(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】冷却水系統設備の制御方法、冷却水系統設備の制御装置
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20240312BHJP
F28B 9/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F28F27/00 501E
F28F27/00 501B
F28F27/00 501A
F28B9/06
(21)【出願番号】P 2022133787
(22)【出願日】2022-08-25
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝英
(72)【発明者】
【氏名】平田 有史
(72)【発明者】
【氏名】山本 信彦
(72)【発明者】
【氏名】村山 智則
(72)【発明者】
【氏名】富川 正宏
(72)【発明者】
【氏名】今村 敏也
(72)【発明者】
【氏名】小島 久幸
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠揮
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257221(JP,A)
【文献】実開昭58-042596(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106931603(CN,A)
【文献】特開昭55-137392(JP,A)
【文献】特開2004-069134(JP,A)
【文献】特開2022-075895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F28B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、冷却塔ファンにより前記冷却水の熱を放散する冷却塔と、を備える冷却水系統設備の制御方法であって、
前記冷却塔ファンのファン回転数に対する前記冷却水ポンプのポンプ回転数の比率が、所定の最適回転数比率を保つように、前記ファン回転数および前記ポンプ回転数を制御
し、
前記最適回転数比率は、前記ファン回転数が、定格回転数の時における前記冷却塔ファンの動力Pf0と、前記ポンプ回転数が、定格回転数の時における前記冷却水ポンプの動力Pp0と、に基づく定数であり、
前記ファン回転数に基づいて前記ポンプ回転数を制御する場合、前記ポンプ回転数は、前記ファン回転数に、
ファン基準最適回転数比率Rfp=(Pf0/Pp0)^(1/3)
を乗じて算出し、
前記ポンプ回転数に基づいて前記ファン回転数を制御する場合、前記ファン回転数は、前記ポンプ回転数に、
ポンプ基準最適回転数比率Rpf=(Pp0/Pf0)^(1/3)
を乗じて算出する、冷却水系統設備の制御方法。
【請求項2】
熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、を備える冷却水系統設備を制御する、冷却水系統設備の制御装置であって、
前記冷却塔ファンのファン回転数に対する前記冷却水ポンプのポンプ回転数の比率が、所定の最適回転数比率を保つように、前記ファン回転数および前記ポンプ回転数を制御
し、
前記最適回転数比率は、前記ファン回転数が、定格回転数の時における前記冷却塔ファンの動力Pf0と、前記ポンプ回転数が、定格回転数の時における前記冷却水ポンプの動力Pp0と、に基づく定数であり、
前記ファン回転数に基づいて前記ポンプ回転数を制御する場合、前記ポンプ回転数は、前記ファン回転数に、
ファン基準最適回転数比率Rfp=(Pf0/Pp0)^(1/3)
を乗じて算出し、
前記ポンプ回転数に基づいて前記ファン回転数を制御する場合、前記ファン回転数は、前記ポンプ回転数に、
ポンプ基準最適回転数比率Rpf=(Pp0/Pf0)^(1/3)
を乗じて算出する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
第1制御部と、第2制御部と、第3制御部と、を有し、
前記第1制御部は、前記冷却塔の冷却能力に基づいて算出した、前記ファン回転数を制御するファン回転数制御信号を出力し、
前記第2制御部は、所定の制御対象プロセス量をフィードバック制御してフィードバック補正信号を出力し、
前記第3制御部は、前記第1制御部が出力した前記ファン回転数制御信号を、前記第2制御部が出力した前記フィードバック補正信号で補正して得られたファン回転数指令値に基づいて、前記ファン回転数を制御し、
前記第3制御部は、補正した前記ファン回転数制御信号に、前記ファン基準最適回転数比率を乗じて算出したポンプ回転数制御信号に基づいて、前記ポンプ回転数を制御する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
第1制御部と、第2制御部と、第3制御部と、を有し、
前記第1制御部は、前記冷却塔の冷却能力に基づいて算出した、前記ポンプ回転数を制御するポンプ回転数制御信号を出力し、
前記第2制御部は、所定の制御対象プロセス量をフィードバック制御してフィードバック補正信号を出力し、
前記第3制御部は、前記第1制御部が出力した前記ポンプ回転数制御信号を、前記第2制御部が出力した前記フィードバック補正信号で補正して得られたポンプ回転数指令値に基づいて、前記ポンプ回転数を制御し、
前記第3制御部は、補正した前記ポンプ回転数制御信号に、前記ポンプ基準最適回転数比率を乗じて算出したファン回転数制御信号に基づいて、前記ファン回転数を制御する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
第4制御部と、第5制御部と、を有し、
前記第4制御部は、所定の制御対象プロセス量をフィードバック制御し、前記ファン回転数を制御するファン回転数制御信号を出力し、
前記第5制御部は、前記第4制御部が出力した前記ファン回転数制御信号に基づいて前記ファン回転数を制御し、
前記第5制御部は、前記ファン回転数制御信号に、前記ファン基準最適回転数比率を乗じて算出したポンプ回転数制御信号に基づいて、前記ポンプ回転数を制御する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
第4制御部と、第5制御部と、を有し、
前記第4制御部は、所定の制御対象プロセス量をフィードバック制御し、前記ポンプ回転数を制御するポンプ回転数制御信号を出力し、
前記第5制御部は、前記第4制御部が出力した前記ポンプ回転数制御信号に基づいて前記ポンプ回転数を制御し、
