(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】カリウム放出材料
(51)【国際特許分類】
C01B 33/26 20060101AFI20240312BHJP
C01B 33/24 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C01B33/26
C01B33/24 101
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022076309
(22)【出願日】2022-05-02
(62)【分割の表示】P 2019539957の分割
【原出願日】2018-01-18
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2017-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】519261792
【氏名又は名称】アドヴァンスド ポタッシュ テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Advanced Potash Technologies Ltd
【住所又は居所原語表記】89 Nexus Way, Camana Bay, Grand Cayman KY1-9007, Cayman Islands
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィデ チチェリ
(72)【発明者】
【氏名】マルセロ デ オリヴェイラ
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ アラノア
(72)【発明者】
【氏名】デニス チェン
(72)【発明者】
【氏名】トマス シー. クローズ
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0345348(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101450874(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105154101(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
C05D 1/00
C05G 1/00 - 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の組成物
に水熱処理を行うことで、水
と第2の組成物とを含む配合物を形成することと、
該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物を得ることと、
を含む方法であって、
第1の組成物は、カリ長石相を含み、
第2の組成物は、カリ長石相を含み、
前記第3の組成物は、
1質量%から65質量%のカリ長石相
と;ケイ酸二カルシウム水和物相、トバモライト相およびハイドロガーネット相からなる群から選択される少なくとも1つの相を含む、1質量%から30質量%のケイ酸カルシウム水和物相を含み、かつ
以下:
前記第3の組成物が、少なくと
も1質量%の
前記ケイ酸二カルシウム水和物相
を含むこと、
前記第3の組成物が、少なくと
も1質量%の
前記トバモライト相
を含むこと、および
前記第3の組成物が、少なくと
も1質量%の
前記ハイドロガーネット相
を含むこと
の少なくとも1つが当てはまる、方法。
【請求項2】
等量の前記第1の組成物および前記第3の組成物を10倍過剰の10
-5
MのHNO
3
に24時間さらすことをさらに含み、
前記第3の組成物から放出されるカリウムの量は、前記第1の組成物から放出されるカリウムの量の少なくと
も3倍の大きさである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記配合物からの水の除去は、該配合物の乾燥を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記配合物からの水の除去は、該配合物のフラッシュ乾燥を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記配合物からの水の除去は、該配合物の真空下での乾燥を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記
第1の組成物をさらすことは、少なくと
も5分の期間にわたり行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去は、少なくと
も15分の期間にわたり行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記配合物からの水の除去は、該配合物の少なくと
も50℃への加熱を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記配合物からの水の除去は、該配合物を
少なくとも5気圧、および/または高くとも80気圧へとさらすことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記配合物から水を除去する間に、該配合物は、反応性雰囲気にさらされる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記反応性雰囲気は、空気、酸素、アンモニア、一酸化炭素、および二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記配合物から水を除去する間に、該配合物は、不活性雰囲気にさらされる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記不活性雰囲気は、アルゴンおよび窒素からなる群から選択される少なくとも1つの要素を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
a)
カリ長石と、b)アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、およびアルカリ土類金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの要素とを含む予備配合物をミル粉砕することで、第1の組成物を得ることをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記第1の組成物は、
カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、およびペグマタイト、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの要素を
さらに含み;かつ、
前記第3の組成物は
、カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、およびペグマタイト、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの要素を
さらに含む、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年1月18日に出願された米国仮特許出願第62/447,657号および2017年6月16日に出願された米国仮特許出願第62/520,976号に対する優先権の利益を主張するものであり、それらの開示は、参照によりその全体がすべての目的に関して開示されたものとする。
【0002】
背景
可溶性カリウム、シリカ、およびその他の塩を放出するものを含む鉱物は、様々な目的のために有用である。例えば、可溶性カリウム(カリ)源は、特に多くの住民が肥沃度の低い土壌に頼っている熱帯地域において、生産性の高い農業を維持するのに有用である。
【0003】
概要
本明細書では、限定されるものではないが、土壌肥沃度、土壌修復、ジオポリマー材料、水ガラス、コロイダルシリカ、およびセメント製造を含む広範な産業および用途において有益な特性を示す材料が開示される。幾つかの実施形態においては、本開示の材料は、金属イオン放出材料(カリウム等のアルカリ金属、カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の他の金属、ならびにケイ素などの追加元素を含む)であり、これらは、幾つかの場合に(例えば、カリウム、カルシウム、マグネシウム、および/またはケイ素)、例えば熱帯農業における肥料としての使用に適している。幾つかの場合には、そのような材料は、例えばKCl等の既知の肥料の代わりとなり得る。
【0004】
本開示による材料の製造のための幾つかの方法経路が開発されている。幾つかの実施形態においては、該方法経路は、土壌科学および/または経済原理を考慮して、不所望な過剰の可溶性(例えば、カリウム)化学種、廃棄物もしくは副産物の形成、ならびに/または高い処理コストおよび環境コストを削減および/または回避することで、それにより特定の公知の方法、例えばKClと関連する特定の方法と関連し得る1つ以上の欠点が克服される。それに加えてまたはそれに代えて、該方法経路は、モジュラー的性質の経路であり得るため、上述の用途のいずれにも簡単に適合させることができる。
【0005】
カリウム肥料として使用される場合に、本明細書に開示される材料は、数多くの有利な特性、例えば、i)異なる成長段階で作物の要求を満たすと共に、土壌の急激な飽和と過剰の浸出の両方を回避するような連続的かつ制御されたカリウム放出、ii)複数の農業周期にわたって植物の栄養を改善する高い残留効果(例えば、利用可能なカリウムの貯留を提供することによる)、iii)所定の作物および微生物叢に最適なレベルで土壌のpHを緩衝する能力、iv)微量栄養素(例えば、マグネシウム)の相乗的供給、vi)土壌の機械的強度および孔隙率の支持および改善、vii)改善されたカチオン交換能(CEC)、viii)低い塩分指数、ix)保水能力(WHC)および炭素貯蔵能力の増強、x)比較的低いコスト、xi)農家による採用に関するハードルが最小限であること、および/またはxii)現地の資源を用いて産業規模で実施可能な環境に優しい製造方法をもたらし得る。
【0006】
幾つかの実施形態においては、本開示の方法は、超カリウム質閃長岩(例えば、K含有鉱石の他の非限定的な例については
図1および
図2を参照)、CaO(水和形および他の形のCaOを含む)、および水のような、豊富かつ/または手頃な価格の供給原料を使用する。超カリウム質閃長岩は一般的に、世界中で大量に入手可能であり、比較的安価なK
2Oの比較的容易に入手可能な資源となり得る。CaOは、ロータリーキルン中で石灰石を焙焼することで得ることができ、幾つかの産業(例えば、ガラスおよびセメント)の原材料であり、その多くは、既に最適化された価格および流通に基づいて取り扱われている。ドロマイト(CaMg(CO
3)
2)およびその他のカルシウム含有材料もまた、採算がとれる代替品である。幾つかの実施形態においては、本開示は、適切な水熱反応器(例えば、オートクレーブ)の設計および装置を提供する。
【0007】
幾つかの実施形態において、本開示は、環境に優しい方法を提供する。それというのも、該方法は、特にアルキルアミン起泡剤等の化学的添加剤の使用と一緒に尾鉱および塩水廃水を廃棄することで、あまり環境に優しくない方法となる特定のその他の処理技術と比較して、廃棄物および/または副産物の形成を低減(例えば、最小化)することができるからである。本明細書に開示される材料は、例えば土壌に直接的に適用することができる。幾つかの場合において、これは、供給原料鉱物(例えば、カリ長石)に由来する水熱改質材料が、残りの固体材料からの分離を必要としないことを意味する。特定の実施形態においては、カリ長石、ハイドロガーネット、およびトバモライトは、天然に存在する鉱物相である一方で、α-ケイ酸二カルシウム水和物および非化学量論的ケイ酸カルシウム水和物は、コンクリートの成分であり、主要な環境的危険をもたらすとは考えられない。幾つかの実施形態においては、初期(例えば、カリ長石)供給原材料の一部が、新しい鉱物相に変換されるので、該方法の環境フットプリントを最小限に抑えるように、反応温度(T)および反応時間(t)等のプロセスパラメーターを選択することができる。さらに、本明細書に開示される材料は、現地で現地の資源から製造することができるため、輸送によるCO2排出量を削減することができる。
【0008】
本明細書に開示される材料(例えば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料)は、例えば、土壌孔隙を改善することにより土壌力学を改善することに役立ち得る。例えば、長期放出のために水を貯蔵する要因となるメソ細孔が不足しているため、酸化物土壌の保水能力はしばしば低い。しかしながら、本明細書に開示される鉱物粒子によって占有される体積は、メソ細孔母数の向上に適した範囲であり得、浸透速度を低下させ得る。これは、土壌コロイドの分散を低減(例えば、防止)し、かつ/または土壌に添加される他の肥料の分散を低減(例えば、防止)するように作用し得る。さらに、本明細書に開示された材料の少なくとも一部を構成するような微細なハイドロガーネットおよびケイ酸カルシウム水和物の固化ペーストは、侵食の軽減および土壌強度の促進に適した20mPaの曲げ強さを有し得るが、不所望な浸透速度をもたらすような大きすぎる(>1mm)微細凝集物を生じないことが分かった。従来のカリウム塩(KClまたはK2SO4)は一般に、土壌力学にそのような改善をもたらさない。
【0009】
本明細書に記載される方法は、以前から知られる材料と比較して明確な予想外の、そして改善された金属放出特性(本明細書に記載される)を有する乾燥された水熱改質材料のような材料を製造するために使用され得る。
【0010】
本開示は、様々な実施形態においては、カリウムの初期の比較的迅速な放出とカリウムの比較的延長された放出の両方をもたらす乾燥された水熱改質材料を含む材料を提供する。幾つかの実施形態においては、カリウムの初期放出(例えば、1分間のカリウム放出試験により測定される)は、延長された放出(例えば、24時間のカリウム放出試験により測定される)よりも大きくなり得る。一般に、カリウムの延長された放出は、水熱処理中に形成される幾つかの相の間で再分配され得るため、カリウムは、幾つかの既知の材料と比較してより長期間にわたってより遅い速度で放出され得る。様々な実施形態においては、本開示の乾燥された水熱改質材料は、例えば、痩せた土壌にも有用であり得るSi、Ca、Na、およびMg等の微量栄養素を放出するという追加の利点を有する。さらに、本開示の特定の実施形態による乾燥された水熱改質材料は、土壌に石灰を加える必要性を部分的に置き換えることができるアルカリ性のレベルを有し得る。したがって、本開示の乾燥された水熱改質材料の鉱物学は、熱帯土壌に特に適切である場合がある。
【0011】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水と第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のカリウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるカリウムの量は、前記第1の組成物から放出されるカリウムの量より少なくとも約2倍大きい。
【0012】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水と第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、アルカリ金属ケイ酸塩を第1の量で含み、前記第3の組成物は、アルカリ金属ケイ酸塩を前記第1の量より少ない第2の量で含み、24時間のカリウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるカリウムの量は、前記第1の組成物から放出されるカリウムの量よりも少なくとも約2倍大きい。
【0013】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水とカリ長石相を含む第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第3の組成物は、カリ長石相を多くとも約65質量%の量で含み、かつ以下:前記第3の組成物が、少なくとも約1質量%のケイ酸二カルシウム水和物相をさらに含むこと、前記第3の組成物が、少なくとも約1質量%のトバモライト相をさらに含むこと、および前記第3の組成物が、少なくとも約1質量%のハイドロガーネット相をさらに含むことの少なくとも1つが当てはまる。
【0014】
特定の実施形態においては、24時間のカリウム放出試験によれば、第3の組成物から放出されるカリウムの量は、第1の組成物から放出されるカリウムの量の少なくとも約3倍(例えば、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約25倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍)の大きさである。
【0015】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水と第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のカリウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるカリウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約5000mgのカリウムである。
【0016】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を熱および圧力から選択される条件にさらすことで、第2の組成物(例えば、水熱改質材料)を形成することと、a)水とb)前記第2の組成物とを含む配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のカルシウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるカルシウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約15mgのカルシウムである。
【0017】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水と第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のアルミニウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるアルミニウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり多くとも約50mgのアルミニウムである。
【0018】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、第2の組成物(例えば、水熱改質材料)を含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のアルミニウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるアルミニウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり多くとも約10mgのアルミニウムである。
【0019】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、第2の組成物(例えば、水熱改質材料)を含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のケイ素放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるケイ素の量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約40mgのケイ素である。
【0020】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、第2の組成物(例えば、水熱改質材料)を含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のナトリウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるナトリウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約5mgのナトリウムである。
【0021】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、第2の組成物(例えば、水熱改質材料)を含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、24時間のマグネシウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるマグネシウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約5mgのマグネシウムである。
【0022】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水と第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、1分間のカリウム放出試験によれば、前記第3の組成物から放出されるカリウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約5000mgのカリウムである。
【0023】
幾つかの実施形態においては、方法は、第1の組成物を水ならびに熱および圧力から選択される条件にさらすことで、水と第2の組成物(例えば、水熱改質材料)とを含む配合物を形成することと、該配合物から少なくとも幾らかの水を除去することで、第3の組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)を得ることとを含み、ここで、前記第1の組成物は、第1のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、前記第3の組成物は、第2のアルカリ金属ケイ酸塩を含み、かつ前記第3の組成物は、少なくとも約5の相対カリウム放出を有する。
【0024】
幾つかの実施形態においては、第1のアルカリ金属ケイ酸塩は、カリ長石、カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、およびペグマタイト、ならびにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0025】
幾つかの実施形態においては、第2のアルカリ金属ケイ酸塩は、カリ長石、カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、およびペグマタイト、ならびにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0026】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、第2の組成物よりも高いカリウム含量を有する。
【0027】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、カリ長石相と、ケイ酸二カルシウム水和物相、トバモライト相、およびハイドロガーネット相から選択される少なくとも1つの相を含むケイ酸カルシウム水和物相とを含み、ここで、前記第3の組成物は、カリ長石相を多くとも約65質量%の量で含み、かつ以下:前記第3の組成物が、少なくとも約1質量%のケイ酸二カルシウム水和物相を含むこと、前記第3の組成物が、少なくとも約1質量%のトバモライト相を含むこと、および前記第3の組成物が、少なくとも約1質量%のハイドロガーネット相を含むことの少なくとも1つが当てはまる。
【0028】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物から放出されるアルミニウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり多くとも約25mg(例えば、多くとも約10mg)のアルミニウムである。
【0029】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物から放出されるマグネシウムの量は、該第3の組成物1キログラム当たり少なくとも約100mgのマグネシウムである。
【0030】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの水の除去は、該配合物の乾燥を含む。
【0031】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの水の除去は、該配合物のフラッシュ乾燥を含む。
【0032】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの水の除去は、該配合物の真空下での乾燥を含む。
【0033】
幾つかの実施形態においては、前記配合物をさらすことは、少なくとも約5分の期間にわたり行われる。
【0034】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去は、少なくとも約15分(例えば、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約5時間、少なくとも約16時間)、および/または長くとも約20時間の期間にわたり行われる。
【0035】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去は、該配合物を少なくとも約50℃(例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約150℃)、および/または高くとも約200℃に加熱することを含む。
【0036】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去は、該配合物を大気圧にさらすことを含む。
【0037】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去は、該配合物を少なくとも約5気圧(例えば、少なくとも約30気圧、少なくとも約50気圧)、および/または高くとも約80気圧の圧力にさらすことを含む。
【0038】
特定の実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去は、1気圧未満の圧力で(例えば、真空下で)行われる。
【0039】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去の間に、該配合物は、反応性雰囲気にさらされる。反応性雰囲気は、空気、酸素、アンモニア、一酸化炭素、および二酸化炭素から選択される少なくとも1つの要素を含み得る。
【0040】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去の間に、該配合物は、空気を含む雰囲気にさらされる。
【0041】
幾つかの実施形態においては、前記配合物からの少なくとも幾らかの水の除去の間に、該配合物は、不活性雰囲気にさらされる。不活性雰囲気は、アルゴンおよび窒素から選択される少なくとも1つの要素を含み得る。
【0042】
幾つかの実施形態においては、アルカリ金属ケイ酸塩は、カリ長石、カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、ペグマタイト、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0043】
幾つかの実施形態においては、前記方法は、a)アルカリ金属ケイ酸塩と、b)アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、およびアルカリ土類金属水酸化物から選択される少なくとも1つの要素とを含む予備配合物をミル粉砕することで、第1の組成物を得ることをさらに含む。
【0044】
幾つかの実施形態においては、第1の組成物がさらされる条件は、少なくとも約150℃(例えば、少なくとも約200℃、少なくとも約220℃、少なくとも約230℃)、および/または高くとも約300℃の温度を含む。
【0045】
幾つかの実施形態においては、第1の組成物がさらされる条件は、少なくとも約5気圧(例えば、少なくとも約30気圧、少なくとも約50気圧)、および/または高くとも約80気圧の圧力を含む。特定の実施形態においては、第1の組成物がさらされる条件は、1気圧未満の圧力(例えば、真空)を含む。
【0046】
幾つかの実施形態においては、前記第1の組成物をさらすことは、少なくとも約5分(例えば、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約15分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約5時間、少なくとも約10時間)、および/または長くとも約20時間の期間にわたり行われる。
【0047】
幾つかの実施形態においては、第1の組成物は、少なくとも約0.075(例えば、少なくとも約0.15、少なくとも約0.3)、および/または高くとも約0.6のカルシウム対ケイ素比を含む。
