(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置および荷電粒子線装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/147 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H01J37/147 B
H01J37/147 A
(21)【出願番号】P 2022070101
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2023-06-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 隆光
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-049981(JP,A)
【文献】特開平03-176955(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101388317(CN,A)
【文献】特開昭59-189546(JP,A)
【文献】特開昭59-124719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線で試料を走査し、走査像を取得する荷電粒子線装置であって、
磁界を発生させて荷電粒子線を偏向する磁界偏向器と、
電界を発生させて荷電粒子線を偏向する静電偏向器と、
前記磁界偏向器および前記静電偏向器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を第1方向に偏向させて第1走査線を引き、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向と直交する第2方向に偏向させ、
前記静電偏向器に荷電粒子線を前記第1方向とは反対方向の第3方向に偏向させ、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向に偏向させて第2走査線を引く、荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、前記静電偏向器に、前記第1走査線の長さだけ荷電粒子線を前記第3方向に偏向させる、荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御部は、前記静電偏向器に、前記第1走査線の長さよりも大きく荷電粒子線を前記第3方向に偏向させる、荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記制御部は、
第N(Nは2以上の整数)走査線を引いた後、前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第2方向に偏向させ、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第3方向に偏向させ、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向に偏向させて第N+1走査線を引く、荷電粒子線装置。
【請求項5】
磁界を発生させて荷電粒子線を偏向する磁界偏向器と、電界を発生させて荷電粒子線を偏向する静電偏向器と、を含み、荷電粒子線で試料を走査し、走査像を取得する荷電粒子線装置の制御方法であって、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を第1方向に偏向させて第1走査線を引き、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向と直交する第2方向に偏向させ、
前記静電偏向器に荷電粒子線を前記第1方向とは反対方向の第3方向に偏向させ、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向に偏向させて第2走査線を引く、荷電粒子線装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置および荷電粒子線装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線を集束させて電子プローブを形成し、電子プローブで試料を走査して走査像を取得する装置として、走査透過電子顕微鏡(STEM)や走査電子顕微鏡(SEM)などの荷電粒子線装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、収束させた電子線で電子プローブを形成し、当該電子プローブで試料を走査し、電子プローブの走査と同期して試料を透過した透過電子あるいは試料で散乱された散乱電子を検出することで走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を得ることができる走査透過電子顕微鏡が開示されている。