前記第5制御部は、前記ポンプ回転数制御信号に、前記ポンプ基準最適回転数比率を乗じて算出したファン回転数制御信号に基づいて、前記ファン回転数を制御する、冷却水系統設備の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系統設備を省エネルギー化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱負荷の冷却に冷却塔を用いた冷却水設備が多く用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
冷却塔を用いた冷却水設備における冷却水系統(以下「冷却水系統設備」という)は、
図1に示すように、冷却塔ファン41を設置した冷却塔31と、熱負荷QLと冷却塔31の間に冷却媒体である冷却水を循環する冷却水ポンプ45と、から構成されている。
【0004】
冷却塔31は、水の気化熱により水温を下げる原理であり、散水した水に冷却塔ファン41により大気を送風し、水の気化を促すことで、熱放散を行っている。
【0005】
冷却塔31は、その冷却原理より熱の放散先である大気の状態(大気湿球温度)により、その冷却能力は大きく変化する。
【0006】
冷却塔31は、冷却能力が低下する高湿球温度帯においても、対象の最大熱負荷を熱放散できるように設計するのが一般的である。
【0007】
大気の湿球温度は、
図2のグラフに示すように、夏季は25℃程度まで上昇するのに対して、冬季は5℃程度まで低下する。そのため、冷却水系統設備は、年間の大半をオーバスペック状態で運転することとなり、無駄なエネルギー消費となりやすい。
【0008】
限られたエネルギーを有効に活用し、持続可能な社会を実現するために、無駄なエネルギー消費を無くす省エネルギーが課題となっており、大気状態において変動する冷却塔31の冷却能力に見合うように、冷却水系統の補機である冷却塔ファン41や冷却水ポンプ45の消費エネルギーを制御することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、冷却水ポンプの回転数と冷却塔ファンの回転数の比率が、所定の最適回転数比率を保つように制御し、冷却水ポンプと冷却塔ファンの合計動力を削減して、省エネルギー効果を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
冷却水系統設備は、熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、を備える。
【0012】
冷却水系統設備の制御方法は、前記冷却塔ファンのファン回転数と、前記冷却水ポンプのポンプ回転数が、所定の最適回転数比率を保つように、前記ファン回転数および前記ポンプ回転数を制御する。最適回転数比率は、冷却塔ファンの動力と、冷却水ポンプの動力の合計動力を最小とするときの回転数の比率である。
【0013】
本技術は、冷却水系統設備の制御方法及び制御装置に適用することが出来る。また、冷却水系統設備の制御プログラムにも適用することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本技術は、冷却水系統設備の省エネルギー効果を、向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】冷却指数と冷却塔ファンの回転数の積と、復水器出入口冷却水温度差との関係を示す図
【
図7】冷却指数と冷却塔ファンの回転数指令値の関係を示すグラフ
【
図8】相対湿度xと乾湿温度差ΔTaの関係を示すグラフ
【
図9】乾球温度Taに対する1次項Pと定数項Qをまとめた図表
【
図11】湿球温度-ファン回転数の関係を示すグラフ
【
図13】湿球温度-ファン動力差の関係を示すグラフ
【
図14】ΔT(熱負荷変動)とΔTqの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
冷却水系統設備の概要を説明する。
冷却水系統設備は、熱負荷に対して冷却水を循環させる冷却水ポンプと、熱を放散する冷却塔ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より前記熱負荷に供給する冷却塔と、を備える。
【0017】
一般に、冷却塔の冷却能力は、「冷却塔入口冷却水温度」と「大気の湿球温度」の温度差が大きいほど向上するため、一定ではない。特許文献1の冷却水系統設備では、「冷却塔入口冷却水温度」と「大気湿球温度」の温度差である「冷却指数ΔTq」に基づき、冷却塔の冷却能力を推定している。
【0018】
冷却塔ファンのファン回転数を、冷却塔の冷却指数ΔTqに基づいて制御することで、冷却能力に応じた回転数制御が可能となる。これにより、冷却塔ファンの消費エネルギーを削減して、省エネルギー効果が得られる。しかし、特許文献1の構成では、熱負荷QLの変動が考慮されていないため、冷却塔ファンの消費エネルギーをさらに低減できる余地があった。
【0019】
冷却塔ファンに限らず、冷却水ポンプのポンプ回転数を制御する場合も同様の課題がある。更に、冷却水系統設備を復水器以外の熱負荷の冷却に用いる場合も、冷却塔ファンや冷却水ポンプの消費エネルギーを削減することが望ましい。
【0020】
また、特許文献1の構成では、冷却水ポンプと冷却塔ファンを個別に制御しており、ポンプ回転数とファン回転数はそれぞれ独立して変動する。その結果、冷却水ポンプと冷却塔ファンの合計動力が大きくなり、省エネルギー効果が低下する可能性があった。
【0021】
本発明に係る冷却水系統設備の制御装置は、前記冷却塔ファンと前記冷却水ポンプの合計動力を最小とする回転数の比率である最適回転数比率を保つように、冷却塔ファンのファン回転数と、冷却水ポンプのポンプ回転数を制御する。冷却水系統設備の制御装置は、第1制御部と、第2制御部と、第3制御部と、を備える。
【0022】
前記第1制御部は、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を、大気の湿球温度と冷却塔入口冷却水温度に基づいて、算出し、その冷却指数に基づき前記冷却塔ファン又は前記冷却水ポンプのいずれかの回転数制御信号(ファン回転数制御信号またはポンプ回転数制御信号。以下「先行信号」という)を算出し、出力する。第2制御部は、所定の制御対象プロセス量を設定値と一致させるように、フィードバック制御を行い、フィードバック補正信号を出力する。第3制御部は、第1制御部の出力を第2制御部の出力で補正した回転数指令値に基づいて、前記冷却塔ファンと前記冷却水ポンプの各回転数を、合計動力を最小にする最適回転数比率を保つように、制御する。
【0023】