【0048】
幾つかの実施形態においては、ミル粉砕は、ボールミル粉砕またはロッドミル粉砕を含む。
【0049】
幾つかの実施形態においては、前記予備配合物は、水酸化カリウム、酸化カリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0050】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、ゼオライトを含む。
【0051】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、例えばカリウム肥料、カルシウム肥料、ケイ素肥料、ナトリウム肥料、および/またはマグネシウム肥料等の肥料である。幾つかの実施形態においては、肥料は、多栄養肥料を含む。
【0052】
幾つかの実施形態においては、方法は、セメント化学において有用な材料を形成する。
【0053】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、ジオポリマー産業、水ガラス産業、およびコロイダルシリカ産業から選択される少なくとも1つの産業のためのアルカリ溶液の製造において有用である。
【0054】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、土壌修復において有用である。
【0055】
幾つかの実施形態においては、方法は、第3の組成物を肥料(例えば、カリウム肥料、カルシウム肥料、ケイ素肥料、ナトリウム肥料、および/またはマグネシウム肥料)として使用することをさらに含む。
【0056】
幾つかの実施形態においては、第3の組成物は、土壌調整剤である。
【0057】
幾つかの実施形態においては、方法は、第2の組成物を使用することで、ジオポリマー産業、水ガラス産業、およびコロイダルシリカ産業から選択される少なくとも1つの産業のためのアルカリ溶液を製造することをさらに含む。
【0058】
幾つかの実施形態においては、方法は、第2の組成物を土壌修復において使用することをさらに含む。
【0059】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相と、ケイ酸二カルシウム水和物相、トバモライト相、およびハイドロガーネット相から選択される少なくとも1つの相を含むケイ酸カルシウム水和物相とを含み、ここで、前記組成物は、カリ長石相を多くとも約65質量%の量で含み、かつ以下:前記組成物が、少なくとも約1質量%のケイ酸二カルシウム水和物相を含むこと、前記組成物が、少なくとも約1質量%のトバモライト相を含むこと、および前記組成物が、少なくとも約1質量%のハイドロガーネット相を含むことの少なくとも1つが当てはまる。
【0060】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、多くとも約60(例えば、多くとも約55、多くとも約50、多くとも約45、多くとも約40、多くとも約34.9、多くとも約32.3)質量%のカリ長石相、および/または少なくとも約1(少なくとも約5、少なくとも約10)質量%のカリ長石相を含む。
【0061】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、少なくとも約1(例えば、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25)質量%のケイ酸カルシウム水和物相、および/または多くとも約30(例えば、多くとも約25、多くとも約20、多くとも約15)質量%のケイ酸カルシウム水和物相を含む。
【0062】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、約1質量%~約30質量%のケイ酸カルシウム水和物相を含む。
【0063】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、ケイ酸二カルシウム水和物相を、少なくとも約1(少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約25、少なくとも約40)質量%、および/または多くとも約38.6(例えば、多くとも約37.7、多くとも約35、多くとも約30)質量%の量で含む。
【0064】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、トバモライト相を、少なくとも約1(例えば、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10)質量%、および/または多くとも約10(例えば、多くとも約9、多くとも約8)質量%の量で含む。
【0065】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、ハイドロガーネット相を、少なくとも約1(例えば、少なくとも約5、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13)質量%、および/または多くとも約15(例えば、多くとも約13.2、多くとも約12.7、多くとも約12、多くとも約11、多くとも約10、多くとも約9、多くとも約8、多くとも約5、多くとも約1)質量%の量で含む。
【0066】
幾つかの実施形態においては、ハイドロガーネット相は、プラゾライトまたはハイドログロシュラーを含む。
【0067】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、非晶質相をさらに含む。
【0068】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、多くとも約51.1(例えば、多くとも約50、多くとも約49、多くとも約48、多くとも約47、多くとも約46、多くとも約45)質量%の非晶質相、および/または少なくとも約18.2質量%の非晶質相を含む。
【0069】
幾つかの実施形態においては、非晶質相は、ゼオライトを含む。
【0070】
幾つかの実施形態においては、非晶質相は、シリカおよびケイ酸カルシウム水和物から選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0071】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、ゼオライトをさらに含む。
【0072】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、炭酸塩をさらに含む。
【0073】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のカリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約5000(例えば、少なくとも約6502、少なくとも約6763、少なくとも約7500、少なくとも約10000、少なくとも約10377、少なくとも約11648、少なくとも約15000)mgのカリウム、および/または24時間のカリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり多くとも約15000mgのカリウムのカリウム放出を有する。
【0074】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のカルシウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約15(例えば、少なくとも約16、少なくとも約34、少なくとも約50、少なくとも約63、少なくとも約100、少なくとも約250、少なくとも約315、少なくとも約355、少なくとも約500)mgのカルシウム、および/または24時間のカルシウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり多くとも約657mgのカルシウムのカルシウム放出を有する。
【0075】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のアルミニウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり多くとも50(例えば、多くとも約41、多くとも約40、多くとも約28、多くとも約25、多くとも約10)mgのアルミニウムのアルミニウム放出を有する。
【0076】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のケイ素放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約40(例えば、少なくとも約100、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約1388、少なくとも約1500、少なくとも約1652)mgのケイ素、および/または24時間のケイ素放出試験による、該組成物1キログラム当たり多くとも約1700mgのケイ素のケイ素放出を有する。
【0077】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のナトリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約6.2(例えば、少なくとも約6.4、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100)mgのナトリウム、および/または24時間のナトリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり多くとも約100mgのナトリウムのナトリウム放出を有する。
【0078】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のマグネシウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約5(例えば、少なくとも約7、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約100、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約2000、少なくとも約5000)mgのマグネシウムのマグネシウム放出を有する。
【0079】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、1分間のカリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約5000(例えば、少なくとも約6000、少なくとも約7000、少なくとも約8000、少なくとも約9000、少なくとも約10000、少なくとも約11000)mgのカリウムのカリウム放出を有する。
【0080】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、少なくとも約5(例えば、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10)、および/または高くとも約20の相対カリウム放出を有する。
【0081】
幾つかの実施形態においては、組成物は、ケイ酸カルシウム水和物相をさらに含む。ケイ酸カルシウム水和物相は、ケイ酸二カルシウム水和物相、トバモライト相、およびハイドロガーネット相から選択される少なくとも1つの相を含み得る。
【0082】
幾つかの実施形態においては、組成物は、水酸化カリウム、酸化カリウム、炭酸カリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの要素をさらに含む。
【0083】
幾つかの実施形態においては、組成物は、パヌーザイト、ポートランダイト、曹長石、またはそれらの組み合わせをさらに含む。
【0084】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、カリ長石相を含み、ここで、前記組成物は、カリ長石相を多くとも約65質量%の量で含み、前記組成物は、約65質量%超のカリ長石を含む出発組成物から得られ、24時間のカリウム放出試験によれば、前記組成物から放出されるカリウムの量は、前記出発組成物から放出されるカリウムの量の少なくとも約2倍(例えば、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約25倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍)の大きさである。
【0085】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相と、ケイ酸二カルシウム水和物相、トバモライト相、およびハイドロガーネット相から選択される少なくとも1つの相を含むケイ酸カルシウム水和物相とを含み、ここで、前記組成物は、アルカリ金属ケイ酸塩相を多くとも約65質量%の量で含み、かつ以下:前記組成物が、少なくとも約1質量%のケイ酸二カルシウム水和物相を含むこと、前記組成物が、少なくとも約1質量%のトバモライト相を含むこと、および前記組成物が、少なくとも約1質量%のハイドロガーネット相を含むことの少なくとも1つが当てはまる。
【0086】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のカリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約5000mgのカリウムのカリウム放出を有する。
【0087】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のカルシウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約15mgのカルシウムのカルシウム放出を有する。
【0088】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のアルミニウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり多くとも約10mgのアルミニウムのアルミニウム放出を有する。
【0089】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のケイ素放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約40mgのケイ素のケイ素放出を有する。
【0090】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のナトリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約6.2mgのナトリウムのナトリウム放出を有する。
【0091】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、24時間のマグネシウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約5mgのマグネシウムのマグネシウム放出を有する。
【0092】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、1分間のカリウム放出試験による、該組成物1キログラム当たり少なくとも約5000mgのカリウムのカリウム放出を有する。
【0093】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、アルカリ金属ケイ酸塩相を多くとも約65質量%の量で含み、前記組成物は、約65質量%超のアルカリ金属ケイ酸塩を含む出発組成物から得られ、24時間のカリウム放出試験によれば、前記組成物から放出されるカリウムの量は、前記出発組成物(例えば、水熱改質材料)から放出されるカリウムの量の少なくとも約2倍の大きさである。
【0094】
幾つかの実施形態においては、組成物(例えば、乾燥された水熱改質材料)は、アルカリ金属ケイ酸塩相を含み、ここで、前記組成物は、少なくとも約5の相対カリウム放出を有する。
【0095】
幾つかの実施形態においては、アルカリ金属ケイ酸塩は、カリ長石、カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、およびペグマタイト、ならびにそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの要素を含む。
【0096】
幾つかの実施形態においては、組成物は、炭素質材料をさらに含む。炭素質材料は、KOH、NaOH、Mg(OH)2、Ca(OH)3、K2CO3、Na2CO3、MgCO3、およびCaCO3から選択される少なくとも1つの材料を含み得る。
【0097】
幾つかの実施形態においては、組成物は、約1ミクロン~約1000ミクロンの直径を有する粒子を含むマルチモーダルな粒度分布を有する。
【0098】
幾つかの実施形態においては、組成物は、約100ミクロン~約1000ミクロンのサイズを有する凝集粒子を含む。
【0099】
幾つかの実施形態においては、組成物は、約15.1平方メートル毎グラム~約46.9平方メートル毎グラムのBET法による比表面積を有する粒子を含む。
【0100】
幾つかの実施形態においては、組成物は、約0.01ミクロン~約100ミクロン(例えば、約0.1ミクロン~約100ミクロン)の粒度分布を有する。
【0101】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、セメント化学において有用である。
【0102】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、ジオポリマー産業、水ガラス産業、およびコロイダルシリカ産業から選択される少なくとも1つの産業のためのアルカリ溶液の製造において有用である。
【0103】
幾つかの実施形態においては、前記組成物は、土壌修復において有用である。
【0104】
幾つかの実施形態においては、肥料は、本明細書に開示される組成物を含む。肥料は、例えばカリウム肥料、カルシウム肥料、ケイ素肥料、ナトリウム肥料、および/またはマグネシウム肥料であり得る。肥料は、多栄養肥料であり得る。
【0105】
幾つかの実施形態においては、土壌調整剤は、本明細書に開示される組成物を含む。
【0106】
図面は、主として説明を目的とするものであって、本明細書に記載される本発明の発明主題の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【
図1】
図1は、処理された様々な閃長岩中に存在するカリウムの量を示す図表である。材料の処理は、200℃で5時間にわたり行った。
【
図2】
図2は、世界の農業における現在の用途または潜在的な用途を有する天然に存在するカリウム含有材料の概要を示す表である。
【
図3】
図3は、本開示の乾燥された水熱改質材料を含む材料を得る方法における様々な非限定的な工程の概要を示すフローチャートを示す。
【
図4A】
図4Aは、本開示の方法の様々な実施形態の後処理段階および乾燥段階のバリエーションを示す。
図4Aは、反応性ガスを使用する改変された乾燥段階を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示の方法の様々な実施形態の後処理段階および乾燥段階のバリエーションを示す。
図4Bは、様々な溶液が後処理に加えて水熱段階で導入され得る方法の実施形態を示す。
【
図4C】
図4Cは、本開示の方法の様々な実施形態の後処理段階および乾燥段階のバリエーションを示す。
図4Cは、アルカリ土類金属溶液が後処理に加えて水熱段階で漸増的に添加される代替的な実施形態を示す。
【
図4D】
図4Dは、実施例1の乾燥された水熱改質材料の製造において使用される水熱反応器の概略図である。
【
図4E】
図4Eは、(a)Ca源として100質量%のCa(OH)
2を想定して超カリウム質閃長岩MCA41について報告されたデータから計算される供給混合物の鉱物学的組成、および(b)乾燥された水熱改質材料の鉱物学的組成を示し、ここで、K
2Oは11.7質量%であると再計算された。
【
図5】
図5は、水熱工程および乾燥工程について異なる処理雰囲気下で乾燥された水熱改質材料の組成を示す。Ar-Ar、Ar-空気、空気-空気、およびCO
2-CO
2についてのデータが提供され、ここで、列挙される1番目の雰囲気は、水熱処理工程に関するものであり、列挙される2番目の雰囲気は、乾燥工程で使用された。
【
図6】
図6は、乾燥された水熱改質材料からの元素浸出に対する処理雰囲気の効果を裏付ける一連の棒グラフを示す。水熱工程は、200℃で5時間にわたり実施した。
【
図7A】
図7Aは、二酸化炭素雰囲気下で水熱改質材料を乾燥させることにより得られる浸出鉱物学についての反応経路および関連を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、空気、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、または真空乾燥下のいずれかでのカリウム、カルシウム、およびアルミニウムの浸出を示し、そのために、上澄み相と一緒の乾燥と上澄み相の除去後の乾燥との間の差を示すデータが提供されている。
【
図7C】
図7Cは、空気、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、または真空乾燥下のいずれかでのカリウム、カルシウム、およびアルミニウムの浸出を示し、そのために、上澄み相と一緒の乾燥と上澄み相の除去後の乾燥との間の差を示すデータが提供されている。
【
図7D】
図7Dは、空気、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO
2)、または真空乾燥下のいずれかでのカリウム、カルシウム、およびアルミニウムの浸出を示し、そのために、上澄み相と一緒の乾燥と上澄み相の除去後の乾燥との間の差を示すデータが提供されている。
【
図8】
図8は、水熱改質材料の鉱物学を調整するために使用される水熱処理変量(雰囲気、時間、および/または温度)の概略図を示す。
【
図9A】
図9Aは、鉱物学および浸出に対する水熱工程における水熱処理時間および温度の効果を示し、(A)は、XRDによる乾燥された水熱改質材料の鉱物相に対する処理時間(t)および温度(T)の効果を図示する。
【
図9B】
図9Bは、鉱物学および浸出に対する水熱工程における水熱処理時間および温度の効果を示し、(B)は、硝酸浸出溶液にさらされた乾燥された水熱改質材料からのカリウム浸出が、200℃、220℃、および230℃で0.5時間~3時間で評価した場合に処理時間および温度とは無関係であること、Al浸出が、処理時間とは無関係であるが、温度増大により減少すること、そしてNa浸出が、時間および処理温度の両方にわたって増加することを示す棒グラフ(g/Kgの単位)である。
【
図9C】
図9Cは、鉱物学および浸出に対する水熱工程における水熱処理時間および温度の効果を示し、(C)は、処理時間の増大に伴う、乾燥された水熱改質材料中のアルカリ金属長石、トバモライト、および非晶質相の相質量分率における変化を示す。
【
図9D】
図9Dは、鉱物学および浸出に対する水熱工程における水熱処理時間および温度の効果を示し、(D)は、5時間以上の水熱処理時間が使用される場合のK放出およびCa放出の依存性を示す。この関係は、0.5時間~3時間の処理時間が使用される場合には観察されない(
図9Bを参照)。
【
図10】
図10は、供給原料中のカリ長石(Kfs)変態の程度とCa/Si比との間の関係のグラフである。
【
図11A】
図11Aは、供給原料中のCa/Si比が0.075から0.9まで高まる場合の、乾燥された水熱改質材料の鉱物学に対するカリ長石(Kfs)変換の効果を図解するグラフである。
【
図11B】
図11Bは、供給原料中のCa/Si比が0.075から0.9まで高まる場合の、乾燥された水熱改質材料からのK
+(BおよびC)、Ca
2+(CおよびD)、Na
+(D)、およびAl
3+(D)の元素放出を示す棒グラフである。
【
図11C】
図11Cは、供給原料中のCa/Si比が0.075から0.9まで高まる場合の、乾燥された水熱改質材料からのK
+(BおよびC)、Ca
2+(CおよびD)、Na
+(D)、およびAl
3+(D)の元素放出を示す棒グラフである。
【
図11D】
図11Dは、供給原料中のCa/Si比が0.075から0.9まで高まる場合の、乾燥された水熱改質材料からのK
+(BおよびC)、Ca
2+(CおよびD)、Na
+(D)、およびAl
3+(D)の元素放出を示す棒グラフである。グラフ(D)において、pHは、それぞれの特定の比率で確認された。
【
図11E】
図11Eは、0.3のCa/Si比を有する供給原料を使用して種々の処理時間で得られた乾燥された水熱改質材料についての24時間でのpHを示すグラフである。
【
図11F】
図11Fは、種々のCa/Si比(0.3、0.6、0.15、および0.075)での乾燥された水熱改質材料についての原材料混合物の粒度分布を比較する一連のグラフを示す。
【
図12】
図12は、(a)乾燥された水熱改質材料、および(b)非晶質成分の測定のために50質量%のSi(NIST SRM 640)をスパイクした試料のXRPDパターンを示す。無機結晶構造データベース(ICSD)番号は以下の通りである:正長石(#159347)、マイクロクリン(#34790)、プラゾライト(#31250)、α-ケイ酸二カルシウム水和物(#75277)、11Åトバモライト(#40048)、曹長石(#16744)、パヌーザイト(#30951)。
【
図13】
図13は、乾燥された水熱改質材料のSEM顕微鏡写真の概要であり、ここで(a)および(b)改変カリ長石;ハイドロガーネットの丸形粒子がはっきりと見える;白い矢印は、ケイ酸カルシウム相の微細な針状物がコケ状の被覆物として特に明らかな長石表面の側面を指している、(c)白色の矢印は、丸形の凝集物(恐らくトバモライト)を指している、(d)(c)に示される形成物の1つのクローズアップ;ハイドロガーネットの丸形粒子がはっきりと見える。画像は、導電性ペイント(Carbon Conductive Adhesive 502、Electron Microscopy Sciences社)上に少々の粉末を散布することにより得られた。
【
図14】
図14は、薄片でマウントされた乾燥された水熱改質材料のSEM顕微鏡写真の概要であり、ここで(a)および(b)は、明らかな内部亀裂を有する改変カリ長石の粒子と、結晶粒のエッジで核生成する可能性のある微細なCa鉱物の縁を示す;小さな丸形粒子(ハイドロガーネット)および細長い結晶(α-ケイ酸二カルシウム水和物およびトバモライト)が見える。(b)中の矢印は、カルシウム鉱物の縁の外側に位置するトバモライトの細長い粒子を指している;(c)および(d)は、極めて不均質な塊状の形成物を示す。その塊状物は、改変カリ長石、α-ケイ酸二カルシウム水和物、およびトバモライトを封入するカルシウム鉱物の小さな粒子の縁により区切られている。白っぽいバックグラウンドの曇りが塊状物内に観察され、これは微細なトバモライト結晶に起因する可能性がある。(d)において、矢印は、α-ケイ酸二カルシウム水和物の厚く細長い結晶を指している。そのような結晶は、ずっと薄く見える(b)に示されるトバモライトの結晶と区別することができる。(e)において、細長い繊維状のトバモライト結晶の高倍率の詳細が示される。ハイドロガーネットの幾つかの丸形粒子も見える。(f)クラスター。矢印は、その全体のサイズおよび形状を強調するためにクラスターのエッジを指している。(g)丸形のハイドロガーネット結晶の高倍率の詳細。矢印は、複数の結晶が一緒に共晶していると見られる領域を指している。(h)共晶したハイドロガーネットの比較的大量の極端な例。
【
図15】
図15は、(a)改変カリ長石、および(b)塊状の形成物の電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)のX線元素マップを示す。よりホットな色は、元素のより高い濃度に相当し、よりコールドな色は、より低い濃度に相当する。
【
図16】
図16は、(a)(b)(c)それぞれ3つの異なるサイズ範囲、d<50μm、50<d<100μm、およびd>100μmにおける改変カリ長石の粒子、(d)乾燥された水熱改質材料中の塊状の形成物、(e)大量のハイドロガーネット、ならびに(f)曹長石の明確な内包を含む改変カリ長石の中央粒子を有する塊状の形成物に関する電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)のX線元素マップを示す。
【
図17】
図17は、超カリウム質閃長岩の岩石粉末(左)および乾燥された水熱改質材料HT-1(右)の外見を示す写真である。
【
図18】
図18は、乾燥された水熱改質材料中に形成されたゼオライトの電子マイクロプローブ図である。
【
図19】
図19は、(a)非晶質化合物、および(b)炭素質化学種の電子プローブマイクロアナライザーで得られた電子後方散乱画像を示す。
【
図20】
図20は、標準化されたHNO
3(0.1M)による25mLの脱イオン水に懸濁した乾燥された水熱改質材料(0.3067g)の滴定曲線である。
【
図21】
図21(a)~(c)は、乾燥された水熱改質材料上に濃硝酸を滴下することにより行われた炭酸塩に関するスポット試験の装置、概念、および結果を示している。(a)は、炭酸塩試験のための基礎となる化学式が添えられた実験装置の図であり、(b)は、ブランク試験からの結果を示し、そして(c)は、乾燥された水熱改質材料を用いた試験からの結果を示す。
【
図22】
