(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-11
(45)【発行日】2024-03-19
(54)【発明の名称】パターンマッチングを利用して道路渋滞伝播を予測する方法、コンピュータ装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G08G1/00 C
(21)【出願番号】P 2022137508
(22)【出願日】2022-08-31
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2021-0120229
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505205812
【氏名又は名称】ネイバー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NAVER Corporation
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンイル
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】オ ヨンギョン
(72)【発明者】
【氏名】カク ジイン
(72)【発明者】
【氏名】タク ギョンウク
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-238194(JP,A)
【文献】特開2004-272408(JP,A)
【文献】特開2004-362290(JP,A)
【文献】特開2006-038469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-10/30、30/00-30/08、
50/00-50/20、50/26-99/00
G08G 1/00-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置で実行される渋滞伝播予測方法であって、
前記コンピュータ装置は、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記渋滞伝播予測方法は、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、パターンマッチング(pattern matching)を利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する段階
、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、
探索された前記アクシデント道路の前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターン
を探索する段階、および
探索された前記周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する段階
、を含
み、
前記予測する段階は、
道路間の渋滞伝播が予想される時間範囲である第2時間範囲を設定する段階、および
探索された前記周辺道路の過去の速度パターンから前記第2時間範囲以内の前記周辺道路の渋滞状況を確認し、前記周辺道路の渋滞状況を利用して前記渋滞伝播パターンを予測する段階、を含む、
渋滞伝播予測方法。
【請求項2】
前記探索する段階は、
前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定する段階、および
前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索する段階
を含む、請求項1に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項3】
前記設定する段階は、
前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点とアクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点のうちの少なくとも1つに基づいて前記第1時間範囲を設定すること
を特徴とする、請求項2に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項4】
コンピュータ装置で実行される渋滞伝播予測方法であって、
前記コンピュータ装置は、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記渋滞伝播予測方法は、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、パターンマッチング(pattern matching)を利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する段階、および
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する段階、を含み、
前記探索する段階は、
前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定する段階、および
前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索する段階、を含み、
前記設定する段階は、
前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点以前の一定時間の速度時系列データを利用して前記アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点を
推測する段階、および
前記アクシデント発生時点を含む時間範囲として前記第1時間範囲を設定する段階
、を含
み、
前記予測する段階は、
探索された前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対応する前記周辺道路の過去の速度パターンを識別し、識別された前記周辺道路の過去の速度パターンに基づいて前記周辺道路の未来渋滞状況を予測することを含む、
渋滞伝播予測方法。
【請求項5】
コンピュータ装置で実行される渋滞伝播予測方法であって、
前記コンピュータ装置は、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記渋滞伝播予測方法は、
前記少なくとも1つのプロセッサにより、パターンマッチング(pattern matching)を利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する段階、および
前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する段階、を含み、
前記探索する段階は、
前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定する段階、および
前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索する段階、を含み、
前記設定する段階は、
前記アクシデント道路の
アクシデント発生前後の車両の移動量による混雑度に基づいて前記第1時間範囲を設定することを含
み、