特許文献1では、電子プローブの走査を走査コイルで行っている。走査コイルは、磁界を発生させて電子線を偏向させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子線の走査は、電子線で水平方向に走査線を引き、電子線を振り戻して次の走査線を引くことで行われる。ここで、走査コイルは過渡応答によってリンギングが発生し、非線形応答するため、電子線を振り戻して次の走査線を引くまでの間に、待ち時間を設ける必要がある。この待ち時間を振り戻し時間(flyback time)という。走査透過電子顕微鏡では、振り戻し時間を走査コイルが非線形応答する時間より長く設定し、走査コイルが線形応答するまで待ってSTEM像の取得を行う。これにより、STEM像の歪みやぼけを低減できる。
【0006】
このように、磁界で荷電粒子線を偏向させる荷電粒子線装置では、荷電粒子線を振り戻すごとに、振り戻し時間を設けなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
荷電粒子線で試料を走査し、走査像を取得する荷電粒子線装置であって、
磁界を発生させて荷電粒子線を偏向する磁界偏向器と、
電界を発生させて荷電粒子線を偏向する静電偏向器と、
前記磁界偏向器および前記静電偏向器を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を第1方向に偏向させて第1走査線を引き、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向と直交する第2方向に偏向させ、
前記静電偏向器に荷電粒子線を前記第1方向とは反対方向の第3方向に偏向させ、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向に偏向させて第2走査線を引く。
【0008】
このような荷電粒子線装置では、磁界偏向器で第1走査線を引いた後、静電偏向器で荷電粒子線を振り戻して、磁界偏向器で第2走査線を引くため、磁界偏向器で荷電粒子線を振り戻す場合と比べて、振り戻し時間を短くできる。したがって、このような荷電粒子線装置では、短時間で試料を走査できる。
【0009】
本発明に係る荷電粒子線装置の制御方法の一態様は、
磁界を発生させて荷電粒子線を偏向する磁界偏向器と、電界を発生させて荷電粒子線を偏向する静電偏向器と、を含み、荷電粒子線で試料を走査し、走査像を取得する荷電粒子線装置の制御方法であって、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を第1方向に偏向させて第1走査線を引き、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向と直交する第2方向に偏向させ、
前記静電偏向器に荷電粒子線を前記第1方向とは反対方向の第3方向に偏向させ、
前記磁界偏向器に荷電粒子線を前記第1方向に偏向させて第2走査線を引く。
【0010】
このような荷電粒子線装置の制御方法では、磁界偏向器で第1走査線を引いた後、静電偏向器で荷電粒子線を振り戻して、磁界偏向器で第2走査線を引くため、磁界偏向器で荷電粒子線を振り戻す場合と比べて、振り戻し時間を短くできる。したがって、このような荷電粒子線装置の制御方法では、短時間で試料を走査できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
【
図3】水平スキャン信号、垂直スキャン信号、および水平シフト信号の一例を示す図。
【
図12】水平スキャン信号、垂直スキャン信号、および水平シフト信号の一例を示す図。
【
図13】水平スキャン信号、垂直スキャン信号、および水平シフト信号の一例を示す図。
【
図15】水平スキャン信号、垂直スキャン信号、および水平シフト信号の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0013】
1. 電子顕微鏡
1.1. 電子顕微鏡の構成
まず、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0014】
電子顕微鏡100は、電子線で試料Sを走査し、走査透過電子顕微鏡像(STEM像)
を取得する走査透過電子顕微鏡である。電子顕微鏡100は、
図1に示すように、電子線源10と、照射レンズ20と、磁界偏向器30と、静電偏向器40と、試料ステージ50と、対物レンズ60と、中間レンズ62と、投影レンズ64と、検出器70と、制御部80と、像取得部90と、を含む。
【0015】
電子線源10は、電子線を放出する。電子線源10は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。
【0016】
照射レンズ20は、電子線源10から放出された電子線を収束して電子プローブを形成する。なお、対物レンズ60が試料Sの前方につくる磁界は、照射レンズ20とともに電子プローブを形成するためのレンズとして機能する。