図22は、HT-1、すなわち乾燥された水熱改質材料についての、容積%(V%、主晶)、および粒子数のパーセント(N%、斑晶)を基準とする粒度分布(PSD)を示す。
【
図23】
図23は、乾燥された水熱改質材料の表面でのN
2ガスの吸脱着等温線(-196℃)を示す。
【
図24】
図24は、岩石粉末(超カリウム質閃長岩)および乾燥された水熱改質材料からの元素放出を示す。浸出条件:回転下での回分試験、24時間、m
S:m
L=1:10。浸出溶液としての呼び初期pH=5のHNO
3。すべての値(ppm)は、固体材料1kg当たりのICP-MSによる溶液中で分析された元素のmgを指す。
【
図25】
図25は、標準条件(pH5のHNO
3)、酢酸塩緩衝条件(酢酸塩/HNO
3、pH5.3)、およびpH5およびpH1の微小流体条件の下でのバルク粉末についての浸出比の差を示す。
【
図26】
図26は、
図34に記載されるパラメーターに従って製造された乾燥された水熱改質材料についての、種々のpH値での微小流体条件下でのK
+、Ca
2+、Al
3+、およびSiの浸出を比較するグラフである。
【
図27】
図27は、m
S:m
L=0.1および室温での岩石粉末(超カリウム質閃長岩)または乾燥された水熱改質材料のいずれかと接触された呼び初期pH=5のHNO
3の溶液のpHの自発的な変化のグラフである。
【
図28】
図28は、220℃で5時間にわたり処理された水熱改質材料から除去された上澄み水が、浸出可能なカリウム(K)に富んでいることを示している。
【
図29】
図29は、水熱改質材料をもたらす水熱処理工程の間の温度プロフィールのグラフである。
【
図30】
図30は、示される4つのフラクションを得るために1分間にわたりミル粉砕した後に、ASTM篩い番号70(212μm)、100(150μm)、140(106μm)、および325(45μm)を使用して乾式篩別したカリ長石原材料の粒度分布(PSD)を示すグラフである。供給混合物は、同時ミル粉砕ではなく、ミル粉砕されたカリ長石と所望の量のCaOとを混合することにより調製した。
【
図31A】
図31Aは、PSD値が
図30に示される4つの供給原料のそれぞれから製造された乾燥された水熱改質材料の粒度分布のグラフであり、(A)は、4つの異なる乾燥された水熱改質材料の粒度分布を示す組み合わされた複合グラフである。
【
図31B】
図31Bは、PSD値が
図30に示される4つの供給原料のそれぞれから製造された乾燥された水熱改質材料の粒度分布のグラフであり、(B)は、異なる乾燥された水熱改質材料のそれぞれ(点線)が、製造に使用したその相応の供給原料混合物(実線)と重ね合わされた個別のグラフを示す。
【
図31C】
図31Cは、平均粒度に対する、乾燥された水熱改質材料からのカリウム(C)、ナトリウム(D)、アルミニウム(D)、およびカルシウム(D)の浸出特性を示す。
【
図31D】
図31Dは、平均粒度に対する、乾燥された水熱改質材料からのカリウム(C)、ナトリウム(D)、アルミニウム(D)、およびカルシウム(D)の浸出特性を示す。
【
図32】
図32は、可溶性K
+が、水での洗浄により乾燥された水熱改質材料から除去され得ることを示す概略図である。生ずる組成は、すすぎ後のHT-Xと称される固相であり、ここで、Xは、使用される乾燥雰囲気を表す。
【
図33A】
図33Aは、アルゴン条件または二酸化炭素条件下のいずれかで乾燥されたすすぎ後および未すすぎの乾燥された水熱改質材料の粒度分布を示すグラフである。
【
図33B】
図33Bは、すすぎ後のHT-Arと、すすぎ後のHT-CO
2、(B)すすぎ後のHT-Ar、(C)すすぎ後のHT-Ar(薄片)、(D)すすぎ後のHT-CO
2、(E)すすぎ後のHT-CO
2(薄片)、(F)すすぎ後のHT-Arとを比較する表示された特徴を伴う走査型電子顕微鏡画像である。炭酸化は、乾燥された水熱改質材料の粒子形態に劇的な影響を与えることが実証される。
【
図33C】
図33Cは、すすぎ後のHT-Arと、すすぎ後のHT-CO
2、(B)すすぎ後のHT-Ar、(C)すすぎ後のHT-Ar(薄片)、(D)すすぎ後のHT-CO
2、(E)すすぎ後のHT-CO
2(薄片)、(F)すすぎ後のHT-Arとを比較する表示された特徴を伴う走査型電子顕微鏡画像である。炭酸化は、乾燥された水熱改質材料の粒子形態に劇的な影響を与えることが実証される。
【
図33D】
図33Dは、すすぎ後のHT-Arと、すすぎ後のHT-CO
2、(B)すすぎ後のHT-Ar、(C)すすぎ後のHT-Ar(薄片)、(D)すすぎ後のHT-CO
2、(E)すすぎ後のHT-CO
2(薄片)、(F)すすぎ後のHT-Arとを比較する表示された特徴を伴う走査型電子顕微鏡画像である。炭酸化は、乾燥された水熱改質材料の粒子形態に劇的な影響を与えることが実証される。
【
図33E】
図33Eは、すすぎ後のHT-Arと、すすぎ後のHT-CO
2、(B)すすぎ後のHT-Ar、(C)すすぎ後のHT-Ar(薄片)、(D)すすぎ後のHT-CO
2、(E)すすぎ後のHT-CO
2(薄片)、(F)すすぎ後のHT-Arとを比較する表示された特徴を伴う走査型電子顕微鏡画像である。炭酸化は、乾燥された水熱改質材料の粒子形態に劇的な影響を与えることが実証される。
【
図33F】
図33Fは、すすぎ後のHT-Arと、すすぎ後のHT-CO
2、(B)すすぎ後のHT-Ar、(C)すすぎ後のHT-Ar(薄片)、(D)すすぎ後のHT-CO
2、(E)すすぎ後のHT-CO
2(薄片)、(F)すすぎ後のHT-Arとを比較する表示された特徴を伴う走査型電子顕微鏡画像である。炭酸化は、乾燥された水熱改質材料の粒子形態に劇的な影響を与えることが実証される。
【
図33G】
図33Gは、流動条件下での脱灰反応がそれぞれケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)およびハイドロガーネットからSiO
2およびAl
2O
3をもたらす、本開示の方法の代替的な実施形態を示す概略図である。乾燥/後処理は、CO
2を用いて行われ、それは水熱処理後の水熱改質材料の脱灰を促進する。
【
図33H】
図33Hは、アルカリ性溶液が固定鉱物粉末の充填床を通じて流れる本開示の方法の代替的な実施形態を示す概略図である。
【
図34A】
図34Aは、乾燥された水熱改質材料の製造のために使用された供給原料混合物、処理パラメーター、および乾燥条件を示す、本発明の開示による代表的な全方法の概略図である。
【
図34B】
図34Bは、研究室規模で本発明による材料を製造するために使用される水熱反応器(B)の例を示す。
【
図34C】
図34Cは、研究室規模で本発明による材料を製造するために使用される乾燥リグ(C)の例を示す。
【
図35A】
図35Aは、流動(微小流体)条件下での乾燥された水熱改質材料の溶解挙動を示す走査型電子顕微鏡像である。浸出前後の横並びでの比較が示される。
【
図35B】
図35Bは、流動(微小流体)条件下での乾燥された水熱改質材料の溶解挙動を示す走査型電子顕微鏡像である。浸出前後の横並びでの比較が示される。
【
図35C】
図35Cは、流動(微小流体)条件下での乾燥された水熱改質材料の溶解挙動を示す走査型電子顕微鏡像である。浸出前後の横並びでの比較が示される。
【
図35D】
図35Dは、流動(微小流体)条件下での乾燥された水熱改質材料の溶解挙動を示す走査型電子顕微鏡像である。浸出前後の横並びでの比較が示される。
【
図36】
図36は、周囲圧力で24時間または96時間のいずれかにわたってさらに90℃で還流された乾燥された水熱改質材料からのカリウム放出を示すグラフである。
【
図37A】
図37Aは、pHおよび濃度に依存する浸出および溶解を示し、(A)は、アルゴン(Ar)下で乾燥された乾燥された水熱改質材料についての3種の浸出溶液(pH5のHNO
3、pH5のHNO
3中の33.33mMのCsNO
3、またはpH12.5の水酸化テトラメチルアンモニウム)のそれぞれからのK放出を示すグラフである。
【
図37B】
図37Bは、pHおよび濃度に依存する浸出および溶解を示し、(B)は、元素放出に対する緩衝された浸出条件の効果を示すグラフである。K、Na、Al、およびCaを、それぞれ評価し、緩衝されていないコントロールと比較した。
【
図37C】
図37Cは、pHおよび濃度に依存する浸出および溶解を示し、(C)は、可溶性K
+が、水での洗浄により乾燥された水熱改質材料から除去され得ることを示す概略図である。生ずる組成は、すすぎ後のHT-Xと称される固相であり、ここで、Xは、使用される乾燥雰囲気を表す。浸出は、3種の溶液(pH5のHNO
3、pH5のHNO
3中の33.33mMのCsNO
3、またはpH12.5の水酸化テトラメチルアンモニウム(示されていない))の1つにおいて実施した。
【
図37D】
図37Dは、pHおよび濃度に依存する浸出および溶解を示し、(D)は、種々の乾燥条件(ArまたはCO
2)下で製造された、水でのすすぎ後または未すすぎの状態の乾燥された水熱改質材料についてのK放出における変化を示すグラフである。実験は、pH5のHNO
3溶液中で実施した。
【
図37E】
図37Eは、pHおよび濃度に依存する浸出および溶解を示し、(E)は、ArまたはCO
2のいずれかで乾燥されたすすぎ後の試料と未すすぎの試料との間のK放出の差を示すグラフである。すすぎ後の試料と未すすぎの試料との間の差は、乾燥された水熱改質材料中の可溶性/速放性のKの割合を示す。
【
図37F】
図37Fは、pHおよび濃度に依存する浸出および溶解を示し、(F)は、(D)のグラフと同様のグラフであるが、ただし、浸出は、HT-Ar、すすぎ後のHT-Ar、およびすすぎ後のHT-CO
2についてpH5のCsNO
3/HNO
3(33.3mM)溶液中で実施される。HT-CO
2(CsNO
3)は、CsNO
3の存在下でCO
2下で乾燥され、浸出は、pH5のHNO
3溶液中で実施された。
【
図38】
図38は、CaOおよび長石原材料の水熱処理の間に起こり得る反応経路の詳細な概要を示す。生成物分布に対する特定の条件(例えば、Ca/Si比、Al/Si比)の影響を含む、様々な特定された鉱物相の形成を説明する化学的根拠が示される。
【0108】
詳細な説明
本明細書には、水熱改質材料、乾燥された水熱改質材料、およびそれらの製造方法の様々な実施形態が開示される。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される材料の特性は、多数の特定されたパラメーター(限定されるものではないが、処理時間および温度、乾燥条件、処理雰囲気、供給原料混合物中の原材料の比率、原材料の表面積等を含む)の変更により、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料の特性が様々な産業上の利用の要件に適合され得るように調整され得る。本開示の方法により包含される上記で紹介され、以下でより詳細に議論される様々な概念は、開示された概念が特定の実施様式に限定されないので、数多くのどの方法でも実施することができる。特定の実施および用途の例は、主として説明を目的として提供される。
【0109】
様々な実施形態においては、本明細書に開示される方法は、最小の廃棄物もしくは副産物しか生成せず、または廃棄物もしくは副産物を全く生成しない。これは、カリ長石等の原材料の変換を目的とする特定の従来の処理技術、ならびに起泡剤としてのアルキルアミンの使用と一緒に尾鉱および塩水廃水を廃棄することで、あまり環境に優しくない方法となるKCl処理とは異なる。幾つかの実施形態においては、水熱改質材料および/または乾燥された水熱改質材料は、土壌に直接的に適用するのに適している。そのような実施形態においては、一般に、水熱改質されたカリウム含有鉱物の改質部分(例えば、カリ長石原材料の水熱改質部分)は、残りの固体材料から分離されない。そのような実施形態においては、水熱改質材料および/または乾燥された水熱改質材料は、幾らかの量の、天然に存在する鉱物相である未改質のカリ長石、ハイドロガーネット、およびトバモライト、ならびにコンクリートの成分であり、重大な環境的危険をもたらさないα-ケイ酸二カルシウム水和物および非化学量論的なケイ酸カルシウム水和物を含み得る。さらに、本開示の特定の実施形態においては、初期の供給原材料(例えば、カリ長石)のわずか一部しか新たな鉱物相へと変換されないので、方法の温度(T)および方法の時間(t)は、該方法の環境フットプリントを最小限に抑えるように定められる。最後に、特定の実施形態においては、本明細書に開示される方法は、CO2排出量を削減(例えば、最小化)することができる。それというのも、本開示の水熱改質材料および/または乾燥された水熱改質材料は、現地で現地の資源から容易に製造することができるからである。
【0110】
最終的に、乾燥された水熱改質材料が得られる本開示による方法の非限定的な一般的概要を示すフローチャートが、
図3に示されている。供給原料混合物は、1種以上の第1の原材料(a1)、および1種以上の第2の原材料(a2)を含む。第1の原材料(a1)は、アルカリ土類金属含有原材料(すなわち、CaO)等の材料、および/または本明細書に記載されるその他の関連の金属含有材料を含む。第2の原材料(a2)は、天然資源の鉱物、例えば本明細書に記載されるアルカリ金属含有ケイ酸塩(例えば、カリ長石)を含む。次いで、供給原料混合物のそれぞれの原材料成分は、本明細書では非限定的な列挙がなされる当該技術分野で知られる任意の数の技術を使用して、ミル粉砕、微粉砕、粉砕、粉末化等がされ得る。当業者は、第1の原材料および第2の原材料(a1、a2)を個別にもしくは一緒に、またはそれらの幾つかの組み合わせでミル粉砕することができることを認識するであろう。この工程が完了したら、供給原料混合物を、水熱反応器、例えばオートクレーブまたは類似の反応容器中に移すことができ、そこで水熱処理工程が行われる。事象の何らかの具体的な順序を特定せずに、水熱反応器中の材料を、工程(b)において水(液体形もしくは蒸気形、またはそれらの幾つかの組み合わせ)と接触させることができ、その後、得られた混合物を、十分な時間にわたり本明細書に記載される温度、圧力、および/または雰囲気条件にさらすことで、工程(c)により表される水熱改質材料および上澄み水相を得ることができる。乾燥工程(d)は、慣例的な手段、例えば市販の乾燥機を使用して実施することができ(または空気乾燥することができ)、本明細書に記載される非限定的な方法のいずれかに従って実施され得る。工程(c)の水熱改質材料は、上澄みの少なくとも一部(またはすべて)と一緒に乾燥させることができ、または上澄みを水熱改質材料から(部分的にまたは完全に)除去することで、各成分を別々に乾燥させることができる。いずれの場合にも、乾燥された水熱改質材料が方法全体から得られる。工程(d)が乾燥工程と称される場合に、この工程はすべての水の完全な除去を必要としないと理解されるべきである。また、乾燥された水熱改質材料が乾燥工程(d)にかけられる場合に、これは、乾燥された水熱改質材料のすべての水の完全な除去を行うことを必要としない。
【0111】
前記方法は、不所望な過剰の可溶性金属イオン(例えば、カリウム)化学種、ならびに廃棄物および/または副産物の生成を減らす(例えば、避ける)ために土壌科学および経済原理の両方を考慮に入れる(が、必ずしもそれにより制約されるものではない)。
【0112】
図3に示される方法の様々な実施形態は、以下でより詳細に記載される。本明細書に開示される方法は、供給原料混合物を含む原材料から出発して、回分方式、半回分方式、または連続方式で実施され得る。本開示の幾つかの実施形態においては、原材料(a2)は、
図2に見られるK含有鉱石の中から選択され得る。本開示のその他の実施形態においては、原材料(a2)は、カリ長石、カルシライト、金雲母、白雲母、黒雲母、粗面岩、流紋岩、雲母類、超カリウム質閃長岩、白榴石、霞石、閃長岩、響岩、フェナイト、ウガンダイト、サニディン、アプライト、ペグマタイト、およびそれらの組み合わせを含む鉱物の非限定的な群から選択される1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩材料である。
【0113】
上記のいずれのアルカリ金属含有鉱物も、1種以上の原材料(a2)と組み合わせるために適している。本開示の様々な実施形態においては、(a1)の1種以上の原材料は、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、またはそれらの混合物を含む。その他の非限定的な実施形態においては、(a1)の1種以上の原材料は、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、またはそれらの混合物を含む。さらにその他の実施形態においては、(a1)の1種以上の原材料は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化ベリリウム、酸化ストロンチウム、酸化ラジウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ベリリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化ラジウム、またはそれらの混合物を含む。幾つかの実施形態においては、(a2)の1種以上の化合物は、水酸化カルシウムを含む。特定の実施形態においては、(a2)の1種以上の化合物は、酸化カルシウムを含む。
【0114】
本明細書で上記した原材料(a1)および(a2)の粒子の混合物を形成する工程(a)は、当該技術分野で公知の方法、例えば本明細書に記載されるジョークラッシャー、ジャイレートリクラッシャー、コーンクラッシャー、ボールミル、ロッドミル等を用いた、乾燥材料またはスラリー化材料の破砕、ミル粉砕、粉砕等の当該技術分野で公知の方法を使用する(a1)および(a2)の同時粉砕または個別の微粉砕を含み得る。
【0115】
本開示の様々な実施形態においては、混合物の形成工程(a)は、(a1)および(a2)の粒子の別々のまたは一緒のいずれかでのミル粉砕(すなわち、粉砕、微粉砕、粉末化等)によるものである。幾つかの実施形態においては、ミル粉砕されていない(a1)および(a2)の粒子をまず混ぜ合わせ、その後に引き続きミル粉砕することで、所望の供給混合物が形成される(共同ミル粉砕)。その他の実施形態においては、それぞれの成分(a1)および(a2)を別々にミル粉砕してから、それらの成分が混ぜ合わせられる。幾つかの実施形態においては、(a1)または(a2)の一方だけを別個にミル粉砕してから、それらの成分を混ぜ合わせることで、ミル粉砕された成分とミル粉砕されていない成分とが混ぜ合わせられる。本開示の特定の実施形態において、ミル粉砕は、ボールミル粉砕、流体エネルギーミル粉砕、湿式ミル粉砕、媒体ミル粉砕、高圧均質化ミル粉砕、極低温ミル粉砕、ロッドミル粉砕、自生ミル粉砕、半自生ミル粉砕、ブーアストンミル粉砕、垂直軸インパクターミル粉砕、タワーミル粉砕、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。幾つかの実施形態においては、(a1)および(a2)の混合物のミル粉砕は、共同ボールミル粉砕により形成される。特定の実施形態においては、アルカリ金属ケイ酸塩(すなわち、カリ長石)およびアルカリ土類金属酸化物または水酸化物(すなわち、CaOおよびCa(OH)2)を含む混合物が、共同ボールミル粉砕される。
【0116】
本明細書で上記の(a1)および(a2)の粒子の混合物を形成する工程(a)は、当該技術分野で公知の方法、例えば本明細書に記載されるジョークラッシャー、ジャイレートリクラッシャー、コーンクラッシャー、ボールミル、ロッドミル等を用いた、乾燥材料またはスラリー化材料の破砕、ミル粉砕、粉砕等の当該技術分野で公知の方法を使用する(a1)および(a2)の同時粉砕または個別の微粉砕を含み得る。それぞれの成分(a1)または(a2)および得られた混合物は、所望であれば、例えば篩い、スクリーン、および/またはその他の公知の方法によって分粒することができる。様々な実施形態においては、(a1)、(a2)、または得られた混合物の適切な平均粒度は、独立して、約10μm~約250μmの範囲である。特定の実施形態においては、(a1)、(a2)、または(a1)および(a2)の混合物の平均粒度は、独立して、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、約150μm、約160μm、約170μm、約180μm、約190μm、約200μm、約210μm、約220μm、約230μm、約240μm、約250μm、約260μm、約270μm、約280μm、約290μm、約330μmであり、これらの値のいずれかの間のすべての範囲および値が含まれる。特定の実施形態においては、(a1)、(a2)、または得られた混合物は、独立して、約17μm、約85μm、約151μm、または約220μmの平均粒度を有する。所望であれば、(a1)および(a2)成分は、前記と同様の粒度または異なる粒度を有し得る。すなわち、(a1)成分は、(a2)成分と比べて同じ、より大きい、またはより小さい平均粒度を有し得る。
【0117】
本明細書に記載される方法の様々な実施形態においては、工程(a)からの混合物(すなわち、供給原料)を、工程(b)において水と接触させる。工程(b)における工程(a)の供給原料と水との接触は、あらゆる適切な方法によって、例えば水を工程(a)の供給原料に添加することにより、または工程(a)の供給原料を水に添加することにより、または水および工程(a)の供給原料を適切な容器、例えば水および工程(a)の供給原料の配合物を、任意に本明細書に記載される圧力および/または適切な雰囲気下で水熱改質材料を形成する温度にまで加熱することができる反応容器に順次もしくは同時に添加することにより行うことができる。これらの実施形態のいずれかにおいて、水は、液体として、蒸気(すなわち、水蒸気)として、またはそれらの幾つかの組み合わせとして添加され得る。
【0118】
特定の実施形態においては、方法の工程(b)における接触は、原材料(a2)(例えば、本明細書に記載されるアルカリ金属ケイ酸塩)に対して質量過剰の水で行われる。幾つかの実施形態においては、比率として表される質量過剰の水対原材料(a2)は、約1:1、2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、および約20:1であり、ここで、例えば4:1の比率は、水が、使用される原材料(a2)の質量に対して4倍量で存在することを意味する。幾つかの実施形態においては、方法の工程(b)における接触は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約11:1、約12:1、約13:1、約14:1、約15:1、約16:1、約17:1、約18:1、約19:1、および約20:1のアルカリ金属ケイ酸塩原材料(a2)対水の質量比で行われ、ここで、例えば4:1の比率は、アルカリ金属ケイ酸塩原材料が、使用される水の質量に対して4倍量で存在することを意味する。
【0119】
幾つかの実施形態においては、水と接触させるミル粉砕された供給原料混合物を、オートクレーブまたはその他の適切な容器または当該技術分野で公知の反応容器中に導入することで、工程(c)において形成される水熱改質材料が製造される。その他の実施形態においては、反応条件、例えば雰囲気、時間、温度、および圧力は、生成物の特性の調整のために変調することができる。特定の実施形態においては、これらのパラメーターの変更を使用することで、限定されるものではないが、非晶質相、ケイ酸カルシウム水和物、ハイドロガーネット、トバモライト、およびカリ長石を含む構成成分相の相対量を調節することができる。幾つかの実施形態においては、これらのパラメーターを調節することで、アルカリ金属アルミノケイ酸塩(例えば、カリ長石)の、その他の相、例えば1種以上の非晶質相、および/または1種以上のケイ酸カルシウム水和物相(C-S-H、トバモライト)への特異的な変換を促進することができる。特定の実施形態においては、本明細書で示される水熱改質材料および/または乾燥された水熱改質材料の浸出特性は、上述のパラメーターの調整により調節される。
【0120】
幾つかの実施形態においては、水熱処理工程(c)で使用される圧力は、約5気圧~85気圧の範囲である。特定の実施形態においては、水熱処理工程(c)は、約5気圧、約10気圧、約15気圧、約20気圧、約25気圧、約30気圧、約35気圧、約40気圧、約45気圧、約50気圧、約55気圧、約60気圧、約65気圧、約70気圧、約75気圧、約80気圧、約85気圧、およびこれらの値のいずれかの間の任意の範囲の圧力で行われる。幾つかの実施形態においては、水熱処理工程(c)は、約120℃~300℃の温度範囲で行われる。幾つかの実施形態においては、水熱処理工程(c)は、約120℃、約130℃、約140℃、約150℃、約160℃、約170℃、約180℃、約190℃、約200℃、約210℃、約220℃、約230℃、約240℃、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、およびこれらの値のいずれかの間のすべての範囲の温度で行われる。幾つかの実施形態においては、方法の工程(c)(すなわち、水熱処理工程)の期間は、約0.1時間~20時間の範囲である。特定の実施形態においては、方法の工程(c)の期間は、約0.1時間、約0.25時間、約0.5時間、約0.75時間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、およびその間の値のすべての範囲である。幾つかの実施形態においては、水熱処理工程(c)は、約5気圧~85気圧の圧力範囲で、約120℃~300℃の温度範囲で、約0.1時間~20時間の範囲の期間にわたり行われる。一般に、水熱処理工程(c)は、あらゆる適切な雰囲気、例えば反応性雰囲気、または不活性雰囲気において行われ得る。特定の実施形態においては、水熱処理工程(c)の雰囲気組成は、限定されるものではないが、アルゴン(Ar)、窒素(N)、空気、二酸化炭素(CO2)、またはそれらの混合物を含む。
【0121】
工程(c)で形成される水熱改質材料は、例えば原材料中のアルカリ金属ケイ酸塩の形態に対して改変形のアルカリ金属アルミノケイ酸塩を含み得る。アルカリ金属アルミノケイ酸塩の改変形は、その他の材料(例えば、任意に本明細書の様々な実施形態において記載される圧力および/または変更された雰囲気下で水の存在下で加熱される混合物中に存在するCaO、Ca(OH)2等)から交換された幾らかの量のアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはその他の金属もしくはイオン性化学種を含み得る。例示的なアルカリ金属アルミノケイ酸塩は、アルミノケイ酸カリウム(例えば、カリ長石、超カリウム質閃長岩、または本明細書に開示される他のそのような材料のいずれか)を含み得る。
【0122】
幾つかの実施形態においては、前記方法は、乾燥工程(d)を含み、ここで、工程(c)で形成される水熱改質材料、および水熱処理(例えば、工程(b)で添加された水と水熱改質材料との接触)の間に形成される上澄み水相の少なくとも一部が一緒に乾燥される。幾つかの実施形態においては、工程(d)の乾燥は、約20℃~約300℃(例えば、約30℃~約290℃、約40℃~約280℃、約50℃~約270℃、約60℃~約260℃、約70℃~約250℃、約80℃~約240℃、約90℃~約230℃、約100℃~約220℃、約110℃~約210℃、約120℃~約200℃、約130℃~約190℃、約140℃~約180℃、または約150℃~約170℃)の温度で行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程は、約50℃~約160℃(例えば、約60℃~約150℃、約70℃~約140℃、約80℃~約130℃、約90℃~約120℃、または約100℃~約110℃)の温度で行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程は、少なくとも約20℃(例えば、少なくとも約25℃、少なくとも約30℃、少なくとも約40℃、少なくとも約50℃、少なくとも約60℃、少なくとも約70℃、少なくとも約80℃、少なくとも約90℃、少なくとも約100℃、少なくとも約110℃、少なくとも約120℃、少なくとも約130℃、少なくとも約140℃、少なくとも約150℃、少なくとも約160℃、少なくとも約170℃、少なくとも約180℃、または少なくとも約190℃)、および/または高くとも約300℃(例えば、高くとも約290℃、高くとも約280℃、高くとも約270℃、高くとも約260℃、高くとも約250℃、高くとも約240℃、約230℃、高くとも約220℃、または高くとも約210℃)の温度で行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥は、周囲温度で、例えば上澄み水を蒸発させることにより行われる。特定の実施形態においては、乾燥工程(d)は、フラッシュ乾燥を使用して行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、約1分(min)~約24時間(h)(例えば、約5分~約23時間、約10分~約22時間、約20分~約21時間、約30分~約20時間、約40分~約19時間、約50分~約18時間、約1時間~約17時間、約2時間~約16時間、約3時間~約15時間、約4時間~約14時間、約5時間~約13時間、約6時間~約12時間、約7時間~約11時間、または約8時間~約10時間)の期間にわたり行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程は、約12時間~約24時間(例えば、約13時間~約23時間、約14時間~約22時間、約15時間~約21時間、約16時間~約20時間、または約17時間~約19時間)の期間にわたり行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、少なくとも約1分(例えば、少なくとも約5分、少なくとも約10分、少なくとも約20分、少なくとも約30分、少なくとも約40分、少なくとも約50分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、または少なくとも約9時間)、および/または長くとも約24時間(例えば、長くとも約23時間、長くとも約22時間、長くとも約21時間、長くとも約20時間、長くとも約19時間、長くとも約18時間、長くとも約17時間、長くとも約16時間、長くとも約15時間、長くとも約14時間、長くとも約13時間、長くとも約12時間、または長くとも約11時間)の期間にわたり行われる。幾つかの実施形態においては、工程(d)の乾燥は、約1bar~約30bar(例えば、約2bar~約29bar、約3bar~約28bar、約4bar~約27bar、約5bar~約26bar、約6bar~約25bar、約7bar~約24bar、約8bar~約23bar、約9bar~約22bar、約10bar~約21bar、約11bar~約20bar、約12bar~約19bar、約13bar~約18bar、約14bar~約17bar、または約15bar~約16bar)の圧力で行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、少なくとも約1bar(例えば、少なくとも約2bar、少なくとも約3bar、少なくとも約4bar、少なくとも約5bar、少なくとも約6bar、少なくとも約7bar、少なくとも約8bar、少なくとも約9bar、または少なくとも約10bar)、および/または高くとも約30bar(例えば、高くとも約25bar、高くとも約20bar、高くとも約15bar、高くとも約14bar、高くとも約13bar、高くとも約12bar、または高くとも約11bar)の圧力で行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、周囲圧力(例えば、約1bar)下で行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥は、2つ以上の異なる温度で(例えば、特定の温度で或る期間にわたり、次に異なる温度で別の期間にわたり)、2つ以上の異なる圧力で、および/または2つ以上の異なる時間枠にわたって行われる。乾燥工程(d)のための前述の方法パラメーターの様々な組み合わせを、適宜使用することができると理解されるべきである。