前記予測する段階は、
探索された前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対応する前記周辺道路の過去の速度パターンを識別し、識別された前記周辺道路の過去の速度パターンに基づいて前記周辺道路の未来渋滞状況を予測することを含む、
渋滞伝播予測方法。
【請求項6】
前記探索する段階は、
前記アクシデント道路の速度時系列データとして、DTW(Dynamic Time Warping)を利用したデータ同士のパターン類似度に基づいて前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索すること
を特徴とする、請求項1に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項7】
前記予測する段階は、
パターンマッチングによって前記アクシデント道路の
現在の速度パターンと
類似する過去の速度パターンを識別し、
前記アクシデント道路の識別された過去の速度パターンに対応する前記周辺道路の
過去の速度パターンを識別し、識別された前記周辺道路の過去の速度パターンに基づいて前記周辺道路の未来渋滞状況を予測すること
を特徴とする、請求項1に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項8】
前記予測する段階は
、
前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対して前記周辺道路の渋滞状況をパターン化した行列を生成する段階、および
前記行列に基づいて、前記アクシデント道路の最近の速度パターンに対する前記周辺道路の未来渋滞状況を予測する段階
を含む、請求項1に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項9】
前記生成する段階は、
前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対して複数の行列が生成される場合、前記複数の行列に対して投票(voting)を行い、投票結果に基づいて最終行列を導き出す段階
を含む、請求項8に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項10】
前記設定する段階は、
前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点とアクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点のうちの少なくとも1つに基づいて前記第2時間範囲を設定する
か、
前記周辺道路または前記アクシデント道路の
アクシデント発生後の車両の移動量による混雑度に基づいて前記第2時間範囲を設定すること
を特徴とする、請求項8に記載の渋滞伝播予測方法。
【請求項11】
コンピュータプログラムであって、該プログラムがコンピュータ装置によって実行されると、前記コンピュータ装置に、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の渋滞伝播予測方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項12】
コンピュータ装置であって、
メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサ
を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
パターンマッチングを利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する過程
、
探索された前記アクシデント道路の前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターン
を探索する過程、および
探索された前記周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する過程
、を処理
し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記予測する過程において、
道路間の渋滞伝播が予想される時間範囲である第2時間範囲を設定し、
探索された前記周辺道路の過去の速度パターンから前記第2時間範囲以内の前記周辺道路の渋滞状況を確認し、前記周辺道路の渋滞状況を利用して前記渋滞伝播パターンを予測する、
コンピュータ装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定し、
前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索すること
を特徴とする、請求項12に記載のコンピュータ装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点とアクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点のうちの少なくとも1つに基づいて前記第1時間範囲を設定すること
を特徴とする、請求項13に記載のコンピュータ装置。
【請求項15】
コンピュータ装置であって、
メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサ
を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
パターンマッチングを利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する過程、および
前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する過程、を処理し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記探索する過程において、
前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定し、
前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記設定する過程において、
前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点以前の一定時間の速度時系列データを利用して前記アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点を
推測し、
前記アクシデント発生時点を含む時間範囲として前記第1時間範囲を設定
し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記予測する過程において、
探索された前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対応する前記周辺道路の過去の速度パターンを識別し、識別された前記周辺道路の過去の速度パターンに基づいて前記周辺道路の未来渋滞状況を予測することを特徴とする、
コンピュータ装置。
【請求項16】
コンピュータ装置であって、
メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサ
