式を示す概略図。一実施形態において、駆動ユニット20は、制御チップ(control chip)により電流ループ制御を行うことができる。本発明に係る駆動ユニット20は、電流サンプリングユニット21と、電流処理ユニット22と、コマンド処理ユニット23と、コマンド同期ユニット24と、電流経路ユニット25と、パルス幅変調信号(PWM)ユニット26と、フィードバック処理ユニット27とを備える。電流サンプリングユニット21は、電流フィードバック信号を受信し、この電流フィードバック信号に対し、例えばデルタシグマ(Δ-Σ)の変調方式等のサンプリング処理を行う。電流処理ユニット22は、サンプリングされた電流フィードバック信号を受信し、電流フィードバック信号を処理する。コマンド処理ユニット23は、ローカルバス400から入力されたコマンドデータを受信し、ローカルの高速コマンドデータ処理を行う。コマンド同期ユニット24は、コマンド同期メカニズムにより、コマンドデータを同期化する。電流経路ユニット25は、コマンド同期ユニット24から供給される同期コマンドデータと、電流処理ユニット22から供給されるフィードバック電流情報とを受信し、電流ループ制御を行う。PWMユニット26は、電流経路ユニット25による電流ループ制御に応じて、モータ200の実電流を制御する制御用PWM信号出力を生成する。フィードバック処理ユニット27は、エンコーダフィードバック(encoder feedback)、エンドエンコーダフィードバック(end encoder feedback)、及び圧力(フォース)センサフィードバック(force sensor feedback)を受信し、エンコーダの通信パケット処理を行う。
【0032】
具体的には、駆動ユニット20は、制御ユニット10から送信されるコマンドデータを受信し、モータ200の位置制御経路、速度制御経路、及びエンコーダ位置処理を行う。ここで、コマンドデータは、電流コマンド、電気角、速度及び通信遅延補償量等を含むが、これらに限定されず、伝送及び受信には誤り検出及び訂正メカニズムが備えられている。
【0033】
駆動ユニット20は、中断するたびに、電流コマンド、電気角及び通信遅延補償量を他軸の駆動ユニット20に伝送するので、コマンド同期ユニット24を処理モジュールに同期させ、同期メカニズムにより各軸の駆動ユニット20を同期し、多軸間のエンコーダサンプリング、電流フィードバックサンプリング及びPWM発効時間の同期を確保する必要がある。
【0034】
電流フィードバックサンプリングにより、フィードバックデータを電流処理ユニット22によってデコードした後、自己設計の同期フィルタ(SyncFilter)構成と組み合わせることで、電流フィードバック情報を電流経路に返送するように制御する。電流サンプリング方法は、デルタシグマ(Δ-Σ)、ADC等を含むが、これらに限定されない。
【0035】
電流経路ユニット25の電流ループ制御は、PI(比例-積分)制御、d-q軸(縦軸-横軸)電流変換、空間ベクトルPWM(SVPWM)制御、電圧デカップリング、及びデッドタイム(dead time)補償を含む。電流経路ユニット25の電流ループ制御は、SVPWM制御によって算出された比較数値により、PWMユニット26によってIGBTの6ブリッジ制御を実現する。
【0036】
フィードバック処理ユニット27は、エンコーダフィードバック信号、エンドエンコーダ信号、及び圧力センサ信号を受信する。これら通信フォーマットは、いずれもECC(error correcting code)機能を含む。フィードバック処理ユニット27は、通信パケットを復号した後、ローカルバス400を介してデータを制御ユニット10に返送するように通信し、位置及びトルクの完全閉ループ制御を行う。
【0037】
本発明において、制御ユニット10の動作は、スレーブ(slave)モードとマスター(master)モードとの2種類のモードに分けられる。
図7は、本発明に係る制御ユニットをスレーブとした場合を示す概略図である。制御ユニット10がスレーブとして機能する場合、多軸コマンドデータは、上位コントローラ、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)、又はモーションコントローラを介して供給される。したがって、駆動ユニット20は、これらの多軸コマンドデータを受信し、さらに各軸のモータ200を駆動制御することができる。制御ユニット10は、スレーブモードで動作する場合、上位コントローラから供給される多軸コマンドデータを受動的に受信し、コマンドプロセッサ102及びコマンドシンクロナイザ104によって演算コマンドデータを精緻化することにより、駆動ユニット20が各軸のモータ200を精密(精緻)に制御することができる。
【0038】
図7の右に示すマスター装置は、第三者の上位マスターコントローラであってもよい。第三者の上位マスターコントローラ(master device)は、各軸のコマンドを計画し、フィールドバス300を介して各スレーブ装置(slave device)に送信する。関連するスレーブ情報は、フィールドバス300を介して第三者の上位マスター制御装置にも返送される。スレーブ装置の場合、各スレーブ装置は、第三者のスレーブ装置がスレーブ装置における各軸のモータ200を個別に制御できるように、多軸コマンドデータを第三者のスレーブ装置に供給する。
【0039】
図8は、本発明に係る制御ユニットをマスターとした場合を示す概略図である。マスターモードでは、制御ユニット10は、マスターコントローラとして機能し、即ち、制御ユニット10は、ローカルの駆動ユニット20に加えて、コマンドジェネレータ101によりコマンドデータを生成し、フィールドバス300を介して他のスレーブ装置に送信し、さらに他のスレーブ装置を制御することができる。換言すれば、制御ユニット10自身がマスターコントローラとする場合、第三者の上位マスターコントローラが要らなくて、ゆえに、各軸のコマンドデータの計画、補間、及び同期処理は、すべて制御ユニット10で完成できる。一実施形態では、プログラムプログラミングにより、ユーザに外部軸又は内部軸の制御を行うプログラムプログラミングが提供されてもよく、プログラミングされたプログラムを制御ユニット10にダウンロードしてもよい。このようにして、マスターモードとして動作する制御ユニット10は、プログラミングされたプログラムに基づいて、外部軸及び/又は内部軸のモータ200を制御する。
【0040】
以上をまとめると、本発明の特徴と利点は次の通りである。
(1)駆動ユニット20による電流(トルク)コマンドの処理制御、及び制御ユニット10による位置(速度)コマンドの処理制御によって実現される分散演算により、制御ユニット10の演算量を大幅に削減するだけでなく(電流(トルク)コマンドの処理制御は駆動ユニット20によって実行されるため)、コストが良く、機能が比較的低いコントローラを選択することができ、駆動制御装置100の拡張性及び交換性を向上させることができる。
(2)高速のローカルバスはバックプレーンの配線方式で実現され、直列フィードバックの完全な通信伝送経路を形成し、データの歪みと減衰を避けることができる。
(3)コマンドデータは制御ユニット10による精緻化演算により細分化され、さらに各軸のモータ200を制御する駆動ユニット20に供給され、駆動ユニット20が各軸のモータ200を詳細に制御することができる。
(4)制御ユニット10はスレーブモードとマスターモードで操作できるため、制御ユニット10の柔軟性と多様性が向上する。
【0041】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもなく、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の全ての範囲は以下の特許請求の範囲に基づくものであり、本発明の特許請求の範囲に合致する精神とその類似の変形例は、本発明の範囲に含まれるべきであり、当業者であれば、本発明の技術的範囲内において、容易に思いつくことができ、また、その変形例や修正例も、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
100 駆動制御装置
200 モータ
300 フィールドバス
400 ローカルバス
10 制御ユニット
20 駆動ユニット
101 コマンドジェネレータ
102 コマンドプロセッサ
104 コマンドシンクロナイザ
100A サーボドライバ
200A モータ
300A フィールドバス