IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アンドレア ヴァレンティーニの特許一覧

特許7453271手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド
<>
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図1
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図2
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図3
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図4
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図5
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図6
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図7
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図8
  • 特許-手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 45/00 20060101AFI20240312BHJP
   B24B 23/03 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B24B45/00 Z
B24B23/03
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022044909
(22)【出願日】2022-03-22
(65)【公開番号】P2022151769
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】21164265
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522089332
【氏名又は名称】アンドレア ヴァレンティーニ
【氏名又は名称原語表記】Andrea Valentini
【住所又は居所原語表記】2, Via Senofonte, 20145 Milano, Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ヴァレンティーニ
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0240798(US,A1)
【文献】実開昭59-128349(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058518(US,A1)
【文献】実開平04-005360(JP,U)
【文献】特表2013-540599(JP,A)
【文献】米国特許第06523214(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B41/00-51/00
B24B23/02-23/03
B25F1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具(2)に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド(20)であって、
-中心軸線(34)と、
-上面(50)と、
-弾性的なプラスチック材料から製作され、前記上面(50)に取り付けられた減衰層(52)と、
-前記減衰層(52)の下面(56)に取り付けられ、ポリッシングまたはサンディング部材(24)を取り外し可能に取り付けるのに適した平坦な下側層(22)と、
-前記上面(50)に設けられ、前記手持ち式の電動工具(2)の対応する取付け要素(32)に取り外し可能に取り付けるのに適した取付け部材(38)と、
を備え、
前記支持パッド(20)の前記上面(50)が、前記中心軸線(34)を取り囲むように延在する中央領域(58)と、該中央領域(58)を取り囲む外側領域(60)とを有する、支持パッド(20)において、
前記中央領域(58)が、周囲の前記外側領域(60)に対して凹状に形成されており、
前記中心軸線(34)が前記取付け部材(38)を通って延在するように、前記取付け部材(38)が、前記上面(50)の凹状の前記中央領域(58)に設けられていることで、凹状の前記中央領域(58)の少なくとも一部が前記取付け部材(38)を取り囲むことを特徴とする、
支持パッド(20)。
【請求項2】
手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具(2)に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッド(20)であって、
-中心軸線(34)と、
-上面(50)と、
-弾性的なプラスチック材料から製作され、前記上面(50)に取り付けられた減衰層(52)と、
-前記減衰層(52)の下面(56)に取り付けられ、ポリッシングまたはサンディング部材(24)を取り外し可能に取り付けるのに適した平坦な下側層(22)と、
-前記上面(50)に設けられ、前記手持ち式の電動工具(2)の対応する取付け要素(32)に取り外し可能に取り付けるのに適した取付け部材(38)と、
を備え、
前記支持パッド(20)の前記上面(50)が、前記中心軸線(34)を取り囲むように延在する中央領域(58)と、該中央領域(58)を取り囲む外側領域(60)とを有し、
前記中央領域(58)が、周囲の前記外側領域(60)に対して凹状に形成されており、
前記中心軸線(34)が前記取付け部材(38)を通って延在するように、前記取付け部材(38)が、前記上面(50)の凹状の前記中央領域(58)に設けられていることで、凹状の前記中央領域(58)の少なくとも一部が前記取付け部材(38)を取り囲む、支持パッド(20)において、
前記取付け部材(38)が中央凹部(40)を備えており、前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記凹状の中央領域(58)の少なくとも一部が、前記中央凹部(40)の上側外縁部を形成している、または
前記取付け部材(38)が、前記支持パッド(20)の前記中心軸線(34)と一致する長手方向軸線を有するねじ山付きピン(78)を備え、前記ねじ山付きピン(78)の基部が、前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記周囲の外側領域(60)によって規定される仮想平面(96)よりも下方に位置していることを特徴とする、