本発明の構成では、冷却水系統の補機(冷却塔ファンおよび冷却水ポンプ)の消費エネルギーを、冷却塔の冷却能力と熱負荷の変動に応じて制御でき、冷却水系統を省エネルギー化することが出来る。
【0024】
以下に、本発明において、冷却塔ファンのファン回転数及び冷却ポンプのポンプ回転数を制御する構成について、説明する。
【0025】
図3に示す冷却水系統において、発電設備が定格出力している状態では、蒸気タービン10の排気熱量(熱負荷QL)は一定である。蒸気タービン10の排気熱量(熱負荷QL)が一定の条件で、復水器20の器内温度を一定に制御するには、復水器20の熱交換量を一定に制御する必要がある。
【0026】
復水器20の熱交換量は、復水器出入口冷却水温度差ΔT32(出口冷却水温度HWTと入口冷却水温度LWTの差)と冷却水流量Fの積に比例するため、ΔT32×F=一定である。また、冷却水流量Fと冷却水ポンプ45のポンプ回転数Prpmは比例するため、下記の(X1)式となる。
【0027】
ΔT32×Prpm=一定・・・(X1)
【0028】
図4は、蒸気タービン排気熱量(熱負荷QL)が一定の条件で、復水器20の器内温度(真空)を一定に制御している場合において、復水器出入口冷却水温度差ΔT
32に対するΔTq×Frpmの運転実績値を示すグラフであり、縦軸をΔT
32、横軸をΔTq×Frpmとしている。
【0029】
図4に示すように、ΔT
32と、ΔTq×Frpmは、おおむね比例するため、次式となる。
【0030】
k1×(ΔTq×Frpm)=ΔT32・・・(X2)
k1は比例定数である。
【0031】
(X1)式、(X2)式より、(X3)式が得られる。
ΔT32×Prpm=k1×(ΔTq×Frpm)×Prpm=一定
ΔTq×Frpm×Prpm=一定=定数A・・・・(X3)
【0032】
運転データまたは冷却塔仕様書から、冷却塔ファン41のファン回転数Frpm=100%、冷却水ポンプ45のポンプ回転数Prpm=100%における冷却塔入口冷却水温度(=復水器出口冷却水温度)、湿球温度を基準値として、(X3)式に代入して、定数Aを算出する。
【0033】
定数Aは、基準値における冷却指数ΔTqとなり、これをΔTq0とする。ΔTq0を、(X3)式に代入すると、以下の(X4)式が得られる。
【0034】
ΔTq×Frpm×Prpm=ΔTq0・・・・(X4)
ΔTq0は、基準となる冷却指数(以下、「基準冷却指数」という)であり、冷却塔ファン41、冷却水ポンプ45共に、100%回転時の冷却指数ΔTqである。
【0035】
熱負荷QLが一定の場合、冷却指数ΔTq、ファン回転数Frpm%、ポンプ回転数Prpm%について、(1)式の関係が成り立つ。これは、上記の通り、冷却水系統設備の運転実績値のデータ(
図4)により、検証されており、復水器用の冷却水系統設備に限らず、他の用途に使用する場合にも、適用できる。
【0036】
ΔTq0=ΔTq×Frpm%×Prpm%=一定・・・(1)
【0037】
Frpm%は、ファン回転数Frpmの定格回転数(100%)に対する割合、Prpm%は、ポンプ回転数Prpmの定格回転数(100%)に対する割合である。「ファン」は冷却塔ファン41、「ポンプ」は冷却水ポンプ45である。
【0038】
ファン動力Pf、ポンプ動力Ppは、一般的に、それぞれの回転数の3乗に比例するため、冷却水系統の補機合計動力Pは次のとおりである。ここで、ファン100%回転数時のファン動力をPf0、ポンプ100%回転数時のポンプ動力をPp0とする。{^}の記号は累乗を示す。
【0039】
Pf=Pf0×Frpm%^3
Pp=Pp0×Prpm%^3
P=Pf+Pp・・・(2)
【0040】
(1)式からPrpm%=△Tq0/△Tq/ Frpm%となり、これを(2)式に代入すると、下記に示すように、Pは、Frpm%の関数として、表すことが出来る。
P=Pf0×Frpm%^3+Pp0×(△Tq0/△Tq/ Frpm%)^3・・・(2-1)
【0041】
Pが最小になるように、(2-1)式を微分して極小点となるFrpm%を求めることで、(3)式で示すように、Pを最小とするファンの最適回転数Frpm%が得られる。
【0042】
同様の方法で、(4)式で示すように、Pを最小とするポンプの最適回転数Prpm%が得られる。
【0043】
Frpm%=(Pp0/Pf0)^(1/6)×(ΔTq0/ΔTq)^(1/2)・・・(3)
Prpm%=(Pf0/Pp0)^(1/6)×(ΔTq0/ΔTq)^(1/2)・・・(4)
【0044】
熱負荷QLが変動する場合、熱負荷QLは、熱負荷基準値QL0を用いて、次式で表すことができる。ここで、「熱負荷基準値QL0」は、(3)式または(4)式において、ファン、ポンプ最適回転数となる時の熱負荷QLである。
【0045】
QL=kq×QL0
kq=QL/QL0・・・(5)
(kq:熱負荷補正係数)
【0046】
そして、(X3)式より、冷却指数ΔTqは、熱負荷QLに比例するため、熱負荷QLにおける基準冷却指数はkq×ΔTq0となる。尚、(X3)式の定数Aは、熱負荷QLに比例する関係がある。
【0047】
基準冷却指数がkq×ΔTq0の時のファン、ポンプの最適回転数を(1)式と(2)式から求めると、以下の通りである。Frpmkq%はファンの最適回転数、Prpmkq%はポンプの最適回転数である。
【0048】
Frpmkq%=(Pp0/Pf0)^(1/6)×(kq×ΔTq0/ΔTq)^(1/2)
Frpmkq%=kq^(1/2)×Frpm%・・・・(3-1)
Prpmkq%=(Pf0/Pp0)^(1/6)×(kq×ΔTq0/ΔTq)^(1/2)
Prpmkq%=kq^(1/2)×Prpm%・・・・(4-1)
【0049】
すなわち、ファン、ポンプとも、熱負荷基準値QL0における最適回転数に、「kq^(1/2)」を掛け合せることで、熱負荷QLにおける最適回転数とすることができる。
【0050】
熱負荷QLは、冷却塔出入口冷却水温度差ΔTと冷却水流量Fの積となり、(7)式よりkqを求める。ΔT0はQL0時の冷却塔出入口冷却水温度差ΔT、F0はQL0時の冷却水流量Fである。
【0051】
QL=ΔT×F・・・(6)
kq=(ΔT×F)/(ΔT0×F0)・・・(7)
【0052】
そのため、冷却塔入口冷却水温度HWT、冷却塔出口冷却水温度LWT及び冷却水流量Fを測定すれば、熱負荷補正係数kqを求めることができ、(3-1)式、(4-1)式から、ファンおよびポンプの最適回転数を求めることができる。
【0053】
また、熱負荷補正係数kqは、(7)式に限らず、冷却水系統設備の用途や補機の制御内容によって、別の指標を用いて求めることが可能である。
【0054】