【0017】
磁界偏向器30は、磁場を発生させて電子線を偏向させる。磁界偏向器30は、電子線を二次元的に偏向させる。磁界偏向器30は、X軸に沿って電子線を偏向させる2つのコイルと、Y軸に沿って電子線を偏向させる2つのコイルと、を含む。なお、X軸およびY軸は、光軸に直交する軸であり、互いに直交する軸である。磁界偏向器30は、例えば、二段偏向系であり、一段目の偏向器で電子線を偏向し、二段目の偏向器で偏向した電子線を振り戻す。
【0018】
静電偏向器40は、静電場を発生させて電子線を偏向させる。静電偏向器40は、例えば、電子線を一次元的に偏向させる。静電偏向器40は、X軸に沿って電子線を偏向させる、対向する2つの静電偏向板を含む。
【0019】
電子顕微鏡100では、磁界偏向器30および静電偏向器40で電子線を偏向させることによって、電子線(電子プローブ)で試料Sを走査できる。
【0020】
試料ステージ50は、試料ホルダー52に保持された試料Sを支持する。試料ステージ50によって、試料Sを位置決めできる。
【0021】
対物レンズ60、中間レンズ62、および投影レンズ64は、結像レンズ系を構成し、試料Sを透過した電子線を検出器70に導く。
【0022】
検出器70は、例えば、試料Sで高角度に非弾性散乱された電子を円環状の検出器で検出する暗視野STEM検出器であってもよいし、試料Sを透過して入射電子線と同じ方向に出射する透過電子を検出する明視野STEM検出器であってもよい。また、電子顕微鏡100は、暗視野STEM検出器と明視野STEM検出器の両方を備えていてもよい。
【0023】
なお、図示はしないが、電子顕微鏡100は、試料Sに電子線が照射されることによって試料Sから放出される特性X線を検出するX線検出器を備えていてもよい。
【0024】
制御部80は、磁界偏向器30および静電偏向器40を制御する。制御部80は、走査信号を生成し、走査信号を磁界偏向器30および静電偏向器40に供給することによって、磁界偏向器30および静電偏向器40を制御する。より具体的には、走査信号は、水平スキャン信号と、垂直スキャン信号と、水平シフト信号と、を含む。制御部80は、水平スキャン信号および垂直スキャン信号を磁界偏向器30に供給することによって、磁界偏向器30を制御する。また、制御部80は、後述する水平シフト信号を静電偏向器40に供給することによって静電偏向器40を制御する。
【0025】
制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサと、RAM(Random Access Memory)やROM(Read On
ly Memory)などの記憶装置と、を含む。制御部80では、プロセッサで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行う。なお、制御部80の少なくとも一部を、ASIC(ゲートアレイ等)などの専用回路により実現してもよい。
【0026】
像取得部90は、検出器70からの検出信号(電子線の強度信号)を、走査信号に同期させて画像化して、STEM像を生成する。ここで、STEM像は、検出信号と、走査信号とを同期させて得られた、試料位置に対応した信号量(電子線の強度)の分布を示す画像である。像取得部90は、例えば、CPUやDSPなどのプロセッサと、RAMやROMなどの記憶装置と、を含む。像取得部90では、プロセッサで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行う。なお、像取得部90の少なくとも一部を、ASIC(ゲートアレイ等)などの専用回路により実現してもよい。
【0027】
電子顕微鏡100では、電子線源10から放出された電子線は、照射レンズ20によって集束され電子プローブを形成する。電子プローブは、磁界偏向器30および静電偏向器40によって二次元的に偏向される。これにより、電子プローブで試料Sを走査できる。試料Sを透過した電子線は、結像レンズ系によって検出器70に導かれ、検出器70で検出される。像取得部90は、検出器70からの検出信号を、走査信号に同期させて画像化し、STEM像を生成する。なお、像取得部90は、X線検出器からの信号を、走査信号に同期させて画像化し、元素マップを生成してもよい。このように電子顕微鏡100では、走査像として、STEM像や元素マップを取得できる。
【0028】
1.2. 磁界偏向器および静電偏向器
電子顕微鏡100では、磁界偏向器30および静電偏向器40で電子線を二次元的に偏向させることによって、電子プローブで試料Sを走査する。
【0029】
ここで、磁界偏向器30は、比較的低い電圧で駆動することができるため、取り扱いが容易である。しかしながら、磁界偏向器30では、後述するように、過渡応答による非線形応答時間が長い。すなわち、磁界偏向器30は、静定に要する時間(静定時間)が長い。
【0030】