を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
パターンマッチングを利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する過程、および
前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する過程、を処理し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記探索する過程において、
前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定し、
前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記設定する過程において、
前記アクシデント道路の
アクシデント発生前後の車両の移動量による混雑度に基づいて前記第1時間範囲を設定
し、
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記予測する過程において、
探索された前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対応する前記周辺道路の過去の速度パターンを識別し、識別された前記周辺道路の過去の速度パターンに基づいて前記周辺道路の未来渋滞状況を予測することを特徴とする、
コンピュータ装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
DTWを利用したデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索すること
を特徴とする、請求項12に記載のコンピュータ装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
パターンマッチングによって前記アクシデント道路の
現在の速度パターンと
類似する過去の速度パターン
を識別し、前記アクシデント道路の識別された過去の速度パターンに対応する前記周辺道路の
過去の速度パターンを識別し、識別された前記周辺道路の過去の速度パターンに基づいて前記周辺道路の未来渋滞状況を予測すること
を特徴とする、請求項12に記載のコンピュータ装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサは
、
前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対して前記周辺道路の渋滞状況をパターン化した行列を生成し、
前記行列に基づいて、前記アクシデント道路の最近の速度パターンに対する前記周辺道路の未来渋滞状況を予測すること
を特徴とする、請求項12に記載のコンピュータ装置。
【請求項20】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対して複数の行列が生成される場合、前記複数の行列に対して投票(voting)を行い、投票結果に基づいて最終行列を導き出すこと
を特徴とする、請求項19に記載のコンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の説明は、道路の渋滞を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
道路渋滞の発生とこれによる渋滞の伝播は、全世界のほとんどの大都市が抱えている交通問題の1つである。
【0003】
このような交通渋滞は、反復的に発生する混雑(recurrent congestion)と、事故や気象の悪化、集会などのアクシデント情報によって非反復的に発生する混雑(non-recurrent congestion)とに大別される。
【0004】
特定の道路の交通渋滞時点を予測する方式は、道路の収容可能な車両台数を基準とするのが一般的である。道路の収容可能な車両台数が定められており、収容可能な車両台数が限界に達した場合に該当の道路に渋滞状況が発生するようになるが、該当の道路の渋滞到達時点から車両の走行速度が急激に低下する。
【0005】
反復的な道路の渋滞到達時点は統計的に予測が可能であり、これを活用して交通渋滞状況や時点予測が可能となる。
【0006】
ある研究では、地域間の非正常的なトラフィック(交通)の流れの頻繁な伝播ツリーを探索するためのSTO(spatio-temporal outliers)ツリーアルゴリズムと、頻繁な下位ツリーアルゴリズムを提案している。他の研究では、交通混雑と伝播パターンを探索するための視覚的インタフェースを提案しており、さらに他の研究では、Pro-Graphsと呼ばれる伝播グラフの形態で反復的な渋滞伝播パターンを確率化して未来に対する渋滞伝播を予測している。
【0007】
既存の研究では、過去に頻繁に繰り返された渋滞伝播の痕跡(形跡)を識別することに焦点を置いている。
【0008】
しかし、交通事故のように非反復的に発生する交通混雑は、いつどこで起こるか予測することが不可能であるため、混雑状況に対応する渋滞伝播予測モデルの生成に困難をきたしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
学習過程(training)を経る必要なく、パターンマッチング(pattern matching)によってリアルタイムで道路渋滞伝播パターンを予測する。
【0010】
アクシデント道路の現在の速度パターンと類似する過去の速度パターンを識別した後、過去の速度パターンに基づいて周辺道路の渋滞伝播状況を予測する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
コンピュータ装置で実行される渋滞伝播予測方法であって、前記コンピュータ装置は、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、前記渋滞伝播予測方法は、前記少なくとも1つのプロセッサにより、パターンマッチング(pattern matching)を利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する段階、および前記少なくとも1つのプロセッサにより、前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する段階を含む、渋滞伝播予測方法を提供する。
【0012】
一側面によると、前記探索する段階は、前記アクシデント道路に対して、前記アクシデント時点を基準に前記パターンマッチングのための第1時間範囲を設定する段階、および前記第1時間範囲に該当するデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索する段階を含んでよい。
【0013】
他の側面によると、前記設定する段階は、前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点とアクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点のうちの少なくとも1つに基づいて前記第1時間範囲を設定してよい。
【0014】