支持パッド(20)。
【請求項3】
前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記周囲の外側領域(60)が、前記凹状の中央領域(58)から半径方向外向きで前記支持パッド(20)の前記上面(50)の上側外縁部(80)まで延在している、請求項1記載の支持パッド(20)。
【請求項4】
前記取付け部材(38)が、少なくとも部分的に金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作されている、請求項1または記載の支持パッド(20)。
【請求項5】
前記取付け部材(38)が中央凹部(40)を備えており、前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記凹状の中央領域(58)の少なくとも一部が、前記中央凹部(40)の上側外縁部を形成している、請求項1または3または4記載の支持パッド(20)。
【請求項6】
前記支持パッド(20)の前記上面(50)を上方から見たとき、前記中央凹部(40)が、前記支持パッド(20)の前記中心軸線(34)に関して回転対称ではない内周面(42)を有している、請求項2または5記載の支持パッド(20)。
【請求項7】
前記支持パッド(20)の前記上面(50)を上方から見たとき、前記中央凹部(40)が、前記中心軸線(34)上に位置する共通の中心点と、互いに同一の半径とを有する2つの円弧(86)を含む内周面(42)を有し、前記2つの円弧(86)が、前記中心軸線(34)に関して互いに向かい合って位置しており、前記中央凹部(40)の前記内周面(42)が、前記中心軸線(34)の互いに向かい合った側で互いに平行に延在しかつ前記2つの円弧(86)を互いに接続する2つの直線(88)をさらに含む、請求項または5または6記載の支持パッド(20)。
【請求項8】
前記中央凹部(40)の内周面(42)が、正多角形である、請求項または5または6記載の支持パッド(20)。
【請求項9】
前記中央凹部(40)が、前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記凹状の中央領域(58)から上向きに延在する外壁(82)によって少なくとも部分的に形成されている、請求項2または請求項からまでのいずれか1項記載の支持パッド(20)。
【請求項10】
前記外壁(82)の上縁部が、前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記周囲の外側領域(60)によって規定される仮想平面(96)よりも下方に位置している、請求項記載の支持パッド(20)。
【請求項11】
前記取付け部材(38)が、前記支持パッド(20)の前記中心軸線(34)と一致する長手方向軸線を有するねじ山付きピン(78)を備える、請求項1またはまたは4記載の支持パッド(20)。
【請求項12】
前記手持ち式の電動工具(2)の前記対応する取付け要素(32)が取り付けられる前記ねじ山付きピン(78)のねじ山領域が、前記支持パッド(20)の前記上面(50)の前記周囲の外側領域(60)によって規定される仮想平面(96)よりも下方に位置している、請求項2または11記載の支持パッド(20)。
【請求項13】
前記支持パッド(20)の前記上面(50)を上方から見たとき、前記支持パッド(20)が、円形、三角形または方形の形状を有している、請求項1から12までのいずれか1項記載の支持パッド(20)。
【請求項14】
前記支持パッド(20)の前記上面(50)を上方から見たとき、前記支持パッド(20)が円形の形状を有し、前記上面(50)の前記凹状の中央領域(58)が、本質的に円形の形状を有し、前記周囲の外側領域(60)が、本質的に環状の形状を有している、請求項1から13までのいずれか1項記載の支持パッド(20)。
【請求項15】
前記支持パッド(20)の前記上面(50)を上方から見たとき、前記支持パッド(20)が円形の形状を有し、前記上面(50)が、剛性材料から製作された別個のプレート状の環状カバー要素(90)を備えており、前記上面(50)の環状の前記外側領域(60)の少なくとも一部が、前記別個のプレート状の環状カバー要素(90)から形成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載の支持パッド(20)。
【請求項16】
前記別個のプレート状の環状カバー要素(90)が、接着、溶接、スナップオン接続、磁気接続、リベット締めおよびねじ締結のうちの少なくとも1つによって前記上面(50)の載置部に不動に取り付けられる、請求項15記載の支持パッド(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手持ち式のポリッシングまたはサンディング電動工具に取り外し可能に取り付けるのに適したプレート状の支持パッドに関する。支持パッドは、
-中心軸線と、
-上面と、
-弾性的なプラスチック材料から製作され、上面に取り付けられた減衰層と、
-減衰層の下面に取り付けられ、ポリッシングまたはサンディング部材を取り外し可能に取り付けるのに適した平坦な下側層と、
-上面に設けられ、手持ち式の電動工具の対応する取付け要素、特に手持ち式の電動工具の工具軸または偏心要素の対応する取付け要素に取り外し可能に取り付けるのに適した取付け部材と、
を備えている。
【背景技術】
【0002】
上述した形態の支持パッドは、従来技術において周知である。既知の支持パッドは、中心軸線を取り囲むように延在する円形の中央領域と、中央領域を取り囲む本質的に環状の外側領域と、を有する上面を有している。通常、既知の支持パッドでは、中央領域は、周囲の外側領域を越えて上向きに突出し、中央の隆起部を形成している。中央領域に隆起部がある理由は、それによって支持パッドが電動工具、特にポリッシャまたはサンダに取り外し可能に取り付けられるように、隆起部が支持パッドの取付け部材を備えているからである。取付け部材は、電動工具の対応する取付け要素を収容して取り付けられるように適合されたねじ山付きピン、または凹部の形状であってよい。好ましくは、取付け要素は、工具軸の一部に不動に取り付けられるか、または工具軸の一部を形成しているか、または電動工具の偏心要素に取り付けられる。好ましくは、取付け要素は、支持パッドの中心軸線周りで自由に回転可能に偏心要素に取り付けられる。このような形態の支持パッドは、例えば、欧州特許出願公開第2052813号明細書、欧州特許出願公開第3520962号明細書および国際公開第2019/048732号から知られている。