ポンプの最適回転数Prpmkq%とファンの最適回転数Frpmkq%の比率を(3-1)式、(4-1)式から求めると、(8)式となる。
ポンプ最適回転数/ファン最適回転数=Prpmkq%/ Frpmkq%=Prpm%/ Frpm%
=(Pf0/Pp0)^(1/3)・・・(8)
【0055】
(8)式より、ファン回転数を基準とした最適回転数比率(以下「ファン基準最適回転数比率Rfp」という)は、冷却指数△Tq、基準冷却指数△Tq0および熱負荷補正係数kqに無関係となり、ファン100%回転数時のファン動力Pf0とポンプ100%回転数時のポンプ動力Pp0によって決まる定数となる。
ファン基準最適回転数比率Rfp=(Pf0/Pp0)^(1/3)・・・(8)(再掲)
【0056】
同様に、ポンプ回転数を基準とした最適回転数比率(以下「ポンプ基準最適回転数比率Rpf」という)も、冷却指数△Tq、基準冷却指数△Tq0および熱負荷補正係数kqに無関係となり、ファン100%回転数時のファン動力Pf0とポンプ100%回転数時のポンプ動力Pp0によって決まる定数となる。
ポンプ基準最適回転数比率Rpf=(Pp0/Pf0)^(1/3)・・・(9)
【0057】
このように、ファン回転数制御信号に、ファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて、ポンプ回転数制御信号を算出し、ファン回転数およびポンプ回転数を制御すれば、常に、ファンとポンプの合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0058】
又、ポンプ回転数制御信号に、ポンプ基準最適回転数比率Rpfを乗じて、ファン回転数制御信号を算出し、ファン及びポンプの回転数を制御すれば、常に、ファンとポンプの合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0059】
<実施形態1>
1.冷却水系統設備の構成
図5は、汽力発電設備1の復水器20を冷却する冷却水系統設備30Aの構成を示すブロック図である。汽力発電設備1は、例えば、定格出力7000[kw]程度の小型バイオマス発電設備である。
【0060】
汽力発電設備1は、蒸気を発生するボイラ(図略)と、蒸気タービン10と、蒸気タービン10により発電する発電機15と、熱交換器である復水器20と、復水器20に冷却媒体である冷却水を供給する冷却水系統設備30Aを含む。
【0061】
蒸気タービン10から復水器20の器内に排出された蒸気は、復水器20を流れる冷却水と熱交換して水に戻ることで、復水器20の器内は真空に維持される。復水器20の真空を維持することで、蒸気タービン10の回転が安定し、発電機15の発電効率の維持が可能である。
【0062】
復水器20は、器内温度計21を有している。器内温度計21は、復水器20の器内温度EXT、つまり復水器内の排蒸気温度を計測する。
【0063】
冷却水系統設備30Aは、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、2つの補機として冷却塔ファン41及び冷却水ポンプ45を含む。
【0064】
冷却水は、冷却塔31から往路管32を通って、復水器20に供給される。復水器20で蒸気と熱交換した戻り冷却水は、復水器20から復路管33を通って、冷却塔31に戻る。
【0065】
冷却塔31に帰還した戻り冷却水は、気化しやすいように、冷却塔内にてシャワーリングされ、大気と熱交換して一部が蒸発する。水分蒸発に伴い発生する気化熱を外気に放出することで、戻り冷却水は冷却される。その際に、水分蒸発を促進するため、冷却塔31は、熱を放散する冷却塔ファン41を有している。
【0066】
冷却塔ファン41を駆動する駆動モータ42は、VVVF(可変電圧可変周波数制御装置)43により、ファン回転数を制御することが出来る。駆動モータ42の回転数制御により、冷却塔ファン41の風量を任意に調整することが出来る。
【0067】
冷却水ポンプ45は往路管32に位置する。冷却水ポンプ45を駆動する駆動モータ46は、VVVF47により、ポンプ回転数を制御することが出来る。駆動モータ46の回転数制御により、冷却水流量Fを任意に調整することが出来る。
【0068】
冷却塔31には、大気温度計51と相対湿度計52とが設けられている。大気温度計51は乾球温度計であり、大気の乾球温度Taを計測し、相対湿度計52は、相対湿度xを計測する。
【0069】
また、往路管32と復路管33には、水温計53、54が設けられている。水温計53は、往路管32のうち復水器20の入口部分にあって、復水器入口冷却水温度(冷却塔出口冷却水温度)LWTを計測する。水温計54は、復路管33のうち冷却塔31の入口部分にあって、冷却塔入口冷却水温度HWTを計測する。これら各計器21、51~54の計測値は、以下に説明する制御装置100に入力される。
【0070】
以下、冷却水系統設備30Aの制御装置100について、
図6を参照して説明する。制御装置100は、第1制御部110と、第2制御部120と、第3制御部130と、を有している。
【0071】
第1制御部110は、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却塔ファン41のファン回転数を算出し、ファン回転数制御信号を先行信号として出力する。第1制御部110は、
図6に示すように、湿球温度演算部112、第1演算部114、第2演算部116を含む。
【0072】
湿球温度演算部112は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、大気の湿球温度WBTを演算する回路である。湿球温度WBTの計測原理は、後に説明する。
【0073】
第1演算部114は、(10)式で示すように、冷却塔入口冷却水温度HWT(戻り冷却水の温度)から湿球温度演算部112より出力される大気の湿球温度WBTを減算して、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数ΔTqを算出する。第1演算部114は、例えば、差分器より構成することが出来る。
【0074】
ΔTq=HWT-WBT・・・(10)
【0075】
第2演算部116は、熱負荷QL0において、冷却指数ΔTqに対応する回転数指令値Frpm_0を、(3)式に従って算出するプログラムを有しており、冷却指数ΔTqから回転数指令値Frpm_0を、決定する。
図7に示す相関特性は、(3)式をグラフ化したものであり、例えば、冷却指数ΔTqが「A」の場合、回転数指令値Frpm_0は、「B」に決定される。
【0076】
第2演算部116は、冷却指数ΔTqに対応する回転数指令値Frpm_0を、(3)式に従って算出するものであれば、関数発生器を用いた構成でもよいし、参照テーブルを用いた構成でもよい。