また他の側面によると、前記設定する段階は、前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点以前の一定時間の速度時系列データを利用して前記アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点を予測する段階、および前記アクシデント発生時点を含む時間範囲として前記第1時間範囲を設定する段階を含んでよい。
【0015】
また他の側面によると、前記設定する段階は、前記アクシデント道路の車両の移動量による混雑度に基づいて前記第1時間範囲を設定してよい。
【0016】
また他の側面によると、前記探索する段階は、DTW(Dynamic Time Warping)を利用したデータ同士のパターン類似度に基づいて、前記アクシデント道路の速度時系列データから前記アクシデント道路の過去の速度パターンを探索してよい。
【0017】
また他の側面によると、前記予測する段階は、前記アクシデント道路の過去の速度パターンと対応する前記周辺道路の過去の速度パターンから前記周辺道路の未来渋滞状況を予測してよい。
【0018】
また他の側面によると、前記予測する段階は、道路間の渋滞伝播が予想される時間範囲である第2時間範囲を設定する段階、前記アクシデント道路の過去の速度パターンと対応する前記周辺道路の過去の速度パターンから前記第2時間範囲以内の渋滞状況を確認する段階、前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対して前記周辺道路の渋滞状況をパターン化した行列を生成する段階、および前記行列に基づいて、前記アクシデント道路の最近の速度パターンに対する前記周辺道路の未来渋滞状況を予測する段階を含んでよい。
【0019】
また他の側面によると、前記生成する段階は、前記アクシデント道路の過去の速度パターンに対して複数の行列が生成される場合、前記複数の行列に対して投票(voting)を行い、投票結果に基づいて最終行列を導き出す段階を含んでよい。
【0020】
さらに他の側面によると、前記設定する段階は、前記アクシデント道路に対して、アクシデント状況が発生したアクシデント発生時点とアクシデント状況が報告されたアクシデント報告時点のうちの少なくとも1つに基づいて前記第2時間範囲を設定するが、前記周辺道路または前記アクシデント道路の車両の移動量による混雑度に基づいて前記第2時間範囲を設定してよい。
【0021】
前記渋滞伝播予測方法を前記コンピュータ装置に実行させるためにコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される、コンピュータプログラムを提供する。
【0022】
コンピュータ装置であって、メモリに含まれるコンピュータ読み取り可能な命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み、前記少なくとも1つのプロセッサは、パターンマッチングを利用して、アクシデント道路に対してアクシデント時点の最近の速度パターンと類似する少なくとも1つの過去の速度パターンを探索する過程、および前記過去の速度パターンと対応する時点に対して、前記アクシデント道路に進入可能な少なくとも1つの周辺道路の過去の速度パターンから前記アクシデント道路による渋滞伝播パターンを予測する過程を処理する、コンピュータ装置を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によると、パターンマッチングを利用してアクシデント道路の渋滞が伝播する周辺道路を予測することにより、経路探索時に最適な迂回道路を案内することができる。
【0024】
本発明の実施形態によると、アクシデント時点を基準に、時間の経過にともなって明確性を増すアクシデント道路の速度パターンに基づいて渋滞伝播の予測性能を高めることができる。
【0025】
本発明の実施形態によると、パターンマッチングを基盤とした予測モデルの場合、学習過程を必要としないため、渋滞伝播の予測にかかるリソースや時間を節約することができ、道路ネットワークに対するパターンマッチングによってリアルタイムで道路渋滞伝播を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態における、ネットワーク環境の例を示した図である。
【
図2】本発明の一実施形態における、コンピュータ装置の例を示したブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態における、道路ネットワークの一例を示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態における、コンピュータ装置が実行することのできる方法の例を示したフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態における、事故発生時点を把握する過程を説明するための例示図である。
【
図6】本発明の一実施形態における、パターンマッチングに必要な時間範囲を設定する過程を説明するための例示図である。
【
図7】本発明の一実施形態における、最近の速度パターンと類似する過去の速度パターンをパターンマッチングによって探索する過程を説明するための例示図である。
【
図8】本発明の一実施形態における、最近の速度パターンと類似する過去の速度パターンをパターンマッチングによって探索する過程を説明するための例示図である。
【
図9】本発明の一実施形態における、最近の速度パターンと類似する過去の速度パターンをパターンマッチングによって探索する過程を説明するための例示図である。
【
図10】本発明の一実施形態における、渋滞伝播が予想される時間範囲を設定する過程を説明するための例示図である。
【
図11】本発明の一実施形態における、事故道路を基準とした周辺道路に対する渋滞状況を予測する過程を説明するための例示図である。
【
図12】本発明の一実施形態における、事故道路を基準とした周辺道路に対する渋滞状況を予測する過程を説明するための例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【0028】
本発明の実施形態は、道路渋滞を予測する技術に関する。
【0029】
本明細書で具体的に開示される事項を含む実施形態は、パターンマッチングを利用してアクシデント道路の渋滞が伝播する周辺道路を予測し、これによって適切な状況で最適な迂回道路を決定することができる。
【0030】
本発明の実施形態に係る渋滞伝播予測装置は、少なくとも1つのコンピュータ装置によって実現されてよく、本発明の実施形態に係る渋滞伝播予測方法は、渋滞伝播予測装置に含まれる少なくとも1つのコンピュータ装置によって実行されてよい。このとき、コンピュータ装置においては、本発明の一実施形態に係るコンピュータプログラムがインストールされて実行されてよく、コンピュータ装置は、実行されたコンピュータプログラムの制御にしたがって本発明の実施形態に係る渋滞伝播予測方法を実行してよい。上述したコンピュータプログラムは、コンピュータ装置と結合して渋滞伝播予測方法をコンピュータに実行させるためにコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてよい。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態における、ネットワーク環境の例を示した図である。