これに対して、静電偏向器40は、静定に要する時間が極めて短い。静電偏向器40は、磁界偏向器30に比べて、非線形応答時間が極めて短く、高速に電子線を偏向できる。静電偏向器40は、例えば、ナノ秒オーダーで電子線を偏向できる。
【0031】
図2は、磁界偏向器30の動作を説明するための図である。
図2では、水平スキャン信号を破線で示し、磁界偏向器30の応答を実線で示している。また、
図2には、水平スキャン信号で磁界偏向器30を動作させたときの、電子線の照射位置2を図示している。
【0032】
磁界偏向器30では、電子線を振り戻した後、過渡応答によってリンギングが発生し、非線形応答する。そのため、
図2に示すように、電子線で水平方向に走査線を引いた後、電子線を振り戻す時には、磁界偏向器30に加えた水平スキャン信号と、磁界偏向器30の応答が一致しない。磁界偏向器30に加えた水平スキャン信号と、磁界偏向器30の応答が一致しない場合、走査像が歪んだり走査像がぼけたりしてしまう。
【0033】
したがって、磁界偏向器30が非線形応答する間は、像の取得を行わず、線形応答するまで待ってから像の取得を行う。
図2に示す例では、磁界偏向器30が線形応答するまでの待ち時間を振り戻し時間PFとし、振り戻し時間PF経過後の走査線描画期間PIにおいて試料上に走査線が引かれ、像の取得が行われる。
【0034】
2. 走査信号
次に、走査信号について説明する。走査信号は、水平スキャン信号、垂直スキャン信号、および水平シフト信号を含む。
図3は、水平スキャン信号SX、垂直スキャン信号SY、および水平シフト信号SSの一例を示す図である。
【0035】
ここでは、試料Sの観察領域S2において、水平方向(X方向)に4ピクセル、垂直方向(Y方向)に4ピクセルのSTEM像を取得する場合について説明する。
【0036】
水平スキャン信号SXは、電子線を水平方向(X方向)に移動させるために磁界偏向器30に供給される信号である。垂直スキャン信号SYは、電子線を垂直方向(Y方向)に移動させるために磁界偏向器30に供給される信号である。水平シフト信号SSは、電子線を水平方向(X方向)に移動させるために静電偏向器40に供給される信号である。水平スキャン信号SX、垂直スキャン信号SY、および水平シフト信号SSは、同期している。
【0037】
水平スキャン信号SXは、のこぎり波状の信号である。水平スキャン信号SXは、時刻t0から時刻t30までの間に、電流Ix0から電流Ix2までステップ状に上昇する。水平スキャン信号SXにおいて1つのステップは、1つの照射位置、すなわち、STEM像の1つのピクセルに対応する。時刻t0において、垂直スキャン信号SYの電流値は電流Iy1であり、水平シフト信号SSの電圧値は電圧V0である。
【0038】
時刻t20において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy1から電流Iy2となる。また、時刻t20において水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V0から電圧V1となる。
【0039】
時刻t30において、水平スキャン信号SXの電流値は、電流Ix2から電流Ix0となる。また、時刻t30において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy2から電流Iy3となる。また、時刻t30において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V1から電圧V0となる。
【0040】
水平スキャン信号SXは、時刻t30から時刻t60までの間に、電流Ix0から電流Ix2までステップ状に上昇する。
【0041】
時刻t50において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy3から電流Iy4となる。また、時刻t50において水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V0から電圧V1となる。
【0042】
時刻t60において、水平スキャン信号SXの電流値は、電流Ix2から電流Ix0となる。また、時刻t60において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy4から電流Iy0となる。また、時刻t60において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V1から電圧V0となる。
【0043】
像取得部90は、時刻t10から時刻t20までの第1走査線描画期間PI-1、時刻t20から時刻t30までの第2走査線描画期間PI-2、時刻t40から時刻t50までの第3走査線描画期間PI-3、および時刻t50から時刻t60までの第4走査線描画期間PI-4において、像の取得を行う。すなわち、像取得部90は、時刻t0から時刻t10までの振り戻し時間PF、および時刻t30から時刻t40までの振り戻し時間PFにおいて、像の取得を行わない。図示の例では、水平スキャン信号SXの1周期に、走査線描画期間が2回設けられており、1周期に2つの走査線を引く。