【0123】
特定の実施形態においては、水熱処理工程(c)および工程(d)の乾燥は、独立して不活性雰囲気または反応性雰囲気下で行われる。一例としては、幾つかの実施形態においては、工程(c)は、不活性雰囲気で行われ、かつ工程(d)は、不活性雰囲気で行われる。もう1つの例としては、特定の実施形態においては、工程(c)は、反応性雰囲気で行われ、かつ工程(d)は、不活性雰囲気で行われる。さらなる例としては、幾つかの実施形態においては、工程(c)は、不活性雰囲気で行われ、かつ工程(d)は、反応性雰囲気で行われる。さらにもう1つの例としては、幾つかの実施形態においては、工程(c)は、反応性雰囲気で行われ、かつ工程(d)は、反応性雰囲気で行われる。幾つかの実施形態においては、不活性雰囲気は、Arおよび/またはN2を含む。特定の実施形態においては、反応性雰囲気は、空気、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、および/またはアンモニアを含む。幾つかの実施形態においては、方法の工程(c)は、Arを含む不活性雰囲気、または空気もしくは二酸化炭素を含む反応性雰囲気の下で行われる。特定の実施形態においては、方法の乾燥工程(d)は、Arを含む不活性雰囲気、または空気もしくは二酸化炭素を含む反応性雰囲気の下で行われる。幾つかの実施形態においては、工程(c)および/または工程(d)は、空気中で行われる。
【0124】
幾つかの実施形態においては、反応性雰囲気は、ArまたはN2等の不活性ガスを含み得るが、ただし、該雰囲気のその他の成分は反応性である。例えば、空気は、一般的に不活性なN2と、反応性である酸素および微量のCO2との混合物である。こうして、反応性雰囲気という用語は、不活性ガスを含むが、ただし、該雰囲気中のガスの少なくとも1つが反応性であるガス組成物を除外しない。反応性雰囲気中の本明細書に記載される反応性ガスのパーセントは、少なくとも約10%で、かつ最大100%(体積基準)であってよく、約10体積%、約15体積%、約20体積%、約25体積%、約30体積%、約35体積%、約40体積%、約45体積%、約50体積%、約55体積%、約60体積%、約65体積%、約70体積%、約75体積%、約80体積%、約85体積%、約90体積%、約95体積%、または約100体積%が含まれ、これらの値のいずれかの間のすべての範囲および部分範囲が含まれる。本明細書に記載される反応性ガスおよび不活性ガスのあらゆる組み合わせを使用することができる。
【0125】
工程(c)において形成される水熱改質材料の乾燥のために使用される条件は、乾燥された水熱改質材料の基本特性(例えば、鉱物学)、例えば乾燥された水熱改質材料の元素浸出特性および/または孔隙率に影響を与え得る。幾つかの実施形態においては、工程(c)の水熱改質材料の乾燥工程(d)は、工程(c)の間に存在する上澄み(例えば、水相)の存在下での水熱改質材料の乾燥を含み得ることから、該上澄み中に溶解されるあらゆる化学種は、ともすれば乾燥された水熱改質材料の部分として回収される可能性がある。特定の実施形態においては、上澄みの少なくとも一部は、材料の乾燥工程(d)の前に水熱改質材料から、例えば、工程(c)からの水熱改質材料が製造される反応器から水の一部(または本質的にすべて)を傾瀉または濾過した後に、得られた材料を乾燥させることにより分離することができる。工程(c)からの水熱改質材料を上澄みの事前の除去/傾瀉をせずに乾燥させる場合に、乾燥は、所望のガス流のような任意の適切な手段を介して、そのガスが工程(c)において生成されるスラリー(すなわち、上澄み中に懸濁された水熱改質材料の混合物)上を流れるように行うことができる。特定の実施形態においては、工程(c)からの水熱改質材料の上澄みの存在下での乾燥は、限定されるものではないが、スラリー中を直接通過するバブリングを含む当該技術分野で公知の任意の適切な方法によって行うことができる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、断熱乾燥または非断熱乾燥を含む。断熱乾燥機では、固体材料は、表面全体にわたってガスを吹き込む(交差循環)、固体床にガスを吹き込む(通気循環)、固体をゆっくりと移動するガス流を通じて滴下する(回転乾燥機中で)、粒子を流動化する固体床を通じてガスを吹き込む(すなわち、流動床乾燥機)、そして固体を高速の高温ガス流に通過させること(フラッシュ乾燥)のような方法を介して加熱されたガスにさらすことができる。乾燥は、限定されるものではないが、直接的(対流)、間接的(伝導)、放射性、または誘電性を含む熱伝導の任意の適切な機構により行われる。幾つかの実施形態においては、製造された水熱改質材料を、例えば炉乾燥させることで、乾燥された水熱改質材料が製造される。幾つかの実施形態においては、炉乾燥は、約90℃で18時間の期間にわたり行われる。
【0126】
様々な実施形態においては、乾燥工程(d)は、上澄み(水)の存在下で行われ、または上澄みの少なくとも一部が前記のように分離された後に、空気、アルゴン、二酸化炭素、真空、もしくはそれらの任意の組み合わせが使用される。特定の実施形態においては、乾燥工程(d)は、アンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、空気、またはそれらの組み合わせを含む1種以上の反応性ガスを用いて行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、アルゴンまたは窒素等の1種以上の不活性ガスを用いて行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、空気を用いて行われる。特定の実施形態においては、乾燥工程(d)は、Arを用いて行われる。幾つかの実施形態においては、乾燥工程(d)は、二酸化炭素を用いて行われる。特定の実施形態においては、乾燥工程(d)は、真空下で行われる。幾つかの実施形態においては、材料は、乾燥工程(d)でフラッシュ乾燥される。
【0127】
様々な実施形態においては、本開示は、容易にイオン(例えば、アルカリ金属イオン、例えばK+)を放出する水熱改質材料および/または乾燥された水熱改質材料を製造する方法を提供する。工程(a)においては、該方法は、様々な実施形態においては、例えばアルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、およびアルカリ土類金属水酸化物、ならびにそれらの組み合わせから選択される1種以上の化合物であり得る1種以上の原材料(a1)の粒子と、1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩出発材料を含み得る原材料(a2)とを含む供給混合物(または供給原料)を形成することを含み得る。工程(b)においては、工程(a)の混合物を水と接触させることができる。工程(c)においては、工程(b)の供給混合物を、水熱改質材料の形成に十分な時間にわたり温度および圧力にさらすことができ、その際に、アルカリ金属ケイ酸塩出発材料(a2)は、例えば(a1)成分中に存在するイオンと出発(a2)成分中に存在するイオンとの交換により改変される。得られた水熱改質材料は、例えば(c1)最大約15質量%の(a1)の1種以上の化合物のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む(a2)のアルカリ金属ケイ酸塩の改変形および/または非改変形と、(c2)アルカリ土類金属イオンで本質的に富化された1種以上のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩相とを含み得る。本開示のその他の様々な実施形態においては、水熱改質材料は、(c1)最大約1質量%、最大約2質量%、最大約3質量%、最大約4質量%、最大約5質量%、最大約6質量%、最大約7質量%、最大約8質量%、最大約9質量%、最大約10質量%、最大約11質量%、最大約12質量%、最大約13質量%、最大約14質量%、最大約15質量%(その間の値のすべての範囲を含む)の(a1)の1種以上の化合物のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む(a2)の改変形および/または非改変形を含む。工程(d)においては、水熱改質材料を乾燥させることで、例えばアルカリ金属イオン(K+、Na+等)等のイオン性化学種、またはケイ酸イオン等の、ケイ酸塩、Mg2+、Ca2+等を含むその他のイオン性化学種をより容易に放出する乾燥された水熱改質材料が形成される。
【0128】
幾つかの実施形態においては、本開示は、製造の元となる前記1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩出発材料(例えば、アルミノケイ酸カリウムを含む)と比較して改善されたアルカリ金属(またはその他の)イオンの放出を有する乾燥された水熱改質材料の製造方法を提供する。
【0129】
本開示の様々な実施形態においては、水熱改質材料および/または乾燥された水熱改質材料は、例えばアルカリ金属イオン放出材料(例えば、K+イオン放出材料、および/またはNa+イオン放出材料)等のイオン放出材料である。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、アルカリ土類金属イオン放出材料(例えば、Ca2+イオン放出材料、および/またはMg2+イオン放出材料)である。幾つかの実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、アルミニウムイオン(例えば、Al3+)放出材料である。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、Siを、例えばケイ酸塩の形で放出する。
【0130】
前記のような様々な実施形態においては、供給原料混合物は、(a1)からの1種以上の化合物と、(a2)からの1種以上の化合物とを含む。幾つかの実施形態においては、該混合物は、カルシウム含有化合物とケイ素含有化合物とを含む。本開示の様々な実施形態においては、カルシウム含有成分(すなわち、CaO、Ca(OH)2、CaCO3)対ケイ素含有材料(すなわち、アルミノケイ酸カリウム等のアルカリ金属アルミノケイ酸塩)の比率は、乾燥された水熱改質材料の鉱物学、浸出、緩衝能力、およびその他の特性を変調するために使用することができる。
【0131】
理論に縛られることを望むものではないが、特定の実施形態においては、供給原料中のCa/Si比を増加させると、生成物形成が、ケイ酸二カルシウム水和物および/または非晶質相の形成の方向に向かうと考えられる。特定の実施形態においては、供給原料中のCa/Si比の増加は、トバモライト相を減少させる同時作用を有する。幾つかの実施形態においては、ケイ酸二カルシウム水和物相は、供給混合物中のCa/Si比を増加させることにより、トバモライト相よりも高いレベルで得ることができる。様々な実施形態においては、Ca/Si比は、約0.025~約0.9である。特定の実施形態においては、Ca/Si比は、約0.025、約0.05、約0.075、約0.1、約0.125、約0.150、約0.175、約0.2、約0.225、約0.250、約0.275、約0.3、約0.325、約0.350、約0.375、約0.4、約0.425、約0.450、約0.475、約0.5、約0.525、約0.550、約0.575、約0.6、約0.625、約0.650、約0.675、約0.7、約0.725、約0.750、約0.775、約0.8、約0.825、約0.850、約0.875、約0.90であり、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0132】
幾つかの開示においては、乾燥された水熱改質材料は、約15質量%~65質量%のカリ長石相、約0質量%~5質量%のトバモライト相、約0質量%~20質量%のハイドロガーネット相、約5質量%~30質量%のケイ酸二カルシウム水和物相、約15質量%~35質量%の非晶質相を含む。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約15質量%のカリ長石相、約18質量%のハイドロガーネット相、約30質量%のケイ酸二カルシウム水和物相、および約35質量%の非晶質相を含む。
【0133】
様々な実施形態においては、本開示の水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約45質量%~65質量%のカリ長石相、約1質量%~10質量%のトバモライト相、約1質量%~10質量%のハイドロガーネット相、約1質量%~10質量%のケイ酸二カルシウム水和物相、および約20質量%~40質量%の非晶質相を含む。
【0134】
特定の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約35質量%、約36質量%、約37質量%、約38質量%、約39質量%、約40質量%、約41質量%、約42質量%、約43質量%、約44質量%、約45質量%のカリ長石相、約46質量%、約47質量%、約48質量%、約49質量%、約50質量%、約51質量%、約52質量%、約53質量%、約54質量%、約55質量%、約56質量%、約57質量%、約58質量%、約59質量%、約60質量%、約61質量%、約62質量%、約63質量%、約64質量%、約65質量%、約66質量%、約67質量%、約68質量%、約69質量%、約70質量%、約71質量%、約72質量%、約73質量%、約74質量%、約75質量%のカリ長石改変相(すなわち、供給原料中に存在するカリ長石相と比べて改変されている)を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。
【0135】
その他の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、約11質量%、約12質量%、約13質量%、約14質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、約20質量%のトバモライト相を含み、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0136】
様々な実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、11質量%、約12質量%、約13質量%、約14質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、約20質量%のハイドロガーネット相を含み、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0137】
幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、約11質量%、約12質量%、約13質量%、約14質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、約20質量%のケイ酸二カルシウム水和物相を含み、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0138】
特定の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約10質量%、約12質量%、約14質量%、約16質量%、約18質量%、約20質量%、約22質量%、約24質量%、約26質量%、約28質量%、約30質量%、約32質量%、約34質量%、約36質量%、約38質量%、約40質量%、約42質量%、約44質量%、約46質量%、約48質量%、約50質量%の非晶質相を含み、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0139】
幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、炭素質化学種をさらに含む。特定の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約0質量%~20質量%の炭素質化学種を含む。幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約0質量%、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、約11質量%、約12質量%、約13質量%、約14質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、約20質量%の炭素質化学種を含み、これらの値のいずれかの間のすべての範囲および値が含まれる。炭素質化学種は、例えばK2CO3、Na2CO3、MgCO3、および/またはCaCO3を含み得る。幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含む。様々な実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含む。幾つかの実施形態においては、それらの炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムの組み合わせは、ビュチイライト(buetschiilite)および/またはフェアチルダイトを含む。理論により縛られることを望むものではないが、炭酸塩は、材料のpH特性の調節に寄与することができ、大気CO2を捕捉するために使用することができると考えられる。様々な実施形態においては、炭素質化学種は、方解石相である。幾つかの実施形態においては、方解石相は、約0質量%(例えば、多くともわずかな微量でしか存在しない)、約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%、約11質量%、約12質量%、約13質量%、約14質量%、約15質量%、約16質量%、約17質量%、約18質量%、約19質量%、約20質量%で存在し、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。特定の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、水溶液のpHを約10~約12の範囲に高める。水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料のこの特徴は、土壌の健康を改善し、かつ/または農業で有害となり得る酸性度のレベルを低下させることができる。したがって、本開示の水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、石灰またはその他のpHを変更する土壌調整剤を置き換えるか、またはその必要性を減らすことができる。
【0140】
理論により縛られることを望むものではないが、乾燥工程(d)の間にCO2を含むガスを使用することで、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)相がCO2にさらされるときに起こる脱灰反応が促進され得る。幾つかの実施形態においては、CO2を含む雰囲気下で起こる脱灰は、C-S-H相のカルシウムの脱灰によって提供される方解石(すなわち、CaCO3の安定な多形形態)相の生成をもたらす。特定の実施形態においては、方解石相がカリウムの捕捉の原因となることから、カリウムの比較的遅いまたは連続的な放出を示す乾燥された水熱改質材料が得られると考えられる。幾つかの実施形態においては、変更されたカリウム放出は、乾燥中にCO2にさらされていないその他の点では同一の材料と比べたカリウム放出より遅く、より長い期間におよぶ。幾つかの実施形態においては、C-S-Hの脱灰は、二酸化ケイ素(SiO2)の生成をもたらすと考えられる。特定の実施形態においては、C-S-H相の脱灰は、乾燥された水熱改質材料中のハイドロガーネットの脱灰を伴うことから、酸化アルミニウム(Al2O3)のさらなる生成が引き起こされると考えられる。
【0141】
開示された方法は、回分法で、または連続的条件下で行うことができる。幾つかの実施形態においては、(c2)のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩相は、最大約23質量%のアルカリ土類金属イオンを含む。特定の実施形態においては、(c2)のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩は、最大約1質量%、最大約2質量%、最大約3質量%、最大約4質量%、最大約5質量%、最大約6質量%、最大約7質量%、最大約8質量%、最大約9質量%、最大約10質量%、最大約11質量%、最大約12質量%、最大約13質量%、最大約14質量%、最大約15質量%、最大約16質量%、最大約17質量%、最大約18質量%、最大約19質量%、最大約20質量%、最大約21質量%、最大約22質量%、最大約23%のアルカリ土類金属イオンを含み、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0142】
幾つかの実施形態においては、(c2)のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩相は、平均で約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%のアルカリ土類金属イオンを含み、それらの間の値のすべての範囲が含まれる。特定の実施形態においては、(c2)のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ケイ酸塩相は、平均で約3質量%のアルカリ土類金属イオンを含む。
【0143】
本明細書に開示されている材料の多くは、X線粉末回折(XRPD)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)、粒度分布(PSD)、比表面積(BET法による;BET-SSA)によって特徴付けられ、回分浸出試験(ならびに当業者に公知のその他の技術)は、実際に上記の望ましい特性を有している。本発明の材料の鉱物学の理解は、XRPDの結果(例えば、
図4E)およびイメージング(例えば、
図14および
図15)から得られ、こうして水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料を構成する鉱物相は、化学量論的化学式に関する元素内包の程度と同様に、特定および定量化され得る。例示的なアルカリ金属ケイ酸塩出発物質としての長石骨格は、構造的変化および化学的変化、本明細書で改変または改変されたと称される現象を受けることが観察された。
【0144】
特性評価から、前記材料が複雑な鉱物学および化学的特性を示すことが判明した。幾つかの実施形態においては、粒度分布は、約0.1μm~約100μmの粒径におよぶ。その他の実施形態においては、構成鉱物相は、改変カリ長石相、ハイドロガーネット、α-ケイ酸二カルシウム水和物、11Åトバモライト、および非晶質カルシウムアルミノケイ酸塩水和物化合物である。特定の実施形態において、インサイチューで核形成された相は、Ca、Al、およびSiの非化学量論的含量を示し、ハイドロガーネット以外、すべての鉱物構造において大規模なK内包の度合いが観察される。特定の実施形態においては、様々なレベルのKおよびCaを有する微量の炭素質化学種も該材料の構成成分である。様々な実施形態においては、改変カリ長石は、Ca置換されている。幾つかの実施形態では、浸出に際して、乾燥された水熱改質材料中のK、Si、Al、およびCaの利用可能性は、起源となる超カリウム質閃長岩原材料に対して高められ、その際、乾燥された水熱改質材料から24時間後に放出されるカリウムは、対応する超カリウム質閃長岩原材料中よりも2桁高いことが示されている。
【0145】
本開示の幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される方法により提供される水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約5μm~1000μmの直径の範囲の粒子を含むマルチモーダルな粒度分布を含む。本開示のさらにもう1つの実施形態においては、本開示の水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約100μm~1000μmのサイズの範囲の凝集粒子を含む。幾つかの実施形態においては、BET法による比表面積(BET-SSA)は、乾燥された水熱改質材料については15.1m2g-1であり、供給混合物については46.9m2g-1であった。
【0146】
様々な実施形態においては、開示される水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、約0.5μm~約250μmの平均粒度範囲を有する。特定の実施形態においては、平均粒度は、約0.5μm、約1μm、約1.5μm、約2μm、約2.5μm、約3μm、約3.5μm、約4μm、約4.5μm、約5μm、約5.5μm、約6μm、約6.5μm、約7μm、約7.5μm、約8μm、約8.5μm、約9μm、約9.5μm、約10μm、約20μm、約30μm、約40μm、約50μm、約60μm、約70μm、約80μm、約90μm、約100μm、約110μm、約120μm、約130μm、約140μm、約150μm、約160μm、約170μm、約180μm、約190μm、約200μm、約210μm、約220μm、約230μm、約240μm、約250μm、約260μm、約270μm、約280μm、約290μm、約330μmであり、これらの値のいずれかの間のすべての範囲が含まれる。
【0147】
本明細書では、その他の新たに理解された特徴に加えて、複雑な鉱物学を使用して、乾燥された水熱改質材料の浸出能力を調整することができると認識される。特に、浸出実験(例えば、
図24、
図9B)は、水との接触に際しての鉱物相の化学的安定性を評価するために使用された。この領域における化学的安定性は、植物の栄養素を放出する能力に関連して理解されており、農業の文脈で状況を説明する必要がある。そのような理解により、乾燥された水熱改質材料は、その他の産業でも同様に利用可能な用途に関して、さらにより広く多様な土壌の要求を満たすように設計および製造することができる。
【0148】
本開示全体および以下の実施例で詳細に説明されるように、乾燥された水熱改質材料の顕著な特徴は、浸出試験により証明されるように、カリウム(K
+)の利用可能性である(代表例については
図24を参照)。
【0149】
理論に縛られることを望むものではないが、本明細書で提示された証拠は、そのような強化されたK利用可能性のメカニズムが、カリ長石のCa媒介性の水熱改質、すなわちK+ではなくCa2+の内包と結びついたカリ長石骨格の加水分解性溶解であることを示す。幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、例えばK+等の金属イオンを放出する。
【0150】