図1のネットワーク環境は、複数の電子機器110、120、130、140、複数のサーバ150、160、およびネットワーク170を含む例を示している。このような
図1は、発明の説明のための一例に過ぎず、電子機器の数やサーバの数が
図1のように限定されることはない。また、
図1のネットワーク環境は、本実施形態に適用可能な環境の一例を説明したものに過ぎず、本実施形態に適用可能な環境が
図1のネットワーク環境に限定されることはない。
【0032】
複数の電子機器110、120、130、140は、コンピュータ装置によって実現される固定端末や移動端末であってよい。複数の電子機器110、120、130、140の例としては、スマートフォン、携帯電話、ナビゲーション、PC(personal computer)、ノート型PC、デジタル放送用端末、PDA(Personal Digital Assistant)、PMP(Portable Multimedia Player)、タブレットなどがある。一例として、
図1では、電子機器110の例としてスマートフォンを示しているが、本発明の実施形態において、電子機器110は、実質的に無線または有線通信方式を利用し、ネットワーク170を介して他の電子機器120、130、140および/またはサーバ150、160と通信することができる多様な物理的なコンピュータ装置のうちの1つを意味してよい。
【0033】
通信方式が限定されることはなく、ネットワーク170が含むことのできる通信網(一例として、移動通信網、有線インターネット、無線インターネット、放送網)を利用する通信方式だけではなく、機器間の近距離無線通信が含まれてもよい。例えば、ネットワーク170は、PAN(personal area network)、LAN(local area network)、CAN(campus area network)、MAN(metropolitan area network)、WAN(wide area network)、BBN(broadband network)、インターネットなどのネットワークのうちの1つ以上の任意のネットワークを含んでよい。さらに、ネットワーク170は、バスネットワーク、スターネットワーク、リングネットワーク、メッシュネットワーク、スター-バスネットワーク、ツリーまたは階層的ネットワークなどを含むネットワークトポロジのうちの任意の1つ以上を含んでもよいが、これらに限定されることはない。
【0034】
サーバ150、160それぞれは、複数の電子機器110、120、130、140とネットワーク170を介して通信して命令、コード、ファイル、コンテンツ、サービスなどを提供する1つ以上のコンピュータ装置によって実現されてよい。例えば、サーバ150は、ネットワーク170を介して接続した複数の電子機器110、120、130、140にサービス(一例として、ナビゲーションサービスなど)を提供するシステムであってよい。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態における、コンピュータ装置の例を示したブロック図である。上述した複数の電子機器110、120、130、140それぞれやサーバ150、160それぞれは、
図2に示したコンピュータ装置200によって実現されてよい。
【0036】
このようなコンピュータ装置200は、
図2に示すように、メモリ210、プロセッサ220、通信インタフェース230、および入力/出力インタフェース240を含んでよい。メモリ210は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、RAM(random access memory)、ROM(read only memory)、およびディスクドライブのような永続的大容量記録装置を含んでよい。ここで、ROMやディスクドライブのような永続的大容量記録装置は、メモリ210とは区分される別の永続的記録装置としてコンピュータ装置200に含まれてもよい。また、メモリ210には、オペレーティングシステムと、少なくとも1つのプログラムコードが記録されてよい。このようなソフトウェア構成要素は、メモリ210とは別のコンピュータ読み取り可能な記録媒体からメモリ210にロードされてよい。このような別のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、フロッピー(登録商標)ドライブ、ディスク、テープ、DVD/CD-ROMドライブ、メモリカードなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含んでよい。他の実施形態において、ソフトウェア構成要素は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体ではない通信インタフェース230を通じてメモリ210にロードされてもよい。例えば、ソフトウェア構成要素は、ネットワーク170を介して受信されるファイルによってインストールされるコンピュータプログラムに基づいてコンピュータ装置200のメモリ210にロードされてよい。
【0037】
プロセッサ220は、基本的な算術、ロジック、および入出力演算を実行することにより、コンピュータプログラムの命令を処理するように構成されてよい。命令は、メモリ210または通信インタフェース230によって、プロセッサ220に提供されてよい。例えば、プロセッサ220は、メモリ210のような記録装置に記録されたプログラムコードにしたがって受信される命令を実行するように構成されてよい。
【0038】
通信インタフェース230は、ネットワーク170を介してコンピュータ装置200が他の装置(一例として、上述した記録装置)と互いに通信するための機能を提供してよい。一例として、コンピュータ装置200のプロセッサ220がメモリ210のような記録装置に記録されたプログラムコードにしたがって生成した要求や命令、データ、ファイルなどが、通信インタフェース230の制御にしたがってネットワーク170を介して他の装置に伝達されてよい。これとは逆に、他の装置からの信号や命令、データ、ファイルなどが、ネットワーク170を経てコンピュータ装置200の通信インタフェース230を通じてコンピュータ装置200に受信されてよい。通信インタフェース230を通じて受信された信号や命令、データなどは、プロセッサ220やメモリ210に伝達されてよく、ファイルなどは、コンピュータ装置200がさらに含むことのできる記録媒体(上述した永続的記録装置)に記録されてよい。
【0039】
入力/出力インタフェース240は、入力/出力装置250とのインタフェースのための手段であってよい。例えば、入力装置は、マイク、キーボード、またはマウスなどの装置を、出力装置は、ディスプレイ、スピーカのような装置を含んでよい。他の例として、入力/出力インタフェース240は、タッチスクリーンのように入力と出力のための機能が1つに統合された装置とのインタフェースのための手段であってもよい。入力/出力装置250は、コンピュータ装置200と1つの装置で構成されてもよい。
【0040】
また、他の実施形態において、コンピュータ装置200は、
図2の構成要素よりも少ないか多くの構成要素を含んでもよい。しかし、大部分の従来技術的な構成要素を明確に図に示す必要はない。例えば、コンピュータ装置200は、上述した入力/出力装置250のうちの少なくとも一部を含むように実現されてもよいし、トランシーバ、データベースなどのような他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0041】