【0044】
振り戻し時間PFは、走査線を引いた後、電子線を振り戻して次の走査線を引くまでの待ち時間である。振り戻し時間PFは、磁界偏向器30が過渡応答によって非線形応答する時間よりも長く設定される。
【0045】
3. 電子顕微鏡の動作
図4~
図11は、
図3に示す水平スキャン信号SXおよび垂直スキャン信号SYが磁界偏向器30に供給され、
図3に示す水平シフト信号SSが静電偏向器40に供給されたときの電子顕微鏡100の動作を模式的に示す図である。
【0046】
図4に示すように、時刻t0において、電子線は試料S上で観察領域S2の外の走査開始位置O1に位置する。時刻t0から時刻t10までの振り戻し時間PFでは、水平スキャン信号SXの電流値は、ステップ状に上昇する。そのため、時刻t0から時刻t10までの振り戻し時間PFでは、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で観察領域S2の外を+X方向に移動する。この振り戻し時間PFでは、像の取得が行われない。
【0047】
時刻t0から振り戻し時間PF経過後の時刻t10において、像の取得が開始される。
【0048】
時刻t10から時刻t20までの第1走査線描画期間PI-1において、水平スキャン信号SXは、ステップ状に上昇する。そのため、
図5に示すように、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で+X方向に移動し、第1走査線L1が引かれる。第1走査線L1が引かれている間、像が取得される。すなわち、第1走査線L1上の各照射位置2において試料Sを透過した電子線が検出器70で検出され、像取得部90は、走査信号に同期して各照射位置2における信号強度の情報を取得する。
【0049】
時刻t20において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy1から電流Iy2となる。これにより、
図6に示すように、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で1ピクセル分だけ+Y方向に移動する。また、時刻t20において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V0から電圧V1となる。これにより、静電偏向器40で電子線が偏向され、電子線が試料S上で第1走査線L1の長さだけ振り戻される。
【0050】
仮に、時刻t20において、水平シフト信号SSの電圧値が変化しない場合、
図7に示すように、第2走査線L2は、観察領域S2の外に引かれることになる。時刻t20において、静電偏向器40で電子線が振り戻されることによって、
図6に示すように、電子線が試料S上で-X方向に第1走査線L1の長さだけ移動する。この結果、電子線が第1走査線L1の終点から第2走査線L2の始点に移動する。第2走査線L2の始点のX座標は、第1走査線L1の始点のX座標と一致する。第2走査線L2の長さは、第1走査線L1の長さと等しい。
【0051】
時刻t20において、静電偏向器40で電子線を振り戻すことによって、第1走査線L1を引いた後、第2走査線L2を引く前に、振り戻し時間PFを設けなくてもよい。
【0052】
時刻t20から時刻t30までの第2走査線描画期間PI-2において、水平スキャン信号SXは、ステップ状に上昇する。そのため、
図6に示すように、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で+X方向に移動し、第2走査線L2が引かれる。第2走査線L2が引かれている間、像が取得される。
【0053】
時刻t30において、水平スキャン信号SXの電流値は、電流Ix2から電流Ix0と
なる。このとき、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V1から電圧V0となる。これにより、磁界偏向器30および静電偏向器40で電子線が偏向され、振り戻し時間PFにおける電子線の移動量と第2走査線L2の長さの和だけ、電子線が振り戻される(-X方向に移動する)。
【0054】
また、時刻t30において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy2から電流Iy3となる。これにより、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で1ピクセル分だけ+Y方向に移動する。
【0055】
この結果、
図8に示すように、時刻t30において、電子線は、第2走査線L2の終点から観察領域S2の外の走査開始位置O2に移動する。走査開始位置O2のX座標は、走査開始位置O1のX座標と一致し、走査開始位置O2のY座標は、第3走査線L3のY座標と一致する。第3走査線L3の長さは、第2走査線L2の長さと等しい。