本明細書で使用される場合に、「24時間のカリウム放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の材料は、10倍過剰の10-5MのHNO3に24時間さらされる。24時間の期間の間で材料から放出されるカリウムイオンの量は、24時間のカリウム放出試験による材料のカリウム放出である。24時間のカリウム放出試験によるカリウム放出の量を比較した場合に、異なる材料のそれぞれについて試験される材料の量は同じである。
【0151】
幾つかの実施形態においては、24時間のカリウム放出試験によれば、乾燥された水熱改質材料から放出されるK+の量は、(a2)の1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩出発材料により放出されるK+の量より少なくとも2倍高い。様々な実施形態においては、24時間のカリウム放出試験によれば、乾燥された水熱改質材料から放出されるK+の量は、(a2)の1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩出発材料により放出されるK+の量に対して、2倍高く、3倍高く、4倍高く、5倍高く、6倍高く、7倍高く、8倍高く、9倍高く、10倍高く、15倍高く、20倍高く、25倍高く、30倍高く、35倍高く、40倍高く、45倍高く、50倍高く、55倍高く、60倍高く、65倍高く、70倍高く、75倍高く、80倍高く、85倍高く、90倍高く、95倍高く、100倍高く、150倍高く、200倍高く、250倍高く、300倍高く、350倍高く、400倍高く、450倍高く、または500倍高く、それらの間のすべての値が含まれる。
【0152】
幾つかの実施形態においては、24時間のカリウム放出試験による乾燥された水熱改質材料から放出されるK+の量は、約5gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)~約25のK+/kg(乾燥された水熱改質材料)の範囲である。特定の実施形態においては、24時間のカリウム放出試験による放出されるK+の量は、約5gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約6gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約7gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約8gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約9gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約10gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約11gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約12gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約13gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約14gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約15gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約14gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約16gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約14gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約17gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約18gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約19gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約20gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約21gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約22gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約23gのK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約24のK+/kg(乾燥された水熱改質材料)、または約25のK+/kg(乾燥された水熱改質材料)であり、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0153】
特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料からのカリウム放出は、pH5のCsNO3/HNO3の溶液を使用することにより増強される。様々な実施形態においては、10倍過剰の10-5MのCsNO3/HNO3に24時間さらした後の乾燥された水熱改質材料からのK放出は、HNO3のpH5の浸出溶液中での同じ材料のK放出より約1.1倍~約2倍高い。幾つかの実施形態においては、浸出は、約1.1倍高く、約1.2倍高く、約1.3倍高く、約1.4倍高く、約1.5倍高く、約1.6倍高く、約1.7倍高く、約1.8倍高く、約1.9倍高く、約2倍高く、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。何ら特定の理論により縛られるものではないが、その固体の成分は、Cs+の取り込みおよびK+の放出を促進すると考えられる。
【0154】
本明細書で使用される場合に、「1分間のカリウム放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の材料は、10倍過剰の10-5MのHNO3に1分間さらされる。1分間の期間の間で材料から放出されるカリウムイオンの量は、1分間のカリウム放出試験による材料のカリウム放出である。幾つかの実施形態においては、1分間のカリウム放出試験によれば、乾燥された水熱改質材料は、1キログラムの乾燥された水熱改質材料当たり、少なくとも5000mg(例えば、少なくとも6000mg、少なくとも7000mg、少なくとも8000mg、少なくとも9000mg、少なくとも10000mg、少なくとも11000mg)のカリウムを放出する。
【0155】
幾つかの実施形態においては、相対的に多量のカリウムが最初に、乾燥された水熱改質材料から放出され、引き続き相対的に少量のカリウムが、延長された期間にわたって放出される。これは、例えばX/Y(ここで、Xは、1分間のカリウム放出試験による材料により放出されるカリウムの量であり、かつYは、1分間のカリウム放出試験による材料により放出されるカリウムの量より少ない24時間のカリウム放出による材料により放出されるカリウムの量である)として定義される「相対カリウム」放出の測定により定量化することができる。幾つかの実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約5~約20(例えば、約7~約15、約9~約12)の相対カリウム放出を有する。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、少なくとも約5(例えば、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13)、および/または高くとも約20(例えば、高くとも約19、高くとも約18、高くとも約17、高くとも約16、高くとも約15、高くとも約14)の相対カリウム放出を有する。
【0156】
幾つかの実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、Kに加えて他の元素を放出することが可能である。様々な実施形態においては、材料からの放出が可能なさらなる元素は、Al、Si、Ca、Na、およびMg(例えば、示された元素をイオン形で含み得る可溶性塩の形で)を含む。
【0157】
本明細書で使用される場合に、「24時間のカルシウム放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の材料は、10倍過剰の10-5MのHNO3に24時間さらされる。24時間の期間の間で材料から放出されるカルシウムイオンの量は、24時間のカルシウム放出試験による材料のカルシウム放出である。24時間のカルシウム放出試験によるカルシウム放出の量を比較した場合に、異なる材料のそれぞれについて試験される材料の量は同じである。
【0158】
本開示の特定の実施形態においては、24時間のカリウム放出試験によれば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料から放出されるCa2+の量は、約0.01gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)~約0.35gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)の範囲である。幾つかの実施形態においては、24時間のカルシウム放出試験による放出されるCa2+の量は、約0.01gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.025gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.05gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.075gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.1gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.125gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.15gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.175gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.2gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.225gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.25gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.275gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.3gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.325gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.35gのCa2+/kg(乾燥された水熱改質材料)であり、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0159】
本明細書で使用される場合に、「24時間のアルミニウム放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の材料は、10倍過剰の10fMのHNO3に24時間さらされる。24時間の期間の間で材料から放出されるアルミニウムイオンの量は、24時間のアルミニウム放出試験による材料のアルミニウム放出である。24時間のアルミニウム放出試験によるアルミニウム放出の量を比較した場合に、異なる材料のそれぞれについて試験される材料の量は同じである。
【0160】
本開示の幾つかの実施形態においては、24時間のアルミニウム放出試験によれば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料から放出されるAl3+の量は、約0.02gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)~約0.35gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)の範囲である。幾つかの実施形態においては、24時間のアルミニウム放出試験による放出されるAl3+の量は、約0.02gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.05gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.075gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.1gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.125gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.15gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.175gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.2gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.225gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.25gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.275gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.3gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.325gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.35gのAl3+/kg(乾燥された水熱改質材料)であり、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0161】
本明細書で使用される場合に、「24時間のケイ素放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の材料は、10倍過剰の10-5MのHNO3に24時間さらされる。24時間の期間の間で材料から放出されるケイ素の量は、24時間のケイ素放出試験による材料のケイ素放出(例えば、オルトケイ酸およびそのオリゴマー形またはポリマー形を含む可溶性ケイ酸塩の形で)である。24時間のケイ素放出試験によるケイ素放出の量を比較した場合に、異なる材料のそれぞれについて試験される材料の量は同じである。
【0162】
幾つかの実施形態においては、24時間のケイ素放出試験によれば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料から放出されるケイ素の量は、約0.1gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)~約1.5gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)の範囲である。特定の実施形態においては、24時間のケイ素放出試験による放出されるケイ素の量は、約0.1gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.2gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.3gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.4gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.5gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.6gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.7gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.8gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.9gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約1gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約1.1gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約1.2gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約1.3gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約1.4gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)、約1.5gのケイ素/kg(乾燥された水熱改質材料)であり、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0163】
本明細書で使用される場合に、「24時間のナトリウム放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、10倍過剰の10-5MのHNO3に24時間さらされる。24時間の期間の間で材料から放出されるナトリウムの量は、24時間のナトリウム放出試験による材料のナトリウム放出である。24時間のナトリウム放出試験によるナトリウム放出の量を比較した場合に、異なる材料のそれぞれについて試験される材料の量は同じである。
【0164】
さらにもう1つの実施形態においては、24時間のナトリウム放出試験によれば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料から放出されるNa+の量は、約0.01gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)~約0.1gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)の範囲である。さらにもう1つの実施形態においては、24時間のナトリウム放出試験による放出されるNa+の量は、約0.01gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.015gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.02gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.025gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.03gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.035gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.04gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.045gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.05gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.055gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.06gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.065gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.07gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.075gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.08gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.085gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.09gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.095gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.1gのNa+/kg(乾燥された水熱改質材料)であり、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0165】
本明細書で使用される場合に、「24時間のマグネシウム放出試験」は、以下の通りに実施される。ある量の水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、10倍過剰の10-5MのHNO3に24時間さらされる。24時間の期間の間で材料から放出されるマグネシウムイオンの量は、24時間のマグネシウム放出試験による材料のマグネシウム放出である。24時間のマグネシウム放出試験によるマグネシウム放出の量を比較した場合に、異なる材料のそれぞれについて試験される材料の量は同じである。
【0166】
本開示の幾つかの実施形態においては、24時間のマグネシウム放出試験によれば、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料から放出されるマグネシウムの量は、約0.01gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)~約0.1gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)の範囲である。幾つかの実施形態においては、24時間のマグネシウム放出試験による放出されるMg2+の量は、約0.01gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.015gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.02gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.025gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.03gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.035gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.04gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.045gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.05gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.055gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.06gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.065gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.07gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.075gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.08gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.085gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.09gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.095gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)、約0.1gのMg2+/kg(乾燥された水熱改質材料)であり、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0167】
上記に基づき、理論により縛られることを望むものではないが、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料の鉱物学は、熱帯土壌に適切であると考えられる。様々な実施形態においては、本明細書に記載される改変カリ長石は、潜在的な栄養貯留物であり、土質力学に積極的に寄与する。ハイドロガーネットはAlを効果的に安定化するが、α-ケイ酸二カルシウム水和物、11Åのトバモライト、および非晶質のケイ酸カルシウム水和物は、K、Si、Ca、およびアルカリ性の起源であると考えられる。より高いアルカリ性では、石灰施用のための代用を利用可能である場合がある。トバモライトは、特にこの研究で確認されたような同形内包が生ずる場合に、イオン交換体として機能し得る(第1表、ESI-EPMA)。さらに、Al置換トバモライトは、Csあるいはその他の重金属に対して高い選択性を示し得ることから、汚染土壌の修復に特に有用である場合がある。そのような鉱物相の電荷は、土壌にさらに利益をもたらすことが想定される。より低いpHでは、土壌コロイドは正に帯電し、硝酸イオンおよびリン酸イオン等のアニオンを保持するが、より高いpHでは負の電荷がカチオンを保持する。乾燥された水熱改質材料の主要な鉱物相は、極端に低いpHでない限り、負の表面電荷を有すると予想される。長石自身は、約2より高いpHで負の表面電荷を有する。そのような値は土壌溶液のイオン強度により影響されるが、改変された長石含分単独は、直ちに利用可能なK+の損失の制限を補助し得るだけでなく、Al3+およびFe2+/3+の積極的な隔離にも寄与する。
【0168】
幾つかの実施形態においては、本明細書に記載される乾燥された水熱改質材料は、1種以上の元素(例えば、K、Ca、Mg、Na、Al、および/またはSi)の第1の部分を相対的に迅速に(例えば、易水溶性であり、水との接触の数分または数時間以内に溶解する)放出する能力を有するが、1種以上の追加の部分は、相対的に遅延されたおよび/または連続的な様式で延長された期間にわたって放出される(例えば、より低い可溶性形であり、数日ないし数週間ないし数ヶ月の期間にわたりよりゆっくりと放出する)。したがって、幾つかの実施形態においては、本明細書に開示される乾燥された水熱改質材料は、上記のような相対的に迅速なKの放出と相対的に遅いKの放出の両方を有する望ましい特性を有する。
【0169】
幾つかの実施形態においては、主として相対的に遅いKの放出を有する乾燥された水熱改質材料は、乾燥された材料を不活性ガスでパージされた水によりすすぐことにより製造され得る。そのような処理は、可溶性のKを除去し、遅延放出および連続放出が可能なカリウムを残すと考えられる。特定の実施形態においては、すすぎ後の材料は、未すすぎの材料で利用可能なカリウムの約1%~約20%を放出する。幾つかの実施形態においては、すすぎ後の材料は、未すすぎの材料で利用可能なカリウムの約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%を放出し、それらの間のすべての値および範囲が含まれる。
【0170】
幾つかの実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、例えば塩素を含まないKの即時供給源を作物に提供し得る即時可溶性の炭素質成分または水酸化物成分(例えば、水酸化カリウム)を有すると考えられる。しかしながら、幾つかの実施形態においては、乾燥された水熱改質材料から放出されるKの相対的に少量の相対的に延長された放出部分は、幾つかの相の間で再分配されるため、より遅い速度で利用可能となる可能性がある。
【0171】
様々な実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、肥料である。幾つかの実施形態においては、肥料は、K+肥料である。特定の実施形態においては、肥料は、Ca2+肥料である。幾つかの実施形態においては、肥料は、Na+肥料である。特定の実施形態においては、肥料は、Mg2+肥料である。幾つかの実施形態においては、肥料は、ケイ素肥料である。特定の実施形態においては、肥料は、多栄養肥料(例えば、この段落に示される1種以上の化学種を放出することによる)である。
【0172】
本開示の様々な実施形態においては、放出に利用可能なカチオン性元素が、1つ以上の工程において、例えば工程(d)における乾燥の間に、または工程(c)の間に交換され得ることも分かった。これらのイオン交換特性は、金属イオン放出材料を、限定されるものではないが、土壌修復(Cs+またはCd2+)および遅延N放出肥料(NH4