【0003】
支持パッドが電動工具の工具軸に直接的に取り付けられる場合、支持パッドは、好ましくは純粋な回転作業運動を実施する。支持パッドが偏心要素によって工具軸に取り付けられる場合、支持パッドは、好ましくはランダムオービタル作業運動を実施する。偏心要素は、電動工具の作動時に工具軸の回転軸線周りで回転するように、トルクに耐えられるように工具軸に取り付けられる。支持パッドは、偏心要素に、支持パッドの中心軸線周りで自由に回転できるように取り付けられる。工具軸の回転軸線と支持パッドの中心軸線とは、互いに平行かつ離隔して延在している。電動工具が作動すると、支持パッドは、工具軸の回転軸線周りで偏心運動を実施する。同時に、偏心要素に対する支持パッドの自由回転により、偏心運動に中心軸線周りで支持パッドのランダム回転運動成分が付加され、支持パッドのランダムオービタル作業運動が得られる。
【0004】
支持パッドの取付け部材が凹部の形状である場合、電動工具の取付け要素は、好ましくは、凹部の内周面の形状に対応する形状を備えた外周面を有する突出部を備えており、突出部は軸線方向で凹部に挿入されて、中心軸線に対して垂直に延在する平面で凹部内に形状接続的に保持することができる。なお、突出部の外周の形状は、必ずしも凹部の内周の形状と同一である必要はない。突出部を凹部に挿入して隙間なく形状接続的に凹部内に保持することができるように突出部が形成されていれば十分である。
【0005】
突出部は、軸線方向で機械的に、例えばねじもしくはナットによって、または磁気的に、例えば相互作用する磁気要素(例えば(複数の)永久磁石および/または(複数の)強磁性の要素)によって、凹部内に保持することができる。好ましくは、突出部の外周面の形状と凹部の内周面の形状とは、支持パッドの中心軸線に関して回転対称ではない。このように、突出部を凹部に軸線方向に挿入した後、突出部と凹部とは、支持パッドの中心軸線に対して互いにトルクに耐えられるように接続される。この目的のため、必要に応じて、電動工具の工具軸または偏心要素から支持パッドにトルクを伝達することができる。
【0006】
支持パッドの取付け部材がねじ山付きピンの形状である場合、電動工具の取付け要素は、好ましくは、ねじ山付きピンの外径およびねじ山に対応する、内径およびねじ山を有するねじ穴を備えている。支持パッドは、ねじ山接続によって取付け要素に不動に取り付けることができる。
【0007】
上面の中央領域に隆起部を有し、隆起部に取付け部材が位置する従来の支持パッドの1つの欠点は、支持パッドひいては運動質量全体の重心が相当高く、すなわち、電動工具およびポリッシング部材またはサンディング部材によってそれぞれ加工される表面から相当大きく離隔していることである。その結果、電動工具に取り付けられる支持パッドと、支持パッドに取り付けられたポリッシングまたはサンディング部材とを備える電動工具は、著しく不安定かつ不均一な運転を伴い、電動工具の意図された使用中に相当大きな量の振動を生じさせる。偏心要素の場合、支持パッドの重量を補償するために、偏心要素が1つ以上のカウンタウェイトを有するという事実によって、このことが強制される。支持パッドの中央領域の隆起部のため、一方では(複数の)カウンタウェイトの重心が、他方では支持パッドの重心が、相当大きな距離で離隔しており、さらに、不安定かつ不均一な運転と、さらに大きな電動工具の振動をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した形態の支持パッドから出発して、本発明の目的は、支持パッドが取り付けられた電動工具の意図された使用中に、電動工具の運転が十分に安定しより均一となる支持パッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、請求項1の特徴を有する支持パッドが提案される。特に、上述した形態の支持パッドから出発して、支持パッドの上面が、中心軸線を取り囲むように延在する中央領域と、中央領域を取り囲む外側領域とを有し、中央領域が、周囲の外側領域に対して凹状に形成されており、中心軸線が取付け部材を通って延在しかつ中央領域の少なくとも一部が取付け部材を取り囲むように、取付け部材が、上面の凹状の中央領域に設けられていることが提案される。
【0010】
先行技術の支持パッドでは、中央領域が軸線方向で(すなわち中心軸線に対して平行に)周囲の外側領域を越えて上向きに突出しているのに対して、本発明では、中央領域が周囲の外側領域に対して凹状に形成されている。したがって、中央領域は、周囲の外側領域によって規定される仮想水平面よりも下方に延在している。これにより、支持パッドの取付け部材を下側層により近づけて支持パッド内により下方にかつより深く配置することができる。したがって、支持パッドは、電動工具により近接した位置に配置され、それによって、電動工具の軸線方向における運動質量間の距離を減少させることができる。特に、偏心要素のカウンタウェイトを支持パッドにより近接させて、好ましくは、凹状の中央領域によって上面に形成された窪み内に少なくとも部分的に位置決めすることができる。これにより、一方では(複数の)カウンタウェイトの重心が、他方では(ポリッシングまたはサンディング部材を含む)支持パッドの重心が、軸線方向において互いにより近接して位置することになる。その結果、電動工具が取り付けられる本発明による支持パッドと、支持パッドに取り付けられたポリッシングまたはサンディング部材とを備えた電動工具が、より安定した、より均一な運転を伴い、電動工具の意図された使用中に生じる振動が著しく少ない量になる。
【0011】
支持パッドと、それに取り付けられたポリッシングまたはサンディング部材との重量に相当するカウンタウェイトは、質量の静的な補償を提供するために、電動工具の回転軸線(または電動工具の工具軸)に関して支持パッドの重心と反対側に配置される。また、効率的な質量の動的な補償を提供するために、(複数の)カウンタウェイトの重心と支持パッドの重心とは、互いに可能な限り近接して配置されている。理論的には、重心同士が支持パッドの中心軸線に対して垂直な共通の水平面上に位置すれば、完璧な補償を実現することができる。もちろん、これは、技術的な制約から実際には実現することはできない。しかしながら、本発明による支持パッドは、2つの重心の互いにより近接した配置を提供し、したがって、極めて良好な質量の動的な補償を実現することができる。
【0012】
要約すると、本発明の主な利点は、
-(複数の)カウンタウェイトの重心が、支持パッドの重心に近接するように軸線方向で移動し、
-電動工具の意図された使用中に、運動質量の運動量、特に支持パッドの運動量が減少し、
-電動工具の意図された使用中に、電動工具の振動が少なくなり、