【0056】
時刻t30において、電子線は試料S上で観察領域S2の外の走査開始位置O2に位置する。時刻t30から時刻t40までの振り戻し時間PFでは、水平スキャン信号SXの電流値は、ステップ状に上昇する。そのため、
図9に示すように、時刻t30から時刻t40までの振り戻し時間PFでは、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で観察領域S2の外を+X方向に移動する。この振り戻し時間PFでは、像の取得が行われない。
【0057】
時刻t30から振り戻し時間PF経過後の時刻t40において、像の取得が再開される。
【0058】
時刻t40から時刻t50までの第3走査線描画期間PI-3において、水平スキャン信号SXは、ステップ状に上昇する。そのため、
図10に示すように、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で+X方向に移動し、第3走査線L3が引かれる。第3走査線L3が引かれている間、像が取得される。
【0059】
時刻t50において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy3から電流Iy4となる。これにより、
図11に示すように、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で1ピクセル分だけ+Y方向に移動する。また、時刻t50において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V0から電圧V1となる。これにより、静電偏向器40で電子線が偏向され、電子線が試料S上で第3走査線L3の長さだけ振り戻される。
【0060】
図11に示すように、電子線が試料S上で-X方向に第3走査線L3の長さだけ移動することによって、電子線が第3走査線L3の終点から第4走査線L4の始点に移動する。第4走査線L4の始点のX座標は、第3走査線L3の始点のX座標と一致する。第4走査線L4の長さは、第3走査線L3の長さと等しい。
【0061】
時刻t50において、静電偏向器40で電子線を振り戻すことによって、第3走査線L3を引いた後、第4走査線L4を引く前に、振り戻し時間PFを設けなくてもよい。
【0062】
時刻t50から時刻t60までの第4走査線描画期間PI-4において、水平スキャン信号SXは、ステップ状に上昇する。そのため、
図11に示すように、磁界偏向器30によって電子線が偏向され、電子線が試料S上で+X方向に移動し、第4走査線L4が引かれる。第4走査線L4が引かれている間、像が取得される。
【0063】
以上の工程により、1フレーム分の撮影が行われる。電子顕微鏡100では、上記の工
程を繰り返すことによって、複数フレーム分の画像を積算し、STEM像(積算画像)を得ることができる。
【0064】
上記では、4ピクセル×4ピクセルのSTEM像を取得する場合について説明したが、STEM像のピクセル数は特に限定されない。上記の実施形態とSTEM像のピクセル数が異なる場合であっても、上記の実施形態と同様の手法で、STEM像を取得できる。
【0065】
4. 効果
電子顕微鏡100は、磁界を発生させて電子線を偏向する磁界偏向器30と、電界を発生させて電子線を偏向する静電偏向器40と、磁界偏向器30および静電偏向器40を制御する制御部80と、を含む。制御部80は、磁界偏向器30に電子線を+X方向に偏向させて第1走査線L1を引き、磁界偏向器30に電子線を+X方向と直交する+Y方向に偏向させ、静電偏向器40に電子線を+X方向とは反対方向の-X方向に偏向させ、磁界偏向器30に電子線を+X方向に偏向させて第2走査線L2を引く。
【0066】
このように電子顕微鏡100では、磁界偏向器30で第1走査線L1を引いた後、静電偏向器40で電子線を振り戻して、磁界偏向器30で第2走査線L2を引くため、磁界偏向器30で電子線を振り戻す場合と比べて、振り戻し時間を短くできる。したがって、電子顕微鏡100では、短時間で試料Sを走査できる。
【0067】
例えば、複数フレーム分の画像を積算してSTEM像を得る場合には、フレームレート(単位時間あたりのフレーム数)を高くすることが望ましい。フレームレートを高くすることによって、すなわち、電子線の走査速度を速くすることによって、STEM像の1ピクセルあたりの電子線の滞在時間(dwell time)を短くでき、照射位置2に一度に照射される電子線の量を低減できるためである。照射位置2に一度に照射される電子線の量を低減することによって、電子線による試料の損傷を低減でき、良好なSTEM像を得ることができる。
【0068】
図12は、静電偏向器40を用いずに、磁界偏向器30で電子線の走査を行う場合の水平スキャン信号SXおよび垂直スキャン信号SYの一例を示す図である。
【0069】