+)を含む特定の用途に適応させるのに有用である場合がある。幾つかの実施形態において、遅延放出肥料である乾燥された水熱改質材料は、植物のシグナル(例えば、滲出液の排泄)に応答して、鉱物交換を介して特定の栄養素の放出をもたらすことができる。様々な実施形態においては、有益で驚くべきほど適切な金属イオン放出は、一部では、乾燥された水熱改質材料の前述のイオン交換特性によるものである。
【0173】
本明細書に記載される方法の調整可能な性質は、反応、処理、および乾燥条件の変更を介して、本開示全体にわたって記載される様々な範囲の鉱物相を有する任意の数の異なる組成の形成を可能にする。
【0174】
様々な実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、改変されたアルミノケイ酸カリウム(例えば、原材料のアルミノケイ酸格子中に当初に存在していたカリウムの少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、または約30%がCa2+等の別のカチオンと置き換えられているアルミノケイ酸カリウム)、アルミノケイ酸カルシウム、およびケイ酸カルシウム水和物を含み、その際、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料中の利用可能なカリウムの量は、材料の全カリウム含量の少なくとも約10質量%であり、ここで、1質量部の粉末化材料を初期pH5を有する10質量部のHNO3中で24時間にわたり撹拌することを含む浸出条件に供した場合に溶解されるカリウムの量である。幾つかの実施形態においては、利用可能なカリウムの量は、材料の全カリウム含量の少なくとも約1質量%、少なくとも約2質量%、少なくとも約3質量%、少なくとも約4質量%、少なくとも約5質量%、少なくとも約6質量%、少なくとも約7質量%、少なくとも約8質量%、少なくとも約9質量%、少なくとも約10質量%、少なくとも約11質量%、少なくとも約12質量%、少なくとも約13質量%、少なくとも約14質量%、少なくとも約15質量%、少なくとも約16質量%、少なくとも約17質量%、少なくとも約18質量%、少なくとも約19質量%、または少なくとも約20質量%である。特定の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、少なくとも約1質量%~10質量%の格子のカリウムがカルシウムと交換された超カリウム質閃長岩を含む。幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、少なくとも約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、または約10%を有する超カリウム質閃長岩を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。
【0175】
幾つかの実施形態においては、約45質量%~65質量%の改変されたカリウム長石相、約1質量%~10質量%のトバモライト相、約1質量%~10質量%のハイドロガーネット相、約1質量%~10質量%のケイ酸二カルシウム水和物相、および約20質量%~40質量%の非晶質相を含む乾燥された水熱改質材料が提供される。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約45質量%のカリ長石相、約46質量%、約47質量%、約48質量%、約49質量%、約50質量%、約51質量%、約52質量%、約53質量%、約54質量%、約55質量%、約56質量%、約57質量%、約58質量%、約59質量%、約60質量%、約61質量%、約62質量%、約63質量%、約64質量%、約65質量%のカリ長石相を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。その他の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約1質量%のトバモライト相、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%のトバモライト相を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約1質量%のハイドロガーネット相、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%のハイドロガーネット相を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。幾つかの実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約1質量%のケイ酸二カルシウム水和物相、約2質量%、約3質量%、約4質量%、約5質量%、約6質量%、約7質量%、約8質量%、約9質量%、約10質量%のケイ酸二カルシウム水和物相を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。特定のその他の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料は、約20質量%の非晶質相、約22質量%、約24質量%、約26質量%、約28質量%、約30質量%、約32質量%、約34質量%、約36質量%、約38質量%、約40質量%の非晶質相を含み、それらの間のすべての範囲および値が含まれる。
【0176】
幾つかの実施形態においては、本明細書に開示される水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、1種以上の炭酸塩、例えばK2CO3、Na2CO3、MgCO3、CaCO3、およびそれらの組み合わせをさらに含む。幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含む。特定の実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、およびそれらの任意の組み合わせをさらに含む。幾つかの実施形態においては、それらの炭酸カリウムおよび炭酸カルシウムの組み合わせは、ビュチイライトおよび/またはフェアチルダイトを含む。
【0177】
幾つかの実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料であって、該材料が前記浸出条件に供されると以下の元素の1種以上:少なくとも約1000ppmのSi、少なくとも約200ppmのAl、少なくとも約200ppmのCa、約5ppmのNa、および少なくとも約5ppmのMgが溶解される材料が提供される。幾つかの実施形態においては、少なくとも約50ppmのSi、少なくとも約100ppmのSi、少なくとも約150ppmのSi、少なくとも約200ppmのSi、少なくとも約250ppmのSi、少なくとも約300ppmのSi、少なくとも約350ppmのSi、少なくとも約400ppmのSi、少なくとも約450ppmのSi、少なくとも約500ppmのSi、少なくとも約550ppmのSi、少なくとも約600ppmのSi、少なくとも約650ppmのSi、少なくとも約700ppmのSi、少なくとも約750ppmのSi、少なくとも約800ppmのSi、少なくとも約850ppmのSi、少なくとも約900ppmのSi、少なくとも約950ppmのSi、少なくとも約1000ppmのSi、少なくとも約1050ppmのSi、少なくとも約1100ppmのSi、少なくとも約1150ppmのSi、少なくとも約1200ppmのSi、少なくとも約1250ppmのSi、少なくとも約1300ppmのSi、少なくとも約1350ppmのSi、少なくとも約1400ppmのSi、少なくとも約1450ppmのSi、少なくとも約1500ppmのSi、少なくとも約1550ppmのSi(それらの間のすべての値が含まれる)は、該材料が前記条件に供されると溶解される。様々な実施形態においては、少なくとも約10ppmのAl、少なくとも約20ppmのAl、少なくとも約30ppmのAl、少なくとも約40ppmのAl、少なくとも約50ppmのAl、少なくとも約60ppmのAl、少なくとも約70ppmのAl、少なくとも約80ppmのAl、少なくとも約90ppmのAl、少なくとも約100ppmのAl、少なくとも約110ppmのAl、少なくとも約120ppmのAl、少なくとも約130ppmのAl、少なくとも約140ppmのAl、少なくとも約150ppmのAl、少なくとも約160ppmのAl、少なくとも約170ppmのAl、少なくとも約180ppmのAl、少なくとも約190ppmのAl、少なくとも約200ppmのAl、少なくとも約210ppmのAl、少なくとも約220ppmのAl、少なくとも約230ppmのAl、少なくとも約240ppmのAl、少なくとも約250ppmのAl、少なくとも約260ppmのAl、少なくとも約270ppmのAl、少なくとも約280ppmのAl、少なくとも約290ppmのAl、または少なくとも約300ppmのAl(それらの間のすべての値が含まれる)は、該材料が前記条件に供されると溶解される。特定の実施形態においては、少なくとも約10ppmのCa、少なくとも約20ppmのCa、少なくとも約30ppmのCa、少なくとも約40ppmのCa、少なくとも約50ppmのCa、少なくとも約60ppmのCa、少なくとも約70ppmのCa、少なくとも約80ppmのCa、少なくとも約90ppmのCa、少なくとも約100ppmのCa、少なくとも約110ppmのCa、少なくとも約120ppmのCa、少なくとも約130ppmのCa、少なくとも約140ppmのCa、少なくとも約150ppmのCa、少なくとも約160ppmのCa、少なくとも約170ppmのCa、少なくとも約180ppmのCa、少なくとも約190ppmのCa、少なくとも約200ppmのCa、少なくとも約210ppmのCa、少なくとも約220ppmのCa、少なくとも約230ppmのCa、少なくとも約240ppmのCa、少なくとも約250ppmのCa、少なくとも約260ppmのCa、少なくとも約270ppmのCa、少なくとも約280ppmのCa、少なくとも約290ppmのCa、少なくとも約300ppmのCa、少なくとも約310ppmのCa、少なくとも約320ppmのCa、少なくとも約330ppmのCa、少なくとも約340ppmのCa、少なくとも約350ppmのCa、少なくとも約360ppmのCa、少なくとも約370ppmのCa、少なくとも約380ppmのCa、少なくとも約390ppmのCa、または少なくとも約400ppmのCa(それらの間のすべての値が含まれる)は、該材料が前記条件に供されると溶解される。幾つかの実施形態においては、少なくとも約0.25ppmのMg、少なくとも約0.5ppmのMg、少なくとも約0.75ppmのMg、少なくとも約1ppmのMg、少なくとも約1.25ppmのMg、少なくとも約1.5ppmのMg、少なくとも約1.75ppmのMg、少なくとも約2ppmのMg、少なくとも約2.25ppmのMg、少なくとも約2.50ppmのMg、少なくとも約2.75ppmのMg、少なくとも約3ppmのMg、少なくとも約3.25ppmのMg、少なくとも約3.5ppmのMg、少なくとも約3.75ppmのMg、少なくとも約4ppmのMg、少なくとも約4.25ppmのMg、少なくとも約4.50ppmのMg、少なくとも約4.75ppmのMg、少なくとも約5ppmのMg、少なくとも約5.25ppmのMg、少なくとも約5.50ppmのMg、少なくとも約5.75ppmのMg、少なくとも約6ppmのMg、少なくとも約6.75ppmのMg、少なくとも約7ppmのMg、少なくとも約7.25ppmのMg、少なくとも約7.5ppmのMg、少なくとも約7.75ppmのMg、または少なくとも約8ppmのMg(それらの間のすべての値が含まれる)は、該材料が前記条件に供されると溶解される。幾つかのその他の実施形態においては、少なくとも約0.25ppmのNa、少なくとも約0.5ppmのNa、少なくとも約0.75ppmのNa、少なくとも約1ppmのNa、少なくとも約1.25ppmのNa、少なくとも約1.5ppmのNa、少なくとも約1.75ppmのNa、少なくとも約2ppmのNa、少なくとも約2.25ppmのNa、少なくとも約2.50ppmのNa、少なくとも約2.75ppmのNa、少なくとも約3ppmのNa、少なくとも約3.25ppmのNa、少なくとも約3.5ppmのNa、少なくとも約3.75ppmのNa、少なくとも約4ppmのNa、少なくとも約4.25ppmのNa、少なくとも約4.50ppmのNa、少なくとも約4.75ppmのNa、少なくとも約5ppmのNa、少なくとも約5.25ppmのNa、少なくとも約5.50ppmのNa、少なくとも約5.75ppmのNa、少なくとも約6ppmのNa、少なくとも約6.75ppmのNa、少なくとも約7ppmのNa、少なくとも約7.25ppmのNa、少なくとも約7.5ppmのNa、少なくとも約7.75ppmのNa、または少なくとも約8ppmのNa(それらの間のすべての値が含まれる)は、該材料が前記条件に供されると溶解される。
【0178】
様々な実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、限定されるものではないが、i)異なる成長段階で作物の要求を満たすと共に、土壌の急激な飽和と過剰の浸出の両方を回避するような連続的なカリウム放出、ii)複数の農業周期にわたって植物の栄養を改善する高い残留効果(例えば、利用可能なカリウムの貯留を提供することによる)、iii)所定の作物および微生物叢に最適なレベルで土壌のpHを緩衝する能力、iv)微量栄養素(例えば、マグネシウム)の相乗的供給、vi)土壌の機械的強度および孔隙率の支持および改善、vii)改善されたカチオン交換能(CEC)、viii)低い塩分指数、ix)保水能力(WHC)および炭素貯蔵能力の増強、x)比較的低いコスト、xi)農家による採用に関するハードルが最小限であること、および/またはxii)現地の資源を用いて産業規模で実施可能な環境に優しい製造方法を含む理由により(熱帯)肥料として有用であり得る。
【0179】
様々な実施形態においては、水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料は、土壌の細孔空間の改善に有益であり得る。酸化物土壌では、マクロ細孔(>75μm;重力によって失われる水を保持することができない)およびマイクロ細孔(5μm~30μm;毛細管力のために水を非常に強く保持)の両方が存在するが、長期放出のために水を貯蔵可能なものである中間的なメソ細孔(30μm~75μm)は存在しない。したがって、保水能力は低い。幾つかの実施形態においては、鉱物粒子によって占有される体積は、メソ細孔母数を向上し、浸潤速度を低下させるのに適した範囲にある(例えば、
図18)。これはまた、土壌コロイドおよび他の肥料の分散を減らす(例えば防止する)こととなる。特定の実施形態においては、乾燥された水熱改質材料を構成するような微細なハイドロガーネットおよびケイ酸カルシウム水和物の固化ペーストは、20mPaの良好な曲げ強さを有することが分かった。この特徴は、侵食を軽減し、土壌強度を促進し得るが、不所望な浸潤速度をもたらす大きすぎる微細凝集物(>1mm)をもたらさない。何らかのカリウム塩(KClまたはK
2SO
4)が土質力学に同様の改善をもたらすと予想され得ることは全くありそうにない。
【0180】
乾燥された水熱改質材料の特徴により高品質の熱帯土壌肥料となり得る一方で、様々な処理パラメーターの変更により特性を調整することができるため、土壌修復、水ガラス用途、ジオポリマー用途、セメント用途、およびコロイダルシリカ用途において追加的にまたは代替的に使用されるべき新たな材料の製造が可能となる。何らかの特定の理論に縛られるものではないが、これらの新たな材料の有用性は、
図38の反応経路を介して得ることが可能な任意の数の異なる鉱物学的組成によってよりよく理解され得る。幾つかの実施形態においては、処理パラメーターは、
図33Gおよび
図33Hに示される代替的な方法により図示される経路に従って調整され得る。例えば、
図33Hに含まれる方法から、アルカリ性溶液を固定鉱物床(例えば、カリ長石)に通過させ、得られた溶解生成物を様々な組成の別々の流れにおいてさらに処理することで、様々な区別される生成物を得ることができる。
【0181】
以下の乾燥された水熱改質材料の分析は、本明細書に記載される方法に新しい洞察をもたらし、材料科学、処理技術、およびそれらの農業における用途の間の知識の溝を埋める。一般的に、全体的な議論は、栄養が乏しく生産性の低い土壌に本当に利益をもたらし得る工業生産高にまで拡張可能な環境に優しい化学的方法を設計するという包括的な目標に従ってまとめられている。本明細書に開示される乾燥された水熱改質材料の組成(すなわち、鉱物学)および浸出特性が、処理条件の変更を通じて調整され得ることが認識されたのは予想外であった。以下の実施例は、この知見への裏付けを提供する一方で、本明細書に開示される水熱改質材料または乾燥された水熱改質材料が、数多くの重要な用途に適合可能であることを強調している。
【0182】
実施例
乾燥された水熱改質材料を製造するために使用される一般的な処理経路のフローチャートが、
図3に示されている。以下の実施例においては、明記されている場合を除き、乾燥された水熱改質材料は、200℃で処理し、指定された条件下で90℃で乾燥させた。
【0183】
水熱(水の存在下での加熱)ブロック後であるが、乾燥前または乾燥と同時の追加の「後処理」ブロック、および1)可溶性アルカリ性溶液、2)添加物または塩溶液、および3)反応性ガスを含む3つの追加成分が、全体のプロセスフロー図に組み込まれている。これらの変更は、1)イオン交換能力、2)脱灰への感受性、および3)最終生成物のpH依存性の浸出および溶解に影響を及ぼす。供給混合物中のCaOの相対量および原材料の表面積等のプロセスパラメーターは、乾燥された水熱改質材料のこれらの特性(例えば、元素放出から裏付けられる)に影響する。これらの変更は、乾燥された水熱改質材料のモジュール性を高める方法に相当する(
図4A~
図4C)。例えば、粒度減少工程(例えば、「ミル粉砕」)は、湿式条件または乾式条件下で実施され得る。水熱処理工程または乾燥工程において、アルカリ土類金属イオン(例えば、Ca
2+)の溶液を、漸増的に添加するか(例えば、水熱処理におけるCa
2+/Si比を変化させ)、または塩もしくはその他の栄養の溶液を添加することができる。
【0184】
実施例1:乾燥された水熱改質材料(HT-1)の合成および特性評価
本明細書で使用される超カリウム質閃長岩は、ブラジルのペルナンブーコ州にあるTriunfo batholith社から入手した。カリ長石含量は、94.5質量%であった。SiO2、Al2O3、およびK2Oの含量は、それぞれ62.4質量%、17.0質量%、および14.3質量%であった。手のひらサイズの現地試料をジョークラッシャー中で微粉砕し、篩別することで、2mm未満のサイズを有する粒子を得た。CaO(試薬グレード、Alfa Aesar社)は、入手時のままで使用した。貯蔵のため、実験の時点では、それはCa(OH)2で水和されていた。XRPDスキャンにより、実験時点での実際の組成は、以下:CaO:5.5質量%、Ca(OH)2:93.7質量%、CaCO3:0.8質量%であることが示された。製造業者によれば、入手時の材料中の不純物のレベルは、以下:最大0.005%のCl、最大0.05%のNO3、最大0.1%のFe、最大0.1%のSO4であり、不溶性材料:最大1.5%は酢酸および水酸化アンモニウムである。
【0185】
共同ドライミル粉砕
水熱処理のための供給混合物を、乾燥状態で21.28gの超カリウム質閃長岩(<2mm)および3.72gのCa(OH)2、すなわち購入したCaOの水和形を共同ミル粉砕することにより得た。呼びCa/Siモル比は、100%のCa(OH)2および超カリウム質閃長岩中の0%のCaの両方の仮定に基づき0.23であった。ミル粉砕は、Ar(Airgas社、予備精製グレード4.8)を事前充填した50mLのアルミナ製の粉砕ジャー中で実施した。そのジャーにステンレス鋼製のボールを装填し、排気した。ボールミル(VQ-N high-energy vibrator ball mill、Across International社)を1分間運転した。ミル粉砕された粉末(供給混合物)を、引き続きプラスチック容器に移し、一時的にAr下で貯蔵した。処理は、20分間のミル粉砕作業の範囲内で行った。
【0186】
水(Ricca Chemical Company(登録商標)社、ACS試薬グレード)を沸騰させ、絶え間なくArのバブリングをしながら室温に冷却した。ストック量はAr下で貯蔵した。水熱容器の装填は、供給混合物および水の両方と空気との接触を完全に避けることはできなかった。
【0187】
水熱処理および単離
この研究で使用される水熱反応器(Parker社、EZE-Seal(登録商標)、300mL)の図を、
図4Dに示す。反応器に25gの供給混合物および100mLの水を装填した。反応器を密閉し、インペラーの回転を400rpmに設定した。200℃の温度設定点に約40分間で達し、5時間保持した。反応器の内部圧力は、約14気圧であった(第1表)。水熱法についての全温度プロフィールは、
図29に示されている。引き続き、反応器を、内部温度が約60℃に達するまで(約15分間)水循環システムで冷却した。反応器を素早く開放し、スラリー(すなわち上澄み中に懸濁された水熱改質材料の混合物)を定量的にガラスビーカー(SA 約44cm
-2)中に移した。固体成分がビーカーの底に沈殿し、過剰の溶液(上澄み)をその上部で分離した。浸出可能なカリウムに富んだ上澄み(
図28)を、固相の上部で一晩(18時間)、90±5℃に設定した研究室オーブン中で乾燥させた。乾燥された水熱改質材料を、めのう乳鉢中で均質に磨砕して、粉末が得られ、それをHT-1と名称を付けた(
図17)。乾燥された水熱改質材料の質量は測定しなかった。しかしながら、1000℃で1時間の強熱損失(LOI)実験(3連)は、4.4±0.5質量%を示し、それは、水および炭素質含量による可能性が最も高い。したがって、乾燥された水熱改質材料の再計算された質量は、26.1gであった。材料の長期貯蔵は、Ar下で行った。
【0188】
第1表.供給混合物の水熱処理の間の温度(T)および圧力(P)の変動
【表1】
【0189】
HT-1鉱物学の測定
X線粉末回折(XRPD)
図4Eは、供給混合物(a)および乾燥された水熱改質材料(b)の鉱物学的組成を記載している。
図4Eにおける乾燥された水熱改質材料の鉱物学は、X線粉末回折(XRPD)により測定した。試料を超微粉砕し、カップに装填し、X線源として45kVおよび40mAでCu
Kα線を使用する回折計(Panalytical X’Pert MPD)に入れた。スキャンを6°~90°の2θ範囲で、0.0131°のステップサイズで、かつ250秒毎ステップの計数時間で実行した。特定されたら、鉱物相をリートベルト精密化を介して定量化した。少数の小さなピーク(全回折パターンの1%)は、肯定的に特定することはできず、無視した。さらなる1.1質量%はパヌーザイトによるものであるが、この相は独立して確認されなかった。非晶質含量は、試料に同等の質量分率のSi粉末(NIST SRM 640)を添加して入念に混合することにより定量的に測定した。第2のXRPDスキャンを、初期のスキャンと同じ条件下で実行した。新たなリートベルト精密化を実施することで、Siピークの積分強度と初期分析で決定された既知の結晶相の積分強度との間で、散乱力の差について調節した比較が可能となった。全体の一部としてのこれらの値の差は、試料の非晶質含量によるものと推定された。各結晶成分の最終量は、推定非晶質含量を考慮に入れて正規化された初期リートベルト精密化の結果である。
【0190】
乾燥された水熱改質材料の回折パターンを、
図12に示す。XRPD分析により、カリ長石(KAlSi
3O
8)と、水熱処理および/または乾燥の間にインサイチューで形成された新たな鉱物相、すなわちハイドロガーネット(Ca
3Al
2(SiO
4)
3-x(OH)
4x)、α-ケイ酸二カルシウム水和物(Ca
2SiO
3(OH)
2)、11Åトバモライト(Ca
5Si
6O
16(OH)
2・4H
2O)、および1種以上の非晶質材料とが検出された。そのような鉱物相の幾つかは、CaO-Al
2O
3-SiO
2-H
2O水熱系に対する文献の研究で以前に観察されている(第2表)。
【0191】
第2表.CaO-Al
2O
3-SiO
2-H
2O系の水熱反応性の概要
【表2】
【0192】
カリ長石は、供給混合物中で使用される超カリウム質閃長岩の主要な鉱物成分である。乾燥された水熱改質材料においては、XRPDにより依然として検出される残留カリ長石は66.5質量%を占めることから、当初の材料の17.4質量%の変換が示される。ここで、水熱処理後にカリ長石の残留部分は改質を受ける、すなわち改変されることが裏付けられる。ハイドロガーネットは、6.5質量%であり、分子式に基づけば、恐らく唯一のカルシウムアルミニウムケイ酸塩水和物である。それはリートベルト精密化においてプラゾライト(x=1.47)として測定されるが(
図12)、それはEPMA分析で後に示されるように様々なレベルのヒドロキシルイオン交換(0<x<3)を有する相の固溶体である可能性が最も高かった。α-ケイ酸二カルシウム水和物および11Åトバモライトは、それぞれ3.3質量%および3.2質量%であり、分子式に基づけばケイ酸カルシウム水和物相である。最後に、18.2質量%に相当する非晶質成分も、乾燥された水熱改質材料中で検出された。そのような主成分に加えて、1.2質量%の曹長石および1.1質量%のパヌーザイトもXRPDにより検出された。
【0193】
HT-1の構造および化学組成の測定
薄片(27mm×46mm、30μm厚、2面研磨0.5μmダイアモンド、ホウケイ酸ガラス、アクリル樹脂、Spectrum Petrographics Inc.社)でマウントされた乾燥された水熱改質材料を、高真空モード(<10-3Pa)で動作した走査型電子顕微鏡(JEOL 6610 LV)を用いて観察した。加速電圧は10kV~20kVであり、スポットサイズは45~60であり、作業距離は9mm~10mmであった。観察前に、切片を炭素コーティングした(Quorum社、EMS 150T ES)。長時間にわたり、薄片は真空下で貯蔵した。
【0194】
薄片でマウントされた乾燥された水熱改質材料の化学的組成は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)(JEOL JXA-8200)で、15kVの加速電圧、10nAのビーム電流、および1μmのビーム直径を用いて測定した。鉱物相は、20秒~40秒の計数時間で分析した。計数統計から、濃度値に対する1σ標準偏差は、主要元素について0.3%~1.0%であり、少数元素について1.0%~5.0%であった。後方散乱電子(BSE)画像とX線元素マップ(4.5cm×2.7cm)は、15kVの電圧、1nAのビーム電流、および10μmの解像度を使用して得られた。そのような設定の使用と固定ビームによるステージラスターモードでの操作とにより、X線の信号損失および集束ずれが回避された。薄片のマウント用エポキシへの考えられる損傷のため、EPMA分析はSEMイメージング後に実施した。薄片を、あらゆる粒子を配置し、それを多数の技術で分析することを可能にするカスタムメイドのホルダーに収容した。
【0195】
乾燥された水熱改質材料の予備的なSEM観察は、粉末自体について行った(
図13)。引き続きそれを、形態学的特徴(SEM)および化学的分析(EPMA)の詳細な調査のために、薄片でマウントした。結果(
図14、
図15、第3表、ESI-EPMA)によりXRPDの所見が確認されるものの、高度の不均一性が証明された。
【0196】
第3表.乾燥された水熱改質材料中の鉱物相当たりの酸化物および元素(FおよびCl)の中央濃度
【表3】
【0197】
薄片において、カリ長石結晶は、明らかに区別することができ(
図14a~b、
図15)、岩石粉末に関する明確な改変が示された。そのような改変は、不均一形成物(
図14a~d)およびEPMA化学分析(
図16、第3表、ESI-EPMA)によって証明された。化学的組成は、長石のサイズクラス(d<50μm、50μm<d<100μm、d>100μm)にわたって変化し、その際、より小さい結晶は、よりCaに富み、よりK、Si、およびAlに乏しい(第3表、ESI-EPMA)。固体状態の機械的活性化は、ミル粉砕段階でCaを表面と骨格の両方のKと置き換えることができ、そのような可能性は、特に最小粒では完全に排除することができないことに留意する(
図16、ESI-EPMA)。しかしながら、乾燥された水熱改質材料においては、明らかな特徴は、特定の中程度のサイズのカリ長石粒(50μm<d<100μm)が異常にCaに富んでいることであり(
図16、ESI-EPMA)、これは供給混合物中の同等のサイズを有する結晶には当てはまらなかった。これは、水熱処理の間に長石骨格にCa原子が挿入された証拠であった。そのような結論は、中央濃度値から直ちに明らかではなく(第3表)、高度な組成の不均一性を強調することに留意する。カリ長石結晶はしばしば、ハイドロガーネット、α-ケイ酸二カルシウム水和物、および11Åトバモライト等の水熱相により取り囲まれていた(
図14a~d)。亀裂および破面は、カリ長石の追加の共通の特徴であり、孔食の証拠が存在した(
図14a~b)。
【0198】
ハイドロガーネット結晶は、約1μmの直径の主として球形状を有するが、幾つかの結晶は約5μmの直径であった(