【0077】
第2制御部120は、復水器20の器内温度EXTが復水器器内温度設定器124により設定した、目標器内温度EXT0に一致するように、フィードバック制御する。第2制御部120は、差分器122と、比例積分器126を有している。
【0078】
差分器122には、設定器124から、復水器20の目標器内温度EXT0が入力される。設定器124は目標温度EXT0の手動入力が可能である。
【0079】
また、差分器122には、器内温度計21により計測される復水器20の器内温度EXTの計測値が入力される。差分器122は、器内温度計21により計測される器内温度EXTから目標器内温度EXT0を減算して、復水器20の器内温度EXTの目標温度EXT0に対する偏差を算出する。
【0080】
比例積分器126は、差分器122の出力する偏差の比例成分と累積成分に基づいて補正信号を算出し、第3制御部130に出力する。
【0081】
また、熱負荷QLが変化すると、制御対象プロセス量である復水器器内温度EXTが変化する。復水器器内温度EXTの変化に対して、第2制御部120でフィードバック補正信号を算出することが出来るため、第2制御部120により、熱負荷QLの変化に対する補正を掛けることが出来る。
【0082】
尚、第2制御部120は、復水器20の器内温度EXTを目標器内温度EXT0にフィードバック制御する場合に限らず、復水器20の器内圧力(絶対圧)を目標器内圧力にフィードバック制御する構成でもよい。
【0083】
第3制御部130は、加算器132と、信号発生器134と、乗算器136を有している。
【0084】
加算器132は、第1制御部110の出力である先行信号Frpm_0に、第2制御部120の出力であるフィードバック補正信号を加算し、補正後の冷却塔ファン回転数指令値Frpm_1を冷却塔ファンVVVF43に出力する。
【0085】
信号発生器134は、ファン基準最適回転数比率Rfpを設定する。乗算器136は、補正後の冷却塔ファン回転数指令値Frpm_1に、信号発生器134で設定したファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて、冷却水ポンプ回転数指令値Prpm_1を冷却水ポンプVVVF47に出力する。
【0086】
このように、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の両補機の回転数を制御することで、常に、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0087】
特許文献1では、冷却塔ファン41又は冷却水ポンプ45のいずれか一方を、冷却指数に基づくプログラム制御、他方を復水器器内温度によるフィードバック制御として構成しているため、両補機は独立した制御となる。そのため、合計動力が最小となる回転数の組合せから、外れる場合があるが、本構成では、1つの制御信号に、最適回転数比率を乗じて、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の両補機の回転数を制御するため、常に、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0088】
また、熱負荷QLの変化に対しては、第2制御部120で算出するフィードバック補正信号により補正を掛けることが出来るため、熱負荷QL補正回路を省略することが出来る。
【0089】
以上は、冷却塔ファン回転数制御を基準として、ファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて冷却水ポンプ回転数制御も行う制御装置100について説明したが、冷却水ポンプ回転数制御を基準として、ポンプ基準最適回転数比率Rpfを乗じて冷却塔ファン回転数制御も行う制御装置を構成することも出来る。
【0090】
2.湿球温度WBTの演算原理
図8は、乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTaの関係を示すグラフであり、横軸は相対湿度x[%]、縦軸は乾湿温度差ΔTa[℃]である。乾湿温度差ΔTaは、乾球温度Taから湿球温度WBTを引いた値である。
【0091】
ΔTa=Ta-WBT・・・(11)
【0092】
図8に示すL1~L7は、各乾球温度5℃~35℃について、相対湿度xと乾湿温度差ΔTaの関係を示す近似直線である。各近似直線L1~L7は、以下の1次近似式で表すことができる。
【0093】
ΔTa=Px+Q・・・(12)
Pは近似直線Lの1次項(直線の傾き)、Qは近似直線の定数項、xは相対湿度である。
【0094】
図9は、各乾球温度Taについて、1次近似式ΔTaの1次項Pと定数項Qをまとめた図表である。1次項Pは負の値であり、大きさ(絶対値)は乾球温度が高い程、大きい。また、定数項Qは正の値であり、大きさ(絶対値)は乾球温度が高い程、大きい。
【0095】
(11)式と(12)式より、湿球温度WBTは、以下の(13)式で、算出することができる。
【0096】
WBT=Ta-ΔTa=Ta-(Px+Q)・・・(13)
【0097】
湿球温度演算部112は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、(13)式に基づいて、大気の湿球温度WBTを演算する。「P」、「Q」のデータは、メモリ等に記憶しておき、乾球温度Taに対応する値を読み出して使用してもよいし、乾球温度Taから計算で求めてもよい。計算方法は、「特開2020-134230」に開示の方法を用いることが出来る。尚、湿球温度WBTは、湿球温度計の計測値を用いてもよい。
【0098】
3.効果説明
この構成では、大気状態によって変化する冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数△Tqを用いて算出した先行信号に、所定の制御対象プロセス量を設定値と一致させるようにフィードバック補正した信号を加算して、冷却塔ファン41又は冷却水ポンプ45のいずれかの回転数制御を行う。さらに、他方の補機については、その回転数制御制御信号に合計動力を最小にする最適回転数比率を乗じて回転数制御を行う。その結果、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力を、常に最小に保ち制御することが出来るため、エネルギー消費をより確実に引下げることが出来る。
【0099】
この構成では、熱負荷QLの変化に対しては、第2制御部120で算出するフィードバック補正信号により補正を掛けることが出来るため、熱負荷QL補正回路を省略することが出来る。