以下では、パターンマッチングを利用して道路渋滞伝播を予測する方法および装置の具体的な実施形態について説明する。
【0042】
図3は、本発明の一実施形態における、道路ネットワークの一例を示した図である。
【0043】
道路上の非反復的な混雑に含まれる主な外部的要因として交通事故、集会、道路工事などが挙げられるが、他の要因とは異なり、交通事故はいつどこで発生するか予測ができないため、混雑が発生した道路に進入する周辺道路の交通量と速度に大きな影響を及ぼす。
【0044】
図3を参照すると、A道路で交通事故による渋滞が発生した場合、時間の経過にともなってA道路に進入する周辺道路のうちの少なくとも一部の道路にも渋滞が拡がり、交通渋滞の伝播(Traffic Congestion Propagation)が発生する。
【0045】
例えば、ナビゲーションサービスが、I、F、D、A道路を含む経路を案内したと仮定する。時間の経過にともなってA道路の渋滞がD道路とF道路に伝播した場合、既存の経路を維持しようとすれば、該当の経路を走行する使用者の移動時間には大幅な遅延が発生する。
【0046】
ナビゲーションサービスが、渋滞伝播が発生する道路を予測することができれば、交通渋滞の伝播が予想されるD道路とF道路を迂回する最適経路(例えば、I、H、G、A道路を含む経路など)を使用者に案内することができる。
【0047】
本実施形態では、アクシデント状況で交通混雑が発生する場合、学習過程を経る必要なく、パターンマッチングによってリアルタイムで渋滞伝播パターンを予測することができる分析技術を提案する。
【0048】
以下では、非反復的な混雑の要因となる代表的なアクシデント状況として交通事故を例示しながら、これについて具体的に説明する。
【0049】
本実施形態は、学習過程を経る必要なく、パターンマッチングによってアクシデント状況にリアルタイムで対応することができる。パターンマッチングは、現在のパターンと類似する過去のパターンを識別し、識別された過去のパターンに基づいて近い未来のパターンが進んでいくと仮定する方法論である。
【0050】
本実施形態では、パターンマッチングによってアクシデント道路で観測された現在の速度パターンと類似する過去の速度パターンを識別し、これに基づいて周辺道路の渋滞伝播状況を予測する。
【0051】
図4は、本発明の一実施形態における、コンピュータ装置が実行することのできる方法の例を示したフローチャートである。
【0052】
本実施形態に係るコンピュータ装置200は、クライアントを対象に、クライアント上にインストールされた専用アプリケーションやコンピュータ装置200と関連するウェブ/モバイルサイトへの接続によってナビゲーションサービスを提供してよい。コンピュータ装置200には、コンピュータで実現された渋滞伝播予測装置が構成されてよい。
【0053】
コンピュータ装置200のプロセッサ220は、
図4に係る渋滞伝播予測方法を実行するための構成要素で実現されてよい。実施形態によって、プロセッサ220の構成要素は、選択的にプロセッサ220に含まれても除外されてもよい。また、実施形態によって、プロセッサ220の構成要素は、プロセッサ220の機能の表現のために分離されても併合されてもよい。
【0054】
このようなプロセッサ220およびプロセッサ220の構成要素は、
図4の渋滞伝播予測方法に含まれる段階410~450を実行するようにコンピュータ装置200を制御してよい。例えば、プロセッサ220およびプロセッサ220の構成要素は、メモリ210が含むオペレーティングシステムのコードと、少なくとも1つのプログラムのコードとによる命令(instruction)を実行するように実現されてよい。
【0055】
ここで、プロセッサ220の構成要素は、コンピュータ装置200に記録されたプログラムコードが提供する命令にしたがってプロセッサ220によって実行される、互いに異なる機能(different functions)の表現であってよい。
【0056】
プロセッサ220は、コンピュータ装置200の制御と関連する命令がロードされたメモリ210から必要な命令を読み取ってよい。この場合、前記読み取られた命令は、プロセッサ220が以下で説明する段階410~450を実行するように制御するための命令を含んでよい。
【0057】
以下で説明する段階410~450は、
図4に示したものとは異なる順序で実行されてもよいし、段階410~450のうちの一部が省略されたり追加の過程がさらに含まれたりしてもよい。
【0058】
図4を参照すると、段階410で、プロセッサ220は、事故道路の事故報告時点に基づいて事故発生時点を把握してよい。プロセッサ220は、コンピュータ装置200と連動可能なシステムやプラットフォームなどを利用して道路上の車両の実際の走行速度から速度時系列データを取得して維持および管理してよい。また、プロセッサ220は、コンピュータ装置200と連動可能なシステムやプラットフォームなどを利用して道路上の事故などのようなアクシデント情報の報告を受けてよい。
【0059】
事故が報告された時点trptは必然的であり、事故が実際に発生した時点ta以後に位置する。渋滞伝播は、事故道路で事故が発生した時点taから始まるため、事故報告時点trptの他に事故発生時点taを把握することも重要となる。事故報告時点trptに関する情報とは異なり、事故発生時点taに関する情報は存在しないため、ナビゲーションサービスから得ることのできる速度データを利用しながら事故報告時点trptより以前の、予想される事故発生時点taを探知する。
【0060】
事故道路eoに対する事故が時点trptに報告されたと仮定しよう。一例として、プロセッサ220は、時点trpt以前の一定時間(例えば、2時間)以内に事前に定められた条件C1、C2、C3を連続的に満たす最初の時点が事故発生時点taであると定義してよい。
【0061】
【0062】
例えば、
図5を参照すると、1つ目の条件(C1)は、5分単位の速度指数移動平均線(EMA)が事故報告時点t
rpt以前の2時間内の平均速度よりも低い場合を意味する。2つ目の条件(C2)は、5分単位の速度指数移動平均線(EMA)が30分単位の速度指数移動平均線(EMA)よりも低い場合を意味する。(C1)と(C2)は、速度の短期的趨勢が長期的趨勢よりも低くなる趨勢変化に対する条件である。これにより、急激な速度の趨勢変化を感知することができる。3つ目の条件(C3)は、急激な速度低下状況に関するものである。速度が以前の10分間の標準偏差範囲よりも下落すれば速度の急激な低下が生じたと判断し、事故によって発生する急激な速度低下として反映する。上述した3つの条件(C1)、(C2)、(C3)を10分間にわたって連続的に満たす地点を事故発生時点t
aと見なす。
【0063】
再び
図4を参照すると、段階420で、プロセッサ220は、事故報告時点t
rptと事故発生時点t
aのうちの少なくとも1つを基準に、パターンマッチングのための第1時間範囲を設定してよい。第1時間範囲は、パターンマッチング区間を示す時間範囲、すなわち、タイムウィンドウ(time window)を意味する。一例として、プロセッサ220は、事故発生時点t
aは考慮せずに事故報告時点t
rptだけを考慮しながら、事故報告時点t