図12に示す例では、第1走査線L1を引いた後、磁界偏向器30で電子線を振り戻して第2走査線L2を引く。そのため、第1走査線L1を引いた後、第2走査線L2を引く前に、振り戻し時間PFを設けなければならない。
【0070】
これに対して、電子顕微鏡100では、磁界偏向器30で第1走査線L1を引いた後、静電偏向器40で電子線を振り戻して、磁界偏向器30で第2走査線L2を引くため、振り戻し時間PFを設けなくてもよい。例えば、
図12に示す例では、1フレームあたり4回の振り戻し時間PFを設けなければならないところ、
図3に示す電子顕微鏡100では、1フレームあたり2回の振り戻し時間PFを設ければよい。
【0071】
なお、
図12に示す例では、1ピクセルあたりの電子線の滞在時間に水平方向のピクセル数を掛け、振り戻し時間PFを加算することで、水平方向の走査時間が求められる。この水平方向の走査時間に垂直方向のピクセル数を掛けることで、1フレームにかかる時間(1回の走査にかかる時間)が求められる。電子線の速度によらず振り戻し時間PFは一定であるため、フレームレートが高くなればなるほど、撮影時間(積算画像を取得する時間)に対する振り戻し時間PFの割合が大きくなってしまう。
【0072】
電子顕微鏡100では、上記のように、1フレームあたりの振り戻し時間PFを設ける
回数を低減できるため、フレームレートを高くしても、
図12に示す例と比べて、撮影時間に対する振り戻し時間PFの割合の増加を低減できる。
【0073】
電子顕微鏡100では、制御部80は、静電偏向器40に、第1走査線L1の長さだけ電子線を-X方向に偏向させる。これにより、第2走査線L2の始点のX座標と第1走査線L1の始点のX座標を一致させることができる。
【0074】
電子顕微鏡100では、制御部80は、第2走査線L2を引いた後、磁界偏向器30に電子線を+X方向と直交する+Y方向に偏向させ、磁界偏向器30に電子線を-X方向に偏向させ、磁界偏向器30に電子線を+X方向に偏向させて第3走査線L3を引く。そのため、電子顕微鏡100では、静電偏向器40で電子線を大きく偏向させなくてもよい。したがって、電子顕微鏡100では、静電偏向器40に高電圧を印加しなくてもよい。
【0075】
図13は、水平スキャン信号SX、垂直スキャン信号SY、および水平シフト信号SSの一例を示す図である。
図13には、第2走査線L2を引いた後、静電偏向器40で電子線を-X方向に偏向させる場合の、水平スキャン信号SX、垂直スキャン信号SY、および水平シフト信号SSを図示している。
図14は、
図13に示す水平スキャン信号SXおよび垂直スキャン信号SYが磁界偏向器30に供給され、水平シフト信号SSが静電偏向器40に供給されたときの電子顕微鏡100の動作を説明するための図である。
【0076】
図13に示すように、第2走査線L2を引いた後、静電偏向器40で電子線を-X方向に偏向させる場合、時刻t20から第2走査線描画期間PI-2経過後の時刻t25において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V1から電圧V2となる。これにより、
図14に示すように、静電偏向器40で電子線が偏向され、電子線が試料S上で第2走査線L2の長さだけ振り戻される。この結果、電子線を第2走査線L2の終点から第3走査線L3の始点に移動させることができ、時刻t25から時刻t30までの第3走査線描画期間PI-3において、第3走査線L3を引くことができる。
【0077】
このように、
図13に示す例では、静電偏向器40には、電圧V1よりも大きい電圧V2を印加しなければならない。したがって、
図13に示す例では、
図3に示す例と比べて、静電偏向器40に印加される電圧が大きくなってしまう。
【0078】
5. 変形例
5.1. 第1変形例
図15は、水平スキャン信号SX、垂直スキャン信号SY、および水平シフト信号SSの変形例を示す図である。
図16は、
図15に示す水平スキャン信号SXおよび垂直スキャン信号SYが磁界偏向器30に供給され、
図15に示す水平シフト信号SSが静電偏向器40に供給されたときの電子顕微鏡100の動作を模式的に示す図である。
【0079】
以下では、上述した実施形態と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0080】
上述した実施形態では、時刻t20において静電偏向器40で電子線を振り戻した後、第2走査線L2の描画を開始したが、時刻t20において静電偏向器40で電子線を振り戻した後、静電偏向器40が安定するまでの静定時間PF2経過後に、第2走査線L2の描画を開始してもよい。
【0081】
時刻t20において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy1から電流Iy2となる。このとき、磁界偏向器30は、過渡応答によって非線形応答する。また、時刻t20において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V0から電圧V1となる。このとき、