-支持パッドと、支持パッドを取り付けた電動工具との全高が低減する
ことである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、支持パッドの上面の周囲の外側領域が、凹状の中央領域から半径方向外向きで支持パッドの上側外縁部まで延在していることが提案される。凹状の中央部分と周囲の外側領域との間に円錐形の中間領域を設けることができ、中間領域は中央領域から外側領域に向かって立ち上がっている。好ましくは、周囲の外側領域はその表面全体にわたって連続的な本質的に水平な延在部を有している。周囲の外側領域に、(例えば粉塵吸引用の)穴および/または表面から上向きに突出する要素(例えば補強リブおよび/または通気羽根)を設けてもよいが、周囲の外側領域の延在部は、依然として本質的に水平であると考えられる。言い換えると、この実施形態によれば、断面図で見たとき、支持パッドは、周囲の外側領域が中央領域または円錐形の中間領域に接触する第1の領域と、周囲の外側領域が支持パッドの上面の上側外縁部に接触する第2の領域とにおいて、本質的に同一の高さを有している。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、取付け部材が、少なくとも部分的に金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作されていることが提案される。金属および/または剛性的なプラスチック材料の一部は、上面の凹状の中央領域まで延在していてもよいし、中央領域全体を形成していてもよい。特に、取付け部材のトルク受止め部分および/またはトルク伝達部分は、金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作されている。これらは、例えば、凹部として設計された取付け部材では、凹部を規定する内周面である。ねじ山付きピンとして設計された取付け部材では、中央領域にすぐ隣接して延在するピンまたはピンの基部の少なくとも一部が、好ましくは金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作されている。
【0015】
取付け部材は、本質的にプレート状の形状を有する、本質的にプレート状のアンカ固定手段または埋込み手段を備えることができ、これらの手段は、減衰層内かつ/または支持パッドの上面内に延在することができる。電動工具の工具軸または偏心要素から受けたトルクを支持パッドに伝達できるようにするために、取付け部材が支持パッド全体に不動に取り付けられることが重要である。取付け部材には、支持パッドの上面からアクセスが可能であり、したがって、取付け部材は、上面、特に上面の中央領域に配置されているが、取付け部材は、実際には、支持パッドの他の部分を通って延在していてもよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、取付け部材が中央凹部を備えており、好ましくは、支持パッドの上面の凹状の中央領域の少なくとも一部が凹部の上側外縁部を形成していることが提案される。したがって、言い換えると、凹部の上側外縁部は、周囲の外側領域に対して凹状に形成されている。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、支持パッドの上面を上方から見たとき、中央凹部が、中心軸線上に位置する共通の中心点と、互いに同一の半径とを有する2つの円弧を含む内周の形状を有しており、2つの円弧が、中心軸線に関して互いに向かい合って位置しており、凹部の内周の形状が、中心軸線の互いに向かい合った側で互いに平行に延在しかつ2つの円弧を互いに接続する2つの直線をさらに含むことが提案される。好ましくは、突出部の形状の電動工具の取付け要素は、突出部を軸線方向で凹部に挿入し、凹部内に形状接続的に保持することができるように、対応する外周の形状を有している。
【0018】
代替的な実施形態によれば、中央凹部の内周の形状が、正多角形、特に正六角形であることが提案される。好ましくは、突出部の形態の電動工具の取付け要素は、突出部が多角形の凹部に軸線方向で挿入され、多角形の凹部内に形状接続的に保持することができるように、対応する正多角形の外周の形状を有している。
【0019】
中央凹部は、支持パッドの上面の凹状の中央領域から上向きに延在する外壁によって少なくとも部分的に形成されていることが提案される。この実施形態では、凹部の上側外縁部は、支持パッドの上面の凹状の中央領域のいかなる部分によっても形成されない。むしろ、凹状の中央領域を起点として、外壁は上向に延在している。壁は、中央凹部の内周面を画定している。壁はまた、凹状の中央領域の下方で支持パッド内に部分的に延在することができる。好ましくは、外壁の上縁部は、支持パッドの上面の周囲の外側領域によって規定される仮想水平面よりも下方に位置している。
【0020】
本発明の代替的な実施形態によれば、取付け部材が、支持パッドの中心軸線と一致する長手方向軸線を有するねじ山付きピンを備えていることが提案される。凹状の中央領域は、好ましくは、ねじ山付きピンの基部に直接的に隣接して延在している。したがって、ねじ山付きピンの基部は、支持パッドの上面の周囲の外側領域によって規定される仮想水平面に対して凹状に形成されている。この場合、(工具軸または偏心要素に取り付けられた)電動工具の取付け要素は、それぞれ、ねじ山付きピンの外径およびねじ山に対応する、内径およびねじ山を有するねじ穴を備えることができる。
【0021】
支持パッドは、ねじ山接続によって取付け要素に取り付けることができる。好ましくは、支持パッドと取付け要素との間のねじ山接続を締め付けるための回転方向は、作業運動の方向と反対である。これにより、電動工具が作動したときに、不本意にねじ山接続が緩む危険性を低減することができる。それどころか、電動工具を作動させると、ねじ山接続が締め付けられる。
【0022】
手持ち式の電動工具の対応する取付け要素、特に手持ち式の電動工具の工具軸の対応する取付け要素が取り付けられるねじ山付きピンのねじ山領域が、周囲の外側領域によって規定される仮想水平面よりも下方に位置していることが提案される。この実施形態では、支持パッドが電動工具に取り付けられるときに、電動工具の取付け要素が取り付けられるねじ山付きピンの基部だけでなく、ねじ山付きピンの部分も仮想水平面よりも下方に位置している。遠位端部に向かうねじ山付きピンの更なる部分もまた、仮想平面よりも下方に位置することができるが、位置しなくてもよい。好ましくは、遠位端部までのねじ山付きピンの全体は、仮想水平面よりも下方に位置している。
【0023】