図14g)。ハイドロガーネットは、カリ長石を取り囲むか、または材料全体に散らばって見出された。よりまれに、それはより大きな塊の最大約30μmの凝集物として生じ、コロイド状の外観を有していた(
図14h、
図16)。形態およびテクスチャ特性のみに基づいて、11Åトバモライトとα-ケイ酸二カルシウム水和物とを区別することは困難であった。トバモライトは、2つの主な形態で、すなわちi)より成長した最大20μmの長さと1μmの幅の多数の個々の結晶として(
図14b)、またはii)それぞれがまた1μm未満の結晶を構成する塊状の形成物およびクラスター内の凝集物として(
図14c~f)生じた。どちらの場合も、トバモライトは、繊維状のテクスチャを有し、通例は細い針のように見える。α-ケイ酸二カルシウム水和物のテクスチャは、最初の型のトバモライトの出現と類似していたが、より成長し、十分に形成された。さらに、2つの鉱物の間の違いは、トバモライトの場合には、幾つかの点分析が5.3質量%の高さのK富化を示し、α-ケイ酸二カルシウム水和物の場合には、全酸化物含量はより低くなる傾向にあることであった(ESI-EPMA)。
【0199】
乾燥された水熱改質材料の追加の形態的特徴は、2mmのオーダーの幾つかの大きな構造により示された。そのような構造は、クラスターと呼ばれる(
図14f)。それらはしばしば円形であり、乾燥された水熱改質材料の残分よりもCa置換およびK置換されたアルミノケイ酸塩水和物に富んでいた。時折、それらは、α-ケイ酸二カルシウム水和物およびトバモライトに富んだ外縁を示した。そのような形成物は、ケイ酸カルシウム水和物の結合性質による可能性がある。まさに、C
2S相はしばしば、コンクリート中に凝集斑晶として観察される。乾燥された水熱改質材料の密度の厳格な定量化は行わなかった。しかしながら、クラスターの視覚的観察(
図14f)は、高い割合の空の空間を示しており、そのような形成物についての低い密度を示唆している。これは、少なくとも部分的に、岩石粉末と比較した場合の乾燥され水熱改質材料の巨視的な外観を説明することができる(
図17)。
【0200】
電子マイクロプローブ分析はまた、乾燥された水熱改質材料中に存在する少量のゼオライトを明らかにしている(
図18)。形成物は、すべての水熱処理時間で生ずるが、220℃より高い温度でしか生じないことが判明した。
【0201】
最後に、様々な鉱物相が、XRPDにより非晶質として検出されるもの、例えばi)大幅に改変カリ長石、ii)結晶性であるが非常に小さい粒子、iii)真に非晶質の化合物、例えば不十分に結晶化された非化学量論的ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)に寄与し得る。しかしながら、EPMAによるサンプルの調査により、非晶質相が2つの主要な形で、すなわちi)原料カリ長石に由来する材料であって、そこから同様の質量分率のK、Al、およびSiが維持されるが、全体の酸化物含量がよりはるかに低くなるように大幅に改変された材料(そのような材料は表現的なCa含量を表す)として、ii)既知のケイ酸塩、酸化物、塩化物、炭酸塩、または硫化物に起因する結晶性または酸化物の化学量論的割合の証拠を有しない完全に他形として生ずることが示された(ESI-EPMA)。薄片の詳細な観察により、乾燥された水熱改質材料において、XRPDによって検出されず(
図19b)、かつCaO試薬中の不純物に起因しない炭素質相の存在も明らかになった。これは、検出限界を下回る濃度が原因である可能性がある。そのような炭酸塩は、副次的に生じ、直径5μm~10μmの結晶凝集体において、主に非化学量論的なK-Ca炭酸塩(7から28の間のCa/K原子比、ESI-EPMA)であった(
図19b)。該結晶は、チューブ形またはプリズムの2つの主要な晶癖を呈した。炭酸塩は、独立して、酸-塩基滴定(
図20)、および定性的炭酸塩スポット試験(
図21)によって確認された。
【0202】
HT-1粒子特性
粉末試料の粒度分布(PSD)は、試料導入用のカスタムメイドモジュールを備えたレーザー回折粒度分析装置(Beckman Coulter Inc.社、LS 13 320)で測定した。試料は、分析の間に水中に懸濁させて、超音波処理をしなかった。
【0203】
ブルナウアー、エメット、テラーによる比表面積(BET-SSA)は、Micromeritics社のASAP 2020表面積・多孔度分析装置で測定した。吸着のために使用されたガスはN2であった。試料(約0.5g)を、試料チューブ中で10-5mmHg毎分の一定の脱ガス速度に達するまで(12時間)200℃で脱ガスした。SSAは、等温線の吸着枝において多点法で0.08~0.35のp/p0範囲で測定した。しかしながら、完全な吸(最大p/p0=0.99)脱着等温線が記録された。
【0204】
供給混合物(Ca(OH)
2+超カリウム質閃長岩)の粒度分布(PSD)を、
図22における乾燥された水熱改質材料の粒度分布と比較する。水熱処理および乾燥後には粒子はより小さくなることが示される。容積基準で、それぞれ約30μm、約10μm、および約1μmで3つの主要な集団が観察される。したがって、処理により、主要な集団のピークは、供給混合物中の約100μmから、乾燥された水熱改質材料中の約10μmにまで1桁シフトする。粒子の数に基づいて、供給混合物中の約1μmから、乾燥された水熱改質材料中の約0.1μmまでの同じシフトが観察される。これらの観察は、SEMで観察された粒度と一致している(
図14)。全体的に、PSDは、方法の効率の評価のための素早く効率的でかつ廉価な手法として使用することができる。それというのも、岩石粉末および乾燥された水熱改質材料中の主要なサイズ集団は、それぞれカリ長石の漸増的な変換を伴って、収縮および成長するからである。
【0205】
BET法による比表面積(BET-SSA)は、乾燥された水熱改質材料については15.1m
2g
-1であり、供給混合物については46.9m
2g
-1であり、それはCa(OH)
2の細粒分のため特に高い値であった。そのような値は部分的にしか関連していない。それというのも、水との接触に際して供給混合物は直ちに反応し、時間の経過に伴いその表面積を変化させるからである。供給混合物中の岩石画分によるBET-SSAは、知られていないが、Ciceriら(D.Ciceri,M.de Oliveira,R.M.Stokes,T.Skorina and A.Allanore,Miner.Eng.,2017,102,42-57、参照によりその全体がすべての目的に関して開示されたものとする)により報告されるように合理的に約1m
2g
-1とみなすことができる。乾燥された水熱改質材料の表面積と岩石画分の表面積との間の比較は、その際、処理された材料中のより小さな粒子の集団と一致している。乾燥された水熱改質材料のN
2吸着等温線(BET分類によるタイプIII)は、認められるヒステリシスを一切示さない(
図23)。
【0206】
浸出実験および誘導結合プラズマ質量分光分析(ICP-MS)
超カリウム質閃長岩および乾燥された水熱改質材料の両方についての浸出実験は回分方式で実行し、つまりは0.3gの固体材料を3mLの浸出溶液(m
S:m
L=0.1)と接触させ、閉じたバイアル中で24時間にわたり連続的に回転させた。回転の開始前に、バイアルにArを事前充填した。物質移動の制限は、所定の撹拌条件下では無視できるとみなされる。初期pH=5のHNO
3を浸出溶液として使用し、酸性土壌溶液を模した。ストック浸出液は、標準化された0.1MのHNO
3(Alfa Aesar社)を沸騰した水中で適切に希釈した後に、約15分間激しくArバブリングを行うことにより調製した。実験の最後に、懸濁液を濾過し(Whatman社の13mm GD/X、0.45μm)、0.1Mの標準化されたHNO
3中で1:100に希釈した。濾過は、回転装置の停止の15分以内に行った。浸出実験のそれぞれは3連で繰り返した。エラーバーは、3連にわたる実験データのばらつきを表す(
図24および
図9B)。実験は、室温(20±3℃)で実施した。浸出溶液の温度は、独立的な試験(示されない)により実証されるように、乾燥された水熱改質材料との接触に際して一定に維持した。
【0207】
誘導結合プラズマ質量分光分析(ICP-MS)により、希釈された浸出物中のK、Al、Si、Na、Ca、およびMgの濃度を測定した(ICP MS、Agilent Technologies社の7700シリーズ)。機器は、Octopole Reaction System(ORS社)を使用した。その機器は、Caを除き「He mode」(He=4.0mL毎分)で運転し、Caについては「no-gas mode」で測定した。1ppmのInの溶液を内部標準として使用した。
【0208】
超カリウム質閃長岩および乾燥された水熱改質材料の両方についての浸出試験からの結果は、
図24に報告される(浸出条件:回転下での回分試験、24時間、m
S:m
L=1:10、浸出溶液としての呼び初期pH=5のHNO
3)。すべての値(ppm)は、固体材料1kg当たりのICP-MSによる溶液中で分析された元素のmgを指す。初期BET-SSAおよびPSDは、2種の材料について異なることに留意する:岩石粉末(初期pH=5、BET-SSA=17.3m
2g
-1、試薬セクションに記載される2mm未満のフラクションを1分間ボールミル粉砕することにより得られる粉末)、乾燥された水熱改質材料(初期pH=5、BET-SSA=15.1m
2g
-1、PSDは
図19で報告される)。2種の固体材料について実際のpH条件、PSD、およびBET-SSAは異なるので、結果を、元素利用可能性の規模の定性的可視化についてのみ比較する。乾燥された水熱改質材料においては、溶解のために利用可能な14065±744ppm
Kが存在し、それは供給混合物の総カリウム含有量の14.5%に相当する。したがって、24時間で、カリウムは、同じ初期pHで浸出された当初の超カリウム質閃長岩におけるよりも2桁多く利用可能である。Si、Al、およびCaについては、利用可能性は、それぞれ1520±132ppm
Si、222±38ppm
Al、および335±20ppm
Caであり(
図24)、それぞれ供給混合物中のSi、Al、およびCaの全含量の0.6%、0.3%、および0.2%に相当する。Ca浸出は、その植物多量栄養素の役割とその土壌pHの補正能力のため部分的に確認された。超カリウム質閃長岩の変種組成におけるCaは、この計算において考慮される。NaおよびMgも、それらが変種組成の主要成分であり、かつ土壌科学者にとって重要な元素であるため確認された。Naは、潜在的な土壌塩類化をもたらし、Mgは植物微量栄養素である。乾燥された水熱改質材料においては、溶解のために利用可能な6.5±0.3ppm
Naおよび6±1ppm
Mgが存在し、それは供給混合物のNaとMgの両方の全含量の0.2%に相当する。Naの全体的な利用可能性は低く、乾燥された水熱改質材料においては超カリウム質閃長岩に関して減少する。
【0209】
乾燥された水熱改質材料中の利用可能なSi、Al、およびCa栄養の割合が絶対的に非常に小さいことは、所定の浸出条件下でのすべてのケイ酸カルシウム相の化学的安定性の証拠である。それにもかかわらず、利用可能な栄養の絶対量は植物にとって重要であり得る。参考として、土壌溶液中で、Si濃度は0.09mgSiL-1~23.4mgSiL-1のオーダーであり、ここで報告される浸出溶液中の152mgSiL-1の値と比較されるべきである。また、浸出実験において、Si濃度は、非常に低いpHでの非晶質SiO2の溶解限界に相当することに留意する。これは、実際の浸出溶液がICP-MS分析の前に濃HNO3で希釈されたからである。したがって、実際の浸出バイアル内のSiは、測定された値よりもさらに高い可能性がある。
【0210】
乾燥された水熱改質材料の酸-塩基滴定
乾燥された水熱改質材料の酸-塩基滴定は以下の通りに行った:
(a)第1に、0.3gの乾燥された水熱改質材料を、撹拌しながら10mLの脱イオン水中に懸濁させた。
(b)第2に、標準化された0.1MのHNO
3(Alfa Aesar社)をビーカーに添加した。それぞれの酸添加(2.5mL)の後に、その系を15分間安定化させてから、読取りを行った。pHは乾燥された水熱改質材料の表面反応性により安定化しなかったことに留意する。
(c)第3に、滴定曲線を
図20に示されるようにプロットし、当量点を、乾燥された水熱改質材料中の塩基含量の逆算のために使用した。
【0211】
pH=10.0(3.0mL)およびpH=5.8(12.0mL)の2つの異なる当量点を観察する。第1の当量点は、H
2CO
3について作表されたpKa
2値が10.33(25℃)であるので、合理的に炭酸塩によるものであり得る。実験値と理論値との間の差は、カリ長石、ハイドロガーネット、およびトバモライト等のその他の鉱物相の表面反応性により引き起こされる干渉により説明することができる。第2の当量点は、H
2CO
3について作表された6.35(25℃)のpKa
1値からより離れているように見える。第1の当量点が確かに炭酸塩によるものであると仮定すると、これは0.3mmolのCO
3
2-に相当し、これは乾燥された水熱改質材料中の4.3質量%のCO
2に相当する。そのような量は、XRPDにより検出されなかったが、LOIデータと極めて一致している(上記の水熱処理のセクションを参照)。炭酸塩は、他形結晶であったが、非晶質ではなかったため、XRPDは炭酸塩を検出しない。それというのも、それらは、検出限界以下で存在する可能性が最も高いからである。第1の当量点で滴定により測定された炭酸塩のすべてがK
2CO
3であった場合に、予想されるK浸出試験は、実験データをはるかに上回る78000ppm
Kである(
図19)。したがって、乾燥された水熱改質材料中の炭酸塩は、未確認の混合物であり、該混合物は、K
2CO
3、Na
2CO
3、MgCO
3、CaCO
3を含む可能性があるが、恐らくK
2Ca(CO
3)
2等のその他の複炭酸塩化学種(ビュチイライトおよび/またはフェアチルダイト)も含む。第2の当量点は、第1の当量点で検出された炭酸塩の含量と合致しない。第2の当量点がHCO
3
-+H
+⇔H
2CO
3の平衡によるものであると仮定すれば、0.3mmolのCO
3
2-に加えて、乾燥された水熱改質材料中にはさらなる0.6mmolの重炭酸塩化学種HCO
3
-が存在する。そのような量は、全体の12.9質量%のCO
2に関して、乾燥された水熱改質材料中のさらなる8.6質量%のCO
2含量に相当することとなり、それはXRPDにより非検出となる可能性は低い。これらのデータは、乾燥された水熱改質材料中の炭酸塩の効果的な存在を指し示す。そのような高いpH値は、特に低いpHの土壌が問題である場合に、土壌の質および土壌の健康の改善に使用される材料において重要である。
【0212】
炭酸塩の測定のための定性的スポット試験
濃硝酸(15.6M)を、
図21(a)~(c)に示される装置を使用して材料上部に滴下する。炭酸塩が存在する場合に、炭酸塩はCO
2を発生し、通路を介して装置の第2の区画へと運ばれ、Ba(OH)
2の溶液からBaCO
3として沈殿する。パネル(b)は、ブランク試験の結果を示し、そこでは材料は超カリウム質閃長岩である(BaCO
3は形成されない)。パネル(c)は、乾燥された水熱改質材料を用いた試験からの結果を示す。BaCO
3の白っぽい雲状物が形成され、炭酸塩の存在が確認される。
【0213】
鉱物学的組成と浸出との間の関連性
乾燥された水熱改質材料においてXRPDにより検出された主要なアルミノケイ酸カリウム(KAS)は、カリ長石(KAlSi
3O
8)であった(
図4E)。XRPDは、14.0gのカリ長石が水熱処理の間に変換されることを示した(
図14)。PSD分析により、カリ長石に起因するサイズ集団が、乾燥された水熱改質材料において供給混合物に対して減少することが確認された(
図22)。しかしながら、そのような鉱物相は、依然として乾燥された水熱改質材料の主要成分(66.5質量%)であり、したがってまた主要なカリウム含有相である。これは、該材料の入念に設計され意図された特徴である。本明細書に開示される乾燥された水熱改質材料の所望の属性、すなわち作物の要求に合うK放出速度を有する熱帯土壌のための肥料の設計とは反対に、カリ長石の完全な変態は桁違いの費用がかかり、土壌溶液において直ちに利用可能な大量の可溶性のKを生成することとなる。しかしながら、XRPDによりカリ長石として検出されるものは、実際に改変された鉱物相であることに留意する。構造的改変は、イメージング研究により証明された(
図14a~d)。さらに、N
2吸着等温線にはヒステリシスを欠くことから(
図23)、亀裂、破面、またはその他の多孔質構造は、それらがマイクロメートルのオーダーであればヒステリシス挙動を生じないが、それらの表面積への寄与は、依然としてBET-SSA値により捕らえられることを説明することができる(
図14a~b)。化学的改変は、元素マップ(
図15)、点濃度(第3表、ESI-EPMA)、および試料の詳細な調査(
図13、
図16)によって証明された。Caの挿入によるカリ長石の単位格子における歪みは、上記の亀裂効果の原因である可能性がある。まさに、乾燥された水熱改質材料の特徴は、改変カリ長石粒子の最小粒が、非化学量論的元素含量を示し、Kが非常に不足しており、Caに富んでいることである(
図15、
図16、ESI-EPMA)。サイズにかかわらず、カリ長石の単粒はその当初の組成を保持せず、カリ長石粒と水熱溶液との間の界面にカルシウム鉱物が観察された。何ら特定の理論により縛られるものではないが、そのような相は、長石におけるCaの挿入に由来し得るか、または局所的飽和による溶液からの再析出によって生じ得る。アルカリ性環境の不存在下では、長石中のKと水熱溶液からのアルカリ金属イオンとの間の大幅な交換を観察するために、はるかに高い温度(600℃)が必要とされる。したがって、本明細書に示されるデータは、高pH環境が、変態の成功およびKイオンとCaイオンとの交換のために必要とされるという証拠を示す。改変および非改変のカリ長石の両方が同じ溶解速度であり、実際の浸出のpHが12単位であると仮定すると(
図27)、利用可能なKの量は、改変カリ長石の実際の表面積に応じて、10ppm
K~200ppm
Kのオーダーである。そのような量は、
図24で報告されたデータと比較すると無視することができ、それにより、改変カリ長石が潜在的な長期放出のための主要の栄養貯留物として機能するが、Kの短期間放出の原因となる可能性は低いことが確認される。反対に、物質収支計算(例えば、
図4Eに示される変換に基づく)は、完全に変換されたカリ長石中のKの割合が、浸出に利用可能なすべてのKを提供し得ることを示している。そのようなKは、改変カリ長石以外のK置換相中、またはXRPDによって検出されないが、EPMA分析により証明される可溶性の炭酸塩フラクション(K
2CO
3(25℃)の溶解度は、1110g/L)中に位置している可能性がある(
図15、ESI-EPMA)。
【0214】
乾燥された水熱改質材料においてXRPDにより検出された主要なカルシウムアルミニウムケイ酸塩水和物(C-A-S-H)相は、ハイドロガーネット(Ca
3Al
2(SiO
4)
3-x(OH)
4x、C
3A
2S
3-xH
x)であった。より広いハイドロガーネット群内では、ハイドロガーネットは、SiO
4
4-四面体の代わりに4OH
-を内包することで、グロッシュラー(x=0)、ヒブシャイト(x=0.2~1.5)、カトアイト(x=1.5~3)、およびそれらの固溶体が生ずる鉱物のクラスを定義する。人工的な系においては、ハイドロガーネットが、コンクリート中では唯一のカルシウムアルミニウムケイ酸塩水和物として観察され、しばしばオートクレーブ処理された材料の水和生成物として検出される(第2表)。それは、小さな八面体ないし円形の結晶として現れた(1.5μm~4μm)。乾燥された水熱改質材料の顕微鏡写真(
図14)とPDSデータ(
図22)との比較により、これらの実験においてハイドロガーネット相は、主として約1μmのオーダーの小さな丸形の粒子の形であることが分かる。EPMA分析は、約30質量%のSiO
2の含量を示しており(第3表、ESI-EPMA)、それは、カトアイトではなくヒブシャイトを示唆し、丸形の結晶が優勢であることと合致する(
図14g)。SiO
2含量はまた、リートベルト精密化において使用されるプラゾライト相中の22質量%の理論値と相対的に良好に一致することに留意する。カリ長石と共に、ハイドロガーネットは、主要なAl含有鉱物である。浸出試験において、乾燥された水熱改質材料からのAlの利用可能性は、超カリウム質閃長岩の利用可能性に対して高まるものの、依然として同等である。しかしながら、岩石粉末の実際の浸出pHは約6であり、かつ乾燥された水熱改質材料のそれは約12であることに留意する(
図27)。したがって、この後者の場合には、Alの利用可能性は最大であり、それは、酸性pHで干渉された土壌において、Alがほぼ完全に利用不可能となるはずであることを示す。ハイドロガーネット結晶中のK内包のレベルは僅かであった(第3表)。
【0215】
ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)は、α-ケイ酸二カルシウム水和物(α-Ca
2(SiO
3OH)(OH)、α-C
2SH)、および11Åトバモライト(Ca
5Si
6O
16(OH)
2・4H
2O、C
5Si
6H
5)であった。α-ケイ酸二カルシウム水和物の水熱合成は、以前に報告されていた。それは通常、約150℃超で形成する矩形のタブレットとして現れる。供給混合物のCa/Siモル比は、結晶性が不十分で非化学量論的なその他のケイ酸カルシウム水和物(Ca/Si<1.75)に対して、結晶性α-C
2SH(Ca/Si=2)の形成を左右する。したがって、α-C
2SHは、初期反応時にカルシウムが豊富な環境で形成される可能性が高いのに対し、トバモライトは準安定ケイ酸カルシウム水和物から発生する相として後に形成されることとなる。トバモライトは、人工的なCaO-SiO
2-H
2O系において、約80℃~約150℃の温度範囲、Ca/Si=0.8~1.0の初期バルクモル組成、および数日の規模の処理時間で観察された。Si源の溶解度が高いほど、形成するトバモライト相の結晶性は低くなる。トバモライトは、200℃超で準安定鉱物として存在し得るが、ゾノライト(xonolite)(Ca
6Si
6O
17(OH)
2、C
6S
6H
2)は熱力学的に有利な相となる。Alは、ケイ酸カルシウム水和物のトバモライトへの変態を促進し、そのゾノライトへの変換を抑える。Si
4+ではなくAl
3+の内包は、電気的中性を維持するために層間イオン、一般的にNa
+、K
+、またはCa
2+を導入を必要とし、こうして約70meq/100gの高いCECを有するトバモライトが得られる。トバモライトについては、板状、ラス状、および繊維状の結晶を含む幾つかの結晶形状が報告されている。この後者の型は、本研究において確認された(
図14b、
図14e)。しかしながら、K置換されたトバモライト(カリトバモライト)は、自然界では極めてまれである。乾燥された水熱改質材料において、トバモライトは3質量%(
図4E)であり、それはKとAlの両方を含有していた(第3表、ESI-EPMA)。全体として、トバモライト中のカリウムの絶対量は少なく、浸出実験では、それは直ちに利用可能なK成分により覆い隠された可能性が高い。最後に、乾燥された水熱改質材料においては、追加のC-A-S-H相が観察され、結晶性が不十分ないし結晶性のない化合物はXRPDにより非晶質として検出された可能性が高い。そのような非晶質相は、極めて様々な組成を有することが示された(ESI-EPMA)。KおよびAlの含量が高いことが分かったが、そのイオン放出能力は現在確立されていない。
【0216】
XRPD相に加えて、乾燥された水熱改質材料は、炭素質化学種も同様に含有することが裏付けられた(
図19、ESI-EPMA)。材料のpH特性の調節に寄与し、大気CO
2を捕捉するために使用することができるので、炭酸塩は重要である。現在の研究では、炭素の考えられる供給源は3つだけである、すなわちi)原材料中の不純物(Ca(OH)
2試薬中の0.8質量%のCaCO
3、それは供給混合物中の0.12質量%に相当する、実験セクションを参照)、ii)水熱反応器中の雰囲気のCO
2(ごく僅か)
†、iii)乾燥工程の間の雰囲気のCO
2(乾燥工程の期間全体を通して400ppmと推定される)である。処理後の上澄みの乾燥の間に形成される特定の相、例えばKOHの炭酸化は、エクスサイチューで、製造の間に、そして薄片での粉末のマウントの間に起き得る可能性がある。しかしながら、それが実際に炭酸塩の形成を調節する乾燥工程である可能性がより高い。材料の鉱物学的複雑さを考えると、溶液で利用可能なKが、可溶性の炭酸塩等の単相に由来する可能性は低い。しかしながら、
図24の実験値を正しいとするK
2CO
3の量は、2.50質量%に相当し、それは、XRPDにより恐らく未検出となるほど十分に低い。ESI-EPMAで裏付けられているように、処理の間に形成された炭酸塩は、実際には様々なK/Ca原子比を有し、かつ文献では直ちに利用可能でない溶解度値を有する複雑な化学種である。全体として、浸出設定では、利用可能なKの起源を判別することはできないが、本研究で示されるデータは、炭素質化学種が原因である可能性が高いことを示唆している。改変カリ長石、トバモライト、または非晶質相等のその他の栄養貯留物は、可溶性のイオン種よりも遅く、恐らくより制御可能な速度でKを放出すると推定される。
【0217】
本明細書に示される浸出データ(
図24)は、材料の農業的性能を予測するために、栄養素の利用可能性を鉱物相に関連付ける重要性を強調している。そのようなデータは、NaおよびMgを除いて、乾燥された水熱改質材料からの元素の利用可能性が、同じ初期pHで浸出される超カリウム質閃長岩よりも高いことを示している。Caの場合に、その利用可能性は直ちに比較可能ではない。それというのも、原材料において、Caは変種鉱物から利用可能であったのに対して、乾燥された水熱改質材料では、CaはCa(OH)
2の系への添加により人為的に導入されたからである。乾燥された水熱改質材料の全体的な概要は、カリ長石が[K
2O-Al
2O
3-SiO
2]
カリ長石-CaO-H
2O系に独特な挙動であるポゾラン活性を示すことを明らかにしている。そのような系は熱力学的平衡からはほど遠いため、骨格元素の鉱物相中への意図的な再分配を促進することができ、それにより有用な栄養が放出されて、土壌の肥沃度が改善される。
【0218】
以下の実施例(2~8)は、
図34A~
図34Cで強調されるパラメーターおよび装置により微小流体条件下で行われた。水熱処理時間(5時間、16時間、または24時間)、乾燥条件(Ar、空気、CO
2、および真空)、およびCa/Si供給比(0.075、0.15、0.3、0.45、0.6、および0.9)を、乾燥された水熱改質材料の鉱物学、浸出、pH、およびその他の重要な特性(すなわち、粒度分布)について入念に研究した。指定されるように、水熱改質材料を、上澄みと一緒にまたは上澄みなしで、
図34Cに示される乾燥装置を使用して乾燥させた。
【0219】
実施例2:乾燥された水熱改質材料の流動(微小流体)条件下での溶解
図35A~
図35Dは、微小流体条件下での乾燥された水熱改質材料の溶解挙動を示す。乾燥された水熱改質材料を、浸出の前後で評価した。走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、カルシウムアルミニウムケイ酸塩水和物(CASH)相が流動下で溶解するのに対し、カリ長石相は溶解しないことを示している。何ら特定の理論により縛られるものではないが、これは流動自体によるものではなく、緩衝されたpHによるものであると想定される。
【0220】
水熱的粉末のバルク浸出対流動浸出
図25は、乾燥された水熱改質材料について、バルク浸出(pH5のHNO
3)と微小流体装置を使用した浸出とを比較する。pH5で、流動条件下でのK/Al比およびK/Ca比は、標準的な浸出溶液下でバルク粉末から生ずる浸出と比較して大幅に減少する。微小流体装置はまた、様々な切片およびpH環境で試験されるべき主要な元素(Al、Si、K、およびCa)の放出を可能にする。このデータは、それぞれの元素の放出が、浸出条件および基礎となる鉱物学に対してどのように変化するかを示している。要するに、バルク条件下での元素の放出は、流動条件下での浸出とは異なると結論付けることができる。
【0221】
実施例3:乾燥された水熱改質材料に対する処理条件および乾燥条件の効果
種々の乾燥条件下での乾燥された水熱改質材料からのK放出
浸出実験は以下の通りに実施した:300mgの水熱改質材料を、3mLのpH5のHNO3溶液中に懸濁した(3連で行った)。次いで試料を周囲温度で24時間撹拌した。鉱物の浸出を、酸性条件下(0.1NのHNO3)でICP-MSによって測定した。pH測定は、上述の浸出実験と同じ条件下で調製された浸出試料とは別のバイアル中で3連で行った。液体を材料と接触させた3分以内にpHt=0が記録された。24時間のかき混ぜの後にpHt=24が記録された。明記されている場合を除き、水熱改質材料は、200℃で処理され、指定された条件下で110℃~120℃で乾燥させた。
【0222】
供給原料を反応させ、引き続き得られた生成物を乾燥させるために4つの異なる組み合わせの雰囲気条件(Ar-Ar、Ar-空気、空気-空気、CO2-CO2)を使用して、一連の乾燥された水熱改質材料を製造した。
【0223】
図5(および以下の第4表)から、処理雰囲気および乾燥雰囲気の変更は、製造された乾燥された水熱改質材料の組成に顕著な影響を与えることが明らかである。特に、非晶質相、ケイ酸二カルシウム水和物、ハイドロガーネット、トバモライト、およびカリ長石の量は、それぞれの組み合わせの条件下で変動する。Ar-Ar雰囲気下では、カリ長石(Kfs)は、処理完了後に56%だけのKfsが残る生成物への最も高い変換を示す。それにより、非晶質相として特定される組成の約29%が残る。Ar-ArとAr-空気の両方とも、8%~9%のケイ酸二カルシウム水和物相を含有し、その相は、他の2つの組み合わせの条件では不存在が目立っている。CO