rptを基準とした以前の一定時間(例えば、2時間)を第1時間範囲として設定してよい。他の例として、プロセッサ220は、事故報告時点t
rptを基準とした以前の一定時間(例えば、2時間)を第1時間範囲として設定するものの、事故発生時点t
aを含む時間範囲を第1時間範囲として設定してよい。言い換えれば、プロセッサ220は、事故発生時点t
aと事故報告時点t
rptを含む時間を第1時間範囲として設定してよい。
【0064】
事故発生時の最近の速度パターンを過去の速度パターンと比べるためには、パターンの長さである第1時間範囲の合理的な設定が必要となる。以下では、第1時間範囲をSW(Searching Window:探索ウィンドウ)と称する。SWは数式(2)で設定されてよい。
【0065】
【0066】
ここで、PT(previous time)は、事故発生時点t
aからどのくらい遠い過去までを探索するかを決定するハイパーパラメータ(hyper-parameter)である。
図6を参照すると、プロセッサ220は、事故以前の状況まで分析範囲に追加するためにPTをSWに含ませて事故以前の正常な交通状況まで反映することにより、より明確な事故状況を代弁することができる。
【0067】
SWは、ナビゲーションサービス運営者によって設定されてよい。一例として、事故道路の普段の混雑度を基準とし、車両の移動量が多い混雑道路であるほど短く設定してよい。SWは、サービスの対象に応じて決定されるハイパーパラメータであり、道路の特性などを考慮した実験による最適値が設定されてよい。
【0068】
SWは、時間の経過にともなって単位時間周期ごとにアップデートされてよく、これに基づいてリアルタイム状況を反映してよい。
【0069】
再び
図4を参照すると、段階430で、プロセッサ220は、事故道路の第1時間範囲であるSWに該当する最近の速度パターンに対して、該当の道路の速度時系列データから類似の過去の速度パターンを探索してよい。言い換えれば、プロセッサ220は、事故道路に対して、SW内の最近の速度パターンと類似する過去の速度パターンを探索してよい。
【0070】
プロセッサ220は、比較しようとするパターン長さであるSWを設定した後、同一道路に対して過去の一定期間の速度データに対して探索を実行してよい。一例として、プロセッサ220は、事故道路の速度時系列データのSW範囲内に存在する最近の速度パターンとすべての過去の速度パターンとの類似度をDTW(Dynamic Time Warping)によって算出し、類似度を基準にして上位N個の過去の速度パターンを抽出してよい。
【0071】
DTWは、2つの時系列データの類似度を測定する指標を意味し、プロセッサ220は、DTWによって時系列データの曲線類似性まで考慮しながらデータ同士のパターン類似度を分析してよい。
【0072】
例えば、
図7を参照すると、長さがnである時系列データ(71)X={x
1、x
2、・・・、x
n}と長さがmである時系列データ(72)Y={y
1、y
2、・・・、y
m}があるとするとき、XとYの元素(シーケンス)の距離を示すn×m行列、すなわち、DTW行列700を生成することができる。DTW行列700の(i、j)要素は、x
iとy
iの距離値を示す。DTW行列700の(1、1)から(n、m)まで到逹する経路のうち、DTW行列700の元素が合算される距離が最も短い経路をワーピング経路(Warping path)710とする。このとき、ワーピング経路710として定義される経路の距離の和がDTW距離となり、この値が小さいほど2つの時系列データ71、72の類似性が高いと言える。
【0073】
図8に示すように、プロセッサ220は、事故道路の速度時系列データ800において、すべての過去の速度パターンに対してSW単位801でDTW距離を求め、DTW距離が短い順に並べることにより、最近の速度パターンと類似する順に過去の速度パターンを並べることができる。このとき、プロセッサ220は、過去の速度パターンの間に時間上重複しないN個の独立的なパターンを類似パターン候補(pattern candidate)として抽出してよい。
【0074】
図9を参照すると、プロセッサ220は、事故道路の速度時系列データに対して
図8を参照しながら説明したDTW距離を基盤とするパターンマッチングを利用して、最近の速度パターン910と類似するN個の過去の速度パターン920を探索する。
【0075】
再び
図4を参照すると、段階440で、プロセッサ220は、事故道路を基準に、少なくとも1つの周辺道路への渋滞伝播が予想される第2時間範囲を設定してよい。第2時間範囲は、事故道路の渋滞が周辺道路に伝播すると予想される時間範囲であり、PW(Propagation Window:伝播ウィンドウ)と称する。PWは数式(3)によって設定されてよい。
【0076】
【0077】
プロセッサ220は、事故発生時点t
aと事故報告時点t
rptのうちの少なくとも1つを基準に、周辺道路への渋滞伝播予想時間範囲であるPWを設定してよい。
図10を参照すると、Fは、事故道路の事故報告時点t
rptから事故道路の渋滞をどのくらい遠い未来のナビゲーションサービスの使用者まで伝達するかを示すハイパーパラメータである。一例として、プロセッサ220は、事故道路の事故報告時点t
rptを基準とした以後の一定時間(例えば、2時間)を第2時間範囲として設定してよい。他の例として、プロセッサ220は、事故道路の事故発生時点t
aを基準とした以後の一定時間(例えば、3時間)を第2時間範囲として設定してよい。PWの開始時点に事故発生時点t
aを反映する理由は、事故道路を基準に、k-ホップの周辺道路の渋滞が事故発生時点t
aから始まる可能性があるという点を反映することにある。
【0078】
PWもSWと同じように、ナビゲーションサービスの運営者によって設定されてよく、事故道路や周辺道路の普段の混雑度を基準に、車両の移動量が多い混雑道路であるほど短く設定されてよい。実施形態によっては、道路の特性などを考慮した実験による最適値がPWとして設定されてよい。
【0079】
再び
図4を参照すると、段階450で、プロセッサ220は、事故道路を基準に、k-ホップの周辺道路に対して、事故道路の過去の速度パターンと対応する周辺道路の過去の速度パターンのうちで第2時間範囲(PW)に該当する過去の速度パターンを利用して渋滞伝播パターンを予測してよい。
【0080】
プロセッサ220は、事故道路の最近の速度パターンと類似する過去の速度パターンに対して、事故道路を基準に、k-ホップまで存在するすべての周辺道路の渋滞状況を確認してよい。事故道路に対して段階430で探索された過去の速度パターンと対応する時点の周辺道路の速度データとしてPW範囲の速度パターンを分析することにより、周辺道路の渋滞状況を確認することができる。例えば、周辺道路の渋滞状況は、数式(4)のように定義されてよい。
【0081】
【0082】
周辺道路それぞれに対して、PW範囲内で道路の最大速度が制限速度ff(e)に対して0.7水準未満に下落する場合、PW範囲内に渋滞が発生したと判断する。
【0083】
図11を参照すると、プロセッサ220は、数式(4)の条件を事故道路のN個の過去の速度パターン920に該当する時点に含まれるk-ホップ内のすべての周辺道路の速度パターン1130に適用することで、過去の速度パターン920それぞれに対する周辺道路の渋滞状況を求めてよい。プロセッサ220は、事故道路のN個の過去の速度パターン920に対して周辺道路の渋滞状況をパターン化してN個の伝播行列(propagation matrix)1140を生成する。ここで、伝播行列1140は、事故道路からk-ホップまで連結する周辺道路のそれぞれの経路に対して各合の渋滞状況を示す行列である。