さらに別の代替案によれば、支持パッドの取付け部材は、ねじ穴を備えることができる。その場合、電動工具の取付け要素は、ねじ山付きピンを備えることになる。取付け要素の外径およびねじ山は、取付け部材の内径およびねじ山に対応する。
【0024】
上方から見たとき、支持パッドは、任意の所望の形状を有していてよい。好ましくは、支持パッドの上面を上方から見たとき、支持パッドは、円形、三角形、特にデルタ形、または方形の形状を有している。円形の支持パッドは、好ましくは、純粋な回転作業運動(工具軸に直接的に取り付けられる)、ランダムオービタル作業運動(支持パッドの中心軸線周りで自由に回転できるように偏心要素に取り付けられる)、歯車駆動作業運動(歯車機構、特に遊星歯車に取り付けられる)または偏心作業運動(偏心要素と、中心軸線周りでの偏心要素に対する自由回転が制限される支持パッドとに取り付けられる)のうちの1つの作業運動を実施するように、電動工具に取り付けられる。三角形、デルタ形または方形の支持パッドは、好ましくは、偏心作業運動(偏心要素と、中心軸線周りでの偏心要素に対する自由回転が制限される支持パッドとに取り付けられる)を実施するように電動工具に取り付けられる。上面の中央領域が周囲の外側領域に対して凹状に形成された本発明による支持パッドは、支持パッドの外部形状に左右されることなく、上述の利点(すなわち、運動質量の運動量の減少および振動の減少)を有している。
【0025】
円形の支持パッドの場合、上面の凹状の中央領域は、本質的に円形の形状を有し、周囲の外側領域は、本質的に環状の形状を有する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によれば、支持パッドの上面を上方から見たとき、支持パッドが円形の形状を有し、上面が、剛性材料から製作された別個のプレート状の環状カバー要素を備えており、好ましくは、上面の環状の外側領域の少なくとも一部、特に、支持パッドの上面の上側外縁部に隣接する外側領域の少なくとも半径方向外側の部分が、別個のプレート状の環状カバー要素から形成されている。例えば、このような形態の環状カバー要素は、欧州特許出願公開第1514644号明細書および欧州特許出願公開第2551056号明細書に詳細に記載されており、本質的に、支持パッドの粉塵吸引機能を支持しかつ作業表面から粉塵および小さなパーティクルをより高い効率で除去するための付加的な吸引室および吸引溝を支持パッド内に形成するために役立つ。この実施形態によれば、上面の中央領域は、環状カバー要素に対して凹状に形成されている。したがって、支持パッドの吸引室および吸引溝の開口に可能な限り近接して、凹状の中央領域によって形成された窪みに電動工具の粉塵抽出装置のファンを設けることが有利であり、それによって、粉塵吸引効率をさらに向上させることができる。
【0027】
別個のプレート状の環状カバー要素は、接着、溶接、共成形、スナップオン接続、磁気接続、リベット締めおよびねじ締結のうちの少なくとも1つによって上面の載置部に不動に取り付けられることが好ましい。
【0028】
本発明の更なる特徴および利点が、添付の図面を参照して以下にさらに詳細に説明される。図面に示された特徴および/または以下に記載された特徴の各々は、それ単独でまたは図面に示された他の特徴および/または以下に記載された他の特徴のいずれかと任意の可能な組み合わせで、たとえその組み合わせが図面に示されていなくても、かつ/または以下の説明で明示的に言及されていなくても、本発明の一部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】直接的に電動工具の工具軸に取り付けられた本発明の好ましい実施形態による支持パッドの断面図である。
図2】偏心要素によって間接的に電動工具の工具軸に取り付けられた本発明の好ましい実施形態による支持パッドの断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態による支持パッドの取付け部材の詳細な側面図である。
図4図3の取付け部材の平面図である。
図5】本発明の第2の実施形態による支持パッドの取付け部材の詳細な平面図である。
図6】本発明の第3の実施形態による支持パッドの取付け部材の詳細な平面図である。
図7】本発明による支持パッドを取り付けた電動工具の図である。
図8】偏心要素によって間接的に電動工具の工具軸に取り付けられた従来の支持パッドの断面図である。
図9】直接的に電動工具の工具軸に取り付けられた従来の支持パッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図7には、例示的な手持ち案内式および手持ち式のモータ駆動型の電動工具の全体が、参照符号2で示されている。この例では、電動工具2はランダムオービタルポリッシャとして実現されている。しかしながら、電動工具は、回転式または歯車駆動式のポリッシャまたはサンダとして、特に偏心サンダ等として実現することもできる。ポリッシャ2は、本質的にプラスチック材料から製作されたハウジング4を有している。ハウジング4は、その後端部にハンドル6を有し、その前端部にグリップ部分8を有している。遠位端部に電気プラグを備えた電力供給ライン10は、ハンドル6の後端部においてハウジング4から出ている。したがって、この例では、ポリッシャ2は、主電源から引き込まれる電流で電気モータによって駆動される。もちろん、ポリッシャ2は、ポリッシャ2の内部のかつ/または取出し可能な再充電可能なバッテリから引き込まれる電流で作動することもできる。代替的に、ポリッシャ2は、ポリッシャ2のハウジング4に取り付けられた圧縮空気用の管から引き込まれる圧縮空気によって駆動される空気圧モータを備えることも可能である。後者の2つの場合、電気ケーブル10は不要であり、省略することができる。
【0031】
ハンドル6の下側には、電動工具2の電源をON/OFFにするためのスイッチ12が設けられている。スイッチ12は、押しボタン14によって、その作動位置に連続的に保持することができる。電動工具2には、工具のモータの回転速度を調整するための速度調整手段16(例えばローレットホイール)を設けることができる。ハウジング4には、ハウジング4の内部に位置する電子的もしくは機械的な構成要素および/または電気モータからの熱を環境に放散させ、冷却空気をハウジング4に流入させるための冷却開口18を設けることができる。
【0032】