2-CO
2は、Kfsの最低の変換および非晶質含量が本質的に低下した乾燥された水熱改質材料をもたらす。
【0224】
第4表.水熱工程および乾燥工程について異なる処理雰囲気下で乾燥された水熱改質材料の組成
【表4】
【0225】
さらに、水熱処理および乾燥雰囲気は、乾燥された水熱改質材料の浸出特性を変更する(
図6)。200℃で5時間にわたり、空気-空気条件は、カリウム、アルミニウム、ケイ素、およびカルシウムのより高い放出レベルをもたらす。ナトリウムに関してのみ、その他の選択肢と比べて放出が減少した。
【0226】
2組の乾燥された水熱改質材料からのカリウムの浸出に対する乾燥条件の効果を切り離すために、さらなる研究を行うことで、第1の組に関しては、乾燥された水熱改質材料は、上澄みと一緒に別々に空気、Ar、CO
2、および真空を使用して乾燥させた。
図7Bに示されるように、K放出は、Ar条件下で最も高く、CO
2が使用される場合に最も低い。10
-2Torr~10
-3Torrの間の真空の印加は、乾燥された水熱改質材料からのK
+の実質的な放出をもたらす。空気を用いた乾燥により中間の値が生じ、それは、天然に存在する少量のCO
2が浸出に殆ど影響を及ぼさないことを明確に示している。これらの実験において、K放出は、乾燥温度(<90℃)とは無関係であることが判明した。
【0227】
同様の傾向は、上澄みの除去後に乾燥された固体試料において観察された(
図7B)。カリウム浸出は、乾燥された水熱改質材料の乾燥にCO
2が使用された場合に再び最も低かった。集計データは、固体試料が炭酸化に感受性が高いため、土壌中のCO
2/炭酸塩の平衡が、現地試料の長期間操作に極めて重要である可能性が高いことを強調している。
【0228】
図7Aは、上述の挙動についての基本原理を示す。何らかの特定の理論に縛られるものではないが、乾燥溶液へのCO
2の溶解は、恐らくカリウムとCaCO
3(恐らくK置換CaCO
3)の共沈につながり得る。鉱物相中のカリウムの隔離は、最終的に浸出の程度を減らすことが可能である。
【0229】
可能なK捕捉についての裏付けは、空気、Ar、またはCO2下で乾燥された水熱改質材料の研究によって与えられる(第5表)。その他の雰囲気条件とは異なり、試料がCO2を用いて乾燥される場合に、かなりの方解石相が析出される(14質量%)。乾燥された水熱改質材料中の格子パラメーターは参照より大きいので(K+>Ca2+のイオン半径)、カリウムがK2xCa(1-x)CO3により示される難溶性の相においてCaCO3と共沈することは妥当である。さらに、より高い割合の非晶質相の存在は、非晶質CaCO3の発生を示し得る。
【0230】
第5表.種々の乾燥条件を介して製造された乾燥された水熱改質材料の鉱物学
【表5】
【0231】
カリウムとは異なり、Ca放出は、上澄みなしで乾燥された水熱改質材料において実質的に増加した(
図7C)。最も多量の浸出は材料の乾燥に真空を使用することで生じるが、アルゴンでも同様のレベルが得られた。カルシウムの測定可能な浸出はCO
2を用いて乾燥させた材料からは起こらなかったのは、恐らくCaCO
3含有相の限られた溶解度によるものである。
【0232】
アルミニウムの浸出も、種々の雰囲気下で乾燥させた水熱改質材料について測定した(
図7D)。すべての組み合わせの条件にわたって、浸出は上澄みと一緒に乾燥された材料について最も高かったが、規模の差は様々であった。真空乾燥は、最も高いAl放出をもたらし、空気、アルゴン、およびCO
2がそれに続いた。
【0233】
試料のpHに対する乾燥条件の効果
上澄みと一緒に乾燥された水熱改質試料は、空気、Ar、CO2、または真空を用いて乾燥させた場合に24時間の時点でpHに変化は示されないが、pHの変化は、真空濾過による上澄みの除去後に乾燥された水熱改質材料試料で観察される。興味深いことに、塩基性は、空気、Ar、および真空により高まる傾向にあるが、水熱改質材料がCO2を用いて乾燥される場合に低下する傾向にある。
【0234】
第6表.上澄みと一緒のおよび上澄みなしでの種々の条件下で乾燥された試料のpH
【表6】
【0235】
これらのpHおよびカリウム浸出の結果は、
図7A(上部の反応)に示される提案されたケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)反応と一致している。Ca
1.67SiO
2(OH)
3.33・0.43H
2O相の溶解に際して、効果的にpHレベルを高める水酸化物イオンが生成される。同時に、カリウムがC-S-H相から遊離されることで、観察された溶離レベルにつながる。それに対して、CO
2の存在下では、C-S-H炭酸化反応が起こる(
図7A、下部の反応)。C-S-H相の脱灰は、カリウム放出のための機構を示すが、塩基性の低下への傾向ももたらす(pH11.8→pH10.8)。xCaCO
3の形成はまた、カルシウム浸出が最小化され、または固体試料がCO
2を用いて乾燥される場合にカルシウム浸出が生じない理由を説明する(
図7C)。
【0236】
その他の鉱物の浸出はpHによっても影響される。アルミニウム放出は、例えば上澄みなしで乾燥された試料中のpHと一緒に推移する。ArとpH12.3により、最も高いAlの放出がもたらされ、一方で、CO
2とpH10.8により、最も少量のAlが放出される(
図7D)。
【0237】
要するに、固相は、炭酸化に非常に感受性が高いと思われる。炭酸化は、乾燥された水熱改質材料に対して多くの効果を有する。浸出は、恐らくK2xCa(1-x)CO3相におけるKの捕捉により減少する。CO2を用いた乾燥はまた、アルカリ性の低下を引き起こし、恐らく乾燥された水熱改質材料の緩衝能力を低下させる。これらの条件下で、カルシウムは、鉱物の溶解により溶液中に放出される。空気、Ar、または真空が乾燥のために利用される場合に、乾燥された水熱改質材料は、pH緩衝能力を有する。したがって、添加剤および複合材料との適合性が考慮される。しかしながら、乾燥雰囲気に対してpHを調整する能力により、これらの乾燥された水熱改質材料の、土壌修復のための、または限定されるものではないが、ジオポリマー、水ガラス、コロイダルシリカ、およびKOH/K2CO3溶液を含む、幾つかの種類の産業/用途のためのアルカリ溶液の製造のための使用が容易になる。
【0238】
実施例4:乾燥された水熱改質材料の時間および温度依存性
時間(t)および温度(T)の両方とも、乾燥された水熱改質材料の組成に影響を与えることが分かった水熱処理変量である(
図8)。例えば、0.5時間、1.0時間、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間の期間にわたり、温度を200℃から230℃に上げると、カリ長石の変換率が向上するだけでなく、存在する非晶質相の量も増加する(
図9A)。K置換されているケイ酸カルシウムであるトバモライトは、処理時間が増えると増加することも判明した。他方で、ハイドロガーネットは、前記変量の変化にかかわらず一定のままである。少数の相の合計である少数成分、すなわち曹長石、黒雲母、パヌーザイトは、一般的に10%未満で存在する。
【0239】
鉱物浸出を、時間および温度に対しても評価した。0.5時間から3.0時間の範囲の時間、および200℃、220℃、および230℃の時間にわたり、K浸出は、相対的に一定に保たれる。したがって、カリウム浸出の規模は、処理時間および温度とは無関係であると結論づけられた(
図9B)。他方で、Al浸出は、いかなる処理時間にわたっても相対的に一定であるが、処理温度が高まると大幅に減少することが分かる。SiおよびCa浸出は、所定の範囲では容易に解決できないが、Na放出は、処理時間および温度の増加の両方と一緒に推移する(
図9B)。
【0240】
乾燥された水熱改質材料中のカリ長石変換がより長い処理時間にわたって増大し得るかどうかの問題にも対処した(第7表)。5時間、16時間、および24時間の処理時間を試験し、温度は200℃で維持した。注目すべきことに、Kfsは、5時間から16時間の間に約13.6%だけ減少することから(
図9C)、変換が実際に推し進められ得ることを示している。最後の8時間(16時間~24時間)にわたって観察された比較的小さな2.4%の変化は、同じ期間にわたるトバモライトの増加によって部分的に説明され得る(
図9C)。トバモライト含量は、最初の11時間の処理時間にわたり殆ど一定に留まり、最後の8時間にわたって7質量%の割合から9.2質量%にまで達するにすぎない。 非晶質の含量に関しては、この相中の実質的な増加は、5時間から16時間の間で容易に明らかとなり、24時間の時点が完了するまでの後続時間においてプラトーに達する。乾燥された水熱改質材料の意図された用途に基づき、鉱物学における小さな変動は極めて重要であり、組成を考慮することが必要となり得る。XRPDおよびWDSのそれぞれから得られる格子パラメーターおよび化学的組成によれば、結晶相は、固溶体として存在する。そのような変化は、浸出において重要であり得る。例えば、通常10mgのK/kg(材料)を放出する1gの乾燥された水熱改質材料においては、2.6×10
-7モルのKおよび2.3×10
-5モルのトバモライトが存在する(2.4質量%のトバモライトに対して)。トバモライト中の1.1mol%のケイ素だけが、浸出の間に観察されるKの質量を説明するためにAlおよびKと同時置換される必要があり、こうして相の再分配における小さな変化が乾燥された水熱改質材料の特性に大きな影響を与え得ることが強調される。
【0241】
第7表.乾燥された水熱改質材料の組成に対する処理時間の延長の効果
【表7】
【0242】
驚くべきことに、K放出は、Kfsの質量分率の減少と一致しない。実際に、水熱処理時間の延長は、実際にK浸出を減少させる。それというのも、恐らくKは、乾燥された水熱改質材料の1つ以上の相に隔離されるからである(
図9D)。それに対して、Ca浸出は、200℃で24時間にわたり処理された乾燥された水熱改質材料において、より少ない時間量で処理されたものと比較してかなり増強される(
図9D)。pHの変化はCa放出に比例するため、アルカリ性が時間とともに減少するにつれて、Ca浸出が実質的に増大することが分かる。各時点でのpHの変化にもかかわらず、該データは、すべての場合にアルカリ性が維持されるだけでなく、実際に浸出が24時間にわたり進む場合に僅かに高められた塩基性に向かう傾向がある場合に、乾燥された水熱改質材料が有用な緩衝能力を有するという概念を支持する(第8表)。
【0243】
第8表.200℃で様々な時間にわたって処理された乾燥された水熱改質材料について測定された浸出物のpH
【表8】
【0244】
実施例5:乾燥された水熱改質材料の特性に対するCa/Si供給比の効果
Kfsの変態に対するCa/Siの効果
一連の実験により、Ca/Si供給比が、Kfs変換[(Kfs初期-Kfs最終)/Kfs初期]、鉱物学、鉱物放出、粒度分布(PSD)、および緩衝能力に影響を与えることが裏付けられた。したがって、このパラメーターの変調は、乾燥された水熱改質材料の特性を特定の用途と合わせるために有益に利用することができる。
【0245】
所望の乾燥された水熱改質材料をもたらす最小のCaO/Kfsが特定され得るかという質問に答えるために、Ca/Siの種々の割合で研究を実施した。初期のデータから、Ca/Si供給比の変化が、乾燥された水熱改質材料中の様々な成分の質量分率に影響することは明らかであった(第9表)。特にCa/Si比が増大するにつれ、生成物組成中に残留するKfsは、ますます少なくなる。同時に、ハイドロガーネット相および非晶質相の両方とも、大幅により高い質量分率で存在し、Ca/Si=0.075からCa/Si=0.3の最大試験値に至る。それに対して、トバモライトはCa/Si=0.15でピークに達するが、Ca/Si=0.3で僅かに減少する(第9表)。
【0246】
第9表.種々のCa/Si供給比での乾燥された水熱改質材料の様々な成分の相の質量分率
【表9】
【0247】
供給混合物中のCa/Siに対するカリ長石変態の程度(「駆動力」)のグラフ表示は、利用することができる「スイートスポット」が存在することを強調している(
図10)。カリ長石の程度は、Ca/Si供給比の最初の2倍化の場合に劇的に飛躍するが、Ca/Si=0.30に増加すると、本質的にプラトーに達する。したがって、
図10に示される中間的な比率を超える変態の程度に対する影響は、最小であると思われる。
【0248】
乾燥された水熱改質材料の鉱物学に対するCa/Siの効果
図11Aは、Kfs変換が、0.075から0.9までの質量分率に関する供給混合物中のCa/Siと一緒に推移することを示している(棒グラフ)。この研究において、相の質量分率は、Ca/Si=0.9に正規化される。すなわち、Ca/Si=0.9の試料のCaOとより低いCa/Si試料のCaOとの間の差に相当する人工的な相割合を、Ca/Si<0.9を有する試料についてのXRDの結果に加えた。乾燥された水熱改質材料についてのXRDによる相定量化の分析誤差は、一般的に所定の相について5%~20%の範囲である。Ca/Si=0.075についてのコンピュータ計算された変換値は負であり、非物理的であると考えられる。このように、Kfsの変換についての値は、Ca/Si=0.075の場合に報告されない。
【0249】
非晶質相、ケイ酸二カルシウム水和物相、およびハイドロガーネット相は、Kfs変換の%と一緒に推移するため、それぞれの質量%は、供給混合物中のCa/Siが0.075から0.9に高まると増大する。それに対して、トバモライトは、非常に安定したままであり、実際にはCa/Si=0.45で質量%の下降が始まる。したがって、該データから、ケイ酸二カルシウム水和物相は、混合物中のCa/Si比を増加させることにより、トバモライト相より多く得ることができると思われる。全体として、カリ長石の実質的な非晶質相への変化は、単純に供給混合物中のCa/Siを増加させることによって促進することもできる。単純にCa/Si比を変更することによりケイ酸二カルシウム水和物および非晶質相の形成に向けて生成物を導く能力は、セメント化学に対する有益な影響を有し、一般的に様々なセメント用途に関連していると予想される。
【0250】
鉱物放出に対するCa/Siの効果
Kの放出は、供給混合物中のCa/Siの変更により変調され得る。Ca/Siの増加は、乾燥された水熱改質材料によってより多くのKの放出をもたらし、その際、最大値はCa/Si=0.45の場合に達成される(
図11B)。したがって、K放出はCa/Siと比例していることが判明した。
【0251】
Caについての浸出は、線形の傾向の欠如と、変化するpHの影響のため、Kとは区別される。実際に、Ca放出レベルは、Ca/Siが0.15、0.30、および0.6である場合に非常に類似している(
図11C)。これは、pH緩衝能力がそのままであるか、または殆どそのままである乾燥された水熱改質材料と相関する(第10表)。最も低い供給比では、アルカリ性は11.0へと降下し、この場合にCaの放出は、実質的により高い(
図11C)。該データに基づくと、供給Ca/Siは、乾燥された水熱改質材料のアルカリ性に影響を及ぼし(すなわち、緩衝能力は、低いCa/Siで減少する)、それはまたCa等の鉱物の放出に影響を及ぼし得る。予想外にも、Ca浸出のスパイクは、Ca/Si供給比=0.45の場合に生じ、その値は、低いCa/Si供給混合物で観察される値に匹敵する(
図11D)。Ca/Si=0.9の場合に、さらに大きなスパイクが観察され、それは、恐らく水熱処理からの未反応のCa(OH)
2を示している。
【0252】
第10表.種々のCa/Si供給比を使用して製造された乾燥された水熱改質材料について測定された浸出物のpH
【表10】
【0253】
ナトリウム(Na)およびアルミニウム(Al)の放出も、供給混合物中のCa/Siの変更により変調され得る(
図11D)。Alの浸出は、Ca/Si値の全範囲にわたって増大し、恐らく試験された最大比(0.9)でプラトーになると思われる。同様の観察がNaの浸出にも当てはまるが、ただし、試験された供給混合物の最も高いCa/Siである0.6で僅かな減少が認められる。
【0254】
要するに、Ca/Si比は、水熱反応の程度を制御し、乾燥された水熱改質材料における所望の処理時間(t)、温度(T)、供給組成、および所望の鉱物学についての最適化を必要とする。注目すべきは、低いCa/Siが、材料の緩衝能力を減少させ、それがまた鉱物浸出に影響を及ぼし得ることである。前記で論じられたように、乾燥雰囲気に対してpHを調整する能力により、これらの乾燥された水熱改質材料の、土壌修復のための、または限定されるものではないが、ジオポリマー、水ガラス、コロイダルシリカ、およびKOH/K2CO3溶液を含む、幾つかの種類の産業/用途のためのアルカリ溶液の製造のための使用が容易になる。
【0255】
乾燥された水熱改質材料についての粒度分布(PSD)に対するCa/Siの効果
研究で使用されるCa/Si比のそれぞれについてPSDを評価し、原料混合物と乾燥された水熱改質材料との間で比較した。粒度分析は、分散媒として水を用いて超音波処理を行わずに実施した。より低いCa/Si供給混合物の場合に、有効径対容積差のグラフは、前処理後の材料と後処理後の材料との間に偏差が殆どないことを示している。Ca/Si=0.3および0.6だけで、大きな変化が観察される(
図11F)。Ca/Si=0.6の原料混合物の場合に、粒子の凝集が20μm未満のショルダーを生ずる可能性がある。カリ長石の変換は、Ca/Si比が高まると増加することが判明した。さらに、増加したカリ長石の変換は、小さな粒子集団の増加にも反映される。
【0256】
要するに、Ca/Si比は、処理において大きな役割を担う。供給混合物中のアルカリ土類金属成分は、水熱処理のアルカリ性/pHを制御し、それはまたアルカリ金属骨格のアルミノケイ酸塩の溶解動態と、潜在的に全体的な反応の進行を決める。相の分布は、水性Ca/Si濃度に感受性が高く、例えば、Caに富んだ媒体は、ケイ酸二カルシウム水和物といったCaに富んだ化学量論を有する化合物の成長を優先的に促進する。新たに形成されたケイ酸カルシウム相によるアルカリ金属カチオンの取り込みは、溶液中のCa/Siに依存し、例えば、低いCa/Si溶液は、ケイ酸カルシウム相の一部としてアルカリ金属骨格の固相への分配を高める。これらの観察は、乾燥された水熱改質材料の化学および相分布が、水熱処理の溶液中のアルカリ土類金属/Siおよび/またはアルカリ土類金属/アルカリ金属を制御することにより調整することができることを示している。
【0257】
実施例6:処理における原料混合物のPSDの役割の理解
カリ長石を含有する原材料(<2mm)を1分間ミル粉砕した(1回の実行当たり50g)。次いで、ミル粉砕された材料を、ASTM E11の篩い番号70(212μm)、100(150μm)、140(106μm)、および325(45μm)を使用して乾式篩別することで、PSDに示されている4つのフラクションを得た(
図30)。
【0258】
その際、供給混合物は、同時ミル粉砕ではなく、前記フラクションと所望の量のCaOとを物理的に混合することにより調製した。乾燥された水熱改質材料を、4つのフラクションから製造した。乾燥された水熱改質材料のPSDを測定し(
図31A)、類似性および偏差に注目するために、対応する原材料のPSDと重ね合わせた(
図31B)。殆どの部分について、処理前後の材料は非常に似ており、
【数1】
および
【数2】
の場合に幾らかの小さな違いしか示されなかった。
【0259】
元素浸出に対する原料混合物のPSDの効果を調査した。K放出は、85μmの平均粒度の場合に最大となった。151μmおよび220μmのより大きな粒度により、中間値をもたらす最小の粒度とほぼ等量のK放出が得られた(
図31C)。NaおよびAlについては、最も高い元素放出は、最も小さな平均粒度で生じた。浸出は、粒度の増加につれて減少する傾向にあった。カルシウム浸出は、原料混合物のPSDが220μmである場合に最大化され、85μmまたは17μmのどちらでも浸出は検出されなかった(
図31D)。
【0260】
該データによれば、原材料の反応性は、原材料のミル粉砕の度合いの変更により変調され得る。したがって、原材料の表面積を増加させることで、原材料の反応性を促進することができる。強い相関のため、原材料のPSDを調節することで、乾燥された水熱改質材料の所望のPSDを得ることができる。
【0261】
実施例7:乾燥された水熱改質材料の脱灰に対する感受性
図7Aに示されるように、乾燥された水熱改質材料のCO
2を用いた乾燥は、α-ケイ酸二カルシウム水和物相を排除し、それを方解石相と置き換える脱灰反応をもたらす(第11表)。非晶質相は依然として存在し、僅かに増加する。第1表におけるデータに至るために、HT-空気の相質量分率を、HT-CO
2に正規化した。すなわち、人工的な相割合を、CaCO
3の質量分率から測定されるHT-CO
2中に導入されたCO
2の量に相当するHT-空気相の定量化に加えた。
【0262】
第11表.CO
2または空気の乾燥雰囲気を使用するXRD相定量化
【表11】
【0263】
以下の実験構成を実施することで、乾燥された水熱改質材料の構造および組成に対するCO
2乾燥の影響をさらに研究した:
1)水熱(HT)材料を、雰囲気X(ArまたはCO
2)下で覆った上澄みと一緒に乾燥させる。
2)乾燥されたHT材料を、Arでパージした水ですすぎ、可溶性のKを除去する(
図27、例えばKOHまたはK
2CO
3)。
3)水の除去のために濾過した後に、すすぎ後の材料(保持液)を、シュレンクフラスコ(約10
-2Torr)中で24時間~36時間真空乾燥させる。
4)すすぎ後の材料を乾燥させたものを、浸出実験にかける。
【0264】
乾燥された水熱改質材料をすすいで、乾燥(ArまたはCO2)させたら、XRDを使用することで、相のそれぞれの鉱物学を測定した(第12表)。注目すべきは、すすぎ後にCO2を用いて乾燥させた材料の方解石相が、14.2から18.2に増加する一方で、非晶質含量が21.2から13.0に減少したことである。組成に関するその他の変化も検出することができる。
【0265】
第12表.CO
2または空気の乾燥雰囲気を使用してすすいだ相のXRD定量化
【表12】
【0266】
大きな粒度の集団は、すすぎ後においては、未すすぎの乾燥された水熱改質材料中よりも少ない(
図33A)。HT-CO
2およびすすぎ後のHT-CO
2の重ね合わせにより、粒子の有効直径が同じままであることが示される。
【0267】
すすぎ後のHT-Arの走査型電子顕微鏡(SEM)画像により、カリ長石を覆うカルシウムアルミニウムケイ酸塩水和物(C-A-S-H)シートを見出すことができることが明らかになる。さらに、球状ハイドロガーネット相が、C-A-S-Hマトリックス中に埋め込まれている(
図33Bおよび
図33C)。黒雲母相も特定される。
【0268】
すすぎ後のHT-CO
2のSEM画像により、炭酸化が、C-A-S-Hシートの緻密化および脱灰をもたらすことがさらに裏付けられる。脱灰されたハイドロガーネットも明瞭に図示される。炭酸化は、Caに富んだ多面体粒子の成長を促進し、こうして構造的に異なる別の特徴がもたらされる(
図33Dおよび
図33E)。
【0269】
すすぎ後のHT-ArのSEM顕微鏡写真を
図33Fに示す。画像中の番号は、以下のように割り当てられた対応する相に典型的な特徴:1)カリ長石(微斜長石および正長石)、2)C-A-S-H(トバモライト、α-ケイ酸二カルシウム水和物、および非晶質)、3)ハイドロガーネット、および4)CaCO
3/Ca(OH)
2を指す。すすぎ後のHT-CO
2における相の特定のために同様の特徴を使用した。
【0270】
エネルギー分散型X線分光分析(EDS)を使用して、各相中の元素K、Ca、Al、Siの呼び原子分率を定量化した(第13表)。3つの元素に大きな違いはないが、Ca含有相は、CO
2で乾燥された試料においては、Ar下で乾燥された場合よりも低いCa/(Al+Si)を示す。したがって、CO
2は、処理の間に鉱物からCaを「抽出」することが可能である。その結果、材料の鉱物学に対するCO
2の作用は、
図33Gに示されるように、カリ長石からSiO
2およびAl
2O
3の形成に導く「脱灰」方法の実行可能性も裏付けている。カリ長石のその構成成分への変態は、様々な産業および用途における開示された方法の有用性をさらに強調する役割を果たす。
【0271】
第13表.SEMおよびEDSにより特定された相の呼び原子分率
【表13】
【0272】
実施例8:CsNO
3/HNO
3および水酸化テトラメチルアンモニウムにおける浸出を比較するpHおよび濃度に依存する浸出および溶解
浸出の程度は、関連の相におけるカチオンとカリウムとの効果的な交換により増大させ得ることが可能である。カチオン交換がトバモライト相および/または非晶質C-A-S-H相の水和中間層で起こるという提案に基づいて、想定される交換部位が適合し得るカチオンのサイズには制限があるはずである。したがって、浸出を多数の浸出溶液において評価することで、交換の後にカリウム(K)の放出が可能なカチオンのサイズに関して理解を得た。特に、それぞれ1.67Åおよび約4.5Åのカチオン半径を有するCs
+およびNMe
4
+(TMA)を比較した。CsNO
3/HNO
3の浸出溶液(pH5)を使用して、放出されたKの量は、pH5のHNO
3と比較して大幅に高められた(
図37A)。Cs
+が、その適切なサイズに基づき、K
+とのカチオン交換において非常に有効であることが判明した。他方で、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)からの大きなTMAカチオンは、K
+を含む部位とのイオン交換で効果的ではない。また、それらの結果から、水酸化物を媒介した骨格の溶解が固相からのK放出の主要な機構ではないことが明らかである。依然として、乾燥された水熱改質材料は、約pH12の塩基性条件下で安定であることが示される。
【0273】
酢酸バッファー中での鉱物放出
緩衝された浸出条件を、標準的なHNO
3溶液(pH5)と比較した。酢酸バッファー(pH5.3)の存在下でのK放出は、僅かだけ高まるが、僅かに酸性のバッファー条件は、Ca含有相の溶解を実質的に促進する(
図37B)。pH5.3の緩衝溶液中で実証されるように、乾燥された水熱改質材料の成分は、該材料が酸性のpHレベルに供されると溶解され得る。さらに、該材料は、酸性条件下で有用な可溶性のAl源として役に立ち得る(データについては
図37Bおよび
図26を参照)。
【0274】
すすぎ後の乾燥された水熱改質材料におけるCsNO
3中の元素浸出
実施例7(
図32)で使用した条件と同様に、固相のK放出の寄与を可溶性成分から分離するために、乾燥された水熱改質材料を水ですすいだ。この研究における主要な違いは、CsNO
3/HNO
3浸出溶液を、固相もCs
+との効果的なカチオン交換により増強され得るかどうかを理解するために利用したことである。
【0275】
固相からのKは、放出のために利用可能な全体のKの割合を含むため、ArまたはCO
2のいずれかを用いて乾燥されたすすぎ後の材料は、HNO
3浸出溶液中で、相応の未すすぎの試料よりも低いK放出を示す(
図37D)。この違いは、乾燥された水熱改質材料中の可溶性/速放性のKの割合を示す。CO
2乾燥の場合に、物質収支は、HT-CO
2において失われたKが固相中にあることを指示している(すなわち、炭酸化により再分配されたK、
図37Eを参照)。
【0276】
図37Dおよび
図37Fにおいて、乾燥された水熱改質材料であって、引き続き水ですすいで、その後に種々の雰囲気条件下で再乾燥させた材料におけるK浸出間で比較がなされる。そのデータに基づいて、固相の成分が、Csの取り込みおよびKの放出を促進することが判明した。これは、CsNO
3/HNO
3中でそれぞれ浸出を受けた3つの材料(HT-Ar、すすぎ後のHT-Ar、およびすすぎ後のHT-CO
2)によって、すべて、HNO
3溶液だけが使用される場合よりも多くのKが放出されることが裏付けられる(
図37対
図37D)。さらに、CsNO
3の存在下でのCO
2下での乾燥は、CsNO
3中での浸出と同じ効果を有することが判明し、こうして可溶性のKを増やすためのもう1つの手法が得られる。
【0277】
実施例9:乾燥された水熱改質材料をさらに還流させる効果
乾燥された水熱改質材料を、以下のように製造した:
1)100gの水中の25gの供給混合物(Ca/Si=0.3)。
2)水熱処理を、200℃で5時間にわたり実施した。
3)混ぜ合わせた固体/上澄みを、空気雰囲気下で100℃~110℃で18時間乾燥させた。
【0278】
次いで、乾燥された水熱改質材料をさらに90℃で還流させて、この処理の効果を試験した。5時間の処理時間で、かつ空気雰囲気を使用して、第14表にまとめられる複雑な鉱物学が達成された。主成分は、Kfs(44.5%の混ざった正長石/微斜長石)、非晶質相(26.7%)、およびトバモライト(17%)であった。トバモライトは、追加の還流なしで製造された乾燥された水熱改質材料よりも大幅に多量に存在していた。
【0279】
【0280】
還流された乾燥された水熱改質材料は、そのK放出特性についても研究された(
図36)。試験された条件を比較すると、還流を24時間にわたり実施した場合に浸出はより多くなることが判明した。時間量を96時間に延長すると、材料がKを放出する能力は大幅に衰えた。1つ以上の特定の相におけるKの捕捉は、得られた結果を説明することができる。
【0281】
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