【0084】
プロセッサ220は、N個の伝播行列1140に基づいて、事故道路の最近の速度パターンに対して周辺道路の渋滞伝播パターンを予測する。例えば、
図12を参照すると、N個の伝播行列1140が与えられた状態で各元素に対する投票(voting)を行い、投票の結果に基づいて1つの予測値である予測伝播行列(Predicted Propagation Matrix)1250を導き出してよい。
【0085】
プロセッサ220は、予測伝播行列1250に基づいて、事故道路に対する周辺道路のPW範囲内の過去の速度パターンから事故道路による周辺道路の渋滞伝播パターンを予測する。
【0086】
したがって、プロセッサ220は、事故道路の最近の速度パターンと類似する過去の速度パターンを識別し、過去の速度パターンに対応する周辺道路の過去の渋滞パターンから未来の渋滞伝播状況を予測することができる。プロセッサ220は、時間の経過にともなって単位時間を周期としながら過程410~450を繰り返すことにより、事故道路のリアルタイム状況を反映して渋滞伝播状況を予測することができる。
【0087】
本発明の実施形態によると、非反復的な混雑状況が発生したアクシデント道路の渋滞が伝播するパターンを予測することができる。本実施形態は、事故の影響によって渋滞が発生する流入道路を予測することにより、経路探索時に該当の道路を迂回した経路を案内することができる。
【0088】
また、本発明の実施形態によると、単位時間を周期としてSWをアップデートして渋滞伝播状況を予測することにより、リアルタイムで状況に対応することができる。事故が報告される時点を基準とした時間の経過にともなって明確性を増す事故道路の速度パターンを利用することにより、渋滞伝播に対する予測力を高めることができる。
【0089】
さらに、本発明の実施形態によると、道路の渋滞伝播を予測するためにパターンマッチングを利用することにより、機械学習やディープラーニングなどで必要とする学習過程を省略することができ、道路ネットワークだけに対してパターンマッチングを適用することで渋滞伝播状況を予測することができる。学習過程を必要としないため、渋滞伝播の予測にかかるリソースや時間などを節約することができる。
【0090】
上述した装置は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、および/またはハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素との組み合わせによって実現されてよい。例えば、実施形態で説明された装置および構成要素は、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ、マイクロコンピュータ、FPGA(field programmable gate array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、または命令を実行して応答することができる様々な装置のように、1つ以上の汎用コンピュータまたは特殊目的コンピュータを利用して実現されてよい。処理装置は、オペレーティングシステム(OS)およびOS上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行してよい。また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答し、データにアクセスし、データを記録、操作、処理、および生成してもよい。理解の便宜のために、1つの処理装置が使用されるとして説明される場合もあるが、当業者であれば、処理装置が複数個の処理要素および/または複数種類の処理要素を含んでもよいことが理解できるであろう。例えば、処理装置は、複数個のプロセッサまたは1つのプロセッサおよび1つのコントローラを含んでよい。また、並列プロセッサのような、他の処理構成も可能である。
【0091】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム、コード、命令、またはこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含んでもよく、思うままに動作するように処理装置を構成したり、独立的または集合的に処理装置に命令したりしてよい。ソフトウェアおよび/またはデータは、処理装置に基づいて解釈されたり、処理装置に命令またはデータを提供したりするために、いかなる種類の機械、コンポーネント、物理装置、コンピュータ記録媒体または装置に具現化されてよい。ソフトウェアは、ネットワークによって接続されたコンピュータシステム上に分散され、分散された状態で記録されても実行されてもよい。ソフトウェアおよびデータは、1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてよい。
【0092】
実施形態に係る方法は、多様なコンピュータ手段によって実行可能なプログラム命令の形態で実現されてコンピュータ読み取り可能な媒体に記録されてよい。ここで、媒体は、コンピュータ実行可能なプログラムを継続して記録するものであっても、実行またはダウンロードのために一時記録するものであってもよい。また、媒体は、単一または複数のハードウェアが結合した形態の多様な記録手段または格納手段であってよく、あるコンピュータシステムに直接接続する媒体に限定されることはなく、ネットワーク上に分散して存在するものであってもよい。媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROMおよびDVDのような光媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような光磁気媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどを含み、プログラム命令が記録されるように構成されたものであってよい。また、媒体の他の例として、アプリケーションを配布するアプリケーションストアやその他の多様なソフトウェアを供給または配布するサイト、サーバなどで管理する記録媒体または格納媒体が挙げられる。
【0093】
以上のように、実施形態を、限定された実施形態および図面に基づいて説明したが、当業者であれば、上述した記載から多様な修正および変形が可能であろう。例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行されたり、かつ/あるいは、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合されたりまたは組み合わされたり、他の構成要素または均等物によって対置されたり置換されたとしても、適切な結果を達成することができる。
【0094】
したがって、異なる実施形態であっても、特許請求の範囲と均等なものであれば、添付される特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0095】
110、120、130、140:電子機器
150、160:サーバ
170:ネットワーク