支持パッド20は、以下でより詳細に説明されるように、電動工具2に取り付けられる。作業表面(例えば、車両のボディ、ボートの船体、航空機の胴体、または木材、金属、プラスチック、樹脂等の一部)を加工するためのポリッシングまたはサンディング部材24を、支持パッド20の下側層22に取り付けることができる(図8参照)。ポリッシング部材24は、例えば、発泡パッド、合成または天然の羊毛パッド、マイクロファイバパッド、革パッド等であってよい。サンディング部材24は、例えば、布製の研磨紙、研磨パッド等であってよい。支持パッド20の下側層22へのポリッシングまたはサンディング部材24の取り外し可能な取付けは、接着接続または面ファスナ接続等によって実現されてよい。この目的のために、下側層22は、(フックまたはループを備えた)面ファスナ接続の第1の層を備え、ポリッシングまたはサンディング部材24の上面は、(ループまたはフックを備えた)面ファスナ接続の第2の層を備えることができる。フックおよびループを備えた2つの層は、ポリッシングまたはサンディング部材24を下側層22に配置したときに互いに相互作用し、それによって、ポリッシングまたはサンディング部材24を支持パッド20に取り外し可能に取り付けることができる。
【0033】
支持パッド20は、電動工具2の工具軸28の回転軸線26周りで回転するように、電動工具2に取り付けられる。図8の例は、偏心要素30によって間接的に工具軸28に取り付けられる従来の支持パッド20を示す。それに対して、図9は、工具軸28に直接的に取り付けられる従来の支持パッド20を示している。特に、支持パッド20は取付け要素32に取り付けられる。この取付け要素32は、電動工具2の工具軸28に不動に取り付けられてもよいし、その一部を形成してもよいし(図9参照)、または偏心要素30に自由に回転可能に取り付けられてもよい(図8参照)。
【0034】
支持パッド20が電動工具2の工具軸28に直接的に取り付けられる場合、支持パッド20は、好ましくは純粋な回転作業運動を実施する。その場合、取付け要素32は、トルクに耐えられるように工具軸28に取り付けられるかまたは工具軸28の一体部分を形成する。
【0035】
支持パッド20が偏心要素30によって工具軸28に取り付けられる場合、支持パッド20は、好ましくはランダムオービタル作業運動を実施する。偏心要素30は、電動工具2の作動時に工具軸28の回転軸線26周りで回転するように、トルクに耐えられるように工具軸28に取り付けられる。この取付けは、ねじ山接続、溶接等の手段によって実施することができる。支持パッド20は、例えば、玉レースの形状を有することができる1つ以上の軸受36によって、支持パッド20の中心軸線34周りで自由に回転可能に偏心要素30に取り付けられる。工具軸28の回転軸線26と支持パッド20の中心軸線34とは、互いに平行かつ距離を置いて延びている。電動工具2が作動すると、支持パッド20は、工具軸28の回転軸線26周りで偏心運動を実施する。同時に、偏心要素30に対する支持パッド20の自由回転は、回転軸線26周りの偏心運動に、中心軸線34周りの支持パッド20のランダム回転運動成分を付加し、支持パッド20のランダムオービタル作業運動が得られる。
【0036】
図8から判るように、偏心要素30は、回転軸線26周りでの偏心運動中に支持パッド20の重量を補償するために、少なくとも1つのカウンタウェイト74(図8の偏心要素30の右側の肉厚の壁)を有している。カウンタウェイト74は、回転軸線26に関して、偏心要素30の中心軸線34とは反対側で支持パッド20の重心72とは反対側に位置している。
【0037】
支持パッド20はその上面50に取付け部材38を備えており、これによって、支持パッド20は、工具軸28または偏心要素30に接続される。図8および図9の例では、取付け部材38は、非回転対称の内周面42を有する凹部40を備えている。取付け要素32は、対応する外周面44を有している。特に、取付け部材38および取付け要素32は、取付け要素32を支持パッド20の中心軸線34に対して形状接続的に取付け部材38に収容することができるように設計されている。この目的のために、必要に応じて、取付け要素32から支持パッド20にトルクが伝達されてよい。支持パッド20および取付け部材38は、それぞれ、取付け要素32に対して軸線方向で(中心軸線34に対して平行に)機械的に、例えばねじによって保持することができ(図9参照)、このねじは、支持パッド20の中心穴46に底部から挿入されて、取付け要素32の底部に設けられたねじ穴(図示せず)、場合によっては工具軸28にも設けられたねじ穴(図示せず)にねじ締結することができる。代替的に、支持パッド20および取付け部材38は、それぞれ、取付け要素32に対して軸線方向で磁気的に、例えば支持パッド20に取り付けられた永久磁石48によって保持することができ(図8参照)、この永久磁石48は、取付け要素32に取り付けられている強磁性の要素または取付け要素32により設けられている強磁性の要素と相互作用することができる。
【0038】
支持パッド20は、
-中心軸線34と、
-上面50と、
-弾性的なプラスチック材料から製作され、上面50、特に上面50の下面54に取り付けられた減衰層52と、
-減衰層52の下面56に取り付けられ、ポリッシングまたはサンディング部材24を取り外し可能に取り付けるのに適した平坦な下側層22と、
-上面50に設けられ、手持ち式の電動工具2の対応する取付け要素32に取り外し可能に取り付けるのに適した取付け部材38と、
を備えている。
【0039】
減衰層52の弾性的なプラスチック材料は、好ましくは、ポリウレタン(PUR)または同様の復元可能なかつ/または弾性的なプラスチック材料である。支持パッド20の様々な層50,52および22は、共に接着されてよく、かつ/または共成形プロセスで製造されてよい。取付け部材38は、好ましくは、共成形プロセスによって支持パッド20(すなわち、上面50および減衰層52)内に挿入される。
【0040】
上述した形態の支持パッド20は、先行技術において周知である。円形の支持パッド20は、中心軸線34を取り囲むように延在する円形の中央領域58と、中央領域58を取り囲む本質的に環状の外側領域60と、を有する上面50を有している。既知の支持パッド20では、中央領域58は、周囲の外側領域28を越えて上向きに突出しているか(図8参照)、または周囲の外側領域28と同一の高さにある(図9参照)。中央領域58の領域で支持パッド20の厚さが相当大きいことの理由は、支持パッド20が、支持パッド20の取付け部材38を備えているからである。取付け部材38は、電動工具2の対応する取付け要素32を収容し、それに取り付けられるように適合されたねじ山付きピンまたは凹部40の形状であってよい。
【0041】
既知の支持パッド20の厚さが、特に中央領域58の領域で相当大きいことの更なる理由は、上面50と下側層22とを通って延在する開口64を備えた、減衰層52に設けられた粉塵吸引溝および粉塵吸引室62があるからである。
【0042】