静電偏向器40は、過渡応答によって非線形応答する。そのため、時刻t20から時刻t25までの期間を静定時間PF2とする。静定時間PF2では、像の取得が行われない。
【0082】
ここでは、静定時間PF2を電子線が3ピクセル分の長さの走査線を引く時間としている。そのため、
図16に示すように、時刻t20において、制御部80は、静電偏向器40に、第1走査線L1の長さよりも大きく電子線を偏向させる。
図15および
図16に示す例では、制御部80は、静電偏向器40に、第1走査線L1の長さと3ピクセル分の走査線の長さの和だけ電子線を偏向させる。これにより、電子線が試料S上で第1走査線L1の長さと3ピクセル分の走査線の長さの和だけ-X方向に移動する。
【0083】
なお、静定時間PF2は特に限定されず、静定時間PF2を4ピクセル分以上の長さの走査線を引く時間にしてもよいし、3ピクセル分未満の長さの走査線を引く時間にしてもよい。
【0084】
静定時間PF2経過後の時刻t25において、第3走査線L3の描画が開始され、像の取得が開始される。
【0085】
時刻t50において、垂直スキャン信号SYの電流値は、電流Iy3から電流Iy4となる。また、時刻t50において、水平シフト信号SSの電圧値は、電圧V0から電圧V1となる。時刻t50から時刻t55までの期間を、静電偏向器40が線形応答するまでの静定時間PF2とする。静定時間PF2では、像の取得が行われない。
【0086】
ここでは、静定時間PF2を電子線が3ピクセル分の長さの走査線を引く時間としている。そのため、
図16に示すように、時刻t50において、制御部80は、静電偏向器40に、第3走査線L3の長さよりも大きく電子線を偏向させる。
図15および
図16に示す例では、制御部80は、静電偏向器40に、第3走査線L3の長さと3ピクセル分の走査線の長さの和だけ電子線を偏向させる。これにより、電子線が試料S上で第3走査線L3の長さと3ピクセル分の走査線の長さの和だけ-X方向に移動する。
【0087】
静定時間PF2経過後の時刻t55において、第4走査線L4の描画が開始され、像の取得が開始される。
【0088】
第1変形例では、制御部80は、時刻t20において、静電偏向器40に、第1走査線L1の長さよりも大きく電子線を-X方向に偏向させる。これにより、電子線を振り戻した後、第2走査線L2を引くまでの間に、静定時間PF2を設けることができる。そのため、静電偏向器40の過渡応答の影響を低減でき、歪みやぼけが低減されたSTEM像を取得できる。
【0089】
5.2. 第2変形例
上述した実施形態では、
図3および
図8に示すように、第1走査線L1を引いた後、静電偏向器40で電子線を振り戻し、第2走査線L2を引いた後に、磁界偏向器30で電子線を振り戻した。すなわち、水平スキャン信号SXの1周期で、2本の走査線を引いたが、水平スキャン信号SXの1周期で引く走査線の数Nは、2以上の整数であれば特に限定されない。
【0090】
水平スキャン信号SXの1周期で引く走査線の数がNの場合、走査線を引いた後、静電偏向器40で電子線を振り戻すことを繰り返して、N本目の第N走査線を引いた後、磁界偏向器30を用いて電子線を振り戻して第N+1走査線を引く。例えば、
図13および
図14に示す例では、水平スキャン信号SXの1周期で3本の走査線を引く。走査線の数Nを増やすことで、1フレームあたりの振り戻し時間PFの回数を低減できる。
【0091】
制御部80は、第N走査線を引いた後、磁界偏向器30に電子線を+Y方向に偏向させ、磁界偏向器30に電子線を-X方向に偏向させ、磁界偏向器30に電子線を+X方向に偏向させて第N+1走査線を引く。したがって、電子顕微鏡100では、静電偏向器40で電子線を大きく偏向させなくてもよいため、静電偏向器40に高電圧を印加しなくてもよい。
【0092】
5.3. 第3変形例
上述した実施形態では、本発明に係る荷電粒子線装置が、電子線で試料Sを走査し、STEM像を取得する走査透過電子顕微鏡である場合について説明したが、本発明に係る荷電粒子線装置は、電子線以外のイオンビーム等の荷電粒子線で試料を走査し、走査像を取得する装置であってもよい。例えば、本発明に係る荷電粒子線装置は、走査電子顕微鏡(SEM)や、電子線マイクロアナライザー(EPMA)、電子ビーム描画装置、オージェマイクロプローブ装置(Auger)、集束イオンビーム装置(FIB)などであってもよい。
【0093】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0094】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0095】
2…照射位置、10…電子線源、20…照射レンズ、30…磁界偏向器、40…静電偏向器、50…試料ステージ、52…試料ホルダー、60…対物レンズ、62…中間レンズ、64…投影レンズ、70…検出器、80…制御部、90…像取得部、100…電子顕微鏡