【0100】
<実施形態2>
実施形態1では、冷却水系統設備30Aを用いて、蒸気タービン10から復水器20に排気される蒸気を冷却する例を示した。実施形態2では、冷却水系統設備30Bを復水器20以外の用途に使用する場合について説明する。
【0101】
冷却水系統設備30Bを復水器20(蒸気の冷却)以外の用途に用いる場合、復水器器内温度に代わるフィードバック制御対象を選定する必要がある。フィードバック制御の対象として、「冷却塔出口冷却水温度LWT」と「冷却塔入口冷却水温度HWT」が考えられるため、省エネルギー化の観点から、どちらが適しているか、検討を行った。
【0102】
冷却塔設計条件は、
図10に示す通りである。
・冷却塔設計条件を、基準値として、動力削減効果について、試算した。
・制御の操作対象は冷却塔ファン41のファン回転数とした。
・試算は、フィードバック制御対象をHWTとLWTで実施した。
・以降、制御対象HWTを「HWT制御」、制御対象LWTを「LWT制御」とする。
・制御設定値(基準値)は、HWT制御はHWT0、LWT制御はLWT0とした。
・両制御について、熱負荷QLが変動した場合の比較を行った。
【0103】
図11はファン回転数のグラフ、
図12はファン動力のグラフ、
図13はHWT制御とLWT制御のファン動力差を示すグラフである。尚、横軸は湿球温度である。
【0104】
本試算では、熱負荷QLの変動による影響を確認するため、熱負荷QLに相当する温度差ΔTを、5~10℃の幅にて、1℃刻みで変化させている。ΔT=HWT-LWTである。
【0105】
ΔTが基準値である8℃よりも低い場合、HWT制御の方がLWT制御に比べてファン回転数、動力は低い結果が得られた。これは、
図14に示すように、HWT制御の方がLWT制御に比べて、冷却指数ΔTqが大きいためと考えることが出来る。
【0106】
ΔTが基準値である8℃の場合、HWT制御とLWT制御のファン回転数、動力は同値となった。
【0107】
ΔTが基準値である8℃よりも高い場合、HWT制御の方がLWT制御に比べてファン回転数、動力は高い結果が得られた。これは、ΔTが高くなることでHWTがHWT0よりも高くなり、冷却指数ΔTqがHWT制御よりも増加するためである。
【0108】
HWT制御とLWT制御のファン動力差は、
図13に示すように、熱負荷QLに相当するΔTが小さくなるほどマイナスとなり、さらに、湿球温度が高くなるほどマイナスとなる。
【0109】
冷却塔31の設計条件(基準値)は、熱負荷QLが最も大きくなるケースとしている場合が一般的であり、この実施形態でも、同様の設定条件(QL0=最大熱負荷)とする。そのため、HWT制御とする方が動力削減効果は大きくなる。従って、この実施形態では、フィードバック制御対象をHWT、つまり冷却塔入口冷却水温度(戻り冷却水温度)とする。
【0110】
尚、熱負荷QLによっては、熱交換器入口冷却水温度を一定にすることが必要となる場合もあり、そのような用途に本技術を用いる場合、フィードバック制御対象をLWT、つまり冷却塔出口冷却水温度(冷却水温度)にすることも可能である。
【0111】
図15は冷却水系統設備30Bのシステム構成図、
図16は制御装置200のブロック図である。
【0112】
冷却水系統設備30Bは、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、2つの補機として冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45を含む。
【0113】
VVVF43は、冷却塔ファン41の制御用、VVVF47は、冷却水ポンプ45の制御用である。
【0114】
図15に示すように、熱交換器500には、往路管32と復路管33が接続されており、冷却塔31より供給される冷却水が、熱交換器500にて相手側の流体(冷却対象物)と熱交換することで、相手側の流体を冷却する。そして、熱交換器500から帰還した戻り冷却水は、冷却塔31にて大気と熱交換して一部が気化することにより、冷却される。
【0115】
冷却水系統設備30Bには、計器類として、大気温度計51、相対湿度計52、水温計53及び水温計54が設けられている。大気温度計51は乾球温度計であり、冷却塔周囲の大気の乾球温度Taを計測し、相対湿度計52は、冷却塔周囲の相対湿度xを計測する。
【0116】
水温計53は、往路管32のうち冷却塔31の出口部分にあって、冷却塔出口冷却水温度LWTを計測する。
【0117】
水温計54は、復路管33のうち冷却塔31の入口部分にあって、冷却塔入口冷却水温度HWTを計測する。これら各計器51~54の計測値は、以下に説明する制御装置200に入力される。
【0118】
以下、冷却水系統設備30Bの制御装置200について、
図16を参照して説明する。制御装置200は、第1制御部210と、第2制御部220と、第3制御部230と、を有している。
【0119】
第1制御部210は、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却塔ファン41のファン回転数を算出し、先行信号として出力する。
【0120】
第1制御部210は、
図16に示すように、湿球温度演算部212、第1演算部214、第2演算部216を含む。
【0121】
湿球温度演算部212は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、大気の湿球温度WBTを演算する。
【0122】
第1演算部214は、(10)式で示すように、冷却塔入口冷却水温度HWT(戻り冷却水の温度)から湿球温度演算部212より出力される大気の湿球温度WBTを減算して、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数ΔTqを算出する。第1演算部214は、例えば、差分器より構成することが出来る。
【0123】
尚、この実施形態では、HWTをフィードバック制御するため、HWTは実測値を使用せず、目標値HWT0を用いる。
【0124】
第2演算部216は、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を算出するプログラムを保持しており、第1演算部214により算出した冷却指数ΔTqから、冷却塔ファン41の回転数指令値Frpm_0を決定する。Frpm_0は、熱負荷QL0において、冷却指数ΔTqに対応した回転数指令値(最適値)である。
【0125】
第2演算部216は、冷却指数ΔTqに対応する回転数指令値Frpm_0を、(3)式に従って算出するものであれば、関数発生器を用いた構成でもよいし、参照テーブルを用いた構成でもよい。