上面50の中央領域58に隆起部を有するか、または、少なくとも中央領域58と周囲の外側領域60とが同一の高さであり、少なくとも中央領域58と中央領域58に位置する取付け部材38とが同一の高さである従来の支持パッド20の欠点の1つは、運動質量全体の重心68が、電動工具2およびポリッシング部材もしくはサンディング部材24によってそれぞれ加工される表面66よりも相当高い位置に位置するということである。さらに、(複数の)カウンタウェイト74の重心70と支持パッド20の重心72とは、互いに対して軸線方向に相当大きな距離で離隔して位置している。その結果、電動工具2が不安定かつ不均一な運転を伴い、電動工具2の意図された使用中に相当大きな量の振動を生じさせる。
【0043】
これらの欠点は、本発明による支持パッド2によって克服され、その例が、図1図6に全体的または部分的に示されている。特に、上面50の中央領域58が、周囲の外側領域60に対して凹状に形成されており、中心軸線34が取付け部材38を通って延在しかつ中央領域58の少なくとも一部が取付け部材38を取り囲むように、取付け部材38が、凹状の中央領域58に設けられることが提案される。好ましくは、支持パッド20の上面50の凹状の中央領域58の少なくとも一部は、例えば凹部40の上側外縁部を形成するかまたはねじ山付きピン78の基部をカラー状に取り囲んで、取付け部材38に直接隣接している。
【0044】
図8および図9の先行技術の支持パッド20では、中央領域58が軸線方向で(中心軸線34に対して平行に)周囲の外側領域60を越えて突出しているかまたは周囲の外側領域60と同じ高さであるのに対して、本発明では、中央領域58が、周囲の外側領域60に対して凹状に形成されている(図1および図2参照)。これにより、支持パッド20の取付け部材38を下側層22により近づけて支持パッド20内により下方にかつより深く配置することができる。したがって、支持パッド20は、電動工具2により近接した位置に配置され、それによって、電動工具2の運動質量間の距離を減少させることができる。特に、カウンタウェイト74を備えた偏心要素30を支持パッド20の重心72により近接させて、好ましくは、凹状の中央領域58によって上面50に形成された窪み76内に少なくとも部分的に位置決めすることができる。その結果、本発明による支持パッド20と、支持パッド20に取り付けられたポリッシングまたはサンディング部材24とを備えた電動工具2が、より安定した、より均一な運転を伴い、電動工具2の意図された使用中に生じる振動が著しく少なくなる。
【0045】
カウンタウェイト74は、本質的に支持パッド20の重量に対応し、場合によっては支持パッド20に取り付けられたポリッシングまたはサンディング部材24の重量にも対応する。カウンタウェイト74は、質量の静的な補償を提供するために、電動工具2の工具軸28の回転軸線26に関して支持パッド20の重心72と反対側に配置される。効率的な質量の動的な補償を提供するためにも、(複数の)カウンタウェイト74の重心70と支持パッド20の重心72とは、軸線方向において互いに可能な限り近接して配置される。理論的には、重心70,72が共通の水平面上に位置していれば、完全な動的な補償を達成することができる。もちろん、これは、実際には、技術的な制約から実現することはできない。しかしながら、本発明による支持パッド20は、軸線方向における2つの重心70,72の十分に近接した配置を提供し、ひいては、質量の極めて良好な動的な補償を実現することが可能である。
【0046】
支持パッド20が偏心要素30によって間接的に工具軸28に取り付けられる場合、支持パッド20の上面50、特に窪み76が、偏心要素30の一部を支持することができるように設計されていることが提案される。これは図2に見ることができ、同図では、偏心要素30の下側部分が窪み58内に位置し、周囲の外側領域60によって規定される仮想水平面96よりも下方にあることが明確に判る。同様に、支持パッド20が工具軸28に直接的に取り付けられる場合(図1参照)、取付け要素32にすぐ隣接する工具軸28の側部分は、窪み76内に位置し、仮想水平面96よりも下方に位置している。
【0047】
前述したように、支持パッド20の取付け部材38は、凹部40を備えることができる(図1および図2参照)。その場合、取付け要素32は、好ましくは、凹部40の内周面42の形状に対応する形状を備えた外周面44を有する突出部によって形成されており、これにより、突出部32を軸線方向に形状接続的に凹部40に挿入することが可能である。突出部32は、前述したように、機械的または磁気的に軸線方向で凹部40に保持することができる。好ましくは、突出部32の外周面44と凹部40の内周面42とは、支持パッド20の中心軸線34に関して回転対称ではない。このように、突出部32を凹部40に軸線方向で挿入した後、突出部32と凹部40とは、支持パッド20の中心軸線34に対してトルクに耐えられるように互いに接続されている。この目的のために、必要に応じて、取付け要素32から支持パッド20にトルクを伝達することができる。
【0048】
支持パッド20の上面50を上方から見たとき(図5参照)、中央凹部40は、中心軸線34上に位置する共通の中心点と、互いに同一の半径とを有する2つの円弧86を含む内周面42を備えており、2つの円弧86は、中心軸線34に関して互いに向かい合って等距離に位置していることが提案される。内周面42は、中心軸線34に対して等距離にある中心軸線34の互いに向かい合った側で互いに平行に延在しかつ2つの円弧86を互いに接続する2つの直線88をさらに含む。突出部の形態の電動工具2の取付け要素32は、突出部32を凹部40に軸線方向で挿入し、凹部内に形状接続的に保持することができるように、対応する外周面44を有している。
【0049】
代替的な実施形態によれば(図6参照)、中央凹部40の内周面42の形状は、正多角形、特に正六角形を含むことが提案される。好ましくは、突出部の形態の電動工具2の取付け要素32は、突出部32が凹部40に軸線方向で挿入され、凹部内に形状接続的に保持することができるように、対応する正多角形の外周形状を有している。
【0050】
中央凹部40が、支持パッド20の上面50の中央領域58から上向きに延在する外壁82(図6参照)によって少なくとも部分的に形成されていることが提案される。この実施形態では、凹部40または壁82の上側外縁部は、それぞれ上面50の凹状の中央領域58のいかなる部分によっても形成されない。むしろ、凹状の中央領域58を起点として、壁82は上向に延在している。壁82は、中央凹部40の内周面42を画定している。外壁82はまた、凹状の中央領域58の下方で支持パッド20内に部分的に延在することもできる。好ましくは、外壁82の上縁部は、上面50の周囲の領域60によって規定される仮想水平面96よりも下方に位置する。
【0051】
代替的に、取付け部材38は、支持パッド20の中心軸線34と一致する長手方向軸線を有するねじ山付きピン78(図3および図4参照)を備えることができる。その場合、電動工具2の取付け要素32は、ねじ山付きピン78の外径およびねじ山に対応する内径およびねじ山を有するねじ穴を備えている。支持パッド20は、ねじ山接続によって取付け要素32に取り付けることができる。図3から判るように、ねじ山付きピン78のねじ山領域に取り付けられた場合の取付け要素32は、少なくとも部分的に窪み76内に位置し、周囲の外側領域60によって規定される仮想水平面96よりも下方に位置する。特に、ねじ山付きピン78のねじ山領域全体は、仮想水平面96よりも下方に位置する。遠位端部を含むねじ山付きピン78全体が、仮想水平面96よりも下方に位置することさえ可能である。
【0052】
好ましくは、それぞれ、支持パッド20およびねじ山付きピン78と、電動工具2および取付け要素32との間のねじ山接続を締め付けるための回転方向は、工具軸28の回転軸線26周りの回転作業運動の方向と反対である。これにより、電動工具2が作動して支持パッド20が加速したときに、不本意にねじ山接続が緩む危険性が低減される。それどころか、電動工具2を作動させると、ねじ山接続が締め付けられる。
【0053】
本発明による支持パッド20の上面50の周囲の外側領域60は、凹状の中央領域58から半径方向外向きに上面50の上側外縁部80まで延在している。凹状の中央部分58と周囲の外側領域60との間に円錐形の中間領域98を設けることができ、中間領域58は中央領域58から外側領域60に向かって立ち上がっている。
【0054】
好ましくは、周囲の外側領域60はその表面全体にわたって連続的な本質的に水平な延在部を有している。周囲の外側領域60の表面には、穴および/または突出要素(例えば補強リブ、通気要素等)を設けていてもよいが、周囲の外側領域60の延在部は、本発明の意味において、依然として本質的に水平であると考えられる。言い換えると、断面図で見たとき、支持パッド20は、周囲の外側領域60が中央領域58または中間領域98に接触する第1の領域と、周囲の外側領域60が支持パッド20の上面50の上側外縁部80に接触する第2の領域とにおいて、本質的に同一の高さを有することが提案される。
【0055】
取付け部材38は、少なくとも部分的に金属(例えばダイキャストアルミニウムまたは鋼)および/または剛性的なプラスチック材料(例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、樹脂、場合によっては繊維強化樹脂等)から製作されていることが提案される。特に、取付け部材38のトルク受止め部分および/またはトルク伝達部分は、金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作されている。これらは、例えば、凹部40として設計された取付け部材38では、凹部40の内周面42を規定する周壁82(図5および図6参照)全体または壁82の一部である。ねじ山付きピン78(図3および図4参照)として設計された取付け部材38では、好ましくは、中央領域58のすぐ隣に延在するピン78全体、ねじ山領域および/またはピンの基部の一部が、金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作されている。
【0056】
もちろん、中央領域58の少なくとも一部を金属および/または剛性的なプラスチック材料から製作することもでき、好ましくは取付け部材38(すなわち、壁82またはねじ山付きピン78)と一体に製作することができる。取付け部材38は、支持パッド20の減衰層52内に延在することができる、本質的にプレート状の形状(図8参照)を有するアンカ固定手段または埋込み手段84を備えることができる。取付け部材38には、支持パッド20の頂部からアクセスが可能であり、したがって、取付け部材38は上面50に配置されているが、取付け部材38は、実際には、支持パッド20の他の部分、例えば減衰層52を通って延在することもできる。
【0057】
図1および図2に示す支持パッド20は、円形の形状を有している。一般に、支持パッド20は、任意の所望の形状を有することができる。好ましくは、支持パッド20の上面50を上方から見たとき、支持パッド20は、円形、三角形、特にデルタ形、または方形の形状を有している。円形の支持パッド20は、好ましくは、純粋な回転作業運動(工具軸28に直接的に取り付けられる)、ランダムオービタル作業運動(偏心要素30に取り付けられる)、歯車駆動作業運動(歯車機構、特に遊星歯車に取り付けられる)または偏心作業運動(偏心要素30と、中心軸線34周りでの偏心要素30に対する自由回転が制限される支持パッド20とに取り付けられる)のうちの1つの作業運動を実施するように、電動工具2に取り付けられる。円形の支持パッド20の場合、上面50の凹状の中央領域58は本質的に円形の形状を有し、周囲の外側領域60は本質的に環状の形状を有している。
【0058】
三角形、デルタ形または方形の支持パッド20は、好ましくは、支持パッド20が偏心作業運動(偏心要素30と、中心軸線34周りでの偏心要素30に対する自由回転が制限される支持パッド20とに取り付けられる)を実施するように電動工具2に取り付けられる。
【0059】
さらに、支持パッド20の上面50を上方から見たとき、支持パッド20は円形の形状を有しており、上面50は、剛性材料から製作される別個のプレート状の環状カバー要素90を備えていることが提案される。好ましくは、上面50の環状の外側領域60の少なくとも一部、特に支持パッド20の上面50の上側外縁部80に隣接する外側領域60の少なくとも半径方向外側の部分が、環状カバー要素90から構成されている(図1の支持パッド20の左側部分参照)。環状カバー要素90は、特に支持パッド20がサンディング電動工具2に取り付けられるときに、支持パッド20の粉塵抽出機能を支持しかつ作業表面66から粉塵および小さなパーティクルをより高い効率で除去するための付加的な吸引室および吸引溝92を支持パッド20内に形成するために役立つ。この実施形態では、支持パッド20の吸引室および吸引溝92の開口94に可能な限り近接して、窪み76に電動工具2の内部の粉塵抽出装置のファンを設けることが有利であり、それによって、粉塵吸引効率をさらに向上させることができる。
【0060】
別個のプレート状の環状カバー要素90は、好ましくは、接着、溶接、共成形、スナップオン接続、磁気接続、リベット締めおよびねじ締結のうちの少なくとも1つによって上面50の載置部に不動に取り付けられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9