【0126】
第2制御部220は、冷却塔入口冷却水温度HWTが冷却塔入口温度設定器224により設定した、目標温度HWT0に一致するように、フィードバック制御する。第2制御部220は、差分器222と、比例積分器226を有している。
【0127】
差分器222には、設定器224から、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0が入力される。設定器224は目標温度EXT0の手動入力が可能である。
【0128】
また、差分器222には、水温計54により計測される冷却塔入口冷却水温度HWTの計測値が入力される。差分器222は、冷却塔入口冷却水温度HWTから目標温度HWT0を減算して、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0に対する偏差を算出する。
【0129】
比例積分器226は、差分器222の出力する偏差の比例成分と累積成分に基づいて補正信号を算出し、第3制御部230に出力する。
【0130】
また、熱負荷QLが変化すると、制御対象プロセス量である冷却塔入口冷却水温度HWTが変化する。冷却塔入口冷却水温度HWTの変化に対して、第2制御部220でフィードバック補正信号を算出することが出来るため、第2制御部220により、熱負荷QLの変化に対する補正を掛けることが出来る。
【0131】
第3制御部230は、加算器232と、信号発生器234と、乗算器236を有している。
【0132】
加算器232は、第1制御部210の出力である先行信号Frpm_0に、第2制御部220の出力であるフィードバック補正信号を加算し、補正後の冷却塔ファン回転数指令値Frpm_1を冷却塔ファンVVVF43に出力する。
【0133】
信号発生器234は、ファン基準最適回転数比率Rfpを設定する。乗算器236は、補正後の冷却塔ファン回転数指令値Frpm_1に、信号発生器234で設定したファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて、冷却水ポンプ回転数指令値Prpm_1を冷却水ポンプVVVF47に出力する。
【0134】
このように、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の両補機の回転数を制御することで、常に、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0135】
特許文献1では、冷却塔ファン41又は冷却水ポンプ45のいずれか一方を、冷却指数に基づくプログラム制御、他方を所定プロセス量のフィードバック制御として構成しているため、両補機は独立した制御となる。そのため、合計動力が最小となる回転数の組合せから、外れる場合があるが、本構成では、1つの制御信号に、最適回転数比率を乗じて、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の両補機の回転数を制御するため、常に、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0136】
また、熱負荷QLの変化に対しては、第2制御部220で算出するフィードバック補正信号により補正を掛けることが出来るため、熱負荷QL補正回路を省略することが出来る。
【0137】
以上は、冷却塔ファン回転数制御を基準として、ファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて冷却水ポンプ回転数制御も行う制御装置200について説明したが、冷却水ポンプ回転数制御を基準として、ポンプ基準最適回転数比率Rpfを乗じて冷却塔ファン回転数制御も行う制御装置を構成することも出来る。
【0138】
また、この実施形態では、冷却塔入口冷却水温度HWTをフィードバック対象としているので、冷却塔出口冷却水温度LWTをフィードバック対象とする場合に比べて、熱負荷QLがQL0(最大熱負荷)以下の条件下で、冷却塔ファン41の消費エネルギーを削減できる。そのため、冷却水系統設備30Bを、より一層省エネルギー化することが出来る。
【0139】
<実施形態3>
実施形態1と実施形態2では、第1制御部で、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却塔ファン41のファン回転数を算出し、先行信号として出力したが、本実施形態3では、先行信号を用いず、所定の制御対象プロセス量のフィードバック制御信号により、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の回転数を制御する方法について説明する。
【0140】
図17は冷却水系統設備30Cのシステム構成図、
図18は制御装置300のブロック図である。
【0141】
冷却水系統設備30Cは、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、2つの補機として冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45を含む。
【0142】
VVVF43は、冷却塔ファン41の制御用、VVVF47は、冷却水ポンプ45の制御用である。
【0143】
図17に示すように、熱交換器500には、往路管32と復路管33が接続されており、冷却塔31より供給される冷却水が、熱交換器500にて相手側の流体(冷却対象物)と熱交換することで、相手側の流体を冷却する。そして、熱交換器500から戻り冷却水は、冷却塔31にて大気と熱交換して一部が気化することにより、冷却される。
【0144】
冷却水系統設備30Cには、計器類として、フィードバック制御対象である冷却塔入口冷却水温度HWTを計測する水温計54が設けられている。
【0145】
水温計54は、復路管33のうち冷却塔31の入口部分にあって、その計測値は、以下に説明する制御装置300に入力される。
【0146】
以下、冷却水系統設備30Cの制御装置300について、
図18を参照して説明する。制御装置300は、第4制御部310と、第5制御部320と、を有している。
【0147】
第4制御部310は、冷却塔入口冷却水温度HWTが冷却塔入口温度設定器314により設定した、目標温度HWT0に一致するように、フィードバック制御する。第4制御部310は、差分器312と、比例積分器316を有している。
【0148】
差分器312には、設定器314から、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0が入力される。設定器314は目標温度EXT0の手動入力が可能である。
【0149】
また、差分器312には、水温計54により計測される冷却塔入口冷却水温度HWTの計測値が入力される。差分器312は、冷却塔入口冷却水温度HWTから目標温度HWT0を減算して、冷却塔入口冷却水温度HWTの目標温度HWT0に対する偏差を算出する。
【0150】
比例積分器316は、差分器312の出力する偏差の比例成分と累積成分に基づいて、冷却塔ファン41のファン回転数制御信号Frpm_1を算出し、第5制御部320に出力する。
【0151】
また、熱負荷QLが変化すると、制御対象プロセス量である冷却塔入口冷却水温度HWTが変化する。冷却塔入口冷却水温度HWTの変化に対して、第4制御部310でフィードバックにより補正された信号を算出することが出来るため、第4制御部310により、熱負荷QLの変化に対する補正を掛けることが出来る。
【0152】
第5制御部320は、信号発生器322と、乗算器324を有している。
【0153】
第4制御部310の出力である冷却塔ファン回転数指令値Frpm_1は、第5制御部320に入力され、冷却塔ファンVVVF43に出力される。
【0154】
信号発生器322は、ファン基準最適回転数比率Rfpを設定する。乗算器324は、冷却塔ファン回転数指令値Frpm_1に、信号発生器322で設定したファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて、冷却水ポンプ回転数指令値Prpm_1を冷却水ポンプVVVF47に出力する。
【0155】
このように、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の両補機の回転数を制御することで、常に、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力を最小に保ち制御することが出来る。
【0156】
本実施形態3は、実施形態2に比べ、計器類として、フィードバック制御対象のプロセス量の計測用に限定でき、さらに、制御装置300を簡素化できる利点がある。
【0157】
また、熱負荷QLの変化に対しては、第4制御部310でのフィードバック制御により補正を掛けることが出来るため、熱負荷QL補正回路を省略することが出来る。
【0158】
しかし、大気状態によって変化する冷却塔31の冷却能力による先行信号がないことから、フィードバック制御の振り幅が大きくなり、実施形態2に比べ、制御性が悪化し、冷却塔ファン41と冷却水ポンプ45の合計動力の振り幅も大きくなることが懸念される。
【0159】
以上は、冷却塔ファン回転数制御を基準として、ファン基準最適回転数比率Rfpを乗じて冷却水ポンプ回転数制御も行う制御装置300について説明したが、冷却水ポンプ回転数制御を基準として、ポンプ基準最適回転数比率Rpfを乗じて冷却塔ファン回転数制御も行う制御装置300を構成することも出来る。
【0160】
また、この実施形態では、冷却塔入口冷却水温度HWTをフィードバック対象としているので、冷却塔出口冷却水温度LWTをフィードバック対象とする場合に比べて、熱負荷QLがQL0(最大熱負荷)以下の条件下で、冷却塔ファン41の消費エネルギーを削減できる。そのため、冷却水系統設備30Cを、より一層省エネルギー化することが出来る。
【0161】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0162】
(1)実施形態1では、冷却塔31の冷却指数ΔTqに応じて設定したプログラム(先行信号)をフィードバック制御で補正した冷却塔ファン41の回転数指令値にファン基準最適回転数比率を乗じて、冷却水ポンプ45の回転数指令値とした。冷却指数ΔTqに応じて設定したプログラム(先行信号)をフィードバック制御で補正した冷却水ポンプ45の回転数指令値にポンプ基準最適回転数比率を乗じて、冷却塔ファン41の回転数指令値としてもよい。実施形態2も同様である。
【0163】
また、フィードバック制御は、制御目標値に対する偏差を小さくするように補機を制御するものであれば、カスケードタイプの制御でもよい。
【0164】
(2)実施形態1では、冷却塔31の冷却指数ΔTqに応じて設定したプログラムを先行信号としたが、実施形態3に示すように、先行信号を用いずに、所定の制御対象プロセス量のフィードバック制御信号を冷却塔ファン41の回転数指令値とするとともに、それにファン基準最適回転数比率を乗じて、冷却水ポンプ45の回転数指令値としてもよい。同様に、冷却指数ΔTqに応じて設定したプログラムを先行信号として用いずに、所定の制御対象プロセス量のフィードバック制御信号を冷却水ポンプ45の回転数指令値とするとともに、それにポンプ基準最適回転数比率を乗じて、冷却塔ファン41の回転数指令値としてもよい。実施形態2も同様である。
【0165】
(3)実施形態2では、冷却塔入口冷却水温度HWTを制御対象に選定し、フィードバック制御による補正を行った。冷却塔出口冷却水温度LWTを制御対象に選定し、フィードバック制御による補正を行ってもよい。実施形態3も同様である。また、先行信号を用いずに、フィードバック制御のみで実施する場合も同様である。
【0166】
(4)実施形態1では、冷却塔31の冷却指数ΔTqを、冷却塔入口冷却水温度HWTと大気の湿球温度WBTの温度差HWT-WBTを用いて表した。冷却塔31の冷却指数ΔTqは、冷却塔入口冷却水温度HWTと大気の湿球温度WBTとに基づいて、特定されていれば、2つの温度HWT、WBTの温度差以外の方法で、特定されていてもよい。
【符号の説明】
【0167】
30A、30B、30C 冷却水系統設備
31 冷却塔
32 往路管
33 復路管
41 冷却塔ファン
45 冷却水ポンプ
100、200、300 制御装置
110、210、310 第1制御部
120、220、320 第2制御部
130、230 第3制御部
114、214 制御装置100および200の第1制御部の第1演算部
116、216 制御装置100および200の第1制御部の第2演算部
122、222 制御装置100および200の第2制御部の差分器
124、224 制御装置100および200の第2制御部の設定器
126、226 制御装置100および200の第2制御部の比例積分器
132、232 制御装置100および200の第3制御部の加算器
134、234 制御装置100および200の第3制御部の信号発生器
136、236 制御装置100および200の第3制御部の乗算器
312 制御装置300の第4制御部の差分器
314 制御装置300の第4制御部の設定器
316 制御装置300の第4制御部の比例積分器
322 制御装置300の第5制御部の信号発生器
324 制御装置300の第5制御部の乗算器